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特許7506825原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/016 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
G21C9/016
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023512476
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 RU2021000494
(87)【国際公開番号】W WO2022103303
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】2020136898
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】516233088
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー アトムエネルゴプロエクト
【氏名又は名称原語表記】JOINT STOCK COMPANY ATOMENERGOPROEKT
【住所又は居所原語表記】ul. Bakuninskaya,7,str.1 Moscow,105005 Russia
(73)【特許権者】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シドロフ, アレクサンドル・スタレビッチ
(72)【発明者】
【氏名】シドロワ, ナデジダ ヴァシリエフナ
(72)【発明者】
【氏名】ズバノフスカヤ, タチアナ・ヤロポルコフナ
(72)【発明者】
【氏名】バデシュコ, クセニヤ・コンスタンチノフナ
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538940(JP,A)
【文献】特表2018-503811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00-9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムであって、
ガイドプレートと、
片持ちトラスと、
炉心溶融物の受け取りと分配を目的としたフィラーを備え、熱保護が装備されたフランジを有する容器と、を含み、
さらに、前記容器のフランジに取り付けられたドラムであり、その周囲に沿って位置する複数の補強リブを備えたシェルを上部材と下部材で支持した形態で配置され、溶接された支持フランジを介して当該ドラムを前記容器のフランジに接続する複数のテンション要素を有するドラムと、
前記容器のフランジの上面に取り付けられたスペース要素と、
前記容器のフランジの上面と前記ドラムの外面に取り付けられた固定シェルと、
前記容器のフランジの上面と前記ドラムの内面を接続するプレートと、
凸状膜と、
前記凸状膜の外側と内側のそれぞれに配置されたそれぞれの包帯プレートを含み、
前記プレート、前記固定シェル、および前記容器のフランジの前記熱保護の間のスペースは、保護コンクリートで満たされ、
前記凸状膜は、前記片持ちトラスに取り付けられた上部熱伝導要素に接続されている上部フランジと前記ドラムに取り付けられた下部熱伝導要素に接続されている下部フランジとを備え、
前記各包帯プレートの各上端部が前記凸状膜の前記上部フランジにしっかりと固定され、前記各包帯プレートの各下端部が前記凸状膜の前記下部フランジに、当該下部フランジに対して縦方向および垂直方向に可動できるように固定されており、
前記垂直方向は、前記各包帯プレートの各下端部と接触する、前記凸状膜の前記下部フランジの表面に垂直な方向であり、
前記縦方向は、前記下部フランジの表面に平行な方向である
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核エネルギーの分野、特に原子力発電所(NPP)の安全を確保するシステムに関し、原子炉圧力容器および格納容器の破壊をもたらす重大な事故に適用できる。
【0002】
炉心冷却システムに複数の故障が生じた場合に起こり得る炉心メルトダウンを伴う事故は、最大の放射線障害を引き起こす。
【0003】
このような事故では、炉心溶融物(コリウム)が原子炉圧力容器と炉心構造を溶かすことによって容器から流出し、その残留熱放出は、NPP格納容器の完全性を壊す可能性がある。NPP格納容器は、環境への放射性物質の放出経路における最後の障壁である。
