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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電動車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240620BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20240620BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240620BHJP
【FI】
B62D25/20 A
B62D21/00 B
B60K1/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020210300
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096982
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】片山 伸哉
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018662(JP,A)
【文献】特開2021-059142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 21/00
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の下部に配置され、車両前後方向および車幅方向に延びており、前記電動車両に搭載される電池ユニットを内部に収容可能な電池ケース部を備えている電動車両の下部構造において、
前記電池ケース部の車両前方側に配置され、車幅方向に延びており、フロントサスペンションを支持する左右一対のサスペンションアームが車幅方向両側部に取り付けられるサスペンションフレーム部と、
前記電池ケース部の前端部から前記サスペンションフレーム部の各サスペンションアーム取付箇所に向かって延びており、前記電池ケース部と前記サスペンションフレーム部を連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、前記電池ケース部の前端部と前記サスペンションフレーム部の後端部との間に位置する部分が、前記サスペンションフレーム部の車幅方向の幅にわたって車幅方向に延びているとともに、前記サスペンションフレーム部の車両上下方向の厚さにわたって車両上下方向に延びており、かつ、前記電池ケース部の前端部から前記サスペンションフレーム部の前記各サスペンションアーム取付箇所に向かってそれぞれ延びている左右の外側壁部を有し、
前記電池ケース部は、車幅方向両側部にそれぞれ配置され、車両前後方向に延びている左右のケースフレームを有し、
前記ケースフレームの前端部分と前記外側壁部の後端部分とが接続されていることを特徴とする電動車両の下部構造。
【請求項2】
前記連結部は、前記電池ケース部の前端上部から前記サスペンションフレーム部の後端上部に延びている上壁部と、前記電池ケース部の前端下部から前記サスペンションフレーム部の後端下部に延びている下壁部と、前記上壁部の前端と前記下壁部の前端とを繋いでいる前壁部と、前記上壁部の後端と前記下壁部の後端とを繋いでいる後壁部と、によって車幅方向に延びる閉断面が形成されており、
前記連結部の前記上壁部は、車両後方に向かって車両上方に傾斜した傾斜面を有していることを特徴とする請求項に記載の電動車両の下部構造。
【請求項3】
前記連結部は、前記サスペンションフレーム部の車幅方向の幅にわたって車幅方向に延びている立壁部を有し、該立壁部は、車両上面視で、車幅方向の中間部分が両端部分よりも前方に突出していることを特徴とする請求項1または2に記載の電動車両の下部構造。
【請求項4】
前記連結部は、前記左右の外側壁部の車幅方向内側に位置し、車両前後方向に延びている少なくとも1つの隔壁部を有することを特徴とする請求項に記載の電動車両の下部構造。
【請求項5】
前記連結部は、前記左右の外側壁部の車幅方向内側に位置し、車両前後方向に延びている複数の隔壁部と、前記サスペンションフレーム部の車幅方向の幅にわたって車幅方向に延びている立壁部と、を有し、前記複数の隔壁部が前記立壁部に沿って間隔を空けて設けられていることを特徴とする請求項に記載の電動車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車等の電動車両は、車両下部に電池ユニットを備えている。当該電池ユニットは、複数の電池モジュールがユニット化されることにより構成され、車両室のフロアの下側に搭載されている。電池ユニットは、車体を構成する部材に取り付けられている。
