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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】法面点検装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20240620BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20240620BHJP
   H02G 11/02 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N21/84 B
E01C23/01
H02G11/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021093213
(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公開番号】P2022185489
(43)【公開日】2022-12-14
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】396007890
【氏名又は名称】大日本ダイヤコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】葉山 清輝
(72)【発明者】
【氏名】入江 博樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 博也
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112929(JP,A)
【文献】特開2004-317371(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111352439(CN,A)
【文献】小▲柳▼ 栄次,災害対応ロボットの適用,機関誌“ロボット” 235号 ,一般社団法人日本ロボット工業会 Japan Robot Association(JARA)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01N 29/00-G01N 29/52
B64C 27/00-B64C 27/82
B64C 39/00-B64C 39/12
E01C 23/01
H02G 11/02
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
KAKEN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面である法面を移動する搬送手段と、
前記搬送手段の移動を操作する操作手段と、
を有する法面点検装置において、
前記搬送手段は、
左右一対の車輪を両端に回動自在に軸支する車軸と、
前記車軸の中央に対して左右両側に設けられ、プロペラを有する2個のモータと、
前記車軸の中央に対して左右両側に設けられ前記車軸の軸方向視で前記プロペラの軸方向に直交して基端固設さた左右一対のアームと、
前記車軸に設置されたコントローラと、
法面の画像を撮像する撮像手段と、
前記コントローラ及び前記モータに電気を供給する電源供給手段と、
を備え、
前記操作手段は、
前記撮像手段で撮像した法面の画像を表示する表示手段と、
前記モータの回転数を操作する回転数操作手段と、
一端を前記アームに連結させたケーブルを一定の速度で巻取ったり送出したりする巻取送出手段と、
を備え、
記ケーブルにより前記搬送手段前記操作手段の下方の法面に吊下げられた状態で前記プロペラの回転による推力と前記搬送手段に作用する重力の合力と、前記ケーブルの張力との釣り合いにより浮上した状態、または前記車輪を法面に当接させた状態で、前記巻取送出手段により前記ケーブルを巻取り又は送出することで法面を上下に移動しつつ、法面の点検用の画像を前記撮像手段で撮像することを特徴とする法面点検装置。
【請求項2】
前記操作手段の前記回転数操作手段により前記プロペラの回転数を、前記操作手段の前記巻取送出手段により前記ケーブルの巻取りまたは送出を、作業者が操作可能としたことを特徴とする請求項1に記載の法面点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面の点検において容易に使用でき、法面の段差や障害物を回避しながら移動して、法面の点検用の画像(動画や静止画)を撮影できる法面点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本は国土の約7割が山地であり、急峻な山地に大掛かりな土木工事を行って鉄道の線路や高速道路等が建設されることが多い。このような土木工事では、切土や盛土により線路や道路を敷設する平坦面、盛土、切土で造成された法面が造成される。このように造成された法面は、地盤が脆弱であり崩壊リスクが大きい。このため、コンクリートやモルタルを法面に吹き付ける表面保護工の施工、又は、コンクリート板や二次コンクリート製の擁壁ブロック等の法面への設置により、脆弱な法面の表面を強化して法面の浸食や崩壊を予防することが行われている。
【0003】
