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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20240619BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240619BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240619BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240619BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/57 L
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023565253
(86)(22)【出願日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2023019393
(87)【国際公開番号】W WO2023234147
(87)【国際公開日】2023-12-07
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022087792
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】今井 翼
(72)【発明者】
【氏名】守屋 利春
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮
(72)【発明者】
【氏名】浅越 俊紀
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006905(JP,A)
【文献】特開2018-161618(JP,A)
【文献】特開2013-223840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/10,3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に設けられた第1の触媒層とを備える排ガス用浄化触媒であって、
前記第1の触媒層が、Rh、Ce及びYを含み、
前記第1の触媒層におけるCeのモル量の、前記第1の触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をaとし、前記第1の触媒層におけるYのモル量の、前記第1の触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をbとし、前記第1の触媒層におけるRhのモル量の、前記第1の触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をcとしたとき、
a/bの値が0.010以上0.400以下であ
前記aが1.0モル%以上20モル%以下であり、
前記bが9モル%以上50モル%以下であり、
前記cが0.01モル%以上1モル%以下である、排ガス用浄化触媒。
【請求項2】
前記第1の触媒層がZrをさらに含む、請求項1に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項3】
bが11モル%以上である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項4】
bが15モル%以上である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項5】
bが19モル%以上である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項6】
bが45モル%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項7】
bが40モル%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項8】
aが1.0モル%以上15モル%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項9】
aが1.0モル%以上15モル%以下であり、bが9モル%以上40モル%以下であり、cが0.01モル%以上1モル%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項10】
/bの値が0.0010以上0.0270以下である、請求項1又は2に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項11】
前記基材に設けられた第2の触媒層をさらに備える、請求項1に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項12】
前記第1の触媒層が前記第2の触媒層の上側に設けられている、請求項11に記載の排ガス用浄化触媒。
【請求項13】
前記第2の触媒層がPdを含む、請求項11又は12に記載の排ガス用浄化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する目的で三元触媒が使用されている。三元触媒としては、Pt、Pd、Rh等の貴金属元素を含む触媒が使用されている。Pt及びPdは主としてHC及びCOの酸化浄化に関与し、Rhは主としてNOxの還元浄化に関与する。
【0003】
特許文献1には、基材と、基材上に形成された触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、触媒層が、Rh担持ZrLaY複合酸化物と、Rh担持ZrLa-活性アルミナと、Rh担持ZrCe系複合酸化物とを含み、Rh担持ZrLa-活性アルミナにおけるRh担持量が、Rh担持ZrLaY複合酸化物におけるRh担持量よりも大きく、Rh担持ZrCe系複合酸化物におけるRh担持量が、Rh担持ZrLa-活性アルミナにおけるRh担持量よりも大きい、排ガス浄化用触媒が記載されている。Rh担持ZrLaY複合酸化物は、主成分としてのZrOと、2質量%以上10質量%以下のLaと、2質量%以上20質量%以下のYとを含むZrLaY複合酸化物にRhが担持されてなる。Rh担持ZrLa-活性アルミナは、ZrとLaとを含むZrLa複合酸化物が担持された活性アルミナにRhが担持されてなる。Rh担持ZrCe系複合酸化物は、ZrとCeとを含むZrCe系複合酸化物にRhが担持されてなる。なお、ZrLa複合酸化物はYを含まないものであり、ZrLaY複合酸化物とは異なるものである。
【0004】
特許文献1に記載の排ガス浄化用触媒によれば、高温の排ガスに曝露されることによってRhの一部がアルミナと固溶してRhが失活することを抑制することができ、これにより、排ガス浄化性能を向上させることができる。
【0005】
特許文献1の実施例では、Rh担持ZrCeNd複合酸化物、Rh担持ZrLaY複合酸化物、Laアルミナ及び場合によりRh担持ZrLaアルミナを含む上側触媒層が下側触媒層の上に形成されている。特許文献1の実施例において、上側触媒層におけるCeのモル量の、上側触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をaとし、上側触媒層におけるYのモル量の、上側触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をbとすると、a/bの値は、約1.6(実施例5A)、約3.3(実施例5B)、約3.9(実施例4A及び4B)、約19.7(実施例11A、11B、12A及び12B)、約2.0(実施例13A、13B、14A及び14B)と計算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-073961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排ガス浄化性能の向上が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、排ガス浄化性能が向上した排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の排ガス浄化用触媒を提供する。
[1]基材と、前記基材に設けられた第1の触媒層とを備える排ガス用浄化触媒であって、
前記第1の触媒層が、Rh、Ce及びYを含み、
前記第1の触媒層におけるCeのモル量の、前記第1の触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をaとし、前記第1の触媒層におけるYのモル量の、前記第1の触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をbとしたとき、a/bの値が0.010以上0.400以下である、排ガス用浄化触媒。
[2]前記第1の触媒層がZrをさらに含む、[1]に記載の排ガス用浄化触媒。
[3]bが11モル%以上である、[1]又は[2]に記載の排ガス用浄化触媒。
[4]bが15モル%以上である、[1]又は[2]に記載の排ガス用浄化触媒。
[5]bが19モル%以上である、[1]又は[2]に記載の排ガス用浄化触媒。
[6]前記第1の触媒層におけるRhのモル量の、前記第1の触媒層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をcとしたとき、c/bの値が0.0010以上0.0270以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の排ガス用浄化触媒。
[7]前記基材に設けられた第2の触媒層をさらに備える、[1]~[6]のいずれかに記載の排ガス用浄化触媒。
[8]前記第1の触媒層が前記第2の触媒層の上側に設けられている、[7]に記載の排ガス用浄化触媒。
[9]前記第2の触媒層がPdを含む、[7]又は[8]に記載の排ガス用浄化触媒。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排ガス浄化性能が向上した排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒が内燃機関の排気経路に配置されている状態を示す一部端面図である。
図2図2は、図1のA-A線端面図である。
図3図3は、図2中の符号Rで示す領域の拡大図である。
図4図4は、図1のB-B線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で使用される用語について説明する。
【0013】
<希土類元素>
希土類元素としては、例えば、Ce、Y、Pr、Sc、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。なお、本明細書において、希土類元素を「Ln」と表記する場合がある。
【0014】
<酸化物>
