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特許7506772多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 5/10 20060101AFI20240619BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240619BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20240619BHJP
   B22F 10/36 20210101ALI20240619BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20240619BHJP
   B22F 10/32 20210101ALI20240619BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20240619BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240619BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240619BHJP
   F16K 27/06 20060101ALI20240619BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20240619BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240619BHJP
【FI】
B22F5/10
B22F10/28
B22F10/64
B22F10/36
B22F10/366
B22F10/32
B22F10/38
B33Y10/00
B33Y50/02
F16K27/06
C22C1/04 E
B22F1/00 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022581679
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2022135005
(87)【国際公開番号】W WO2023093906
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】202111433391.2
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520468807
【氏名又は名称】西安航天発動机有限公司
【氏名又は名称原語表記】Xi’an Space Engine Company Limited
【住所又は居所原語表記】No.69, 2nd Shenzhou Rd., Aerospace Industrial Base, Yanta District, Xi’an,Shaanxi,710100,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】楊 歓慶
(72)【発明者】
【氏名】王 琳
(72)【発明者】
【氏名】周 亜雄
(72)【発明者】
【氏名】白 静
(72)【発明者】
【氏名】劉 根戦
(72)【発明者】
【氏名】彭 東剣
(72)【発明者】
【氏名】王 雲
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111266574(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109530694(CN,A)
【文献】特表2017-526870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 5/10
B22F 10/28
B22F 10/64
B22F 10/36
B22F 10/366
B22F 10/32
B22F 10/38
B33Y 10/00
B33Y 50/02
F16K 27/06
C22C 1/04
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ1からステップ5を含む多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法であって、
ステップ1:多層薄壁流線型バルブハウジングの中軸、シュラウド、中間ハウジング、排出ノズルに対して集積化設計を行い、多層薄壁流線型バルブハウジングの内部構造に対して最適化設計を行い、多層薄壁流線型バルブハウジング中のシュラウドの肉厚Sを計算し、
ステップ2:多層薄壁流線型バルブハウジング成形過程中の収縮量εを計算し、収縮量εに対して寸法補正設定を行い、
ステップ3:多層薄壁流線型バルブハウジングの成形方向を確定し、成形方向に応じて多層薄壁流線型バルブハウジングに対して形状補正を行い、バルブハウジング付加製造成形三次元モデルを取得し、
