IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本メナード化粧品株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】IL-37産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/515 20060101AFI20240620BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20240620BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240620BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61K36/515 ZNA
A61K31/375
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P29/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019200110
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070670
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平川 真志
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
(72)【発明者】
【氏名】山羽 宏行
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-004231(JP,A)
【文献】特表2002-513383(JP,A)
【文献】特表2013-503853(JP,A)
【文献】特表2015-524483(JP,A)
【文献】Biochimie,2017年,Vol.142,pp.51-62
【文献】International Journal of Pharmacology,2016年,Vol.12, No.4,pp.272-289
【文献】Molecular Immunology,2017年,Vol.87,pp.132-140
【文献】BBA -General Subjects,2019年05月22日,Vol.1863,pp.1270-1282
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2018年,Vol.495,pp.2396-2403
【文献】European Journal of Integrative Medicine,2019年04月,Vol.27,pp.34-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/33-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
CHEMnetBASE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲンチアナ抽出物及び、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸アルキルエステル、L-アスコルビン酸硫酸エステル、L-アスコルビン酸配糖体から選ばれるいずれかのL-アスコルビン酸誘導体を含有することを特徴とするIL-37産生促進剤(神経変性疾患の治療剤は除く)。
【請求項2】
L-アスコルビン酸誘導体がアスコルビン酸リン酸マグネシウムであることを特徴とする請求項記載のIL-37産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲンチアナの抽出物及び/又はL-アスコルビン酸誘導体を有効成分として含有することを特徴とするインターロイキン―37(IL-37)産生促進剤、PI3K―AKT-mTOR経路阻害剤及びオートファジー調節剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オートファジーとは、細胞質に出現した隔離膜が細胞質の成分を取り囲むことでオートファゴソームを形成し、オートファゴソームがリソソームと融合することで細胞質の成分を分解する機構である。オートファジーは飢餓への適応反応であり、低アミノ酸状態や低インスリン状態ではオートファジーが一過的に誘導され、細胞質成分を分解することで栄養素を供給する。又一方で、ストレス下で蓄積された損傷細胞小器官やタンパク質を除去する役割も果たし、細胞内の恒常性維持にも寄与する。
【0003】
オートファジーの制御異常は、細胞内に異常タンパク質を蓄積させる。アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン病等の神経変性疾患は、細胞内に異常タンパク質が蓄積することが病因のひとつと考えられており、オートファジーを調節することは、このような病気の予防若しくは軽減において非常に重要である(非特許文献1)。
【0004】
PI3K―AKT-mTOR(PI3キナーゼ/Akt/ラパマイシン哺乳類ターゲット)経路は、広範な正常細胞機能に必要とされる主要なシグナル伝達ノードであり、オートファジーの制御においても重要な役割を果たす(非特許文献2)。PI3K―AKT-mTOR経路の阻害はオートファジーを誘導し、神経変性疾患の予防若しくは軽減に有益であり得る(特許文献1)。
【0005】
IL-37は、サイトカインのIL-1ファミリーのメンバーであり、IL-1β、IL-6及びTNF-α等の炎症促進性サイトカインによって引き起こされる炎症を減少させ、生体内において炎症に対する防御的な役割を担う抗炎症性のサイトカインである(非特許文献3)。又、IL-37は細胞内においてPI3K-AKT-mTOR経路を阻害し、オートファジーを活性化することが知られている(非特許文献2)。
【0006】
ゲンチアナは、ヨーロッパ等に広く分布している植物であり、根を自然発酵させた後に乾燥したものが生薬として扱われており、食欲増進や消化不良、胃痛、胸やけ、胃炎、下痢、吐き気等の治療に内服するほか、外傷の治療に用いられる。今までに、ゲンチアナの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする染毛剤組成物及び感作性抑制剤(特許文献2)、皮膚外用剤(特許文献3)、化粧料用組成物(特許文献4)及び液体口腔用組成物(特許文献5)等が知られている。しかしながら、ゲンチアナの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするIL-37産生促進剤、PI3K―AKT-mTOR経路阻害剤及びオートファジー調節剤については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2015-524483
