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特許7506795誤り訂正方法、誤り訂正回路及び通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】誤り訂正方法、誤り訂正回路及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/45 20060101AFI20240619BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   H03M 13/19 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H03M13/45
H04L1/00 B
H03M13/19
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023076005
(22)【出願日】2023-05-02
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTイノベーティブデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 靖行
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-31544(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154934(WO,A1)
【文献】特開2008-136166(JP,A)
【文献】特開2008-219528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/45
H04L 1/00
H03M 13/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割回路と尤度情報抽出回路と誤り訂正処理回路とを備えた誤り訂正回路において実行される誤り訂正方法であって、
前記分割回路が、
inビットの主信号に尤度情報が付加された入力信号を、前記主信号とNdiv個(Ndivは1より大きい整数)の前記尤度情報とに分割する分割ステップと、
前記尤度情報抽出回路が、
前記分割ステップで分割された尤度情報毎に、前記尤度情報の尤度値が小さい順にn個(nは1より大きい整数、n<Nin/Ndiv)の尤度情報を抽出し、訂正候補となる前記n個の尤度情報を出力する尤度情報抽出ステップと、
前記誤り訂正処理回路が、
前記n個の尤度情報のそれぞれに対応する前記主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理ステップと
を備え、
前記尤度情報抽出ステップは、
前記尤度情報の尤度値に基づいて、前記n個の尤度情報を、第1の尤度情報と前記第1の尤度情報の尤度値よりも大きい尤度値の尤度情報からなる第2の尤度情報とに分類して、前記誤り訂正処理回路に供給し、
前記誤り訂正処理ステップは、
前記第1の尤度情報における前記情報の組み合わせからなる少なくとも1つの第1の評価パターンと、前記第2の尤度情報における前記情報の組み合わせであって、前記第1の評価パターンの数より少ない数の少なくとも1つの第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンを評価して、出力する前記誤り訂正後の信号を決定する
誤り訂正方法。
【請求項2】
前記誤り訂正処理ステップは、
前記第1の評価パターンと前記第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンに従って訂正を行った場合のコスト値を比較して評価パターンの評価を行い、前記第1の評価パターンと前記第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンのうち、前記コスト値が最も低い評価パターンによる前記訂正後の信号を出力する
請求項1記載の誤り訂正方法。
【請求項3】
前記コスト値は、
前記第1の評価パターンと前記第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンに従って訂正を行った前記主信号に対応する前記尤度情報の尤度値の大きさに基づいて算出する
請求項2記載の誤り訂正方法。
【請求項4】
前記第1の評価パターンは、
前記第1の尤度情報に対応する前記主信号のそれぞれについて訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなるパターンであり、
前記第2の評価パターンは、
前記第2の尤度情報に対応する前記主信号の何れか1つのみを訂正するか、前記第2の尤度情報に対応する前記主信号の全てを訂正しないかを示すパターンである
請求項1に記載の誤り訂正方法。
【請求項5】
inビットの主信号に尤度情報が付加された入力信号を、前記主信号とNdiv個(Ndivは1より大きい整数)の前記尤度情報とに分割する分割回路と、
前記分割回路で分割された尤度情報毎に、前記尤度情報の尤度値が小さい順にn個(nは1より大きい整数、n<Nin/Ndiv)の尤度情報を抽出し、訂正候補となる前記n個の尤度情報を出力する複数の尤度情報抽出回路と、
前記n個の尤度情報のそれぞれに対応する前記主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理回路と
を備え、
前記複数の尤度情報抽出回路のそれぞれは、
前記尤度情報の尤度値に基づいて、前記n個の尤度情報を、第1の尤度情報と前記第1の尤度情報の尤度値よりも大きい尤度値の尤度情報からなる第2の尤度情報とに分類して、前記誤り訂正処理回路に供給するように構成され、
前記誤り訂正処理回路は、
前記第1の尤度情報における前記情報の組み合わせからなる少なくとも1つの第1の評価パターンと、前記第2の尤度情報における前記情報の組み合わせであって、前記第1の評価パターンの数より少ない数の少なくとも1つの第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンを評価して、出力する前記誤り訂正後の信号を決定するように構成される
誤り訂正回路。
【請求項6】
前記誤り訂正処理回路は、
前記第1の評価パターンと前記第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンに従って訂正を行った場合のコスト値を比較して評価パターンの評価を行い、前記第1の評価パターンと前記第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンのうち、前記コスト値が最も低い評価パターンによる前記訂正後の信号を出力するように構成される