ステップ4:バルブハウジング付加製造成形三次元モデルに対してスライス処理を行い、各スライス層を取得し、各スライス層をTi-6Al-4Vチタン合金材料SLM成形プロセスパラメータ及びスキャン方法に入れ、各スライス層のレーザースキャン経路データを取得し、
ステップ5:不活性ガス環境で多層薄壁流線型バルブハウジングの全体成形を行い、成形後に多層薄壁流線型バルブハウジングに対して粉体除去を行い、応力解消熱処理を行った後、補助支持を解除し、
前記ステップ1において、多層薄壁流線型バルブハウジングの構成では、
中軸は鉛直に配置され、中間ハウジングは中空円弧錐状構造であり、中間ハウジングは中軸の中部外壁に外嵌され、開口が下向きであり、シュラウドは中空円弧錐状構造であり、シュラウドは中軸の中部外壁に外嵌され、開口が下向きであり、シュラウドは中間ハウジングの外側に外嵌され、シュラウドの側壁にはバルブ出口が水平に設けられ、シュラウドの側壁には排出ノズルが水平に設けられ、排出ノズルはバルブ出口に対向して設けられ、
前記ステップ1において、内部構造の最適化設計では、
多層薄壁流線型バルブハウジングの中軸と排出ノズル内壁上の懸垂面を45°自己支持構造に設計し、シュラウドと中軸の接続箇所での尖角構造をΦ8mmの滑らかで均一な過渡領域となるように設けることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記シュラウドの肉厚Sの計算方法は、下式であり、
【数1】
式中、pは使用圧力であり、
Rは多層薄壁流線型バルブハウジングのシュラウドのキャビティ半径であり、
[σ]は材料許容応力であり、材料SLM成形熱処理状態常温降伏強さ下で、安全係数は2.0-2.6に設定され、
Cは肉厚マージンであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、成形収縮規則により収縮量εを計算し、
【数2】
式中、σは多層薄壁流線型バルブハウジングの冷却後の温度/℃であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ3において、多層薄壁流線型バルブハウジングに対して形状補正を行う方法では、
成形方向に平行なバルブ出口端面に対して流路形状補正を行い、具体的には、元のバルブ出口端面の円心o′を軸方向に沿って外へo″まで移し、元のバルブ出口半径R1を半径R2に補正することを実現することを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
元の円心o′と形状補正後の円心o″との間の距離は30~40mmであり、R1は200mm、R2は150~180mmであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ4において、Ti-6Al-4Vチタン合金材料SLM成形プロセスパラメータ及びスキャン方法では、
シュラウド及び中間ハウジング薄壁流線型特徴成形プロセスパラメータにおいて、レーザーパワーは285~320W、スキャン速度は950~1050mm/s、スポット径は0.10~0.11mm、粉体層の厚さは0.03~0.06mmであり、勾配スキャン方法を採用し、
中軸特徴成形プロセスパラメータにおいて、レーザーパワーは305~330W、スキャン速度は900~1000mm/s、スポット径は0.11~0.13mm、粉体層の厚さは0.04~0.06mmであり、ストリップスキャン方法を採用することを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ5において、前記不活性ガスはアルゴンガスであり、成形過程における雰囲気中の酸素含有量は100ppm未満であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
粉体除去の方法では、
0.6MPa~0.8MPaの圧縮空気を用いてSLM成形された多層薄壁流線型バルブハウジング内のルース粉末及び表面に浮いた粉末を除去し、
応力解消熱処理の方法では、
真空、720℃~770℃で1hアニーリングし、アルゴンガスの環境下で冷却することを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブハウジング設計製造技術分野に属し、多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブハウジングは、密閉空間で循環媒体の厳密かつ効果的な制御を実現でき、航空宇宙、自動車、原子力、工業およびその他の分野の精密制御ユニットの重要な部分である。その中で、多層薄壁流線型構造バルブハウジングは、構造と機能を一体化して設計した部品である。多層薄壁流線型構造バルブハウジングの内部は二位置三方向構造であり、その中の2つの制御キャビティは流量制限及び全開の要求を実現することができ、内部に設けられるシュラウドにより、入口での流路は流線型であるため、流動抵抗損失を減少させ、流通媒体の流量を保証する機能を実現することができる。よって、多層薄壁流線型構造バルブハウジングは、優れた使用性能及び広い応用見通しを有する。
