(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
B23K 7/00 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
B23K7/00 503Z
B23K7/00 504Z
(21)【出願番号】P 2023061889
(22)【出願日】2023-04-06
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000185374
【氏名又は名称】小池酸素工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出津野 清
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-277904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0021864(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/00 - 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断すべき形状に対応した型又は線を倣って被切断材を切断する切断装置であって、
加工面に対して垂直方向に配置された旋回軸と、
前記旋回軸を駆動する旋回駆動部と、
前記旋回軸から離隔した位置に配置され、該旋回軸に駆動されて旋回する直線案内部材と、
前記直線案内部材に案内されて直線移動する棒状の支持部材と、
前記支持部材を直線往復移動させる直線駆動部と、
前記支持部材の一方の端部側であって前記旋回軸の中心を通る直線上に配置され、切断すべき形状に対応した型又は線を倣う倣い部と、
前記支持部材の他方の端部側であって前記旋回軸の中心を通る直線上に配置された切断部と、
前記倣い部によって検出した前記旋回軸の中心を通る直線を基準とする該倣い部の中心から前記切断すべき形状に対応した型又は線に於ける目標点までの角度と距離のデータを記憶すると共に記憶した角度と距離のデータによって、前記旋回駆動部と前記直線駆動部を制御する制御部と、
を有することを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記旋回軸及び旋回駆動部を収容した本体と、
前記本体の上部に旋回可能に配置され、側面に突出して配置された前記直線案内部材及び前記直線駆動部が配置された旋回体を、
を有することを特徴とする請求項1に記載した切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断すべき形状に対応させた型或いは線を倣って切断する可搬式の切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板やステンレス鋼板などの被切断材を、ガス切断トーチやプラズマ切断トーチなどの切断トーチを搭載した切断装置を利用して図形を切断することが行われている。このような切断装置として、例えば、工場に設置したレール上を走行するフレームを有し、切断すべき形状に対応させて描いた図面の縁や図面の線を光学的に検出して切断する倣い切断装置がある。一般的にこのような倣い切断装置は大型であり、被切断材をフレームの移動可能範囲に設定された切断領域に搬送して切断作業を行うように構成されている。
【0003】
一方、予め切断すべき製品に対応させて鋼板などによって製作した型に、磁石などを接触させつつ切断する型切断装置がある。この型切断装置は、作業員によって搬送し得る程度の重量を有しており、目的の作業場所まで作業員が搬送し、その場所で切断作業を行うことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した倣い切断装置の場合、倣いの対象が型紙や図面の線であるため、切断すべき図形の変化に対応することが容易であるが、被切断材を搬送する必要があるため、小回りがきかないという問題がある。一方、上記した型切断装置の場合、被切断材を切断すべき場所の如何に関わらず、作業員が型切断装置を搬送して対応でき、小回りがきくという利点がある。しかし、切断すべき製品の形状が変わる度に、この形状に対応させた型を製作する必要があり、且つ製品の精度が型の精度に依存するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、倣い切断装置の利点と、型切断装置の利点を兼ね備えた切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る代表的な切断装置は、切断すべき形状に対応した型又は線を倣って被切断材を切断する切断装置であって、加工面に対して垂直方向に配置された旋回軸と、前記旋回軸を駆動する旋回駆動部と、前記旋回軸から離隔した位置に配置され、該旋回軸に駆動されて旋回する直線案内部材と、前記直線案内部材に案内されて直線移動する棒状の支持部材と、前記支持部材を直線往復移動させる直線駆動部と、前記支持部材の一方の端部側であって前記旋回軸の中心を通る直線上に配置され、切断すべき形状に対応した型又は線を倣う倣い部と、前記支持部材の他方の端部側であって前記旋回軸の中心を通る直線上に配置された切断部と、前記倣い部によって検出した前記旋回軸の中心を通る直線を基準とする該倣い部の中心から前記切断すべき形状に対応した型又は線に於ける目標点までの角度と距離のデータを記憶すると共に記憶した角度と距離のデータによって、前記旋回駆動部と前記直線駆動部を制御する制御部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る切断装置では、棒状の支持部材の両端部に倣い部と切断部を配置し、倣い部によって倣い中心から型紙又は線に於ける目標点までの角度と距離を検出して、支持部材の直線移動量と、旋回角度量と、を制御することで、倣い部と切断部の目標点方向への移動を実現することができる。