(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】移乗支援装置
(51)【国際特許分類】
B63B 27/30 20060101AFI20240620BHJP
B63B 27/14 20060101ALI20240620BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240620BHJP
【FI】
B63B27/30
B63B27/14 101F
B63B35/00 T
(21)【出願番号】P 2022571688
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2021048228
(87)【国際公開番号】W WO2022138927
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020216780
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月21日に長崎県長崎市小江町の小江港「小江ボートパーク掲示板」に掲示 令和2年7月24日に長崎県長崎市小江町小江港防波堤海域にて性能試験
(73)【特許権者】
【識別番号】505365574
【氏名又は名称】崎永海運株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520246892
【氏名又は名称】特定非営利活動法人長崎海洋産業クラスター形成推進協議会
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正己
(72)【発明者】
【氏名】吉田 法史
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04590634(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02500256(EP,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1914944(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0084514(US,A1)
【文献】国際公開第2012/066349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 27/30
B63B 27/14
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、該船舶から洋上風力発電設備に架橋して人の移乗を可能とする移乗支援装置であって、
人が歩行可能な橋本体と、
前記橋本体の先端側に設けられ、該橋本体を前記洋上風力発電設備に固定する先端固定部材と、
前記橋本体の下部に設けられると共に前記船舶上に設けられ、該船舶の揺れに対応して前記橋本体を水平状態に保持する橋本体制御部と、
を備え、
前記橋本体制御部が、
前記橋本体を支持するボールジョイント部と、前記橋本体の揺動を緩衝する橋本体緩衝部と
、前記橋本体の大きな揺動を緩衝する補助緩衝部と、
を備え、
前記補助緩衝部は、前記橋本体を支持するボールジョイント部の少なくとも上部の周囲を覆う筒状体と、該筒状体の下方の船舶上に設けられた筒状体受け緩衝部材とを具備している
ことを特徴とする移乗支援装置。
【請求項2】
前記ボールジョイント部が、
スタッド部、及び該スタッド部に連結されたボール部を具備するボールスタッドと、
前記ボールスタッドのボール部をその内部に球面接触状態で収容し、前記ボールスタッドと揺動可能に連結されたソケットと、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の移乗支援装置。
【請求項3】
前記橋本体緩衝部が、前記船舶と前記橋本体とに連結された弾性緩衝部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の移乗支援装置。
【請求項4】
前記橋本体が、その前後方向に進退可能な進退機構を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の移乗支援装置。
【請求項5】
前記先端固定部材が、橋本体の先端にピッチ方向に回動可能に支持されると共に、先端固定部材抑制部によりピッチ方向の少なくとも一方の回動が抑制されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の移乗支援装置。
【請求項6】
前記先端固定部材が、ボールジョイントで支持されていることを特徴とする請求項5記載の移乗支援装置。
【請求項7】
前記先端固定部材抑制部が、前記ボールジョイントの左右に設けられ、前記先端固定部材の下面に当接して先端固定部材のピッチ方向及びロール方向の回動を抑制する先端回動抑制部材を具備していることを特徴とする請求項6記載の移乗支援装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか記載の移乗支援装置を搭載したことを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶から洋上風力発電設備への人の移乗を可能とする移乗支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策やエネルギー自給率改善のため、再生可能エネルギーへの期待が高まっており、中でも海洋国家であるわが国では海洋での発電事業に将来への期待が寄せられている。
【0003】
一方、再生可能エネルギーの中でも風力発電においては、メンテナンスが稼働率(発電量)確保のカギを握っている。風力発電の一つである洋上風力発電においても、同様にメンテナンスが稼働率の確保に重要であるが、アクセス船から洋上風力発電設備への人の移乗に海上気象の影響を大きく受けるため、メンテナンスを安定的かつ安全に行うことは容易ではない。そこで、安定的かつ安全に人の移乗ができる移乗支援装置が求められている。
【0004】
