(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 133/26 20060101AFI20240619BHJP
C09J 139/04 20060101ALI20240619BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240619BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240619BHJP
【FI】
C09J133/26
C09J139/04
C09J4/02
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2023524223
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2022021509
(87)【国際公開番号】W WO2022250105
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2021088584
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】今井 政登
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-74308(JP,A)
【文献】特開2015-157913(JP,A)
【文献】特開2019-116548(JP,A)
【文献】特表2018-534391(JP,A)
【文献】特開昭54-017942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)のみからなる粘着剤用主剤(B)と、多官能(メタ)アクリレート(C)とを含有する粘着剤組成物であり、
前記共重合体(A)が、
2-エチルヘキシルアクリレート(a1)と、
炭素数が1~4である直鎖アルキル基を有する直鎖アルキル(メタ)アクリレート(a3)
と、窒素原子含有モノマー(a4)
と、任意に前記2-エチルヘキシルアクリレート(a1)以外の炭素数が4~8である分岐アルキル基を有する分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)と、を構成単量体として含
み、
前記窒素原子含有モノマー(a4)が、各々の炭素数が1~3である二つのアルキル基を有するN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(a43)、ビニル基を有する窒素含有複素環化合物であるN-ビニルモノマー(a44)及びN-(メタ)アクリロイルモノマー(a45)よりなる群から選択される少なくとも一種であり、前記N-(メタ)アクリロイルモノマー(a45)は、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン及びN-(メタ)アクリロイルピロリジンよりなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記共重合体(A)の構成単量体の全重量に対して、前記2-エチルヘキシルアクリレート(a1)の含有量が20重量%以上65重量%以下であり、
前記共重合体(A)の構成単量体の全重量に対して、前記分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)と前記直鎖アルキル(メタ)アクリレート(a3)と前記窒素原子含有モノマー(a4)との合計の含有量が35重量%以上80重量%以下であり、
前記共重合体(A)のカルボキシ基濃度が0.08モル/kg以下であり、
前記共重合体(A)の水酸基濃度が0.05モル/kg以下であり、
前記共重合体(A)の前記2-エチルヘキシルアクリレート(a1)及び前記分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)に由来する3級炭素濃度が1.5モル/kg以上5.0モル/kg以下であ
り、
前記多官能(メタ)アクリレート(C)が、炭素数が2~20でありかつ3つ以上の水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物1モルの、(メタ)アクリル酸3モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C22)を含有し、
前記多官能(メタ)アクリレート(C)に対する前記粘着剤用主剤(B)の重量比が100/10から100/0.5までである、
粘着剤組成物。
【請求項2】
前記共重合体(A)の重量平均分子量が100,000以上500,000以下である、
請求項1記載の
粘着剤組成物。
【請求項3】
前記共重合体(A)のガラス転移温度が-15℃以上10℃以下である、
請求項1記載の
粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1記載の粘着剤組成物の硬化物からなる硬化層を有する、
粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着剤用主剤、粘着剤組成物及び粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系粘着剤としては、特定のアルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする(共)重合体が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示は、粘着性に優れる粘着フィルムを作製するための粘着剤用主剤、この粘着剤用主剤を含有する粘着剤組成物、及びこの粘着剤組成物から作製される粘着フィルムを提供することを目的とする。
【0005】
本開示の一態様に係る粘着剤用主剤(B)は、2-エチルヘキシルアクリレート(a1)と、前記2-エチルヘキシルアクリレート(a1)以外の炭素数が4~10である分岐アルキル基を有する分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)、炭素数が1~4である直鎖アルキル基を有する直鎖アルキル(メタ)アクリレート(a3)及び窒素原子含有モノマー(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とを構成単量体として含む共重合体(A)を含有する。前記共重合体(A)のカルボキシ基濃度が0.08モル/kg以下である。前記共重合体(A)の水酸基濃度が0.05モル/kg以下である。前記共重合体(A)の、前記2-エチルヘキシルアクリレート(a1)及び前記分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)に由来する3級炭素濃度が1.5モル/kg以上5.0モル/kg以下である。
【0006】
本開示の一態様に係る粘着剤組成物は、前記粘着剤用主剤(B)と、多官能(メタ)アクリレート(C)とを含有する。
【0007】
本開示の一態様に係る粘着フィルムは、前記粘着剤組成物の硬化物からなる硬化層を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来、粘着テープまたは粘着シート用等の粘着剤としては天然ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤が知られている。アクリル系粘着剤としては、特定のアルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする(共)重合体が開発されている(例えば、特許文献1:特開2004-143420号公報)。
【0009】
しかし、発明者の調査によると、上記特許文献1の技術であっても、粘着性については十分に満足できるものではなかった。
【0010】
そこで、発明者は、粘着性に優れる粘着フィルムを作製するための粘着剤用主剤を提供するべく検討を行った結果、本開示に到達した。
【0011】
以下、本開示の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。以下の実施形態は、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