Alの酸化物はAl、Siの酸化物はSiO、Bの酸化物はB、Zrの酸化物はZrO、Crの酸化物はCr、Mgの酸化物はMgO、Caの酸化物はCaO、Srの酸化物はSrO、Baの酸化物はBaO、Feの酸化物はFe、Mnの酸化物はMn、Niの酸化物はNiOを意味する。希土類元素の酸化物は、Ce、Pr及びTbの酸化物を除いてセスキ酸化物(Ln)を意味し、Ceの酸化物はCeO、Prの酸化物はPr11、Tbの酸化物はTbを意味する。
【0015】
<Ce系酸化物>
Ce系酸化物は、Ceを含む酸化物を意味する。なお、Ce及びYを含む酸化物は、Ceの酸化物換算の含有率がYの酸化物換算の含有率と同じであるか又はYの酸化物換算の含有率よりも大きい場合は、Ce系酸化物に該当するものとし、Ceの酸化物換算の含有率がYの酸化物換算の含有率よりも小さい場合は、Y系酸化物に該当するものとする。また、Ce及びAlを含む酸化物は、Ceの酸化物換算の含有率がAlの酸化物換算の含有率と同じであるか又はAlの酸化物換算の含有率よりも大きい場合は、Ce系酸化物に該当するものとし、Ceの酸化物換算の含有率がAlの酸化物換算の含有率よりも小さい場合は、Al系酸化物に該当するものとする。
【0016】
Ce系酸化物は、例えば、粒子状である。
【0017】
Ce系酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Ce系酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0018】
Ce系酸化物は、排ガス中の酸素濃度が高い時には酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低い時には酸素を放出する能力(本明細書において「酸素貯蔵能」という場合がある。)を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、Ce系酸化物を使用すると、排ガス浄化用触媒の排ガス浄化能が向上する。
【0019】
Ce系酸化物は、Ce及びO以外の1種又は2種以上の元素を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0020】
Ce及びO以外の1種又は2種以上の元素は、例えば、Ce以外の希土類元素(Ln)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Zr、Al等から選択することができる。
【0021】
Ce系酸化物は、Ce以外のLnとして、例えば、La、Nd、Y、Gd及びSmから選択される少なくとも1種を含むことができる。これにより、Ce系酸化物の耐熱性を向上させることができる。Ce系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Ce以外のLnは、La、Nd及びYから選択することが好ましい。
【0022】
Ce系酸化物は、Ce以外のLnとして、例えば、Prを含むことができる。これにより、Ce系酸化物の酸素貯蔵能を向上させることができる。
【0023】
Ce系酸化物としては、例えば、セリア(Ce及びOで構成される酸化物)、セリアの表面をCe及びO以外の元素で修飾して得られる酸化物、セリア中にCe及びO以外の元素を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。
【0024】
Ce系酸化物において、Ce及びO以外の元素は、Ce及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、Ce及びO以外の元素の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよい。
【0025】
一実施形態に係るCe系酸化物(以下「第1のCe系酸化物」という。)において、Ceの酸化物換算の含有率は、第1のCe系酸化物の質量を基準として、好ましくは90質量%超、より好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは99質量%以上である。上限値は100質量%である。
【0026】
第1のCe系酸化物がCe及びO以外の元素を含む場合、第1のCe系酸化物の酸素貯蔵能を向上させる観点から、第1のCe系酸化物におけるCe及びO以外の元素の酸化物換算の含有率は、第1のCe系酸化物の質量を基準として、好ましくは0質量%超10質量%未満、より好ましくは0質量%超5質量%以下、より一層好ましくは0質量%超1質量%以下である。Ce及びO以外の元素の酸化物換算の含有率は、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上等であってもよい。これらの下限値はそれぞれ、上述の上限値のいずれと組み合わせてもよい。「Ce及びO以外の元素の酸化物換算の含有率」は、第1のCe系酸化物がCe及びO以外の1種の元素を含む場合には、当該1種の元素の酸化物換算の含有率を意味し、第1のCe系酸化物がCe及びO以外の2種以上の元素を含む場合には、当該2種以上の元素の酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0027】
別の実施形態に係るCe系酸化物(以下「第2のCe系酸化物」という。)において、Ceの酸化物換算の含有率は、第2のCe系酸化物の質量を基準として、好ましくは1質量%以上90質量%以下、より好ましくは2質量%以上50質量%以下、より一層好ましくは3質量%以上45質量%以下である。
【0028】
第2のCe系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、第2のCe系酸化物におけるCe及びO以外の元素の酸化物換算の含有率は、第2のCe系酸化物の質量を基準として、好ましくは10質量%以上99質量%以下、より好ましくは50質量%以上98質量%以下、より一層好ましくは55質量%以上97質量%以下である。「Ce及びO以外の元素の酸化物換算の含有率」は、第2のCe系酸化物がCe及びO以外の1種の元素を含む場合には、当該1種の元素の酸化物換算の含有率を意味し、第2のCe系酸化物がCe及びO以外の2種以上の元素を含む場合には、当該2種以上の元素の酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0029】
<Ce-Zr系酸化物>
Ce-Zr系酸化物は、Ce系酸化物の一種(好ましくは第2のCe系酸化物の一種)であり、Ce及びZrを含む複合酸化物を意味する。なお、Ce、Y及びZrを含む酸化物は、Ceの酸化物換算の含有率がYの酸化物換算の含有率と同じであるか又はYの酸化物換算の含有率よりも大きい場合は、Ce-Zr系酸化物に該当するものとし、Ceの酸化物換算の含有率がYの酸化物換算の含有率よりも小さい場合は、Y-Zr系酸化物に該当するものとする。
【0030】
Ce-Zr系酸化物は、例えば、粒子状である。
【0031】
Ce-Zr系酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Ce-Zr系酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0032】
Ce-Zr系酸化物において、Ceは、Zr及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、CeO単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Ceの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0033】
Ce-Zr系酸化物において、Zrは、Ce及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、ZrO単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Zrの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0034】
Ce-Zr系酸化物は、酸素貯蔵能を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、Ce-Zr系酸化物を使用すると、排ガス浄化用触媒の排ガス浄化能が向上する。Ceは、主として、Ce-Zr系酸化物の酸素貯蔵能の向上に寄与し、Zrは、主として、Ce-Zr系酸化物の耐熱性の向上に寄与する。
【0035】
Ce-Zr系酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、Ce-Zr系酸化物におけるCe及びZrの酸化物換算の合計含有率は、Ce-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より一層好ましくは80質量%以上である。上限値は100質量%である。
【0036】
Ce-Zr系酸化物の酸素貯蔵能を向上させる観点から、Ce-Zr系酸化物におけるCeの酸化物換算の含有率は、Ce-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは5質量%以上90質量%以下、より好ましくは7質量%以上60質量%以下、より一層好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
【0037】
Ce-Zr系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr系酸化物におけるZrの酸化物換算の含有率は、Ce-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは10質量%以上95質量%以下、より好ましくは40質量%以上95質量%以下、より一層好ましくは50質量%以上90質量%以下である。
【0038】
Ce-Zr系酸化物は、Ce、Zr及びO以外の1種又は2種以上の元素を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0039】
Ce、Zr及びO以外の1種又は2種以上の元素は、例えば、Ce以外の希土類元素(Ln)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Al等から選択することができる。
【0040】
Ce-Zr系酸化物は、Ce以外のLnとして、例えば、La、Nd、Y、Gd及びSmから選択される少なくとも1種を含むことができる。これにより、Ce-Zr系酸化物の耐熱性を向上させることができる。Ce-Zr系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Ce以外のLnは、La、Nd及びYから選択することが好ましい。
【0041】
Ce-Zr系酸化物は、Ce以外のLnとして、例えば、Prを含むことができる。これにより、Ce-Zr系酸化物の酸素貯蔵能を向上させることができる。
