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特許7506776重水素置換されたホウ素化合物の新規な製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】重水素置換されたホウ素化合物の新規な製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240619BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C07F5/02 A
C07F7/10 S
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023008928
(22)【出願日】2023-01-24
(65)【公開番号】P2023110888
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0013428
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】シン,ボン-キ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ソン-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジュン-ヨン
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-022733(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016465(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0048513(US,A1)
【文献】特開2019-156822(JP,A)
【文献】HU, G. Q. et al.,“Synthesis of Multideuterated (Hetero)aryl Bromides by Ag(I)-Catalyzed H/D Exchange”,Organic Letters,2021年02月15日,Vol. 23, No. 5,pp. 1554-1560,DOI: 10.1021/acs.orglett.0c04139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/00
C07F 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記[中間体A-1]で表される化合物の重水素化反応を介して、下記[中間体A-2]で表される化合物を製造する段階と、
b)前記[中間体A-2]で表される化合物を反応物として用いて、下記[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物を製造する段階であって、下記[反応式A-2]に従って、前記[中間体A-2]から[中間体A-2]内のX 1 が離脱し、Zが結合する反応によって[中間体A-2-1]を生成する段階を含む段階と、を含む、多環式化合物の製造方法。
【化1】
(前記[中間体A-1]及び[中間体A-2]において、
前記X1は、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
前記Y3は、O又はSであり
記A1は、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であり、
前記[中間体A-2]において、前記A1環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換され、
前記H/Dは、水素又は重水素が炭素原子に結合することを意味する。)
【化2】
(前記[中間体A-2]及び[中間体A-2-1]において、
前記X 1 は、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
前記Zは、[中間体A-2]内のX 1 の代わりに置換される置換基であって、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であり、
前記A 1 環及びY 3 は、それぞれ先に定義したのと同一であり、
前記A 1 環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換される。)
【化3】
(前記[化学式A]及び[化学式B]において、
前記A1は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であり、前記A1環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換され、
前記A2及びA3は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の炭素数8~50の、脂肪族炭化水素環が縮合した芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環、及び置換もしくは無置換の炭素数4~50の脂肪族炭化水素環が縮合した芳香族複素環の中から選択されるいずれか1つであり、
前記Xは、Bであり、
前記Zは、[中間体A-2]内のX1の代わりに置換される置換基であって、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であり、
前記Y1 又はY 2 は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、N-R1、CR23、O、S、及びSiR45の中から選択されるいずれか1種であり、
前記Y 3 は、O又はSであり、
前記置換基R1~R5は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つであり、
前記R2及びR3、R4及びR5は、それぞれ互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y1中の置換基R1~R5は、前記A3環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y2中の置換基R1~R5は、前記A2環又はA3環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ
こで、前記[中間体A-1]、[中間体A-2]、[中間体A-2-1]、[化学式A]及び[化学式B]中の前記「置換もしくは無置換」における「置換」は、重水素、シアノ基、ハロゲン基、炭素数1~24のアルキル基、重水素置換された炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換された炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、重水素置換された炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換された炭素数7~24のアリールアルキル基、炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換された炭素数7~24のアルキルアリール基、炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシロアルキル基、重水素置換された炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数8~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換された炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換された炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、炭素数1~24のアミン基、重水素置換された炭素数1~24のアミン基、炭素数1~24のシリル基、重水素置換された炭素数1~24のシリル基よりなる群から選択された少なくとも1つの置換基で置換されることを意味する。)
【請求項2】
a)下記[中間体A-3]で表される化合物の重水素化反応を介して、下記[中間体A-4]で表される化合物を製造する段階と、
b)前記[中間体A-4]で表される化合物を反応物として用いて、下記[化学式A-1]又は[化学式B-1]で表される化合物を製造する段階であって、下記[反応式A-4]に従って、前記[中間体A-4]から[中間体A-4]内の置換基R 11 ~R 14 の中から選択される1つのハロゲン元素が離脱し、Zが結合する反応によって[中間体A-4-1]を生成する段階を含む段階と、を含む、請求項1に記載の多環式化合物の製造方法。
【化4】
(前記[中間体A-3]及び[中間体A-4]において、
前記置換基R11~R14は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基よりなる群から選択されるいずれか1つであり、前記置換基R11~R14のうちの1つは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
前記Y3は、それぞれ請求項1で定義されたのと同一であり、
前記[中間体A-4]において、
前記置換基R11~R14中の、ハロゲン元素ではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素であり、
前記H/Dは、水素又は重水素が炭素原子に結合することを意味する。)
【化5】
(前記[中間体A-4]及び[中間体A-4-1]において、
前記R 11 ~R 14 及びY 3 は、それぞれ前記[中間体A-3]及び[中間体A-4]で定義したのと同一であり、
前記[中間体A-4]において、
前記置換基R 11 ~R 14 のうちの1つは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
また、前記置換基R 11 ~R 14 中の、ハロゲン元素ではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素であり、
前記[中間体A-4-1]において、
前記Zは、[中間体A-4]内のR 11 ~R 14 の中から選択される1つのハロゲン元素の代わりに置換される置換基であって、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であり、
前記置換基R 11 ~R 14 のうちの1つは、Zであり、
また、前記置換基R 11 ~R 14 中の、Zではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素である。)
【化6】
(前記[化学式A-1]及び[化学式B-1]において、
前記置換基R11~R14は、それぞれ前記[中間体A-3]及び[中間体A-4]で定義したのと同一であり
前記Zは、[中間体A-4]内のR11~R14の中から選択される1つのハロゲン元素の代わりに置換される置換基であって、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であり、
前記置換基R11~R14のうちの1つは、Zであり、
また、前記置換基R11~R14中の、Zではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素であり、
前記A2環、A3環、X、Y1~Y3は、それぞれ請求項1で定義されたのと同一である。)
【請求項3】
前記[化学式A]及び[化学式B]における前記A1環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子は、全て重水素で置換されたことを特徴とする、請求項1に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項4】
前記[化学式A-1]及び[化学式B-1]における置換基R11~R14中の、Zではない3つの置換基の全てが重水素であることを特徴とする、請求項2に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項5】
前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]における置換基Zは、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項6】
前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]における置換基Y1及びY2のうちの少なくとも1つがNR1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項7】
前記置換基R1は、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基であることを特徴とする、請求項に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項8】
前記[化学式A]及び[化学式B]における連結基Y1及びY2のうちの少なくとも1つは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ下記[構造式A]で表される連結基であることを特徴とする、請求項に記載の多環式化合物の製造方法。
【化7】
(前記[構造式A]において、「-*」は、前記Y1に連結された二重結合内の炭素原子、A2環における芳香族炭素原子、又はA3環における芳香族炭素原子とそれぞれ結合するための結合部位を意味し、