本実施形態に係る粘着剤用主剤(B)は、2-エチルヘキシルアクリレート(a1)と、2-エチルヘキシルアクリレート(a1)以外の炭素数が4~10である分岐アルキル基を有する分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)、炭素数が1~4である直鎖アルキル基を有する直鎖アルキル(メタ)アクリレート(a3)及び窒素原子含有モノマー(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とを構成単量体として含む共重合体(A)を含有する。共重合体(A)のカルボキシ基濃度が0.08モル/kg以下である。共重合体(A)の水酸基濃度が0.05モル/kg以下である。共重合体(A)の、2-エチルヘキシルアクリレート(a1)及び分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)に由来する3級炭素濃度が1.5モル/kg以上5.0モル/kg以下である。
【0013】
本実施形態の粘着剤用主剤(B)を含む粘着剤組成物(X)の硬化物からなる硬化層を有する粘着フィルムは、以下の効果を奏する。
(1)粘着性、すなわち粘着力及び保持力に優れる。
(2)塗工性に優れる。
(3)曲面での粘着性に優れる。
(4)耐腐食性に優れる。
(5)耐熱性に優れる。
【0014】
<共重合体(A)>
本実施形態における共重合体(A)は、2-エチルヘキシルアクリレート(a1)(以下、(a1)成分ともいう)と、(a1)成分以外の炭素数が4~10である分岐アルキル基を有する分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)(以下、(a2)成分ともいう)、炭素数が1~4である直鎖アルキルを有する直鎖アルキル(メタ)アクリレート(a3)(以下、(a3)成分ともいう)及び窒素原子含有モノマー(a4)(以下、(a4)成分ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体と、を構成単量体として含む。構成単量体とは、重合することで共重合体(A)を構成する単量体である。すなわち、共重合体(A)は(a1)成分と、(a2)成分、(a3)成分及び(a4)成分からなる群から選択される少なくとも一種の単量体とを含む構成単量体の重合体である。換言すると、共重合体(A)は、(a1)成分の残基と、(a2)成分の残基、(a3)成分の残基及び(a4)成分の残基よりなる群から選択される少なくとも一種とを、構成単位として含む。
【0015】
<2-エチルヘキシルアクリレート(a1)>
本実施形態における(a1)成分は、2-エチルヘキシルアクリレートのみである。
【0016】
<(a1)成分以外の炭素数が4~10である分岐アルキル基を有する分岐アルキル(メタ)アクリレート(a2)>
本実施形態における(a2)成分は、例えば、2-エチルヘキシルメタアクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート及びイソデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0017】
なお、(メタ)アクリレートは、メタアクリレートとアクリレートとのうち少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリルは、メタクリルとアクリルとのうち少なくとも一方を意味する。
【0018】
(a2)成分は、好ましくは炭素数が4~8である分岐アルキル基を有する分岐アルキル(メタ)アクリレートを含有し、更に好ましくは2-エチルヘキシルメタアクリレート及びイソブチル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方を含有し、特に好ましくはイソブチル(メタ)アクリレートを含有し、最も好ましくはイソブチルアクリレートを含有する。
【0019】
<炭素数が1~4である直鎖アルキルを有する直鎖アルキル(メタ)アクリレート(a3)>
本実施形態における(a3)成分は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピルメチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0020】
(a3)成分は、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有し、更に好ましくはメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びn-ブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有し、特に好ましくはメチルアクリレートを含有する。
【0021】
<窒素原子含有モノマー(a4)>
本実施形態における(a4)成分は、例えば、(メタ)アクリルアミド(a41)(以下、(a41)成分ともいう)、炭素数が1~3であるアルキル基を有するN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a42)(以下、(a42)成分ともいう)、各々の炭素数が1~3である二つのアルキル基を有するN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(a43)(以下、(a43)成分ともいう)、ビニル基を有する窒素含有複素環化合物であるN-ビニルモノマー(a44)(以下、(a44)成分ともいう)、及びN-(メタ)アクリロイルモノマー(a45)(以下、(a45)成分ともいう)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0022】
(a42)成分は、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、及びN-エチル(メタ)アクリルアミドN-プロピル(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0023】
(a43)成分は、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0024】
(a44)成分は、例えば、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン及びN-ビニル-2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0025】
(a45)成分は、例えば、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン及びN-(メタ)アクリロイルピロリジンよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0026】
(a4)成分は、好ましくは(a43)成分、(a44)成分及び(a45)成分よりなる群から選択される少なくとも一種を含有し、更に好ましくはN,N-ジメチルアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン及びN-ビニル-2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0027】
粘着性の観点から、構成単量体は好ましくは(a4)成分を含有し、更に好ましくは(a3)成分と(a4)成分とを含有し、又は(a2)成分と(a3)成分と(a4)成分とを含有する。
【0028】
共重合体(A)の構成単量体の全重量に対して、(a1)成分の含有量は、粘着性の観点から、好ましくは20重量%以上65重量%以下、更に好ましくは30重量%以上55重量%以下である。
【0029】
共重合体(A)の構成単量体の全量に対して、(a2)成分と(a3)成分と(a4)成分との含有量の合計は、粘着性の観点から、好ましくは35重量%以上80重量%以下、更に好ましくは45重量%以上70重量%以下である。
【0030】