このような、表面を強化された法面は、日本全国の多数広域に造成されているため、法面の維持管理は鉄道や道路、近隣地域の安全を確保するために重要であり、定期的に適切な点検を行い経年劣化した法面は補修が必要となる。
【0004】
従来、法面の点検については、法面に沿って複数の作業者がロープで降下しながら目視により法面の表面の点検作業を行っていた。作業者による点検は、作業者の安全確保のための高所作業にかかる費用や点検を行う作業員の人手不足が問題となっている。また、近年では、法面の点検に無人航空機(所謂、ドローン)を用いて、上空からの法面を撮影した画像を利用することも行われている。しかしながら、無人航空機を飛行させるには国交省等の許可が必要である。また、無人航空機は墜落・落下等の懸念があるため、幹線道路や自動車専用道路付近の法面の点検のために飛行させる場合には交通規制も必要となる。
【0005】
そこで、マルチコプター(無人航空機)を通行路の上空を飛行することが無いように無線により遠隔操作することで、車両の通行路の通行に支障をきたすことなく、通行路の側縁から斜め上方に延びる路側上方斜面(法面)を、マルチコプターに搭載したカメラで撮像して点検することができる路側上方斜面の検査方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-205950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1のドローンを用いた路側上方斜面の検査方法では、交通規制等をすることなく、マルチコプター(無人航空機)を無線により遠隔操作することで、通行路の側縁から斜め上方に延びる路側上方斜面(法面)を、マルチコプターに搭載したカメラで撮像して検査することができる。しかしながら、無人航空機を飛行させるための国交省等の許可は必要である。
【0008】
また、いくら通行路の上部にマルチコプターが侵入しないように制御しても、作業員の操作ミスやマルチコプターの故障等により、通行路にマルチコプターが落下することは完全には防止することはできない。さらに、路側上方斜面をある程度の距離の離れた位置からマルチコプターに搭載したカメラで撮像するため、高機能(ズームアップ機能等)なカメラを搭載する必要があり装置そのものが高価格となる虞がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、簡単な構造で法面に沿って作業者がロープで降下しながら行う従来の点検作業と同様な位置で傾斜面である法面を撮像可能な法面点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、傾斜面である法面を上下に移動する搬送手段と、前記搬送手段の上下移動を操作する操作手段と、を有する法面点検装置において、前記搬送手段は、左右一対の車輪を両端に回動自在に軸支する車軸と、前記車軸の中央から等距離で、上部にプロペラを有して垂直に固設された2個のモータと、前記車軸の中央から等距離で、軸方向に直交して基端が固設された左右一対のアームと、前記車軸の中央部に設置されたコントローラと、法面の画像を撮像する撮像手段と、前記コントローラ及び前記モータに電気を供給する電源供給手段と、を備え、前記操作手段は、前記撮像手段で撮像した法面の画像を表示する表示手段と、前記モータの回転数を操作する回転数操作手段と、ケーブルを一定の速度で巻取ったり送出したりする巻取送出手段と、を備え、一端が前記搬送手段の前記アームに連結され、他端が前記操作手段の前記巻取送出手段に連結された前記ケーブルにより、前記搬送手段は前記操作手段の下方の法面に吊下げられ、前記巻取送出手段により前記ケーブルを巻取り又は送出することで法面を上下に移動しつつ、法面の点検用の画像を前記撮像手段で撮像することを特徴とする法面点検装置とした。
【0011】
また、前記プロペラの回転による推力と、前記操作手段により下方に吊下げられた前記ケーブルの張力により、前記搬送手段を所定高さまで安定して浮上可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、前記操作手段の前記回転数操作手段により前記プロペラの回転数を、前記操作手段の前記巻取送出手段により前記ケーブルの巻取りまたは送出を、作業者が操作可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業者が保持して操作する操作手段の巻取送出手段にケーブルで連結された搬送手段を、巻取送出手段によりケーブルを巻取り又は送出することで、傾斜面である法面の任意の高さに、搬送手段の車軸の両端に回動自在に軸支された左右一対の車輪を法面に当接させた状態で上下に移動させつつ、搬送手段に搭載されている撮像手段(例えば、カメラ)により、法面の表面を撮像し、撮像した画像(動画や静止画)を、法面の点検用の画像として操作手段の表示手段に表示する。
【0014】
これにより、従来、作業者が法面に沿ってロープで降下しながら法面を目視して点検作業を行う方法と同様な位置(高さ)で撮像した画像(動画や静止画)を、法面上部の安全な場所で作業者が表示手段に表示された画像により観察・点検作業を行うことができる。また、作業者が法面の表面を観察して傷んだ箇所を特定するスキルを備えていない場合でも、表示手段(例えば、スマホの液晶表示装置)に画像を記憶するとともに再生可能な機能を備えていれば、法面の表面を観察して傷んだ箇所を特定するスキルを備えている作業者が、表示手段で再生された画像を観察・点検することで、法面の観察・点検作業を行うことができる。