【0042】
Ce-Zr系酸化物がCe以外のLnを含む場合、Ce以外のLnは、Zr及び/又はCeとOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、Ce以外のLnの酸化物単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Ce以外のLnの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0043】
Ce-Zr系酸化物がCe以外のLnを含む場合、Ce-Zr系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr系酸化物におけるCe以外のLnの酸化物換算の含有率は、Ce-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは3質量%以上30質量%以下、より一層好ましくは5質量%以上20質量%以下である。「Ce以外のLnの酸化物換算の含有率」は、Ce-Zr系酸化物がCe以外の1種のLnを含む場合には、当該1種のLnの酸化物換算の含有率を意味し、Ce-Zr系酸化物がCe以外の2種以上のLnを含む場合には、当該2種以上のLnの酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0044】
<Y系酸化物>
Y系酸化物は、Yを含む酸化物を意味する。なお、Y及びAlを含む酸化物は、Yの酸化物換算の含有率がAlの酸化物換算の含有率と同じであるか又はAlの酸化物換算の含有率よりも大きい場合は、Y系酸化物に該当するものとし、Yの酸化物換算の含有率がAlの酸化物換算の含有率よりも小さい場合は、Al系酸化物に該当するものとする。
【0045】
Y系酸化物は、例えば、粒子状である。
【0046】
Y系酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Y系酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0047】
Y系酸化物は、Y及びO以外の1種又は2種以上の元素を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0048】
Y及びO以外の1種又は2種以上の元素は、例えば、Y以外の希土類元素(Ln)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Zr、Al等から選択することができる。
【0049】
Y系酸化物は、Y以外のLnとして、例えば、La、Nd、Gd及びSmから選択される少なくとも1種を含むことができる。これにより、Y系酸化物の耐熱性を向上させることができる。Y系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Y以外のLnは、La及びNdから選択することが好ましい。
【0050】
Y系酸化物は、Y以外のLnとして、例えば、Ceを含むことができる。Ceを含むY系酸化物は、酸素貯蔵能を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、Ceを含むY系酸化物を使用すると、排ガス浄化用触媒の排ガス浄化能が向上する。
【0051】
Ceを含むY系酸化物は、Y及びCe以外のLnとして、例えば、Prを含むことができる。これにより、Ceを含むY系酸化物の酸素貯蔵能を向上させることができる。
【0052】
Y系酸化物としては、例えば、イットリア(Y及びOで構成される酸化物)、イットリアの表面をY及びO以外の元素で修飾して得られる酸化物、イットリア中にY及びO以外の元素を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。
【0053】
Y系酸化物において、Y及びO以外の元素は、Y及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、Y及びO以外の元素の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよい。
【0054】
一実施形態に係るY系酸化物(以下「第1のY系酸化物」という。)において、Yの酸化物換算の含有率は、第1のY系酸化物の質量を基準として、好ましくは90質量%超、より好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは99質量%以上である。上限値は100質量%である。
【0055】
第1のY系酸化物がY及びO以外の元素を含む場合、後述するYの性能を効果的に発現させる観点から、第1のY系酸化物におけるY及びO以外の元素の酸化物換算の含有率は、第1のY系酸化物の質量を基準として、好ましくは0質量%超10質量%未満、より好ましくは0質量%超5質量%以下、より一層好ましくは0質量%超1質量%以下である。Y及びO以外の元素の酸化物換算の含有率は、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上等であってもよい。これらの下限値はそれぞれ、上述の上限値のいずれと組み合わせてもよい。「Y及びO以外の元素の酸化物換算の含有率」は、第1のY系酸化物がY及びO以外の1種の元素を含む場合には、当該1種の元素の酸化物換算の含有率を意味し、第1のY系酸化物がY及びO以外の2種以上の元素を含む場合には、当該2種以上の元素の酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0056】
別の実施形態に係るY系酸化物(以下「第2のY系酸化物」という。)において、Yの酸化物換算の含有率は、第2のY系酸化物の質量を基準として、好ましくは1質量%以上90質量%以下、より好ましくは2質量%以上50質量%以下、より一層好ましくは3質量%以上45質量%以下である。
【0057】
第2のY系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、第2のY系酸化物におけるY及びO以外の元素の酸化物換算の含有率は、第2のY系酸化物の質量を基準として、好ましくは10質量%以上99質量%以下、より好ましくは50質量%以上98質量%以下、より一層好ましくは55質量%以上97質量%以下である。「Y及びO以外の元素の酸化物換算の含有率」は、第2のY系酸化物がY及びO以外の1種の元素を含む場合には、当該1種の元素の酸化物換算の含有率を意味し、第2のY系酸化物がY及びO以外の2種以上の元素を含む場合には、当該2種以上の元素の酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0058】
<Y-Zr系酸化物>
Y-Zr系酸化物は、Y系酸化物の一種(好ましくは第2のY系酸化物の一種)であり、Y及びZrを含む複合酸化物を意味する。
【0059】
Y-Zr系酸化物は、例えば、粒子状である。
【0060】
Y-Zr系酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Y-Zr系酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0061】
Y-Zr系酸化物において、Yは、Zr及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、Y単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Yの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0062】
Y-Zr系酸化物において、Zrは、Y及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、ZrO単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Zrの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0063】
Y-Zr系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Y-Zr系酸化物におけるY及びZrの酸化物換算の合計含有率は、Y-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より一層好ましくは80質量%以上である。上限値は100質量%である。
【0064】
後述するYの性能を効果的に発現させる観点から、Y-Zr系酸化物におけるYの酸化物換算の含有率は、Y-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは5質量%以上90質量%以下、より好ましくは7質量%以上80質量%以下、より一層好ましくは10質量%以上70質量%以下、さらに一層好ましくは15質量%以上60質量%以下、特に一層好ましくは20質量%以上55質量%以下である。
【0065】
Y-Zr系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Y-Zr系酸化物におけるZrの酸化物換算の含有率は、Y-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは10質量%以上95質量%以下、より好ましくは30質量%以上95質量%以下、より一層好ましくは40質量%以上90質量%以下である。
【0066】
Y-Zr系酸化物は、Y、Zr及びO以外の1種又は2種以上の元素を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0067】
Y、Zr及びO以外の1種又は2種以上の元素は、例えば、Y以外の希土類元素(Ln)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Al等から選択することができる。
【0068】
Y-Zr系酸化物は、Y以外のLnとして、例えば、La、Nd、Gd及びSmから選択される少なくとも1種を含むことができる。これにより、Y-Zr系酸化物の耐熱性を向上させることができる。Y-Zr系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Y以外のLnは、La及びNdから選択することが好ましい。
【0069】
Y-Zr系酸化物は、Y以外のLnとして、例えば、Ceを含むことができる。Ceを含むY-Zr系酸化物は、酸素貯蔵能を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、Ceを含むY-Zr系酸化物を使用すると、排ガス浄化用触媒の排ガス浄化能が向上する。
【0070】
Ceを含むY-Zr系酸化物は、Y及びCe以外のLnとして、例えば、Prを含むことができる。これにより、Ceを含むY-Zr系酸化物の酸素貯蔵能を向上させることができる。
