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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】鋼管
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20240620BHJP
   B21D 17/04 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E02D5/28
B21D17/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024033133
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523210755
【氏名又は名称】薦田 清豪
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(72)【発明者】
【氏名】薦田 清豪
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-085157(JP,A)
【文献】特開2016-030992(JP,A)
【文献】特開昭48-5652(JP,A)
【文献】特開2014-095252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/28
B21D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成したコンクリートに打設される鋼管であって、
杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するよう構成するとともに、
杭径を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を2~3、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2mm~3mm未満、縦溝の周方向幅を10mm~26mmに設定し、
杭径を70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を3~5、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2.5mm~4mm未満、縦溝の周方向幅を13mm~30mmに設定し、 杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を4~7、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを4mm~6mm、縦溝の周方向幅を16mm~35mmに設定することを特徴とする鋼管。
【請求項2】
各縦溝の最深部の管軸方向両端部はそれぞれ、管軸方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の端部と同一円周上に合致させて配置されるか、管軸方向に間隔を隔てて配置されるか、または管軸方向に一部重なり合って配置されることを特徴とする請求項1に記載の鋼管。
【請求項3】
各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の周方向中間に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管。
【請求項4】
各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝に対して周方向に所望の角度ずらせて配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管。
【請求項5】
縦溝の断面形状がV字状または台形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート基礎杭用芯材として用いられる縦溝付きの鋼管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭用芯材として用いられる鋼管は、コンクリートとの摩擦係数を高めて支持力を向上させるため、鋼管本体に窪みを形成するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4109698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の鋼管杭では、窪みの配置や窪みの形状が複雑で多様であるため、鋼管製造ラインを多様化せざるを得ず製造にコストがかかるという問題がある。