このような移乗支援装置としては、例えば、共に不規則に動く浮体同士である、第1浮体と第2浮体とを連結する移乗支援装置であって、第1浮体から伸ばされ、浮体同士の相対的な動きを吸収可能な可撓性を備え、人を移動させることが可能な連結体と、連結体の先端に設けられ、第2浮体の外壁に吸着可能な吸着体とを備えることを特徴とする移乗支援装置(特許文献1参照)や、船と洋上風力発電設備との間を人が渡れるように架け渡される移乗支援装置であって、船に搭載されているとともに空気の注入によって人が渡れる形状に膨らんで船と洋上風力発電設備との間に架け渡される本体と、本体の幅方向の両側部にそれぞれ設けられ、張った状態で、船と洋上風力発電設備との間に架け渡した状態に本体を吊ることができる吊ケーブルと、を備え、本体は、その幅方向の両側部にそれぞれ手摺部を備え、各吊ケーブルは、一端が船に結合され、他端においては、洋上風力発電設備の外壁に設けられた所定の支持部材に対して掛留めによる結合が可能なフック状の結合手段を有している移乗支援装置(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-156179号公報
【文献】特開2016-097908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の移乗支援装置では、高精度の制御装置などを搭載する必要があり、システムが複雑で製造やメンテナンスに費用がかかるという問題や、装置が大型になり小型船に搭載できないという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、簡易な構成で安定的かつ安全に人の移乗が可能な移乗支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、船舶から洋上風力発電設備への移乗装置について鋭意検討した結果、船舶から洋上風力発電設備に橋本体を架橋して固定した状態で、船舶上に設けられたボールジョイント部を具備する制御部において、橋本体を機械的に制御することにより、船舶の揺れに対応して橋本体を水平状態に保持することができ、これにより、安定的かつ安全に人の移乗ができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]船舶に搭載され、該船舶から洋上風力発電設備に架橋して人の移乗を可能とする移乗支援装置であって、
人が歩行可能な橋本体と、
前記橋本体の先端側に設けられ、該橋本体を前記洋上風力発電設備に固定する先端固定部材と、
前記橋本体の下部に設けられると共に前記船舶上に設けられ、該船舶の揺れに対応して前記橋本体を水平状態に保持する橋本体制御部と、
を備え、
前記橋本体制御部が、
前記橋本体を支持するボールジョイント部と、前記橋本体の揺動を緩衝する橋本体緩衝部とを具備する
ことを特徴とする移乗支援装置。
【0010】
[2]前記ボールジョイント部が、
スタッド部、及び該スタッド部に連結されたボール部を具備するボールスタッドと、
前記ボールスタッドのボール部をその内部に球面接触状態で収容し、前記ボールスタッドと揺動可能に連結されたソケットと、
を備えていることを特徴とする上記[1]記載の移乗支援装置。
[3]前記橋本体緩衝部が、前記船舶と前記橋本体とに連結された弾性緩衝部材を備えていることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の移乗支援装置。
[4]前記橋本体が、その前後方向に進退可能な進退機構を備えていることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の移乗支援装置。
【0011】
[5]前記先端固定部材が、橋本体の先端にピッチ方向に回動可能に支持されると共に、先端固定部材抑制部によりピッチ方向の少なくとも一方の回動が抑制されていることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載の移乗支援装置。
[6]前記先端固定部材が、ボールジョイントで支持されていることを特徴とする上記[5]記載の移乗支援装置。
[7]前記先端固定部材抑制部が、前記ボールジョイントの左右に設けられ、前記先端固定部材の下面に当接して先端固定部材のピッチ方向及びロール方向の回動を抑制する先端回動抑制部材を具備していることを特徴とする上記[6]記載の移乗支援装置。
[8]前記橋本体制御部が、さらに、前記橋本体の大きな揺動を緩衝する補助緩衝部を備え、
前記補助緩衝部は、前記橋本体を支持するボールジョイント部の少なくとも上部の周囲を覆う筒状体と、該筒状体の下方の船舶上に設けられた筒状体受け緩衝部材とを具備していることを特徴とする上記[1]~[7]記載の移乗支援装置。
【0012】
[9]上記[1]~[8]のいずれか記載の移乗支援装置を搭載したことを特徴とする船舶。
【発明の効果】
【0013】
本発明の移乗支援装置によれば、簡易な構成で安定的かつ安全に人の移乗ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を搭載した船舶が洋上風力発電設備に接近する様子を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の概略説明図であり、(a)は移乗支援装置の概略平面図であり、(b)移乗支援装置の概略側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置における先端固定部材の概略平面拡大図であり、(a)は洋上風力発電設備に固定する直前の状態を示し、(b)は洋上風力発電設備に固定した状態を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略平面図であり、(a)~(c)は、船舶がヨー方向に揺れた場合の説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略背面図であり、(a)~(c)は、船舶がロール方向に揺れた場合の説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略側面図であり、(a)~(c)は、船舶がピッチ方向に揺れた場合の説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を用いた人の移乗作業の概略説明図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の概略説明図であり、(a)は移乗支援装置の概略平面図であり、(b)移乗支援装置の概略側面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の概略平面図であり、(a)は洋上風力発電設備に固定する直前の状態を示し、(b)は洋上風力発電設備に固定した状態を示す。