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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/27 20160101AFI20240620BHJP
   B60J 10/50 20160101ALI20240620BHJP
   B60J 10/88 20160101ALI20240620BHJP
【FI】
B60J10/27
B60J10/50
B60J10/88
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021140940
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034615
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌利
(72)【発明者】
【氏名】清水 康広
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-314124(JP,A)
【文献】特開2018-149984(JP,A)
【文献】特開2009-227243(JP,A)
【文献】特開2021-024388(JP,A)
【文献】特開2010-173541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/27
B60J 10/50
B60J 10/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、前記車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、ドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられるガラスランであって、
押出成形部材間を接続する型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域において、
少なくともドアガラスの車両前後の縦縁部の内の一方に対応する縦辺部に関し、
前記車内側シールリップの前記車内側側壁側の一般面のシールリップ先端部、又は、その近傍には、前記車内側側壁側に突出するシールリップ突部が形成され、
前記車内側側壁の車外側面の前記車内側シールリップと前記底壁との間には、前記車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出するサブリップが形成され、
前記ドアガラスとの摺接時に、前記シールリップ突部と前記サブリップが当接し、
前記シールリップ突部は、前記押出成形部材には形成されていないことを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
前記車内側側壁の車外側面の前記車内側シールリップと前記底壁との間には、車外側に突出する側壁突部が形成され、
前記サブリップは、前記側壁突部から前記車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出して形成される請求項1に記載のガラスラン。
【請求項3】
前記シールリップ突部には、突出面が形成され、前記突出面の前記車内側シールリップの前記シールリップ先端部側には、前記車内側側壁側に突出する突出面突部が形成され、
前記ドアガラスが車内側に変位する場合に、
前記車内側シールリップと前記サブリップ間は、前記サブリップのサブリップ先端部と前記車内側シールリップ突部の前記突出面突部を除く前記突出面が当接する第1支持状態と、
前記サブリップの車外側面と、前記突出面突部が当接する第2支持状態とに変化可能な構成を有する請求項1又は請求項2に記載のガラスラン。
【請求項4】
前記シールリップ突部には、前記車内側シールリップの前記一般面との間に連結面を有する突出面が形成され、
前記ドアガラスが車内側に変位する場合に、
前記車内側シールリップと前記サブリップ間は、前記サブリップのサブリップ先端部又は前記サブリップの車外側面と、前記連結面と前記突出面の角部が当接する第1支持状態と、
前記サブリップの車外側面と、前記突出面が当接する第2支持状態とに変化可能な構成を有する請求項1又は請求項2に記載のガラスラン。
【請求項6】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、前記車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、ドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられるガラスランであって、
押出成形部材間を接続する型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域において、
少なくともドアガラスの車両前後の縦縁部の内の一方に対応する縦辺部に関し、
前記車内側シールリップの前記車内側側壁側の一般面のシールリップ先端部、又は、その近傍には、前記車内側側壁側に突出するシールリップ突部が形成され、
前記車内側側壁の車外側面の前記車内側シールリップと前記底壁との間には、車外側に突出する側壁突部が形成され、
前記ドアガラスとの摺接時に、前記シールリップ突部と前記側壁突部が当接することを特徴とするガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両のドアに形成されたドアフレームに取付けられるガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには、ドア本体の上部にドアフレームを設け、ドアフレームの内周縁に形成されたドアフレーム溝部にチャンネル状をなすガラスランを嵌入係止し、ガラスランの車内外のガラスシール部によりドアガラスの昇降を案内するとともに、車室内外をシールするようになっている。
【0003】
上記のガラスランは、底壁と、その車外側に位置する車外側側壁と、車内側に位置する車内側側壁を基本骨格(本体部)に構成されている。そして、両側壁部の先端又はその近傍からそれぞれ本体部の内側に向けて延びる車外側シールリップ及び車内側シールリップを備えている。さらに、ガラスランは、本体部がドアフレームの内周に沿って設けられたドアフレーム溝部(取付部)に取付けられ、両シールリップによって、昇降するドアガラスの内外面の周縁部が挟まれるようにしてシールされる。又、ガラスランは、ドアガラスの周縁部を支持して、ドアガラスの昇降を案内したり、ドアガラスのがたつきを抑制したりする役割をも担っている。
【0004】