また、(a1)成分の、(a2)成分と(a3)成分と(a4)成分との合計に対する重量比[(a1)成分/{(a2)成分+(a3)成分+(a4)成分}]は、粘着性の観点から、好ましくは20/80から65/35まで、更に好ましくは30/70から55/45までである。
【0031】
共重合体(A)の構成単量体が、(a2)成分を含む場合、(a2)成分の含有量は、共重合体(A)の構成単量体の全重量に対して、粘着性の観点から、好ましくは0.1重量%以上50重量%以下、更に好ましくは1重量%以上45重量%以下である。
【0032】
共重合体(A)の構成単量体が、(a3)成分を含む場合、(a3)成分の含有量は、共重合体(A)の構成単量体の全重量に対して、粘着性の観点から、好ましくは0.1重量%以上60重量%以下、更に好ましくは1重量%以上50重量%以下である。
【0033】
共重合体(A)の構成単量体が、(a4)成分を含む場合、(a4)成分の含有量は、共重合体(A)の構成単量体の全重量に対して、粘着性の観点から、好ましくは3重量%以上20重量%以下、更に好ましくは5重量%以上15重量%以下である。
【0034】
共重合体(A)の構成単量体は、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分及び(a4)成分のみを含有してもよく、これら以外の単量体を更に含んでもよい。構成単量体は、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分及び(a4)成分以外の単量体として、例えば、カルボキシル基を有する単量体(a5)(以下、(a5)成分ともいう)とカルボキシル基を有しない単量体(a6)(以下、(a6)成分ともいう)とのうち少なくとも一方を含有できる。すなわち、共重合体(A)は、(a1)成分の残基、(a2)成分の残基、(a3)成分残基及び(a4)成分の残基のみを構成単位として含んでもよく、(a1)成分の残基、(a2)成分の残基、(a3)成分の残基及び(a4)成分の残基に加えて、(a5)成分の残基と、(a6)成分の残基とのうち、少なくとも一方を構成単位として更に含んでもよい。
【0035】
(a5)成分は、例えば、(メタ)アクリル酸及びクロトン酸などの1塩基酸、マレイン酸、イタコン酸及びフマル酸などの多塩基酸、前記の多塩基酸の無水物、並びに前記の多塩基酸のモノアルキルエステルよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0036】
(a5)成分は、粘着性の観点から、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸及びイタコン酸よりなる群から選択される少なくとも一種を含有し、更に好ましくはアクリル酸を含有する。
【0037】
(a6)成分は、例えば、ビニルエステル(a61)(以下、(a61)成分ともいう)と水酸基を有する単量体(a62)(以下、(a62)成分ともいう)とよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。(a61)成分は、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酪酸ビニル等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。(a62)成分は、例えば炭素数が2~8であるヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a621)(以下、(a621)成分ともいう)と、炭素数が2~8であるアルキレン基を有するポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸モノエステル化物(a622)(以下、(a622)成分ともいう)とよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。(a621)成分は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。(a622)成分は、例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を含有する。
【0038】
(a6)成分は、粘着性の観点から、好ましくは(a62)成分を含有し、更に好ましくは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含有し、特に好ましくは2-ヒドロキシエチルアクリレートを含有する。
【0039】
なお、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、(a4)成分、(a5)成分及び(a6)成分の各々は、一種類の化合物のみを含有してもよく、二種類以上の化合物を含有してもよい。
【0040】
共重合体(A)の構成単量体の全重量に対して、(a5)成分の含有量は、粘着性の観点から、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
【0041】
また、共重合体(A)の構成量体の全重量に対して、(a6)成分の含有量は、粘着性の観点から、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは1重量%以上15重量%以下である。
【0042】
本実施形態における共重合体(A)のカルボキシ基濃度は、0.08モル/kg以下であり、好ましくは0.05モル/kg以下であり、更に好ましくは0.03モル/kg以下である。共重合体(A)のカルボキシ基濃度が、0.08モル/kgを超えると金属材料の腐食という問題がある。共重合体(A)のカルボキシ基濃度は、0モル/kgであってもよく、すなわち共重合体(A)のカルボキシ基濃度は0モル/kg以上である。なお、共重合体(A)のカルボキシ基濃度とは、共重合体(A)の単位重量当たりの、共重合体(A)の有するカルボキシ基のモル数である。カルボキシ基濃度は、例えば、JIS K0070に準じて共重合体(A)の酸価(KOHmg/g)を測定し、その結果から算出できる。
【0043】
共重合体(A)のカルボキシ基濃度は、例えば共重合体(A)の構成単量体中の(a5)成分の種類の選択及び重量割合の調整によって、調整できる。
【0044】
本実施形態における共重合体(A)の水酸基濃度は、0.05モル/kg以下であり、好ましくは0.03モル/kg以下である。共重合体(A)の水酸基濃度が、0.05モル/kgを超えると高温塗工時における増粘の発生という問題がある。なお、共重合体(A)の水酸基濃度とは、共重合体(A)の単位重量当たりの、共重合体(A)の有する水酸基のモル数である。この水酸基濃度は、JIS K0070に準じて共重合体(A)の水酸基価(KOHmg/g)を測定し、その結果から算出できる。
【0045】
共重合体(A)の水酸基濃度は、例えば共重合体(A)の構成単量体中の(a62)成分の種類の選択及び重量割合の調整により、調整できる。
【0046】
共重合体(A)の、(a1)成分及び(a2)成分に由来する3級炭素濃度は、1.5モル/kg以上5.0モル/kg以下であり、好ましくは1.9モル/kg以上4.5モル/kg以下、更に好ましくは2.2モル/kg以上4.0モル/kg以下である。共重合体(A)の(a1)成分及び(a2)成分に由来する3級炭素濃度が1.5モル/kg未満であると粘着力が劣る傾向があり、5.0モル/kgを超えると保持力が劣る傾向がある。なお、共重合体(A)の、(a1)成分及び(a2)成分に由来する3級炭素濃度とは、共重合体(A)の単位重量当たりの、共重合体(A)の有する、(a1)成分の2-エチルヘキシル基に由来する3級炭素及び(a2)成分の分岐アルキル基に由来する3級炭素の合計のモル数である。
【0047】
3級炭素濃度は、共重合体(A)を1H-NMR測定、及び13C-NMR測定した結果に基づき、共重合体(A)の単位重量に対する3級炭素のモル数として求められる。詳しくは、共重合体(A)の重量は1H-NMR測定、13C-NMR測定することにより求められる。(a1)成分の2-エチルヘキシル基に由来する3級炭素及び(a2)成分に由来する3級炭素のモル数は13C-NMR測定(DEPT法)により求められる。