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略平面図であり、(a)~(c)は、船舶がヨー方向に揺れた場合の説明図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略背面図であり、(a)~(c)は、船舶がロール方向に揺れた場合の説明図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略側面図であり、(a)~(c)は、船舶がピッチ方向に揺れた場合の説明図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置における補助緩衝部の説明図であり、船舶がロール方向に大きく揺れた状態の概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の移乗支援装置は、船舶に搭載され、船舶から洋上風力発電設備に架橋して人の移乗を可能とする移乗支援装置であって、人が歩行可能な橋本体と、橋本体の先端側に設けられ、橋本体を洋上風力発電設備に固定する先端固定部材と、橋本体の下部に設けられると共に船舶上に設けられ、船舶の揺れに対応して橋本体を水平状態に保持する橋本体制御部と、を備え、橋本体制御部が、橋本体を支持するボールジョイント部と、橋本体の揺動を緩衝する橋本体緩衝部とを具備することを特徴とする。
【0016】
本発明の移乗支援装置においては、船舶から洋上風力発電設備に橋本体を架橋して固定した状態において、橋本体制御部によって、海上気象の影響による船舶の揺れに対応して橋本体を水平状態に保持するように制御することにより、安定的かつ安全に人の移乗を可能とする。すなわち、洋上風力発電設備に固定された橋本体への負荷を減らして安定した固定状態を保持すると共に、橋本体の揺れや傾きを抑制して、安定的かつ安全に人の移乗を可能とする。また、本発明の移乗支援装置は、主として機械的な制御を用いるため、製造やメンテナンスが容易かつ安価である。また、制御部が1か所にコンパクトに集積されると共に簡易な構成であるため、小型船などの多種多様な船舶に搭載することができる。
【0017】
本発明の移乗支援装置を搭載する船舶としては、具体的には、洋上風力発電設備へ人を輸送するアクセス船(乗換船)を挙げることができる。移乗支援装置は、船舶製造時に取り付けられる船舶一体型であってもよいし、既存の船舶に取り付ける後付型であってもよい。移乗支援装置の船舶における設置場所は、特に制限されるものではなく、船首側、船尾側等のいずれであってもよいが、通常、船首側である。
【0018】
以下、本明細書においては、本発明の移乗支援装置を船舶に搭載した状態に基づいて説明する。また、本発明の移乗支援装置を船舶から洋上風力発電設備に架橋した状態において、橋本体の先端側(洋上風力発電設備側)を前方といい、橋本体の基端側を後方ということがある。
【0019】
[橋本体]
橋本体は、船舶から洋上風力発電設備に架橋した際に、船舶及び洋上風力発電設備の間を跨ぎ、その上を人が歩行可能な長尺の橋構造体である。この橋本体には、欄干や手すりが設けられていてもよい。
【0020】
橋本体の幅は、船舶の大きさ等により適宜設定することができるが、500~2000mmであることが好ましく、600~1200mmであることがより好ましい。また、その長さ(後述の可動式の場合は最大伸長時の長さ)は、通常1000~5000mmであり、2000~3500mmであることが好ましく、2500~3000mmであることがより好ましい。
【0021】
橋本体は、その長さが一定の不可動式であってもよいが、前後方向に進退可能な可動部を有する可動式であることが好ましい。すなわち、本発明の橋本体は、その前後方向に進退可能な進退機構を備えていることが好ましい。これにより、例えば、船舶の先端(舳先)のフェンダーが洋上風力発電設備の着桟部材に当接した状態で、橋本体の先端から着桟部材までの距離の調整が可能となり、不使用時にはコンパクトに収納することができる。本発明の進退機構を備えた橋本体としては、例えば、橋本体基板と、橋本体基板上にレールを介して設けられた橋本体スライド板とを備えているものを挙げることができる。進退機構の駆動には、油圧式、空圧式、電気式等のアクチュエータを用いることができる。
【0022】
[先端固定部材]
先端固定部材は、橋本体の先端側に設けられ、橋本体を洋上風力発電設備に固定する部材である。通常、洋上風力発電設備には、船舶を着桟(着岸)させるために、ポールなどの着桟部材が設けられており、この着桟部材に先端固定部材を固定して、橋本体を安定化させる。
【0023】
先端固定部材は、橋本体に直接設けられていてもよいが、接続部材を介して間接的に設けられるものが好ましい。接続部材としては、先端固定部材及び橋本体を、少なくともピッチ方向に回動可能に支持するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ヒンジジョイント、ボールジョイント等を挙げることができる。これにより、船舶の揺れが大きい場合などにも、橋本体のフレキシブルな作動により、先端固定部材にかかる負荷を低減して、先端固定部材を洋上風力発電設備に安定して固定することができると共に、橋本体の揺れを抑制することができる。特にボールジョイントは、先端固定部材及び橋本体を、ヨー方向、ロール方向、ピッチ方向のいずれにもフレキシブルに支持することができるため好ましい。
【0024】