このため、直交方向に夫々レールを配置する必要がなく小型化をはかることができ、且つ切断すべき形状が変化しても型紙又は線によって容易に対応することができる。従って、倣い切断装置としての利点と可搬式の切断装置としての利点を兼ね備えた切断装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例に係る切断装置の構成を説明する正面図である。
【
図2】本実施例に係る切断装置の構成を説明する平面図である。
【
図6】倣い部材による倣いの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る切断装置について説明する。本発明に係る切断装置は、切断すべき形状に対応して形成された型紙或いは線図(以下、型紙、線図を含めて「図面」という)などを倣って切断し得るように構成され、且つ作業すべき場所の如何に関わらず目的位置まで搬送することを可能としたものである。
【0010】
特に、支持部材を往復直線移動可能に構成すると共に旋回軸を中心とする旋回可能に構成し、この支持部材の両端に倣い部と切断部が旋回軸の中心(以下「旋回中心」という)を通り支持部材と平行な直線上に配置されている。このため、倣い部によって図面を倣ったとき、切断部は旋回中心を中心として対称の図形を描くことが可能である。
【0011】
そして、倣い部によって図面を倣いつつ切断部を稼動させて被切断材を切断することが可能である。また、倣い部によって図面を倣って得た旋回角度のデータ、支持部材の直線移動量のデータを記憶させておくことで、以後図面を倣うことなく同じ図形を繰り返し切断することも可能である。
【0012】
上記の如く、本発明に係る切断装置は、倣い部によって倣った図面を円座標系によって解析し得るように構成している。このため、直交座標系によって構成された切断装置のように直交する二方向にレールを配置する必要がなく、小型化を実現した可搬式の切断装置として構成することが可能である。
【0013】
以下、図を用いて本発明に係る切断装置Aの実施例について説明する。
【0014】
切断装置Aは、本体Bと本体Bの上部に旋回可能に配置された旋回体Cと、を有して構成されている。本体Bには、略水平に設置された図示しない被切断材、例えば鋼板の表面に対し垂直方向に配置される旋回軸1と、旋回軸1を駆動する旋回駆動部を構成する旋回モータ2及び旋回軸1と旋回モータ2を結合するギヤ列3が配置されている。
【0015】
本実施例に係る切断装置Aは後述するように、棒状の支持部材8を旋回軸1によって旋回させることで、図面の倣い、及び切断を行うように構成されている。このため、本体Bは、外形が円筒状に形成されている。このような形状を有することで、支持部材8の旋回可能な角度の範囲を大きくすることが可能である。
【0016】
本体Bの上部に旋回体Cが配置されており、該旋回体Cは旋回軸1に駆動されて旋回可能に構成されている。旋回体Cには側面から直線案内部材となる一対のローラ5が突設して配置されており、内部には直線駆動部を構成する直線駆動モータ6が配置されている。
【0017】
一対のローラ5には支持部材8が往復直線移動可能に支持されている。直線駆動モータ6による支持部材8の駆動方式としては、ラック、ピニオン方式、フリクション方式などがある。本実施例では、支持部材8の移動に伴う寸法精度を高い状態に保持するため、ラック、ピニオン方式を採用している。このため、直線駆動モータ6にはピニオン7が取り付けられており、該ピニオン7が支持部材8の側面に取り付けたラックと噛合している。
【0018】
支持部材8は予め設定された長さの棒状の部材として構成されている。支持部材8の長さを限定するものではなく、切断すべき図形の大きさに応じて適宜設定されることが好ましい。しかし、支持部材8が何れかの方向に移動したとき、この支持部材8は片持梁となるため、十分に大きい剛性を発揮し得るように構成されている。また、支持部材8の両端部分に被切断材の表面と接触して回転するボール状の案内を設けても良い。
【0019】
支持部材8の一方の端部には倣い部10が配置されており、他方の端部には切断部15が配置されている。本実施例では、倣い部10としてCMOSカメラ11を、切断部15としてガス切断トーチ16を用いている。
【0020】
倣い部10としては、図面を構成する型紙の縁或いは線の中心を倣うことが可能な装置であれば用いることが可能である。このような倣い装置としては、CMOSカメラ以外に例えばCCDカメラや光学倣い装置などがあり、何れも利用可能である。また、切断部15としては、被切断材を切断し得るものであれば良く、このような切断トーチとしてはガス切断トーチ以外にプラズマ切断トーチがある。