前記[構造式A]において、前記R41~R45は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、重水素、シアノ基、ハロゲン基、炭素数1~24のアルキル基、重水素置換された炭素数1~24のアルキル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換された炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、重水素置換された炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換された炭素数7~24のアリールアルキル基、炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換された炭素数7~24のアルキルアリール基、炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換された炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数8~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換された炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換された炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数1~24のアミン基、重水素置換された炭素数1~24のアミン基、炭素数1~24のシリル基、重水素置換された炭素数1~24のシリル基の中から選ばれるいずれか1つであり、
前記R41及びR45は、それぞれ前記A1環、A2環又はA3環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。)
【請求項9】
前記[化学式A]及び[化学式B]における連結基Y1が酸素(O)又は硫黄(S)元素であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項10】
前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]における前記A2環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換されるか、或いは、
3環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項11】
前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]におけるA3環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子は、全て重水素で置換されたことを特徴とする、請求項10に記載の多環式化合物の製造方法。
【請求項12】
前記[化学式A]及び[化学式B]における前記A1~A3のうちの少なくとも1つは、炭素数6~50の芳香族炭化水素環又は炭素数2~50の芳香族複素環内に、下記構造式Fで表されるアリールアミノ基が結合したことを特徴とする、請求項1に記載の多環式化合物の製造方法。
【化8】
(前記[構造式F]において、「-*」は、A1~A3のうちの少なくとも1つの環の芳香族炭素と結合するための結合部位を意味し、
前記Ar11及びAr12は、同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリール基であり、これらは互いに連結されて環を形成することができる。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重水素置換されたホウ素化合物の新規な製造方法に関し、より詳細には、芳香族複素環を含むホウ素化合物中の芳香族複素環の炭素原子のうちの少なくとも1つが重水素で置換されたホウ素化合物の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(organic light emitting diode)は、自発光型素子であって、視野角が広く、コントラストに優れるだけでなく、応答時間が速く、多色化が可能であり、輝度、駆動電圧及び応答速度特性にも優れるという利点を持っている。
【0003】
一般な有機発光素子は、光を発光する有機発光層と、有機発光層を挟んで互いに対向する陽極(アノード)と陰極(カソード)と、を含んでいる。
【0004】
より具体的には、前記有機発光素子は、前記陽極の上部に正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極が順次形成されている構造を持つことができる。ここで、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層は、有機化合物からなる有機薄膜である。
【0005】
上述した構造を持つ有機発光素子の駆動原理は、次の通りである。前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加すると、陽極から注入された正孔は、正孔輸送層を経由して発光層へ移動し、陰極から注入された電子は、電子輸送層を経由して発光層へ移動する。前記正孔及び電子などのキャリアは、発光層領域で再結合して励起子(exciton)を生成する。この励起子が励起状態から基底状態に変わりながら光が生成される。
【0006】
一方、有機発光素子において有機物層として使用される材料は、機能によって、発光材料と電荷輸送材料、例えば、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料などに分類され得る。前記発光材料は、発光メカニズムによって、電子の一重項励起状態に由来する蛍光材料と電子の三重項励起状態に由来する燐光材料に分類され得る。
【0007】
また、発光材料として1つの物質のみを使用する場合、分子間の相互作用によって最大発光波長が長波長に移動し、色純度が低下し、発光減衰効果により素子の効率が減少するなどの問題が発生するので、色純度の増加とエネルギー転移による発光効率を増加させるために、発光材料としてホスト-ドーパントシステムを使用することができる。その原理は、発光層を形成するホストよりもエネルギー帯域間隙が小さいドーパントを発光層に少量混合すると、発光層から発生した励起子がドーパントに輸送されて効率の高い光を出すことである。このとき、ホストの波長がドーパントの波長帯に移動するので、用いるドーパントの種類に応じて所望の波長の光を得ることができる。
【0008】
一方、有機発光素子の長寿命及び安定性を改善するために、重水素で置換された化合物を発光層などの材料として導入する研究が試みられている。
【0009】
一般に、重水素で置換された化合物は、水素に結合した化合物と比較して熱力学的挙動において差を示すことが知られているが、重水素の原子質量が水素よりも2倍大きいため、さらに低い零点エネルギーレベル及びさらに低い振動エネルギーレベルをもたらすおそれがある。
【0010】
また、重水素に関連する化学結合長などの物理化学的特性は、水素とは異なって現れる。特に、C-H結合に比べてC-D結合の伸び振幅がさらに小さいため、重水素のファンデルワールス半径は水素よりも小さく、一般にC-D結合がC-H結合よりもさらに短く且つさらに強いことを示すことができ、重水素で置換された場合には、基底状態のエネルギーが低くなり、重水素、炭素の結合長が短くなるにつれて、分子中心体積(Molecular hardcore volume)が減少し、これにより電気的極性化度(Electrical polarizability)を低減することができ、分子間相互作用(Intermolecular interaction)を弱めることにより、薄膜体積を増加させることができることが知られている。
【0011】
このような特性は、薄膜の結晶化度を下げる効果、すなわち、非晶質(Amorphous)状態を作ることができ、一般にOLED寿命及び駆動特性を高めるために効果的であり、耐熱性をより向上させることができる。
【0012】
一方、最近、発光層中のドーパント化合物としてホウ素化合物について多くの研究が行われており、これに関連する従来技術として、韓国登録特許公報第10-2148296号(2020年8月26日)では、少なくとも1つの5員環を含む縮合多環を有し、中心原子としてホウ素原子が複数の芳香族環と結合した形態の縮合多環芳香族化合物が発光層中のドーパントとして使用される有機発光素子について開示しているが、これは、前記縮合多環の特定の環部分に重水素を導入する反応については具体的に明示していない。
【0013】
したがって、前記先行文献を含む従来技術における長寿命特性のドーパント化合物を製造するための様々な種類の方法が試みられたにも拘らず、縮合多環の特定の環部分に重水素を導入することにより、重水素が導入された化合物を製造する新規な方法に対する開発の必要性は持続的に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国登録特許第10-2148296号(2020年8月26日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題は、有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)の発光層に使用可能なドーパント用ホウ素化合物の新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の技術的課題を達成するために、a)下記[中間体A-1]で表される化合物の重水素化反応を介して、下記[中間体A-2]で表される化合物を製造する段階と、b)前記[中間体A-2]で表される化合物を反応物として用いて、下記[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物を製造する段階と、を含む、多環式化合物の製造方法を提供する。
【0017】
【0018】
前記[中間体A-1]及び[中間体A-2]において、
前記Xは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
前記Yは、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、
前記置換基R~Rは、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、下記[化学式A]及び[化学式B]で定義したのと同一であり、
前記Aは、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であり、
前記[中間体A-2]において、前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換され、
前記H/Dは、水素又は重水素が炭素原子に結合することを意味する。
【0019】
【0020】
前記[化学式A]及び[化学式B]において、
前記Aは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であるが、前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換され、
前記A及びAは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の炭素数8~50の、脂肪族炭化水素環が縮合した芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環、及び置換もしくは無置換の炭素数4~50の脂肪族炭化水素環が縮合した芳香族複素環の中から選択されるいずれか1つであり、
前記Xは、B、P、P=O、P=Sの中から選択されるいずれか1つであり、
前記Zは、[中間体A-2]内のXの代わりに置換される置換基であって、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であり、
前記Y~Yそれぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、
前記置換基R~Rは、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つであり、
前記R及びR、R及びRは、それぞれ互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y中の置換基R~Rは、前記A環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y中の置換基R~Rは、前記A環又はA環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y中の置換基R~Rは、前記A環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記[化学式B]において、
前記Y中の置換基R~Rは、Y中の置換基R~Rとそれぞれ互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