先端固定部材は、橋本体の先端に少なくともピッチ方向に回動可能に支持されるものが好ましいが、ピッチ方向の少なくとも一方の回動を抑制する部材(先端固定部材抑制部)により制限されることが好ましい。これにより、船舶の大きな揺れによる先端固定部材への負荷を低減することができる。先端固定部材抑制部としては、特に制限されるものではないが、例えば、橋本体の先端下部に設けられ、先端固定部材の下面又は後面に当接して先端固定部材のピッチ方向の下方向の回動を抑制すると共に、先端固定部材の回動による負荷を吸収する先端回動抑制部材(緩衝部材)を具備するものを挙げることができる。また、先端固定部材がボールジョイントで支持されている場合には、先端固定部材抑制部は、ボールジョイントの左右に設けられ、先端固定部材の下面に当接して先端固定部材のピッチ方向の下方向及びロール方向の回動を抑制する先端回動抑制部材(緩衝部材)を具備するものを挙げることができる。
【0025】
先端固定部材は、洋上風力発電設備に設けられた着桟部材を把持する把持手段を備えていることが好ましい。把持手段は、船舶を着桟させるために洋上風力発電設備に設けられた着桟部材を把持するものであり、その形状は着桟部材の形状に対応したものであれば特に制限されるものではなく、例えば、着桟部材が2本のポールの場合、各ポールを把持することができるものが好ましい。具体的に、例えば、本発明の把持手段は、洋上風力発電設備の2本のポールに亘る中央部材と、中央部材の両端部に設けられた、ポール間の内側から2本のポールを押圧挟持して把持する把持部とを有するものを挙げることができる。ポールを押圧挟持するための把持部の駆動には、油圧式、空圧式、電気式等のアクチュエータを用いることができる。
【0026】
[橋本体制御部]
橋本体制御部は、橋本体の下部に設けられると共に船舶上に設けられ、船舶の揺れに対応して橋本体を水平状態に保持するものであり、橋本体を支持するボールジョイント部と、橋本体の揺動を緩衝する橋本体緩衝部とを具備する。これにより、船舶から洋上風力発電設備に橋本体を架橋して固定した状態で、船舶の揺れから生じる動き(ヨー方向、ロール方向及びピッチ方向という3方向を含む全方向の動き)を1か所で機械的に制御し、船舶の揺れに対応して橋本体を制御することができる。すなわち、船舶の揺れに基づく橋本体の揺れを抑制することができると共に、先端固定部材にかかる負荷を低減することができる。
【0027】
[ボールジョイント部]
ボールジョイント部としては、橋本体を支持できるものであれば特に制限されるものではなく、スタッド部と、スタッド部に連結されたボール部とを具備するボールスタッドと、ボールスタッドのボール部をその内部に球面接触状態で収容し、ボールスタッドと揺動可能に連結されたソケットとを備えるものを例示することができる。ボールジョイント部の設置態様としては、ボールスタッドが船舶(基台)に固定されると共にソケットが橋本体に固定される態様であってもよいし、ボールスタッドが橋本体に固定されると共にソケットが船舶(基台)に固定される態様であってもよい。このようなコンパクトかつ簡易な構成により、橋本体を精度よく制御することができる。
【0028】
(ボールスタッド)
ボールスタッドは、棒状のスタッド部と、スタッド部に連結された球状のボール部とを具備している。ボールスタッドの材質としては、特に制限されるものではなく、例えば、金属、合成樹脂等を挙げることができ、金属が好ましい。ボール部の大きさとしては、橋本体の大きさ等により適宜設定することができ、例えば、直径100~1500mmであり、200~1200mmが好ましく、300~600mmがより好ましい。ボールスタッドの全体の長さとしては、橋本体の大きさ等により適宜設定することができ、例えば、200~3000mmであり、400~2000mmが好ましく、500~1000mmがより好ましい。
【0029】
(ソケット)
ソケットは、ボールスタッドのボール部をその内部に球面接触状態で収容し、ボールスタッドと揺動可能に連結される。ソケットの材質としては、特に制限されるものではなく、例えば、合成樹脂、金属、天然ゴム、木材、及びこれらの組み合わせ等を挙げることができ、合成樹脂、又は合成樹脂及び金属の組み合わせが好ましい。
【0030】
[橋本体緩衝部]
橋本体緩衝部としては、橋本体の揺動を緩衝するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、船舶と橋本体とを連結する弾性緩衝部材(復元緩衝部材)を備える態様や、船舶上に設置され、橋本体の下面に当接して橋本体の揺動を緩衝する弾性緩衝部材(復元緩衝部材)を備える態様を挙げることができる。これにより、船舶の変動に基づく橋本体の揺れを抑制することができると共に、先端固定部材への負荷を低減することができる。弾性緩衝部材としては、例えば、バネ、ゴム、シリンダ(復元シリンダ、弾性シリンダ等)、ダンパ(復元ダンパ、弾性ダンパ等)が挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。弾性緩衝部材は、所定間隔を空けて複数設けられていてもよい。具体的に、例えば、橋本体緩衝部は、船舶と橋本体とに連結された弾性緩衝部材が、ボールジョイント部の周囲に等間隔で少なくとも3つ設けられているものや、橋本体の端部に少なくとも4つ設けられているものを挙げることができる。なお、橋本体緩衝部は、弾性緩衝部材に代えて又は弾性緩衝部材に追加して、橋本体を水平状態に保つように制御する水平制御部材を備えるものであってもよく、水平制御部材としては、制御シリンダ、制御ダンパ等を挙げることができる。
【0031】
[補助緩衝部]
橋本体制御部は、さらに、橋本体の大きな揺動を緩衝する補助緩衝部を備えていることが好ましい。補助緩衝部としては、橋本体を支持するボールジョイント部の少なくとも上部の周囲を覆う筒状体と、筒状体の下方の船舶上に設けられた筒状体受け緩衝部材とを具備しているものを挙げることができる。上述した橋本体緩衝部が、橋本体の小さな揺動(例えば、10°以内の傾き)を緩衝することで、船舶の揺れに対応して橋本体を水平状態に保持するものであるのに対して、補助緩衝部は、橋本体が大きく揺動(例えば、10°を超える傾き)する際、筒状体が筒状体受け緩衝部材に当接することにより、橋本体の揺動を緩衝するものであり、これにより橋本体(装置)の急激な変動や、損傷を防止することができる。筒状体受け緩衝部材としては、例えば、ゴム、合成樹脂(ウレタン樹脂、ナイロン樹脂等)等を挙げることができる。