さらに、窪みの配置や窪みの形状に基づいて杭径に応じた支持力を予め計算することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、本出願人は窪みの形状や寸法について異なるタイプの鋼管を製造し、性能試験を実施し、その結果に基づいて簡素な構成で杭径に応じて最適な支持力を得ることができる凹陥縦溝を有する鋼管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る鋼管は、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成したコンクリートに打設される鋼管であって、杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するよう構成するとともに、杭径を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を2~3、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2mm~3mm未満、縦溝の周方向幅を10mm~26mmに設定し、杭径を70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を3~5、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2.5mm~4mm未満、縦溝の周方向幅を13mm~30mmに設定し、杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を4~7、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを4mm~6mm、縦溝の周方向幅を16mm~35mmに設定するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項1に係る鋼管では、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成したコンクリートに打設される鋼管であって、杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するよう構成するとともに、杭径を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を2~3、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2mm~3mm未満、縦溝の周方向幅を10mm~26mmに設定し、杭径を70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を3~5、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2.5mm~4mm未満、縦溝の周方向幅を13mm~30mmに設定し、 杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を4~7、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを4mm~6mm、縦溝の周方向幅を16mm~35mmに設定するようにしたことにより、予め杭径に応じた最適な支持力を導く、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定し、最適な支持力を得られる縦溝の数値を導いているので、簡素な構成で最適な支持力が得られる鋼管を得ることができ、汎用化してコストダウンを図ることができる。
【0008】
また、本発明に係る鋼管では、各縦溝の最深部の管軸方向両端部はそれぞれ、管軸方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の端部と同一円周上に合致させて配置されるか、管軸方向に間隔を隔てて配置されるか、または管軸方向に一部重なり合って配置されるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、鋼管の長手方向に沿って均一な支持力を得ることができる。さらに、本発明に係る鋼管では、各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の周方向中間に配置されるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、鋼管の周方向に沿って均一な支持力を得ることができる。また、本発明に係る鋼管では、各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝に対して周方向に所望の角度ずらせて配置されるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、周方向の支持力をきめ細かく設定することができる。