ここで、前記[中間体A-1]、[中間体A-2]、[化学式A]及び[化学式B]中の前記「置換もしくは無置換」における「置換」は、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~24のアルキル基、重水素置換された炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換された炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数1~24のヘテロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、重水素置換された炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換された炭素数7~24のアリールアルキル基、炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換された炭素数7~24のアルキルアリール基、炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシロアルキル基、重水素置換された炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換された炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換された炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、炭素数8~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換された炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換された炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、炭素数1~24のアミン基、重水素置換された炭素数1~24のアミン基、炭素数1~24のシリル基、重水素置換された炭素数1~24のシリル基、炭素数1~24のゲルマニウム基、重水素置換された炭素数1~24のゲルマニウム基、炭素数6~24のアリールオキシ基、重水素置換された炭素数6~24のアリールオキシ基、炭素数6~24のアリールチオニル基、重水素置換された炭素数6~24のアリールチオニル基よりなる群から選択された1つ以上の置換基で置換されることを意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による多環式化合物の製造方法は、従来技術による多環中の重水素の導入のための多段階工程を脱皮して、ハロゲン化アリール又はハロゲン化ヘテロアリールの重水素化反応によって製造された、重水素置換されたハロゲン化アリール又は重水素置換されたハロゲン化ヘテロアリールを中間段階の化合物として用いて、ホウ素ドーパント化合物に重水素を導入することにより、重水素置換されたホウ素ドーパント化合物を高い収率で生産することができ、工程の容易さ及び経済性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる好適な実施例を詳細に説明する。
【0023】
本発明の各図面において、構造物のサイズ又は寸法は、本発明の明確性を期するために実際よりも拡大又は縮小して示したものであり、特徴的構成が現れるように公知の構成は省略して図示したので、図面に限定されない。本発明の好適な実施例に対する原理を詳細に説明するにあたり、関連する公知の機能又は構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。
【0024】
また、図示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意に示したので、本発明は、必ずしも図示に限定されず、また、図面において複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。そして、図面において、説明の便宜のために、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」あるとするとき、これは他の部分の「すぐ上に」ある場合だけでなく、それらの間に別の部分がある場合も含む。
【0025】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、明細書全体において、「~の上に」とは、対象部分の上又は下に位置することを意味するものであり、必ずしも、重力方向を基準として上側に位置することを意味するものではない。
【0026】
本発明は、有機発光素子の長寿命特性を改善するために、有機発光素子内の発光層中にドーパントとして使用可能な多環のホウ素化合物の新規な製造方法に関するものであって、ハロゲン化アリール又はハロゲン化ヘテロアリールの重水素化反応によって製造された、重水素置換されたハロゲン化アリール又は重水素置換されたハロゲン化ヘテロアリールを中間段階の化合物として用いて、最終生成物である多環式化合物の最終合成収率を高め、最終的に合成されるホウ素ドーパント化合物の製造に必要な全反応工程をより簡素化し、高い収率のため量産に適した多環式化合物の新規な製造方法を提供する。
【0027】
これをより詳細に説明すると、本発明は、(a)下記[中間体A-1]で表される化合物の重水素化反応によって、下記[中間体A-2]で表される化合物を製造する段階と、(b)前記[中間体A-2]で表される化合物を反応物として用いて、下記[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物を製造する段階と、を含む、多環式化合物の製造方法を提供する。
【0028】
【0029】
前記[中間体A-1]及び[中間体A-2]において、
前記Xは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
前記Yは、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、
前記置換基R~Rは、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、下記[化学式A]及び[化学式B]で定義したのと同一であり、
前記Aは、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であり、
前記[中間体A-2]において、前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換され、
前記H/Dは、水素又は重水素が炭素原子に結合することを意味する。
【0030】
【0031】
前記[化学式A]及び[化学式B]において、
前記Aは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であるが、前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換され、
前記A及びAは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の炭素数8~50の、脂肪族炭化水素環が縮合した芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環、及び置換もしくは無置換の炭素数4~50の脂肪族炭化水素環が縮合した芳香族複素環の中から選択されるいずれか1つであり、
前記Xは、B、P、P=O、P=Sの中から選択されるいずれか1つであり、
前記Zは、[中間体A-2]内のXの代わりに置換される置換基であって、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であり、
前記Y~Yは、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、
前記置換基R~Rは、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つであり、
前記R及びR、R及びRは、それぞれ互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y中の置換基R~Rは、前記A環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y中の置換基R~Rは、前記A環又はA環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記Y中の置換基R~Rは、前記A環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
前記[化学式B]において、
前記Y中の置換基R~Rは、Y中の置換基R~Rとそれぞれ互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、
ここで、前記[中間体A-1]、[中間体A-2]、[化学式A]及び[化学式B]中の前記「置換もしくは無置換」における「置換」は、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~24のアルキル基、重水素置換された炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換された炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数1~24のヘテロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、重水素置換された炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換された炭素数7~24のアリールアルキル基、炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換された炭素数7~24のアルキルアリール基、炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシロアルキル基、重水素置換された炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換された炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換された炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、炭素数8~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換された炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換された炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、炭素数1~24のアミン基、重水素置換された炭素数1~24のアミン基、炭素数1~24のシリル基、重水素置換された炭素数1~24のシリル基、炭素数1~24のゲルマニウム基、重水素置換された炭素数1~24のゲルマニウム基、炭素数6~24のアリールオキシ基、重水素置換された炭素数6~24のアリールオキシ基、炭素数6~24のアリールチオニル基、重水素置換された炭素数6~24のアリールチオニル基よりなる群から選択された1つ以上の置換基で置換されることを意味する。
【0032】
一方、本発明における前記「置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基」、「置換もしくは無置換の炭素数5~50のアリール基」などにおける前記アルキル基又はアリール基の範囲を考慮すると、前記炭素数1~30のアルキル基及び炭素数5~50のアリール基の炭素数の範囲は、それぞれ、前記置換基が置換された部分を考慮せずに、無置換のものと見做したときのアルキル部分又はアリール部分を構成する全炭素数を意味する。例えば、パラ位にブチル基が置換されたフェニル基は、炭素数4のブチル基で置換された炭素数6のアリール基に該当するものと見做すべきである。
【0033】
本発明の化合物で使用される置換基であるアリール基は、1つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであって、前記アリール基が置換基を持つ場合、隣り合う置換基と互いに融合(fused)して環をさらに形成することができる。
【0034】
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、o-テルフェニル基、m-テルフェニル基、p-テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロナフチル基、ペリレニル基、クリセニル基、ナフサセニル、フルオランテニル基などの芳香族基を挙げることができ、前記アリール基中の1つ以上の水素原子は、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、アミノ基(-NH、-NH(R)、-N(R’)(R’’)、R’及びR’’は、互いに独立して炭素数1~10のアルキル基であり、この場合、「アルキルアミノ基」という。)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、炭素数1~24のアルキニル基、炭素数1~24のヘテロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数6~24のアリールアルキル基、炭素数2~24のヘテロアリール基、又は炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基で置換できる。
【0035】
本発明の化合物で使用される置換基であるヘテロアリール基は、N、O、P、Si、S、Ge、Se、Teの中から選択された1つ、2つ又は3つのヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である炭素数2~24の環芳香族系を意味し、これらの環は、融合(fused)して環を形成することができる。そして、前記ヘテロアリール基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0036】
また、本発明において、前記芳香族複素環は、芳香族炭化水素環において芳香族炭素のうちの1つ以上がヘテロ原子で置換されたものを意味し、前記芳香族複素環は、好ましくは芳香族炭化水素内の芳香族炭素1~3つが、N、O、P、Si、S、Ge、Se、Teの中から選択された1種以上のヘテロ原子で置換できる。
【0037】
本発明で使用される置換基であるアルキル基は、アルカン(alkane)から1つの水素が除去された置換基であって、直鎖状、分枝状を含む構造であり、その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシルなどが挙げられることができ、前記アルキル基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0038】
