(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】銀行システム、及び銀行システムによって実行される方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20240619BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2023114403
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】397077955
【氏名又は名称】株式会社三井住友銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 佳代
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮内 勇人
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-083377(JP,A)
【文献】特開2021-135904(JP,A)
【文献】特開2022-099174(JP,A)
【文献】特許第7289412(JP,B1)
【文献】特開2022-154916(JP,A)
【文献】特開2022-015435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、
外部ネットワークと通信するための通信部と、
デジタル給与口座
及び業者指定口座のデータを格納する第1のデータセットと、デジタル給与の支払についてのデータを格納する第2のデータセットとを記憶する記憶部と
、
を備えた銀行システムであって、
前記制御部は、
前記通信部を介して給与額データをユーザの給与支払日よりも前に受信することであって、前記給与額データは、振込先口座の少なくとも一つがデジタル給与口座であることを示す、ことと、
前記第1のデータセットに格納されている前記デジタル給与口座のデータに基づいて、受信した前記給与額データに含まれる振込先口座がデジタル給与口座
であると識別したことを条件として、当該給与額データをデジタル給与用データとして抽出し、抽出した給与額データ
に含まれる前記デジタル給与口座、給与額、及び雇用企業口座のデータと前記第1のデータセット
に含まれる前記デジタル給与口座に関連付けられる前記業者指定口座のデータとに基づいて前記第2のデータセットに登録することと、
前記第2のデータセットから読み出したデータのデジタル給与口座及び給与額に基づいて給与振込予定明細を生成することと、
前記給与振込予定明細に関連付けられるそれぞれの資金移動業者が前記ユーザのデジタル給与口座に関連付けられる電子マネーアカウントに対するチャージ処理を前記給与支払日に完了できているように、前記通信部を介して前記給与振込予定明細を前記給与支払日よりも前に資金移動業者システムに送信することと
、
前記給与振込予定明細の生成に応答して、または前記給与振込予定明細が前記資金移動業者システムに送信されたことに応答して、
前記第2のデータセットから読み出した同一の処理対象月の業者指定口座及び雇用企業口座ごとに前記給与額の総額を計算することにより業者指定口座振込電文を生成することと、
前記業者指定口座振込電文に基づいて、前記計算された給与額の総額を前記雇用企業口座から前記業者指定口座へ振り込む振込処理を実施することと、
を実行するように構成されている銀行システム。
【請求項2】
前記通信部を介してオートスイープ依頼を前記資金移動業者システムから受信したことに応答して、余剰額を業者指定口座からユーザ指定口座に対して振り込む振込処理を実行することであって、前記余剰額は、前記資金移動業者システムによるユーザの電子マネーアカウントへのチャージが行われなかった金額を示す、ことをさらに実行するように構成されている、請求項1に記載の銀行システム。
【請求項3】
前記通信部を介してデジタル給与口座貸出要求を受信したことに応答して、前記第1のデータセットに格納されているデジタル給与口座を、前記デジタル給与口座貸出要求に関連付けられる資金移動業者に割り当てるように構成されている、請求項1に記載の銀行システム。
【請求項4】
制御部と、
外部ネットワークと通信するための通信部と、
デジタル給与口座
及び業者指定口座のデータを格納する第1のデータセットと、デジタル給与の支払についてのデータを格納する第2のデータセットとを記憶する記憶部と
、
を備えた銀行システムによって実行される方法であって、
前記方法は、
前記制御部が、前記通信部を介して給与額データをユーザの給与支払日よりも前に受信することであって、前記給与額データは、振込先であるユーザ口座の少なくとも一つがデジタル給与口座であることを示す、ことと、
前記制御部が、
前記第1のデータセットに格納されている前記デジタル給与口座のデータに基づいて、受信した前記給与額データに含まれる振込先口座がデジタル給与口座
であると識別したことを条件として、当該給与額データをデジタル給与用データとして抽出し、抽出した給与額データ
に含まれる前記デジタル給与口座、給与額、及び雇用企業口座のデータと前記第1のデータセット
に含まれる前記デジタル給与口座に関連付けられる前記業者指定口座のデータとに基づいて前記第2のデータセットに登録することと、
前記制御部が、前記第2のデータセットから読み出したデータのデジタル給与口座及び給与額に基づいて給与振込予定明細を生成することと、
前記制御部が、