さらに、本発明に係る鋼管では、縦溝の断面形状がV字状または台形状であるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、縦溝を形成する装置の簡素化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る鋼管では、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成したコンクリートに打設される鋼管であって、杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するよう構成するとともに、杭径を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を2~3、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2mm~3mm未満、縦溝の周方向幅を10mm~26mmに設定し、杭径を70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を3~5、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを2.5mm~4mm未満、縦溝の周方向幅を13mm~30mmに設定し、杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を4~7、縦溝の長手方向長さを20mm以上、縦溝の深さを4mm~6mm、縦溝の周方向幅を16mm~35mmに設定するようにしたことにより、簡素な構成で杭径に応じて最適な支持力を得ることができる縦溝を有する鋼管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る鋼管を製造する溝付け押圧装置と管状に成型する成型装置と溶接装置と切断装置とを備えた製造ラインの全体を示す製造ライン全体図である。
図2図2の(A)ないし(E)それぞれ、製造ラインにおける鋼管の成型過程を示す説明図で、(A)は製造ラインの溝付け工程における第1、第2のロールと鋼体素材を示す説明図、(B)は溝付けされ上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材を示す説明図、(C)は溝付けされ上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材の断面を示す断面図、(D)は溝付けされた帯状鋼体素材を押し曲げて管状に成型する工程の一部を示す説明図および(E)は管状に成型された鋼体の両端衝合部を溶接した状態を示す断面図である。
図3図3の(A)ないし(D)はそれぞれ、本発明の第1の実施形態に係る鋼管の杭径が比較的小さいSタイプの鋼管を示すもので、(A)はこの鋼管を一部省略して縦溝を模式的に示す正面図(背面図と同一)、(B)は同Sタイプの鋼管の縦溝を模式的に示す平面図(裏面図と同一)、(C)は同Sタイプの鋼管の端面図および(D)は同Sタイプの鋼管の断面図である。
図4図4は、図3のSタイプの鋼管が、帯状鋼体素材に溝付けされた状態を示す平面図で、Sタイプの場合を示している。
図5図5は、図3のSタイプの鋼管を示す全体斜視図である。
図6図6の(A)ないし(F)はそれぞれ、本発明の第2の実施形態に係る鋼管の杭径が一般的な通常サイズのMタイプの鋼管を示すもので、(A)はこの鋼管を一部省略して示す正面図、(B)は同Mタイプの鋼管の背面図、(C)は同Mタイプの鋼管の平面図、(D)は同Mタイプの鋼管の裏面図、(E)は同Mタイプの鋼管の縦溝が形成された部位の断面図および(F)は同Mタイプの鋼管の端面図で、(A)ないし(D)はそれぞれ縦溝を模式的に示す。
図7図7は、図6のMタイプの鋼管が、帯状鋼体素材に溝付けされた状態を示す平面図で、Mタイプの場合を示している。
図8図8の(A)ないし(E)はそれぞれ、図6のMタイプの鋼管が、溝付けされた帯状鋼体素材と丸管状に成型された鋼管とのそれぞれの形状とそれらの寸法を示して縦溝の深さ、幅および管軸方向の長さを説明する説明図で、(A)は帯状鋼体素材と丸管状に成型された鋼管との断面を縦溝最深部を中心にして比較して示す説明図、(B)は溝付け時の縦断面形状と溝深さと溝幅の寸法を例示し曲線部の部位を表す説明図、(C)は丸管状成型時の径方向断面形状と溝深さと溝幅の寸法を例示し曲線部の部位を表す説明図、(D)は成型後の鋼管の縦溝の最深部と縦溝上部の寸法を例示し縦溝とその近傍を示す周面の要部を表す説明図および(E)は成型後の鋼管の管軸方向断面の要部を示し、縦溝の最深部と縦溝上部の寸法を例示し曲線部の形状と縦溝の管軸方向の長さを表す説明図である。
図9図9は、図6のMタイプの鋼管の一部を示す斜視図で、縦溝が周方向に4カ所等間隔で形成された例を示している。
図10図10の(A)ないし(F)はそれぞれ、本発明の第3の実施形態に係る鋼管の杭径が比較的大きいLタイプの鋼管を示すもので、(A)はこの鋼管を一部省略して示す正面図、(B)は同Lタイプの鋼管の背面図、(C)は同Lタイプの鋼管の平面図、(D)は同Lタイプの鋼管の裏面図、(E)は同Lタイプの鋼管の縦溝が形成された部位の断面図および(F)は同Lタイプの鋼管の端面図で、(A)ないし(D)はそれぞれ縦溝を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に示す各実施形態により本発明を説明する。本発明の第1の実施形態に係る鋼管2は、図1に示すように、溝付け押圧装置3と成型装置4と溶接装置5と切断装置6とを備えた製造ライン10により製造される。溝付け押圧装置3は、図2の(A)に示すように、上ロール(第1のロール)11と下ロール(第2のロール)12とを備え、上ロール11は、帯状鋼体素材SC1~SC3の鋼体幅に応じてロール周面のロール軸方向の所定位置に凹部13が全周に亘って形成される。