本発明の化合物で使用される置換基であるシクロアルキル基における「シクロ」は、アルキル基内の飽和炭化水素の単環又は多環を形成することが可能な構造の置換基を意味し、例えば、シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、アダマンチル、ジシクロペンタジエニル、デカヒドロナフチル、ノルボルニル、ボルニル、イソボルニルなどが挙げられ、前記シクロアルキル基の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0039】
また、本発明において、前記ヘテロシクロアルキル基は、シクロアルキル構造をなす置換基の環内炭素のうちの1つ以上がヘテロ原子で置換されたものを意味し、好ましくは、1~3つの炭素がN、O、P、S、Si、Ge、Se、Teの中から選択された1種以上のヘテロ原子で置換できる。
【0040】
本発明の化合物で使用される置換基であるアルコキシ基は、アルキル基又はシクロアルキル基の末端に酸素原子が結合した置換基であって、その具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、iso-アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、アダマンタンオキシ、ジシクロペンタンオキシ、ボルニルオキシ、イソボルニルオキシなどが挙げられることができ、前記アルコキシ基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0041】
本発明の化合物で使用される置換基であるアリールアルキル基の具体例としては、フェニルメチル(ベンジル)、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチルなどが挙げられることができ、前記アリールアルキル基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0042】
また、本発明において、アルケニル(alkenyl)基は、2つの炭素原子によって構成される1つの炭素-炭素二重結合を含むアルキル置換基を意味し、アルキニル(alkynyl)基は、2つの炭素原子によって構成される1つの炭素-炭素三重結合を含むアルキル置換基を意味する。
【0043】
また、本発明で使用されるアルキレン(alkylene)基は、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素であるアルカン(alkane)分子内の2つの水素除去によって誘導された有機ラジカルであり、前記アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、iso-アミレン基、ヘキシレン基などが挙げられ、前記アルキレン基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0044】
また、本発明において、アミン基は、-NH、アルキルアミン基、アリールアミン基、アルキルアリールアミン基、アリールヘテロアリールアミン基、ヘテロアリールアミン基などを含むことができ、アリールアミン基は、NHにおいて、1つ又は2つの水素がアリール基で置換されたアミンを意味するものであり、アルキルアミン基は、-NHにおいて、1つ又は2つの水素がアルキルで置換されたアミンを意味するものであり、アルキルアリールアミン基は、-NHにおいて、1つの水素がアルキル基で置換され、もう1つの水素はアリール基で置換されたアミンを意味するものであり、アリールヘテロアリールアミン基は、-NHにおいて、1つの水素がアリール基で置換され、もう1つの水素はヘテロアリール基で置換されたアミンを意味するものであり、ヘテロアリールアミン基は、-NHにおいて、1つ又は2つの水素がヘテロアリール基で置換されたアミンを意味するものであって、前記アリールアミン基の例としては、置換もしくは無置換のモノアリールアミン基、置換もしくは無置換のジアリールアミン基があり、前記アルキルアミン基及びヘテロアリールアミン基も同様に該当する。
【0045】
ここで、前記アリールアミン基、ヘテロアリールアミン基及びアリールヘテロアリールアミン基におけるそれぞれのアリール基は、単環式アリール基又は多環式アリール基であってもよく、前記アリールアミン基、ヘテロアリールアミン基及びアリールヘテロアリールアミン基におけるそれぞれのヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基又は多環式ヘテロアリール基であってもよい。
【0046】
本発明の化合物で用いられる置換基であるシリル基は、-SiH、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルアリールシリル基、アリールヘテロアリールシリル基、ヘテロアリールシリル基などを含むことができ、アリールシリル基は、-SiHにおいて、1つ又は2つ又は3つの水素がアリール基で置換されたシリル基を意味するものであり、アルキルシリル基は、SiHにおいて、1つ又は2つ又は3つの水素がアルキルで置換されたシリルを意味するものであり、アルキルアリールシリル基は、-SiHにおいて、それぞれ少なくとも1つの水素がアルキル基及びアリール基で置換されて1つ又は2つのアルキル基とこれに対応する2つ又は1つのアリール基を含むシリル基を意味するものであり、アリールヘテロアリールシリル基は、-SiHにおいて、それぞれ少なくとも1つの水素がアリール基及びヘテロアリール基で置換されて1つ又は2つのアリール基とこれに対応する2つ又は1つのヘテロアリール基を含むシリル基を意味するものであり、ヘテロアリールシリル基は、-SiHにおいて、1つ又は2つ又は3つの水素がヘテロアリール基で置換されたシリル基を意味するものであって、前記アリールシリル基の例としては、置換もしくは無置換のモノアリールシリル基、置換もしくは無置換のジアリールシリル基又は置換もしくは無置換のトリアリールシリル基があり、前記アルキルシリル基及びヘテロアリールシリル基も同様に該当する。
【0047】
ここで、前記アリールシリル基、ヘテロアリールシリル基及びアリールヘテロアリールシリル基におけるそれぞれのアリール基は、単環式アリール基又は多環式アリール基であってもよく、前記アリールシリル基、ヘテロアリールシリル基及びアリールヘテロアリールシリル基におけるそれぞれのヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基又は多環式ヘテロアリール基であってもよい。
【0048】
また、前記シリル基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、トリメトキシシリル、ジメトキシフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジフェニルビニルシリル、メチルシクロブチルシリル、ジメチルフリルシリルなどが挙げられることができ、前記シリル基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0049】
また、本発明において、ゲルマニウム(又はゲルミル、germyl)基)は、-GeH、アルキルゲルマニウム基、アリールゲルマニウム基、ヘテロアリールゲルマニウム基、アルキルアリールゲルマニウム基、アルキルヘテロアリールゲルマニウム基、アリールヘテロアリールゲルマニウム基などを含むことができ、これらの定義は、前記シリル基で説明したところによるが、前記シリル基内のシリコン原子(Si)の代わりにゲルマニウム原子(Ge)が置換されることにより得られる置換基であって、それぞれの置換基に適用可能である。
【0050】
また、前記ゲルマニウム基の具体例としては、トリメチルゲルマン、トリエチルゲルマン、トリフェニルゲルマン、トリメトキシゲルマン、ジメトキシフェニルゲルマン、ジフェニルメチルゲルマン、ジフェニルビニルゲルマン、メチルシクロブチルゲルマン、ジメチルフリルゲルマンなどが挙げられることができ、前記ゲルマニウム基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0051】
一方、前記[中間体A-1]、[中間体A-2]、[化学式A]及び[化学式B]中の前記「置換もしくは無置換」における「置換」に対するより好ましい例は、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキル基、重水素置換された炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、重水素置換された炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のヘテロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、重水素置換された炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアリールアルキル基、重水素置換された炭素数7~18のアリールアルキル基、炭素数7~18のアルキルアリール基、重水素置換された炭素数7~18のアルキルアリール基、炭素数2~18のヘテロアリール基、重水素置換された炭素数2~18のヘテロアリール基、炭素数2~18のヘテロアリールアルキル基、重水素置換された炭素数2~18のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシロアルキル基、重水素置換された炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換された炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換された炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、炭素数8~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換された炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換された炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、炭素数1~24のアミン基、重水素置換された炭素数1~24のアミン基、炭素数1~24のシリル基、重水素置換された炭素数1~24のシリル基、炭素数1~24のゲルマニウム基、重水素置換された炭素数1~24のゲルマニウム基、炭素数6~18のアリールオキシ基、重水素置換された炭素数6~18のアリールオキシ基、炭素数6~18のアリールチオニル基、重水素置換された炭素数6~18のアリールチオニル基よりなる群から選択された1つ以上の置換基で置換されるものであり得る。
【0052】
一方、本発明において、前記「R及びR、R及びRは、それぞれ互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ」の場合、これは、前記R及びRのそれぞれから1つの水素ラジカルを除去してそれらを連結することによりさらに環を形成することができることを意味し、また、R及びRのそれぞれから1つの水素ラジカルを除去してそれらを連結することによりさらに環を形成することができることを意味する。
【0053】
また、前記「Y中の置換基R~Rは、前記A環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができ、」の場合も、これは、A環中の1つの水素ラジカルを除去し、前記Rから1つの水素ラジカルを除去してそれらを互いに連結することによりさらに環を形成することができることを意味するか、或いは、A環中の1つの水素ラジカルを除去し、前記R又はRから1つの水素ラジカルを除去してそれらを互いに連結することによりさらに環を形成することができることを意味するか、或いは、A環中の1つの水素ラジカルを除去し、前記R又はRから1つの水素ラジカルを除去してそれらを連結することによりさらに環を形成することができることを意味する。これは、後述する本発明の明細書及び請求の範囲内の「~と結合してさらに環を形成」する場合に、環を形成するための2つの置換基からそれぞれ1つの水素ラジカルを除去してそれらを互いに連結することにより環を形成することができることを意味する。
【0054】
本発明において、「Zは、中間体A-2内のXの代わりに置換される置換基であって、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基…」、「Zは、中間体A-4内のR11~R14の中から選択される一つのハロゲン元素の代わりに置換される置換基であって、水素、重水素、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基…」などの表現における、前記「Xの代わりに置換される置換基」及び「R11~R14の中から選択される一つのハロゲン元素の代わりに置換される置換基」の表現は、それぞれ前記「X又はハロゲン元素が結合した芳香族環からXが離脱するか或いはハロゲン元素が離脱し、前記離脱した位置にX又はハロゲン元素の代わりに置換される置換基」を意味する。
【0055】
つまり、「Zは、中間体A-2内のXの代わりに置換される置換基であって、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基」は、「Zは、中間体A-2内のXが結合した芳香族環からXが離脱し、前記離脱した位置にXの代わりに置換される、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基」を意味し、これは、本明細書内の残りの部分における「Zは、中間体A-4内のR11~R14の中から選択される一つのハロゲン元素の代わりに置換される置換基」などの類似表現においても同様に適用できる。
【0056】