【0032】
[基台]
橋本体制御部は、船舶上に直接固定されていてもよいが、基台を介して間接的に固定されていてもよい。基台の船舶における固定場所は、特に制限されるものではなく、船首側、船尾側等のいずれであってもよいが、船首側が好ましい。基台の固定方法は、特に制限されるものではなく、基台を船舶と一体化して固定する方法であってもよいし、基台を船舶に着脱可能に固定する方法であってもよい。具体的に、例えば、ボルトやナットなどの締結具を用いた固定方法、溶接による固定方法等を挙げることができる。また、船舶に着脱可能に固定する方法の場合、基台の下部に車輪等の移動手段を設け、移乗支援装置を可搬式とすることもできる。
【0033】
[補助支持部]
本発明の移乗支援装置は、橋本体及び/又は先端固定部材を支持する補助支持部を備えていてもよい。これにより、橋本体及び/又は先端固定部材の全体のバランスをとることができ、船舶の揺れに対応する橋本体及び/又は先端固定部材の制御を強化することができる。
【0034】
次に、本発明の移乗支援装置の使用方法(動作)について説明する。
本発明の移乗支援装置においては、海洋に浮遊する洋上風力発電設備に接近し、着岸した状態、例えば、船舶の先端のフェンダーを洋上風力発電設備の着桟部材に当接させた状態で、着桟部材に先端固定部材を介して橋本体を架橋し固定する。
【0035】
続いて、使用者は、橋本体の上へと上り、歩行して洋上風力発電設備へと移動する。着桟部材に先端固定部材を介して橋本体が固定された状態において、橋本体制御部のボールジョイント部が、橋本体を支持し、橋本体緩衝部が、橋本体の揺動を緩衝することで、船舶の揺れに対応して橋本体を水平状態に保持する。さらに、船舶の揺れなどに起因する先端固定部材への負荷を分散することができ、先端固定部材の固定がより確実なものとなり、着桟部材から外れることや、装置の破損を防止することができる。
【0036】
上記のように、本発明の移乗支援装置は、船舶から洋上風力発電設備に橋本体を架橋して固定した状態で、船舶の揺れから生じる動き(ヨー方向、ロール方向及びピッチ方向という3方向を含む全方向の動き)を1か所で機械的に制御することにより、船舶の揺れに対応して橋本体を水平状態に保持するように制御することができるものであり、使用者は、安定的かつ安全に船舶及び洋上風力発電設備間を移動することができる。
【0037】
以下、図面を用いて本発明の移乗支援装置の一実施形態を具体的に説明するが、本発明は本実施形態に制限されるものではない。
【0038】
ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を搭載した船舶が洋上風力発電設備に接近する様子を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の概略説明図であり、(a)は移乗支援装置の概略平面図であり、(b)移乗支援装置の概略側面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置における先端固定部材の概略平面拡大図であり、(a)は洋上風力発電設備に固定する直前の状態を示し、(b)は洋上風力発電設備に固定した状態を示す。
図4は、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略平面図であり、(a)~(c)は、船舶がヨー方向に揺れた場合の説明図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略背面図であり、(a)~(c)は、船舶がロール方向に揺れた場合の説明図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略側面図であり、(a)~(c)は、船舶がピッチ方向に揺れた場合の説明図である。
図7(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を用いた人の移乗作業の概略説明図である。なお、
図5及び
図6は、船舶と橋本体との間に配置される橋本体緩衝部(バネ部材)の一部を省略して、より容易に理解できるように記載している。
【0039】
図1及び
図7に示すように、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置1は、アクセス船2に搭載され、アクセス船2から洋上風力発電設備3に架橋して人の移乗を可能とする装置である。
【0040】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置1は、橋本体10と、橋本体10の先端側に設けられ、橋本体10を洋上風力発電設備3に固定する先端固定部材12と、橋本体10の下部に設けられると共にアクセス船2上に固定された橋本体制御部14とを備えている。また、橋本体制御部14は、基台16を介してアクセス船2上の船首側に固定されている(
図7参照)。
【0041】
図2に示すように、橋本体10は、長尺の板状の部材であって、アクセス船2及び洋上風力発電設備3の間を跨ぎ、その上を人が歩行可能な橋構造に構成されている。橋本体10は、進退機構としての長さ1000mm程度、幅600mm程度の橋本体基板18と、橋本体基板18上にレール20を介して設けられた長さ1800mm程度、幅600mm程度の橋本体スライド板22とを備えており、アクチュエータ24により駆動し、進退可能である。橋本体10の最大伸長時の長さは、2600mm程度である。
【0042】
図3に示すように、先端固定部材12は、洋上風力発電設備3に設けられた2本のポール(着桟部材)26a,26bを把持する一対の把持手段28を備えている。把持手段28は、洋上風力発電設備3のポール26a,26bに亘る横向きの直方体の棒状部材30と、棒状部材30の前面側両端部に、26a,26b間の内側からポール26a,26bを押圧挟持して把持する把持部32とを有している。把持部32は、アクチュエータ34により駆動する。
【0043】
先端固定部材12は、橋本体10をピッチ方向に回動可能に支持する接続部材としてのヒンジジョイント36を備えている。これにより、船舶2の揺れが大きい場合などにも、橋本体10のフレキシブルな作動により、先端固定部材12にかかる負荷を低減することができると共に、橋本体10の揺れを抑制することができる。また、