下ロール12は、上ロール11と接離可能に上下方向に押圧され、凹部13に対応する部位のロール周面に、予め決められた縦溝R1~R3の長手方向長さL1~L3と縦溝R1~R3の深さD1~D3と縦溝R1~R3の周方向幅W1~W3とに対応した凸部14が下ロール12のロール軸方向の位置を異ならせて形成されるようになっている。凸部14は、下ロール12の周面に所定の寸法L1~L3、D1~D3、W1~W3で形成され、ロール軸方向の断面が三角形状に形成される。この下ロール12の凸部14の各端部は角錐状に切れ上がって形成され、後述する縦溝R1、R2、R3の両端部R1-E1、R1-E2、R2-E1、R2-E2、R3-E1、R3-E2、を形成するようになっている。すなわち、縦溝R1、R2、R3の両端部R1-E1、R1-E2、R2-E1、R2-E2、R3-E1、R3-E2の管軸方向端面は、凸部14の角錐状端部に対応して管軸方向に傾斜して形成されるようになっている。そして、これら上ロール11と下ロール12との間に肉厚T1~T3の帯状鋼体素材SC1~SC3を導入して圧接し、上ロール11の凹部13と下ロール12の凸部14とにより帯状鋼体素材SC1~SC3の上面に縦溝R1~R3に対応する突部を形成するようになっている(図2の(B)参照)。このとき、凸部14のロール軸方向の数により成型された鋼管2の周方向の縦溝R1~R3の数N1~N3が決定される。
【0012】
製造ライン10の成型装置(フォーミング装置)4は、図2の(C)、(D)、(E)に示すように、溝付け押圧装置3から縦溝R1~R3が形成された帯状鋼体素材SC1~SC3が送り込まれると、この帯状鋼体素材SC1~SC3を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し丸管状に成型するようになっている。溶接装置5は、成型装置4から丸管状に成型された鋼体が送り込まれると、鋼体の両端衝合部を高周波溶接するようになっている。切断装置6は、溶接された丸管状の鋼体が溶接装置5から送り込まれると、丸管状の鋼体を所望の長さにカットするようになっている。
【0013】
なお、所定の厚み(本発明の各実施形態では、1.6mmから2mm未満の肉厚)を有する平板状の帯状鋼体素材SC1~SC3では、縦溝R1~R3が形成される際、プレスの影響を受けるので、縦溝R1~R3の近傍C1f、C2f、C3f、C4f、C5f、C6f(図8の(A)、(B)参照)に直線的にではなく緩やかな山型の曲線部分が生じる。ここで、近傍C1f、C2fは、縦溝R1~R3の周方向両端部上部を、近傍C3f、C4fは、縦溝R1~R3の管軸方向両端部上部を、近傍C5f、C6fは、管軸方向両端部下部を示している。さらに、縦溝R1~R3が形成された帯状鋼体素材SC1~SC3では、丸管状に成型される際も、プレスの影響を受けるので、押し広げられる縦溝R1~R3の近傍C1fs、C2fs、C3fs、C4fs、C5fs、C6fs(図8の(A)、(C)、(E)参照)に直線的にではなくより緩やかな山型の曲線部分が生じる(図8の(D)に加圧により形状変化の影響を受ける範囲を1点鎖線の楕円形部分で示す)。このように、図8の(A)ないし(E)に示すように、例えば、Mタイプ(杭径D2:70mmから100mm未満)のうち杭径D2が、76.3mmの場合、縦溝最深部ds2の管軸方向長さL2を決定する金型の寸法は55mmで設計されるものの、その金型を使用して丸管状にプレスして成型した場合、縦溝の長さL2は、図8の(D)、(E)に示すように、79.0mmと長くなり、これが縦溝の管軸方向長さとなる。本発明の各実施形態では、縦溝R1~R3の管軸方向長さL1~L3は、あくまで曲面部分が管軸方向の直線部に達した管軸方向両端縁間を指している。つまり、管軸方向両端縁の曲面が直線に変化する部位間が管軸方向長さL1~L3となる。そして、縦溝R1~R3の円周方向幅W1~W3は、縦溝R1~R3の円周方向両端上部の曲面部分が頂部に達した部位間の直線距離を指している。
【0014】
ところで、このようにして外周面に縦溝Rが形成された鋼管2(22、32)は、予め求められた基礎杭としての性能試験から支持力が最も発揮できる最適の、杭径に応じた縦溝の具体的な寸法と形状が導かれている。すなわち、杭径(外径)DM1(DM2、DM3)に応じて、杭の肉厚T1(T2、T3)と周方向の縦溝R1(R2、R3)の数N1(N2、N3)と縦溝R1(R2、R3)の長手方向長さL1(L2、L3)と縦溝R1(R2、R3)の深さD1(D2、D3)と縦溝R1(R2、R3)の周方向幅W1(W2、W3)と縦溝R1(R2、R3)の断面形状が予め決められている。そして、縦溝R1(R2、R3)は周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成されるとともに、この周方向の縦溝群G1(G2、G3)を、鋼管2(22、32)本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成するようにしている。