【0004】
これを防ぐためには、原子炉圧力容器から流出した炉心溶融物(コリウム)を局所に留め、それが完全に結晶化するまで継続的な冷却をする必要がある。この機能は、原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムによって実行される。これにより、原子炉の格納容器への損傷が防止され、原子炉の重大事故での放射線被爆から公衆と環境が保護される。
【背景技術】
【0005】
原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステム〔1〕として、原子炉圧力容器の下に設置され、片持ちトラスの上にあるガイドプレートと、コンクリート立坑のベースの埋め込み部品に取り付けられ、熱保護が備え付けられたフランジを備える多層容器、および互いに積み重ねられたカセットのセットで構成されている多層容器内のフィラーを備えるものが知られている。
【0006】
このシステムは、次の欠点により信頼性が低いものになっている。
- 原子炉圧力容器からの炉心溶融物の非軸対称流出の場合(圧力容器の横側の溶融)、内圧の影響下で、原子炉圧力容器内でガイドプレート、片持ちトラスおよび熱保護がセクター破壊され、原子炉圧力容器から炉心溶融物とともに流出したガスの衝撃波が多層容器の容積内および多層容器とフィラーと片持ちトラスとの間に位置する周辺容積内を伝播し、多層容器と片持ちトラス間の接続領域内で当該システムの破壊をもたらし、周辺機器に影響を与える可能性があり、その結果、多層容器の外側からの冷却を意図した冷却水が多層容器内に流れ込み、蒸気爆発や当該システムの破壊につながる可能性がある。
- 原子炉圧力容器の底部の破片の落下または炉心溶融物の残留物が原子炉圧力容器から多層容器内に落下した場合、炉心溶融物表面の水冷の初期段階で、衝撃による圧力上昇が起こって周辺機器に影響を与える。その結果、多層容器と片持ちトラス間の接続領域内で当該システムが破壊され、多層容器の外側からの冷却を意図した冷却水が多層容器内に流れ込み、蒸気爆発や当該システムの破壊につながる可能性がある。
【0007】
原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステム〔2〕として、原子炉圧力容器の下に設置され、片持ちトラスの上にあるガイドプレートと、コンクリート立坑のベースの埋め込み部品に取り付けられ、熱保護が備え付けられたフランジを備える多層容器、および互いに積み重ねられたカセットのセットで構成されている多層容器内のフィラーを備えるものが知られている。
【0008】
このシステムは、次の欠点により信頼性が低いものになっている。
- 原子炉圧力容器からの炉心溶融物の非軸対称流出の場合(圧力容器の横側の溶融)、内圧の影響下で、原子炉圧力容器内でガイドプレート、片持ちトラスおよび熱保護がセクター破壊され、原子炉圧力容器から炉心溶融物とともに流出したガスの衝撃波が多層容器の容積内および多層容器とフィラーと片持ちトラスとの間に位置する周辺容積内を伝播し、多層容器と片持ちトラス間の接続領域内で当該システムの破壊をもたらし、周辺機器に影響を与える可能性があり、その結果、多層容器の外側からの冷却を意図した冷却水が多層容器内に流れ込み、蒸気爆発や当該システムの破壊につながる可能性がある。
- 原子炉圧力容器の底部の破片の落下または炉心溶融物の残留物が原子炉圧力容器から多層容器内に落下した場合、炉心溶融物表面の水冷の初期段階で、衝撃による圧力上昇が起こって周辺機器に影響を与える。その結果、多層容器と片持ちトラス間の接続領域内で当該システムが破壊され、多層容器の外側からの冷却を意図した冷却水が多層容器内に流れ込み、蒸気爆発や当該システムの破壊につながる可能性がある。
【0009】
原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステム〔3〕として、原子炉圧力容器の下に設置され、片持ちトラスの上にあるガイドプレートと、アーチ型コンクリートのベースの埋め込み部品に取り付けられ、熱保護が備え付けられたフランジを備える多層容器、および互いに積み重ねられたカセットのセットで構成されている多層容器内のフィラーを備えるものが知られている。
【0010】
このシステムは、次の欠点により信頼性が低いものになっている。