図2に示すように、橋本体10は、その先端下部に設けられ、先端固定部材12の後面に当接して先端固定部材12のピッチ方向の下方向の回動を抑制すると共に、先端固定部材12の回動による負荷を吸収する弾性棒部材38を備えている。
【0044】
図2に示すように、橋本体制御部14は、橋本体10の下部に設けられると共にアクセス船2上に固定され、アクセス船2の揺れに対応して橋本体10を支持するボールジョイント部40と、橋本体10の揺動を緩衝する橋本体緩衝部42(42a~42d)とを備えている。これにより、アクセス船2から洋上風力発電設備3に橋本体10を架橋して固定した状態で、アクセス船2の揺れから生じる動き(例えば、ヨー方向、ロール方向及びピッチ方向という3方向を含む全方向の動き)を1か所で機械的に制御し、アクセス船2の揺れに対応して橋本体10を水平状態に保持するように制御することができる。
【0045】
図2に示すように、基台16は、長さ1200mm程度、幅1200mm程度の板状の部材であって、この基台16を介してアクセス船2上に、ボールジョイント部40及び橋本体緩衝部42が設けられている。なお、基台16上面から橋本体基板18下面までの距離は、800mm程度である。
【0046】
図2(b)に示すように、ボールジョイント部40は、その一端が橋本体10に固定された金属製の棒状のスタッド部44と、スタッド部44の他端に連結された金属製の球状のボール部46とを具備するボールスタッド48と、ボールスタッド48のボール部46をその内部に球面接触状態で収容し、ボールスタッド48と揺動可能に連結されたソケット50とを備えている。
【0047】
図2に示すように、橋本体緩衝部42は、アクセス船2と橋本体10との間に連結され、ボールジョイント部40の周囲に等間隔で配置された4つのバネ部材42a~42dである。
【0048】
次に、上記移乗支援装置1を洋上風力発電設備3に架橋した際の動作について説明する。
【0049】
図4は、移乗支援装置1の先端固定部材12で、洋上風力発電設備3に橋本体10を固定した状態の概略平面図を示している。
まず、
図4(b)に示すように、移乗支援装置1を洋上風力発電設備3に架橋した直後の状態は、アクセス船2が正面(洋上風力発電設備3側)を向いており、橋本体10も正面を向いた状態となっている。
【0050】
図4(a)に示すように、波やうねりなどの海面の変動により、アクセス船2がヨー方向に反時計回りに傾く場合や、
図4(c)に示すように、ヨー方向に時計回りに傾く場合であっても、ボールジョイント部40及び橋本体緩衝部42により、橋本体10がヨー方向に揺動して、先端固定部材12に負荷をかけることなく、橋本体10の揺れが抑制され、橋本体10は正面を向いたまま水平状態に保持される。
【0051】
図5は、移乗支援装置1の先端固定部材12で、洋上風力発電設備3に橋本体10を固定した状態の概略背面図を示している。なお、
図5中、船舶2と橋本体10との間に配置されたバネ部材42bを省略している。
図5(b)に示すように、移乗支援装置1を洋上風力発電設備3に架橋した直後の状態は、アクセス船2が水平状態に保持されており、橋本体10は水平状態に保持されている。
【0052】
一方、
図5(a)に示すように、波やうねりなどの海面の変動により、アクセス船2がロール方向の反時計回りに傾く場合や、
図5(c)に示すように、ロール方向の時計回りに傾く場合があるが、このように傾いたとしても、ボールジョイント部40及び橋本体緩衝部42により、先端固定部材12に負荷をかけることなく、橋本体10の揺れが抑制され、橋本体10は水平状態に保持される。この際、バネ部材42a~42dが、橋本体10を下から支持して揺動を抑制すると共に、先端固定部材12にかかる負荷を低減する。
【0053】
図6は、移乗支援装置1の先端固定部材12で、洋上風力発電設備3に橋本体10を固定した状態の概略側面図を示している。なお、
図6中、船舶2と橋本体10との間に配置されたバネ部材42aを省略している。
図6(b)に示すように、移乗支援装置1を洋上風力発電設備3に架橋した直後の状態では、橋本体10は水平状態に保持されている。
【0054】
一方、
図6(a)に示すように、波やうねりなどの海面の変動により、アクセス船2の先端が下降する場合や、
図6(c)に示すように、アクセス船2の先端が上昇する場合があるが、このように傾いたとしても、ボールジョイント部40及び橋本体緩衝部42により、先端固定部材12に負荷をかけることなく、橋本体10の揺れが抑制され、橋本体10は水平に保持される。なお、先端固定部材12及び橋本体10を支持するヒンジジョイント36や、橋本体10に設けられた弾性棒部材38においても、アクセス船2の揺れによる先端固定部材12にかかる負荷を低減することで、橋本体10の揺れの揺れが抑制され、橋本体10は水平に保持される。
【0055】
次に、海洋上においてアクセス船2が上記移乗支援装置1を用いて洋上風力発電設備3への人の移乗作業の手順について説明する。
【0056】
まず、アクセス船2を、海洋に浮遊する洋上風力発電設備3に接近させて、アクセス船2の先端のフェンダー52を洋上風力発電設備3のポール26a,26bに接触させて着桟(着岸)させる(
図1及び
図7(a))。続いて、アクセス船2の船首側に固定された移乗支援装置1の橋本体10の橋本体スライド板22を前進させ、先端固定部材12の把持部32により洋上風力発電設備3の2本のポール26a,26bを挟持して把持する(
図3)。続いて、使用者54はアクセス船2から移乗支援装置1の上を歩行して洋上風力発電設備3へ移動する(
図7(b))。これにより、アクセス船2から洋上風力発電設備3への移乗作業が完了する。
【0057】
また、洋上風力発電設備3からアクセス船2に戻る場合には、使用者54は洋上風力発電設備3から移乗支援装置1の上を歩行してアクセス船2へ移動する。続いて、ポール26a,26bを把持する先端固定部材12を解除して、橋本体10の橋本体スライド板22を後退限まで後退させて、アクセス船2を洋上風力発電設備3から離岸させる。
【0058】