【0003】
多層薄壁流線型構造バルブハウジング上の中間ハウジング及びシュラウドは薄壁流線型三次元曲面構造であり、中軸と接続する箇所には肉厚が厚くなる過度領域が存在し、流路内部は半閉鎖の「逆V字」状大曲率断面可変構造であり、キャビティ空間は入口方向から徐々に小さくなる。多層薄壁流線型構造バルブハウジングは、主に液体酸素などの超低温環境で使用され、その最大使用圧力は50MPa以上に達し、定格流量は1000kg/s以上に達する。また、ハウジングの内壁と外壁は、長年にわたって大流量の酸化剤により激しく侵食されるため、使用環境が悪く、その製品の強度及び信頼性に対する要求は極めて高い。
【0004】
現在、多層薄壁流線型バルブ構造の複雑さの制限により、従来の精密インベストメント鋳造、溶接、機械加工、電解や放電加工などの特殊な加工方法では一体成形することができず、分割構造でのみ成形することができる。即ち、ハウジングを中軸、シュラウド、中間ハウジング及び排出ノズルなどの数十個の部品に分解し、複数回の溶接、ロウ付け(10本以上、総長さが約3mの溶接継目)及びその後の機械加工、組み立てを経て初めて多層薄壁流線型バルブハウジング部材の成形を実現できるのみならず、成形した部材の総合性能が低く、構造信頼性が保証されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術の不足を克服し、多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法を提供することである。この方法では、選択的レーザ溶融法成形技術により多層薄壁流線型構造バルブハウジングを製造し、このような典型的な部材の迅速、高性能、かつ高信頼性の機能構造一体化設計及び製造を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的手段は以下の通りである。
【0007】
以下のステップ1からステップ5を含む多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法であって、
ステップ1:多層薄壁流線型バルブハウジングの中軸、シュラウド、中間ハウジング、排出ノズルに対して集積化設計を行い、多層薄壁流線型バルブハウジングの内部構造に対して最適化設計を行い、多層薄壁流線型バルブハウジング中のシュラウドの肉厚Sを計算し、
ステップ2:多層薄壁流線型バルブハウジング成形過程中の収縮量εを計算し、収縮量εに対して寸法補正設定を行い、
ステップ3:多層薄壁流線型バルブハウジングの成形方向を確定し、成形方向に応じて多層薄壁流線型バルブハウジングに対して形状補正を行い、バルブハウジング付加製造成形三次元モデルを取得し、
ステップ4:バルブハウジング付加製造成形三次元モデルに対してスライス処理を行い、各スライス層を取得し、各スライス層をTi-6Al-4Vチタン合金材料SLM成形プロセスパラメータ及びスキャン方法に入れ、各スライス層のレーザースキャン経路データを取得し、
ステップ5:不活性ガス環境で多層薄壁流線型バルブハウジングの全体成形を行い、成形後に多層薄壁流線型バルブハウジングに対して粉体除去を行い、応力解消熱処理を行った後、補助支持を解除する製造方法。
【0008】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、前記ステップ1において、多層薄壁流線型バルブハウジングの構成では、
中軸は鉛直に配置され、中間ハウジングは中空円弧錐状構造であり、中間ハウジングは中軸の中部外壁に外嵌され、開口が下向きであり、シュラウドは中空円弧錐状構造であり、シュラウドは中軸の中部外壁に外嵌され、開口が下向きであり、シュラウドは中間ハウジングの外側に外嵌され、シュラウドの側壁にはバルブ出口が水平に設けられ、シュラウドの側壁には排出ノズル水平に設けられ、排出ノズルはバルブ出口に対向して設けられることを特徴とする。
【0009】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、前記ステップ1において、内部構造の最適化設計では、
多層薄壁流線型バルブハウジングの中軸と排出ノズル内壁上の懸垂面を45°自己支持構造に設計し、シュラウドと中軸の接続箇所での尖角構造をΦ8mmの滑らかで均一な過渡領域となるように設ける。
具体的には、懸垂面とは、部品の成長方向との間に夾角が存在する表面を指し、自己支持構造とは、支持を追加する必要がなく、そのままプリントして成形可能な構造を指す。
【0010】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、前記シュラウドの肉厚Sの計算方法は、下式であり、
【数1】
式中、pは使用圧力であり、
Rは多層薄壁流線型バルブハウジングのシュラウドのキャビティ半径であり、
[σ]は材料許容応力であり、材料SLM成形熱処理状態常温降伏強さ下で、安全係数は2.0-2.6に設定され、
Cは肉厚マージンである。