請求項5記載の誤り訂正回路。
【請求項7】
前記コスト値は、
前記第1の評価パターンと前記第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンに従って訂正を行った前記主信号に対応する前記尤度情報の尤度値の大きさに基づいて算出する
請求項6記載の誤り訂正回路。
【請求項8】
前記第1の評価パターンは、
前記第1の尤度情報に対応する前記主信号のそれぞれについて訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなるパターンであり、
前記第2の評価パターンは、
前記第2の尤度情報に対応する前記主信号の何れか1つのみを訂正するか、前記第2の尤度情報に対応する前記主信号の全てを訂正しないかを示すパターンである
請求項5に記載の誤り訂正回路。
【請求項9】
送信データの符号化を行う誤り訂正符号化装置と、前記誤り訂正符号化装置から出力された主信号を用いて変調した光信号を送信する送信モジュールとを備えた送信装置と、
前記送信装置から受信した光信号から主信号を復調するように構成された受信モジュールと、復調された主信号の誤り訂正を行うように構成された誤り訂正装置とを備えた受信装置と
を備えた通信システムであって、
前記誤り訂正装置は、
inビットの主信号に尤度情報が付加された入力信号を、前記主信号とNdiv個(Ndivは1より大きい整数)の尤度情報とに分割する分割回路と、
前記分割回路で分割された尤度情報毎に、前記尤度情報の尤度値が小さい順にn個(nは1より大きい整数、n<Nin/Ndiv)の尤度情報を抽出し、訂正候補となる前記n個の尤度情報を出力する複数の尤度情報抽出回路と、
前記n個の尤度情報のそれぞれに対応する前記主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理回路と
を備え、
前記複数の尤度情報抽出回路のそれぞれは、
前記尤度情報の尤度値に基づいて、前記n個の尤度情報を、第1の尤度情報と前記第1の尤度情報の尤度値よりも大きい尤度値の尤度情報を含む第2の尤度情報とに分類して、前記誤り訂正処理回路に供給するように構成され、
前記誤り訂正処理回路は、
前記第1の尤度情報における前記情報の組み合わせからなる少なくとも1つの第1の評価パターンと、前記第2の尤度情報における前記情報の組み合わせであって、前記第1の評価パターンの数より少ない数の少なくとも1つの第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンを評価して、出力する前記誤り訂正後の信号を決定するように構成される
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤り訂正方法、誤り訂正回路及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント光通信では、伝送特性の向上のために、伝送途中に生じる歪及び周波数/位相変動をデジタル信号処理によって補償しており、更なる伝送特性向上のために、上記の補償機能に加えて、送受信装置間に誤り訂正機能を設けて伝送特性におけるデータ誤りの低減を図っている。誤り訂正機能では、送信側でデータに対して誤り訂正用符号化を行い、受信側でその符号化に応じて誤り訂正を行うことで、伝送特性の向上を図ることができる。
【0003】
誤り訂正符号としては、例えば、ハミング符号、BCH符号、及びリードソロモン符号、並びに、畳み込み符号/ビタビ復号等がよく知られている。近年の通信装置においては、CPUの計算能力の発展によって、複雑かつ大量の処理が可能となったため、LDPC(低密度パリティ検査符号:low-density parity-check code)のような高性能な誤り訂正方法が使用されている。
【0004】
LDPC符号等を用いた誤り訂正の処理においては、復号演算の際の計算量を増大することにより訂正能力を向上させることができるが、復号演算の際の計算量の増大に従って回路規模や消費電力も増大するという問題がある。そのため、従来から回路規模や消費電力の増大を抑えつつ訂正能力を向上させる方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、LDPC符号の反復復号方法において、復号前の符号化データの尤度情報を用いて復号処理を行い、復号処理の繰り返し処理時に尤度情報を更新することで、復号完了までの繰り返し回数を減らす方法が提案されている。また、特許文献2では、復号前の符号化データの尤度情報を用いて符号化データを並べ替えて復号処理を行うことにより、復号能力を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-225164号公報
【文献】特許第4766013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
復号前の符号化データの尤度情報を用いた復号方法では、尤度情報に基づいて訂正候補を選択する等の処理により復号処理を最適化して、訂正能力の向上を図ることができるが、訂正能力を向上させるに従って、尤度情報を計算し尤度情報を用いて復号する際の演算量が増大し、それに応じて処理遅延や消費電力が増大するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、訂正能力を維持しながら処理遅延や消費電力の増大を抑えることができる誤り訂正回路、誤り訂正方法及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明の誤り訂正方法は、分割回路と尤度情報抽出回路と誤り訂正処理回路とを備えた誤り訂正回路において実行される誤り訂正方法であって、前記分割回路が、Ninビットの主信号に尤度情報が付加された入力信号を、前記主信号とNdiv個(Ndivは1より大きい整数)の前記尤度情報とに分割する分割ステップと、前記尤度情報抽出回路が、前記分割ステップで分割された尤度情報毎に、前記尤度情報の尤度値が小さい順にn個(nは1より大きい整数、n<Nin/Ndiv)の尤度情報を抽出し、訂正候補となる前記n個の尤度情報を出力する尤度情報抽出ステップと、前記誤り訂正処理回路が、前記n個の尤度情報のそれぞれに対応する前記主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理ステップとを備え、前記尤度情報抽出ステップは、前記尤度情報の尤度値に基づいて、前記n個の尤度情報を、第1の尤度情報と前記第1の尤度情報の尤度値よりも大きい尤度値の尤度情報からなる第2の尤度情報とに分類して、前記誤り訂正処理回路に供給し、前記誤り訂正処理ステップは、前記第1の尤度情報における前記情報の組み合わせからなる少なくとも1つの第1の評価パターンと、前記第2の尤度情報における前記情報の組み合わせであって、前記第1の評価パターンの数より少ない数の少なくとも1つの第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンを評価して、出力する前記誤り訂正後の信号を決定する。