ところで、ドアガラスを全閉位置よりも少し下方に位置させた状態では、ドアガラスが車内方向に変位し易くなる。この状態で自動車が悪路を走行する等して、ドアガラスが車内外方向に振動した場合には、ドアガラスとシールリップとが瞬間的に離間することがあり、この離間状態から、ドアガラスとシールリップとが再度接触し、離間と接触が繰り返された場合に、接触に起因する異音(打音)が発生するおそれがある。特に、シールリップが経年劣化し、弾性力が低下した場合には、ドアガラスが振動した場合にシールリップがドアガラスから離間し易くなり、異音が発生する問題がより顕著なものになる。
【0005】
上記問題を解決する技術として、例えば、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1のガラスランの構造について、図1図12に基づいて説明する。図1は自動車の左側のフロントドア100を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア100を構成するドア本体210の上部には、ドアフレーム320が形成されている。このドアフレーム320とドア本体210の上端縁とにより窓開口が形成されている。窓開口の内周縁及びドア本体210の内部にはガラスラン110が取付けられ、ドアガラス600の昇降動作を案内するようになっている。
【0006】
図12は、ドアフレーム320の縦枠部の垂直断面(図1のY-Y断面)を示す。なお、この部分のガラスラン110は通常押出成形法によって成形されている。ガラスラン110は、底壁200、車外側側壁300及び車内側側壁400を基本骨格としてチャンネル状(断面コ字形状)に形成されている。車外側側壁300にはドアガラス600の表面(車外側)に接触される車外側シールリップ310が形成され、車内側側壁400の先端にはドアガラス600の裏面(車内側)に接触される車内側シールリップ410が形成されている。又、車内側シールリップ410と底壁200との間には、車内側シールリップ410とは反対方向に突出したサブリップ430が車外側に向けて形成されている。
【0007】
そして、車内側シールリップ410は、その裏面において突部440を備えることにより、当該裏面の一般面よりも突出した位置に突出面450を有する。ドアガラス600が基準位置から車内側に変位する場合に、車内側側壁400から延びるサブリップ430の先端部と、突出面450とが当接して摺動する第1支持状態と、サブリップ430の先端部が突出面450から外れ、サブリップ430のうち先端部よりも付根側の部位が突部440と当接する第2支持状態とに状態変化可能に構成されている。
【0008】
この結果、車内側シールリップ410の裏面側に突部440が設けられ、その部位の車内側シールリップ410が厚肉とされるとともに、車内側側壁400から延出して突部440の突出面450と当接可能なサブリップ430が設けられているので、車内側シールリップ410がドアガラス600に圧接する力が高められ、ドアガラス600が振動した場合であっても、車内側シールリップ410がドアガラス600から瞬間的に離間してしまうといった事態を防止することができ、例えば、車内側シールリップ410と、ドアガラス600が離間した状態から接触した状態とされた場合に、接触に起因する異音(打音)が発生してしまうといった事態を防止することができる。
【0009】
なお、特許文献1において、第1支持状態と第2支持状態における車内側シールリップ410がドアガラス600に圧接する力、すなわち、ドアガラス600に対する車内側シールリップ410の反力については、「ドアガラスが基準位置から車内側に大きく変位する程、ドアガラスと車内側シールリップとが強く圧接し、車内側シールリップの反力が増大することとなるが、第1支持状態から第2支持状態に状態変化した際に、突出面におけるサブリップの先端部の支持が解消されるため、車内側シールリップの反力の上昇が一時的に抑制される。」(段落0014)と記載されているように、第1支持状態の方が第2支持状態より大きいことを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-149984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の特許文献1の技術では、車内側シールリップ410の裏面において突出面450を有する突部440が形成されているのは、上記の通り押出成形部である。通常ガラスランの押出成形部ではその断面形状は変化しない。したがって、特許文献1では、縦辺部全体に突部440が形成され、ドアガラス600との摺接時には、突部440とサブリップ430が当接する場合があるので、ドアガラス600に対する車内側シールリップ410からの反力が増大し、その結果、摺動性が悪化する問題が依然として残っている。又、縦辺部全体に突部440が形成されるので、ガラスランの重量が増加する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのため、本発明は、ドアガラスの摺動性に悪影響を及ぼすことなく、且つ重量増を極力抑制し、ドアガラスに対する反力を増大させる構造を押出成形部材間を接続する型成形部に形成し、ドアガラスを全閉位置よりも少し下方に位置させた状態における異音発生を経年劣化時を含んで防止可能なガラスランを提供するものである。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、ドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられるガラスランであって、押出成形部材間を接続する型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域において、少なくともドアガラスの車両前後の縦縁部の内の一方に対応する縦辺部に関し、車内側シールリップの車内側側壁側の一般面のシールリップ先端部、又は、その近傍には、車内側側壁側に突出するシールリップ突部が形成され、車内側側壁の車外側面の車内側シールリップと底壁との間には、車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出するサブリップが形成され、ドアガラスとの摺接時に、シールリップ突部とサブリップが当接し、シールリップ突部は、押出成形部材には形成されていないことを特徴とするガラスランである。
【0014】
ドアガラスを全閉位置よりも少し下方に位置させ、ドアガラスが車内外方向に振動した時に、ドアガラスと車内側シールリップとが離間と接触を繰り返し、接触に起因する異音(打音)の発生する領域は、押出成形部材間を接続する型成形時の型成形部、又は、型成形部及びその近傍において観測される場合が多い。請求項1の本発明では、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域において、車内側シールリップには、その車内側側壁側の一般面のシールリップ先端部、又は、その近傍から車内側側壁側に突出するシールリップ突部が形成されており、シールリップ突部とサブリップが当接するので、ドアガラスが車内側に変位する場合に、車内側シールリップがサブリップを車内側側壁側に強く押し付ける。その結果、サブリップからの車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0015】