前記給与振込予定明細に関連付けられるそれぞれの資金移動業者が前記ユーザのデジタル給与口座に関連付けられる電子マネーアカウントに対するチャージ処理を前記給与支払日に完了できているように、前記通信部を介して前記給与振込予定明細を前記給与支払日よりも前に資金移動業者システムに送信することと、
前記給与振込予定明細の生成に応答して、または前記給与振込予定明細が前記資金移動業者システムに送信されたことに応答して、
前記制御部が、前記第2のデータセットから読み出した同一の処理対象月の業者指定口座及び雇用企業口座ごとに前記給与額の総額を計算することにより業者指定口座振込電文を生成することと、
前記制御部が、前記業者指定口座振込電文に基づいて、前記計算された給与額の総額を前記雇用企業口座から前記業者指定口座へ振り込む振込処理を実施することと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給与振込の前に、ユーザのデジタル給与額の情報を資金移動業者へ提供する銀行システム、及び銀行システムによって実行される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給与のデジタル払いが2023年4月から解禁されたことにより、給与の支払及び受取の選択肢が増えることになった。給与支払元の企業は、個人の電子マネーアカウントを指定して給与支払いを行うことが可能になり、給与受取人は、給与を電子マネーとして受け取ることが可能になった。このような現状を踏まえて、給与として支払われる電子マネーの利用をさらに促進するための技術が考案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7140901号公報
【文献】特開2023-27968号公報
【文献】特許第3029421号公報
【文献】特許第3391753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
厚生労働省の開示する「資金移動業者の口座への賃金支払に関する資金移動業者向けガイドライン」(令和5年3月8日)(以降単に、「資金移動業者向けガイドライン」と称す)の23頁には、「労働者指定口座に資金移動された賃金は、所定の賃金支払日の午前10時頃までに為替取引としての利用(労働者の預貯金口座等への出金指図、店舗等における代金支払への充当、第三者への送金指図等)が行い得る状態となっていること及び所定の賃金支払日のうちに賃金の全額が払い出し得る状態となっていることが必要である」ことが規定されている。
【0005】
しかしながら、従来技術では、資金移動業者が対象の労働者の給与支払額を把握し、対象者のアカウントへ電子マネーチャージを行えるのは、業者口座への振込完了以降であった。従って、資金移動業者は、給与支払日の午前10時までに電子マネーチャージなどの資金移動処理を実行することが困難であり、上記の規定から逸脱する可能性があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、給与支払日の前に、ユーザのデジタル給与額の情報を資金移動業者へ提供する銀行システム、及び銀行システムによって実行される方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である銀行システムは、制御部と、外部ネットワークと通信するための通信部と、デジタル給与口座についてのデータを格納する第1のデータセットと、デジタル給与の支払についてのデータを格納する第2のデータセットとを記憶する記憶部とを備えた銀行システムであって、
前記制御部は、
前記通信部を介して給与額データをユーザの給与支払日よりも前に受信することであって、前記給与額データは、振込先口座の少なくとも一つがデジタル給与口座であることを示す、ことと、
受信した前記給与額データに含まれる振込先口座がデジタル給与口座を示す場合、当該給与額データをデジタル給与用データとして抽出し、抽出した給与額データと前記第1のデータセットの対応するデータとに基づいて前記第2のデータセットに登録することと、
前記第2のデータセットから読み出したデータのデジタル給与口座及び給与額に基づいて給与振込予定明細を生成することと、
前記通信部を介して前記給与振込予定明細を前記給与支払日よりも前に資金移動業者システムに送信することと
を実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給与支払日の前に、ユーザのデジタル給与額の情報を資金移動業者へ提供することができるようになり、資金移動業者は、給与支払日の午前10時までに資金移動処理を実行することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書において開示される実施形態の詳細な理解は、添付図面に関連して例示される以下の説明から得ることができる。
【
図1】本発明の実施形態に係るシステム全体の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る銀行システム10のシステム構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るデジタル給与口座DB206のデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るデジタル給与支払額DB207のデータ構造の一例を示す図である。
【
図5】本発明に係るデジタル給与口座の貸出処理を説明するフロー図である。
【
図6】本発明に係るデジタル給与口座のユーザ割り当て処理を説明するフロー図である。
【