【0003】
従来の電動車両の下部構造として、例えば、特許文献1に開示されている構造が知られている。当該文献に開示されている構造では、車室フロアの車両下側に底壁と周壁を有するケース本体が配設されており、その内部にバッテリが収容されている。また、ケース本体の車両前方側には、前部延出部がケース本体の車両前方側の周壁からケース本体と一体的に形成されている。この前部延出部の車幅方向両端部には、左右一対のサスペンションロアアームが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-158688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来構造については、フロントサスペンションからサスペンションロアアームを介して前部延出部に入力される荷重によって、前部延出部およびケース本体で発生する上下振動やねじれを十分に抑制することが難しいという課題があった。
【0006】
すなわち、従来構造では、サスペンションロアアームを含むフロントサスペンションが前部延出部によって支持されている。この前部延出部は、そもそも前面衝突時に衝突エネルギを吸収するためにケース本体の車両前方側に設けられている。このため、フロントサスペンションから前部延出部に入力される荷重に対して、前部延出部の剛性が不足する可能性があった。このような前部延出部が、重量物であるバッテリを収容するケース本体に連続して設けられていると、フロントサスペンションからの荷重によって、前部延出部からケース本体にかけて比較的大きな上下振動やねじれが発生する恐れがあり、改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、フロントサスペンションからの入力荷重によって生じる上下振動やねじれを抑制することができる電動車両の下部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、電動車両の下部に配置され、車両前後方向および車幅方向に延びており、前記電動車両に搭載される電池ユニットを内部に収容可能な電池ケース部を備えている電動車両の下部構造を提供する。この下部構造は、前記電池ケース部の車両前方側に配置され、車幅方向に延びており、フロントサスペンションを支持する左右一対のサスペンションアームが車幅方向両側部に取り付けられるサスペンションフレーム部と、前記電池ケース部の前端部から前記サスペンションフレーム部の各サスペンションアーム取付箇所に向かって延びており、前記電池ケース部と前記サスペンションフレーム部を連結する連結部と、を備えている。前記連結部は、前記電池ケース部の前端部と前記サスペンションフレーム部の後端部との間に位置する部分が、前記サスペンションフレーム部の車幅方向の幅にわたって車幅方向に延びているとともに、前記サスペンションフレーム部の車両上下方向の厚さにわたって車両上下方向に延びており、かつ、前記電池ケース部の前端部から前記サスペンションフレーム部の前記各サスペンションアーム取付箇所に向かってそれぞれ延びている左右の外側壁部を有し、前記電池ケース部は、車幅方向両側部にそれぞれ配置され、車両前後方向に延びている左右のケースフレームを有し、前記ケースフレームの前端部分と前記外側壁部の後端部分とが接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電動車両の下部構造によれば、サスペンションフレーム部の車幅方向の幅および車両上下方向の厚さにわたって延びている連結部が、サスペンションフレーム部と電池ケース部との間に設けられていることで下部構造体の剛性が高められるため、フロントサスペンションからの入力荷重によって生じる上下振動やねじれを抑制することができる。また、ケースフレームの前端部分と連結部の外側壁部の後端部分とが接続されていることで、サスペンションフレーム部の車幅方向の幅よりも電池ケース部の車幅方向の幅が大きい場合に、車両前後方向の軸周りのねじれを有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る下部構造が適用された電動車両の前側部分を車両下方から見た下面図である。
図2図1におけるA-A線断面図である。
図3図1の下部構造体の具体例を示す分解斜視図である。
図4図3の下部構造体のうちの下側部材および内部部品群の主要部を拡大して示す斜視図である。