【0015】
また、搬送手段は、前記車軸の中央から等距離で、上部にプロペラを有して垂直に固設された2個のモータを備えている。そして、前記車軸の中央から等距離で、軸方向に直交して基端が固設された左右一対のアームの先端は、ケーブルにより操作手段の巻取送出手段と連結されている。この状態で、作業者が操作手段を操作して2個のモータを回転操作すると、プロペラの回転による推力と、操作手段により下方に吊下げられたケーブルの張力により、搬送手段は所定高さ(例えば、水平面以下)まで安定して浮上することができる。
【0016】
本発明の搬送手段は、車軸に回転軸が固定された2個のモータの上部に設置されたプロペラによる推力しか持たないため単独では安定した浮上飛行はできない。しかしながら、操作手段の巻取送出手段に連結されたケーブルにより、左右一対の2本のアームを介して斜面に吊下げられた状態においては、搬送手段の自重によるケーブルの張力が搬送手段の車軸の回転方向に対しての拘束力を持つ。この状態だと法面に対して略垂直方向にプロペラの回転による推力を得ることができるので法面に対して所定の高さまで安定して浮上することができる。
【0017】
また、回転数操作手段による左右一対のプロペラの回転数と巻取送出手段によるケーブルの巻取りまたは送出を操作手段で作業者が操作可能とすることにより、搬送手段の左右両輪では乗り越えられない法面の段差や障害物を回避するように、搬送手段を浮上させて法面を上下左右に移動することができる。具体的には、作業者が操作手段により車軸に設けた2個のモータを回転操作し、所定の高さまで搬送手段を浮上させた状態で、巻取送出手段によりケーブルの巻取りを操作すると、搬送手段は上方に安定して浮遊移動して搬送手段の左右両輪では乗り越えられない法面の段差や障害物を回避して上方に移動することができる。
【0018】
また、作業者が操作手段により車軸に設けた2個のモータを回転操作し、所定の高さまで搬送手段を浮上させた後、左右2個のモータの回転数を異ならせる操作を行うことで、左右一対のプロペラの推力に差が生じ、例えば、左のモータの回転数を上げ、右のモータの回転数を下げると、左のプロペラよりも右のプロペラの推力が下がるため、搬送手段は浮遊した状態で右方向にスライドするように移動する。同時に、作業者が操作手段を保持したまま右方向に移動することで、搬送手段は法面の段差や障害物を回避して右側に移動することができる。
【0019】
本発明の法面検査装置によれば、搬送手段による法面の表面の点検(つまり、撮像)は、法面の下端から上端の肩部までの範囲に限定した点検のみに適用できる。また、搬送手段は操作手段に吊下げられているので下方に落下する危険がない。また、仮に浮遊状態が安定せず暴走したとしても操作手段の巻取送出手段によりケーブルを巻取ることで回収が可能である。
【0020】
また、従来の作業者自身をロープで法面に吊下して、降下しながら目視で法面の点検を行う方法では、作業者の労力や安全確保が必要であるが、本発明の法面検査装置では、作業者は法面の肩部の平坦面において、法面の任意の箇所の点検作業を低コストで安全に行うことができる。
【0021】
また、本発明の搬送手段は、2個のモータの回転軸に固定された2個のプロペラによる推力しか持たず、2個のモータ・プロペラで自立飛行が可能なバイコプターのように、2個のモータ・プロペラの推力を制御するティルト機構等は備えておらず、単独では安定に飛行できないため小型無人航空機には該当せず航空法の制限は受けない。
【0022】
また、本発明の搬送手段の撮像手段としては、ジンバル付きカメラ(ビデオカメラ)が好適に用いられる。これにより、搬送手段の両輪が法面に当接して上下に移動するときでも、カメラを一定の向きに保ち、揺れや傾きを軽減できるので、スムーズな法面の点検用の画像(動画及び静止画)を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る法面検査装置の構成を説明する平面図である。
図2】本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の構成を説明する斜視図である。
図3】本実施形態に係る法面検査装置の操作手段の構成を説明する斜視図である。
図4】本実施形態に係る法面検査装置の使用状況を説明する図である。
図5】本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の浮遊状態を説明する側面図である。
図6】本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の浮遊状態を説明する平面図である。
図7】本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段のモータ・プロペラの変形例を説明する正面図である。