図7】本発明に係る給与振込予定明細生成処理、給与振込処理及びデジタル給与支払処理を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、「銀行」とは、一般社団法人全国銀行協会(本明細書では「全銀協」と呼ぶことにする)によって授与された4桁の金融機関コードを有する金融機関(例えば、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協系、など)を意味するものとして使用する。
【0011】
本明細書では、「電子マネー」とは、貨幣価値をデジタル・データとしてICカードやインターネットに接続されたサーバに記録し、貨幣価値の授受を電子的に行う仕組み(広辞苑第七版)を意味する。電子マネーの概念には、チャージ可能な電子的支払手段が含まれるが、特定のサービスに限定されることはない。電子マネーによる決済は、ICカードのような物理的媒体を介して行われてもよく、ユーザ機器に格納された所定のアプリケーションを介して行われてもよく、あるいは、ユーザ機器が店頭の決済用コードを読み取る、またはユーザ機器に表示された決済用コードを店頭側の機器が読み取ることを介して行われてもよく、特に限定されることはない。
【0012】
本明細書では、「ユーザ」及び「従業員」という用語は、交換可能に使用される。「ユーザ」及び「従業員」は、後述の電子マネーbを利用するユーザであり、また後述する企業Cに雇用されている従業員を意味する。
【0013】
本明細書では、「デジタル給与」とは、「電子マネーによって支払われる給与」を意味し得る。
【0014】
本明細書では、「デジタル給与口座」とは、資金移動業者に対して貸出される(利用権限が授与される)仮想口座であり得る。本願の要旨を逸脱しない範囲であれば、資金移動業者へ授与されるデジタル給与口座の利用権限は、どのような範囲が適用されてもよい。資金移動業者に貸出された「デジタル給与口座」は、デジタル給与を希望するユーザ及び/またはユーザの電子マネーアカウントに対して関連付けられ得る。以降「ユーザに関連付けられたデジタル給与口座」などのように記載した場合、「ユーザの電子マネーアカウントに関連付けられたデジタル給与口座」も意味することとする。
【0015】
特に明記しない限り、1つの「デジタル給与口座」に対して1人のユーザ(1つの電子マネーアカウント)が関連付けられる。本明細書において、「デジタル給与口座」と記載した場合は、明示的な記載が無い限り、デジタル給与口座の口座番号(以降、「デジタル給与口座番号」と称す)を含むこととする。また、本明細書では「デジタル給与口座」は、銀行システムが有する勘定システムからは独立した識別マスタやデータベースで管理されることも可能である。「デジタル給与口座」は、通常の口座(「実口座」と称す)とは異なり勘定を有していないため、デジタル給与口座に対する入出金処理は実行できない。
【0016】
デジタル給与口座宛の振込は、デジタル給与を希望するユーザを雇用する企業(以降、「雇用企業」と称す)のみ実行可能であるように構成されてよい。「デジタル給与口座」は、特許文献3、4に示されるような関連口座(「仮想口座」と同義)であってよい。雇用企業の口座からデジタル給与口座への振込処理が実行された場合、デジタル給与口座へ資金は振り込まれず、代わりに、
図7を参照しながら説明される処理を実行するように構成されてよい。
【0017】
本明細書では、「デジタル給与口座番号」は、デジタル給与口座を関連付けられたユーザ(従業員)及びユーザの電子マネーアカウントを識別するための一意の識別番号として利用され得る。
【0018】
本明細書では、「雇用企業口座」とは、雇用企業が利用する口座を意味し、「雇用企業口座」から資金移動業者の口座(後述の「業者指定口座」)へユーザ(従業員)の給与額が一時的に振り込まれることとなる。明示的な記載が無い限り、「雇用企業口座」は、「雇用企業口座」の口座番号を含み得る。
【0019】
本明細書では、「業者指定口座」とは、資金移動業者が利用する口座であって、資金移動業者が「ユーザ(従業員)の給与額を一時的に受け取るために指定した口座」であり得、また「ユーザの電子マネーアカウントにチャージしきれなかった余剰額をユーザが指定した口座に資金移動する(オートスイープ)際の出金元口座」であり得る。明示的な記載が無い限り、「業者指定口座」は、「業者指定口座」の口座番号を含み得る。
【0020】
上記定義された各用語については、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、どのようなものを含んでもよい。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る銀行システム10、資金移動業者システム11、企業システム12、ユーザ端末13、及びネットワーク14を含むシステム全体の構成図である。銀行システム10、資金移動業者システム11、企業システム12、及びユーザ端末13は、ネットワーク14を介して相互に通信可能に接続される。
図1に示した構成は、例示のためのものであり、資金移動業者システム11、企業システム12、及びユーザ端末13は、複数存在し得る。
【0022】
銀行システム10は、資金移動業者システム11及び企業システム12から、各種依頼、指示、及び/または処理の結果を受信し、当該依頼、指示、及び/または処理の結果に関連する処理を実行し、関連する処理に伴う依頼、指示、及び/または処理の結果を対応するシステムに送信する。
【0023】
銀行システム10は、資金移動業者システム11から受信したデジタル給与口座貸出要求に基づいて、要求元の資金移動業者にデジタル給与口座を割り当て、割り当てたデジタル給与口座の情報を資金移動業者システム11へ送信する。