【0011】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、前記ステップ2において、成形収縮規則により収縮量εを計算し、
【数2】
式中、σは多層薄壁流線型バルブハウジングの冷却後の温度/℃である。
【0012】
前記ステップ3において、多層薄壁流線型バルブハウジングに対して形状補正を行う方法では、
成形方向に平行なバルブ出口端面に対して流路形状補正を行い、具体的には、元のバルブ出口端面の円心o′を軸方向に沿って外へo″まで移し、元のバルブ出口半径R1を半径R2に補正することを実現する。
【0013】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、元の円心o′と形状補正後の円心o″との間の距離は30~40mmであり、R1は200mmm、R2は150~180mmである。
【0014】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、前記ステップ4において、Ti-6Al-4Vチタン合金材料SLM成形プロセスパラメータ及びスキャン方法では、
シュラウド及び中間ハウジング薄壁流線型徴プロセスパラメータにおいて、レーザーパワーは285~320W、スキャン速度は950~1050mm/s、スポット径は0.10~0.11mm、粉体層の厚さは0.03~0.06mmであり、勾配スキャン(gradient scan)方法を採用し、
中軸特徴成形プロセスパラメータにおいて、レーザーパワーは305~330W、スキャン速度は900~1000mm/s、スポット径は0.11~0.13mm、粉体層の厚さは0.04~0.06mmであり、ストリップスキャン(stripe scan)方法を採用する。
【0015】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、前記ステップ5において、前記不活性ガスはアルゴンガスであり、成形過程における雰囲気中の酸素含有量は100ppm未満である。
【0016】
前記の多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、粉体除去の方法では、
0.6MPa~0.8MPaの圧縮空気を用いてSLM成形された多層薄壁流線型バルブハウジング内のルース粉末(loose powder)及び表面に浮いた粉末を除去し、
応力解消熱処理の方法では、
真空、720℃~770℃で1hアニーリングし、アルゴンガスの環境下で冷却する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。
(1)本発明では、付加製造の考えに基づいて部品を適応的に修正することにより、バルブハウジングの一体化成形構造が得られ、従来技術において複数の部品を組み立てる際に存在する組立位置決め冗長構造及び溶接継目が回避され、従来の複雑な構造が簡素化され、信頼性が向上し、多層薄壁流線型バルブハウジングの部品の数は10個から1つに減少し、重量は20%以上減少する。
(2)本発明で提出される多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法では、各性能はいずれも設計技術の要求を満たすことができ、現在の分割加工方法と比較して、合格率は30%未満から95%以上まで向上し、製造周期は180日から25日まで減少する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の多層薄壁流線型構造バルブハウジングの外部構造模式図である。
図2】本発明の多層薄壁流線型構造バルブハウジングの断面模式図である。
図3】本発明のバルブ出口端面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0020】
本発明は、多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法を開示する。低温、高圧、大流量環境に適用される多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法は、付加製造技術及びバルブ構造特徴に応じてバルブハウジングの一体化成形構造を設計することにより、従来技術において複数の部品を組み立てる際に存在する組立位置決め冗長構造及び溶接継目が回避され、多層薄壁流線型バルブハウジングの部分の数が減少し、部品全体の重量が減少する。また、適切な付加成形方向を選択し、提取中軸、シュラウド、外殻体などの特徴的構造を抽出し、異なるプロセスパラメータ、スキャン方法、形状/サイズ補正設定を行う。ここで、シュラウド及び中間ハウジング薄壁流線型構造は、「勾配スキャン」方法により成形されることによって、三次元複雑曲面構造の表面成形の品質が保証される。中軸は、高出力レーザー、低スキャン速度の成形パラメータ及びストリップスキャン方法により、分布が均一で緻密なマルテンサイトラス組織が得られ、中軸部位の高強度及び高靭性が保証される。また、スライスソフトにより各スライス層のレーザースキャン経路データが得られ、スキャン経路データに従って選択的レーザ溶融法により成形する。