図8】本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の車軸にかかる推力、張力、重力の関係を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施形態に係る法面点検装置は、傾斜面である法面を上下に移動する搬送手段と、前記搬送手段の上下移動を操作する操作手段とを有し、前記搬送手段は、左右一対の車輪を両端に回動自在に軸支する車軸と、前記車軸の中央から等距離で、上部にプロペラを有して垂直に固設された2個のモータと、前記車軸の中央から等距離で、軸方向に直交して基端が固設された左右一対のアームと、前記車軸の中央部に設置されたコントローラと、法面の画像を撮像する撮像手段と、前記コントローラ及び前記モータに電気を供給する電源供給手段とを備え、前記操作手段は、前記撮像手段で撮像した法面の画像を表示する表示手段と、前記モータの回転数を操作する回転数操作手段と、ケーブルを一定の速度で巻取ったり送出したりする巻取送出手段とを備え、一端が前記搬送手段の前記アームに連結され、他端が前記操作手段の前記巻取送出手段に連結された前記ケーブルにより、前記搬送手段は前記操作手段の下方の法面に吊下げられ、前記巻取送出手段により前記ケーブルを巻取り又は送出することで法面を上下に移動しつつ、法面の点検用の画像を前記撮像手段で撮像するものである。
【0025】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る法面点検装置の実施形態の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る法面検査装置の構成を説明する平面図である。図2は、本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の構成を説明する斜視図である。図3は、本実施形態に係る法面検査装置の操作手段の構成を説明する斜視図である。図4は、本実施形態に係る法面検査装置の使用状況を説明する図である。図5は、本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の浮遊状態を説明する側面図である。図6は、本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の浮遊状態を説明する平面図である。図7は、本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段のモータ・プロペラの変形例を説明する正面図である。図8は、本実施形態に係る法面検査装置の搬送手段の車軸にかかる推力、張力、重力の関係を説明する側面図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の法面検査装置1は、搬送手段としての搬送装置10と、操作手段としての操作装置20とにより構成されている。搬送装置10は、車軸11の両端に連結部12Bを介して回動自在に連結された左右一対の車輪12L、12Rを傾斜面である法面Nに当接させて上下に移動する。車軸11の軸方向の中央から等距離で垂直に左右2個のモータ17L、17Rが車軸11に固設されており、モータ17L、17Rの上部の回転軸にはプロペラ18L、18Rがそれぞれ連結されている。車軸11の軸方向の中央から等距離で水平に左右2本のアーム11L、11Rの基端が固設されている。車軸11の軸方向の中央部上部には、法面Nの表面の画像を撮像する撮像手段としてのカメラ16が設けられている。
【0027】
操作手段としての操作装置20は、作業者は法面の肩部の平坦面Hにいる作業員により両手で把持された状態で使用可能な構成としている。作業者の操作装置20による各種操作は、無線により搬送装置10に伝達され、例えば、搬送装置10の左右2個のモータ17L、17Rの起動や停止、回転数等が操作される。また、操作装置20の背面には、ケーブルCを一定の速度で巻取ったり送出したりする巻取送出手段としての小型の電動ウインチ30(図3参照)が設けられている。
【0028】
搬送装置10と操作装置20は、ケーブルCで連結されている。ケーブルCの一端は、搬送装置10のアーム11L、11Rの先端にそれぞれ連結され、途中で1本のケーブルCに束ねられている。ケーブルCの他端は、操作装置20に付設された電動ウインチ30に連結され、この、ケーブルCにより、作業者が保持する操作装置20の下方の法面に搬送装置10が吊下げられた状態となる。この状態で、電動ウインチ30によりケーブルCを一定の速度で巻取り又は送出することで、搬送装置10は法面を上下に移動するとともに、カメラ16により法面の点検用の画像を撮像する。カメラ16により撮像された法面の点検用の画像は、操作装置20に付設された表示手段としての表示装置22に表示される。
【0029】
本実施形態の法面検査装置1によれば、作業者は法面Nの肩部の平坦面Hの安全な場所で、操作装置20の表示装置22に表示される法面の任意の箇所の表面を撮像した画像を目視することで、法面の点検作業を安全に行うことができる。
【0030】
以下、図2を参照して、本実施形態における搬送手段としての搬送装置10を詳説する。図2に示すように、搬送装置10は、左右一対の車輪12L、12Rを両端に回動自在に軸支する車軸11、車軸11の中央から等距離で、上部に左右2個のプロペラ18L、18Rを上部に連結され、車軸11に垂直に固設された左右2個のモータ17L、17R、車軸11の中央から等距離で、軸方向に直交して基端が固設された左右一対のアーム11L、11R、車軸11の中央部に設置されたコントローラ13、法面の点検用画像を撮像する撮像手段としてのカメラ16、コントローラ13及び左右2個のモータ17L、17R等に電気を供給する電源供給手段としてのバッテリー15により構成されている。