図5図1の下部構造体の他の具体例を示す分解斜視図である。
図6図5における連結部の内部構造を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図6は、本発明の一実施形態に係る電動車両の下部構造を示すものである。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向で車両前方を示し、矢印U方向は車両上下方向で車両上方を示し、矢印L方向は車両幅方向で左方を示し、矢印R方向は車両幅方向で右方を示している。また、実施形態の説明における「左右」は、車両室内から前方を見たときの左右に対応している。
【0012】
本実施形態に係る下部構造が適用された電動車両1は、当該車両1の前側部分を下方から見た図1の下面図に示すように、車両前部のパワーユニットルームPに搭載された駆動装置2(例えば、電動モータ等)を有している。駆動装置2は、例えば、車両の前輪を駆動するための動力を提供する。パワーユニットルームP内には、車両骨格部材である左右一対のフロントサイドメンバ3が車両前後方向に延びている。電動車両1の下部には、図1に太線で示すように、電池ケース部41と、サスペンションフレーム部42と、連結部43と、を備えた下部構造体4が設けられている。
【0013】
下部構造体4の一部分を構成する電池ケース部41は、下部構造体4の車両後側部分に配置されており、車両前後方向および車幅方向に延びている。電池ケース部41は、図2図1におけるA-A線断面図)に示すように、電動車両1に搭載される電池ユニットBを内部に収容することが可能である。電池ユニットBは、例えば、駆動装置2を作動させるための電源装置である。電池ユニットBは、図示を省略するが複数の電池モジュールがユニット化されており大きな重量を有している。電池ユニットBを収容した電池ケース部41は、車両室のフロア部を構成する図示しないフロアパネルの車両下方側に配置される。
【0014】
サスペンションフレーム部42は、電池ケース部41の車両前方側に配置されており、下部構造体4の車両前側部分を構成している。サスペンションフレーム部42は、車幅方向に延びており、パワーユニットルームPの下部に位置している。サスペンションフレーム部42の車幅方向両側部には、図示しないフロントサスペンションを支持する左右一対のサスペンションアームが取り付けられる。つまり、サスペンションフレーム部42のサスペンションアーム取付箇所42a(図1)は、下部構造体4において車両前側部分の左側部および右側部に位置している。サスペンションフレーム部42は、左右のフロントサイドメンバ3の下部に取り付けられている。
【0015】
連結部43は、電池ケース部41の前端部41aからサスペンションフレーム部42の各サスペンションアーム取付箇所42aに向かって延びており、電池ケース部41とサスペンションフレーム部42を連結している。連結部43は、電池ケース部41の前端部41aとサスペンションフレーム部42の後端部42bとの間に位置する部分が、サスペンションフレーム部42の車幅方向の幅にわたって車幅方向に延びているとともに(図1)、サスペンションフレーム部42の車両上下方向の厚さにわたって車両上下方向に延びている(図2)。
【0016】
以下、本実施形態による下部構造体4の具体例について詳細に説明する。
図3は、下部構造体4の具体例における構成要素を分解して示した斜視図である。また、図4は、図3の下部構造体4のうちの下側部材6および内部部品群7の主要部を拡大して示した斜視図である。
【0017】
図3および図4において、上記具体例による下部構造体4は、車両上側に配置される上側部材5と、車両下側に配置される下側部材6と、上側部材5および下側部材6の間に配置される内部部品群7と、を備えている。上側部材5および下側部材6の間に形成される空間は、上側部材5および下側部材6それぞれの凹凸形状と内部部品群7との組み合わせにより複数の領域に区画されている。これにより、下部構造体4は、前述した電池ケース部41、サスペンションフレーム部42および連結部43が一体的に形成されている。換言すると、本実施形態の下部構造体4においては、上側部材5、下側部材6および内部部品群7を組み合わせることによって、電池ケース部41、サスペンションフレーム部42および連結部43を備えたボックス構造が形成されている。
【0018】