【文献】特開2003-335642
【文献】特開2005-154375
【文献】特開2014-62077
【文献】特開2015-86164
【非特許文献】
【0008】
【文献】Hara.T.,Nature,441,885-889(2006)
【文献】Ting-Ting.Li.,Molecular Immunology, 87,132-140(2017)
【文献】H.Jia.,BioMed Research International,Article ID 3058640(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決する課題は、IL-37産生を高める成分を見出し、これを有効成分とする、作用点が明確であり、且つ優れたIL-37産生促進剤、PI3K―AKT-mTOR経路阻害剤及びオートファジー調節剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題の解決に向け鋭意検討を行った結果、ゲンチアナ抽出物及びL-アスコルビン酸誘導体に優れたIL-37産生促進作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、ゲンチアナの抽出物及び/又はL-アスコルビン酸誘導体を有効成分として含有することを特徴とするIL-37産生促進剤、PI3K―AKT-mTOR経路阻害剤及びオートファジー調節剤に関する。
【0012】
本発明において、ゲンチアナの抽出物とL-アスコルビン酸誘導体を併用することで、IL-37産生促進作用をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゲンチアナ抽出物及びL-アスコルビン酸誘導体は、IL-37産生促進作用に優れていた。このゲンチアナ抽出物及び/又はL-アスコルビン酸誘導体を含有することを特徴とするPI3K―AKT-mTOR経路阻害剤及びオートファジー調節剤は、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型痴呆、レビー小体型痴呆、PD痴呆、多系統委縮症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症及びクローン病等の神経変性疾患に対して予防及び処置等の効果を発揮することができる。又、本発明のIL-37産生促進剤、PI3K―AKT-mTOR経路阻害剤及びオートファジー調節剤は、作用が緩和な植物の抽出物又はビタミン類を有効成分とすることから、副作用がなく安全性が高い。従って、化粧品、医薬部外品、医薬品及び食品に安心して使用できる。
【0014】
更に、ゲンチアナ抽出物とL-アスコルビン酸誘導体を併用することで、IL-37産生促進作用をより一層向上させることが可能であり、神経変性疾患に対してより高い予防及び処置等の効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のIL-37とは、 IL-1ファミリーに属するサイトカインである。IL―37a~IL―37eの5つのアイソフォームがあり、末梢単核球細胞、単球、形質細胞、樹状細胞、上皮細胞、胸腺、子宮及び睾丸等多くの器官で検出されている。interleukin-37、interleukin37、IL37、IL1F7、IL-1F7、IL-1H、IL-1H4、FIL1、FIL1(ZETA)、FIL1Z、IL-1RP1及びIL1RP1とも呼ばれる。
【0016】
本発明におけるPI3Kとは、ホスファチジルイノシトール3―キナーゼとも呼ばれ、イノシトールリン脂質のイノシトール環3位のヒドロキシル基のリン酸化を行う酵素である。
【0017】
本発明におけるAKTとは、プロテインキナーゼBとも呼ばれ、グルコースの代謝やアポトーシス、細胞増殖、転写、細胞遊走といった複数の細胞プロセスにおいて重要な役割を果たすセリン/スレオニンキナーゼである。AKTは、イノシトールリン脂質が、PI3Kをはじめとしたキナーゼの触媒作用を受けた際に活性化され、このシグナル伝達経路がPI3K-AKT経路と呼ばれる。
【0018】
本発明におけるmTORは、哺乳動物のラパマイシン標的とも呼ばれる細胞内シグナル伝達に関与するプロテインキナーゼである。PI3K-AKT経路の下流エフェクターであり、細胞の成長、増殖、及び生存を調節する。
【0019】
本発明におけるオートファジーとは、細胞内のタンパク質を分解する仕組みであり、自食とも呼ばれる。マクロオートファジー、マイクロオートファジー及びシャペロン介在性オートファジーの3種類が確認されている。オートファジーの制御異常は、細胞内に異常タンパク質を蓄積させ、神経変性疾患の原因となる。つまり、オートファジーを調節することにより、神経変性疾患の治療が可能である。
【0020】
本発明で用いるゲンチアナはリンドウ科リンドウ属の植物であり、学名:Gentiana Luteaである。
【0021】
本発明で用いるゲンチアナ抽出物とは、植物体の葉、茎、花、果実、種子、根等の植物体の一部又は全草から抽出したものである。好ましくは、ゲンチアナの根から抽出して得られるものが良い。これらはゲンチアナの名称で生薬として市販されているので、これを使用すれば良い。
【0022】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は、1種でも2種以上を混合して用いても良い。
【0023】
上記抽出物は抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて濃縮、希釈、濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。本発明で用いるゲンチアナは天然由来の植物であり、ゲンチアナから抽出される成分は多様な構造の化合物が多数同時に存在する混合物である。従って、含有する成分の構造又は特性を全て明らかにすることは困難であり、抽出物として扱うことが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるゲンチアナ抽出物の含有量は、内用の場合、投与量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人1人当たりの1日の量として5mg以上が好ましく、10~500mgがより好ましい。更に、20~200mgが最も好ましい。一方、外用の場合、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。更に、0.01~5重量%が最も好ましい。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、又、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0025】