【0031】
車輪12L、12Rは、連結部12Bを介してそれぞれ車軸11の両端に回動自在に連結されている。車輪12L、12Rは、連結部12Bを中心として本のスポーク12Cを放射状に伸延し、外輪12Aと連結(例えば、溶接)して構成されている。外輪12Aの直径は、所定径(例えば、略1m)を想定している。これは、車輪12L、12Rが乗り越えられる法面の段差や障害物等は外輪12Aの直径の1/3であるため、法面の段差や障害物の高さを30cm程度の場合を想定しているためである。
【0032】
従って、法面の段差や障害物の高さによっては、外輪12Aが所定径(略1m)では乗り越えられない場合も想定される。このため、外輪12Aの直径が異なる(略1m、略1.2m、略1.5m等)複数種類の車輪12L、12Rを準備し、さらに、車輪12L、12Rをそれぞれ車軸11の両端に着脱自在とし、法面の段差や障害物の高さに応じた車輪12L、12Rを現場で選択的に用いるようにしてもよい。また、車輪12L、12Rの大きさに応じた強化のために、スポーク12Cの本数を増加したり、分枝化したりすることもできる。
【0033】
左右2個のプロペラ18L、18Rを上部の回転軸にそれぞれ回動自在に連結した左右2個のモータ17L、17Rは、車軸11の軸方向に中心から等距離で垂直に固設されている。左右2個のモータ17L、17Rと、この左右2個のモータ17L、17Rの上部の回転軸にそれぞれ連結されている左右2個のプロペラ18L、18Rは、モータ17L、17Rの反トルクをお互い打ち消すように逆方向に回転するようにしている。左右2個のプロペラ18L、18Rの回転方向を、例えば、同じ右回転にすると、モータ17L、17Rの反トルクの作用により、搬送装置10がモータ17L、17Rの反トルクに同期して、浮上した場合に右回転してしまうことを防止するためである。
【0034】
左右一対のアーム11L、11Rは、車軸11の軸方向に中心から等距離で、左右2個のモータ17L、17Rよりも車輪12L、12R側に、水平に基端が固設されている。アーム11L、11Rは車軸11に垂直に固設された左右2個のモータ17L、17Rと略90度の角度になるように、水平に基端を固設され先端は法面の上方側に伸延されている。また、アーム11L、11Rの長さは、車輪12L、12Rの半径よりも長いことが望ましい。これにより、アーム11L、11Rの先端にそれぞれ連結されるケーブルCが、車輪12L、12Rに絡まることを防ぐことができる。また、ケーブルCが法面を撮像するカメラ16に映り込むこともない。
【0035】
車軸11の略中央部には、コントローラ13が設置されている。コントローラ13の上部には、垂直に立設した連結棒16aの上端に撮像手段としてのカメラ16が設置されている。コントローラ13の下部には、電源供給手段としてのバッテリー15が、連結棒14aの下端に設置されている。バッテリー15は、左右2個のモータ17L、17R及びコントローラ13等の搬送装置10に搭載されている各種機器に電気を供給する電源としての機能を有する。なお、バッテリー15は交換可能に構成し、作業現場において複数の予備バッテリー15を予め用意しておくことが望ましい。これにより、法面の点検作業が長引いてバッテリー15の電気の切れた場合でも、バッテリー15を交換することで対応することができる。
【0036】
コントローラ13は、後述の操作装置20からの作業者の各種操作信号を受信する機能を有するとともに、搬送装置10に搭載されている各種機器で検出した信号を操作装置20に送信する機能を有する。また、作業者による操作装置20の各種操作信号に応じて、搬送装置に搭載した各種機器、例えば、左右2個のモータ17L、17Rの回転数の制御を行う。
【0037】
カメラ16は、搬送装置10の車軸11の上部に搭載されることで、法面の点検用の画像(動画や静止画)を撮像するようにしている。カメラ16は中央に撮像用のレンズを備え、このレンズの左右には照明装置が設置されている。この照明装置は、例えば、法面を照明する左右二個の白色灯を有し、カメラ16で撮像された法面点検用の画像の明度不足を補う。これにより、天候が曇天等の場合や早朝、夕方時においても安定した明るさの画像を撮像することができる。なお、撮像手段として搬送装置10に搭載されるカメラ16は、撮像する法面の表面に対する角度調整機能を備えるとともに、ジンバル付きカメラ(ビデオカメラ)が好適に用いられる。これにより、搬送装置10の左右両輪(車輪12L、12R)が法面に当接して上下に移動するときでも、カメラ16を一定の向きに保ち、揺れや傾きを軽減できるので、スムーズな法面の点検用の画像(動画及び静止画)を撮像することができる。このカメラ16で撮像された法面の画像は、リアルタイムで後述の操作装置20の表示装置22に送信されて表示される。
【0038】
車輪12L、12R、車軸11、アーム11L、11R等の材質、形状及び構造は、様々なものを採用可能であるが、軽量であってモータやプロペラの振動に影響を受けない剛性を持つものが望ましい。例えば、直径3~4mmのグラスファイバーロッドやカーボンロッド等が好適に用いられる。また、車輪12L、12Rは、車軸11の両端で滑らかに回転可能であって、使用する斜面の凹凸に対して十分な大きさであり、風の影響を受けないように、例えば、スポーク12Cで支える構造とすることが望ましく、スポーク12Cの本数や形状は、車軸11や車軸11に搭載された各種機器(バッテリー15、カメラ16等)の重量を支えるのに十分な強度を得るために、上述したようにスポーク12Cの本数を増加したり、分枝化したりした任意の構造としてよい。