また、本発明による前記[中間体A-1]、[中間体A-2]、[化学式A]及び[化学式B]における前記A~Aは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であってもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数6~20の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~20の芳香族複素環であってもよく、さらに好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数6~14の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~14の芳香族複素環であってもよい。
【0057】
本発明の技術的特徴として、前記[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物は、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であるA環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換された構造を特徴とし、このために、前記中間体A-1で表される化合物の単一段階による重水素化反応を介して、中間体A-2で表される化合物を製造し、これを用いて追加の多段階工程を経て、前記[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物を最終的に製造することができる。
【0058】
このような新規ルートによる[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物を製造する方法は、従来の縮合多環式芳香族環に重水素を導入する多段階製造工程に比べて工程時間が短縮され、また、最終段階まで考慮したときの[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物の最終収率を向上させて経済性を向上させ、不要な化学薬品の使用を減らすことができるため、より環境にやさしいという利点を有する。
【0059】
以下では、本発明による前記a)段階及びb)段階についてより詳しく見てみると、本発明による前記(a)段階は、[中間体A-1]で表される化合物の重水素化反応を介して、前記[中間体A-2]で表される化合物を製造する段階に該当し、これを下記の反応式A-1で表した。
【0060】
<反応式A-1>
【0061】
前記反応式A-1における[中間体A-1]及び[中間体A-2]中の前記A環は、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環であり、Xは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素に該当する。
【0062】
通常、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を含んでいる炭化水素の重水素化反応を見ると、下記の反応式1及び反応式2に示すように、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環中の炭素原子にハロゲン元素が置換されない場合には、化合物中の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環中の炭素原子に結合した水素原子の重水素化反応が起こらないが、
【0063】
【0064】
下記反応式3及び反応式4に示すように、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環中の炭素原子にハロゲン元素が置換された場合には、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環中の炭素原子に結合した水素原子の重水素化反応が容易に起こる可能性もあり、これは、主に前記ハロゲン元素を含む環にのみ選択的に重水素化反応が起こるという特徴を持っている。
【0065】
このような反応に対する物理化学的説明としては、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環中のハロゲン元素が炭素原子に結合した水素の酸性度を高めて重水素化反応が促進されるものと推定されている。
【0066】
【0067】
【0068】
したがって、本発明による多環式化合物の製造方法における前記(a)段階は、前述したように、ハロゲン元素が芳香族炭化水素環又は芳香族複素環中の炭素原子に導入された出発物質([中間体A-1])を、重水素化反応を介して、前記ハロゲン元素が芳香族炭化水素環又は芳香族複素環中の炭素原子に導入された環(A環)に重水素を導入することにより、重水素置換された中間体([中間体A-2])を製造し、これを後続反応に用いることを特徴とする。
【0069】
ここで、前記反応式A-1における重水素化反応は、[中間体A-1]を有機溶媒の存在又は不在下で重水素源を混合して0℃~180℃で5分~24時間反応させることにより、容易に前記[中間体A-2]を得ることができる。
【0070】
このとき、使用される重水素源としては、重水(DO)、重水素置換された炭素数1~5のアルコール、重水素置換された炭素数2~7のカルボン酸などが使用でき、好ましくは、重水(DO)が使用できる。
【0071】
また、前記反応式A-1における重水素化反応が有機溶媒の存在下で行われる場合に該当する有機溶媒は、炭素数5~20の脂肪族炭化水素、炭素数6~20の芳香族炭化水素、炭素数3~10のケトン、炭素数1~10のアルコール、炭素数4~10の環状又は非環状エーテルの中から選択される1種又はこれらの混合物が溶媒として使用でき、好ましくは、炭素数6~10の脂肪族炭化水素又は炭素数6~10の芳香族炭化水素が使用でき、例えば、トルエン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。
【0072】
また、前記重水素化反応の活性度を向上させるために、前記反応式A-1では、触媒又は促進剤を選択的に使用することができ、例えば、炭酸銀、ガンマ-アルミナ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、二酸化トリウム、酸化タングステン、1,2,3-トリアゾリデン、パラジウム/カーボン系、プラチニウム/カーボン系、ルテニウム系、ロジウム系、イリジウム系などから選択される1種以上が使用でき、これに限定されるものではない。
【0073】
前記反応式A-1による重水素化反応を介して、[中間体A-1]で表される化合物中のハロゲン元素が置換されたA環は、前記ハロゲン元素によって芳香族環中の炭素原子に結合した水素の酸性度を高めて重水素化反応を促進させることにより、A環中の炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子は、必ず重水素で置換され、この時、前記A環に隣接するYを含む五員環内の二重結合の炭素原子に結合する2つの水素原子は、反応条件又はYの種類によって重水素で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。後述するように、前記五員環中の二重結合に結合する2つの水素原子は、後続工程によって最終的に縮合環化するので、その重水素化の有無はあまり重要ではない。
【0074】
本発明による反応式A-1における重水素化反応による、前記「ハロゲン置換されたA環」中の重水素の導入は、単一段階反応によってハロゲン置換された環内水素を重水素化させることができる方法であって、これを用いずに、従来技術によって前記「A環」-「Yを含む五員環」システム内のA環に重水素を導入するためには、例えば、A環がベンゼン環であり、Yが硫黄である場合に、下記参考反応式C-1に示すように、重水素置換されたブロモベンゼンを出発物質として用いて合計4段階の合成工程を経て、重水素置換された5-ブロモベンゾチオフェンを製造することができ、最終生成物(重水素置換された5-ブロモベンゾチオフェン)の全反応収率は、約27%と低い値を示しているが、本発明では、これを単一段階の反応として90%以上の収率を得ることができる。
【0075】
<参考 反応式C-1.重水素置換された5-ブロモベンゾチオフェンの製造>
【0076】
一方、本発明による前記(b)段階は、前記(a)段階で得た[中間体A-2](A環に重水素置換された縮合化合物)を出発物質として用いて、数段階の後続反応を経て、[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物を製造する。
【0077】
ここで、前記(b)段階は、多段階で行われることができ、合成工程の設計に応じて、様々なルートを経て最終化合物を製造することができる。例えば、化学式Aで表される化合物の最終合成のための主要工程を見ると、下記反応式Bに示すように、(b1反応)重水素置換された[中間体A-2]で表される化合物のカップリング反応でA環からXが離脱し、その位置に置換基Zが置換された化合物(中間体A-2-1)を合成する段階と、(b2反応)Y及びAを含む化合物を準備し、これを中間体A-2-1と反応させて中間体A-2-2を製造する段階と、(b3反応)Y及びAを含む化合物を準備し、これを前記中間体A-2-2と反応させて中間体A-2-3を製造する段階と、(b4反応)前記中間体A-2-3にホウ素を導入する段階と、を含むことができるが、これに限定されない。
【0078】
【0079】
つまり、前記(b2)反応は、中間体A-2-1からA環を含む部分(moiety)との結合のための反応に該当し、前記(b3)反応は、中間体A-2-2からA環を含む部分(moiety)との結合のための反応に該当し、(b4)反応は、最終有機前駆体である中間体A-2-3からホウ素を導入して最終ドーパント化合物を製造するための反応に該当する。
【0080】
ここで、前記(b)段階内の(b1)反応は、下記[反応式A-2]に従い、前記[中間体A-2]から[中間体A-2]内のXが離脱し、Zが結合する反応によって[中間体A-2-1]を生成する段階を含むことができる。
【0081】
[反応式A-2]
【0082】
前記[中間体A-2]及び[中間体A-2-1]において、
前記Xは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
前記Yは、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、
前記置換基R~Rは、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つであり、
前記Zは、[中間体A-2]内のXの代わりに置換される置換基であって、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であり、
前記A環及びYは、それぞれ上記で定義したのと同一であり、
前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは、重水素で置換される。
【0083】
ここで、前記中間体A-2-1で表される化合物を製造するための(b1)反応は、A環に結合するハロゲン元素(X)と置換基Zを含むホウ素化合物のクロスカップリング(Suzuki-Miyaura Cross Coupling)などの反応によってA環に結合したハロゲン元素(X)が離脱し、ホウ素化合物中の置換基ZがA環に結合する反応を利用することができ、これは、ハロゲン化アリールとアリールホウ素化合物を用いてアリール-アリール化合物を製造するための最も一般的な反応に該当する。
【0084】
したがって、前記中間体A-2-1で表される化合物は、(b1)反応を経てA環中のX(ハロゲン)を含まない重水素置換縮合環に該当し、これは、後続反応における出発物質となる。
【0085】
この時、前記中間体A-2で表される化合物と置換基Zを含むホウ素化合物のクロスカップリング反応は、有機溶媒の存在下、パラジウム触媒及び塩基の存在下で行われることができる。
【0086】
このとき、使用される有機溶媒としては、前記反応式A-1で使用された有機溶媒が使用可能であり、また、パラジウム触媒の種類としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)クロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド、パラジウム(II)クロリドダイマー、ビス(アセトニトリル)パラジウムクロリドなどが使用可能であり、塩基としては、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、水酸化バリウム、フッ化セシウム、水酸化バリウム、酢酸カリウムなどが使用でき、これに限定されるものではない。
【0087】
また、前記(b1)段階のカップリング反応で使用される置換基Zの好ましい例としては、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~18のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~18の芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~18の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基の中から選択されるいずれか1つの置換基が使用できる。
【0088】
また、前記(b)段階内の(b2)反応は、Y及びA環を含む化合物を準備し、これを中間体A-2-1と反応させて中間体A-2-2を製造する段階であって、この時、中間体A-2-1と、Y及びAを含む化合物
との結合のために、中間体A-2-1内の二重結合の炭素原子に結合した水素のうちの1つ(好ましくは、Yと連結(結合)された炭素原子には結合していない、ベータ位置の水素原子)をハロゲンに変換し、これを離脱基として二重結合内の炭素とYに結合させることができるようにする。この時、使用されるYは、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、好ましくは、N-R、O、Sの中から選択されるいずれか1種であり、さらに好ましくは、N-Rであり得る。