具体的に、上側部材5は、図2および図3に示すように、複数の板状部品5aを接合して形成されており、全体として車両前後方向および車幅方向に延びている。上側部材5の後部51は、前述した電池ケース部41の上部を形成している。上側部材5の後部51(電池ケース部41の上部)は、平面視略矩形であり車両下方に開口した箱型形状に形成されている。この後部51には、開口部から外側に突出したフランジ部51aが設けられている(図3)。後部51の前端部51bは、車幅方向の中間部分が両端部分よりも車両前方側に突出している。後部51の下面側には、内部部品群7の配置に対応した凹凸が形成されていてもよい。
【0019】
上側部材5の前部52は、前述したサスペンションフレーム部42の上部を形成している。上側部材5の前部52(サスペンションフレーム部42の上部)は、車幅方向に延びているとともに、車幅方向両端部が車両前後方向にそれぞれ突出しており、平面視で略H字状に形成されている。前部52の左右両側部52aには、左右一対のサスペンションアームの上部がそれぞれ取り付けられる。前部52の左右両側部52aにおける車両前後方向の中央付近には、内部部品群7の後述する車体連結部品72aを取り付けるための凹部52bがそれぞれ設けられている。
【0020】
上側部材5における後部51および前部52の間に位置する中間部53は、前述した連結部43の上部を形成している。上側部材5の中間部53(連結部43の上部)は、後部51の前端部51bから前部52の後端部52cに延び、車幅方向の中間部分が両端部分よりも車両前方側に突出している。また、中間部53は、図2に示すように、車両後方に向かって車両上方に傾斜した傾斜面53aを有している。
【0021】
下側部材6は、図1図4に示すように、複数の板状部品6aを接合して形成されており、全体として車両前後方向および車幅方向に延びている。下側部材6の後部61は、前述した電池ケース部41の下部を形成している。下側部材6の後部61(電池ケース部41の下部)は、平面視略矩形であり車両上方に開口した箱型形状に形成されている。後部61には、図3および図4に示すように、開口部から外側に突出したフランジ部61aが設けられている。フランジ部61aは、前述した上側部材5の後部51のフランジ部51aとボルト等を用いて接合される。後部61の前端部61bは、車幅方向の中間部分が両端部分よりも車両前方側に突出している。下側部材6の後部61の箱型形状における左右側壁の下部外側には、車両前後方向に延びる補強部材61cが接合されている(図3)。この補強部材61cは、図示しないサイドシル等の車両骨格部材に取り付けられる。
【0022】
下側部材6の前部62は、前述したサスペンションフレーム部42の下部を形成している。下側部材6の前部62(サスペンションフレーム部42の下部)は、車幅方向に延びているとともに、車幅方向両端部が車両前後方向にそれぞれ突出しており、平面視で略H字状に形成されている。前部62の左右両側部62aには、車両前後方向に延び車両上側に突出した側壁がそれぞれ形成されている。側壁の下端から車幅方向外側に延びている部分には、内部部品群7の車体連結部品72aを取り付けるための凹部62bがそれぞれ設けられている。前部62の後端部62cは、車両上側に突出している。また、前部62の前端部62dにも車両上側に突出した壁形状が形成されている。前部62の左右両側部62aには、左右一対のサスペンションアームの下部がそれぞれ取り付けられる。つまり、前述したサスペンションフレーム部42のサスペンションアーム取付箇所42a(図1)は、上側部材5の前部52における左右両側部52aと下側部材6の前部62における左右両側部62aとに対応している。
【0023】
下側部材6における後部61および前部62の間に位置する中間部63は、前述した連結部43の下部を形成している。下側部材6の中間部63(連結部43の下部)は、後部61の前端部61b(前壁)から前部62の後端部62c(後壁)に延び、車幅方向の中間部分が両端部分よりも車両前方側に突出している。
【0024】
本実施形態の連結部43においては、上側部材5の中間部53と、下側部材6の中間部63と、下側部材6の後部61の前端部61bと、下側部材6の前部62の後端部62cと、によって車幅方向に延びる閉断面が形成されている。
【0025】
すなわち、連結部43は、電池ケース部41の前端上部からサスペンションフレーム部42の後端上部に延びている上壁部(上側部材5の中間部53)と、電池ケース部41の前端下部からサスペンションフレーム部42の後端下部に延びている下壁部(下側部材6の中間部63)と、前記上壁部の前端と前記下壁部の前端とを繋いでいる前壁部(下側部材6の前部62の後端部62c)と、前記上壁部の後端と前記下壁部の後端とを繋いでいる後壁部(下側部材6の後部61の前端部61b)と、によって車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0026】