【0071】
Y-Zr系酸化物がY以外のLnを含む場合、Y以外のLnは、Zr及び/又はYとOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、Y以外のLnの酸化物単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Y以外のLnの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0072】
Y-Zr系酸化物がY以外のLnを含む場合、Y-Zr系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Y-Zr系酸化物におけるY以外のLnの酸化物換算の含有率は、Y-Zr系酸化物の質量を基準として、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは3質量%以上30質量%以下、より一層好ましくは5質量%以上20質量%以下である。「Y以外のLnの酸化物換算の含有率」は、Y-Zr系酸化物がY以外の1種のLnを含む場合には、当該1種のLnの酸化物換算の含有率を意味し、Y-Zr系酸化物がY以外の2種以上のLnを含む場合には、当該2種以上のLnの酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0073】
<Al系酸化物>
Al系酸化物は、Alを含む酸化物を意味する。
【0074】
Al系酸化物は、例えば、粒子状である。
【0075】
Al系酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Al系酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0076】
Al系酸化物は、Al及びO以外の1種又は2種以上の元素を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0077】
Al及びO以外の1種又は2種以上の元素は、例えば、希土類元素(例えば、Y、Ce、La、Nd、Pr等)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、B、Si、Zr、Cr等から選択することができる。
【0078】
Al系酸化物は、Lnとして、例えば、La、Nd、Y、Gd及びSmから選択される少なくとも1種を含むことができる。これにより、Al系酸化物の耐熱性を向上させることができる。Al系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Lnは、La、Nd及びYから選択することが好ましい。
【0079】
Al系酸化物は、Lnとして、例えば、Ceを含むことができる。Ceを含むAl系酸化物は、酸素貯蔵能を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、Ceを含むAl系酸化物を使用すると、排ガス浄化用触媒の排ガス浄化能が向上する。
【0080】
Ceを含むAl系酸化物は、Ce以外のLnとして、例えば、Prを含むことができる。これにより、Ceを含むAl系酸化物の酸素貯蔵能を向上させることができる。
【0081】
Al系酸化物としては、例えば、アルミナ(Al及びOで構成される酸化物)、アルミナの表面をAl及びO以外の元素で修飾して得られる酸化物、アルミナ中にAl及びO以外の元素を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。Al及びO以外の元素を含むAl系酸化物の具体例としては、アルミナ-シリカ、アルミナ-シリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリア、アルミナ-ランタナ等が挙げられる。
【0082】
Al系酸化物において、Al及びO以外の元素は、Al及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、Al及びO以外の元素の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよい。
【0083】
Al系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Al系酸化物におけるAlの酸化物換算の含有率は、Al系酸化物の質量を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より一層好ましくは70質量%以上、より一層好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上、より一層好ましくは95質量%以上である。上限値は100質量%である。
【0084】
Al系酸化物がAl及びO以外の元素を含む場合、Al系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Al系酸化物におけるAl及びO以外の元素の酸化物換算の含有率は、Al系酸化物の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より一層好ましくは0.2質量%以上20質量%以下、より一層好ましくは0.3質量%以上10質量%以下、より一層好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。「Al及びO以外の元素の酸化物換算の含有率」は、Al系酸化物がAl及びO以外の1種の元素を含む場合には、当該1種の元素の酸化物換算の含有率を意味し、Al系酸化物がAl及びO以外の2種以上の元素を含む場合には、当該2種以上の元素の酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0085】
≪排ガス用浄化触媒≫
以下、図1~4に基づいて、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒1について説明する。
【0086】
図1に示すように、排ガス浄化用触媒1は、内燃機関の排気管P内の排気通路に配置されている。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジン等である。内燃機関から排出された排ガスは、排気管Pの一端から他端に向けて排気管P内の排気通路を流通し、排気管P内に設けられた排ガス浄化用触媒1で浄化される。図面において、排ガス流通方向は、符号Xで示されている。本明細書において、排ガス流通方向Xの上流側を「排ガス流入側」又は「上流側」、排ガス流通方向Xの下流側を「排ガス流出側」又は「下流側」という場合がある。
【0087】
排気管P内の排気通路には、排ガス浄化用触媒1の上流側又は下流側に、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。例えば、排気管P内の排気通路の上流側に、排ガス浄化用触媒1が配置され、排気管P内の排気通路の下流側に、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。
【0088】
図2~4に示すように、排ガス浄化用触媒1は、基材10と、基材10に設けられた第1の触媒層20とを備える。
【0089】
排ガス浄化用触媒1は、第1の触媒層20の下側、上側、下流側及び上流側から選択された1以上の位置に、第1の触媒層20以外の触媒層を備えていてもよい。本実施形態において、排ガス浄化用触媒1は、基材10に設けられた第2の触媒層30をさらに備える。第2の触媒層30は必要に応じて設けられる層であり、第2の触媒層30が省略された実施形態も本発明に包含される。但し、排ガス浄化性能を向上させる観点から、排ガス浄化用触媒1は、第2の触媒層30を備えることが好ましい。
【0090】
<基材>
以下、基材10について説明する。
【0091】
基材10を構成する材料は、適宜選択することができる。基材10を構成する材料は、基材が高温の排ガスに曝露された場合にも基材の形状を安定して維持し得る材料であることが好ましい。基材10を構成する材料は、例えば、セラミックス材料、金属材料等から選択することができる。セラミックス材料は、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミックス、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミックス、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム等の酸化物セラミックス等から選択することができる。金属材料は、例えば、ステンレス鋼等の合金等から選択することができる。
【0092】
なお、本明細書において、「高温」は、好ましくは850℃以上、より好ましくは900℃以上の温度を意味する。
【0093】
図2~4に示すように、基材10は、筒状部11と、筒状部11内に設けられた隔壁部12と、隔壁部12によって仕切られたセル13とを有する。基材10は、ハニカム構造体であることが好ましい。
【0094】
図2及び3に示すように、筒状部11は、基材10の外形を規定し、筒状部11の軸方向は、基材10の軸方向と一致する。図2に示すように、筒状部11の形状は、円筒状であるが、楕円筒状、多角筒状等のその他の形状であってもよい。
【0095】
図2及び3に示すように、隔壁部12は、筒状部11内に設けられている。図2~4に示すように、隣接するセル13の間には隔壁部12が存在し、隣接するセル13は隔壁部12によって仕切られている。隔壁部12の厚みは、例えば20μm以上1500μm以下である。隔壁部12は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有していてもよい。
【0096】
図4に示すように、セル13は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
【0097】
図4に示すように、セル13の排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部はともに開口している。したがって、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、セル13の排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、フロースルー型と呼ばれる。
【0098】
図2及び3に示すように、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)の平面視形状は、四角形であるが、六角形、八角形等のその他の形状であってもよい。セル13の排ガス流出側の端部(開口部)の平面視形状も同様である。
【0099】
基材10の1平方インチあたりのセル密度は、例えば100セル以上1000セル以下である。なお、基材10の1平方インチあたりのセル密度は、基材10を排ガス流通方向Xと垂直な平面で切断して得られた断面における1平方インチあたりのセル13の合計個数である。