【0010】
上述したような課題を解決するために、本発明の誤り訂正装置は、Ninビットの主信号の各ビットに尤度情報が付加された入力信号を、前記主信号とNdiv個(Ndivは1より大きい整数)の前記尤度情報とに分割する分割回路と、前記分割回路で分割された尤度情報毎に、前記尤度情報の尤度値が小さい順にn個( nは1より大きい整数、n<Nin/Ndiv)の尤度情報を抽出し、訂正候補となる前記n個の尤度情報を出力する複数の尤度情報抽出回路と、前記n個の尤度情報のそれぞれに対応する前記主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理回路とを備え、前記複数の尤度情報抽出回路のそれぞれは、前記尤度情報の尤度値に基づいて、前記n個の尤度情報を、第1の尤度情報と前記第1の尤度情報の尤度値よりも大きい尤度値の尤度情報からなる第2の尤度情報とに分類して、前記誤り訂正処理回路に供給するように構成され、前記誤り訂正処理回路は、前記第1の尤度情報における前記情報の組み合わせからなる少なくとも1つの第1の評価パターンと、前記第2の尤度情報における前記情報の組み合わせであって、前記第1の評価パターンの数より少ない数の少なくとも1つの第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンを評価して、出力する前記誤り訂正後の信号を決定するように構成される。
【0011】
上述したような課題を解決するために、本発明の通信システムは、送信データの符号化を行う誤り訂正符号化装置と、前記誤り訂正符号化装置から出力された主信号を用いて変調した光信号を送信する送信モジュールとを備えた送信装置と、前記送信装置から受信した光信号から主信号を復調するように構成された受信モジュールと、復調された主信号の誤り訂正を行うように構成された誤り訂正装置とを備えた受信装置とを備えた通信システムであって、前記誤り訂正装置は、Ninビットの主信号に尤度情報が付加された入力信号を、前記主信号とNdiv個(Ndivは1より大きい整数)の前記尤度情報とに分割する分割回路と、前記分割回路で分割された尤度情報毎に、前記尤度情報の尤度値が小さい順にn個( nは1より大きい整数、n<Nin/Ndiv)の尤度情報を抽出し、訂正候補となる前記n個の尤度情報を出力する複数の尤度情報抽出回路と、前記n個の尤度情報のそれぞれに対応する前記主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理回路とを備え、前記複数の尤度情報抽出回路のそれぞれは、前記尤度情報の尤度値に基づいて、前記n個の尤度情報を、第1の尤度情報と前記第1の尤度情報の尤度値よりも大きい尤度値の尤度情報からなる第2の尤度情報とに分類して、前記誤り訂正処理回路に供給するように構成され、前記誤り訂正処理回路は、前記第1の尤度情報における前記情報の組み合わせからなる少なくとも1つの第1の評価パターンと、前記第2の尤度情報における前記情報の組み合わせであって、前記第1の評価パターンの数より少ない数の少なくとも1つの第2の評価パターンとを組み合わせた評価パターンを評価して、出力する前記誤り訂正後の信号を決定するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、訂正能力を維持しながら処理遅延や消費電力の増大を抑えることができる誤り訂正回路、誤り訂正方法及び通信システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置を含む通信システムの構成例を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置の構成例を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正回路の構成例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正回路の他の構成例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る尤度情報を説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正回路の動作を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の効果を説明するための図である。
図8図8は、従来の誤り訂正回路の構成例を示す図である。
図9図9は、誤り訂正回路の入力信号の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。但し、本発明は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に説明する実施の形態に限定して解釈すべきではない。
【0015】
<本発明の概要>
本発明の目的は、訂正能力を維持しながら処理遅延や消費電力の増大を抑えることができる誤り訂正回路、誤り訂正方法及び通信システムを提供することである。
【0016】
従来の誤り訂正回路の構成例を示す図を図8に示す。誤り訂正回路は、符号化データの尤度情報を用いて誤り訂正を行う誤り訂正回路である。
【0017】
誤り訂正回路20は、誤り訂正前の符号化データである主信号に尤度情報が付加された入力信号を受信し、入力信号を主信号と尤度情報とに分割する分割回路30と、分割回路30で分割された尤度情報から、尤度情報の尤度値が小さい順にn個の尤度情報を抽出し、誤り訂正処理回路50に訂正候補となる主信号の尤度情報を供給する尤度情報抽出回路40と、尤度情報のそれぞれに対応する符号化データを訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理回路50とを備える。
【0018】
誤り訂正処理回路50には、尤度情報抽出回路40から供給された訂正候補となる主信号の尤度情報と、分割回路30において分割された主信号が入力される。誤り訂正処理回路50では、訂正候補の尤度情報に含まれるアドレス情報に従って主信号の誤り訂正が行われる。
【0019】
図9は、誤り訂正回路20の入力信号の構成例を示す図である。Nin個の入力信号の各々は、Ninビットの主信号と尤度情報から構成されている。尤度情報は、主信号の尤度値と各信号がNin個の入力信号中の何番目の信号に対応するかを表すアドレス情報から構成されている。図9では、尤度値として対数尤度比(LLR:Log Likelihood Ratio)を用いている。