なお、本実施形態では、下側部材6の後部61の前端部61bおよび/または下側部材6の前部62の後端部62cが、本発明の連結部の「立壁部」にも相当している。
【0027】
内部部品群7は、図2図4に示すように、上側部材5の後部51と下側部材6の後部61との間(電池ケース部41)に配置される複数のケースフレーム71a~71dと、上側部材5の前部52と下側部材6の前部62との間(サスペンションフレーム部42)に配置される複数の車体連結部品72a~72cと、上側部材5の中間部53と下側部材6の中間部63との間(連結部43)に配置される複数の隔壁部品73a~73eと、を有している。
【0028】
複数のケースフレーム71a~71dのうち、電池ケース部41の内部における左右両側部に配置されているケースフレーム71aは、車両前後方向にそれぞれ延びている。左右のケースフレーム71aの間には、車幅方向に延びる複数本(ここでは4本)のケースフレーム71bが車両前後方向に間隔を空けて設けられている。また、左右のケースフレーム71aの間で車幅方向中央には、車両前後方向に延びるケースフレーム71cが設けられている。
【0029】
さらに、横方向の4本のケースフレーム71bのうちで最も前側に位置するケースフレーム71bには、車両前方側に延出する3本の短いケースフレーム71dが設けられている(図4)。これらのケースフレーム71a~71dは、電池ケース部41内の所定位置に電池ユニットBを配設するのに利用されるとともに、電池ケース部41の強度および剛性を高めている。
【0030】
複数の車体連結部品72a~72cのうちの車体連結部品72aは、図1図4に示すように、上側部材5の前部52の左右両側部52aに設けられている凹部52bと、下側部材6の前部62の左右両側部62aに設けられている凹部62bとにそれぞれ取り付けられる。左右の車体連結部品72aは、サスペンションフレーム部42の上面部(上側部材5の前部52)から車両上方かつ車幅方向外側に向かって延びている。左右の車体連結部品72aの上端部は、左右のフロントサイドメンバ3の下面部に取り付けられる(図1)。
【0031】
車体連結部品72bは、下側部材6の前部62における前端部62dの左右に接合されており、車両前方かつ車幅方向外側に向かってそれぞれ延びている。車体連結部品72bの前端部は、車体連結アーム8を介してフロントサイドメンバ3の下面部に取り付けられる(図1)。車体連結部品72cは、図4に示すように、下側部材6の前部62における左右両側部62aの車幅方向内側にそれぞれ固定されている。左右の車体連結部品72cは、左右のサスペンションアームの取り付けに利用される。
【0032】
複数の隔壁部品73a~73eは、図3および図4に示すように、概ね車両前後方向に延びる板状の形状を有し、下側部材6における後部61の前端部61bと前部62の後端部62cとの間で車幅方向に間隔を空けて立設されている。換言すると、隔壁部品73a~73eは、連結部43の車幅方向に延びる立壁部(下側部材6の後部61の前端部61bおよび/または下側部材6の前部62の後端部62c)に沿って車幅方向に間隔を空けて設けられている。隔壁部品73a~73eの上端部は、上側部材5の中間部53の傾斜面53aに合わせて、車両後方に向かって車両上方に傾斜している。
【0033】
隔壁部品73a~73eのうちで車幅方向の最も外側に配置されている左右の隔壁部品73aは、電池ケース部41内の左右に配置されているケースフレーム71aの前端部分からサスペンションフレーム部42の各サスペンションアーム取付箇所42aに向かって延びている。つまり、左右の隔壁部品73aは、連結部43の左右の外側壁部を構成しており、各々の後端部分がケースフレーム71aの前端部分に接続されているとともに、各々の前端部分がサスペンションフレーム部42の後端部42bの左右両端に接続されている。
【0034】
また、隔壁部品73a~73eのうちで車幅方向の中央付近に位置する3個の隔壁部品73bは、連結部43において車両前方側に突出した車幅方向の中間部分に設けられている。具体的に、3個の隔壁部品73bは、図4に示すように、下側部材6の後部61における前端部61bの車両前方側に突出した部分から車両前方に向けて延び、それぞれの先端部分が下側部材6の前部62における後端部62cの車幅方向両端部分よりも車両前方側に突出している部分に当接している。3個の隔壁部品73bのうちの1個は、連結部43の車幅方向中央に配置されている。