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る鋼管2は、各縦溝R1の両端部R1-E1、R1-E2が、図3ないし図5に示すように、長手方向で隣り合う縦溝群G1の縦溝R1の端部R1-E2、R1-E1と同一円周上に合致させて配置されるようになっている。すなわち、鋼管2の長手方向で隣り合う縦溝群G1(G1A、G1B)の各縦溝R1の両端部R1-E1、R1-E2はそれぞれ、周方向で近接した側の縦溝R1の端部R1-E2、R1-E1と同一円周上に合致させられるようになっている。つまり、縦溝群G1Aの縦溝R1の上側端部R1-E1と縦溝群G1Bの縦溝R1の下側端部R1-E2とが同一円周上に配置され、これらは円周上近接した位置にある。また、縦溝R1は、鋼管2の長手方向で隣り合う縦溝群G1A、G1Bの縦溝R1間の周方向中間に配置されるようになっている。なお、図3の(A)、(B)では、縦溝R1を模式的に示している。
【0016】
上記第1の実施形態に係る鋼管2は、杭径DM1が比較的小さいSタイプの鋼管に適用されるもので、杭径DM1を40mmから70mm未満としたときに(帯状鋼体素材SC1の帯幅125.6~219.8mm(設計値))、杭の肉厚(帯状鋼体素材SC1の厚さ)T1を1.6mm~2.0mm未満、周方向に連続する縦溝群G1に含まれる縦溝R1の数N1を2~3、縦溝R1の長手方向長さ、すなわち、管軸方向長さL1を好ましくは20~100mm、縦溝R1の深さD1を2mm~3mm未満、縦溝R1の周方向幅W1を10mm~26mmに、そして縦溝R1の断面形状がV字状になるように設定している。
【0017】
図3ないし図5は、このSタイプの鋼管2の一例を示すもので、杭径DM1が48.6mmの場合を示す。この鋼管2は、杭径DM1を48.6mmとしたとき、肉厚T1を1.8mmに、周方向に連続する縦溝の数N1、すなわち、縦溝群G1(G1A、G1B)の縦溝R1の数N1を2に、縦溝R1の最深部ds1の長手方向長さ(管軸方向長さ)L1ds1を55mmに、図4の(A)、(B)に示すように、縦溝R1の深さD1を、つまり、縦溝R1の周方向両端縁を結ぶ仮想線ILから断面V字状溝R1の最深部ds1までの垂直深さを2.0mmに、縦溝R1の周方向幅W1を、すなわち、縦溝R1の周方向両端縁間の距離を12mmになるよう設定している。なお、符号L1ds1は、縦溝R1の最深部ds1の管軸方向長さ(長手方向長さ)を示す。隣り合う縦溝群G1のうち、縦溝R1の周方向位置が合致する縦溝群G1A、G1AまたはG1B、G1Bとの長手方向の間隔は、縦溝R1の最深部ds1の管軸方向両端部E1、E2が同一円周上にあるため、縦溝R1の最深部ds1の長手方向長さL1ds1(55mm)と同一となっている(縦溝R1の管軸方向長さL1>縦溝R1の最深部ds1の管軸方向の長さL1ds1)。例えば、上記の例では、最深部L1ds1の管軸方向長さが55mmの場合、縦溝R1の管軸方向長さL1は、61.5~63.0(実測値)となり(溝深さD1に応じて管軸方向長さL1に差が生じる)、最深部L1ds1の管軸方向長さを45mmにした場合、縦溝R1の管軸方向長さL1は実測値で60mm前後になる(後述する第2の実施形態の縦溝R2における図8の(E)参照)。これは縦溝R1と鋼管2の外周面との間に成型に伴う曲面部が形成されるためである。なお、第1ないし第3の各実施形態の鋼管2、22、23に共通する、縦溝R1(R2、R3)の深さD1(D2、D3)、長手方向長さ(管軸方向長さ)L1(L2、L3)、周方向幅W1(W2、W3)の各寸法を計測する部位については、図8において、第2の実施形態に係る鋼管22を例にとり後述する。
【0018】
ところで、上記第1の実施形態に係る鋼管2では、縦溝R1の深さD1を2mm~3mm未満に設定しているが、実際に試作品(サイズは杭径48.6mm×肉厚1.8mm)で試験片を製作し、引張強さ、耐力、伸び、コンクリートに対する摩擦性能等について性能試験を行った。縦溝R1の深さD1は2mmまでは所望の摩擦性能が得られたが、2mm以下では、摩擦性能が落ちることが確認された。また、深さD1を3mmから3mm以上とした場合、クラックの発生が見られる試験片がでた。溝の深さが浅いほど、製造が容易になり、製造時の生産設備の負荷を軽減でき、製造ラインの速度を上げることが可能になるものの、上述のように、深さD1は所定の範囲(2mm~3mm未満)で求められる性能を発揮することがわかった。かつ、杭の芯材として要求される付着力も十分確保できることがわかった。縦溝R1の周方向幅W1は、10mm~26mmの範囲であれば所望の性能が得られることがわかった。溝幅が広がることにより製造時の生産設備の負荷を軽減できる。また、縦溝R1の管軸方向長さL1は、20~100mmの範囲であれば所望の性能が得られることがわかった。ただ、100mm超であっても、性能が落ちることは認められなかったが、製造上、20~100mmの長さとすることが好ましい。長さL1が、20mm以下の場合、逆に性能は上がるものの、製造が困難で、生産性の低下や設備に負荷がかかることがわかった。このように、杭径DM1を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚T1を1.6mm~2.0mm未満、周方向に連続する縦溝群G1に含まれる縦溝R1の数N1を2~3、縦溝R1の長手方向長さ、すなわち、管軸方向長さL1を20~100mmかまたは100mm以上、縦溝R1の深さD1を2mm~3mm未満、縦溝R1の周方向幅W1を10mm~26mmに設定することにより、品質の安定や生産性の向上による合理化を図ることができる。