【0020】
図9の構成例では、Nin個の入力信号の各々は、1ビットの主信号、NLLRビットの対数尤度比(LLR)、Nadビット(Nad=login)のアドレス情報から構成されている。LLRの大きさは2のNLLR乗の段階で表される。例えば、NLLRビットが、3ビットの場合は、8段階で表される。
【0021】
分割回路30は、入力信号を主信号と尤度情報に分割し、Ninビットの主信号と、(NLLR+Nad)ビットからなるNin個の尤度情報を出力する。
【0022】
尤度情報抽出回路40は、Nin個の尤度情報に対し、LLRが小さい順にn個(nは1より大きい整数、n<Nin)の尤度情報を抽出し、訂正候補として誤り訂正処理回路50に出力する。
【0023】
誤り訂正処理回路50は、訂正候補のn個の尤度情報のアドレス情報に対応するnビットの主信号の各々について「訂正を行う」or「訂正を行わない」の組み合わせからなる評価パターンを評価し、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する。この場合の評価パターンの数は、2のn乗となる。
【0024】
例えば、Nin=256ビット、NLLR=3ビット、Nad=8ビット、n=8個とした場合、n=8個の訂正候補の各々のビットについて「訂正を行う」or「訂正を行わない」の組み合わせからなる評価パターンを評価する場合の評価パターン数は、2=256となる。
【0025】
ここで、評価パターンの評価は、各評価パターンに従って訂正を行った結果における「コスト値」を比較することにより行う。誤り訂正処理回路は、各評価パターンの「コスト値」が最も低い評価パターンの訂正結果を出力する。この「コスト値」は、訂正を行った信号のLLRの大きさによって算出すればよい。訂正を行った信号のLLRの合計値が小さい評価パターンは、「コスト値」が低く、訂正を行った信号のLLRの合計値が大きい評価パターンは「コスト値」が高い。コスト値による評価によって、最尤評価パターンが選択される。
【0026】
従来の誤り訂正回路20では、尤度情報抽出回路40で抽出する訂正候補の信号の個数nを増やすことにより誤り訂正能力を高めることができる。一方で、訂正候補の信号の個数nを増やすと尤度情報抽出回路40で尤度情報を抽出する際の演算量、及び、誤り訂正処理回路50において評価パターンを評価する際の演算量が増えてしまい、それにより回路規模や消費電力が増大するという問題がある。
【0027】
本発明では、尤度情報を用いて誤り訂正を行う誤り訂正回路において、主信号の尤度情報を、複数の尤度情報に分割して、分割後の複数の尤度情報のそれぞれから、低い尤度値の尤度情報を訂正候補として抽出することで、並列処理で尤度情報を抽出することにより、尤度情報の抽出に伴う処理遅延を低減し、さらに、抽出した訂正候補の尤度情報について、尤度値の大きさに基づいて重みづけを行い、重みづけに応じて、訂正を行う信号の評価パターンを変更して、評価パターンを評価する際の演算量を削減する。
【0028】
本発明によれば、従来と同様の訂正能力を維持しながら、誤り訂正回路の処理遅延を低減し消費電力の低減を実現することができる。
【0029】
<誤り訂正装置を含む通信装置>
図1は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置を含む通信装置の構成例である。図1の構成例は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置100をコヒーレント光通信方式の通信システムに適用した構成例である。
【0030】
図1のコヒーレント光通信方式の通信システムにおいて、送信側装置は、送信信号処理装置300と光送信モジュール400とを備え、受信側装置は、光受信モジュール500と受信信号処理装置600とを備える。送信側装置と受信側装置とは、光ファイバ伝送路1000を介して接続されている。送信信号処理装置300は、誤り訂正符号化装置200を備え、受信信号処理装置600は、誤り訂正装置100を備える。
【0031】
送信信号処理装置300における誤り訂正符号化装置200は、送信データに対して誤り訂正用の符号化を行う。光送信モジュール400は、誤り訂正用の符号化が行われた送信データによって変調を行って光信号を生成し、光ファイバ伝送路1000に伝送する。一般的なコヒーレント光通信では、水平偏波光信号Xと垂直偏波光信号とが合成された信号が光送信モジュール400から光ファイバ伝送路1000に伝送される。例えば、変調方式としてQPSKを用いた場合、送信データは、水平偏波光信号用データ(XI、XQ)と、垂直偏波光信号用データ(YI、YQ)とに分けられる。
【0032】
XI及びXQは、それぞれ、水平偏波光信号用データの複素平面上での水平軸及び直交軸上の座標、即ち水平成分及び直交成分を示す。また、YI及びYQは、それぞれ、垂直偏波光信号用データの複素平面上での水平軸及び直交軸上の座標、即ち水平成分及び直交成分を示す。水平偏波光信号用データ(XI、XQ)と、垂直偏波光信号用データ(YI、YQ)は、搬送波の複素平面上の座標にマッピングされ、光送信モジュール400から光ファイバ伝送路1000に伝送される。
【0033】
光受信モジュール500は、光ファイバ伝送路1000を経由して受信した光信号を復調して受信データを生成し、変調方式としてQPSKを用いた場合、生成された水平偏波光信号用データ(XI、XQ)と、垂直偏波光信号用データ(YI、YQ)が出力される。出力されたこれらのデータ(XI、XQ、YI、YQ)は、受信信号処理装置600において、デジタル信号に変換されて、誤り訂正装置100において誤り訂正処理が行われる。
【0034】
コヒーレント光通信システムでは、送信データは、水平偏波光信号と垂直偏波光信号とで送信されるが、水平偏波、垂直偏波の一方の偏波信号のみで送ることも可能である。その場合でも、本発明の実施形態に係る誤り訂正装置100を使用することができる。
【0035】
また、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置100を使用できる通信システムは、上述したコヒーレント光通信システムに限定されない。無線通信システムを含めた他の通信システムにおいても本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置100を使用することができる。そのような通信システムも本発明の範囲内であることは言うまでもない。
【0036】
<誤り訂正装置の構成>
受信信号処理装置600には、光受信モジュール500から、水平偏波光信号用データ(XI、XQ)と、垂直偏波光信号用データ(YI、YQ)が供給され、受信信号処理装置600においてデジタル信号に変換された信号に対して、誤り訂正装置100において誤り訂正復号処理が行われる。