【0035】
3個の隔壁部品73bに対して車幅方向外側に位置する左右の隔壁部品73cは、下側部材6の後部61における前端部61bの車両前方側に突出した部分から車両前方斜め外側に向けて延び、それぞれの先端部分が下側部材6の前部62における後端部62cの左右両側に位置する湾曲部分に当接している。
【0036】
また、隔壁部品73cに対して車幅方向外側に位置する左右の隔壁部品73dは、下側部材6の後部61における前端部61bの左右両側に位置する湾曲部分から車両前方側に向けて延び、それぞれの先端部分が下側部材6の前部62における後端部62cの左右両側に位置する直線部分に当接している。
【0037】
さらに、隔壁部品73dに対して車幅方向外側に位置する左右の隔壁部品73eは、下側部材6の後部61における前端部61bの左右両側に位置する傾斜部分から車両前方斜め外側に向けて延び、それぞれの先端部分が下側部材6の前部62における後端部62cの左右両端(左右の隔壁部品73aの前端)に当接している。
【0038】
次に、本実施形態に係る下部構造の作用について説明する。
上記のような本実施形態の下部構造体4では、電動車両1の左右のフロントサスペンションからの荷重がサスペンションアームを介してサスペンションフレーム部42の車幅方向両側部(各サスペンションアーム取付箇所42a)にそれぞれ入力される。サスペンションフレーム部42への入力荷重は、連結部43を介して電池ケース部41に伝達されるとともに、サスペンションフレーム部42の左右に設けられている車体連結部品72a,72bおよび車体連結アーム8を介して左右のフロントサイドメンバ3に伝達される。
【0039】
このとき、サスペンションフレーム部42と電池ケース部41との間に、サスペンションフレーム部42の車幅方向の幅および車両上下方向の厚さにわたって延びる連結部43が設けられていることで、上述した従来構造と比べて下部構造体4の剛性が高められている。また、本実施形態の連結部43は、上壁部(上側部材5の中間部53)と下壁部(下側部材6の中間部63)と前壁部(下側部材6の前部62の後端部62c)と後壁部(下側部材6の後部61の前端部61b)とによって車幅方向に延びる閉断面が形成されている。つまり、サスペンションフレーム部42と電池ケース部41を繋ぐ連結部43が閉断面化された一体構造(ボックス構造)になっている。このため、連結部43はより高い剛性を有している。これにより、サスペンションフレーム部42への入力荷重に対して、連結部43が大きな荷重を受け持つことができる。また、連結部43が、曲げ、軸力、せん断で荷重を伝達できるので、より大きい荷重が電池ケース部41に伝達されるようになる。
【0040】
電池ケース部41は、重量物である電池ユニットBを収容可能とするために複数のケースフレーム71a~71dによって補強されており高い剛性を有している。このため、サスペンションフレーム部42から連結部43を介して電池ケース部41に伝えられる荷重は、電池ケース部41で分散されながら左右側壁に設けられている補強部材61cを介してサイドシル等の車両骨格部材に逃がされるようになる。
【0041】
したがって、本実施形態の下部構造体4によれば、左右のフロントサスペンションが車両上下の同じ方向に変位した場合にサスペンションフレーム部42から電池ケース部41にかけて発生し得る上下振動や、左右のフロントサスペンションが車両上下(または車両前後)の異なる方向に変位した場合にサスペンションフレーム部42から電池ケース部41にかけて発生し得るねじれを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の下部構造体4では、電池ケース部41内の左右に配置されているケースフレーム71aの前端部分と連結部43の左右に位置する外側壁部(隔壁部品73a)の後端部分とが接続されている。これにより、サスペンションフレーム部42の車幅方向の幅よりも電池ケース部41の車幅方向の幅が大きい場合に、車両前後方向の軸周りのねじれを有効に抑制することができる。特に、本実施形態においては、連結部43が車幅方向に延びる閉断面を形成し、その上壁部(上側部材5の中間部53)が車両後方に向かって車両上方に傾斜した傾斜面53aを有しているため、電池ケース部41とサスペンションフレーム部42の厚さが異なっている場合にも、前記軸周りのねじれをより有効に抑制することができる。
【0043】