【0100】
基材10の体積は、例えば0.1L以上20L以下である。基材10の体積は、基材10の見かけの体積を意味する。基材10が円柱状である場合、基材10の外径を2rとし、基材10の長さをLとすると、基材10の体積は、式:基材10の体積=π×r×Lで表される。
【0101】
基材10には、一部のセル13の排ガス流出側の端部を封止する第1封止部と、残りのセル13の排ガス流入側の端部を封止する第2封止部とが設けられていてもよい。これにより、一部のセル13は、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が第1封止部で閉塞している流入側セルとなり、残りのセル13は、排ガス流入側の端部が第2封止部で閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している流出側セルとなる。1個の流入側セルの周りには、複数(例えば4個)の流出側セルが配置され、流入側セルと、当該流入側セルに周りに配置された流出側セルとは、多孔質の隔壁部12によって仕切られる。流入側セルの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、多孔質の隔壁部12を通過して流出側セル13bの排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、ウォールフロー型と呼ばれる。ウォールフロー型の場合、隔壁部12は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有する。
【0102】
<第1の触媒層>
以下、第1の触媒層20について説明する。
【0103】
図3及び4に示すように、第1の触媒層20は、第2の触媒層30の上側に設けられている。
【0104】
「第1の触媒層20が第2の触媒層30の上側に設けられている」は、第2の触媒層30の2つの主面のうち、隔壁部12側の主面とは反対側の主面上に、第1の触媒層20の一部又は全部が存在することを意味する。「第2の触媒層30の主面」は、排ガス流通方向Xに延在する、第2の触媒層30の外表面を意味する。第1の触媒層20は、第2の触媒層30の主面の一部を覆うように設けられていてもよいし、第2の触媒層30の主面の全体を覆うように設けられていてもよい。第1の触媒層20は、第2の触媒層30の主面上に直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよいが、通常、第2の触媒層30の主面上に直接設けられている。「基材10に設けられた第1の触媒層20」には、第1の触媒層20が第2の触媒層30の主面上に直接設けられている実施形態、及び、第1の触媒層20が第2の触媒層30の主面上に他の層を介して設けられている実施形態のいずれもが包含される。
【0105】
第2の触媒層30が省略される場合、第1の触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面に設けられる。「隔壁部12のセル13側表面」は、排ガス流通方向Xに延在する、隔壁部12の外表面を意味する。第1の触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられてもよいし、他の層を介して設けられてもよいが、通常、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられる。
【0106】
第1の触媒層20が隔壁部12のセル13側表面に直接設けられる場合、第1の触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面からセル13側に隆起している部分(以下「隆起部分」という。)で構成されていてもよいし、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)で構成されていてもよいし、隆起部分及び内在部分を有していてもよい。「基材10に設けられた第1の触媒層20」には、第1の触媒層20が隆起部分で構成されている実施形態、第1の触媒層20が内在部分で構成されている実施形態、並びに、第1の触媒層20が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれもが包含される。
【0107】
図4に示すように、第1の触媒層20は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第1の触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0108】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち第1の触媒層20が形成されている部分の単位体積あたりの第1の触媒層20の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは30g/L以上150g/L以下、より好ましくは40g/L以上120g/L以下、より一層好ましくは50g/L以上100g/L以下である。基材10のうち第1の触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1の触媒層20の質量は、式:(第1の触媒層20の質量)/((基材10の体積)×(第1の触媒層20の平均長さL20/基材10の長さL10))から算出される。
【0109】
本明細書において、「第1の触媒層20の質量」は、第1の触媒層20に含まれる全ての金属元素のうち、貴金属元素については金属換算の質量を、貴金属元素以外の金属元素については酸化物換算の質量を求め、これらを合計したものを意味する。すなわち、「第1の触媒層20の質量」は、第1の触媒層20に含まれる貴金属元素の金属換算の質量と、第1の触媒層20に含まれる貴金属元素以外の金属元素の酸化物換算の質量とを合計することにより求められた計算質量を意味する。なお、「金属元素」には、Si、B等の半金属元素も包含される。
【0110】
本明細書において、「貴金属元素」には、Pt、Pd、Rh、Au、Ag、Ru、Ir及びOsが包含される。
【0111】
「酸化物」の意義は、上記<酸化物>の欄に記載の通りである。
【0112】
第1の触媒層20の平均長さL20の測定方法の一例は、以下の通りである。
【0113】
排ガス浄化用触媒1から、基材10の軸方向に延在し、基材10の長さL10と同一の長さを有するサンプルを切り出す。サンプルは、例えば、直径25.4mmの円柱状である。なお、サンプルの直径の値は必要に応じて変更することができる。サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流入側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。切断片の長さは5mmである。切断片の組成を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)、蛍光X線分析装置(XRF)、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等を使用して分析し、切断片の組成に基づいて、切断片が第1の触媒層20の一部を含むか否かを確認する。
【0114】
第1の触媒層20の一部を含むことが明らかである切断片に関しては、必ずしも組成分析を行う必要はない。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面を観察し、切断片が第1の触媒層20の一部を含むか否かを確認することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、例えば、SEM-EDX、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、透過型X線検査装置等を使用して行うことができる。
【0115】
切断片が第1の触媒層20の一部を含むか否かを確認した後、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1の触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1の触媒層20の長さ=5mm×(第1の触媒層20の一部を含む切断片の数)
【0116】
例えば、第1切断片~第k切断片は第1の触媒層20の一部を含むが、第(k+1)~第n切断片は第1の触媒層20の一部を含まない場合、サンプルに含まれる第1の触媒層20の長さは、(5×k)mmである。
【0117】
サンプルに含まれる第1の触媒層20の長さのより詳細な測定方法の一例は、以下の通りである。
第k切断片(すなわち、第1の触媒層20の一部を含む切断片のうち、サンプルの最も排ガス流出側から得られた切断片)を基材10の軸方向で切断して、SEM、EPMA等を使用して切断面に存在する第1の触媒層20の一部を観察することにより、第k切断片における第1の触媒層20の一部の長さを測定する。そして、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1の触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1の触媒層20の長さ=(5mm×(k-1))+(第k切断片に含まれる第1の触媒層20の一部の長さ)
【0118】
排ガス浄化用触媒1から任意に切り出された8~16個のサンプルに関して、各サンプルに含まれる第1の触媒層20の長さを測定し、それらの平均値を第1の触媒層20の平均長さL20とする。
【0119】
第1の触媒層20の製造に使用される原料の情報(例えば、組成、量等)が判明している場合、基材10のうち第1の触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1の触媒層20の質量は、第1の触媒層20の製造に使用される原料の情報から求めることができる。
【0120】
第1の触媒層20は、Rh、Ce及びYを含む。
【0121】
第1の触媒層20は、Zrをさらに含むことが好ましい。第1の触媒層20がZrを含むことにより、第1の触媒層20の耐熱性が向上する。
【0122】
本明細書において、第1の触媒層20におけるCeのモル量の、第1の触媒層20における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をa、第1の触媒層20におけるYのモル量の、第1の触媒層20における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をb、第1の触媒層20におけるRhのモル量の、第1の触媒層20における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をc、第1の触媒層20におけるZrのモル量の、第1の触媒層20における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をdとする。