又、シールリップ突部は、型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域に形成され、押出成形部材には形成されていないので、シールリップ突部を押出成形部全域に形成する場合に比較してガラスラン全体の重量増を抑制することができる。
【0016】
さらに、上記構造は、型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域に形成されているので、押出成形部における摺動性に影響を与えることもない。
【0017】
又、押出成形時に、シールリップ突部及びサブリップを押出成形部材内に形成することに伴う押出成形部材の有する他の機能への影響を考慮・検討する必要がなく、開発時間の短縮を図ることができる。
【0018】
なお、「型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域」とは、型成形において押出成形部材間を接続する場合、成形金型は、型成形部と押出成形部に跨って覆うことが多く、成形時に、型成形の断面形状が型成形部のみならず、型成形部に接続される押出成形部まで反映される領域を意味する。
【0019】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、車内側側壁の車外側面の車内側シールリップと底壁との間には、車外側に突出する側壁突部が形成され、サブリップは、側壁突部から車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出して形成されるガラスランである。
【0020】
経年劣化は、車内側シールリップのみならずサブリップにも生じる。したがって、サブリップの劣化による車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)が低下することにより、車内側シールリップがドアガラスら離間し、異音が再び発生する問題が懸念される。
【0021】
請求項2の本発明では、車内側側壁の車外側面の車内側シールリップと底壁との間には、車外側に突出する側壁突部が形成され、サブリップは、側壁突部から車内側シールリップの車内側面方向に斜めに突出して形成されるので、サブリップの長さを短くすることができ、サブリップの経年劣化時においても車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)の低下を抑制することができ、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が再度発生することを防止することができる。
【0022】
又、側壁突部は、車内側側壁の車内側シールリップと底壁との間の車外側面に形成されているので、車内側側壁全体を厚く形成する場合に比較してガラスラン全体の重量増を極力抑えることができる。
【0023】
さらに、上記構造を、押出成形部材間を接続する型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域に形成するので、押出成形部における摺動性に影響を与えることもない。又、押出成形時に、シールリップ突部、側壁突部及びサブリップを押出成形部材内に形成することに伴う押出成形部材の有する他の機能への影響を考慮・検討する必要がなく、開発時間の短縮を図ることができる。
【0024】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、シールリップ突部には、突出面が形成され、突出面の車内側シールリップのシールリップ先端部側には、車内側側壁側に突出する突出面突部が形成され、ドアガラスが車内側に変位する場合に、車内側シールリップとサブリップ間は、サブリップのサブリップ先端部と車内側シールリップ突部の突出面突部を除く突出面が当接する第1支持状態と、サブリップの車外側面と、突出面突部が当接する第2支持状態とに変化可能な構成を有するガラスランである。
【0025】
請求項3の本発明では、シールリップ突部には、突出面が形成され、突出面の車内側シールリップのシールリップ先端部側には、車内側側壁側に突出する突出面突部が形成され、ドアガラスが車内側に変位する場合に、サブリップ先端部と車内側シールリップ突部の突出面突部を除く突出面が当接する第1支持状態となるので、突出面がサブリップを車内側に押圧する。その結果、サブリップからのシールリップ突部を介して車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0026】
又、さらにドアガラスが車内側に変位する場合には、サブリップの車外側面と、突出面突部が当接する第2支持状態となるので、サブリップを車内側に押し付ける力は、第1支持状態より強くなる。その結果、サブリップからの車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0027】
請求項4の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、シールリップ突部には、車内側シールリップの一般面との間に連結面を有する突出面が形成され、ドアガラスが車内側に変位する場合に、車内側シールリップとサブリップ間は、サブリップのサブリップ先端部又はサブリップの車外側面と、連結面と突出面の角部が当接する第1支持状態と、 サブリップの車外側面と、突出面が当接する第2支持状態とに変化可能な構成を有するガラスランである。
【0028】
請求項4の本発明では、シールリップ突部には、車内側シールリップの一般面との間に連結面を有する突出面が形成され、ドアガラスが車内側に変位する場合に、車内側シールリップとサブリップ間は、サブリップのサブリップ先端部又はサブリップの車外側面と、連結面と突出面の角部が当接する第1支持状態となるので、連結面と突出面の角部がサブリップを車内側に押圧する。その結果、サブリップからのシールリップ突部を介して車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0029】
又、さらにドアガラスが車内側に変位する場合には、サブリップの車外側面と、突出面が当接する第2支持状態となるので、サブリップを車内側側壁側に押し付ける力は、第1支持状態より強くなる。その結果、サブリップからの車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0030】