- 原子炉圧力容器からの炉心溶融物の非軸対称流出の場合(圧力容器の横側の溶融)、内圧の影響下で、原子炉圧力容器内でガイドプレート、片持ちトラスおよび熱保護がセクター破壊され、原子炉圧力容器から炉心溶融物とともに流出したガスの衝撃波が多層容器の容積内および多層容器とフィラーと片持ちトラスとの間に位置する周辺容積内を伝播し、多層容器と片持ちトラス間の接続領域内で当該システムの破壊をもたらし、周辺機器に影響を与える可能性があり、その結果、多層容器の外側からの冷却を意図した冷却水が多層容器内に流れ込み、蒸気爆発や当該システムの破壊につながる可能性がある。
- 原子炉圧力容器の底部の破片の落下または炉心溶融物の残留物が原子炉圧力容器から多層容器内に落下した場合、炉心溶融物表面の水冷の初期段階で、衝撃による圧力上昇が起こって周辺機器に影響を与える。その結果、多層容器と片持ちトラス間の接続領域内で当該システムが破壊され、多層容器の外側からの冷却を意図した冷却水が多層容器内に流れ込み、蒸気爆発や当該システムの破壊につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】ロシア特許第2576517号
【文献】ロシア特許第2576516号
【文献】ロシア特許第2575878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
請求項に係る発明の技術的結果は、原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムの信頼性を高めることである。
【0013】
特許請求の範囲に記載された発明によって達成されるべき目的は、炉心溶融物を受け取り分配する容器と片持ちトラスとの接続領域での当該システムの破壊を、次の条件下で、すなわち原子炉圧力容器から非軸対称に炉心溶融物が流出し、炉心溶融物を水冷する初期段階で原子炉圧力容器の底部の破片が容器内に落下するという状況下で防止することであり、その結果、原子炉シャフトから容器への冷却水の予定外の(早すぎる)浸入が防止され、蒸気爆発や衝撃波の影響によって引き起こされる破壊から保護される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、本発明に係る、原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムによって達成される。すなわち、当該システムは、ガイドプレートと、片持ちトラスと、炉心溶融物の受け取りと分配を目的としたフィラーを備え、熱保護が装備されたフランジを有する容器と、を含み、さらに、前記容器のフランジに取り付けられたドラムであり、その周囲に沿って位置する複数の補強リブを備えたシェルを上部材と下部材で支持した形態で配置され、溶接された支持フランジを介して当該ドラムを前記容器のフランジに接続する複数のテンション要素を有するドラムと、前記容器のフランジの上面に取り付けられたスペース要素と、前記容器のフランジの上面と前記ドラムの外面に取り付けられた固定シェルと、前記容器のフランジの上面と前記ドラムの内面を接続するプレートと、凸状膜と、前記凸状膜の外側と内側のそれぞれに配置されたそれぞれの包帯プレートを含み、前記プレート、前記固定シェル、および前記容器のフランジの前記熱保護の間のスペースは、保護コンクリートで満たされ、前記凸状膜は、前記片持ちトラスに取り付けられた上部熱伝導要素に接続されている上部フランジと前記ドラムに取り付けられた下部熱伝導要素に接続されている下部フランジとを備え、前記各包帯プレートの各上端部が前記凸状膜の前記上部フランジにしっかりと固定され、前記各包帯プレートの各下端部が前記凸状膜の前記下部フランジに、当該下部フランジに対して縦方向および垂直方向に可動できるように取り付けられていることを特徴する。
【0015】
請求項に係る発明の本質的な特徴は、容器のフランジと片持ちトラスの下面との間のドラムに凸状膜が取り付けられていることであり、凸状膜の凸面が容器の外側を向いており、外側の安全な包帯ギャップを提供する外側のファスナーを備えた外側の包帯プレートが凸状膜の外面に沿って設置され、内側の安全な包帯ギャップを提供する内側のファスナーを備えた内側の包帯プレートが凸状膜の内面に沿って設置されており、外側および内側の包帯プレートが、一方の側では溶接部により凸状膜の上部フランジにしっかりと固定されており、他方の側では、外側および内側の安全な包帯ギャップを規制する外側と内側のファスナーによって、凸状膜の下部フランジにフローティングカップリングが行われており、これらの動きが各リテーナーによって制限されている。
【0016】