【0123】
本明細書において、「第1の触媒層20におけるCeのモル量」は、第1の触媒層20が1種のCe源を含む場合には、当該1種のCe源に由来するCeのモル量を意味し、第1の触媒層20が2種以上のCe源を含む場合には、当該2種以上のCe源に由来するCeの合計モル量を意味する。Ce源については後述する。
【0124】
本明細書において、「第1の触媒層20におけるYのモル量」は、第1の触媒層20が1種のY源を含む場合には、当該1種のY源に由来するYのモル量を意味し、第1の触媒層20が2種以上のY源を含む場合には、当該2種以上のY源に由来するYの合計モル量を意味する。Y源については後述する。
【0125】
本明細書において、「第1の触媒層20におけるZrのモル量」は、第1の触媒層20が1種のZr源を含む場合には、当該1種のZr源に由来するZrのモル量を意味し、第1の触媒層20が2種以上のZr源を含む場合には、当該2種以上のZr源に由来するZrの合計モル量を意味する。Zr源については後述する。
【0126】
内燃機関に供給される空気/燃料比(空燃比)は、理論空燃比(ストイキ)近傍に制御されることが望ましい。しかしながら、実際の空燃比は、車両の走行条件等によってストイキを中心にリッチ(燃料過剰雰囲気)側又はリーン(燃料希薄雰囲気)側に変動するため、排ガスの空燃比も同様にリッチ側又はリーン側に変動する。酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する材料、例えば、Ce系酸化物(例えば、第1のCe系酸化物、第2のCe系酸化物、Ce-Zr系酸化物等)、Ceを含むY系酸化物(例えば、Ceを含む第1のY系酸化物、Ceを含む第2のY系酸化物、Ceを含むY-Zr系酸化物等)、Ceを含むAl系酸化物等を使用すれば、排ガス中の酸素濃度の変動が緩和され、Rhの排ガス浄化能が向上する。Ceは酸素貯蔵能に寄与するため、Ce量の増加に伴って、酸素貯蔵能が向上し、Rhの排ガス浄化性能が向上する。しかしながら、CeはRhの酸化を促進するため、Ce量が過剰であると、Rhの酸化が促進され、Rhの排ガス浄化性能が低下する。一方、Yは、酸化されたRhが再還元される温度を低くする性質を有するため、Y量の増加に伴って、排ガスがリーン状態であるときに酸化されたRhが、排ガスがリッチ状態になったときに、より早期に再還元されるようになり、Rhの排ガス浄化性能が向上する。しかしながら、Y量が過剰であると、耐熱性が低下する。
【0127】
酸素貯蔵能の向上によるRhの排ガス浄化性能の向上と、Rhの酸化促進によるRhの排ガス浄化性能の低下の防止と、酸化されたRhの早期の再還元によるRhの排ガス浄化性能の向上と、耐熱性の低下の防止とを効果的に実現する観点から、a/bの値は、好ましくは0.010以上0.400以下、より好ましくは0.020以上0.300以下、より一層好ましくは0.040以上0.200以下である。
【0128】
酸素貯蔵能の向上によるRhの排ガス浄化性能の向上と、Rhの酸化促進によるRhの排ガス浄化性能の低下の防止と、酸化されたRhの早期の再還元によるRhの排ガス浄化性能の向上と、耐熱性の低下の防止とをより効果的に実現する観点から、c/bの値は、好ましくは0.0010以上0.0270以下、より好ましくは0.0030以上0.0200以下、より一層好ましくは0.0050以上0.0120以下である。
【0129】
酸素貯蔵能の向上によるRhの排ガス浄化性能の向上をより効果的に実現する観点から、aは、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは0.7モル%以上、より一層好ましくは1.0モル%以上である。Rhの酸化促進によるRhの排ガス浄化性能の低下の防止をより効果的に実現する観点から、aは、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、より一層好ましくは15モル%以下である。これらの上限値はそれぞれ、上述の下限値のいずれと組み合わせてもよい。
【0130】
酸化されたRhの早期の再還元によるRhの排ガス浄化性能の向上をより効果的に実現する観点から、bは、好ましくは11モル%以上、一層好ましくは15モル%以上、より一層好ましくは19モル%以上、さらに一層好ましくは25モル%以上である。耐熱性の低下の防止をより効果的に実現する観点から、bは、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、より一層好ましくは40モル%以下である。これらの上限値はそれぞれ、上述の下限値のいずれと組み合わせてもよい。
【0131】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、cは、好ましくは0.001モル%以上10モル%以下、より好ましくは0.005モル%以上5モル%以下、より一層好ましくは0.01モル%以上1モル%以下である。
【0132】
耐熱性の向上と排ガス浄化性能の向上とをバランスよく実現する観点から、dは、好ましくは10モル%以上80モル%以下、より好ましくは13モル%以上70モル%以下、より一層好ましくは15モル%以上60モル%以下である。
【0133】
Rhは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Rh、Rhを含む合金、Rhを含む化合物(例えば、Rhの酸化物)等の、Rhを含む触媒活性成分の形態で第1の触媒層20に含まれる。Rhを含む触媒活性成分は、例えば、粒子状である。
【0134】
第1の触媒層20は、Rh以外の1種又は2種以上の貴金属元素を含んでいてもよい。Rh以外の貴金属元素は、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、Ru、Os等から選択することができる。Rh以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の、Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で第1の触媒層20に含まれる。Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分は、例えば、粒子状である。
【0135】
第1の触媒層20がRhとRh以外の貴金属元素とを含む場合、RhとRh以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化性能に関与するRhの活性点が減少するおそれがある。したがって、第1の触媒層20は、Rh以外の貴金属元素を実質的に含まないことが好ましい。
【0136】
「第1の触媒層20がRh以外の貴金属元素を実質的に含まない」とは、第1の触媒層20におけるRh以外の貴金属元素の金属換算の質量の、第1の触媒層20におけるRhの金属換算の質量を基準とする質量百分率が、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以下であることを意味する。下限はゼロである。「第1の触媒層20におけるRh以外の貴金属元素の金属換算の質量」は、第1の触媒層20がRh以外の1種の貴金属元素を含む場合には、当該1種の貴金属元素の金属換算の質量を意味し、第1の触媒層20がRh以外の2種以上の貴金属元素を含む場合には、当該2種以上の貴金属元素の金属換算の合計質量を意味する。
【0137】
第1の触媒層20は、1種又は2種以上のCe源を含む。
【0138】
Ce源は、Ceを含む酸化物である。Ce源は、以下の群:
Yを含むCe系酸化物(例えば、Yを含む第1のCe系酸化物、Yを含む第2のCe系酸化物、Yを含むCe-Zr系酸化物等);
Yを含まないCe系酸化物(例えば、Yを含まない第1のCe系酸化物、Yを含まない第2のCe系酸化物、Yを含まないCe-Zr系酸化物等);
Ceを含むY系酸化物(例えば、Ceを含む第1のY系酸化物、Ceを含む第2のY系酸化物、Ceを含むY-Zr系酸化物等);
Ce及びYを含むAl系酸化物;並びに
Ceを含みYを含まないAl系酸化物
から選択することが好ましい。
【0139】
Ce源は、Y源とは異なる酸化物である必要はなく、Y源と同じ酸化物であってもよい。例えば、Yを含むCe系酸化物、Ceを含むY系酸化物、並びに、Ce及びYを含むAl系酸化物は、それぞれ、Ce源であるとともに、Y源である。
【0140】
第1の触媒層20は、1種又は2種以上のY源を含む。
【0141】
Y源は、Yを含む酸化物である。Y源は、以下の群:
Ceを含むY系酸化物(例えば、Ceを含む第1のY系酸化物、Ceを含む第2のY系酸化物、Ceを含むY-Zr系酸化物等);
Ceを含まないY系酸化物(例えば、Ceを含まない第1のY系酸化物、Ceを含まない第2のY系酸化物、Ceを含まないY-Zr系酸化物等);
Yを含むCe系酸化物(例えば、Yを含む第1のCe系酸化物、Yを含む第2のCe系酸化物、Yを含むCe-Zr系酸化物等);
Y及びCeを含むAl系酸化物;並びに
Yを含みCeを含まないAl系酸化物
から選択することが好ましい。
【0142】
Y源は、Ce源とは異なる酸化物である必要はなく、Ce源と同じ酸化物であってもよい。
【0143】
第1の触媒層20がZrを含む場合、第1の触媒層20は、1種又は2種以上のZr源を含む。
【0144】
Zr源は、Zrを含む酸化物である。Zr源は、以下の群:
Zrを含むCe系酸化物(例えば、Zrを含む第1のCe系酸化物、Zrを含む第2のCe系酸化物、Ce-Zr系酸化物等);
Zrを含むY系酸化物(例えば、Zrを含む第1のY系酸化物、Zrを含む第2のY系酸化物、Y-Zr系酸化物等);並びに
Zrを含むAl系酸化物
から選択することが好ましく、Zrを含むCe系酸化物及びZrを含むY系酸化物から選択することがより好ましく、Ce-Zr系酸化物及びY-Zr系酸化物から選択することがより一層好ましい。
【0145】
Zr源は、Ce源とは異なる酸化物である必要はなく、Ce源と同じ酸化物であってもよい。例えば、Zrを含むCe系酸化物、Ce及びZrを含むY系酸化物、並びに、Ce及びZrを含むAl系酸化物は、それぞれ、Ce源であるとともに、Zr源である。
【0146】
Zr源は、Y源とは異なる酸化物である必要はなく、Y源と同じ酸化物であってもよい。例えば、Y及びZrを含むCe系酸化物、Zrを含むY系酸化物、並びに、Y及びZrを含むAl系酸化物は、それぞれ、Y源であるとともに、Zr源である。
【0147】
Zr源は、Ce源及びY源と同じ酸化物であってもよい。例えば、Y及びZrを含むCe系酸化物、Ce及びZrを含むY系酸化物、並びに、Ce、Y及びZrを含むAl系酸化物は、それぞれ、Ce源及びY源であるとともに、Zr源である。
【0148】