請求項5の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、ドアガラスが車内側に変位する場合に、車内側シールリップとサブリップ間は、サブリップのサブリップ先端部と車内側シールリップの一般面が当接する第1支持状態と、サブリップ先端部と車内側シールリップの一般面が当接するとともに、サブリップの車外側面とシールリップ突部が当接する第2支持状態とに変化可能な構成を有するガラスランである。
【0031】
請求項5の本発明では、ドアガラスが車内側に変位する場合に、車内側シールリップとサブリップ間は、サブリップのサブリップ先端部と車内側シールリップの一般面が当接する第1支持状態となるので、車内側シールリップの一般面がサブリップを車内側に押圧する。その結果、サブリップから車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0032】
又、さらにドアガラスが車内側に変位する場合には、サブリップ先端部と車内側シールリップの一般面が当接するとともに、サブリップの車外側面とシールリップ突部が当接する第2支持状態となるので、サブリップを車内側側壁側に押し付ける力は、第1支持状態より強くなる。その結果、サブリップからの車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0033】
請求項6の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、ドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられるガラスランであって、押出成形部材間を接続する型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域において、少なくともドアガラスの車両前後の縦縁部の内の一方に対応する縦辺部に関し、車内側シールリップの車内側側壁側の一般面のシールリップ先端部、又は、その近傍には、前記車内側側壁側に突出するシールリップ突部が形成され、車内側側壁の車外側面の車内側シールリップと底壁との間には、車外側に突出する側壁突部が形成され、ドアガラスとの摺接時に、シールリップ突部と側壁突部が当接することを特徴とするガラスランである。
【0034】
請求項6の本発明では、車内側シールリップの車内側側壁側の一般面の先端部、又は、その近傍には、車内側側壁側に突出するシールリップ突部が形成され、車内側側壁の車外側面の車内側シールリップと底壁との間には、車外側に突出する側壁突部が形成され、ドアガラスとの摺接時に、シールリップ突部と側壁突部が当接するので、特にドアガラスが厚い場合には、サブリップを形成することなく、ドアガラスとの摺接時に、シールリップ突部と側壁突部が当接することにより、ドアガラスが車内側に変位する場合に、シールリップをドアガラス側に強く押し付ける。その結果、ドアガラスに対する車内側シールリップの反力(押圧力)が増大し、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0035】
又、上記構造を、押出成形部材間を接続する型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域に形成するので、押出成形部における摺動性に影響を与えることもない。
【0036】
又、シールリップ突部及び側壁突部は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域に形成されているので、シールリップ突部及び側壁突部を押出成形部全域に形成する場合に比較してガラスラン全体の重量増を抑制することができる。
【0037】
又、押出成形時に、シールリップ突部、側壁突部を押出成形部材内に形成することに伴う押出成形部材の有する他の機能への影響を考慮・検討する必要がなく、開発時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0038】
型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域において、車内側シールリップには、その車内側側壁側の一般面のシールリップ先端部、又は、その近傍から車内側側壁側に突出するシールリップ突部が形成されており、シールリップ突部とサブリップが当接するので、ドアガラスが車内側に変位する場合に、サブリップを車内側側壁側に強く押し付ける。その結果、サブリップからの車内側シールリップ裏面側への反力(押圧力)により、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0039】
又、シールリップ突部は、型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域に形成され、押出成形部材には形成されていないので、シールリップ突部を押出成形部全域に形成する場合に比較してガラスラン全体の重量増を抑制することができる。
【0040】
さらに、上記構造は、型成形時の型成形部、又は、型成形時の型成形部及び型成形部に接続される押出成形部材に連続する領域に形成されているので、押出成形部における摺動性に影響を与えることもない。
【0041】
又、押出成形時に、シールリップ突部及びサブリップを押出成形部材内に形成することに伴う押出成形部材の有する他の機能への影響を考慮・検討する必要がなく、開発時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】自動車用ドアを車外側から見た正面図である。
図2】(a)は、図1のドアフレームに用いたガラスランを示す正面図であり、(b)は、(a)のX部拡大図である。
図3】本発明の第1の実施形態のガラスランにおけるドアガラスが車内側に変位した時のドアガラスと、車内側シールリップと、サブリップとの関係を説明する断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態のガラスランにおけるドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明する第1支持状態の断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態のガラスランにおけるドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明する第2支持状態の断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態のガラスランにおけるドアガラスの変位とドアガラスの車内側への荷重との関係を示すグラフである。