【0021】
倣い部10を構成するCMOSカメラ11の倣い中心11aと、切断部16を構成するガス切断トーチ16の中心は、旋回軸1の中心を通り支持部材8と平行な線14上に配置されている。従って、CMOSカメラ11によって図面を倣ったとき、ガス切断トーチ16は旋回軸1を中心として対称の図形を描くこととなる。
【0022】
本体Bの内部には、旋回モータ2及び直線駆動モータ6の回転方向や回転速度を制御するための制御盤20が配置されている。この制御盤20には、CMOSカメラ11の倣い制御部12の出力信号を入力信号とする制御部21と、旋回モータ用ドライバ22、直線駆動モータ用ドライバ23、切断装置Aの個別の動作を操作するためのスイッチ24、電源25を有して構成されている。
【0023】
次に、
図6により、上記の如く構成された切断装置Aによって図面Dを倣う際の動作を説明する。先ず、CMOSカメラ11の倣い中心11aを図面Dに一致させ、この状態で予め設定された範囲(倣い中心11aから距離rの範囲)をスキャンして進むべき矢印a方向の目標点11bを検知する。そして、倣い制御部12で旋回軸1の中心と倣い中心11aを結ぶ線14を基準とし、該線14に沿った方向への距離lと角度θの測定データを制御部21に出力する。制御部21では入力した測定データに基づいて、旋回モータ用ドライバ22、直線駆動モータ用ドライバ23に夫々の制御量l、θを伝達する。
【0024】
伝達された制御量に従って、旋回モータ2及び直線駆動モータ6が回転し、支持部材8の旋回軸1を中心とする旋回、及び直線方向へ移動させる。この動作を連続させることによって図面Dを倣うことが可能となる。この図面Dの倣いと同時にガス切断トーチ16を稼働させることで、被切断材を図面Dと同じ図形を旋回軸1を中心とする対称位置に切断することが可能である。
【0025】
また、制御部21を構成する記憶部に旋回モータ2、直線駆動モータ6に対する夫々の制御量l、θのデータを記録しておくことで、次に同じ図形を切断する際には、改めて図面を倣うことなく、記憶したデータを読み出すことで実行することが可能である。
【0026】
例えば、被切断材の面積が小さく、図面Dの設置位置と目的の図形の切断位置が同じであるような場合、前述したようにして図面Dを倣って、旋回モータ2、直線駆動モータ6に対する夫々の制御量l、θのデータを記録しておく。その後、スイッチ24を操作して旋回軸1を180度旋回させ、次いで制御部21に記憶している旋回モータ2の回転座標軸を180度分加算させる。この操作によって、ガス切断トーチ16の旋回位置は、図面Dを倣ったときの倣い中心の位置と同じとなる。従って、以後、記憶させた旋回モータ2、直線駆動モータ6に対する夫々の制御量l、θのデータを読み出して制御することで、ガス切断トーチ16によって目的の図形を切断することが可能となる。
【0027】
旋回体Cの上部には搬送時に作業員が把持するハンドル17が取り付けられている。このため、被切断材が如何なる場所にあったとしても、ハンドル17を把持することで、容易に搬送して切断作業を行うことが可能である。
【0028】
また、本体Bの内部には磁石18が配置されており、被切断材が鋼板である場合、磁石18によって鋼板を吸着することで安定をはかることが可能なように構成されている。このため、支持部材8が移動する際に、支持部材8に配置した倣い部10や切断部15の重量の影響でバランスが悪化した場合でも安定した状態を保持することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る切断装置は、小型の可搬式切断装置であり、ガス切断装置として或いはプラズマ切断装置として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
A 切断装置
B 本体
C 旋回体
D 図面
1 旋回軸
2 旋回モータ
3 ギヤ列
5 ローラ
6 直線駆動モータ
7 ピニオン
8 支持部材
10 倣い部
11 CMOSカメラ
11a 倣い中心
11b 目標点
12 倣い部制御部
14 旋回軸の中心を通る線
15 切断部
16 ガス切断トーチ
17 ハンドル
18 磁石
20 制御盤
21 制御部
22 旋回モータ用ドライバ
23 直線駆動モータ用ドライバ
24 スイッチ
25 電源
【要約】
【課題】倣い切断装置の利点と、型切断装置の利点を兼ね備えた切断装置を提供する。
【解決手段】加工面に対して垂直方向に配置された旋回軸1と、旋回軸を駆動する旋回モータ2と、旋回軸1に駆動されて旋回する一対のローラ5と、ローラ5に案内されて直線移動する支持部材8と、支持部材を直線往復移動させる直線駆動モータ6と、支持部材の一方の端部側であって旋回軸の中心を通る直線14上に配置され、切断すべき形状に対応した図形を倣う倣い部10と、支持部材の他方の端部側であって直線14上に配置された切断トーチ15と、倣い部によって検出した直線14を基準とする倣い中心11aから図形に於ける目標点11bまでの角度θと距離lのデータを記憶すると共に記憶した角度と距離のデータによって、旋回モータ2と直線駆動モータ6を制御する制御部20と、を有する。
【選択図】
図1