【0037】
誤り訂正装置100における誤り訂正アルゴリズムとしては、一般に、LDPC符号を用いた復号、畳み込み符号/ビタビ復号、Chase復号など、様々な復号アルゴリズムが適用可能である。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置の構成例を示す図である。本実施の形態では、尤度情報を用いた誤り訂正処理を行うため、受信側の誤り訂正装置100は、受信した誤り訂正前の主信号に尤度情報を付加する尤度情報付加回路10と誤り訂正回路20を備えている。
【0039】
<尤度情報付加回路>
誤り訂正装置100の尤度情報付加回路10では、入力された主信号のビット(またはシンボル)毎に尤度値が算出され、尤度情報のアドレス情報とともに主信号に付加される。誤り訂正回路20に入力される入力信号の構成は、図9で説明した従来の入力信号の構成と同様である。本実施の形態では、尤度情報の尤度値として対数尤度比(LLR)を用いた場合を説明する。
【0040】
<誤り訂正回路>
誤り訂正装置100の誤り訂正回路20では、尤度情報付加回路10から供給された入力信号に含まれる尤度情報を用いて、主信号に対する誤り訂正処理が実行される。本実施の形態では、尤度情報のそれぞれに対応する主信号を「訂正する」か「訂正しない」かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正された訂正後の信号を出力する。
【0041】
誤り訂正回路20では、符号化データの尤度情報を、複数の信号に分割して、分割後の信号のそれぞれから、低い尤度値を訂正候補として抽出することで、並列処理で尤度情報を抽出することにより、尤度情報の抽出に伴う処理遅延を低減し、さらに抽出した訂正候補の尤度情報について、尤度値の大きさに基づいて重みづけを行い、重みづけに応じて、訂正を行う信号の評価パターンを変更して、評価パターンを評価する際の演算量を削減する。
【0042】
<尤度情報について>
本実施の形態の誤り訂正回路で用いる尤度情報について説明する。尤度情報とはビット(またはシンボル)毎の確からしさ(信頼度)を表すものである。図2における尤度情報付加回路10の尤度情報の対数尤度値は、誤り訂正前の入力信号のビット(またはシンボル)毎の確からしさを表している。対数尤度値が大きいほど確からしさが高く、誤りが少ない状態であるといえる。
【0043】
座標情報に基づいた尤度情報を求める場合は、座標情報はシンボル毎(シンボル:通信において1回の変調で送られる1まとまりのデータ)となるので、複数ビットで1シンボルとなる場合は、ビット毎に尤度情報を求めることもできるし、シンボル毎に尤度算出してシンボル内の各ビットを共通の尤度情報とすることもできる。
【0044】
複数ビットで1シンボルとなる変調方式の例としては、QPSKは1シンボルで2ビット、16QAMは1シンボルで4ビットの情報を持ち、さらに直交偏波多重により1シンボル時間当たりのビット数の情報を2倍(QPSKならば4ビット、16QAMならば8ビット)伝送できるものとなっている。
【0045】
尤度値は、複素平面上で、受信した座標値の理想的な座標点からの雑音等による偏移量によって測ることができ、送信する理想点の座標値と、受信した座標値の間の距離(偏移量)に基づいて算出することができる。この偏移量が小さい程、データの「確からしさ」を示す尤度値が大きいと推定される。すなわち、尤度値と座標上の偏移量は、逆の増減関係にある。入力信号の信頼度を表す尤度情報の尤度値は、アナログ値であるため、何ビットで表現するかは適宜設定可能である。
【0046】
よって、対象とするビット(またはシンボル)の尤度値が小さいほど、座標上の偏移量が多いから、そのビット(またはシンボル)の信頼度(確からしさ)が低いと判定して、尤度値に基づく誤り訂正処理の訂正候補とすればよい。
【0047】
複素平面上の座標間の距離の算出方法としては、各軸上の座標値の差分の絶対値の和を用いて算出する方法などが考えられる。受信した座標が、理想の座標点と重なった場合が最大の尤度値をもつ場合であり、理想の座標点からの差分が増えるほど尤度値は減少する。複数の理想の座標点がある場合、理想の座標点の中間座標が最小の尤度値を持つこととなる。
【0048】
上記の説明では、座標における差分(偏移量)を尤度の指標としたが、尤度の計算は、上述した座標における差分を用いるものに限定されない。例えば、信号強度だけ、或いは位相差だけで尤度を求めることも可能である。確からしさを示す指標である尤度は、一般的には種々の方法で計算可能であり、本発明においても、確からしさを示す指標であれば他の指標を使用することができる。本発明において、尤度として座標差分以外の他の指標を使用することも可能であり、そのような場合も本発明の範囲であることは言うまでもない。
【0049】
<尤度情報の具体例>
本実施の形態では、尤度情報の尤度値として対数尤度比(LLR)を用いる。尤度値は、対数尤度比に限定されるものではなく、他の尤度値を用いてもよい。以下では、尤度値として対数尤度比を用いた場合の対数尤度比の具体例を、変調方式としてQPSKを用いた場合について説明する。
【0050】
尤度値としては、上記のように受信信号の座標および送信信号の座標に基づき、それらの間の位置関係(距離情報)に基づいて求めたものを用いることができ、その値が受信信号の座標の確からしさを表すことができる。
【0051】
図5は、本発明の実施の形態に係る尤度情報を説明するための図である。送信側で設定した理想の座標点をXt1(XIt1、XQt1)、座標点Xt1と異なる隣接の信号点の座標点をXt2(XIt2、XQt2)、受信側の座標点をXr(XIr、XQr)とする。
【0052】
Arは受信側の誤り訂正前の振幅、At1は理想の座標点Xt1の理想的な振幅、At2は座標点Xt1と異なる隣接の座標点Xt2の振幅であり、φ1、φ2は、各々受信側の座標点XrとXt1、Xt2との位相差である。
【0053】
複素平面上で表すと、座標点と振幅及び位相の間には以下の関係式が成り立つ。
(XIr-XIt1)+j(XQr-XQt1)=(Ar/At1)exp(jφ1)
(XIr-XIt2)+j(XQr-XQt2)=(Ar/At2)exp(jφ2)
【0054】
尤度値としては、例えば、送信側の座標と、受信側の座標における座標値の差の絶対値を用いて以下のように求めることができる。
L1=|XIr-XIt1|+|XQr-XQt1|
L2=|XIr-XIt2|+|XQr-XQt2|
【0055】
尤度値は、上記のL1とL2の比であり、対数尤度比(LLR)は、尤度比を対数変換することにより以下のように求めることができる。
LLR=ln(L1/L2)