【0024】
銀行システム10は、企業システム12から受信した給与額データに基づいて、給与振込予定明細データを生成し、資金移動業者システム11へ送信する。銀行システム10は、ユーザの給与額を雇用企業口座から業者指定口座へ振り込む振込処理を実行する。
【0025】
銀行システム10は勘定系システムを有し、勘定系システムは企業や個人の口座などを有する。説明を目的に、本明細書では、銀行システム10は銀行Aによって管理及び運営されていることとする。
【0026】
銀行システム10は、業者指定口座振込電文に基づいて、ユーザのデジタル給与額を雇用企業口座から業者指定口座へ振り込む振込処理を実行し、処理完了後に業者指定口座振込結果を生成する。この振込結果は、振込処理が成功したことを示し、あるいは振込できなかった原因を示し得る。振り込まれる金額は、全ユーザのデジタル給与額の合算された金額であってよい。
【0027】
資金移動業者システム11は、本明細書では説明を目的として、資金移動業者Bによって運営されており、電子マネーbをユーザに提供しているものとする。
【0028】
資金移動業者システム11は、デジタル給与口座貸出要求を、銀行システム10へ送信し、当該資金移動業者に対して割り当てられた(貸し出された)デジタル給与口座の情報を受信する。資金移動業者システム11は、ユーザ端末13から受信したデジタル給与支払要求に基づいて、デジタル給与口座を当該ユーザに割り当て、デジタル給与口座とユーザ及びユーザの電子マネーアカウントとを関連付ける。資金移動業者システム11は、ユーザに関連付けられたデジタル給与口座の情報をユーザ端末13へ送信する。資金移動業者システム11は、銀行システム10から、給与振込予定明細データを受信する。資金移動業者システム11は、給与振込予定明細データを受信したことに基づいて、または業者指定口座に対する入金を確認したことに基づいて、ユーザの電子マネーアカウントへ指定された金額分の電子マネーのチャージ処理(デジタル給与の支払い処理)を実行する。資金移動業者システム11は、電子マネーのチャージ処理できなかった余剰金額をユーザ指定の口座に資金移動するオートスイープ機能を実行する。
【0029】
企業システム12は、従業員の勤怠管理を行って給与計算を行い、各従業員の給与額データを銀行システム10へ送信し得る。企業システム12は、本明細書では、説明を目的として、企業Cによって管理及び運営されていることとする。企業システム12は、従業員(ユーザ)からデジタル給与口座の情報を電子的に受信するように構成されてもよい。本願の要旨を逸脱しない範囲であれば、雇用企業は、どのような手段や方法で、従業員からデジタル給与口座の情報を取得してもよい。
【0030】
企業システム12は、企業専用のアプリケーションやWebサイトを介して、銀行システム10にログインして、銀行システム10へ各従業員の給与額を登録または送信する。企業システム12によって登録または送信された給与額(例えば、給与額データ)に基づいて、銀行システム10は、給与振込予定明細を生成することができる。本願の要旨を逸脱しない範囲であれば、どのような方法や手段で給与額を銀行システムへ提供及び/または登録してもよい。
【0031】
ユーザ端末13は、有線及び/または無線環境において動作可能な任意のタイプのデバイスである。
図1には示していないが、ユーザ端末13は、ユーザ端末13x及びユーザ端末13yを含み得る。以降単に、ユーザ端末13と記載した場合、ユーザ端末13x及びユーザ端末13yの両方を含んでもよい。
【0032】
ユーザ端末13は、デジタル給与支払要求を、資金移動業者システム11へ送信する。デジタル給与支払要求には、例えば、ユーザの給与口座の情報、ユーザ情報、ユーザの雇用企業の情報、ユーザが利用している電子マネーアカウントに関する情報、電子マネーアカウントへのチャージ額(デジタル給与額)などの情報が含まれ得る。資金移動業者システム11は、デジタル給与支払要求に基づいて、デジタル給与口座の情報とデジタル給与支払要求に含まれている情報を関連付けることができる。ユーザ端末13は、資金移動業者システム11から、当該ユーザの電子マネーアカウントに関連付けられたデジタル給与口座の情報を通知される。ユーザは、通知されたデジタル給与口座の情報を任意の手段を介して雇用企業に提供する。雇用企業は、提供されたデジタル給与口座の情報を企業システム12に登録する。
【0033】
(システム構成)
図2は、本発明の実施形態に係る銀行システム10のシステム構成図である。
図2に示すように、銀行システム10は、一般的なコンピュータと同様に、バス208などによって相互に接続された制御部201、主記憶部202、補助記憶部203、IF部204、及び出力部205を備える。銀行システム10は、ファイル/データベースなどの形式で、デジタル給与口座DB206及びデジタル給与支払額DB207を備える。
【0034】
制御部201は、中央処理装置(CPU)とも呼ばれ、銀行システム10の各構成要素の制御やデータの演算を行い、また、補助記憶部203に格納されている各種プログラムを主記憶部202に読み出して実行する。主記憶部202は、メインメモリとも呼ばれ、受信した各種データ、コンピュータ実行可能な命令及び当該命令による演算処理後のデータなどを記憶する。補助記憶部203は、ハードディスク(HDD)などに代表される記憶装置であり、データやプログラムを長期的に保存する際に使用される。
【0035】