【0048】
また、3級炭素濃度は、例えば共重合体(A)の構成単量体中の(a1)成分の重量割合の調製、並びに(a2)成分の種類の選択と重量割合の調整とにより、適宜調整できる。
【0049】
共重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、粘着性の向上及び塗工性の向上の観点から、好ましくは100,000以上500,000以下、更に好ましくは150,000以上400,000以下、特に好ましくは200,000以上300,000以下である。
【0050】
本実施形態におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は、以下のとおりである。
-装置:「HLC-8120GPC」[東ソー株式会社製]。
-カラム:「Guardcolumn HXL-H」(1本)及び「TSKgel GMHXL」(2本)[いずれも東ソー株式会社製]。
-試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液。
-溶液注入量:100μl。
-流量:1ml/分。
-測定温度:40℃。
-検出装置:屈折率検出器。
-基準物質:標準ポリスチレン。
【0051】
共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、粘着力の向上及び塗工性の向上の観点から、好ましくは-15℃以上10℃以下、更に好ましくは-10℃以上5℃以下である。
【0052】
上記ガラス転移温度(Tg)は、粘弾性測定装置[例えば型番MCR-302、Anton Paar社製]を用いて、共重合体(A)を次の条件で測定して得られた損失係数(tanδ)のピーク値を示す温度とした。
-治具:φ8mmパラレルプレート。
-試料厚さ:1mm。
-歪み:1%。
-周波数:1Hz。
-昇温速度:5℃/min。
-温度範囲:-50℃から180℃まで。
【0053】
また、共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、共重合体(A)の構成単量体中の各単量体の種類の選択及び重量割合の調整により、適宜調整できる。
【0054】
すなわち、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート及びn-ブチルアクリレートの各々は、Tgを小とする傾向にある。また、メチル(メタ)アクリレート及び窒素原子含有モノマー(a4)の各々は、Tgを大とする傾向にある。更に、メタアクリレート単量体は、アクリレート単量体より、Tgを大とする傾向がある。
【0055】
本実施形態における共重合体(A)は、構成単量体を、公知の重合方法、例えば塊重合、溶液重合、乳化重合、又は懸濁重合などで、重合させることで、合成できる。この場合、公知の重合開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、又はベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどのパーオキサイド系重合開始剤など、の存在下で、構成単量体を重合させることができる。
【0056】
上記重合方法のうち、好ましくは溶剤(S)の存在下で構成単量体を重合させる溶液重合である。溶剤(S)は、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;並びにエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。この溶液重合により、溶剤(S)と共重合体(A)との混合物が得られる。この混合物中の溶剤(S)と共重合体(A)とを分離して共重合体(A)のみを得ることができる。また、この溶剤(S)と共重合体(A)との混合物をそのまま後述する粘着剤用主剤(B)とすることもできる。また、混合物の溶剤(S)の含有割合を必要により調整し、かつ混合物に必要により適宜の添加剤を添加することで、粘着剤用主剤(B)を調製することもできる。
【0057】
<粘着剤用主剤(B)>
本実施形態の粘着剤用主剤(B)は、共重合体(A)を含有する。粘着剤用主剤(B)は、後述の粘着剤組成物(X)用の主剤として好適である。
【0058】
粘着剤用主剤(B)は、例えば共重合体(A)のみからなる。また、粘着剤用主剤(B)は、共重合体(A)と溶剤(S)とを含有してもよい。溶剤(S)としては、前記の共重合体(A)の重合に使用する溶剤(S)と同じものが挙げられる。溶剤(S)の割合は、粘着剤用主剤(B)の重量に対して、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは2重量%以下である。
【0059】
粘着剤用主剤(B)は、必要により、共重合体(A)及び粘着剤用主剤(B)以外の適宜の添加剤を含有してもよい。また、粘着剤用主剤(B)は、反応硬化性を有する成分を含有しないことが好ましい。
【0060】
<多官能(メタ)アクリルモノマー(C)>
本実施形態における多官能(メタ)アクリルモノマー(C)(以下、(C)成分ともいう)は、分子中に複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基とのうち一方又は両方のことである。(C)成分は、例えば2官能(メタ)アクリルモノマー(C1)、3官能(メタ)アクリルモノマー(C2)、4官能(メタ)アクリルモノマー(C3)、及び5官能以上(メタ)アクリルモノマー(C4)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0061】
2官能(メタ)アクリルモノマー(C1)(以下、(C1)成分ともいう)は、分子中に二つの(メタ)アクリロイル基を有する。
【0062】
(C1)成分は、例えば、
炭素数が2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物1モルの、(メタ)アクリル酸2モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C11);
炭素数が2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物1モルの、(メタ)アクリル酸2モルとの反応によるエステル化物の構造を有する化合物(C12);及び
炭素数が2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物のラクトン付加物1モルの、(メタ)アクリル酸2モルとの反応によるエステル化物の構造を有する化合物(C13)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0063】
化合物(C11)、化合物(C12)及び化合物(C13)の各々に関し、炭素数が2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物は、例えば炭素数が2~20である鎖状脂肪族アルコール、炭素数が3~20である脂環式アルコール及び炭素数が6~15である芳香族性水酸基含有化合物等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0064】
炭素数が2~20である鎖状脂肪族アルコールは、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等の炭素数が2~20である鎖状脂肪族2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン等の炭素数が3~20である鎖状脂肪族3価アルコール;並びにペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等の炭素数が5~20である鎖状脂肪族4~8価アルコール等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0065】