【0056】
尤度値としては、尤度比を対数変換せず、L1/L2の値を尤度値として用いることもできる。この場合、対数演算による演算処理量を削減し、それに必要な回路規模を削減することができる。また、尤度情報としては、座標値の差に基づく情報に限られず、確からしさを示す指標であれば他の情報を用いてもよい。
【0057】
上記では、1つの偏波信号(水平偏波光信号X)についての対数尤度比の算出例を説明したが、直交偏波多重伝送の場合の他方の偏波信号(垂直偏波光信号Y)においても同様にして対数尤度比を算出することができる。
【0058】
座標値から対数尤度比を求める方法としては、演算器を用いて距離や対数値を求める方法があるが、ルックアップテーブルとして対数変換テーブルを持つ方法や、受信信号の座標値と尤度情報のテーブル等を予めメモリに保持しておき、このテーブルを参照して対応付けする方法が考えられ、これによって対数値または尤度情報を求めることもできる。対数変換テーブルや、座標・尤度情報変換テーブル等の変換テーブルを予め用意しておいて用いることで、対数変換や尤度情報変換等のための演算器が不要となり、処理の高速化や回路規模の削減の効果が得られる。
【0059】
当該変換テーブルについては、多くのパターンの変換表を持っておいてもよいし、部分的な対応表を保持しておき、対数関数の対称性や相似性等を利用して、任意の定数倍や任意の定数加算を組み合わせて対数値を求めてもよい。このようなハードウェア向けの簡略化した方法を用いることで、処理時間、回路規模、消費電力の削減効果が得られる。
【0060】
図5では、変調方式としてQPSKを用いた場合の尤度情報の算出方法を説明したが、変調方式として他の変調方式を用いた場合においても、同様の方法で尤度情報を求めることができる。本実施の形態における誤り訂正は、変調方式に依存しないため、BPSK、8QAM、16QAM、64QAMや他の変調方式を用いた場合にも、同様の誤り訂正方法を適用することができる。
【0061】
例えば、BPSKを用いた場合には、送信側の理想の座標点をXt1(XIt1、0)、Xt2(XIt2、0)、受信側の誤り訂正前の座標Xr(XIr、0)として、Xrと、送信側の理想の座標点(Xt1、XIt2)との差分の絶対値の和等を用いて尤度情報を求めることができる。直交偏波多重伝送の場合の他方の偏波信号(垂直偏波光信号Y)においても同様にして尤度情報を算出することができる。
【0062】
<第1の実施の形態>
<誤り訂正回路の構成>
図3は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正回路の構成例を示す図である。本実施の形態に係る誤り訂正回路20は、主信号に尤度情報が付加された入力信号を受信し、入力信号を主信号と尤度情報とに分割する分割回路30と、分割回路で分割された尤度情報毎に、尤度情報の尤度値が小さい順にn個の尤度情報を抽出し、誤り訂正処理回路に訂正候補となる主信号の尤度情報を供給する尤度情報抽出回路40と、尤度情報のそれぞれに対応する主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正された信号を出力する誤り訂正処理回路50と備える。
【0063】
本発明では、尤度情報を用いて誤り訂正を行う誤り訂正回路において、符号化データの尤度情報を、複数の信号に分割して、分割後の信号のそれぞれから、低い尤度値を訂正候補として抽出することで、並列処理で尤度情報を抽出することにより、尤度情報の抽出に伴う処理遅延を低減し、さらに、抽出した訂正候補の尤度情報について、尤度値の大きさに基づいて重みづけを行い、重みづけの大きさに応じて、訂正を行う信号の評価パターンを変更して、評価パターンを評価する際の演算量を削減する。
【0064】
<入力信号>
誤り訂正回路20に入力される入力信号の構成は、図9で説明した従来の入力信号の構成と同様である。Nin個の入力信号の各々は、主信号と尤度情報から構成されている。尤度情報は、主信号の対数尤度比(LLR)と 各信号がNin個の入力信号中の何番目の信号に対応するかを表すアドレス情報から構成されている。
【0065】
<分割回路の動作>
分割回路では、符号化データに尤度情報が付加された入力信号を受信し、Nin個の入力信号毎に、入力信号を主信号と所定の分割数Ndiv個(Ndivは1より大きい整数)の尤度情報とに分割する。分割回路では、入力信号から主信号を除いた(NLLR+Nad) ビットからなるNin個の尤度情報をNdiv個に分割し、尤度情報1、尤度情報2、・・・、尤度情報Ndivとして出力するとともに、Nin個の各信号から尤度情報を除いたNinビットの主信号を出力する。
【0066】
<尤度情報抽出回路の動作>
図3は、尤度情報を2分割(Ndiv=2)する場合の誤り訂正回路20の構成例である。尤度情報抽出回路40は、尤度情報抽出回路41と尤度情報抽出回路42から構成されている。分割回路30で分割されたNin/Ndiv個の尤度情報がNdiv個の尤度情報抽出回路(41、42)の各々に入力され、尤度情報抽出回路(41、42)の各々において、尤度情報の尤度値が小さい順にn個(nは1より大きい整数、n<Nin/Ndiv)の尤度情報が訂正候補として抽出される。
【0067】
尤度情報抽出回路(41、42)は、誤り訂正処理回路50の評価対象分類数Nevに従って、n個の尤度情報を分類して、誤り訂正処理回路50に供給する。誤り訂正処理回路50において、尤度情報の尤度値に基づく重みづけを行って、尤度情報の大きさに応じて評価パターンを変更するためである。
【0068】
図3の構成例では、誤り訂正処理回路50の評価対象分類数Nevが2であるので、尤度情報を第1の尤度情報と、第1の尤度情報よりも尤度値の大きい第2の尤度情報の2つに分類して、誤り訂正処理回路50に供給している。
【0069】
尤度情報抽出回路41は、訂正候補1,1(第1の尤度情報)と、訂正候補1,1よりも大きい尤度値の訂正候補1,2(第2の尤度情報)を誤り訂正処理回路50に供給する。同様にして、尤度情報抽出回路42は、訂正候補2,1(第1の尤度情報)と、訂正候補2,1よりも大きい尤度値の訂正候補2,2(第2の尤度情報)を誤り訂正処理回路50に供給する。
【0070】
尤度情報を分割し、分割後の信号のそれぞれから、低い尤度値の尤度情報を訂正候補として抽出することで、並列処理で尤度情報を抽出することにより、尤度情報の抽出に伴う処理遅延を低減することができる。
【0071】
誤り訂正処理回路50の評価対象分類数Nevが2より大きい場合には、尤度情報抽出回路(41、42)は、訂正候補を、訂正候補x,1、訂正候補x,2、・・・、訂正候補x,Nevに分類する。この場合、訂正候補x,1、訂正候補x,2、・・・、訂正候補x,NevのLLRの大きさは、LLR(訂正候補x,1) <LLR(訂正候補x,2) <、・・・、 <LLR(訂正候補x,Nev)である。分割回路における分割数が2の場合には、xは、1又は2であり、分割数がNdivの場合には、xは、1~Ndivにおける整数である。