図2の実施形態は、制御部201、主記憶部202及び補助記憶部203を同一のコンピュータの内部に設ける実施形態について説明するが、他の実施形態として、銀行システム10は、制御部201、主記憶部202及び補助記憶部203を複数個使用することにより、複数のコンピュータによる並列分散処理を実現するように構成することもできる。また、他の実施形態として、銀行システム10のための複数のサーバを設置し、複数サーバが一つの補助記憶部203を共有する実施形態にすることも可能である。
【0036】
IF部204は、他のシステムや装置との間でデータを送受信する際のインターフェースの役割を果たし、また、システムオペレータから各種コマンドや入力データ(各種マスタ、テーブルなど)を受け付けるインターフェースを提供する。出力部205は、処理されたデータを表示する表示画面や当該データを印刷するための印刷手段などを提供する。
【0037】
デジタル給与口座DB206は、デジタル給与口座の情報及びデジタル給与口座に関連付けられた情報などのマスターデータを格納する。
図3は、本発明の実施形態に係るデジタル給与口座DB206のデータ構造の一例を示す図である。デジタル給与口座DB206は、デジタル給与口座300及び業者指定口座301を含み得るが、これらのデータ項目に限定されることはなく他のデータ項目も含むことが可能である。
【0038】
デジタル給与口座300は、各ユーザの電子マネーアカウントに関連付けられるデジタル給与口座(口座番号、例えば、一意の識別番号)を示し、各ユーザ及び/または各ユーザの電子マネーアカウントを識別するために利用され得る。業者指定口座301は、ユーザのデジタル給与額を授受するための資金移動業者の口座情報であり得る。
【0039】
デジタル給与支払額DB207は、デジタル給与の支払に関するトランザクションデータを格納する。
図4は、本発明の実施形態に係るデジタル給与支払額DB207のデータ構造の一例を示す図である。デジタル給与支払額DB207は、デジタル給与口座300、対象年月日401、給与額402、業者指定口座301、及び雇用企業口座403を含むことができるが、これらのデータ項目に限定されることはなく他のデータ項目も含むことが可能である。
【0040】
対象年月日401は、処理対象年月日を示す。給与額402は、デジタル給与口座300に関連付けられるユーザに支払われる給与額を示す。雇用企業口座403は、ユーザを雇用している企業の口座情報を示し、雇用企業口座403から資金移動業者の業者指定口座へデジタル給与を希望するユーザのデジタル給与額が振り込まれる。
【0041】
銀行システム10は、デジタル給与口座DB206及びデジタル給与支払額DB207に格納された情報の一部または全てを、資金移動業者システム11及び企業システム12へ提供してもよい。
【0042】
(処理フロー:デジタル給与口座の貸出処理)
図5は、本発明に係るデジタル給与口座の貸出処理を説明するフロー図である。以下、
図5を参照しながら、デジタル給与口座の貸出処理を説明する。
【0043】
S501にて、資金移動業者システム11は、銀行システム10へ、デジタル給与口座貸出要求を送信する。デジタル給与口座貸出要求は、例えば、資金移動業者の識別子、ユーザのデジタル給与額を授受するための業者指定口座の口座番号、貸出しを希望するデジタル給与口座の口座数、などの情報を含み得る。貸し出されるデジタル給与口座は、上述したような仮想口座であってよい。なお、デジタル給与口座の貸出については、最終的にデジタル給与口座と業者指定口座が関連付けられる限り、他の方法、例えば、別ルートでの申込及びオペレータによる手作業での登録作業に依っても構わない。
【0044】
S502にて、銀行システム10は、デジタル給与口座貸出要求を受信したことに応答して、デジタル給与口座DB206に格納されているデジタル給与口座の中から要求数のデジタル給与口座を資金移動業者に割り当てる。具体的には、銀行システム10は、デジタル給与口座300と、デジタル給与口座貸出要求に含まれている業者指定口座とを関連付けてデジタル給与口座DB206に格納する。
【0045】
S503にて、銀行システム10は、資金移動業者システム11へ、資金移動業者に割り当てたデジタル給与口座の情報を送信する。送信される情報は、割り当てられたデジタル給与口座300の情報を少なくとも含む。資金移動業者システム11は、受信したデジタル給与口座の情報を自身のシステム内に格納する。
【0046】
以上の処理によって、資金移動業者システム11へ、デジタル給与口座を貸出すこと(利用権限を授与すること)ができる。
【0047】
(処理フロー:デジタル給与口座のユーザ割り当て処理)
図6は、本発明に係るデジタル給与口座のユーザ割り当て処理を説明するフロー図である。以下説明するフローでは、説明を目的に、ユーザ端末13xはユーザXによって使用されており、ユーザ端末13yはユーザYによって使用されていることとする。ユーザX及びYは、企業Cに雇用される従業員であることとする。
【0048】
S601にて、ユーザ端末13は、資金移動業者システム11へ、デジタル給与支払要求を送信する。デジタル給与支払要求には、例えば、ユーザの給与口座の情報、氏名、連絡先などのユーザ情報、ユーザの雇用企業の情報、ユーザが利用している電子マネーアカウントに関する情報、電子マネーアカウントへのチャージ額(デジタル給与額)などの情報が含まれ得る。例では、ユーザX及びYはデジタル給与額として、それぞれ5万円を指定するものとする。
【0049】