【0039】
ここで、車軸11に連結される左右2個のプロペラ18L、18Rを有する左右2個のモータ17L、17Rは、必ずしも2個に限定されるものではない。例えば、搬送装置10や搬送装置10に搭載される各種機器(バッテリー15、カメラ16等)の重量が嵩み、左右2個のプロペラ18L、18Rの推力では、搬送装置10を上方に浮遊させることができない場合も想定される。この場合は、図7に示すように、左右2個のモータ17L、17Rの車軸11を中心とした下部に、左右2個のプロペラ18L、18Rを下部の回転軸にそれぞれ回動自在に連結した左右2個のモータ17L、17Rを、左右2個のプロペラ18L、18Rを垂直下方に位置するように固設するのである。
【0040】
上記構成により、車軸11の左右上下に、合計4個の左右のプロペラ18L、18Rの回転による推力により、搬送装置10を上方に浮遊させることができる。なお、左右2個のモータ17L、17Rの下部に垂下して固設された左右2個のプロペラ18L、18Rの回転方向も、上部に固設された左右2個のプロペラ18L、18Rと同様に、左右2個のモータ17L、17Rの反トルクをお互い打ち消すように逆方向に回転するようにしている。
【0041】
コントローラ13の上部のカメラ16の前方には、カメラ16より一段低い位置に、各種計測装置を備えた計測部14が連結棒1aの上端に設置されている。計測部14の各種計測装置としては、カメラ16と法面との距離を測定するための、超音波センサやレーザー計測装置等である。また、カメラ16のような可視光カメラ以外に、例えば、赤外線カメラ等も設置することもできる。なお、計測部14に設置される各種計測装置の作動は、後述の操作装置20に設置されている操作スイッチ等で作業者が任意に操作できるようにしている。
【0042】
以下、図3を参照して、本実施形態における操作手段としての操作装置20を詳説する。図3に示すように、操作装置20は、各種操作スイッチ25が設けられた筐体21、搬送装置10に搭載されたカメラ16(撮像手段)で撮像した法面の画像を表示する表示手段としての表示装置22、この表示装置22を筐体21の上部に保持するホルダー22A、左右2個のモータ17L、17Rの回転数(つまり、左右2個のプロペラ18L、18Rの推力)をそれぞれ操作する回転数操作手段としてのジョイスティック23L、23R、搬送装置10に搭載されたコントローラ13との各種信号を送受信するアンテナ26、筐体21の背面には、ケーブルCを一定の速度で巻取ったり送出したりする巻取送出手段としての電動ウインチ30、筐体21の左側面角部に設置された電動ウインチ30によるケーブルCを巻取り・送出を操作する巻取スイッチ30A、送出スイッチ30Bにより構成されている。
【0043】
筐体21の上面に設けられた各種操作スイッチ25は、搬送装置10に搭載された各種機器の作動や停止を操作するものであり、例えば、上述した計測部14の作動や停止、左右2個のモータ17L、17Rの作動や停止を操作するためのスイッチである。
【0044】
表示装置22は、搬送装置10に搭載されたカメラ16(撮像手段)で撮像した法面の画像(動画や静止画)を表示するためのものである。表示装置22としては、周知のスマートフォンの液晶表示装置が好適に用いられる。また、使用されるスマートフォンには、搬送装置10のカメラ16からリアルタイムで送信される画像を受信可能なアプリ(アプリケーションプログラム)がダウンロードされている。そして、このアプリを起動させることで、スマートフォンの液晶表示装置に、カメラ16で撮像した法面の画像(動画や静止画)が表示される。
【0045】
ホルダー22Aは、表示装置22を作業者が所定の角度で見易いように着脱自在に保持可能な構成としており、表示装置22の長手方向の下端を載置した状態で、表示装置22の短手方向を挟持する構成としている。
【0046】
回転数操作手段としてのジョイスティック23L、23Rは、搬送装置10の車軸11に固設されている左右2個のモータ17L、17Rの回転数(つまり、左右2個のプロペラ18L、18Rの推力)をそれぞれ操作するためのものである。ジョイスティック23Lはモータ17Lの回転数を、ジョイスティック23Rはモータ17Rの回転数を操作可能としている。
【0047】
具体的には、作業者が筐体21の両側面を両手で保持した状態で、ジョイスティック23Lを左手の親指等で上に倒す操作を行うとモータ17Lの回転数が上がり、ジョイスティック23Lを左手の親指等で下に倒す操作を行うとモータ17Lの回転数は下がる。同様にして、ジョイスティック23Rを右手の親指等で上に倒す操作を行うとモータ17Rの回転数が上がり、ジョイスティック23Rを右手の親指等で下に倒す操作を行うとモータ17Rの回転数は下がる。
【0048】
このように、搬送装置10の左右2個のモータ17L、17Rの回転数を異ならせることで、左右2個のモータ17L、17Rに連結されている左右2個のプロペラ18L、18Rの推力に差が生じ、搬送装置10を浮遊した状態で左右にスライドするように移動させることができる。