【0072】
訂正候補x,1、訂正候補x,2、・・・、訂正候補x,Nevが有する尤度情報の個数はそれぞれ1個以上とする。また、それぞれの評価パターンのために各尤度情報抽出回路から供給される尤度情報の数は同一である。図3の構成例では、 訂正候補1,1と 訂正候補2,1の尤度情報の数は同一であり、訂正候補1,2と 訂正候補2,2の尤度情報の数は同一である。
【0073】
<誤り訂正処理回路の動作>
誤り訂正処理回路50には、尤度情報抽出回路(41、42)で分類された尤度情報と、分割回路30において分割された主信号が入力される。誤り訂正処理回路50では、訂正候補の尤度情報に含まれるアドレス情報に従って主信号の誤り訂正が行われる。
【0074】
誤り訂正処理回路50では、n個の尤度情報のそれぞれに対応する主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する。誤り訂正処理回路50では、尤度値の大きさに基づいて重みづけを行い、重みづけに応じて、訂正を行う信号の評価パターンを変更して、評価パターンを評価する際の演算量を削減する。
【0075】
図3の構成例では、尤度値が低い尤度情報(第1の尤度情報)を評価する評価パターン51(第1の評価パターン)と尤度値が高い尤度情報(第2の尤度情報)を評価する評価パターン52(第2の評価パターン)について評価パターンの評価を行う。
【0076】
評価パターンの評価は、各評価パターンに従って訂正を行った結果の「コスト値」を比較することにより行う。誤り訂正処理回路50は、各評価パターンの「コスト値」が最も低い評価パターンの訂正結果を出力する。「コスト値」は、訂正を行った信号のLLRの大きさによって算出すればよい。訂正を行った信号のLLRの合計値が小さい評価パターンは、「コスト値」が低く、訂正を行った信号のLLRの合計値が大きい評価パターンは「コスト値」が高い。コスト値による評価によって、最尤評価パターンが選択される。
【0077】
誤り訂正処理回路50では、尤度情報の尤度値に基づく重みづけを行うため、第1の評価パターン51に対しては、尤度情報抽出回路40から訂正候補1,1(第1の尤度情報)と訂正候補2,1(第1の尤度情報)が供給され、第2の評価パターン52に対しては、訂正候補1,2(第2の尤度情報)、訂正候補2,2(第2の尤度情報)が供給される。
【0078】
誤り訂正処理回路50では、第1の評価パターン51は、尤度値が低い尤度情報を評価するので、評価する評価パターン数を多くし、第2の評価パターン52は、第1の評価パターンよりも尤度値が高い尤度情報を評価するので、評価する評価パターン数を少なくする。
【0079】
尤度値が低い尤度情報に対しては、より多くの評価パターンでの評価を行い、一方、尤度値が高い尤度情報に対しては、より少ない評価パターンでの評価を行うことで、訂正能力を維持しながら、誤り訂正を行う信号を決定する際の評価パターン数を削減し、評価を行う際の演算量を削減することができる。
【0080】
図3の構成例における入力信号等の各パラメータの例を以下に示す。
入力信号の個数:Nin=256
対数尤度比(LLR)を表すビットのビット数:NLLR=3
アドレス情報を表すビットのビット数:Nad=8
入力信号の分割数:Ndiv=2
LLRの大きさによって訂正候補を分類する評価対象分類数:Nev=2
訂正候補x,y(x=1~Ndiv、y=1~Nev)の尤度情報の個数:
N1,1=N2,1=3、 N1,2=N2,2=2
各尤度情報抽出回路で抽出する訂正候補の信号の個数:
n=N1,1+N1,2=N2,1+N2,2=5
尤度情報抽出回路#1、2で抽出する訂正候補の信号の個数:
all=n×Ndiv=10
【0081】
上記パラメータを用いた場合の評価パターンを以下に示す。評価パターン#1は、尤度値が低い尤度情報を評価するので、評価する評価パターン数を多くし、評価パターン#2は、評価パターン#1よりも尤度値が高い尤度情報を評価するので、評価する評価パターン数を少なくする。
【0082】
[評価パターン#1]
N1,1+N2,1=6ビットの信号の各々のビットについて「訂正を行う」or「訂正を行わない」を示す情報の組み合わせからなる評価パターン数:
Npattern1=2(N1,1+N2,1)=2=64
[評価パターン#2]
N1,2+N2,2=4ビットの信号の中の1つのビットのみ訂正を行うか、全てのビットの訂正を行わないかを示す評価パターン数:
Npattern2=N1,2+N2,2+1=5
[評価対象全体]
[評価パターン#1]と[評価パターン#2]を組み合わせた評価パターン数:
Npattern_all=Npattern1×Npattern2=320
【0083】
<第2の実施の形態>
図3は、分割回路における分割数=2、尤度情報抽出回路および誤り訂正処理回路における評価分類数=2の場合の構成例である。分割回路における分割数、尤度情報抽出回路および誤り訂正回路における尤度情報の評価対象分類数は、要求される処理遅延や消費電力の要求条件に応じて適宜定めることができる。
【0084】
<誤り訂正回路の構成>
図4は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正回路の他の構成例を示す図である。図4は、分割回路における分割数=4、誤り訂正処理回路における評価分類数=4の場合である。分割回路30に入力された入力信号は、尤度情報1-4に4分割されて、それぞれの尤度情報は、尤度情報抽出回路(41、42、43、44)に供給される。
【0085】
尤度情報抽出回路(41、42、43、44)のそれぞれは、尤度情報を3つに分類して、訂正候補(1,1~4,3)として誤り訂正処理回路50に供給する。尤度情報抽出回路41における訂正候補の尤度値は、訂正候補(1,1)<訂正候補(1,2)<訂正候補(1,3)である。尤度情報抽出回路(42、43、44)においても同様である。
【0086】
誤り訂正処理回路50は、n個の尤度情報のそれぞれに対応する符号化データを訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する。誤り訂正処理回路50では、尤度情報に基づく重みづけを行って、尤度情報の大きさに応じて評価パターンを変更する。
【0087】
評価パターン#1は、尤度値の小さい尤度情報を評価する評価パターンであり、評価パターン#2,#3は、評価パターン#1よりも尤度値の大きい尤度情報を評価する評価パターンである。
【0088】
図4の構成例における各パラメータの例を以下に示す。
入力信号の個数:Nin=256