【0021】
多層薄壁流線型構造バルブハウジング全体の製造方法は、具体的には、以下のステップを含む。
【0022】
ステップ1:多層薄壁流線型バルブハウジングの中軸、シュラウド、中間ハウジング、排出ノズルを一体成形設計し、多層薄壁流線型バルブハウジングの内部構造を最適化設計し、多層薄壁流線型バルブハウジングにおけるシュラウドの肉厚Sを計算する。図1及び図2に示すように、多層薄壁流線型バルブハウジングの構成は、以下の通りである。
中軸は、鉛直に配置され、中間ハウジングは、中空円弧錐状構造であり、中間ハウジングは、中軸の中部外壁に外嵌され、開口が下向きである。シュラウドは、中空円弧錐状構造であり、シュラウドは、中軸の中部外壁に外嵌され、開口が下向きである。シュラウドは、中間ハウジングの外側に外嵌される。シュラウドの側壁には、バルブ出口が水平に設けられる。シュラウドの側壁には、排出ノズルが水平に設けられる。排出ノズルはバルブ出口に対向して設けられる。
【0023】
内部構造の最適化設計は、以下の通りである。
多層薄壁流線型バルブハウジングの中軸と排出ノズル内壁上の懸垂面を45°自己支持構造に設計する。シュラウドと中軸の接続箇所での尖角構造をΦ8mmの滑らかで均一な過渡領域となるように設ける。
【0024】
シュラウド肉厚Sの計算方法は以下の通りである。
【数3】
式中、pは使用圧力であり、
Rは多層薄壁流線型バルブハウジングにおけるシュラウドのキャビティ半径であり、
[σ]は材料の許容応力であり、材料SLM成形熱処理状態常温降伏強さ下での安全係数は2.0-2.6に設定され、
Cは肉厚マージンである。
【0025】
多層薄壁流線型バルブハウジングに対して機能構造一体化の革新的設計を行う際に、まず中軸、シュラウド、中間ハウジング、排出ノズルなどの部品の特徴的構造を集積最適化することで、集積構造の多層薄壁流線型バルブハウジングが得られる。これによって、従来技術において複数の部品を組み立てる際に存在する組立位置決め冗長構造及び溶接継目が解消される。それをもとに、バルブハウジング内部の特徴的構造を付加製造により適応的に修正し、バルブハウジングの中軸、排出ノズル内壁などに存在する大量の懸垂面を45°自己支持構造に設計し、付加製造の最適化成形限界に基づいてシュラウドと中軸の接続箇所での尖角構造をΦ8mmの滑らかで均一な過渡領域となるように設けることにより、残留応力の集中による品質に潜む危険が減少する。
【0026】
多層薄壁流線型バルブハウジングの機能構造一体化の革新的な設計が完成した後、多層薄壁流線型バルブハウジングの肉厚及び流動抵抗、流速を計算検証する。在ターボ酸素ポンプシステムの出口酸化剤流速及び定格流量下で設計し、fluent流体計算ソフトウェアにより集積最適化設計されたバルブハウジング流動抵抗、流速に対してシミュレーション計算分析を行い、流動抵抗、流速がシステムの設計要求を満たすか否かを検証する。集積最適化設計された多層薄壁流線型バルブハウジングを球状として近似し、下式に従ってハウジングの肉厚を計算した結果、従来のキャスティング方法よりも多層薄壁流線型バルブハウジングの重量が20%以上軽くなる。
【0027】
ステップ2:多層薄壁流線型バルブハウジングの成形過程における収縮量εを計算し、収縮量εを寸法補正設定する。成形収縮規則に従って収縮量εを計算する。
【数4】
式中、σは多層薄壁流線型バルブハウジングが冷却した後の温度/℃である。
【0028】
ステップ3:多層薄壁流線型バルブハウジングの成形方向を確定し、成形方向に応じて多層薄壁流線型バルブハウジングに対して形状補正を行い、最終的なバルブハウジング付加製造成形三次元モデルを得る。多層薄壁流線型バルブハウジングを形状補正する方法は以下の通りである。
【0029】
図3に示すように、成形方向に平行なバルブ出口端面に対して流路形状補正を行う。具体的には、元のバルブ出口端面の円心o′を軸方向に沿って外へo″まで移すことにより、元のバルブ出口半径R1を半径R2まで補正する。o′o″の距離は30~40mmである。R1は200mm、R2は150~180mmである。
【0030】
ステップ4:バルブハウジング付加製造成形三次元モデルをスライス処理し、各スライス層を得る。各スライス層をTi-6Al-4Vチタン合金材料SLM成形プロセスパラメータ及びスキャン方法に入れ、各スライス層のレーザースキャン経路データを取得する。Ti-6Al-4Vチタン合金材料SLM成形プロセスパラメータ及びスキャン方法は、以下のことを含む。
シュラウド及び中間ハウジング薄壁流線型特徴成形プロセスパラメータにおいて、レーザーパワーは285~320W、スキャン速度は950~1050mm/s、スポット径は0.10~0.11mm、粉体層の厚さは0.03~0.06mmであり、勾配スキャン方法を採用する。
中軸特徴成形プロセスパラメータにおいて、レーザーパワーは305~330W、スキャン速度900~1000mm/s、スポット径は0.11~0.13mm、粉体層の厚さは0.04~0.06mmであり、ストリップスキャン方法を採用する。これによって、均一に分布した緻密なマルテンサイトラス組織が得られ、中軸部位の高強度及び高靭性が保証される。