【0049】
アンテナ26は、筐体21の背面(搬送装置10側)に設けられており、搬送装置10に搭載されたコントローラ13に、操作装置20に設けられている各種操作スイッチ25やジョイスティック23L、23Rの操作信号を送信する。
【0050】
電動ウインチ30は、筐体21の背面の略中央部に設けられており、連結されたケーブルCを一定の速度で巻取ったり送出したりする巻取送出手段として機能する。電動ウインチ30は、周知の小型ウインチが好適に用いられ、ケーブルCを巻取・送出するリールと、このリールを巻取又は送出する方向に一定の速度で回動させる電動モータとにより構成される。
【0051】
筐体21の左側面角部には、電動ウインチ30によるケーブルCを巻取・送出を操作する巻取スイッチ30A、送出スイッチ30Bが設けられている。例えば、作業者が筐体21の両側面を両手で保持した状態で、左手の人差し指等で巻取スイッチ30Aを押下すると、電動ウインチ30によりケーブルCが巻き取られ、ケーブルCにより操作装置20の下方の法面に吊下げられた搬送装置10は法面の上方に移動する。また、作業者が筐体21の両側面を両手で保持した状態で、左手の人差し指等で送出スイッチ30Bを押下すると、電動ウインチ30からケーブルCが送出され、ケーブルCにより操作装置20の下方の法面に吊下げられた搬送装置10は法面の下方に移動する。
【0052】
上述してきた構成の法面検査装置1によれば、図4に示すように、車道Rの右側に形成された法面Nを点検する際には、作業者Sは法面の肩部の平坦面Hにおいて、操作装置20を操作してケーブルCで法面に吊下げられている搬送装置10を上下に移動させつつ、搬送装置10に搭載されたカメラ16で撮像した法面の任意の箇所の画像を、操作装置20の表示装置22に表示される画像により目視して点検することができる。これにより、作業者Sは,法面の点検作業を安全な場所で容易に行うことができる。つまり、従来、作業者Sが法面Nに沿ってロープで降下しながら法面Nの表面を目視して点検作業を行う方法と同様な位置(高さ)で撮像した法面の画像(動画や静止画)を、法面上部の安全な平坦面Hで作業者Sが表示装置22に表示された画像により観察・点検作業を行うことができる。
【0053】
また、搬送装置10は操作装置20とケーブルCで常時連結されて吊下げられた状態であるので、ケーブルCの長さを、例えば、車道Rに搬送装置10がはみ出す長さ以下の長さに限定することで、搬送装置10は車道Rにはみ出すことが無く、作業者Sによる法面の点検作業中に車道Rの交通規制等を行う必要がない。
【0054】
また、作業者Sが法面の表面を観察して傷んだ箇所を特定する点検作業のスキルを備えていない場合でも、表示装置22(例えば、スマホの液晶表示装置)に画像を記憶するとともに、表示装置22が画像を再生可能な機能を備えていれば、法面Nの表面を観察して傷んだ箇所を特定するスキルを備えている作業者Sが、後日表示装置22で再生された画像を観察・点検することで法面の観察・点検作業を行うことができる。つまり、法面Nの表面の画像を撮像する作業者Sと法面Nの表面を観察して傷んだ箇所を特定できる作業者Sを別々にすることができ、法面Nの表面を観察して傷んだ箇所を特定できるスキルの高い作業者Sの現場作業の負荷を低減して作業性を向上させることができる。
【0055】
以下、図5及び図6を参照して、本実施形態における搬送装置10を浮上させた状態における上下左右への移動を説明する。図5に示すように、作業者が操作装置20を操作して搬送装置10の左右2個のモータ17L、17Rを回転させると、モータ17L、17Rのそれぞれに設けられたプロペラ18L、18Rの回転により推力が発生し、搬送装置10が上方に浮上する。このとき、作業者が操作装置20の電動ウインチ30のケーブルCの巻取・送出を操作する巻取スイッチ30Aを操作すると、搬送装置10は浮上した状態で、法面Nの障害物Oを回避して上方に移動することができる。同様にして、操作装置20の電動ウインチ30の送出スイッチ30Bを作業者が操作すると、搬送装置10は浮上した状態で、法面Nの障害物Oを回避して下方に移動することができる。
【0056】
図6に示すように、図5と同様に、作業者が操作装置20を操作して搬送装置10を上方に浮上させた状態で、作業者が操作装置20の回転数操作手段としてのジョイスティック23L、23Rにより、車軸11に設けた左右2個のモータ17L、17Rの回転数を異ならせる操作を行うと、モータ17L、17Rのそれぞれに設けられたプロペラ18L、18Rによる推力に差が生じる。そして、左のモータ17Lの回転数を上げ、右のモータ17Rの回転数を下げると、左のプロペラ18Lよりも右のプロペラ18Rの推力が下がるため、搬送装置10は浮遊した状態で、障害物Oを避けて右方向にスライドするように移動することができる。同時に、作業者が操作装置20を保持したまま右方向に移動することで、搬送装置10を吊下げたまま右側に移動することができる。
【0057】