炭素数が3~20である脂環式アルコールは、例えば1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘプタンジオール、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコール;並びに1,3,5-シクロヘキサントリオール等の3価アルコール等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0066】
炭素数が6~15である芳香族性水酸基含有化合物は、例えばピロガロール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオール等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0067】
化合物(C12)に関し、アルキレンオキサイドは、好ましくは炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドを含有し、より具体的には、例えばエチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOということがある)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「1,2-プロピレンオキサイド」をPOということがある)、1,3-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド及び2,3-ブチレンオキサイド等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0068】
アルキレンオキサイドは、粘着性の観点から、EOとPOとのうち少なくとも一方を含有することが好ましく、POを含有することが更に好ましい。
【0069】
化合物(C12)に関し、炭素数が2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物における1モル当たりのアルキレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上40モル以下であることが好ましい。
【0070】
化合物(C13)に関し、ラクトンは、例えば炭素数が2~12であるラクトンを含有し、より具体的には、例えばアセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン及びラウロラクトン等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0071】
化合物(C13)に関し、炭素数が2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物のラクトン付加物における1モル当たりのラクトンの付加モル数は、1モル以上15モル以下であることが好ましい。
【0072】
(C1)成分は、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンメタノールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0073】
3官能(メタ)アクリルモノマー(C2)(以下、(C2)成分ともいう)は、分子中に三つの(メタ)アクリロイル基を有する。(C2)成分は、例えば、
炭素数が2~20でありかつ3つ以上の水酸基を有する化合物1モルの、(メタ)アクリル酸3モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C21);
炭素数が2~20でありかつ3つ以上の水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物1モルの、(メタ)アクリル酸3モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C22);及び
炭素数が2~20でありかつ3つ以上の水酸基を有する化合物のラクトン付加物1モルの、(メタ)アクリル酸3モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C23)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0074】
化合物(C21)、化合物(C22)及び化合物(C23)の各々に関し、炭素数が2~20でありかつ3つ以上の水酸基を有する化合物は、例えば上記の(C1)成分に関して炭素数2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物として例示した化合物のうちの、3つ以上の水酸基を有する化合物よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0075】
化合物(C22)に関し、アルキレンオキサイドが含みうる化合物は上記の化合物(C12)の場合と同様でよく、アルキレンオキサイドの付加モル数も上記の化合物(C12)の場合と同様でよい。また、化合物(C23)に関し、ラクトンが含みうる化合物は上記の化合物(C13)の場合と同様でよく、ラクトンの付加モル数も上記の化合物(C13)の場合と同様でよい。
【0076】
(C2)成分は、例えばトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、及びソルビトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のトリ(メタ)アクリレート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0077】
4官能(メタ)アクリルモノマー(C3)(以下、(C3)成分ともいう)は、分子中に4つの(メタ)アクリロイル基を有する。(C3)成分は、例えば、
炭素数が2~20でありかつ4つ以上の水酸基を有する化合物1モルの、(メタ)アクリル酸4モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C31);
炭素数が2~20でありかつ4つ以上の水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物1モルの、(メタ)アクリル酸4モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C32);及び
炭素数が2~20でありかつ4つ以上の水酸基を有する化合物のラクトン付加物1モルの、(メタ)アクリル酸4モルとのエステル化物の構造を有する化合物(C33)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0078】
化合物(C31)、化合物(C32)及び化合物(C33)の各々に関し、炭素数が2~20でありかつ4つ以上の水酸基を有する化合物は、例えば上記の(C1)成分に関して炭素数2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物として例示した化合物のうちの、4つ以上の水酸基を有する化合物よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0079】
化合物(C32)に関し、アルキレンオキサイドが含みうる化合物は上記の化合物(C12)の場合と同様でよく、アルキレンオキサイドの付加モル数も上記の化合物(C12)の場合と同様でよい。また、化合物(C33)に関し、ラクトンが含みうる化合物は上記の化合物(C13)の場合と同様でよく、ラクトンの付加モル数も上記の化合物(C13)の場合と同様でよい。
【0080】
(C3)成分は、例えばペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のテトラ(メタ)アクリレート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0081】
5官能以上(メタ)アクリルモノマー(C4)(以下、(C4)成分ともいう)は、分子中に5つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。(C4)成分は、例えば
炭素数が2~20でありかつ5つ以上の水酸基を有する化合物1モルの、(メタ)アクリル酸5モル以上とのエステル化物の構造を有する化合物(C41);