次に、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置について説明する。
ここで、
図8は、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の概略説明図であり、(a)は移乗支援装置の概略平面図であり、(b)移乗支援装置の概略側面図である。
図9は、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の概略平面図であり、(a)は洋上風力発電設備に固定する直前の状態を示し、(b)は洋上風力発電設備に固定した状態を示す。
図10は、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略平面図であり、(a)~(c)は、船舶がヨー方向に揺れた場合の説明図である。
図11は、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略背面図であり、(a)~(c)は、船舶がロール方向に揺れた場合の説明図である。
図12は、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置の橋本体を先端固定部材を介して洋上風力発電設備に固定した状態の概略側面図であり、(a)~(c)は、船舶がピッチ方向に揺れた場合の説明図である。
図13は、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置における補助緩衝部の説明図であり、船舶がロール方向に大きく揺れた状態の概略背面図である。
【0059】
図8に示すように、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置4は、橋本体110と、橋本体110の先端側に設けられ、橋本体110を洋上風力発電設備3に固定する先端固定部材112と、橋本体110の下部に設けられると共にアクセス船2上に固定された橋本体制御部114とを備えている。また、橋本体制御部114は、基台116を介してアクセス船2上の船首側に固定されている。
【0060】
橋本体110は、長尺の板状の部材であって、アクセス船2及び洋上風力発電設備3の間を跨ぎ、その上を人が歩行可能な橋構造に構成されている。橋本体110は、進退機構としての長さ1800mm程度、幅800mm程度の橋本体基板118と、橋本体基板118上にレール120を介して設けられた長さ2200mm程度、幅800mm程度の橋本体スライド板122とを備えており、アクチュエータ124により駆動し、進退可能である。橋本体10の最大伸長時の長さは、3000mm程度である。
【0061】
図9に示すように、先端固定部材112は、洋上風力発電設備3に設けられた2本のポール(着桟部材)126a,126bを把持する一対の把持手段128を備えている。把持手段128は、洋上風力発電設備3のポール126a,126bに亘る中央平板部材130と、中央平板部材130の前側両端部に水平方向に回転可能に設けられた、ポール126a,126b間の内側からポール126a,126bを押圧挟持して把持する把持部132a,132bとを有している。把持部132a,132bは、アクチュエータ134の伸縮により回動する。
【0062】
先端固定部材112を洋上風力発電設備3に固定する際には、まず、
図9(a)に示すように、ポール126a,126bに対して、先端固定部材112に設けられたポール押圧部135a,135bが当接する。続いて、
図9(b)に示すように、把持部132がアクチュエータ134の伸長により外側に回転し、ポール押圧部135a,135bがポール126a,126b間の内側からポール126a,126bを押圧挟持することで固定する。
【0063】
図8及び
図9に示すように、先端固定部材112は、その中央に、橋本体110を支持する接続部材としてのボールジョイント136を備えている。これにより、船舶2の揺れが大きい場合などにも、橋本体110のフレキシブルな作動により、先端固定部材112にかかる負荷を低減することができると共に、橋本体110の揺れを抑制することができる。また、先端固定部材112及び橋本体110を、ヨー方向、ロール方向、ピッチ方向のいずれにもフレキシブルに支持することができるため、先端固定部材112が洋上風力発電設備3の着桟部材26を把持した状態を安定して保持することができる。また、橋本体110は、ボールジョイント136の左右に、先端固定部材112の下面に当接して先端固定部材112のピッチ方向の下方向及びロール方向の回動を抑制する先端回動抑制部材としてのゴム製のクッション部材138a,138bを備えている。
【0064】
また、
図8及び
図9に示すように、橋本体制御部114は、橋本体110の下部に設けられると共にアクセス船2の基台116上に固定され、アクセス船2の揺れに対応して橋本体110を支持するボールジョイント部140と、橋本体110の揺動を緩衝する橋本体緩衝部141とを備えている。これにより、アクセス船2から洋上風力発電設備3に橋本体110を架橋して固定した状態で、アクセス船2の揺れから生じる動き(例えば、ヨー方向、ロール方向及びピッチ方向という3方向を含む全方向の動き)を1か所で機械的に制御し、アクセス船2の揺れに対応して橋本体110を水平状態に保持するように制御することができる。
【0065】
図8及び
図9に示すように、基台116は、長さ1900mm程度、幅900mm程度の板状の部材であって、この基台116を介してアクセス船2上に、ボールジョイント部140及び橋本体緩衝部141が設けられている。なお、基台116上面から橋本体基板118下面までの距離は、500mm程度である。
【0066】
図8(b)に示すように、ボールジョイント部140は、金属製の棒状のスタッド部144、及びスタッド部144に連結された金属製の球状のボール部146を具備するボールスタッド148と、ボールスタッド148のボール部146をその内部に球面接触状態で収容し、ボールスタッド148と揺動可能に連結されたソケット150とを備えており、ボールスタッド148が基台116に固定され、ソケット150が橋本体110に固定されている。