【0019】
次に、上記第1の実施形態に係る鋼管2の作用について説明する。上記第1の実施形態に係る鋼管2は、図3ないし図5に示すように、叙上の如く構成されているので、杭径DM1(40mmから70mm未満)が比較的小さい鋼管2を、コンクリートが打設される構造物の基礎に基礎杭として用いた場合、鋼管2の内外でコンクリートに対する摩擦抵抗力を生じ、杭径に対して支持力が最も発揮できる性能を発揮することができる。また、縦溝R1の形状も比較的シンプルなV字状溝となっているため、上下のローラ11、12の構造も簡素化することができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0020】
次に、本発明の第2の実施形態に係る鋼管22について説明する。この第2の実施形態に係る鋼管22は、図6ないし図9に示すように、杭径DM2が一般的な通常サイズのMタイプの鋼管に適用されるもので、杭径DM2を、70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚T2を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群G2に含まれる縦溝R2の数N2を3~5、縦溝R2の長手方向長さL2を好ましくは20~100mm、縦溝R2の深さD2を2.5mm~4mm未満、縦溝R2の周方向幅W2を13mm~30mmに設定し、そして縦溝R2の断面形状がV字状になるように設定するようにしている。また、上記第1の実施形態に係る鋼管2と同様に、長手方向で隣り合う縦溝群G2の縦溝R2の端部R2-E2、R2-E1と同一円周上に合致させて配置され、縦溝R2は、鋼管22の長手方向で隣り合う縦溝群G2A、G2Bの縦溝R2間の周方向中間に配置される。
【0021】
図6の(A)ないし(F)および図7は、このMタイプの鋼管22の一例を示すもので、杭径DM2が76.3mmの場合を示す。この鋼管22は、杭径DM2を76.3mmとしたとき、肉厚T2を1.8mmに、周方向に連続する縦溝の数N2、すなわち、縦溝群G2(G2A、G2B)の縦溝R2の数N2を3に、縦溝R2の長手方向長さL2を55mmに、縦溝R2の深さD2(断面V字状溝R2の最深部ds2から縦溝R2の周方向両端縁を結ぶ仮想線(第1の実施形態の仮想線ILに相当する)を垂直に結ぶ線の距離に相当する)を2.5mmに、縦溝R2の周方向幅W2を15mmになるよう設定している。この第2の実施形態に係る鋼管22では、叙上の如く構成されているので、杭径DM2(70mmから100mm未満)が通常の一般的な鋼管22を、コンクリートが打設された構造物の基礎に基礎杭として用いた場合、上記第1の実施形態に係る鋼管2と同様に、杭径に対して支持力が最も発揮できる性能を発揮することができる。なお、図9は、Mタイプの鋼管22について、縦溝群G2の縦溝R2の数N2を4に設定したときの例を示す斜視図である。また、図6の(A)ないし(D)はそれぞれ縦溝R2を模式的に示している。
【0022】
ところで、上記第2の実施形態に係る鋼管22では、縦溝R2の深さD2を2.5mm~4mm未満に設定しているが、実際に試作品(サイズは杭径76.3mm×肉厚1.8mm、)で試験片を製作し、引張強さ、耐力、伸び、コンクリートに対する摩擦性能等について性能試験を行った。縦溝R2の深さD2は2.5mmまでは所望の摩擦性能が得られたが、2.5mm以下では、摩擦性能が落ちることが確認された。また、深さD2を4mmから4mm以上とした場合、クラックの発生が見られる試験片がでた。このことから、深さD2は所定の範囲(2.5mm~4mm未満)で求められる性能を発揮することがわかった。かつ、鋼管杭の芯材として要求される付着力も十分確保できることがわかった。縦溝R2の周方向幅W2は、13mm~30mmの範囲であれば所望の性能が得られることがわかった。第1の実施形態と同様に、溝幅が広がることにより製造時の生産設備の負荷を軽減できる。また、縦溝R2の管軸方向長さL2は、20~150mmの範囲であれば所望の性能が得られることがわかった。ただ、100mm以上であっても、性能が落ちることは認められなかったが、製造上、20~100mmの長さとすることが好ましい。このように、杭径DM2を70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚T1を1.6mm~2.0mm未満、周方向に連続する縦溝群G2に含まれる縦溝R2の数N2を3~5、縦溝R2の長手方向長さ、すなわち、管軸方向長さL2を20~100mmかまたは100mm以上、縦溝R2の深さD2を2.5mm~4mm未満、縦溝R2の周方向幅W2を13mm~30mmに設定することにより、品質の安定や生産性の向上による合理化を図ることができる。
【0023】