凸状膜のこの配置により、片持ちトラスの独立した半径方向および方位角方向の熱膨張と、炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムの機器の構成要素への機械的衝撃の影響下における片持ちトラスと容器の独立した動きと、容器の軸方向および半径方向の熱膨張を可能にし、その結果、容器と片持ちトラス間の領域での破壊の防止により、外側を冷却するように意図された冷却水の容器内への浸入が防止される。
【0017】
包帯プレートは、原子炉圧力容器が破壊された場合の衝撃波の影響下において凸状膜の完全性を維持することを可能にし、また、原子炉圧力容器の底部の破片または炉心溶融物の残留物が落下した場合に、炉心溶融物表面の水冷の初期段階で発生する衝撃波の影響下において凸状膜の完全性を維持することを可能にする。
【0018】
請求項に係る発明の別の本質的な特徴は、容器のフランジ上にドラムが取り付けられていることである。ドラムは、上部材と下部材に支えられ、その周囲に沿って位置する複数の補強リブを備えたシェルの形態で配置されている。ドラムは、溶接された支持フランジを介して当該ドラムを容器のフランジに接続する複数のテンション要素を有している。また、ドラムと容器のフランジとの間の調整ギャップを提供するスペース要素と、容器のフランジの上面とドラムの外面を接続する固定シェルとが、容器のフランジの上面に取り付けられている。さらに、容器のフランジの上面には、容器のフランジの上面とドラムの内面を接続し、保護コンクリートで満たされるスペースを形成するプレートが追加で取り付けられている。これにより、当該膜の気密性が維持され、当該膜の剛性を上げたり、片持ちトラスと容器の位置が多方向に変化した場合の補償能力を低下させたりすることなく、当該膜の高さを低減して、蒸気爆発による衝撃波の影響を受ける領域が小さくなって、当該膜の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る、原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムの構成を示す図である。
図2】本発明に係る容器のフランジに取り付けられたドラムの構成を示す図である。
図3】本発明に係る膜の構成を示す図である。
図4】本発明に係る包帯プレートが取り付けられた当該膜の構成を示す図である。
図5】本発明に係るフローティングカップリングの構成を示す図である。
図6】本発明に係る当該膜に取り付けられたドラムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図6に示すように、原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムは、原子炉圧力容器(2)の下に設置されたガイドプレート(1)を備える。ガイドプレート(1)は、片持ちトラス(3)上に置かれている。コンクリート立坑のベース上において片持ちトラス(3)の下には、埋め込み部分に取り付けられた容器(4)が配置されている。容器(4)のフランジ(5)には熱保護(6)が装備されている。容器(4)の内側には、炉心溶融物を受け入れて分配するように意図されたフィラー(7)が配置されている。例えば、フィラー(7)は、様々なタイプの開口部(9)が配置された複数のカセット(10)から構成されてもよい。容器(4)の上部(フィラー(7)と容器(4)のフランジ(5)の間の領域)の周囲に沿って、各枝管に取り付けられた複数の給水バルブ(8)が配置されている。
【0021】
図1図2に示すように容器(4)のフランジ(5)上には、ドラム(31)が取り付けられている。ドラム(31)は、その周囲に沿って位置する複数の補強リブ(33)を備えたシェル(32)を上部材(34)と下部材(35)で支持した形態で配置され、複数のテンション要素(36)が、当該ドラム(31)をこれに溶接された支持フランジ(37)を介して容器(4)のフランジ(5)に接続する構成になっている。さらに、ドラム(31)は、スペース要素(39)を使用して容器(4)のフランジ(5)に対して調整ギャップ(38)を設けて取り付けられ、固定シェル(41)を使用してシールされている。調整ギャップ(38)の空隙は、保護コンクリート層(40)で埋められている。
【0022】
図1図3図5に示すように、ドラム(31)と片持ちトラス(3)の下面との間には、凸状膜(11)が設置されている。凸状膜(11)の凸面は、容器(4)の外側を向いている。片持ちトラス(3)の下部との接続領域内にある凸状膜(11)の上部では、凸状膜(11)の上部フランジ(14)に接続された上部熱伝導要素(16)で一種の対流熱交換ポケット(23)が形成されており、凸状膜(11)の下部には、凸状膜(11)の下部フランジ(15)に接続されている下部熱伝導要素(17)が配置されている。