図7】本発明の第3の実施形態のガラスランにおけるドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明する第1支持状態の断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図8】本発明の第3の実施形態のガラスランにおけるドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明する第2支持状態の断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図9】本発明の第4の実施形態のガラスランにおけるドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明する第1支持状態の断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図10】本発明の第4の実施形態のガラスランにおけるドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明する第2支持状態の断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図11】本発明の第5の実施形態のガラスランにおけるドアガラスが車内側に変位した時のドアガラスと、車内側シールリップと、側壁突部との関係を説明する断面図であり、図2(b)のA-A線と対応する断面図である。
図12】従来のガラスランの取付構造を示す断面図であり、図1のY-Y線と対応する断面図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の第1の実施形態について図1から図3に基づいて説明する。図1は自動車の左側のフロントドア1を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア1を構成するドア本体2の上部には、ドアフレーム3が装着されている。このドアフレーム3とドア本体2の上端縁とにより窓開口が形成されている。窓開口の内周縁及びドア本体2の内部にはガラスラン10が取付られ、ドアガラス4の昇降動作を案内するようになっている。なお、本発明は、左側のフロントドア1のみならず、右側のフロントドア、左右のリヤドアにも適用可能である。又、ドアガラスの昇降するスライドドアにも適用可能である。
【0044】
図2(a)は、図1のガラスラン10のみを簡略化して車外側からみた正面図である。ガラスラン10はドアフレーム3の横枠部に対応する第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12(前側の縦辺部)と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13(後側の縦辺部)とにより構成されている。第1の押出成形部11の前端部は第2の押出成形部12の上端部に対し第1の型成形部14により接続されている。又、第1の押出成形部11の後端部は第3の押出成形部13の上端部に対し第2の型成形部15により接続されている。
【0045】
ここで、ドアガラス4とガラスラン10との間における、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態で自動車が悪路を走行する等して、ドアガラス4が車内外方向に振動する場合について説明する。ドアガラス4が最も上まで上昇し、完全に閉じられた場合は、ドアガラス4は、ガラスラン10の第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13に当接して3方向から支持されているので、悪路を走行する等してもドアガラス4は車内外方向に振動しない。
【0046】
ドアガラス4が少し下がり、ドアガラス4と第1の押出成形部11との当接が解除されるとドアガラス4は、主にフロントドア1の前側の縦枠部に対応するガラスラン10の第1の型成形部14、第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第2の型成形部15、第3の押出成形部13に当接による縦2方向の支持になる。この時、自動車が悪路を走行する等したときに、ドアガラス4が車内外方向に振動し、上記の異音の問題が発生する場合がある。
【0047】
尚、ドアガラス4がさらに下がると、ドアガラス4とガラスラン10との関係では、依然としてフロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13に当接による2方向の支持のままであるが、ドアガラス4はフロントドア1のベルトライン6(図1)に取付けられている、例えば、ベルトラインウェザストリップに支持されることにより、実質的に3方向で支持されるようになる。したがって、この段階では、悪路を走行する等してもドアガラス4の車内外方向への振動は極めて少なくなる。
【0048】
図3は、図2(b)のA-A線と対応する断面図であり、第2の型成形部15における後側の縦枠部に対応する第3の押出成形部13との連結部近傍である。ガラスラン10は、底壁20、車外側側壁30及び車内側側壁40を基本骨格とし、チャンネル状(断面が略コ字形)に形成されている。
【0049】
底壁20は、略板状に形成され、底壁20の内面(ドアガラス4との当接側)には、複数本の底壁凹部22が長手方向に連続して平行に形成されている。そして、ドアフレーム溝部5側に形成された当接リップ23がドアフレーム溝部5に当接している。
【0050】
車外側側壁30の車外側には、底壁20との連結部近傍と車外側側壁30の先端部方向に、ドアフレーム溝部5に係止される第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34が形成され、第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34によって、屈曲して形成されているドアフレーム溝部5を保持している。
【0051】
車外側側壁30の車内側には、ドアガラス4に接触される車外側シールリップ31が底壁20側に向けて形成され、車外側側壁30の先端部分には、車外側シールリップ31とは反対側に向けて車外側カバーリップ32が形成されている。車外側カバーリップ32は車外側シールリップ31とともにドアガラス4の車外側面に当接し、雨水や埃、騒音の侵入を防止し、シール性を向上させることができる。
【0052】
又、車外側カバーリップ32の付け根部分には、車外側に向けて係止部35が形成され、ピラーガーニッシュ7の端部を固定するとともにピラーガーニッシュ7とドアガラス4の表面との間の隙間をシールしている。
【0053】
一方、車内側側壁40の車外側には、車内側側壁40の先端部と底壁20との間から車外側且つ底壁20側に延設され、車外側の側面がドアガラス4に摺接する車内側シールリップ41が形成されている。又、車内側シールリップ41のシールリップ先端部41aより少し車内側シールリップ41の付根部41b側には、車内側シールリップ41の車内側側壁40側の一般面42から突出するシールリップ突部47が形成されている。
【0054】