S602にて、資金移動業者システム11は、割り当て可能なデジタル給与口座のうちから任意のデジタル給与口座を当該ユーザに割り当て、デジタル給与口座とユーザを関連付けることができる。詳細に言えば、資金移動業者システム11は、ユーザ端末13から受信したデジタル給与支払要求に基づいて、デジタル給与口座の情報と、デジタル給与支払要求に含まれている、ユーザの給与口座の情報、ユーザ情報、ユーザの雇用企業の情報、ユーザが利用している電子マネーアカウントに関する情報、電子マネーアカウントへのチャージ額(デジタル給与額)、給与支払日などの情報とを関連付けて、資金移動業者システム11内に格納する。
【0050】
S603にて、資金移動業者システム11は、ユーザ端末13へ、ユーザに関連付けられたデジタル給与口座の情報を送信する。
【0051】
S604にて、ユーザ端末13は、企業システム12へ、資金移動業者システム11から受信したユーザに関連付けられたデジタル給与口座の情報を送信し、または登録する。これにより、企業システム12は、各ユーザに関連付けられるデジタル給与口座の情報をシステム内に登録しておくことができるようになる。なお、ユーザが企業にデジタル給与口座の情報を伝達するのは、書面などであってもよく、その手段は問わない。
【0052】
以上の処理によって、ユーザ(従業員)に対して、デジタル給与口座を関連付けることができるため、資金移動業者システム11は、デジタル給与口座とユーザの電子マネーアカウントの関連付けを把握し、企業システム12は、デジタル給与口座とユーザの関連付けを把握することができる。
【0053】
(処理フロー:給与振込予定明細生成処理、給与振込処理及びデジタル給与支払処理)
図7は、本発明に係る給与振込予定明細生成処理、給与振込処理及びデジタル給与支払処理を説明するフロー図である。以下の説明では、ユーザX及びYは、デジタル給与額として5万円を指定しており、企業Cから30万円の給与が支払われるものとする。従って、ユーザX及びYは、給与として、資金移動業者が扱っている電子マネーで5万円分を受け取り、現金25万円を給与口座で受け取ることとなる。また、ユーザXの電子マネーアカウントの電子マネー残高は10万円であり、ユーザYの電子マネーアカウントの残高は96万円であるとして説明する。
【0054】
当業者には知られているように、企業システム12は、従業員一人あたり1つの口座のみに給与振込を行うシステムであってもよいし、または複数の口座に対して給与振込を行うシステムであってもいずれでもよい。すなわち、企業システム12は、銀行システム10に対して、従業員一人あたり1つの給与額データを送信し、または複数の給与額データを送信する。
【0055】
前者の場合には、銀行システム10は、給与額データの振込先口座がデジタル給与口座DB206に登録されているデジタル給与口座であるかどうかを判定し、振込先口座がデジタル給与口座である場合には、当該給与額データに基づいて給与振込予定明細データを生成して資金移動業者システム11に送信するとともに、当該資金移動業者の指定口座に給与額の振込を行う。一方、振込先口座がデジタル給与口座でない場合には、銀行システム10は、従来通りの銀行振込処理を行う。
【0056】
後者の場合には、企業システム12は、最初からユーザの給与口座宛の給与額データとデジタル給与口座宛の給与額データとに分けて銀行システム10に送信する。銀行システム10は、ユーザの給与口座宛の給与額データについては従来通りの銀行振込処理を行い、デジタル給与口座宛の給与額データについては給与振込予定明細データを生成して資金移動業者システム11に送信するとともに、当該資金移動業者の指定口座に給与額の振込を行う。
【0057】
本明細書では、従来通りの銀行振込処理については詳細な説明は省略し、デジタル給与口座宛の給与額データに関する処理について説明する。以下の処理にて生成される給与振込予定明細には、デジタル給与を希望するユーザに関する情報のみが含まれ得る。
【0058】
S701にて、企業システム12は、従業員(ユーザ)の給与計算を行って給与額データを生成し、給与支払日前(例えば、給与支払日の2営業日前)に、銀行システム10へ、給与額データを送信する。銀行システム10は、給与額データを給与支払日前に企業システム12から受信する。本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、給与額データが、どのようなタイミングで銀行システム10へ提供されてもよい。
【0059】
給与額データは、全銀協のフォーマットに従う給与振込データであってよい。例えば、給与額データには、ユーザの給与額、振込先口座、及び雇用企業口座などの情報が含まれ得る。振込先口座は、デジタル給与口座(仮想口座)であってよい。企業システム12が従業員一人あたり1つの口座のみに給与振込を行うシステムである場合には、デジタル給与口座宛の給与額データの給与額は、ユーザの給与口座宛の振込額と電子マネーアカウントへのチャージ額の合計となる。一方、企業システム12が従業員一人あたり複数の口座に対して給与振込を行うシステムである場合には、給与額データは、複数存在し得る。すなわち、ユーザの実口座宛の振込額を示す給与額データと、デジタル給与口座宛の給与額データとが存在していてよい。
【0060】
S702にて、銀行システム10は、受信した給与額データに含まれる振込先口座がデジタル給与口座を示す場合、当該給与額データをデジタル給与用データであるとして抽出する。具体的には、銀行システム10は、振込先口座がデジタル給与口座DB206に登録済のデジタル給与口座300であるかどうかを識別することにより、デジタル給与用データを抽出することができる。この識別は、振込先口座の口座番号がデジタル給与口座であるかどうかに基づいて行われてよい。
【0061】