【0023】
図5に示すように、外側の安全な包帯ギャップ(24)を提供する外側のファスナー(21)を備えた外側の包帯プレート(18)は、凸状膜(11)の外面に沿って設置され、内側の安全な包帯ギャップ(25)を提供する内側のファスナー(22)を備えた内側の包帯プレート(19)は、凸状膜(11)の内面に沿って設置されている。
【0024】
外側および内側の包帯プレート〔bandage plate〕(18)、(19)は、一方の側では溶接部(20)により凸状膜(11)の上部フランジ(14)にしっかりと固定されており、他方の側では、外側および内側の安全な包帯ギャップ(24)、(25)を規制する外側と内側のファスナー(21)、(22)によって、凸状膜(11)の下部フランジ(15)にフローティングカップリングが行われており、これらの動きは、各リテーナー(26)によって制限される。
【0025】
請求項に係る、原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムは、次のように作動する。
【0026】
原子炉圧力容器(2)が破損すると、炉心溶融物の静水圧と原子炉圧力容器(2)内の残留過剰ガス圧の作用下で、炉心溶融物が片持ちトラス(3)に保持されたガイドプレート(1)の表面に流れ始める。ガイドプレート(1)上を流れ落ちる炉心溶融物は、容器(4)に入り、フィラー(7)と接触する。原子炉圧力容器(2)内の高圧下での炉心溶融物のセクター非軸対称流動により、ガイドプレート(1)と片持ちトラス(3)のそれぞれの部分破壊が起こり、その結果、原子炉圧力容器(2)内の過剰圧力が、凸状膜(11)とドラム(31)に直接影響を及ぼす。
【0027】
図3図5に示すように容器(4)のフランジ(5)とドラム(31)間に取り付けられた凸状膜(11)は、容器(4)を密閉して、外部冷却用に供給された水の流入を防止する。図4に示すように凸状膜(11)は、垂直に方向付けされたセクター(12)を複数個、溶接部(13)により互いに接続して構成されている。下部フランジ(15)は、凸状膜(11)の下部に配置され、上部フランジ(14)は、凸状膜(11)の上部に配置される。
【0028】
凸状膜(11)は、片持ちトラス(3)の独立した半径方向および方位角方向の熱膨張と、容器(4)の軸方向および半径方向の熱膨張を保証し、当該システムの機器の構成要素への機械的衝撃の影響下において、片持ちトラス(3)と容器(4)の独立した動きを提供する。
【0029】
容器(4)内の、スラグキャップと炉心溶融物表面上に形成された薄いクラストへの冷却水の供給が開始される前に、炉心溶融物表面側からドラム(31)と凸状膜(11)への熱衝撃が大きくなる。ドラム(31)を使用すると、次のプロセスに関連する凸状膜の高さを減らすことができる。凸状膜(11)の表面全体に影響を与える圧力の急速な上昇とセクターごとの凸状膜(11)に作用する蒸気爆発の影響下で、凸状膜(11)の気密性を確保するためには、その表面積を最小限に抑える必要がある。凸状膜(11)を特定の直径にすると、その高さの減少によってその面積の縮小が達成される。但し、凸状膜(11)の高さの低減には、その剛性の増加と、片持ちトラス(3)と容器(4)の位置の多方向の変化に伴う補償能力の減少によって限界がある。これは、加熱/冷却中の容器(4)のフランジ(5)の上下動やフランジ(5)の半径の増減のこれらの変化が、方位軸方向において高さと半径の両方で不均一に発生する可能性があることによる。
【0030】
片持ちトラス(3)も同様に、方位軸方向に不均一に曲がる。これにより、方位軸に沿った容器(4)と片持ちトラス(3)の間の距離の軸方向のずれがさらに大きくなる。容器(4)のフランジ(5)が半径方向にずれると、そのフランジ(5)の面内で凸状膜(11)のずれに繋がり、方位軸に沿った容器(4)と片持ちトラス(3)間の距離の軸方向のずれと相まって、凸状膜(11)にかなりの応力が発生し、凸状膜(11)の高さの低減を制限する。これらの条件下において、急速な圧力上昇と蒸気爆発に対する凸状膜(11)の耐性を確保するために、容器(4)のフランジ(5)と片持ちトラス(3)との相対位置が変化した場合に必要な補償機能を考慮して、凸状膜(11)の最小高さを選択する必要がある。
【0031】