なお、第1ないし第3の各実施形態の鋼管2、22、23に共通する、縦溝R1(R2、R3)の深さD1(D2、D3)、長手方向長さ(管軸方向長さ)L1(L2、L3)、周方向幅W1(W2、W3)の各寸法を計測する部位について、図8に基づいて、第2の実施形態に係る鋼管22を例にとり説明する。図8の(A)ないし(E)はそれぞれ、図6のMタイプの鋼管22が、溝付けされた帯状鋼体素材SC2と丸管状に成型された鋼管22とのそれぞれの形状とそれらの寸法を示して縦溝R2の深さD2、幅W2および管軸方向の長さL2を説明する説明図で、図8の(A)は帯状鋼体素材SC2の縦方向断面と丸管状に成型された鋼管22の径方向断面とを縦溝最深部ds2(最深部の管軸方向長さL2ds2)を中心にして比較して示す説明図、(B)は溝付け時の帯状鋼体素材SC2の縦断面形状と同溝深さ(SC2D2)と溝幅(SC2W2)の寸法を例示し曲線部の部位C1fないしC6fを表す説明図である。また、図8の(C)は成型後の鋼管22の径方向断面形状と縦溝R2の溝深さD2と溝幅W2の寸法を例示し曲線部の部位C1fs、C2fsを表す説明図、図8の(D)は成型後の鋼管22の縦溝R2の最深部ds2と縦溝上部の寸法を例示し縦溝R2とその近傍(一点鎖線参照)を示す周面の要部を表す説明図である。さらに、図8の(E)は成型後の鋼管22の管軸方向断面の要部を示し、縦溝R2の最深部ds2と縦溝上部の寸法を例示し曲線部C3fs、C4fs(管軸方向両端上部)、C5fs、C6fs(管軸方向両端下部)の形状と縦溝R2の管軸方向の長さL2を表す説明図である。各実施形態に係る所定の厚み(本発明の各実施形態では、1.6mmから2mm未満の肉厚)を有する平板状の帯状鋼体素材SC1~SC3では、縦溝R1~R3が形成される際、プレスの影響を受けるので、縦溝R1~R3の外側との近傍C1f、C2f、C3f、C4f、C5f、C6f(図8の(A)、(B)参照)に直線的にではなく緩やかな山型の曲線部分が生じる。ここで、縦溝R1~R3の外側との近傍C1f、C2fは、縦溝R1~R3の周方向両端部上部を、縦溝R1~R3の長手方向外側との近傍C3f、C4fは、縦溝R1~R3の管軸方向両端部上部を、縦溝R1~R3の長手方向外側との近傍C5f、C6fは、管軸方向両端部下部を示している。さらに、縦溝R1~R3が形成された帯状鋼体素材SC1~SC3では、丸管状に成型される際も、プレスの影響を受けるので、押し広げられる縦溝R1~R3の外側との近傍C1fs、C2fs、C3fs、C4fs、C5fs、C6fs(図8の(A)、(C)、(E)参照)に直線的にではなくより緩やかな山型の曲線部分が生じる(図8の(D)に加圧により形状変化の影響を受ける範囲を1点鎖線の楕円形部分で示す)。このように、図8の(A)ないし(E)に示すように、例えば、Mタイプ(杭径D2:70mmから100mm未満)のうち杭径D2が、76.3mmの場合、縦溝最深部ds2の管軸方向長さを決定する金型の寸法は55mmで設計されるものの、その金型を使用して丸管状にプレスして成型した場合、縦溝R2の長さL2は、図8の(D)、(E)に示すように、79.0mmと長くなり、これが縦溝R2の管軸方向長さL2となる。このとき、縦溝R2の最深部ds2の管軸方向長さL2ds2は、金型の寸法55mmと一致した寸法となる。本発明の各実施形態では、縦溝R1~R3の管軸方向長さL1~L3は、あくまで曲面部分が管軸方向の直線部に達した管軸方向両端縁間を指している。つまり、管軸方向両端縁の曲面が直線に変化する部位間が管軸方向長さL1~L3となる。そして、縦溝R1~R3の円周方向幅W1~W3は、縦溝R1~R3の円周方向両端上部の曲面部分が頂部に達した部位間、すなわち、縦溝R1~R3の周方向両端縁を結ぶ仮想線ILの直線距離を指している。
【0024】
このように、これら図8の(A)ないし(E)に示されるように、成型装置4により塑性変形された鋼管22(2、32)の幅W2(W1、W3)は、帯状鋼体素材SC2(SC1、SC3)に形成された縦溝R2(R1、R3)の周方向両端縁間の寸法(距離)(SC2W2=15.0mm、図8の(B)参照)より長くなっていることがわかる(W2=19.0mm)。図8の(A)は、縦溝R2が形成された平板状の帯状鋼体素材SC2の形状と、成型後の鋼管の寸法の変化を示している。この図8の(A)では、矢印で成型時に働く力の方向(左右上下に引っ張られる)を示している。これらから明らかなように、板状の帯状鋼体素材SC2に形成されたV字状の縦溝R2の寸法が、鋼管22に成型する段階で左右上下に力が加わり、溝深さD2は左右上下に引っ張られることにより浅くなることがわかる。また、幅W2は左右上下に引っ張られることにより広がることがわかる。
【0025】
次に、本発明の第3の実施形態に係る鋼管32について説明する。この第3の実施形態に係る鋼管32は、杭径DM3が比較的大きいLタイプの鋼管に適用されるもので、杭径DM3を、杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚T3を1.6mm~2.0mm未満、周方向縦溝群G3に含まれる縦溝R3の数N3を4~7、縦溝R3の長手方向長さL3を好ましくは20~100mm、縦溝R3の深さD3を4mm~6mm、縦溝R3の周方向幅W3を16mm~35mmに設定し、縦溝R3の断面形状をV字状に設定している。また、上記第1、第2の実施形態に係る鋼管2、22と同様に、長手方向で隣り合う縦溝群G3の縦溝R3の端部R3-E2、R3-E1を同一円周上に合致させて配置し、縦溝R3は、鋼管32の長手方向で隣り合う縦溝群G3A、G3Bの縦溝R3間の周方向中間に配置するようになっている。
【0026】