第1の触媒層20におけるZrのモル量のうち、Zrを含むCe系酸化物及びZrを含むY系酸化物に由来するZrのモル量が占める割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上である。上限値は100モル%である。「Zrを含むCe系酸化物及びZrを含むY系酸化物に由来するZrのモル量」は、第1の触媒層20がZrを含むCe系酸化物を含み、Zrを含むY系酸化物を含まない場合には、Zrを含むCe系酸化物に由来するZrのモル量を意味し、第1の触媒層20がZrを含むY系酸化物を含み、Zrを含むCe系酸化物を含まない場合には、Zrを含むY系酸化物に由来するZrのモル量を意味し、第1の触媒層20がZrを含むCe系酸化物とZrを含むY系酸化物とを含む場合には、Zrを含むCe系酸化物に由来するZrのモル量と、Zrを含むY系酸化物に由来するZrのモル量との合計を意味する。
【0149】
第1の触媒層20がZrを含む場合、第1の触媒層20は、Ce源、Y源及びZr源のうちの2種以上として、以下の群:
Zrを含むCe系酸化物(例えば、Zrを含む第1のCe系酸化物、Zrを含む第2のCe系酸化物、Ce-Zr系酸化物等);並びに
Zrを含むY系酸化物(例えば、Zrを含む第1のY系酸化物、Zrを含む第2のY系酸化物、Y-Zr系酸化物等)
から選択される1種以上を含むことが好ましく、Ce-Zr系酸化物及びY-Zr系酸化物から選択される1種以上を含むことがより好ましい。第1の触媒層20は、Ce源、Y源及びZr源のうちの1種以上として、以下の群:
Zrを含まないCe系酸化物(例えば、Zrを含まない第1のCe系酸化物、Zrを含まない第2のCe系酸化物等);
Zrを含まないY系酸化物(例えば、Zrを含まない第1のY系酸化物、Zrを含まない第2のY系酸化物等);
Ce、Y及びZrから選択される1種、2種又は3種を含むAl系酸化物
から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0150】
第1の触媒層20は、Alをさらに含んでいてもよい。第1の触媒層20がAlを含むことにより、第1の触媒層20の耐熱性が向上する。
【0151】
第1の触媒層20がAlを含む場合、第1の触媒層20は、1種又は2種以上のAl源を含む。
【0152】
Al源は、Alを含む酸化物である。Alを含む酸化物は、例えば、Al系酸化物、Alを含むCe系酸化物、Alを含むY系酸化物等から選択することができる。
【0153】
第1の触媒層20は、Al源として、Al系酸化物を含むことが好ましい。第1の触媒層20は、Al源として、Alを含むCe系酸化物及びAlを含むY系酸化物から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0154】
第1の触媒層20におけるAlのモル量の、第1の触媒層20における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をeとすると、耐熱性の向上と上述したCe及びYの性能発現とをバランスよく実現する観点から、eは、好ましくは5モル%以上90モル%以下、より好ましくは10モル%以上85モル%以下、より一層好ましくは20モル%以上80モル%以下である。「第1の触媒層20におけるAlのモル量」は、第1の触媒層20が1種のAl源を含む場合には、当該1種のAl源に由来するAlのモル量を意味し、第1の触媒層20が2種以上のAl源を含む場合には、当該2種以上のAl源に由来するAlの合計モル量を意味する。
【0155】
第1の触媒層20は、Ce及びY以外の1種又は2種以上のLnをさらに含んでいてもよい。第1の触媒層20は、Ce及びY以外のLnとして、例えば、La、Nd、Gd及びSmから選択される少なくとも1種を含むことができる。これにより、第1の触媒層20の耐熱性を向上させることができる。第1の触媒層20の耐熱性を向上させる観点から、Ce及びY以外のLnは、La及びNdから選択することが好ましい。第1の触媒層20は、Ce及びY以外のLnとして、例えば、Prを含むことができる。これにより、第1の触媒層20の酸素貯蔵能を向上させることができる。
【0156】
第1の触媒層20がCe及びY以外のLnを含む場合、第1の触媒層20は、1種又は2種以上のLn源を含む。
【0157】
Ln源は、Ce及びY以外のLnを含む酸化物である。Ce及びY以外のLnを含む酸化物は、例えば、Ce及びY以外のLnを含むAl系酸化物、Ce及びY以外のLnを含むCe系酸化物、Ce及びY以外のLnを含むY系酸化物等から選択することができる。
【0158】
Ln源は、Ce源とは異なる酸化物である必要はなく、Ce源と同じ酸化物であってもよい。例えば、Ce及びY以外のLnを含むCe系酸化物、Ce及びY以外のLnとCeとを含むY系酸化物、並びに、Ce及びY以外のLnとCeとを含むAl系酸化物は、それぞれ、Ln源であるとともに、Ce源である。
【0159】
Ln源は、Y源とは異なる酸化物である必要はなく、Y源と同じ酸化物であってもよい。例えば、Ce及びY以外のLnを含むY系酸化物、Ce及びY以外のLnとYとを含むCe系酸化物、並びに、Ce及びY以外のLnとYとを含むAl系酸化物は、それぞれ、Ln源であるとともに、Y源である。
【0160】
Ln源は、Ce源及びY源と同じ酸化物であってもよい。例えば、Ce及びY以外のLnとYとを含むCe系酸化物、Ce及びY以外のLnとCeとを含むY系酸化物、並びに、Ce及びY以外のLnとCeとYとを含むAl系酸化物は、それぞれ、Ln源であるとともに、Ce源及びY源である。
【0161】
第1の触媒層20におけるCe及びY以外のLnのモル量の、第1の触媒層20における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率をfとすると、耐熱性の向上とコストとをバランスよく実現する観点から、fは、好ましくは0.5モル%以上40モル%以下、より好ましくは1モル%以上20モル%以下、より一層好ましくは2モル%以上13モル%以下である。「第1の触媒層20におけるCe及びY以外のLnのモル量」は、第1の触媒層20が1種のLnを含む場合には、当該1種のLnのモル量を意味し、第1の触媒層20が2種以上のLnを含む場合には、当該2種以上のLnの合計モル量を意味する。また、「第1の触媒層20におけるCe及びY以外のLnのモル量」は、第1の触媒層20が1種のLn源を含む場合には、当該1種のLn源に由来するCe及びY以外のLnのモル量を意味し、第1の触媒層20が2種以上のLn源を含む場合には、当該2種以上のLn源に由来するCe及びY以外のLnの合計モル量を意味する。
【0162】
第1の触媒層20におけるCe及びY以外のLnのモル量のうち、Al系酸化物、Ce系酸化物及びY系酸化物に由来するCe及びY以外のLnのモル量が占める割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上である。上限値は100モル%である。「Al系酸化物、Ce系酸化物及びY系酸化物に由来するCe及びY以外のLnのモル量」は、第1の触媒層20がAl系酸化物、Ce系酸化物及びY系酸化物のうちの1種を含む場合には、当該1種に由来するCe及びY以外のLnのモル量を意味し、第1の触媒層20がAl系酸化物、Ce系酸化物及びY系酸化物のうちの2種以上を含む場合には、当該2種以上に由来するCe及びY以外のLnの合計モル量を意味する。
【0163】
排ガス浄化性能を向上させる観点から、第1の触媒層20は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。1種又は2種以上の担体は、Ce系酸化物、Y系酸化物及びAl系酸化物から選択することができる。
【0164】
「触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されている」とは、担体の外表面及び/又は細孔内表面に、触媒活性成分の少なくとも一部が、物理的及び/又は化学的に吸着及び/又は保持されている状態を意味する。触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていることは、例えば、第1の触媒層20を走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)で分析し、触媒活性成分の少なくとも一部と担体とが同じ領域に存在していることにより確認することができる。
【0165】
第1の触媒層20は、バインダを含んでいてもよい。バインダは、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、イットリア等の無機バインダから選択することができる。なお、バインダがCe、Y及びZrからなる群から選択される1種以上を含む場合、バインダも、上述したCe源、Zr源及びY源のうちの1種以上に含まれるものとする。
【0166】
第1の触媒層20の形成に使用される原料の組成が判明している場合、第1の触媒層20における各金属元素のモル量は、第1の触媒層20の形成に使用される原料の組成から算出することができる。
【0167】
また、第1の触媒層20における各金属元素のモル量は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、蛍光X線分析法(XRF)、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定することができる。具体的には、下記の通りである。
【0168】
まず、排ガス浄化用触媒1から切り出した試験片を粉砕処理した後、XRF又はICP-AESで分析し、モル量が多い金属元素を、多い方から20種特定する。特定された20種の金属元素には、Rh、Ce及びYが含まれている。第1の触媒層20がZrを含む場合、特定された20種の金属元素には、Zrが含まれている。第1の触媒層20がAlを含む場合、特定された20種の金属元素には、Alが含まれている。試験片は、第1の触媒層20に由来する部分を含む限り、基材10に由来する部分及び/又は第2の触媒層30に由来する部分を含んでいてもよい。試験片が、基材10に由来する部分及び/又は第2の触媒層30に由来する部分を含む場合、特定された20種の金属元素には、基材10を構成する金属元素及び/又は第2の触媒層30を構成する金属元素が含まれていてもよい。
【0169】
次いで、第1の触媒層20をSEM-EDX又はEPMAで分析する。SEM-EDX又はEPMAでは、上記で特定された20種の金属元素を分析対象とし、SEMの10視野の各々に関して、20種の金属元素の合計モル%=100モル%とし、各金属元素のモル%を分析する。10視野における各金属元素のモル%の平均値を、第1の触媒層20における各金属元素のモル量とする。
【0170】
<第2の触媒層>
以下、第2の触媒層30について説明する。
【0171】