【0089】
<(b2)反応>
【0090】
ここで、前記(b2)反応において、前記X及びXは、互いに同一でも異なってもよく、水素、重水素、ハロゲンから選ばれるいずれか1つであって、好ましくは、ハロゲンである。ここで、前記Xは、以後のホウ素原子を導入する過程でホウ素原子の結合によって除去され、前記Xは、次の反応におけるY及びAを含む化合物と反応してYがA環に結合する過程で除去される。
【0091】
一方、前記(b2)反応は、また、Y内の窒素原子、炭素原子又は酸素原子と、中間体A-2-1内の二重結合に結合した水素のうちの1つがハロゲンに変換された化合物内のハロゲンとのカップリング反応であって、有機溶媒の存在下に、パラジウム触媒及び塩基の存在下で行われることができる。前述した反応式A-1で使用された有機溶媒が使用可能であり、また、パラジウム触媒の種類としては、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)クロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド、パラジウム(II)クロリドダイマー、ビス(アセトニトリル)パラジウムクロリドなどが使用可能であり、塩基としては、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、水酸化バリウム、フッ化セシウム、水酸化バリウム、酢酸カリウムなどが使用でき、これに限定されるものではない。
【0092】
また、前記(b)段階内の(b3)反応は、Y及びAを含む化合物
を準備し、これを前記中間体A-2-2と反応させて中間体A-2-3を製造する段階であって、この時、中間体A-2-2とY及びAを含む化合物との結合のために、中間体A-2-2中のXの代わりにYがA環に結合するようにする。
【0093】
この時、使用されるYは、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、好ましくは、N-R、O、Sの中から選択されるいずれか1種であり、さらに好ましくは、N-Rであり、Xは、水素、重水素、ハロゲンから選ばれるいずれか1種であり、好ましくはハロゲンである。
【0094】
<(b3)反応>
【0095】
ここで、前記Xは、以後のホウ素原子を導入する過程でホウ素原子の結合によって除去される。
【0096】
一方、前記(b3)反応は、また、Y中の窒素原子、炭素原子又は酸素原子と、中間体A-2-2中のXとのカップリング反応であって、有機溶媒の存在下、パラジウム触媒及び塩基の存在下で行われることができる。前述の反応式A-1で使用された有機溶媒が使用可能であり、また、パラジウム触媒の種類としては、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)クロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド、パラジウム(II)クロリドダイマー、ビス(アセトニトリル)パラジウムクロリドなどが使用可能であり、塩基としては、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、水酸化バリウム、フッ化セシウム、水酸化バリウム、酢酸カリウムなどが使用でき、これに限定されるものではない。
【0097】
また、前記(b)段階内の(b4)反応は、前記(b)段階の最後の反応段階であって、前記中間体A-2-3にホウ素を導入する段階に該当する。
【0098】
<(b4)反応>
【0099】
通常、複数の芳香族環の中心原子にホウ素原子を導入する方法は、韓国公開特許公報第10-2016-0119683号(2016年10月14日)等に開示されており、下記の参考反応式C-2及び参考反応式C-3に示すように、2つの方法が使用できる。
【0100】
一番目の方法として、これは、参考反応式C-2に示すように、 水素原子(H)が参考反応式C-2内の母核環構造のa環に結合した中間体をホウ素ハロゲン化物又はホウ素アルコキシ化物などと反応してホウ素ドーパント化合物を製造することができ、
【0101】
<参考反応式C-2>
【0102】
二番目の方法として、参考反応式C-3に示すように、
ハロゲン原子(Br)が参考反応式C-3内の母核環構造のa環に結合した中間体をホウ素ハロゲン化物、ホウ素アルコキシ化物などと反応してホウ素ドーパント化合物を製造することができ、本発明では、前記2つの方法を用いて、有機発光素子に使用可能なホウ素ドーパント化合物を最終的に製造することができる。
【0103】
<参考反応式C-3>
【0104】
前記(b4)反応は、また、有機溶媒の存在下で行われることができ、この場合、前述した反応式A-1で使用された有機溶媒が使用可能である。
【0105】
さらに、前記反応は、塩基の存在下で行われることができ、使用される塩基としては、tert-ブチルリチウム、N-ブチルリチウム、メチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、リチウムジメチルクプラートなどが使用可能であるが、これに限定されず、前記反応に用いられるホウ素前駆体としては、ハロゲン化ホウ素の種類が使用可能であり、好ましくは、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、三フッ化ホウ素などが使用可能であるが、これに限定されない。
【0106】
一方、本発明による前記[中間体A-1]、[中間体A-2]、[化学式A]及び[化学式B]中のA環の好ましい例は、置換もしくは無置換のベンゼン環であり得る。
【0107】
これをより詳細に説明すると、本発明は、(a)下記[中間体A-3]で表される化合物の重水素化反応を介して、下記[中間体A-4]で表される化合物を製造する段階と、及び(b)前記[中間体A-4]で表される化合物を反応物として用いて、下記[化学式A-1]又は[化学式B-1]で表される化合物を製造する段階と、を含む、前記[化学式A-1]及び[化学式B-1]で表される化合物の製造方法を提供する。
【0108】
【0109】
前記[中間体A-3]及び[中間体A-4]において、
前記置換基R11~R14は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のヘテロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールチオニル基よりなる群から選択されるいずれかであるが、前記置換基R11~R14のうちの1つは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
前記Yは、それぞれ上記で定義されたように、N-R、CR、O、S、Se及びSiRの中から選択されるいずれか1種であり、
前記[中間体A-4]において、
前記置換基R11~R14中の、ハロゲン元素ではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素であり、
前記H/Dは、水素又は重水素が炭素原子に結合することを意味する。
【0110】
【0111】
前記[化学式A-1]及び[化学式B-1]において、
前記置換基R11~R14は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のヘテロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールチオニル基よりなる群から選択されるいずれか1つであり、
前記Zは、[中間体A-4]内のR11~R14の中から選択される1つのハロゲン元素の代わりに置換される置換基であって、水素、重水素、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であるが、
前記置換基R11~R14のうちの1つは、Zであり、
また、前記置換基R11~R14中の、Zではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素であり、
前記A環、A環、X、Y~Yは、それぞれ上記で定義されたのと同一である。
【0112】
これにより、本発明は、前記[化学式A-1]又は[化学式B-1]で表される化合物において置換基R11~R14が結合する、芳香族縮合複素環内のベンゼン環に重水素を効果的に導入することができ、このとき、前記中間体A-3で表される化合物の単一段階による重水素化反応を介して、前記中間体A-4で表される化合物を製造する段階は、これにより後続工程において置換基R11~R14のうちの少なくとも1つが芳香族縮合複素環中のベンゼン環に重水素を含むことにより、最終的に置換基R11~R14が結合する、芳香族縮合複素環中のベンゼン環に重水素が導入された、前記[化学式A-1]又は[化学式B-1]で表される化合物を得ることができる。
【0113】
また、好適な一実施例として、前記[化学式A-1]及び[化学式B-1]で表される多環式化合物の製造方法において、前記(b)段階は、下記[反応式A-4]に従って、前記[中間体A-4]から[中間体A-4]内の置換基R11~R14の中から選択される1つのハロゲン元素が離脱し、Zが結合する反応によって[中間体A-4-1]を生成する段階を含む。
【0114】
[反応式A-4]
【0115】
前記[中間体A-4]及び[中間体A-4-1]において、
前記Yは、それぞれ前記中間体A-4で定義したのと同一であり、
前記[中間体A-4]において、
前記R11~R14は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のヘテロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールチオニル基よりなる群から選択されるいずれかであり、
前記置換基R11~R14のうちの1つは、F、Cl、Br及びIの中から選択されるいずれか1種のハロゲン元素であり、
また、前記置換基R11~R14中の、ハロゲン元素ではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素であり、
前記[中間体A-4-1]において、
前記置換基R11~R14は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のハロゲン化アルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のヘテロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~24のアルコキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールオキシ基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~24のアリールチオニル基よりなる群から選択されるいずれかであり、
前記Zは、[中間体A-4]内のR11~R14の中から選択される1つのハロゲン元素の代わりに置換される置換基であって、水素、重水素、重水素置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、重水素置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つの置換基であるが、
前記置換基R11~R14のうちの1つは、Zであり、
また、前記置換基R11~R14中の、Zではない3つの置換基の少なくとも1つは、重水素である。
【0116】
つまり、前記[反応式A-4]は、[反応式A-2]において、前記A環がベンゼン環に限定された反応に該当することにより、前記[反応式A-4]によって得られる[中間体A-4-1]は、後続工程を経て前記反応式Bにおける[中間体A-2-1]に該当することにより、これに関連する後続反応((b2)~(b4)反応))を同一に行うことができ、最後に、[化学式A-1]又は[化学式B-1]で表される化合物を提供することができる。
【0117】
また、本発明による前記[化学式A]及び[化学式B]における前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子は、いずれも重水素で置換できる。
【0118】
また、本発明による前記[化学式A-1]及び[化学式B-1]における置換基R11~R14中の、Zではない3つの置換基がすべて重水素であり得る。
【0119】
また、本発明による前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]における置換基Zは、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基であってもよく、好ましくは、重水素置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基であってもよい。
【0120】
また、本発明による前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]における置換基Y及びYのうちの少なくとも1つは、NRであってもよく、この場合に、前記Rは、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つであってもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基又は置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基であってもよく、より好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基、又は置換もしくは無置換の炭素数2~20のヘテロアリール基であってもよい。
【0121】
また、本発明における前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]中の連結基Y及びYが全てNRであり得る。