図2図3に示すように、熱放射の影響下で加熱されたドラム(31)の各リブ(33)は、熱負荷をドラム(33)のシェル(32)に伝達し、シェル(32)は、各リブ(33)から受け取ったおよび炉心溶融物の表面から直に受け取った熱エネルギーを冷却水に伝達する。ドラム(31)の各リブ(33)の間に配置されたテンション要素(36)は、熱放射の影響からドラム(31)のシェル(32)を遮蔽し、二次再放射による熱放射の影響をドラム(31)の各リブ(33)とシェル(32)に再分配して、炉心溶融物の表面からの熱放射の空間的な不均一性と、容器(4)の冷却水の異なる高さ位置でのシェル(32)の軸方向における不均一な冷却に関連する、シェル(32)の最大局所熱負荷を低減する。
【0032】
同じ期間中に、ガイドプレート(1)と、これに保持されている原子炉圧力容器(2)の底部が、炉心溶融物の残留物でさらに加熱される。容器(4)内に炉心溶融物表面上のクラストへの冷却水の供給を開始することに続いて、凸状膜(11)は、容器(4)の内部空間を密閉し、容器(4)の内部と外部を分離する機能を果たし続ける。容器(4)の外面を安定的に水冷するモードでは、凸状膜(11)は、外側の水または蒸気と水の混合物で冷却されるため破壊されない。但し、原子炉圧力容器(2)の底部とその内部の少量の炉心溶融物の状態が変化する可能性がある。これにより、原子炉圧力容器(2)の底部の破片が炉心溶融物の残留物とともに容器(4)内に落下し、容器(4)のフランジ(5)の熱保護(6)にその炉心溶融物が動的な影響を与え、炉心溶融物と水との相互作用による圧力上昇を引き起こす可能性がある。
【0033】
炉心溶融物と水との相互作用は、炉心溶融物表面に固いクラストがまだ形成されておらず、原子炉圧力容器(2)の底部に炉心溶融物の残留物が存在しているという条件下であり、炉心溶融物表面が水で冷却される最初の段階で、炉心溶融物表面上の薄いクラストの表面を覆っているスラグキャップの表面にほとんど水がない状態で短時間でのみ可能である。これらの条件下では、上部からスラグキャップに供給された冷却水の全量が蒸発して、上部にある構造物を冷却する。
【0034】
スラグキャップに水が蓄積し始めると、つまり蒸発する水の流量が容器(4)への水の供給に遅れをとり始めると、炉心溶融物表面のクラストが急速に成長し始める。クラストの成長は不均一であり、最も厚いクラストは容器(4)の内面近くに形成され、薄いクラストは容器(4)の中央部における炉心溶融物表面に形成される。
【0035】
容器(4)内の圧力が上昇した場合に凸状膜(11)を破壊から保護するために、凸状膜(11)の外側と内側に外側と内側の包帯プレート(18)、(19)が取り付けられており、外側と内側の安全包帯ギャップ(24)、(25)による制限の範囲内で、凸状膜(11)の幾何学的特性の一定の変化を保証する。圧力上昇時の衝撃波は、容器(4)の軸に対して非対称に伝播するので、凸状膜(11)への衝撃波の影響には、外側および内側の包帯プレート(18)、(19)がそれぞれ直面する前方および後方の両方の圧力波が含まれる。外側と内側の包帯プレート(18)、(19)は、凸状膜(11)の両側に対称的に配置され、前方および後方の圧力波の影響下で振動する凸状膜(11)の腹の大きさを大幅に減少させて、凸状膜(11)の振動プロセスと共鳴現象の発生を防ぐ。
【0036】
衝撃波の動きの特徴は、下から上向きに動くことである。これらの条件下では、下部フランジ(15)、凸状膜(11)の下部、外側および内側の包袋プレート(18)、(19)の下部が最初に衝撃荷重を引き受ける。凸状膜(11)の変形は下から上に向かって増加する。外側および内側の包帯プレート(18)、(19)の各上端部は、凸状膜(11)の破壊を防止するために、一定の外側および内側の安全包帯ギャップ(24)、(25)を備えた凸状膜(11)の上部フランジ(14)にしっかりと(例えば溶接部(20)によって)、固定されており、衝撃波が下から上に移動するときの凸状膜(11)の形状変化の振幅が減少する。
【0037】
同時に、凸状膜(11)の下に配置されたドラム(31)は、凸状膜(11)と共に衝撃荷重を吸収する。上向きに伝搬する衝撃波は、設計上の特徴により、主にドラム(31) の中間部と上部に影響を与える。ドラム(31)は、複雑な規則構造の形で配置される。ドラム(31)のシェル(32)とリブ(33)の表面は鉛直面であり、一方の表面に対して他方の表面が直角の角度を有している。テンション要素(36)の表面は、ドラム(31)のシェル(32)とリブ(33)の表面と平行である。ドラム(31)の上部材(34)、下部材(35)および支持フランジ(37)の表面は、シェル(32)、リブ(33)およびテンション要素(36)の表面に対して垂直である。この各構成部品の配置により、ドラム(31)内の衝撃波エネルギーの部分的な吸収と部分的な反射が提供され、ドラム(31)の部品と、片持ちトラス(3)およびガイドプレート(1)の部品との間で衝撃波エネルギーの吸収が再分配される。ドラム(31)内で非軸対称衝撃波の影響を受けると、ドラム(31)のシェル(32)の半径方向および方位角方向の振動が発生し、それらのエネルギーの大部分がテンション要素(36)によって減衰される。