又、車内側側壁40の車内側シールリップ41と底壁20との間には、車内側シールリップ41とは反対方向に突出したサブリップ43が車外側に向けて形成されている。サブリップ43は、肉厚がほぼ同じであり、先端部分が弧形状に形成されている。なお、肉厚が同じではなく、車内側側壁40側が厚く先端に向かって細くなる形状であってもよい。
【0055】
又、車内側側壁40の車内側には、底壁20との連結部近傍に、円弧状の湾曲部を有するドアフレーム溝部5の湾曲部に係止される車内側第1保持リップ44と、車内側第2保持リップ45が形成され、両保持リップ44、45の間には当接リップ49が形成されている。両保持リップ44、45と当接リップ49によって、車内側側壁40が湾曲したドアフレーム溝部5に保持されている。
【0056】
又、車内側側壁40の先端の車内側シールリップ41の反対側(車内側)には、車内側カバーリップ48が形成されている。車内側カバーリップ48は、ドアフレーム溝部5の先端に当接し、雨水や埃、騒音の侵入を防止し、シール性を向上させることができる。
【0057】
なお図3では、シールリップ突部47が、車内側シールリップ41及びサブリップ43と異なる表示で描かれているが、これは、上記部材の存在を強調するためであり、例えば、異なる材料で形成することを意味するものではない。したがって、車内側シールリップ41と同じ材料で形成してもよく、同じ材料でも、例えば、硬度が異なるようにしてもよく、勿論、異なる物質で形成してもよい。
【0058】
図3は、ドアガラス4が少し下がり、車内側に変位した時の車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態を示している。図3から明らかなように、シールリップ突部47がサブリップ43を車内側に押圧する形で当接する。
【0059】
その結果、サブリップ43には車外側に反力が発生し、その反力は、シールリップ突部47を含む車内側シールリップ41を介してドアガラス4の車内側面を車外側に押圧するので、ドアガラス4に対する反力が増大し、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0060】
なお、ドアガラス4が、図3よりさらに車内側に変位した場合は、サブリップ43はさらに車内側に撓んで変形し、車内側シールリップ41への反力は増大する。
【0061】
次に、第2の実施形態について、図4から図6に基づいて説明する。図4に示すように、車外側側壁30の車内側には、ドアガラス4に接触される車外側シールリップ31が底壁20側に向けて形成され、車外側側壁30の先端部分には、車外側シールリップ31とは反対側に向けて車外側カバーリップ32が形成されている。
【0062】
又、車外側側壁30の車外側には、円弧状の湾曲部を有するドアフレーム溝部5に係止される車外側第1保持リブ36、車外側第2保持リブ37が形成されている。さらに、車外側シールリップ31及び車外側カバーリップ32の付け根部分には、車外側に向けて係止部35が形成され、ドアフレーム溝部5の端部に固定されている。
【0063】
一方、車内側側壁40の先端にはドアガラス4に接触される車内側シールリップ41が底壁20側に向けて形成されている。又、車内側側壁40の車内側には、底壁20との連結部近傍に、円弧状の湾曲部を有するドアフレーム溝部5の湾曲部に係止される車内側第1保持リップ44と、車内側第2保持リップ45が形成されている。
【0064】
車内側シールリップ41のシールリップ先端部41aより少し車内側シールリップ41の付根部41b側には、車内側シールリップ41の車内側側壁40側の一般面42から突出するシールリップ突部47が形成されている。シールリップ突部47には、車内側側壁40側に突出面47aが形成され、さらに突出面47aの車内側シールリップ41のシールリップ先端部41a側には、車内側側壁40側に突出する弧形状の突出面突部47bが形成されている。なお、突出面突部47bは弧形状には限定されず、例えば、三角形や台形等の他の形状であってもよい。
【0065】
車内側側壁40の車内側シールリップ41の付根部41bと底壁20との間の車外側面には、車外側に短辺を有して車外側に突出する略台形形状の側壁突部46が形成されている。
【0066】
又、略台形形状の側壁突部46の短辺の底壁20側先端から車内側シールリップ41の車内側面方向に斜めに突出するサブリップ43が形成されている。したがって、サブリップ43は、従来に比較してその長さが短く形成されている。サブリップ43は、肉厚がほぼ同じであり、先端部分が弧形状に形成されている。なお、肉厚が同じではなく、車内側側壁40側が厚く先端に向かって細くなる形状であってもよい。
【0067】
なお、図4において、サブリップ43は、略台形形状の側壁突部46の短辺の底壁20側先端から車内側シールリップ41の車内側面方向に斜めに突出して形成され、略台形形状の側壁突部46の底壁20側の斜面(図4の右側斜面)が従来のサブリップ43の車外側面を兼ねているように描かれているが、これに限定されず、略台形形状の側壁突部46の底壁20側の斜面とサブリップ43の車外側面とは角度を異にしてもよく、略台形形状の側壁突部46の短辺の底壁20側先端以外から突出して形成してもよい。
【0068】
又、図4図4以降の図においても同様)では、シールリップ突部47と側壁突部46が、車内側シールリップ41、車内側側壁40及びサブリップ43と異なる表示で描かれているが、これは、上記部材の存在を強調するためであり、例えば、異なる材料で形成することを意味するものではない。したがって、車内側シールリップ41や車内側側壁40と同じ材料で形成してもよく、同じ材料でも、例えば、硬度が異なるようにしてもよく、勿論、異なる物質で形成してもよい。
【0069】
車内側側壁40の先端の車内側シールリップ41の反対側(車内側)には、車内側カバーリップ48が形成されている。なお、図では、車内側カバーリップ48は、車内側シールリップ41から連続する形状に描かれているが、これには限定されない。
【0070】
図4は、ドアガラス4が少し下がり、車内側に変位した時の第1支持状態の車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態を示している。なお、第1支持状態における車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態は、ドアガラス4が完全に閉じられた時の車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態とあまり変わらない。
【0071】
図4から明らかなように、第1支持状態では、サブリップ43のサブリップ先端部43aは、車内側シールリップ41のシールリップ突部47の突出面47aに当接し、サブリップ43は車内側側壁40方向に押圧されて変形する。その結果、サブリップ43には反力が発生し、その反力は、シールリップ突部47を含む車内側シールリップ41を介してドアガラス4の車内側面を車外側に押圧する。