【0122】
また、本発明における前記[化学式A]及び[化学式B]の前記連結基Y及びYのうちの少なくとも1つは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ下記[構造式A]で表される連結基であり得る。
【0123】
[構造式A]
【0124】
前記[構造式A]において、「-*」は、前記Yに連結された二重結合内の炭素原子、A環における芳香族炭素原子、又はA環における芳香族炭素原子とそれぞれ結合するための結合部位を意味し、
前記[構造式A]において、前記R41~R45は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、重水素、シアノ基、ハロゲン基、炭素数1~24のアルキル基、重水素置換された炭素数1~24のアルキル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、重水素置換された炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、重水素置換された炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基、重水素置換された炭素数7~24のアリールアルキル基、炭素数7~24のアルキルアリール基、重水素置換された炭素数7~24のアルキルアリール基、炭素数2~24のヘテロアリール基、重水素置換された炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換された炭素数7~24の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、重水素置換された炭素数5~24の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、重水素置換された炭素数6~24の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、炭素数8~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、重水素置換された炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、重水素置換された炭素数5~24の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数1~24のアミン基、重水素置換された炭素数1~24のアミン基、炭素数1~24のシリル基、重水素置換された炭素数1~24のシリル基、炭素数1~24のゲルマニウム基、重水素置換された炭素数1~24のゲルマニウム基、炭素数6~24のアリールオキシ基、炭素数6~24のアリールチオニル基の中から選ばれるいずれか1つであり、前記R41及びR45は、それぞれ前記A環、A環又はA環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。
【0125】
一方、本発明において、前記「R41及びR45のうちの少なくとも1つが前記A環、A環又はA環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成」する場合、これは、前述したR及びR、R及びRは、それぞれ互いに連結される場合等で考察したのと同様に、前記置換基R41又はR45内の1つの水素ラジカルを除去し、さらにA環、A環又はA環中の1つの水素ラジカルを除去してそれらを連結することにより、さらに環を形成することを意味し、これは、明細書内の後述する「さらに環を形成」する場合にも同様に適用できる。
【0126】
また、本発明の前記[化学式A]及び[化学式B]における連結基Yは、酸素(O)原子又は硫黄(S)元素であってもよく、また、本発明の前記[化学式A]及び[化学式B]における中心原子(X)は、好ましくはホウ素(B)原子であってもよい。
【0127】
また、本発明の[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]における前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは重水素で置換されるか、或いは、A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つは重水素で置換されることができる。この場合、好ましくは、A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子は全て重水素で置換されるか、或いは、A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子は全て重水素で置換されるようにすることができる。
【0128】
本発明における[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]における前記A環又はA環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子のうちの少なくとも1つを重水素で置換する構造を有することにより、前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]のうちのいずれかで表される多環式化合物は、有機発光素子内のドーパント物質として使用されて有機発光素子の長寿命及び安定性を向上させることができる。
【0129】
ここで、前記A環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子を重水素で置換するか、或いはA環中の芳香族炭素原子と結合する水素原子を重水素で置換する方法は、前述したように、A環又はA環にハロゲン原子を導入した化合物を重水素化した後、後続反応によってホウ素化合物を製造することにより、A環又はA環中のそれぞれ少なくとも1つの重水素が置換された化合物をより容易に得ることができる。
【0130】
また、本発明に係る前記[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物中のA~A環の好ましい例は、それぞれ同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環であり、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、テルフェニル環、アントラセン環、フェナントレン環、インデン環、フルオレン環、ピレン環、ペリレン環、クリセン環、ナフサセン環、フルオランテン環、ペンタセン環の中から選択されるいずれかの環であり得る。
【0131】
また、本発明において、前記A~Aの芳香族炭化水素環がそれぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環である場合に、前記化学式A及び化学式B中のA及びAの芳香族炭化水素環は、下記[構造式10]~[構造式21]の中から選択されるいずれか1つであり得る。
【0132】
【0133】
前記[構造式10]~[構造式21]において、「-*」は、前記A環における芳香族環中の炭素が置換基Y、又は置換基Yを含む五員環中の炭素原子と結合するための結合部位を意味するか、
或いは、前記A環における芳香族環中の炭素がX又は連結基Yと結合するための結合部位を意味し、
前記[構造式10]~[構造式21]において、前記Rは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれかであり、
前記mは1~8の整数であり、mが2以上である場合又はRが2以上である場合、それぞれのRは互いに同一でも異なってもよい。
【0134】
また、前記A~A環がそれぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環である場合に、[化学式A]及び[化学式B]内のAの芳香族炭化水素環は、下記[構造式B]で表される環であり得る。
【0135】
[構造式B]
【0136】
前記[構造式B]において、「-*」は、A環における芳香族環中の炭素が連結基Y、X及び連結基Yとそれぞれ結合するための結合部位を意味する。
【0137】
前記[構造式B]において、前記R55~R57は、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~24のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7~30の、芳香族炭化水素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、芳香族複素環が縮合したシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~30の、芳香族炭化水素環が縮合したヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数8~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~30の、脂肪族炭化水素環が縮合したヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のアミン基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数0~30のゲルマニウム基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基の中から選択されるいずれか1つであり、
前記R55~R57は、それぞれ隣接する置換基と互いに連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。
【0138】
又は、本発明に係る前記[化学式A]又は[化学式B]で表される化合物中のA~A環が置換もしくは無置換の炭素数2~50の芳香族複素環である場合に、これらは、それぞれ互いに同一でも異なってもよく、互いに独立して、[構造式31]~[構造式40]の中から選択されるいずれか1つであり得る。
【0139】
【0140】
前記[構造式31]~[構造式40]において、
前記連結基T~T12は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、C(R61)、C(R62)(R63)、N、N(R64)、O、S、Se、Te、Si(R65)(R66)及びGe(R67)(R68)の中から選択されるいずれか1種であり、前記連結基T~T12が同時に全て炭素原子である場合を除き、前記R61~R68は、上記で定義したRと同一である。
【0141】
また、前記[構造式33]は、電子の移動に伴う共鳴構造による下記[構造式33-1]で表される化合物を含むことができる。
【0142】
[構造式33-1]
【0143】
前記[構造式33-1]において、
前記連結基T~Tは、前記[構造式31]~[構造式40]で定義したのと同一である。
【0144】
また、前記[構造式31]~[構造式40]は、より好ましくは、下記[構造式50]内の複素環の中から選択されるいずれか1つの複素環構造であり得る。
【0145】
[構造式50]
【0146】
前記[構造式50]において、
前記置換基Xは、上記で定義したRと同一であり、
前記mは、1~11の中から選択されるいずれか1つの整数であり、mが2以上である場合、複数のXは、それぞれ互いに同一でも異なってもよい。
【0147】
また、本発明による前記[化学式A]及び[化学式B]における、前記A~A環のうちの少なくとも1つは、炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は炭素数2~50の芳香族複素環内に、下記構造式Fで表されるアリールアミノ基が結合することができ、好ましくは、前記A~A環のうちの1つ又は2つの構造式Fで表されるアリールアミノ基が結合することができる。
【0148】
[構造式F]
【0149】
前記[構造式F]において、「-*」は、A~Aの少なくとも1つの環の芳香族炭素と結合するための結合部位を意味し、
前記Ar11及びAr12は、同一でも異なってもよく、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6~18のアリール基、又は置換もしくは無置換の炭素数3~18のヘテロアリール基、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数6~12のアリール基、又は置換もしくは無置換の炭素数3~12のヘテロアリール基であり、それらは互いに連結されて環を形成することができる。
【0150】
本発明による[中間体A-2]で表される中間体化合物から製造された、[化学式A]及び[化学式B]で表される多環式化合物、又は、[中間体A-4]で表示される中間体化合物から製造された、[化学式A-1]及び[化学式B-1]で表される多環式化合物は、上述したように、本発明において有機発光素子用材料として使用できる。
【0151】
より具体的には、前記[化学式A]、[化学式B]、[化学式A-1]及び[化学式B-1]で表される多環式化合物は、第1電極と、前記第1電極に対向している第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する発光層と、を含む有機発光素子内の前記発光層にドーパントとして、ホスト化合物と共に使用できる。
【0152】
ここで、前記有機発光素子は、通常、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入機能及び正孔輸送機能を同時に有する機能層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層のうちの少なくとも1つを含むことができ、好ましくは、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極を含むことができ、これらに加えて選択的に追加の層を含むことができる。