図3及び4に示すように、第2の触媒層30は、隔壁部12のセル13側表面に設けられている。「隔壁部12のセル13側表面」は、排ガス流通方向Xに延在する、隔壁部12の外表面を意味する。第2の触媒層30は、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよいが、通常、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられている。
【0172】
第2の触媒層30は、隔壁部12のセル13側表面からセル13側に隆起している部分(以下「隆起部分」という。)で構成されていてもよいし、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)で構成されていてもよいし、隆起部分及び内在部分を有していてもよい。「基材10に設けられた第2の触媒層30」には、第2の触媒層30が隆起部分で構成されている実施形態、第2の触媒層30が内在部分で構成されている実施形態、並びに、第2の触媒層30が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれもが包含される。
【0173】
図4に示すように、第2の触媒層30は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第2の触媒層30は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0174】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち第2の触媒層30が形成されている部分の単位体積あたりの第2の触媒層30の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは30g/L以上250g/L以下、より好ましくは40g/L以上200g/L以下、より一層好ましくは50g/L以上150g/L以下である。基材10のうち第2の触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2の触媒層30の質量は、式:(第2の触媒層30の質量)/((基材10の体積)×(第2の触媒層30の平均長さL30/基材10の長さL10))から算出される。
【0175】
「第1の触媒層20の質量」に関する上記説明は、「第2の触媒層30の質量」にも適用される。適用の際、「第1の触媒層20」は「第2の触媒層30」に読み替えられる。
【0176】
第1の触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、第2の触媒層30の平均長さL30の測定方法にも適用される。適用の際、「第1の触媒層20」は「第2の触媒層30」に、「平均長さL20」は「平均長さL30」に読み替えられる。
【0177】
第2の触媒層30の製造に使用される原料の情報(例えば、組成、量等)が判明している場合、基材10のうち第2の触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2の触媒層30の質量は、第2の触媒層30の製造に使用される原料の情報から求めることができる。
【0178】
排ガス浄化性能を向上させる観点から、第2の触媒層30は、Pdを含むことが好ましい。第1の触媒層20が第2の触媒層30の上側に設けられていることにより、第2の触媒層30に含まれるPdのリン被毒を防止することができる。
【0179】
Pdは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Pd、Pdを含む合金、Pdを含む化合物(例えば、Pdの酸化物)等の、Pdを含む触媒活性成分の形態で第2の触媒層30に含まれる。Pdを含む触媒活性成分は、例えば、粒子状である。
【0180】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、第2の触媒層30におけるPdの含有量は、基材10のうち第2の触媒層30が形成されている部分の単位体積あたりのPdの含有量換算で、好ましくは0.01g/L以上10g/L以下、より好ましくは0.02g/L以上7g/L以下、より一層好ましくは0.05g/L以上5g/L以下である。なお、Pdの含有量は、金属換算の含有量である。
【0181】
第2の触媒層30におけるPdの含有量は、上述した第1の触媒層20における各金属元素のモル量と同様に測定することができる。
【0182】
排ガス浄化性能を向上させる観点から、第2の触媒層30は、担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、担体に担持されていることが好ましい。「触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されている」の意義及び確認方法は上記と同様である。
【0183】
担体は、例えば、無機酸化物等から選択することができる。無機酸化物は、例えば、粒子状である。無機酸化物は、例えば、Al系酸化物、Ce系酸化物、Y系酸化物等から選択することができる。
【0184】
第2の触媒層30は、2種以上の担体を含んでいてもよい。例えば、第2の触媒層30は、少なくとも1種のAl系酸化物と、少なくとも1種のCe系酸化物及び/又は少なくとも1種のY系酸化物とを含んでいてもよい。
【0185】
第2の触媒層30は、バインダを含んでいてもよい。バインダは、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、イットリア等の無機バインダから選択することができる。
【0186】
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
排ガス浄化用触媒1は、基材10上に第2の触媒層30を形成した後、第2の触媒層30の上側に第1の触媒層20を形成することにより製造することができる。
【0187】
第2の触媒層30は、貴金属元素の供給源(例えば、Pd塩等)及びその他の成分(例えば、Al系酸化物、Ce系酸化物、Y系酸化物等の無機酸化物、バインダ、溶媒等)を混合して第2の触媒層用スラリーを調製し、第2の触媒層用スラリーを基材10の隔壁部12上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0188】
第1の触媒層20は、貴金属元素の供給源(例えば、Rh塩等)及びその他の成分(例えば、Al系酸化物、Ce系酸化物、Y系酸化物等の無機酸化物、バインダ、溶媒等)を混合して第1の触媒層用スラリーを調製し、第1の触媒層用スラリーを第2の触媒層30上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0189】
バインダは、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル、イットリアゾル等の金属酸化物ゾルから選択することができる。溶媒は、例えば、水、有機溶媒等から選択することができる。
【0190】
乾燥温度は、例えば60℃以上150℃以下であり、乾燥時間は、例えば0.1時間以上1時間以下である。焼成温度は、例えば300℃以上700℃以下であり、焼成時間は、例えば1時間以上10時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【実施例
【0191】
以下、実施例を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0192】
<実施例1~7及び比較例1~2>
(1)下層の形成
純水の入った容器に、硝酸パラジウム溶液、Ce-Zr系酸化物、アルミナ及びバインダを順に添加し、十分に攪拌混合し、下層用スラリーを得た。
【0193】
下層用スラリーに、ステンレス製メタルハニカム基材(直径:40mm,長さ:60mm,セル密度:400セル/平方インチ、体積:75mL)を浸漬し、余分なスラリーを除去し、基材内部の壁面上に下層用スラリーを塗工した。下層用スラリーを塗工した基材を、80℃で1時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成して、基材内部の壁面上に下層を形成した。基材のうち下層が形成されている部分の単位体積あたりの下層の質量(乾燥及び焼成後の質量)は110g/Lであった。基材のうち下層が形成されている部分の単位体積あたりの下層中のPdの質量は、金属換算で、0.8g/Lであった。
【0194】
(2)上層の形成
純水の入った容器に、硝酸ロジウム溶液と、Ce以外の1種又は2種以上のLnを含むCe-Zr系酸化物及びY以外の1種又は2種以上のLnを含むY-Zr系酸化物から選択される1種以上と、酸化ランタン含有アルミナと、バインダとを順に添加し、十分に攪拌混合し、上層用スラリーを得た。上層用スラリーの組成は、上層用スラリーから形成される上層の組成が表1に示す組成となるように調整した。表1において、「a」は、上層におけるCeのモル量の、上層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率を、「b」は、上層におけるYのモル量の、上層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率を、「c」は、上層におけるRhのモル量の、上層における全金属元素の合計モル量を基準とするモル百分率を表す。
【0195】
上層用スラリーに、下層が形成された基材を浸漬し、余分なスラリーを除去し、下層上に上層用スラリーを塗工した。上層用スラリーを塗工した基材を、80℃で1時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成して、下層上に上層を形成し、排ガス浄化用触媒を得た。基材のうち上層が形成されている部分の単位体積あたりの上層の質量(乾燥及び焼成後の質量)は60g/Lであった。
【0196】
(3)耐久試験
上記(2)で得られた排ガス浄化用触媒を排気管に搭載し、ハニカム基材の中央に熱電対を差し込んだ。この排気管をガソリンエンジン(排気量:2300cc、燃料:エンジンオイルを添加したガソリン)にセットし、熱電対の温度が850℃~1000℃の所定温度になるようにエンジン回転数/トルク等を調整し、40時間にわたり耐久試験を実施した。
【0197】
(4)排ガス浄化性能の評価
耐久試験後、排ガス浄化用触媒を自動二輪車のマフラーに組み込み、下記条件でCO及びNOx排出量(mg/km)を測定した。結果を表1に示す。
使用車両:単気筒110cc自動二輪車
燃料:無鉛ガソリン
走行モード:WMTC
測定方法:ISO6460に準拠
【0198】
【表1】
【0199】
表1に示すように、a/bの値が0.010以上0.400以下である、という条件を満たす実施例1~7の排ガス浄化用触媒は、当該条件を満たさない比較例1~2の排ガス浄化用触媒と比較して、耐久試験後の排ガス浄化性能が高かった。
【符号の説明】
【0200】
1・・・排ガス浄化用触媒
10・・・基材
11・・・筒状部
12・・・隔壁部
13・・・セル
20・・・第1の触媒層
30・・・第2の触媒層
図1
図2
図3
図4