炭素数が2~20でありかつ5つ以上の水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物1モルの、(メタ)アクリル酸5モル以上とのエステル化物の構造を有する化合物(C42);及び
炭素数が2~20でありかつ5つ以上の水酸基を有する化合物のラクトン付加物1モルの、(メタ)アクリル酸5モル以上とのエステル化物の構造を有する化合物(C43)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0082】
化合物(C41)、化合物(C42)及び化合物(C43)の各々に関し、炭素数が2~20でありかつ5つ以上の水酸基を有する化合物は、例えば上記の(C1)成分に関して炭素数2~20でありかつ2つ以上の水酸基を有する化合物として例示した化合物のうちの、5つ以上の水酸基を有する化合物よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0083】
化合物(C42)に関し、アルキレンオキサイドが含みうる化合物は上記の化合物(C12)の場合と同様でよく、アルキレンオキサイドの付加モル数も上記の化合物(C12)の場合と同様でよい。また、化合物(C43)に関し、ラクトンが含みうる化合物は上記の化合物(C13)の場合と同様でよく、ラクトンの付加モル数も上記の化合物(C13)の場合と同様でよい。
【0084】
(C4)成分は、例えばソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールに炭素数が2~4であるアルキレンオキサイドが付加した化合物のヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0085】
本実施形態において、(C)成分は、粘着性向上の観点から、好ましくは分子中に(メタ)アクリロイル基を2~6個有する化合物を含有し、更に好ましくは分子中に(メタ)アクリロイル基を2~5個有する化合物を含有する。
【0086】
(C)成分は、1種類の化合物のみを含有してもよく、2種以上の化合物を含有してもよい。
【0087】
(C)成分の分子量は、粘着性向上の観点から、好ましくは150以上600以下であり、更に好ましくは200以上550以下である。なお、(C)成分の分子量とは、(C)成分が一種類の化合物のみを含有する場合は化学式量であり、(C)成分が2種以上の化合物を含有する場合はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる数平均分子量である。
【0088】
本実施形態における(C)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は、以下のとおりである。
-装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]。
-カラム:「Guardcolumn Super H-L」(1本)及び「TSKgel SuperH2000(1本)」[いずれも東ソー株式会社製]。
-試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液。
-溶液注入量:10μl。
-流量:0.6ml/分。
-測定温度:40℃。
-検出装置:屈折率検出器。
-基準物質:標準ポリエチレングリコール。
【0089】
(C)成分の(メタ)アクリロイル基1つ当たりの分子量(分子量/(メタ)アクリロイル基の数)は、粘着性向上の観点から、100以上300以下が好ましく、更に好ましくは120以上200以下である。
【0090】
<粘着剤組成物>
本実施形態の粘着剤組成物(X)は、粘着剤用主剤(B)と、(C)成分とを含有する。
【0091】
粘着剤組成物(X)における(C)成分に対する粘着剤用主剤(B)の重量比[粘着剤用主剤(B)/(C)成分]は、粘着性向上の観点から、好ましくは100/10から100/0.5までであり、更に好ましくは100/5から100/1までである。
【0092】
本実施形態の粘着剤組成物(X)は、例えば、共重合体(A)を含有する粘着剤用主剤(B)と、(C)成分とを混合して製造できる。
【0093】
粘着剤組成物(X)は溶剤(S)を含有してもよい。すなわち、粘着剤組成物(X)は溶剤(S)の溶液であってもよい。例えば粘着剤用主剤(B)が溶剤(S)を含有する場合、粘着剤組成物(X)も溶剤(S)を含有する。ハンドリング性向上の観点から、粘着剤組成物(X)における溶剤(S)の割合は、粘着剤組成物(X)の重量に対して、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0094】
また、本実施形態の粘着剤組成物(X)は、本開示の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて添加剤を更に含有してもよい。添加剤は、例えばテルペン樹脂及びロジン樹脂等の粘着性付与剤(N)、光重合開始剤(D)、可塑剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、並びに酸化防止剤等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0095】
本実施形態の粘着剤組成物には、更に、酸化防止剤(E)を含有することができる。
【0096】
粘着剤組成物が酸化防止剤(E)を含有することで、粘着剤組成物(X)の硬化物中での微小な架橋物の発生を更に抑制することができ、高温下での硬化物及び粘着シートの着色を抑制することができる。
【0097】
本実施形態における酸化防止剤(E)は、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0098】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及びオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0099】
硫黄系酸化防止剤は、例えばジラウリル3,3’-チオジプロピオネート及びジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0100】
リン系酸化防止剤は、例えばハロゲンを有していてもよい有機ホスファイトを含有する。リン系酸化防止剤は、例えばトリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト及びこれらのハロ置換体等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0101】
ラクトン系酸化防止剤は、例えば5,7-ジ-t-ブチル-3-ヒドロキシベンゾ[b]フラン-2(3H)-オンとo-キシレンとの反応生成物等を含有する。
【0102】
アミン系酸化防止剤は、例えばヒンダード芳香族アミンを含有する。アミン系酸化防止剤は、例えばオクチルジフェニルアミン、N-n-ブチル-p-アミノフェノール及びN,N-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0103】
酸化防止剤(E)は、架橋物発生の抑制と着色の抑制の観点から、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びラクトン系酸化防止剤よりなる群から選択される少なくとも一種を含有し、更に好ましくは分子量が700以上2000以下のヒンダードフェノール系酸化防止剤と分子量が700以上2000以下のリン系酸化防止剤とのうち少なくとも一方を含有し、特に好ましくは分子量が700以上2000以下のリン系酸化防止剤を含有する。酸化防止剤は1種類の化合物のみを含有してもよく、2種以上の化合物を含有してもよい。
【0104】
本実施形態の粘着剤組成物(X)が酸化防止剤(E)を含有する場合は、共重合体(A)と酸化防止剤(E)との重量比[共重合体(A):酸化防止剤(E)]は、架橋物発生の抑制の観点から、好ましくは100:0.001から100:3まで、更に好ましくは100:0.005から100:1までであり、特に好ましくは100:0.01から100:0.5までである。