【0153】
このとき、本発明において、前記発光層には、ドーパントと共に、ホスト材料が使用できる。前記発光層がホスト及びドーパントを含む場合、ドーパントの含有量は、通常、ホスト約100重量部を基準にして約0.01~約20重量部の範囲から選択でき、これに限定されるものではない。
【0154】
以下、好適な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれによって限定されないのは、当該分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例
【0155】
合成例1:[BD-1]の合成
合成例1-1:A-1の合成
【0156】
【0157】
反応器に<A-1a>40g、炭酸銀9.77g、シクロヘキシルジフェニルホスフィン19g、炭酸カリウム24.5g、重水64mL、トルエン18mLを仕込み、6時間還流撹拌した。常温に冷却した後、トルエンを用いて層分離し、その後、有機層を集めて減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して<A-1>を得た。(36.2g、89.3%)
【0158】
合成例1-2:A-2の合成
【0159】
【0160】
反応器に<A-1>35.3g、<A-2a>23g、パラジウム(II)アセテート0.69g、BINAP1.92g、ナトリウムtert-ブトキシド29.6g、トルエン350mLを仕込み、2時間還流攪拌した。常温に冷却した後、トルエンを用いて層分離し、その後、有機層を集めて減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して<A-2>を得た。(42g、91.6%)
【0161】
合成例1-3:A-3の合成
【0162】
【0163】
前記合成例1-1において、<A-1a>の代わりに<A-3a>を用いて同様の方法で<A-3>を得た。(収率96.1%)
【0164】
合成例1-4:A-4の合成
【0165】
【0166】
反応器に<A-3>106g、<A-4a>74g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム22.4g、炭酸カリウム201g、トルエン530mL、エタノール318mL、蒸留水212mLを仕込み、16時間還流撹拌した。常温に冷却した後、トルエンを用いて層分離し、その後、有機層を集めて減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して<A-4>を得た。(87.8g、82%)
【0167】
合成例1-5:A-5の合成
【0168】
【0169】
反応器に<A-4>45.7g、ジメチルホルムアミド230mLを仕込み、常温で撹拌した。N-ブロモスクシンイミド40.6gを仕込み、50℃に昇温した後、16時間還流攪拌した。常温に冷却した後、酢酸エチルを用いて層分離し、その後、有機層を水で洗浄した後、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して<A-5>を得た。(61.1g、98.8%)
【0170】
合成例1-6:A-6の合成
【0171】
【0172】
反応器に<A-2>47.3g、<A-5>61.2g、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム1.63g、ナトリウムtert-ブトキシド30.6g、トルエン470mLを仕込み、16時間還流撹拌した。常温に冷却した後、トルエンを用いて層分離し、その後、有機層を集めて減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して<A-6>を得た。(75g、91.6%)
【0173】
合成例1-7:A-7の合成
【0174】
【0175】
前記合成例1-2において、<A-1>の代わりに<A-7a>を用いて同様の方法で<A-7>を得た。(収率85.1%)
【0176】
合成例1-8:A-8の合成
【0177】
【0178】
反応器に<A-7>50g、<A-8a>56.3g、パラジウム(II)アセテート0.4g、ナトリウムtert-ブトキシド23.9g、キサントホス1g、トルエン500mLを仕込み、16時間還流攪拌した。常温に冷却した後、酢酸エチルと水を仕込み、その後、有機層を分離した。シリカゲルクロマトグラフィーで精製して<A-8>を得た。(35g、46.2%)
【0179】
合成例1-9:A-9の合成
【0180】
【0181】
前記合成例1-2において、<A-1>の代わりに<A-8>を用い、<A-2a>の代わりに<A-9a>を用いて同様の方法で<A-9>を得た。(収率89.4%)
【0182】
合成例1-10:A-10の合成
【0183】
【0184】
反応器に<A-6>30g、<A-9>30.8g、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム0.91g、ナトリウムtert-ブトキシド9.6g、トルエン300mLを仕込み、16時間還流撹拌した。常温に冷却した後、トルエンを用いて層分離し、その後、有機層を集めて減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して<A-10>を得た。(52.9g、84.1%)
【0185】
合成例1-11:[BD-1]の合成
【0186】
【0187】
反応器に<A-10>24.6g、tert-ブチルベンゼン246mLを仕込み、-60℃で1.7Mのtert-ブチルリチウム40.6mLを滴加した。60℃に昇温した後、2時間攪拌し、-60℃に冷却した後、三臭化ホウ素4.9mLを滴加した。常温に昇温した後、1時間撹拌し、その後、0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン8.0mLを滴加した。120℃に昇温した後、16時間攪拌し、その後、常温に冷却し、水76mL、酢酸ナトリウム3.8gを仕込んだ。酢酸エチルで有機層を抽出し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して[BD-1]を得た。(4.2g、17.5%)
MS(MALDI-TOF):m/z 1050.58[M
【0188】
合成例2:[BD-2]の合成
合成例2-1:B-1の合成
【0189】
【0190】
前記合成例1-9において、<A-9a>の代わりに<B-1a>を用いて同様の方法で<B-1>を得た。(収率90.4%)
【0191】
合成例2-2:B-2の合成
【0192】
【0193】
前記合成例1-10において、<A-9>の代わりに<B-1>を用いて同様の方法で<B-2>を得た。(収率87.2%)
【0194】
合成例2-3:[BD-2]の合成
【0195】
【0196】
前記合成例1-11において、<A-10>の代わりに<B-2>を用いて同様の方法で[BD-2]を得た。(収率16.4%)
MS(MALDI-TOF):m/z 1008.49[M
【0197】
合成例3:[BD-3]の合成
合成例3-1:C-1の合成
【0198】
【0199】
前記合成例1-1において、<A-1a>の代わりに<C-1a>を用いて同様の方法で<C-1>を得た。(収率95.9%)
【0200】
合成例3-2:C-2の合成
【0201】
【0202】
前記合成例1-2において、<A-1>の代わりに<C-1>を用いて同様の方法で<C-2>を得た。(収率96.6%)
【0203】
合成例3-3:C-3の合成
【0204】
【0205】
前記合成例1-6において、<A-2>の代わりに<C-2>を用いて同様の方法で<C-3>を得た。(収率86.3%)
【0206】
合成例3-4:C-4の合成
【0207】
【0208】
前記合成例1-1において、<A-1a>の代わりに<C-4a>を用いて同様の方法で<C-4>を得た。(収率96.1%)
【0209】
合成例3-5:C-5の合成
【0210】
【0211】
前記合成例1-4において、<A-3>の代わりに<C-4>を用いて同様の方法で<C-5>を得た。(収率96.1%)
【0212】
合成例3-6:C-6の合成
【0213】
【0214】
前記合成例1-2において、<A-1>の代わりに<C-5>を用いて同様の方法で<C-6>を得た。(収率89.3%)
【0215】
合成例3-7:C-7の合成
【0216】
【0217】
前記合成例1-1において、<A-1a>の代わりに<A-8a>を用いて同様の方法で<C-7>を得た。(収率95.9%)
【0218】
合成例3-8:C-8の合成
【0219】
【0220】
前記合成例1―8において、<A-7>の代わりに<C-6>を用い、<A-8a>の代わりに<C-7>を用いて同様の方法で<C-8>を得た。(収率63.5%)
【0221】
合成例3-9:C-9の合成
【0222】
【0223】
前記合成例1-4において、<A-3>の代わりに<C-9a>を用いて同様の方法で<C-9>を得た。(収率81.1%)
【0224】
合成例3-10:C-10の合成
【0225】
【0226】
前記合成例1-2において、<A-1>の代わりに<C-8>を用い、<A-2a>の代わりに<C-9>を用いて同様の方法で<C-10>を得た。(収率83.7%)
【0227】
合成例3-11:C-11の合成
【0228】
【0229】
前記合成例1-10において、<A-6>の代わりに<C-3>を用い、<A-9>の代わりに<C-10>を用いて同様の方法で<C-11>を得た。(収率85.4%)
【0230】
合成例3-12:[BD-3]の合成
【0231】
【0232】
前記合成例1-11において、<A-10>の代わりに<C-11>を用いて同様の方法で[BD-3]を得た。(収率16.4%)
MS(MALDI-TOF):m/z 1147.74[M
【0233】
合成例4:[BD-4]の合成
合成例4-1:D-1の合成
【0234】
【0235】
反応器に<D-1a>50gとテトラヒドロフラン50mLを仕込み、-78℃で2.0Mのリチウムジイソプロピルアミド溶液140mLを滴加した。-78℃で3時間攪拌した後、ヘキサクロロエタンをゆっくりと仕込み、常温に昇温した後、16時間攪拌した。酢酸エチルと水を仕込んだ後、有機層を分離した。シリカゲルクロマトグラフィーで精製して<D-1>を得た。(42.5g、78.9%)
【0236】
合成例4-2:D-2の合成
【0237】
【0238】
前記合成例1-2において、<A-1>の代わりに<D-1>を用いて同様の方法で<D-2>を得た。(収率56%)
【0239】
合成例4-3:D-3の合成
【0240】
【0241】
前記合成例1-6において、<A-2>の代わりに<D-2>を用いて同様の方法で<D-3>を得た。(収率89.7%)
【0242】
合成例4-4:D-4の合成
【0243】
【0244】
前記合成例1-8において、<A-7>の代わりに<D-4a>を用いて同様の方法で<D-4>を得た。(収率71%)
【0245】
合成例4-5:D-5の合成
【0246】
【0247】
前記合成例1-2において、<A-1>の代わりに<D-4>を用いて同様の方法で<D-5>を得た。(収率84.7%)
【0248】
合成例4-6:D-6の合成
【0249】
【0250】
前記合成例1-10において、<A-6>の代わりに<D-3>を用い、<A-9>の代わりに<D-5>を用いて同様の方法で<D-6>を得た。(収率93.2%)
【0251】
合成例4-7:[BD-4]の合成
【0252】
【0253】
前記合成例1-11において、<A-10>の代わりに<D-6>を用いて同様の方法で[BD-4]を得た。(収率13.7%)
MS(MALDI-TOF):m/z 1209.64[M
【0254】
合成例5:[BD-5]の合成
合成例5-1:[BD-5]の合成
前記合成例1において、合成例1-3の<A-3a>の代わりに5-ブロモチエノ[2,3-b]ピリジンを用いた以外は、同様の方法で[BD-5]を得た。(最終収率13.4%)
MS(MALDI-TOF):m/z 1050.57[M
【0255】
実施例1~5:有機発光素子の製造
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバーに取り付けた後、ベース圧力が1×10-7torrとなるようにし、その後、前記ITO上に正孔注入層として、下記構造式[Acceptor-1]の電子アクセプタと[化学式F]の蒸着割合が[Acceptor-1]:[化学式F]=2:98となるように成膜(100Å)した。正孔輸送層として[化学式F]を成膜(550Å)し、続いて電子阻止層として[化学式G]を成膜(50Å)した。発光層は、下記のホスト[BH-1]と本発明の化合物(2wt%)とを混合して成膜(200Å)した後、正孔阻止層として[化学式H]を成膜(50Å)し、電子輸送層として[化学式E-1]と[化学式E-2]を1:1の比で250Å、電子注入層として[化学式E-2]を10Å、Alを1000Åに順次成膜して有機発光素子を製造した。前記有機発光素子の発光特性は、0.4mAで測定した。
【0256】
【0257】
比較例1~5
前記実施例で使用された化合物の代わりに[BD-A]~[BD-E]を用いた以外は、同様にして有機発光素子を製作した。前記有機発光素子の発光特性は、0.4mAで測定した。前記[BD-A]~[BD-E]の構造は、次の通りである。
【0258】
【0259】
前記実施例1~5及び比較例1~5によって製造された有機発光素子に対して、電圧、外部量子効率及び寿命を測定し、その結果を下記[表1]に示す。
【0260】
【表1】
【0261】
前記表1に示すように、ハロゲン化アリール又はハロゲン化ヘテロアリール中間体を用いて重水素置換反応によって化合物BD-1~BD-5を製造する場合には、不要な工程の省略による優れた収率を示し、また、前記化合物BD-1~BD-5を有機発光素子内のドーパント物質として用いた場合には、比較例1~5の化合物(BD-A~BD-E)を用いた場合よりも優れた長寿命特性を示しており、有機発光素子内のドーパント物質として応用可能性が高いことを確認した。