【0072】
上記の通り、サブリップ43は、略台形形状の側壁突部46の短辺の底壁20側先端から車内側シールリップ41の車内側面方向に斜めに突出して形成され、従来に比較してその長さが短く形成されているので、サブリップ43の経年劣化時においても車内側シールリップ41裏面側への反力(押圧力)の低下を抑制することができ、車内側シールリップ41がドアガラス4から離間し、異音が再度発生することを防止することができる。
【0073】
図5は、ドアガラス4が、図4から少し下がる等、ドアガラス4がさらに車内側に変位した時の第2支持状態のシールリップ突部47とサブリップ43の当接状態を示している。図5から明らかなように、ドアガラス4がさらに車内側に変位すると車内側シールリップ41もドアガラス4に追従して車内側に変形し、サブリップ43のサブリップ先端部43aは、シールリップ突部47の突出面47aを車内側シールリップ41の付根部41b側に摺動する。
【0074】
サブリップ43の車外側面には、車内側シールリップ41の変形に伴い、突出面47aの車内側シールリップ41のシールリップ先端部41a側に車内側側壁側に突出して形成されている突出面突部47bが当接し、サブリップ43をさらに車内側側壁40方向に押圧して変形させる。その結果、サブリップ43への押圧荷重が増大する。
【0075】
図6は、ガラスラン10におけるドアガラス4の変位とドアガラス4の車内側への荷重との関係を示すグラフである。図6におけるAの領域が、第1支持状態であり、Bの領域が、第2支持状態である。図6から明らかなように、ドアガラス4に対する反力は、第2支持状態の方が第1支持状態に比較して大きくなっている。
【0076】
したがって、サブリップ43の反力によるドアガラス4の車内側への変位とドアガラス4の車内側への押圧荷重は、サブリップ43とシールリップ突部47の突出面47aとの当接による第1支持状態と、サブリップ43とシールリップ突部47の突出面突部47bとの当接による第2支持状態によって発生するので、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態、すなわち、ドアガラス4が車内側に変位した状態で悪路を走行する等して、ドアガラス4が振動した場合であっても、車内側シールリップ41がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
【0077】
又、車内側側壁40の車内側シールリップ41の付根部41bと底壁20との間の車外側面には、車外側に短辺を有して車外側に突出する略台形形状の側壁突部46が形成され、側壁突部46から車内側シールリップ41の車内側面方向に斜めに突出するサブリップ43が形成されているので、サブリップ43が経年劣化した場合であっても車内側シールリップ41の裏面側への反力(押圧力)の低下を抑えることができ、車内側シールリップ 41がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
【0078】
次に、第3の実施形態について、図7及び図8に基づいて説明する。本第の実施形態の上記第1の実施形態との相違点は、第1に、車外側側壁30側は、第1の実施形態と同じである。
【0079】
第2に、車内側側壁40側において、車内側シールリップ41より先端側に、車内側シールリップ41と同じ方向に向けて第2車内側シールリップ50が形成されている。第2車内側シールリップ50は車内側シールリップ41とともにドアガラス4の車内側面を2重にシールしている。
【0080】
第3に、シールリップ突部47は、車内側シールリップ41のシールリップ先端部41aに形成されている。なお、シールリップ突部47の突出面47aには、突出面突部47bは形成されていない点も相違点となるが、突出面突部47bを形成してもよい。
【0081】
ここで、第1と第2の相違点は、ガラスラン10における基本骨格に関係するバリエーションであり、本発明とは直接関係していないので、以下では、第3の相違点について詳細に説明する。
【0082】
図7は、ドアガラス4が少し下がり、車内側に変位した時の第1支持状態の車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態を示している。サブリップ43のサブリップ先端部43aは、車内側シールリップ41のシールリップ突部47の連結面47cと突出面47aの角部に当接し、サブリップ43は車内側側壁40方向に押圧されて変形する。その結果、サブリップ43には反力が発生し、その反力は、シールリップ突部47を含む車内側シールリップ41を介してドアガラス4の車内側面を車外側に押圧する。
【0083】
図7からドアガラス4がさらに車内側に変位すると車内側シールリップ41もドアガラス4に追従して車内側に変形し、サブリップ43のサブリップ先端部43aは、シールリップ突部47の連結面47cと突出面47aの角部を車内側シールリップ41の付根部41b側に摺動する。
【0084】
図8は、図7からドアガラス4がさらに少し下がる等、車内側にさらに変位した時の第2支持状態の車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態を示している。サブリップ43の車外側面は、シールリップ突部47の突出面47aに当接し、サブリップ43は車内側側壁40方向に押圧されてさらに変形する。その結果、サブリップ43への押圧荷重は第2の実施形態の場合と同様に増大する。
【0085】
したがって、サブリップ43の反力によるドアガラス4の車内側への変位とドアガラス4の車内側への押圧荷重は、サブリップ43とシールリップ突部47の連結面47cと突出面47aの角部との当接による第1支持状態と、サブリップ43とシールリップ突部47の突出面47aとの当接による第2支持状態によって発生するので、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態、すなわち、ドアガラス4が車内側に変位した状態で悪路を走行する等して、ドアガラス4が振動した場合であっても、車内側シールリッ プ41がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
【0086】
又、車内側側壁40の車内側シールリップ41の付根部41bと底壁20との間の車外側面には、車外側に短辺を有して車外側に突出する略台形形状の側壁突部46が形成され、側壁突部46から車内側シールリップ41の車内側面方向に斜めに突出するサブリップ43が形成されているので、サブリップ43の長さは従来に比べて短くなり、サブリップ43が経年劣化した場合であっても車内側シールリップ41の裏面側への反力(押圧力)の低下を抑えることができ、車内側シールリップ41がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
【0087】