対数尤度比(LLR)を表すビットのビット数:NLLR=3
アドレス情報を表すビットのビット数:Nad=8
入力信号の分割数:Ndiv=4
LLRの大きさによって訂正候補を分類する評価対象分類数:Nev=3
訂正候補x,y(x=1~Ndiv、y=1~Nev)の尤度情報の個数:
N1,1=N2,1=N3,1=N4,1=1、N1,2=N2,2=N3,2=N4,2=1、N1,3=N2,3=N3,3=N4,3=1
各尤度情報抽出回路で抽出する訂正候補の信号の個数:
n=N1,1+N1,2+N1,3=N2,1+N2,2+N2,3=N3,1+N3,2+N3,3=N4,1+N4,2+N4,3=3
尤度情報抽出回路#1~尤度情報抽出回路#Ndivの全体で抽出する訂正候補の信号の個数:
all=n×Ndiv=12
【0089】
上記パラメータの用いた場合の評価パターンを以下に示す。評価パターン#1は、尤度値が低い尤度情報を評価するので、評価する評価パターン数を多くし、評価パターン#2、#3は、評価パターン#1よりも尤度値が高い尤度情報を評価するので、評価する評価パターン数を少なくする。
【0090】
[評価パターン#1]
N1,1+N2,1+N3,1+N4,1=4ビットの信号の各々のビットについて「訂正を行う」or「訂正を行わない」を示す情報の組み合わせからなる評価パターン数:
Npattern1=2(N1,1+N2,1+N3,1+N4,1)=2=16
[評価パターン#2]
4ビットの信号の中の1つのビットのみ訂正を行うか、全てのビットの訂正を行わないかを示す評価パターン数:
Npattern2=N1,2+N2,2+N3,2+N4,2+1=5
[評価パターン#3]
4ビットの信号の中の1つのビットのみ訂正を行うか、全てのビットの訂正を行わないかを示す評価パターン数:
Npattern3=N1,3+N2,3+N3,3+N4,3+1=5
[評価対象全体]
[評価パターン#1]、[評価パターン#2]、[評価パターン#3]を組み合わせた評価パターン数:
Npattern_all=Npattern1×Npattern2×Npattern3=400
【0091】
<誤り訂正方法の動作>
図6は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の誤り訂正動作を説明するためのフロー図である。本実施の形態の誤り訂正動作は、分割回路30、尤度情報抽出回路40、誤り訂正処理回路50を備えた誤り訂正回路20において実行される。
【0092】
<分割回路の動作>
分割回路は、符号化データに尤度情報が付加された入力信号を受信し(S1-1)、入力信号から尤度情報を除いた主信号を出力し、入力信号から主信号を除いた尤度情報を所定の分割数に分割して出力する(S1-2)。
【0093】
尤度情報抽出回路40は、尤度情報の尤度値が小さい順にn個の尤度情報を訂正候補として抽出し(S1-3)、評価対象分類数に従って、n個の尤度情報を尤度値に基づいて分類して、誤り訂正処理回路50に供給する(S1-4)。
【0094】
誤り訂正処理回路50は、n個の尤度情報のそれぞれに対応する主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価し(S1-5)、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する(S1-6)。
【0095】
<本発明の実施の形態の効果>
図8の従来技術においては、尤度情報抽出回路40で抽出する訂正候補の信号の個数nをn=10に設定すると、訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる210=1024通りの評価パターンを評価する必要がある。
【0096】
一方、図3の本発明の実施の形態においては、尤度情報を2分割し、分割後のそれぞれの信号から低LLRの信号を訂正候補として抽出することにより、並列処理で尤度情報を抽出することにより、尤度情報の抽出に伴う処理時間の短縮を実現することができる。
【0097】
さらに、抽出された訂正候補について、LLRの大きさに基づいた重み付けを行い、重みの大きさによって評価パターンを変えることにより、nall=10(n=5)の場合においても評価パターン数は320通りとなる。誤り訂正回路全体としては、訂正候補の信号の個数nを維持しながら、評価対象となる評価パターン数を大幅に削減することができる。
【0098】
同様に、図8の従来技術において、抽出する訂正候補の信号の個数nをn=12に設定すると、212=4096通りの評価パターンを評価する必要があるが、図4の本発明の実施の形態においては、nall=12(n=3)の場合においても評価パターン数は400通りとなる。抽出する訂正候補の尤度情報の個数nを維持しながら、評価対象となる評価パターン数を大幅に削減することができる。
【0099】
図7は、図8の従来技術と図3の本発明の実施の形態における回路規模及び消費電力の概算値と、それぞれにおける削減率を示したものである。尚、図7は、500MHz動作時で尤度情報抽出回路のみの回路規模及び消費電力を比較したデータである。
【0100】
Area Logicは、論理演算の数に対応し、単位はメガゲート(MG)である。本発明の実施の形態によれば、従来と比較して、回路規模及び消費電力を低減できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、光通信等における誤り訂正装置及び通信システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10…尤度情報付加回路、20…誤り訂正回路、30…分割回路、40…尤度情報抽出回路、50…誤り訂正処理回路、100…誤り訂正装置、200…誤り訂正符号化装置、300…送信信号処理装置、400…光送信モジュール、500…光受信モジュール、600…受信信号処理装置。
【要約】
【課題】訂正能力を維持しながら処理遅延や消費電力の増大を抑えることができる誤り訂正回路を提供する。
【解決手段】本発明の誤り訂正回路(20)は、誤り訂正前の符号化データである主信号に尤度情報が付加された入力信号を受信し、入力信号を主信号と尤度情報とに分割する分割回路(30)と、分割回路(30)で分割された尤度情報から、尤度情報の尤度値が小さい順にn個の尤度情報を抽出し、誤り訂正処理回路(50)に訂正候補となる主信号の尤度情報を供給する尤度情報抽出回路(40)と、尤度情報のそれぞれに対応する主信号を訂正するか否かを示す情報の組み合わせからなる評価パターンを評価して、その評価結果に基づいて誤り訂正後の信号を出力する誤り訂正処理回路(50)を備える。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9