【0105】
<粘着フィルム>
本実施形態の粘着フィルムは、粘着剤組成物(X)の硬化物からなる硬化層を有する。硬化層の厚みは、好ましくは10μm以上200μm以下、更に好ましくは20μm以上100μm以下である。粘着フィルムは、例えば硬化層のみからなる。また粘着フィルムは、フィルム状の基材と、この基材に重なる硬化層とを備えてもよい。
【0106】
本実施形態の粘着フィルムは、粘着剤組成物(X)を、種々の塗工装置を用いて基材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗布してから、例えば、粘着剤組成物(X)を加熱及び/又は活性エネルギー線(UV、電子線等)により硬化することにより製造できる。
【0107】
好ましい使用形態としては、後述の実施例のように、粘着剤組成物(X)を加熱させることで軟化または溶融させた後、基材に塗布し、更に活性エネルギー線で硬化させる形態である。すなわち、粘着剤組成物(X)は、活性エネルギー線硬化型ホットメルト粘着剤組成物とも言える。
【0108】
基材は、例えばフィルム状又はシート状である。基材は、例えばプラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックフォーム、フラットヤーン、紙、金属板、金属箔、織布、不織布又は木材等である。プラスチックは、例えばポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、レーヨン並びにポリアミド等よりなる群から選択される少なくとも一種を含む。紙は、例えば和紙又はクレープ紙である。
【0109】
本実施形態の粘着剤用主剤(B)を含む粘着剤組成物(X)は塗工性に優れ、また粘着剤組成物(X)の硬化物からなる硬化層を有する粘着フィルムは粘着性に優れることから、粘着フィルムは、包装用(冷凍食品の包装、野菜等の結束など)、マーキング用(自動車のモール類、エンブレム・マークなど)、マスキング用(ガラスシーリング、建築養生など)、表面保護用(塗装面保護など)、医療用(絆創膏など)及び事務用等の各種用途に好適に使用することができる。更に、本実施形態の粘着フィルムは曲面での粘着性に優れることから、曲面状の基材(曲面ディスプレイ、曲面電子基板)の保護用途にも好適に使用できる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例により本実施形態を更に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0111】
<実施例1>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、溶剤としての酢酸エチル100重量部を仕込み78℃に昇温した。
【0112】
次に、溶剤還流下、反応容器内に窒素を吹き込みながら、下記の組成を有するモノマー配合液と、下記の組成を有する開始剤溶液1とを、滴下ロートを用いて反応容器内に5時間かけて連続的に滴下して、反応容器内でラジカル重合を進行させた。
【0113】
モノマー配合液の組成:2-エチルヘキシルアクリレート(a1-1)44重量部、メチルアクリレート(a3-2)46重量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン(a4-1)10重量部。
【0114】
反応開始剤溶液1の組成:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)[以下、V-65と略記することがある]0.20重量部及び酢酸エチル20重量部。
【0115】
滴下終了後、反応容器内を78℃に維持したままで反応容器内の液を撹拌しながら、反応容器内に下記の組成を有する開始剤溶液2を滴下ロートを用いて1時間かけて連続的に滴下した。更に、溶剤還流下で、反応容器内での重合反応を1時間継続させた後、減圧下、反応容器内の液を130℃まで加熱することで酢酸エチルを留去させた。これにより、反応容器内で、共重合体(A-1)を含有する粘着剤用主剤(B-1)を調製した。この粘着剤用主剤(B-1)を、反応容器から取り出した。
【0116】
開始剤溶液2の組成:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.11重量部及び酢酸エチル10重量部。
【0117】
なお、共重合体(A-1)の重量平均分子量(Mw)は26万、ガラス転移温度(Tg)は2℃、カルボキシ基濃度は0モル/kg、水酸基濃度は0モル/kg、3級炭素濃度は2.39モル/kgであった。
【0118】
<実施例2~14、比較例1~8>
モノマー配合液、開始剤溶液1及び開始剤溶液2の組成を、表1から表3に示すとおりに変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、共重合体(A-2)から(A-22)をそれぞれ含有する粘着剤用主剤(B-2)から(B-22)を得た。共重合体(A-2)から(A-22)の各々の重量平均分子量、ガラス転移温度、カルボキシ基濃度、水酸基濃度、及び3級炭素濃度を、表1から表3に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
<実施例21~40、比較例21~28>
表4から表6の「配合組成」に示す配合成分を、ヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、150℃、100rpm、滞留時間3分の条件で溶融混練して、粘着剤組成物(X-1)から(X-28)を得た。
【0123】
粘着剤組成物(X-1)から(X-28)の各々から、下記の粘着フィルム(Yα)及び粘着フィルム(Yβ)を作製し、後述の方法により評価を行った。結果を表4から表6に示す。
【0124】
<粘着フィルム(Yα)の作製>
粘着剤組成物(X-1)から(X-28)の各々を150℃で溶融し、23℃の環境温度下で、厚さ25μmのポリエステルフィルム[東レ株式会社製、品名ルミラー タイプT、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム]の表面上にスロットコーターを用いて塗布量30g/m2にて塗工して塗膜を作製した。この塗膜にUV照射装置[ウシオ電機株式会社製、型番UVC-02516S1AA01]を用い、光源としてメタルハライドランプを使用して、積算光量1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射することで、塗膜を硬化させ、厚さ30μmの硬化層を作製した。これにより、ポリエステルフィルムと、これに重なる硬化層とを備える粘着フィルム(Yα)を得た。
【0125】
<粘着フィルム(Yβ)の作製>
粘着剤組成物(X-1)から(X-28)の各々を150℃で溶融し、23℃の環境温度下で、厚さ150μmのポリエステルフィルム[東レ株式会社製、品名ルミラー タイプT、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム]の表面上にスロットコーターを用いて塗布量30g/m2にて塗工して塗膜を作製した。この塗膜にUV照射装置[ウシオ電機株式会社製、型番UVC-02516S1AA01]を用い、光源としてメタルハライドランプを使用して、積算光量1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射することで、塗膜を硬化させ、厚さ30μmの硬化層を作製した。これにより、ポリエステルフィルムと、これに重なる硬化層とを備える粘着フィルム(Yβ)を得た。
【0126】
<1>塗工性
粘着フィルム(Yα)の硬化層の表面の外観を、目視で観察し、以下の評価基準で評価した。
【0127】
<評価基準>
AA:塗りムラが全くない。
A:塗りムラがわずかにある。
B:部分的に塗りムラがある。
C:全体的に塗りムラがある。
【0128】
<2>粘着力(粘着性)