【0067】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、橋本体緩衝部141は、シリンダ143a~143dと、シリンダ143a~143dに接続されたチェーン又はワイヤ等からなる連結部材142a~142dとを備えており、シリンダ143a~143dがアクセス船2の基台116に取り付けられ、連結部材142a~142dが、橋本体110の縁部(橋本体110の前方及び後方端部の左右両側)に取り付けられている。なお、シリンダ143a~143dは、橋本体110の揺動により引っ張られた連結部材142a~142dを、元の位置に戻すよう制御されている。
【0068】
図8(b)に示すように、橋本体制御部114は、さらに、補助緩衝部156を備えている。補助緩衝部156は、橋本体110の下方に設けられ、ボールジョイント部140の上部の周囲を覆う筒状体152と、筒状体152の下方の基台116に設けられた筒状体受け緩衝部材154とを具備している。緩衝部材154は、弾力性を有する発泡樹脂にポリウレア等のコーティング剤が塗布されて表面が強化された部材である。この補助緩衝部156により、船舶2の大きな揺れに対応することができる。
【0069】
次に、上記移乗支援装置4を洋上風力発電設備3に架橋した際の動作について説明する。
【0070】
図10は、移乗支援装置4の先端固定部材112で、洋上風力発電設備3に橋本体110を固定した状態の概略平面図を示している。
まず、
図10(b)に示すように、移乗支援装置4を洋上風力発電設備3に架橋した直後の状態は、アクセス船2が正面(洋上風力発電設備3側)を向いており、橋本体110も正面を向いた状態となっている。
【0071】
図10(a)に示すように、波やうねりなどの海面の変動により、アクセス船2がヨー方向に反時計回りに傾く場合や、
図10(c)に示すように、ヨー方向に時計回りに傾く場合であっても、ボールジョイント部140及び橋本体緩衝部141により、橋本体110がヨー方向に揺動して、先端固定部材112に負荷をかけることなく、橋本体110の揺れが抑制され、橋本体110は正面を向いたまま水平状態に保持される。
【0072】
図11は、移乗支援装置4の先端固定部材112で、洋上風力発電設備3に橋本体110を固定した状態の概略背面図を示している。
図11(b)に示すように、移乗支援装置4を洋上風力発電設備3に架橋した直後の状態は、アクセス船2が水平状態に保持されており、橋本体110は水平状態に保持されている。
【0073】
一方、
図11(a)に示すように、波やうねりなどの海面の変動により、アクセス船2がロール方向の反時計回りに傾く場合や、
図11(c)に示すように、ロール方向の時計回りに傾く場合があるが、このように傾いたとしても、ボールジョイント部140及び橋本体緩衝部141により、先端固定部材112に負荷をかけることなく、橋本体110の揺れが抑制され、橋本体110は水平状態に保持される。この際、シリンダ143a~143d及び連結部材142a~142dが、橋本体110を下から支持して揺動を抑制すると共に、先端固定部材112にかかる負荷を低減する。
【0074】
図12は、移乗支援装置4の先端固定部材112で、洋上風力発電設備3に橋本体110を固定した状態の概略側面図を示している。
図12(b)に示すように、移乗支援装置4を洋上風力発電設備3に架橋した直後の状態では、橋本体110は水平状態に保持されている。
【0075】
一方、
図12(a)に示すように、波やうねりなどの海面の変動により、アクセス船2の先端が下降する場合や、
図12(c)に示すように、アクセス船2の先端が上昇する場合があるが、このように傾いたとしても、ボールジョイント部140及び橋本体緩衝部141により、先端固定部材112に負荷をかけることなく、橋本体110の揺れが抑制され、橋本体110は水平に保持される。なお、先端固定部材112及び橋本体110を支持するボールジョイント136や、橋本体110に設けられたクッション部材138においても、アクセス船2の揺れによる先端固定部材112にかかる負荷を低減することで、橋本体110の揺れが抑制され、橋本体110は水平に保持される。
【0076】
図13は、移乗支援装置4の橋本体制御部114の補助緩衝部156の説明図であり、船舶2がロール方向に激しく揺れた状態の概略背面図を示している。
図13に示すように、波やうねりなどの海面の変動により、アクセス船2が大きく傾く場合(
図13はロール方向の反時計回りに激しく傾いた場合)があるが、このように傾いたとしても、補助緩衝部156の筒状体152が筒状体受け緩衝部材154に当接することにより、橋本体110の揺動が緩衝され、橋本体110の急激な変動を抑制して、損傷を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の移乗支援装置は、船舶に搭載して利用できることから、産業上有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 移乗支援装置(一実施形態に係る移乗支援装置)
2 アクセス船(船舶)
3 洋上風力発電設備
4 移乗支援装置(他の実施形態に係る移乗支援装置)
10 橋本体
12 先端固定部材
14 橋本体制御部
16 基台
18 橋本体基板
20 レール
22 橋本体スライド板
24 アクチュエータ
26 ポール(着桟部材)
28 把持手段
30 棒状部材
32 把持部
34 アクチュエータ
36 ヒンジジョイント
38 弾性棒部材
40 ボールジョイント部
42 橋本体緩衝部(バネ部材)
44 スタッド部
46 ボール部
48 ボールスタッド
50 ソケット
52 フェンダー
54 使用者
110 橋本体
112 先端固定部材
114 橋本体制御部
116 基台
118 橋本体基板
120 レール
122 橋本体スライド板
124 アクチュエータ
126 ポール(着桟部材)
128 把持手段
130 中央平板部材
132 把持部
134 アクチュエータ
135 ポール押圧部
136 ボールジョイント
138 クッション部材
140 ボールジョイント部
141 橋本体緩衝部
142 連結部材
143 シリンダ
144 スタッド部
146 ボール部
148 ボールスタッド
150 ソケット
152 筒状体
154 筒状体受け緩衝部材
156 補助緩衝部