次に、第4の実施形態について、図9図10に基づいて説明する。本第4の実施形態における上記第3の実施形態との相違点は、シールリップ突部47には、平面状の突出面47aが存在せず、三角形状になっている点にある。なお、シールリップ突部47は弧形状であってもよい。
【0088】
図9は、ドアガラス4が少し下がり、車内側に変位した時の第1支持状態の車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態を示している。図9から明らかなように、第1支持状態では、サブリップ43のサブリップ先端部43aは、車内側シールリップ41の一般面42に当接し、サブリップ43は車内側側壁40方向に押圧されて変形する。その結果、サブリップ43には反力が発生し、その反力は、車内側シールリップ41を介してドアガラス4の車内側面を車外側に押圧する。
【0089】
図10は、図9からドアガラス4がさらに少し下がる等、車内側にさらに変位した時の第2支持状態の車内側シールリップ41とサブリップ43の当接状態を示している。ドアガラス4がさらに車内側に変位すると車内側シールリップ41もドアガラス4に追従して車内側に変形し、サブリップ43のサブリップ先端部43aは、車内側シールリップ41の一般面42を車内側シールリップ41の付根部41b側に摺動する。
【0090】
第2支持状態では、サブリップ43の車外側面は、シールリップ突部47に当接し、サブリップ43は車内側側壁40方向に押圧されてさらに変形する。その結果、サブリップ43への押圧荷重は第2の実施形態の場合と同様に増大する。
【0091】
したがって、サブリップ43の反力によるドアガラス4の車内側への変位とドアガラス4の車内側への押圧荷重は、サブリップ43と車内側シールリップ41の一般面42との当接による第1支持状態と、サブリップ43と、車内側シールリップ41の一般面42とシールリップ突部47との当接による第2支持状態によって発生するので、ドアガラス4を全閉位置よりも少し下方に位置させた状態、すなわち、ドアガラス4が車内側に変位した状態で悪路を走行する等して、ドアガラス4が振動した場合であっても、車内側シール リップ41がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
【0092】
又、車内側側壁40の車内側シールリップ41の付根部41bと底壁20との間の車外側面には、車外側に短辺を有して車外側に突出する略台形形状の側壁突部46が形成され、側壁突部46から車内側シールリップ41の車内側面方向に斜めに突出するサブリップ43が形成されているので、サブリップ43の長さは従来に比べて短くなり、サブリップ43が経年劣化した場合であっても車内側シールリップ41の裏面側への反力(押圧力)の低下を抑えることができ、車内側シールリップ41がドアガラス4から離間することを防止し、異音の発生を防止することができる。
【0093】
次に、第5の実施形態について、図11に基づいて説明する。本第5の実施形態における上記第2の実施形態との相違点は、サブリップ43が存在しない点にある。風切音などの車室外で発生する音が車体を透過して車室内に届くことを防止し、遮音性を向上するために、ドアガラス4の板厚を増加させる対策を施す場合がある。本第5の実施形態は、ドアガラス4の板厚が厚い場合に好適である。
【0094】
図11は、ドアガラス4が少し下がり、車内側に変位した時の車内側シールリップ41のシールリップ突部47と側壁突部46の当接状態を示している。図11から明らかなように、ドアガラス4が少し下がり、車内側に変位すると、車内側シールリップ41のシールリップ突部47が側壁突部46に強く押されて変形する。
【0095】
その結果、車内側シールリップ41には、シールリップ突部47を介して反力が発生し、その反力は、車内側シールリップ41を介してドアガラス4の車内側面を車外側に押圧するので、車内側シールリップがドアガラスから離間し、異音が発生することを防止することができる。
【0096】
なお、図11において、側壁突部46は、車外側に短辺を有して車外側に突出する略台形形状となっているが、略台形には限定されず、例えば、矩形や半円などの弧状であってもよい。
【0097】
又、シールリップ突部47には突出面突部47bを形成しなくてもよく、例えば、第3の実施形態や第4の実施形態のような形状であってもよい。つまり、車内側シールリップ41のシールリップ突部47が側壁突部46に強く押されて変形されるように構成されていればよい。
【0098】
なお、ドアガラス4が、図11より車内側にさらに変位した場合は、車内側シールリップ41さらに車内側に撓んで変形し、シールリップ突部47は側壁突部46に強く押されて変形するので、車内側シールリップ41への反力はさらに増大する。
【0099】
発明の実施形態において、ガラスラン10を構成する材料としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
【0100】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0101】
例えば、第1の実施形態において、シールリップ突部47に関し、第2から第4の実施形態の形状を使用してもよい。
【0102】
例えば、シールリップ突部47を形成する位置は、上記の第1、第2及び第5の実施形態では、車内側シールリップ41のシールリップ先端部41aより少し車内側シールリップ41の付根部41b側に、第3及び第4の実施形態では、車内側シールリップ41のシールリップ先端部41aに形成したが、第1、第2及び第5の実施形態において、シールリップ突部47を車内側シールリップ41のシールリップ先端部41aに形成してもよく、第3及び第4の実施形態において、車内側シールリップ41のシールリップ先端部41aより少し車内側シールリップ41の付根部41b側に形成してもよい。
【0103】
例えば、上記実施形態は、いずれも後側の縦辺部について説明したが、車内側部分の構造については、前側の縦辺部に関する型成形部にも適用することができる。
【0104】
例えば、上記実施形態は、押出成形部の断面を延長する中で、型成形部にシールリップ突部47や側壁突部46を形成することを想定したが、ガラスランの車内側の形状に関し、押出成形部の断面とは関係なく、型成形部に上記の実施形態を形成してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 フロントドア
2 ドア本体
3 ドアフレーム
5 ドアチャンネル
10 ガラスラン
20 底壁
30 車外側側壁
31 車外側シールリップ
40 車内側側壁
41 車内側シールリップ
43 サブリップ
46 側壁突部
47 シールリップ突部
47a 突出面
47b 突出面突部
47c 連絡面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12