さらに、本実施形態の下部構造体4では、連結部43がサスペンションフレーム部42の車幅方向の幅にわたって車幅方向に延びている立壁部(下側部材6の後部61の前端部61bおよび/または下側部材6の前部62の後端部62c)を有している。これにより、サスペンションフレーム部42における各サスペンションアーム取付箇所42aの斜め前方から入力される荷重に対して連結部43の立壁部が有効に作用するようになり、車両上下方向の軸周りのねじれを有効に抑制することができる。また、連結部43の立壁部が、車両上面視で、車幅方向の中間部分が両端部分よりも前方に突出しているので、サスペンションフレーム部42からの荷重を連結部43経由で電池ケース部41の車幅方向全体に逃がすことができる。
【0044】
また、本実施形態の下部構造体4では、連結部43の左右の外側壁部(隔壁部品73a)の車幅方向内側に、車両前後方向に延びている複数の隔壁部(隔壁部品73b~73e)が設けられていることにより、連結部43の剛性をより高めることができる。加えて、連結部43内の複数の隔壁部が、車幅方向に延びる立壁部に沿って間隔を空けて設けられていることで、立壁部を補強することができるため、車両上下方向の軸周りのねじれをより有効に抑制することが可能である。
【0045】
次に、本実施形態による下部構造体4の他の具体例について説明する。
上述の図3および図4に示した下部構造体4の具体例では、下部構造体4が上側部材5と下側部材6と内部部品群7とを組み合わせて一体的に形成される場合を説明した。これに対して、図5の分解斜視図に示す他の具体例では、電池ケース部41、サスペンションフレーム部42および連結部43’がそれぞれ別個に構成されており、各々を車両前後方向に並べて互いに接合することによって、下部構造体4’が一体的に形成されている。
【0046】
下部構造体4’における電池ケース部41およびサスペンションフレーム部42は、上述した下部構造体4の場合と同様である。下部構造体4’の連結部43’は、図5および図6に示すように、電池ケース部41の前端部41aの形状に合わせた後壁部43aと、サスペンションフレーム部42の後端部42bの形状に合わせた前壁部43bと、を有している。なお、連結部43’の左右両側の外側壁部、および連結部43’内部の複数の隔壁は、上述した下部構造体4における複数の隔壁部品73a~73eと同様である。
【0047】
下部構造体4’における電池ケース部41の前端部41aは、溶接またはボルト等を用いて連結部43’の後壁部43aに連結される。また、下部構造体4’におけるサスペンションフレーム部42の後端部42bも、溶接またはボルト等を用いて連結部43’の前壁部43bに連結される。このような下部構造体4’によっても、上述した下部構造体4の場合と同様な作用効果を得ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、連結部43の上壁部が傾斜面53aを有している一例を示したが、電池ケース部41およびサスペンションフレーム部42それぞれの上下方向の厚さに応じて、連結部43の上壁部または下壁部の形状を適宜に変えてもよい。
【0049】
また、既述の実施形態では、連結部43の内部に複数の隔壁部が配設される構成例を示したが、隔壁部が設けられていない連結部43を適用することも可能である。ただし、連結部43の内部に少なくとも1つの隔壁部が設けられていれば、連結部43の剛性を向上させることができ、下部構造体の上下振動やねじれをより有効に抑制することが可能である。特に、連結部43における車幅方向中央や立壁部の湾曲部分に隔壁部が設けられていれば、連結部43の剛性を効果的に高めることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…電動車両
2…駆動装置
3…フロントサイドメンバ
4,4’…下部構造体
41…電池ケース部
41a…前端部
42…サスペンションフレーム部
42a…サスペンションアーム取付箇所
42b…後端部
43,43’…連結部
43a…後壁部
43b…前壁部
5…上側部材
5a…板状部品
51…後部
51a…フランジ部
51b…前端部
52…前部
52a…左右両側部
52b…凹部
52c…後端部
53…中間部
53a…傾斜面
6…下側部材
6a…板状部品
61…後部
61a…フランジ部
61b…前端部
61c…補強部材
62…前部
62a…左右両側部
62b…凹部
62c…後端部
62d…前端部
63…中間部
7…内部部品群
71a~71d…ケースフレーム
72a~72c…車体連結部品
73a~73e…隔壁部品
B…電池ユニット
P…パワーユニットルーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6