同様にして、左のモータ17Lの回転数を下げ、右のモータ17Rの回転数を上げると、左のプロペラ18Lの推力が右のプロペラ18Rの推力よりも下がるため、搬送装置10は、浮遊した状態で障害物Oを避けて左方向にスライドするように移動することができる。同時に、作業者が操作装置20を保持したまま左方向に移動することで、搬送装置10を吊下げたまま左側に移動することができる。なお、この搬送装置10の左右への移動は、例えば、法面Nの縦方向を列、横方向を段とすると、法面Nの縦方向の列に沿って搬送装置10を上下に移動させて点検した後、点検する法面Nの列を変更する場合にも行われる。
【0058】
以下、図8を参照して、本実施形態にかかる搬送装置10の浮上時の安定性を説明する。図8に示すように、搬送装置10は、左右のプロペラ18L、18Rの推力F、ケーブルCの張力T、搬送装置10にかかる重力Wとの関係での安定性が保たれている。
【0059】
搬送装置が十分な斜度の法面に沿って浮上している場合は、図8に示すように推力Fと重力Wの合力がケーブルCの張力Tと釣り合って安定を保つことができる。つまり、搬送装置10が、作業者が所持する操作装置20の同一水平面に位置しないように、十分に下方に位置する場合は張力Tが十分に大きく、作業員が保持する操作装置20から巻き出されたケーブルCの長さによって決まる距離に固定されて搬送装置は安定に浮上できる。
【0060】
しかしながら、搬送装置10が法面Nから離れ高度が上がって、作業者が所持する操作装置20の同一水平面に位置する高さに近くなると、ケーブルCの張力Tが小さくなり、風、ケーブルCの弾性、左右のプロペラ18L、18Rの推力Fの変化などの外乱の影響により搬送装置10と作業者との距離を一定に保つことができなくなり、安定に浮上することが困難になる。仮に搬送装置10が操作装置20の同一水平面より上に浮上してしまった場合はケーブルCの張力Tによる搬送装置10の拘束を失ってしまうため、搬送装置10の浮上は限りなく不安定となる。つまり、本実施形態の搬送装置10は、操作装置20の同一水平面より十分に下方でしか運用できない。
【0061】
このため、搬送装置10の車軸11に基端が連結された左右2本のアーム11L、11Rに水平器(レベルや水準器ともいう)を付設し、この水平器で搬送装置10の左右2本のアーム11L、11Rが操作装置20と同一水平面近くになった場合を検出して、左右のプロペラ18L、18Rの回転数を下げるように自動制御することが望ましい。これにより、搬送装置10を浮上させる場合の安定性の向上をはかることができる。なお、搬送装置10と操作装置20とが同一水平面近くになることを検出する方法は、上記水平器の設置に限定されるものではない、例えば、操作装置20内に加速度センサを設置して重力加速度を計測することで、搬送装置10と操作装置20とが同一水平面近くになることを検出する方法でもよい。つまり、搬送装置10と操作装置20とが同一水平面近くになることを検出できる方法であればよい。
【0062】
上述してきたように、本実施形態の法面検査装置1によれば、搬送装置10は、車軸11に固設された左右2個のモータ17L、17Rの上部にそれぞれに設けられたプロペラ18L、18Rによる推力しか持たないため単独では安定した浮上飛行はできない。しかしながら、操作装置20の電動ウインチ30に連結されたケーブルCにより、左右一対の2本のアーム11L、11Rを介して操作装置20の下方の法面Nに吊下げられた状態においては、搬送装置10の自重、又は、電動ウインチ30の巻取りによるケーブルCの張力が、搬送装置10の車軸11の回転方向に対しての拘束力を持つ。このため、法面Nに対して略垂直方向に左右のプロペラ18L、18Rの回転による推力より、法面Nに対して所定の高さまで安定して浮上することができる。
【0063】
また、搬送装置10による法面Nの表面の点検(つまり、撮像)は、法面Nの下端から上端の肩部までの範囲に限定した点検のみに適用できる。また、搬送装置10は操作装置20の下方にケーブルCで常に吊下げられているので下方に落下する危険がない。また、仮に浮遊状態が安定せず暴走したとしても操作装置20の電動ウインチ30によりケーブルCを巻取ることで回収が可能である。
【0064】
また、従来の作業者自身がロープで法面Nに吊下して、目視で法面の点検を行う方法では、作業者の労力や安全確保が必要であるが、本発明の法面検査装置1では、作業者は法面の肩部の平坦面Hにおいて、法面Nの任意の箇所の点検作業を安全に行うことができる。
【0065】
また、本発明の搬送装置10は、左右2個のモータ17L、17Rの上部にそれぞれに設けられたプロペラ18L、18Rによる推力しか持たず、例えば、2個のモータ・プロペラで自立飛行が可能なバイコプターのように、2個のモータ・プロペラの推力を制御するティルト機構等は備えていないため、単独では安定に飛行できないため小型無人航空機には該当せず航空法の制限は受けない。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 法面点検装置
10 搬送装置
11 車軸
11L、11R アーム
12A 外輪
12B 連結部
12C スポーク
12L、12R 車輪
13 コントローラ
14 計測部
15 バッテリー
16 カメラ
17L、17R モータ
18L、18R プロペラ
20 操作装置
21 筐体
22 表示装置
22A ホルダー
23L、23R ジョイスティック23
26 アンテナ
30 電動ウインチ
30A 巻取スイッチ
30B 送出スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8