図10の(A)ないし(F)は、このLタイプの鋼管32の一例を示すもので、杭径DM3が114.3mmの場合を示す。この鋼管32は、杭径DM3を114.3mmとしたとき、肉厚T3を1.8mmに、周方向に連続する縦溝R3の数N3、すなわち、縦溝群G3(G3A、G3B)の縦溝R3の数N3を5に、縦溝R3の最深部ds3の長手方向長さ(管軸方向長さ)L3ds3を55mmに、縦溝R3の深さD3(断面V字状溝R3の最深部ds3から縦溝R3の周方向両端縁を結ぶ仮想線(第1の実施形態の仮想線ILに相当する)を垂直に結ぶ線の距離を6.2mmに、縦溝R3の周方向幅W3を18mmになるよう設定している。この第3の実施形態に係る鋼管32では、叙上の如く構成されているので、杭径DM3(100mmから130mm)が比較的大きい鋼管32を、コンクリートが打設された構造物の基礎に基礎杭として用いた場合、上記第1、第2の実施形態に係る鋼管2、22と同様に、杭径に対して支持力が最も発揮できる性能を発揮することができる。なお、縦溝R1~R3は、長手方向長さL1~L3が短く、数が多いほどコンクリートに対する鋼管杭の付着力は増すと考えられるものの、実際の試験では、100mmまでであれば、有意な性能上の差は認められなかった。なお、図10の(A)ないし(D)はそれぞれ縦溝R3を模式的に示している。
【0027】
また、杭径DM1ないしDM2の製造にあたっては、実際に成型装置(フォーミング装置)4により縦溝を製造する際、板厚を1.6mm~2.0mm未満に設定すると、縦溝の深さD1~D2を4mm以上とするには技術的に困難であることがわかった。
さらに、杭径DM3の製造にあたっては、実際に成型装置(フォーミング装置)4により縦溝を製造する際、板厚を1.6mm~2.0mm未満に設定すると、縦溝の深さD3を6.1mm以上とするには技術的に困難であることがわかった。
また、縦溝長さL1~L3は20mmより短くすることも製造上可能ではあるものの、溝付け回数が増加するため、設備の消耗が激しくなるのと、ラインスピードも落とさざるを得なくなり、生産効率が著しく低下する虞がある。このため、ベストモードは縦溝長さL1~L3を20~100mmとしているが、これに限られるものではなく、杭長さに応じて100mm以上としてもよいことはいうまでもない。
さらに、上記上限値下限値を実験値に基づいてベストモードとしているが、縦溝長さL1~L3についてベストモードの上記上限値下限値に限られるものではなく、その場合は、強度上の性能あるいはコンクリートとの摩擦力が上記ベストモードの上限値下限値内の製品に比較して多少落ちる可能性があるものの、所望の強度や高い摩擦性能が確保できるのであれば許容範囲とすることができる。
【0028】
なお、上記各実施形態に係る鋼管2、22、32では、縦溝は、各縦溝の最深部の管軸方向両端部をそれぞれ、長手方向で隣り合う縦溝群の縦溝の端部と同一円周上に合致させて配置されるようにしているがこれに限られるものではなく、管軸方向に間隔を隔てて配置されるか、または管軸方向に一部重なり合って配置されるようにしてもよい。鋼管2、22、32の長手方向で隣り合う縦溝群G1、G2、G3の縦溝R1、R2、R3の周方向中間に配置するようにしているがこれに限られるもではなく、周方向に中間の位置から所望の角度で長手方向に順次ずらすようにしてもよい。また、上記各実施形態に係る鋼管2、22、32では、縦溝の形状を断面V字状としているがこれに限られるものではなく台形状としてもよい。また、本願発明では、500N(ニュートン)の鋼管を使用している。これに対し、従来、セメント内に挿入される基礎杭用鋼管は主に引張強度290N(ニュートン)または400Nである。このため、薄肉化、軽量化をしても座屈強度は従来の鋼管と同等以上を維持することが可能になる。従って、資源の低減に繋がることから、環境に配慮した製品ともなっている。但し、所望の強度を満たすのであれば500N(ニュートン)に限られるものではない。
【符号の説明】
【0029】
2 鋼管
R1 縦溝
G1 周方向の縦溝群
DM1 杭径
T1 杭の肉厚
N1 周方向縦溝群の縦溝の数
L1 縦溝の長手方向長さ(管軸方向長さ)
D1 縦溝の深さ
W1 縦溝の周方向幅
【要約】
【課題】杭径に応じて最適な支持力を得ることができる凹陥縦溝を有する鋼管を得る。
【解決手段】鋼管2は、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝R1を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群G1を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成し、杭径DM1に応じて、杭の肉厚T1と周方向縦溝群G1の数N1と縦溝R1の長手方向長さL1と縦溝R1の深さD1と縦溝R1の周方向幅W1とのベストモードの範囲を決定するようにしている。各縦溝R1の両端部R1-E1、R1-E2はそれぞれ、長手方向で隣り合う縦溝群G1A、G1Bの縦溝R1の端部R1-E2、R1-E1と同一円周上に合致させて配置される。縦溝R1は、断面形状がV字状に形成される。
【選択図】図4
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