粘着フィルム(Yα)から、平面視寸法100mm×25mmの粘着フィルム試験片を切り出した。また、片面にITO(酸化インジウムスズ)膜が重ねられている厚み0.18mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。25℃の雰囲気下で、JIS Z0237-2009に規定される「粘着テープ、粘着シート試験方法」に基づき、粘着フィルム試験片とポリエチレンテレフタレートフィルムとを、硬化層とITO膜とが接触するように重ねた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上にローラで2kgの荷重をかけながら、このローラをポリエチレンテレフタレートフィルムの上で1往復移動させた。これにより、粘着フィルム試験片とポリエチレンテレフタレートフィルムとを貼り合わせて積層フィルムを得た。
【0129】
この積層フィルムを、温度25℃かつ相対湿度50%の条件下に、1日間放置してから、25℃の雰囲気下で、ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する粘着フィルム試験片の180°引き剥がし強度を、25mm幅、引張速度300mm/minの条件で測定した。その結果を以下の評価基準で評価した。
【0130】
<評価基準>
AA:15N/25mmより大きい。
A:10N/25mmより大きく、15N/25mm以下。
B:5N/25mmより大きく、10N/25mm以下。
C:5N/25mm以下。
【0131】
<3>保持力(粘着性)
粘着フィルム(Yα)から、平面視寸法100mm×12mmの粘着フィルム試験片を切り出した。また、平面視寸法100mm×100mmのステンレス鋼板を用意した。粘着フィルム(Yα)とステンレス鋼板とを、硬化層とステンレス鋼板とが接触し、かつ接触面積が平面視12mm×12mmとなるように、重ねた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上にローラで2kgの荷重をかけながら、このローラをポリエチレンテレフタレートフィルムの上で1往復移動させた。これにより、粘着フィルム(Yα)とステンレス鋼板とを貼り合わせて積層体を得た。この積層体を、40℃の雰囲気下に30分間静置した。
【0132】
次に、40℃の雰囲気下で、ステンレス鋼板を、粘着フィルム(Yα)が接触している部分が下方に配置されるように、鉛直に立て、この状態で、ステンレス鋼板における粘着フィルム(Yα)が重ねられていない88mm×12mmの寸法の部分の下端において、粘着フィルム(Yα)の上端に下方へ向かう1kgの荷重を24時間かけた。続いて、ステンレス鋼板に対する粘着フィルム(Yα)の下方への位置ズレ(単位:mm)を測定し、以下の評価基準で評価した。なお、数値が小さいほど保持力が高いことを意味する。
【0133】
<評価基準>
AA:0.5mm以下。
A:0.5mmを超えて、1.0mm以下。
B:1.0mmを超えて、2.0mm以下。
C:2.0mmを超える。
【0134】
<4>曲面での粘着性(曲面剥がれ試験)
粘着フィルム(Yβ)から、平面視寸法40mm×40mmの粘着フィルム試験片を切り出した。5個の粘着フィルム試験片を用意し、外径30mmの5個のガラス製管にそれぞれ巻きつけるように貼り付けた。
【0135】
次に、各ガラス製管を、23℃雰囲気下に24時間静置した後、粘着フィルム試験片の、ガラス製管からはがれた部分の長さを測定した。ガラス製管ごとに、粘着フィルム試験片の一方の端部における剥がれた部分の長さと他方の端部における剥がれた部分の長さとの合計を算出した。5個のガラス製管についての前記の長さの合計の平均値を算出し、その結果を、下記の評価基準で評価した。なお、数値が小さいほど、曲面での粘着性がすぐれていることを意味する。
【0136】
<評価基準>
AA:0.5mm以下。
A:0.5mmを超えて、1.0mm以下。
B:1.0mmを超えて、2.0mm以下。
C:2.0mmを超える。
【0137】
<5>腐食試験
粘着フィルム(Yα)から、平面視寸法100mm×25mmの粘着フィルム試験片を切り出した。また、片面にITO(酸化インジウムスズ)膜が重ねられている厚み0.18mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。25℃の雰囲気下で、JIS Z0237-2009「粘着テープ、粘着シート試験方法」に基づき、粘着フィルム試験片とポリエチレンテレフタレートフィルムとを、硬化層とITO膜とが接触するように重ねた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上にローラで2Kgの荷重をかけながら、このローラをポリエチレンテレフタレートフィルムの上で1往復移動させた。これにより、粘着フィルム試験片とポリエチレンテレフタレートフィルムとを貼り合わせて積層フィルムを得た。
【0138】
この積層フィルムを、温度25℃かつ相対湿度90%の条件下に、14日間放置してから、25℃の雰囲気下で、ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する粘着フィルム試験片の180°で引き剥がし試験を行った。
【0139】
続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるITO膜の電気抵抗値(R1)を測定した。また、粘着フィルム試験片に貼り合わせる前のポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるITO膜の電気抵抗値(R0)を、予め測定しておいた。これらに基づき、下記の式により、ITO膜の電気抵抗値の変化率を算出し、その結果を下記評価基準で評価した。なお、抵抗値の変化率が小さいほど腐食性が小さく、良好であることを意味する。
【0140】
変化率(%)=(R1-R0)/R0×100
<評価基準>
AA:変化率5%未満。
A:変化率5%以上、10%未満。
B:変化率10%以上、20%未満。
C:変化率20%以上。
【0141】
<6>耐熱性試験
粘着剤組成物(X-1)から(X-28)を調製するために用いた共重合体(すなわち共重合体(A-1)から(A-22))の各々を、150℃、ゲージ圧-100kPaの減圧条件下で7時間静置する耐熱性試験を実施した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。この耐熱性試験後の重量平均分子量の、耐熱性試験前の重量平均分子量(表1から表3に示す重量平均分子量)からの変化率を下記式により算出し、以下の基準で評価した。
【0142】
変化率(%)=(耐熱性試験後の重量平均分子量)/(耐熱性試験前の重量平均分子量)×100
<評価基準>
AA:変化率が100%以上105%未満。
A:変化率が105%以上110%未満。
B:変化率が110%以上120%未満。
C:変化率が120%以上。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
なお、表4から表6における多官能(メタ)アクリレート及び開始剤の詳細は以下のとおりである。
-多官能(メタ)アクリレート(C-1):品名ネオマーTA-505、三洋化成工業株式会社製、トリメチロールプロパンのPO(プロピレンオキサイド)付加物のトリアクリレート、数平均分子量460。
-多官能(メタ)アクリレート(C-2):品名ネオマーDA-600、三洋化成工業株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、数平均分子量540。
-多官能(メタ)アクリレート(C-3):品名ネオマーTA-401、三洋化成工業株式会社製、トリメチロールプロパンのEO付加物のトリアクリレート、数平均分子量405。
-多官能(メタ)アクリレート(C-4):大阪有機化学工業株式会社製、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、数平均分子量226。
-開始剤(D-1):品名SB-PI 712、三洋貿易株式会社製、4-メチルベンゾフェノン。
【0147】
表1から表6の結果から、実施例21から40の粘着フィルムは、比較例21から28の粘着フィルムと比べて、粘着性(粘着力及び保持力)、並びに塗工性に優れ、更に曲面での粘着性に優れることがわかる。