【0038】
衝撃波は、ドラム(31)の中部と上部から容器(4)の内部に部分的に反射され、部分的にいくつかの波に分割されて異なる方向に移動し、片持ちトラス(3)とガイドプレート(1)に影響を与える。これにより、凸状膜(11)に対する衝撃波の影響が弱まる。水平に配置されたドラム(31)の上部材(34)と支持フランジ(37)への衝撃波の影響により、衝撃波が主に下向きに反射して、容器(4)のフランジ(5)の熱保護(6)に向かい、これにより凸状膜(11)への衝撃波の影響が軽減される。容器(4)のフランジ(5)とドラム(31)との接続領域への衝撃波の影響を軽減するため、つまり、テンション要素(36)と固定シェル(41)を破壊から保護するため、ドラム(31)をフランジ(5)に固定する領域は、図2に示すようにシェル(41)とテンション要素(36)を固定する保護コンクリート層(40)で埋め尽くされている。
【0039】
炉心溶融物がフィラー(7)に入ると、容器(4)が徐々に加熱され、凸状膜(11)に圧縮圧力がかかる。凸状膜(11)がその補償機能を実行するためには、外側および内側の包袋プレート(18)、(19)の動きに対して凸状膜(11)の軸方向と半径方向の動きが独立していることが保証される必要がある。動きの独立性の要件は、衝撃波の影響から凸状膜(11)を保護する必要による、凸状膜(11)の剛性と、外側および内側の包帯プレート(18)、(19)の剛性との大きな違いに関連している。動きの実際的な独立性は、図5図6に示すように外側および内側の安全包帯ギャップ(24)、(25)を有する凸状膜(11)の下部フランジ(15)上に存する外側および内側の包帯プレート(18)、(19)の自由な動きを提供する外側および内側のファスナー(21)、(22)の取り付けによって達成される。
【0040】
輸送および取り扱い作業の過程では、凸状膜(11)の損傷を防ぐために、外側および内側の包帯プレート(18)、(19)が外側および内側の調整ナット(27)、(28)を使用してしっかりと固定され、設計位置への取り付け時には、外側および内側の調整ナット(27)、(28)がそれぞれに対応するリテーナー(26)に当たるまで完全に緩められる。これにより、図5図6に示すように外側および内側の調整ギャップ(29)、(30)が形成される。調整ギャップ(29)、(30)は、容器(4)の熱膨張の間、凸状膜(11)の下部フランジ(15)に従って、外側および内側の包帯プレート(18)、(19)がスライドすることによる、凸状膜(11)の自由な上向きの移動を提供する。
【0041】
凸状膜(11)が衝撃波の影響を受けたときに、凸状膜(11)の、片持ちトラス(3)と容器(4)への確実な固定が確保されている必要がある。この目的のために、凸状膜(11)の上部フランジ(14)が片持ちトラス(3)に固定された上部熱伝導要素(16)に取り付けられており、上部フランジ(14)と上部熱伝導要素(16)が一種のポケット(23)を形成し、外部媒体(冷却水または蒸気と水の混合物)との効率的な熱交換を提供する。図5に示すように対流熱交換用のポケット(23)は、炉心溶融物表面の冷却開始前に上部フランジ(14)と上部熱伝導要素(16)を過熱から保護するために必要であり、これにより、これらの部品の強度特性を維持して衝撃荷重に耐えることができる。
【0042】
凸状膜(11)の下部では、下部フランジ(15)および下部熱伝導要素(17)から熱除去が行われ、内側の包帯プレート(19)を支える内側のファスナー(22)から熱除去が行われる。
【0043】
したがって、原子炉における炉心溶融物の局在化および冷却のためのシステムにおいて、包帯プレートを備える膜を使用することで、容器の外表面を冷却するために供給される水の侵入を防止するための容器の気密性と、片持ちトラスの独立した半径方向および方位角方向の熱膨張と、システム機器の部品に対する地震および衝撃による機械的影響下での片持ちトラスと容器の独立した動きとを確保することができ、そして、ドラムを使用することで、容器の内部空間での蒸気とガスの混合圧力が上昇した場合に、熱除去効果をさらに高め、衝撃波の影響から当該膜を保護することが可能になり、すなわち容器と片持ちトラス間の気密接続の信頼性を高めることで、システム全体の信頼性を高めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6