【0031】
ステップ5:不活性ガス環境で多層薄壁流線型バルブハウジングの全体成形を行い、成形後に多層薄壁流線型バルブハウジングに対して粉体除去を行い、応力解消熱処理を行った後、補助支持を解除する。
【0032】
前記不活性ガスはアルゴンガスであり、成形過程における雰囲気中の酸素含有量は100ppm未満である。
【0033】
粉体除去の方法は以下の通りである。
0.6~0.8MPaの圧縮空気を用いてSLM成形された多層薄壁流線型バルブハウジング内のルース粉末及び表面に浮いた粉末を除去する。
【0034】
応力解消熱処理の方法は以下の通りである。
真空、720℃~770℃で1hアニーリングし、アルゴンガス環境下で冷却する。
【0035】
実施例
【0036】
ある型番の航空液体ロケットエンジンの主要なコアコンポーネントである液体酸素メインバルブのハウジングに対して機能構造一体化の革新的設計を行う。まず、中軸、シュラウド、中間ハウジング、排出ノズルなどの特徴的構造を集積最適化し、集積構造の液体酸素メインバルブハウジングを得る。さらに液体酸素メインバルブ内部の特徴的構造に対して付加製造のために適応的修正を行い、バルブハウジングの中軸、排出ノズルの内壁を45°自己支持構造に設計し、シュラウドと中軸の接続箇所での尖角構造をΦ8mmの滑らかで均一な過渡領域となるように設ける。
【0037】
液体酸素メインバルブハウジングの機能構造一体化の革新的設計が完成した後、ハウジングの肉厚、流動抵抗、流速を計算検証し、ターボ酸素ポンプシステム出口の酸化剤流速および定格流量下で設計し、fluent流体計算ソフトウェアにより集積最適化設計された液体酸素メインバルブハウジングの流動抵抗、流速に対してシミュレーション計算分析を行い、流動抵抗、流速がシステムの設計要求を満たすか否かを確認する。集積最適化設計された液体酸素メインバルブハウジングを球状として近似し、下式により計算してハウジング中のシュラウドの肉厚を得る。
【数5】
式中、Sはハウジング中のシュラウドの肉厚/mmであり、pは使用圧力/MPaであり、Rは多層薄壁流線型バルブハウジング中のシュラウドのキャビティ半径/mmであり、[σ]は材料許容応力である。材料SLM成形熱処理状態常温降伏強さ下で、安全係数は2.0-2.6に設定され、Cは肉厚マージン/mmである。
【0038】
得られた液体酸素メインバルブハウジング製品三次元モデルの全体に対して寸法補正設定を行い、成形過程中の収縮規則
【数6】
に従って収縮量εを計算する。液体酸素メインバルブハウジングが冷却した後の温度σは43.2℃であり、収縮量は約0.57%である。さらに成形方向に平行なバルブ出口端面に対して流路形状補正設定を行う、ここで、バルブ出口半径R1は230mmである。R2は補正形状半径170mmである。o′o″はバルブ出口断面円心と形状補正断面円心との距離32mmである。Θは形状補正断面の円心角86°である。成形後のバルブ出口形状の偏差は0.2%以内に制御されることが保証される。
【0039】
液体酸素メインバルブハウジング付加製造成形三次元モデルをスライス処理し、専用高強度ステンレス鋼材料SLM成形パラメータを代入する。ここで、シュラウド及び中間ハウジング薄壁流線型特徴プロセスパラメータは、レーザーパワー3050W、スキャン速度1000mm/s、スポット径0.10mm、粉体層厚さ0.04mmであり、「勾配スキャン」方法により成形する。中軸特徴プロセスパラメータは、レーザーパワー320W、スキャン速度950mm/s、スポット径0.12mm、粉体層厚さ0.04mmであり、「ストリップスキャン」方法により成形する。
【0040】
液体酸素メインバルブ成形過程において、雰囲気中の酸素含有量は100ppm未満であると要求され、設備の粉体収容タンク内の粉末量は、部品全体を1回で完全に加工するのに十分である。0.6MPa~0.8MPaの圧縮空気によりSLM成形された液体酸素メインバルブハウジング内のルース粉末及び表面に浮いた粉末を除去する。製品応力解消熱処理では、真空、765℃で1hアニーリングし、アルゴンガスを充填して冷却する。ワイヤカットにより成形構造とベースの接続箇所を切断する。ワイヤカットは、高速往復ワイヤ放電加工機ワイヤカットを採用し、パルス幅は28~48μsに設定され、パルス間隔は112~170μsであり、波形は矩形パルスである。
【0041】
以上、本発明を好ましい実施例により開示したが、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示した方法及び技術的内容を使用して本発明を変更及び修正することができる。したがって、本発明の内容から逸脱しない限り、本発明の技術的本質に従って上記の実施例に対して行われる任意の修正、同等変更及び修飾は、全て本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3