銀行システム10は、抽出した給与額データに含まれる情報と、当該給与額データのデジタル給与口座に基づいてデジタル給与口座DB206から取得される情報とをデジタル給与支払額DB207に格納する。詳細に言えば、銀行システム10は、給与額データを受信した年月日を対象年月日401とし、給与額データに含まれるデジタル給与口座をデジタル給与口座300とし、ユーザの給与額を給与額402とし、雇用企業口座を雇用企業口座403とし、デジタル給与口座DB206から取得した業者指定口座を業者指定口座301として、デジタル給与支払額DB207に格納する。
【0062】
S703にて、銀行システム10は、デジタル給与支払額DB207に格納されているデータを読み出し、読み出したデータに基づいて振込予定明細データを生成する。給与振込予定明細データには、デジタル給与を希望するユーザに関する情報、例えば、デジタル給与口座300及び給与額402などが含まれ得る。
【0063】
S704にて、銀行システム10は、ユーザの給与支払日前(例えば、2営業日前)に、資金移動業者システム11へ、生成した給与振込予定明細データを送信する。
【0064】
以上の処理により、銀行システム10は、給与支払の実施前に、資金移動業者システム11へ、給与振込予定明細データを送信できる。すなわち、資金移動業者システム11は、給与支払日前に、ユーザの給与額の情報を取得し、次の処理に着手することが可能となる。したがって、資金移動業者システム11が給与支給日の午前10時までに電子マネーアカウントへのチャージなどの資金移動処理を実行することができるようになる。
【0065】
S705にて、銀行システム10は、給与振込予定明細データの生成または送信に応答して、デジタル給与支払額DB207から読み出した同一の処理対象月の業者指定口座301及び雇用企業口座403のデータが同一のデータをグループとして、当該グループのデータの給与額402の金額を合算することにより業者指定口座振込電文を生成する。この処理により、企業Cから資金移動業者Bに振り込まれる金額の総額が計算される。同様に、企業からそれぞれの資金移動業者に振り込まれる金額の総額がそれぞれ計算される。すなわち、業者指定口座振込電文は、雇用企業口座から業者指定口座に対して、雇用企業に関連付けられるデジタル給与を希望するユーザの給与額の総額を振り込む振込指示であり得る。業者指定口座振込電文には、例えば、雇用企業口座403の口座情報(振込元口座)、業者指定口座301の口座情報(振込先口座)、及び給与額402の合算金額などが含まれ得る。
【0066】
S706にて、銀行システム10は、業者指定口座振込電文に基づいて、デジタル給与を希望するユーザの給与額の総額を雇用企業口座から業者指定口座へ振り込む振込処理を実施する。この処理により、雇用企業の従業員(ユーザ)がデジタル給与として希望している資金移動業者ごとのデジタル給与の総額が雇用企業口座から業者指定口座に振り込まれることとなる。なお、銀行システム10は、雇用企業口座403から出金した金額を、一旦、銀行システム10内の所定の口座に入金しておき、所定のタイミングで業者指定口座301に入金するように構成されてもよい。
【0067】
S707にて、資金移動業者システム11は、給与振込予定明細データを受信したことに基づいて、または業者指定口座に対する入金を確認したことに基づいて、給与振込予定明細データに含まれるデジタル給与口座のそれぞれに関連付けられる電子マネーアカウントの残高チェックを行って、それぞれの電子マネーアカウントの残高が閾値以下の残高となるようにデジタル給与の支払処理(電子マネーアカウントへのチャージ処理)を実行する。これらの処理により、資金移動業者システム11は、給与振込予定明細データに含まれているデジタル給与口座に関連付けられる電子マネーアカウントに対してチャージを実行することができるようになる。
【0068】
S708にて、資金移動業者システム11は、所定の条件を満たす電子マネーアカウントについてオートスイープを実行する。オートスイープ機能は、設定残高を超える分の金額についてユーザが指定した口座(例えば、S602にて説明したユーザの給与口座)に資金移動する処理である。
【0069】
上述したように、本明細書では例として、ユーザX及びYの電子マネーアカウントに5万円分の電子マネーがそれぞれチャージされることになるが、そのままチャージを実行してしまうと、ユーザXの電子マネーアカウントの電子マネーの残高は合計15万円となり、ユーザYの電子マネーアカウントの電子マネーの残高は合計101万円となる。
【0070】
「資金移動業者向けガイドライン」には、電子マネーアカウントのチャージ限度額を100万円以下にすること、及びチャージ限度額の超過分についてユーザの指定した口座へ送金すること、などが規定されている。この規定に従うと、ユーザYの電子マネーアカウントの電子マネー残高が101万円となるのは規定に違反してしまう。
【0071】
このため、資金移動業者システム11は、それぞれの電子マネーアカウントの現在残高を識別し、識別した残高とチャージ予定金額の合計金額が閾値(すなわち、100万円)を超えるかどうかを判定する。閾値以下になると判定した場合、資金移動業者システム11は、当該電子マネーアカウントにチャージ予定金額をチャージする。一方、閾値を超えると判定した場合、資金移動業者システム11は、当該電子マネーアカウントにチャージ予定金額を閾値までチャージし、残額を業者指定口座301からユーザの給与口座に資金移動する振込依頼電文(オートスイープ依頼)を生成して、業者指定口座を有する銀行システム(例えば、銀行システム10)に送信するオートスイープ処理を実行する。
【0072】
本実施例では、ユーザYの電子マネーアカウントには、チャージ予定額5万円のうち4万円がチャージされ、残額(余剰額)1万円は、振込依頼電文を受信した銀行システムによって、業者指定口座301からユーザの給与口座に振込処理されることとなる。なお、業者指定口座301が銀行システム10とは異なる銀行の口座である場合、振込電文はその銀行のシステムに対して送信される。
【0073】
以上の処理により、ユーザにデジタル給与を支払うこと(指定された額の電子マネーをチャージすること)ができるようになり、仮に、電子マネーアカウント残高の閾値(チャージ上限)を超える場合であっても、超過額はユーザの指定口座に対して振り込まれることとなる。したがって、資金移動業者は、給与支払日前にそれぞれのユーザに対するデジタル給与の額を知ることができるので給与支払日の午前10時までに電子マネーのアカウントにチャージすることが可能となり、一方、ユーザ(従業員)は自身で電子マネーのチャージを行わなくても、給与支払日に、デジタル給与として電子マネーを受け取ることができる。
【0074】
本明細書で説明した実施例は、以下の通りとなる。
ユーザX:指定口座に25万円振り込まれ、電子マネーアカウントに5万円チャージされる
ユーザY:指定口座に26万円(チャージできなかった超過額1万円含む)振り込まれ、電子マネーアカウントに4万円がチャージされる
資金移動業者B:企業システム12が従業員一人あたり1つの給与額データを送信する場合、業者指定口座に60万円が入金され、そのうち、25万円がユーザXの指定口座に送金され、26万円(チャージできなかった超過額1万円含む)がユーザYの指定口座に送金されて、最終的に9万円が残高として残る。一方、企業システム12が従業員一人あたり複数の給与額データを送信する場合、業者指定口座に10万円が入金され、そのうち、(チャージできなかった超過額)1万円がユーザYの指定口座に送金されて、最終的に9万円が残高として残る。
【0075】
上記の実施例では、電子マネーアカウントにチャージできなかった超過額は当該ユーザの指定口座に対して入金されることを説明したが、本発明は他の実施形態とすることも可能である。
【0076】
本願の要旨を逸脱しない範囲であれば、上記実施形態で説明した処理の順序は、必ずしも説明した順序で実行される必要がなく、任意の順序で実行されてもよい。さらに、本実施形態の基本的な概念から逸脱することなく、処理を追加、削除及び/または組み合わせてもよい。
【0077】
本明細書では説明を目的として、1種類の電子マネーを利用することとして説明したが、本願の要旨を逸脱しない範囲であれば、より多くの種類の電子マネーを本願発明に適用できる。
【0078】
<その他の考慮事項>
上記の説明では、給与振込の前に、ユーザの給与額の情報を資金移動業者へ提供することに関して説明したが、本願明細書に記載の発明は、ユーザへ、デジタル給与の支払いにおける安全な利用環境を提供することも可能である。
【0079】
現在、特許文献2の従来技術などの仮想口座において、銀行から資金移動業者への払出し(貸し出し)に関する本人確認手続き要件(KYC要件)の明確な基準が存在しない。そのため、銀行及び資金移動業者のどちらが、本人確認手続きの義務を負っているのか明確ではない。したがって、特許文献2の従来技術などでは、適切な本人確認手続きをユーザ(従業員など)に提供することが困難であり、ユーザへデジタル給与の支払いにおける安全な利用環境を提供しているとは言えない。
【0080】
本願発明は、「デジタル給与口座番号」を、ユーザ(従業員)を識別するための一意の識別番号として利用しており、また本願発明において「デジタル給与口座」への振込処理は発生しない。そのため、「デジタル給与口座」の払出、貸し出し、関連付けに関する、本人確認手続きの必要がない。
【0081】
したがって、本願発明は、給与支払日前に、ユーザの給与額の情報を資金移動業者へ提供することを実現しながら、デジタル給与口座の払出しに関する本人確認手続きを銀行側が実行する必要がないことを明確にできる。
【0082】
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成及び細部において変更する様々な実施形態を実現可能であることを当業者は理解するだろう。すなわち、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 銀行システム
11 資金移動業者システム
12 企業システム
13 ユーザ端末
14 ネットワーク
201 制御部
202 主記憶部
203 補助記憶部
204 IF部
205 出力部
206 デジタル給与口座DB
207 デジタル給与支払額DB
208 バス
【要約】
【課題】給与振込の前に、ユーザのデジタル給与額の情報を資金移動業者へ提供する。
【解決手段】銀行システムは、給与支払日よりも前に給与額データを企業から受信する。給与額データは、振込先口座の少なくとも一つがデジタル給与口座であることを示す。給与額データに含まれる振込先口座がデジタル給与口座を示す場合、銀行システムは、当該給与額データをデジタル給与用データとして抽出し、抽出した給与額データとデジタル給与口座DBに格納されている対応するデータとに基づいてデジタル給与支払額DBに登録するデータセットを生成する。銀行システムは、デジタル給与支払額DBから読み出したデータに基づいて給与振込予定明細を生成し、給与支払日よりも前に資金移動業者システムに送信する。給与振込予定明細には、デジタル給与口座及び給与額の情報が含まれており、資金移動業者は、給与支払日にユーザへのチャージ額を把握できる。
【選択図】
図7