本発明におけるL-アスコルビン酸誘導体は、一般にビタミンC誘導体と言われるものであり、L-アスコルビン酸も含む。L-アスコルビン酸誘導体としては、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸アルキルエステル、L-アスコルビン酸硫酸エステル、L-アスコルビン酸配糖体等が挙げられ、具体的には、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステル、L-アスコルビン酸-3-リン酸エステル、DL-α-トコフェロール-2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル等のL-アスコルビン酸リン酸エステル、パルミチン酸L-アスコルビル、イソステアリン酸L-アスコルビル、ジオレイン酸L-アスコルビル等のL-アスコルビン酸アルキルエステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステル、L-アスコルビン酸-3-硫酸エステル等のL-アスコルビン酸硫酸エステル、2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸等のL-アスコルビン酸配糖体等が挙げられる。
【0026】
又、本発明においてはこれらの塩も使用可能でありナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩が用いられる。
【0027】
本発明においては、L-アスコルビン酸誘導体として好ましくは化1で表されるアスコルビン酸リン酸マグネシウムを使用する。
【化1】
【0028】
本発明に用いられるL-アスコルビン酸誘導体の含有量は、内用の場合、投与量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人1人当たりの1日の量として10mg以上が好ましく、20~100mgがより好ましい。一方、外用の場合、固形物に換算して0.0002重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、又、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0029】
本発明のゲンチアナ抽出物及び/又はL-アスコルビン酸誘導体を含有することを特徴とするIL-37産生促進剤、PI3K―AKT-mTOR経路阻害剤及びオートファジー調節剤は、食品、医薬部外品、医薬品、化粧品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、軟膏、パップ剤等が挙げられる。上記成分をそのまま使用しても良く、本発明の効果を損なわない範囲で、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶解補助剤、溶剤等を用いることができる。具体的には、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、ラウリン脂、ワセリン、パラフィン、高級アルコール等である。
【0030】
次に、本発明を詳細に説明するため、具体的な実施例を挙げて説明する。これらの実施例は効果を具体的に説明するもので、発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0031】
製造例1 ゲンチアナのエタノール抽出物
ゲンチアナの根の乾燥物500gにエタノール5Lを加え、5時間還流抽出した。抽出終了後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、ゲンチアナのエタノール抽出物を8.5g得た。
【0032】
製造例2 ゲンチアナの熱水抽出物
製造例1で使用したものと同じゲンチアナの根の乾燥物20gに蒸留水1Lを加え、100℃にて1時間抽出した。得られた抽出液を濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して、ゲンチアナの熱水抽出物を0.9g得た。
【0033】
製造例3 ゲンチアナの1,3-ブチレングリコール抽出物
製造例1で使用したものと同じゲンチアナの根の乾燥物20gに1,3-ブチレングリコール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、ゲンチアナの1,3-ブチレングリコール抽出物を157g得た。
【実施例2】
【0034】
本発明のゲンチアナ抽出物及び/又はL-アスコルビン酸誘導体は、処方例として下記の製剤化を行うことができる。
【0035】
処方例1 飲料
処方 含有量(g)
1.ゲンチアナの1,3-ブチレングリコール抽出物 0.1
2.アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.1
3.クエン酸 0.7
4.果糖ブドウ糖液糖 60.0
5.香料 0.1
6.精製水 39.0
全量 100.0
[製造方法]成分6に成分1~5を加え、攪拌溶解して濾過し、加熱殺菌後、50mLガラス瓶に充填する。当該飲料を1日1本摂取することで、ゲンチアナ抽出物を50mg/日摂取できる。又アスコルビン酸リン酸マグネシウムを50mg/日摂取できる。
【0036】
処方例2 錠剤
処方 含有量(g)
1.ゲンチアナの熱水抽出物 5.0
2.アスコルビン酸リン酸マグネシウム 5.0
3.トウモロコシデンプン 10.0
4.精製白糖 20.0
5.カルボキシメチルセルロースカルシウム 10.0
6.微結晶セルロース 35.0
7.ポリビニルピロリドン 5.0
8.タルク 10.0
全量 100.0
[製造方法]成分1~6を混合し、次いで成分7の水溶液を結合剤として加え、常法により顆粒化する。これに滑沢剤として成分8を加えた後、1錠100mgの錠剤に打錠する。当該錠剤を1日12錠摂取することで、ゲンチアナ抽出物を60mg/日摂取できる。又アスコルビン酸リン酸マグネシウムを60mg/日摂取できる。
【0037】
処方例3 錠菓
処方 含有量(g)
1.ゲンチアナのエタノール抽出物 1.0
2.アスコルビン酸リン酸マグネシウム 1.0
3.乾燥コーンスターチ 49.0
4.エリスリトール 40.0
5.クエン酸 5.0
6.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
7.香料 1.0
全量 100.0
[製造方法]成分1~5に精製水を適量加えて練和し、押出し造粒した後、乾燥して顆粒を得る。顆粒に成分6及び7を加えて打錠し、1個1gの錠菓を得る。当該錠菓を1日6個摂取することで、ゲンチアナ抽出物を60mg/日摂取できる。又アスコルビン酸リン酸マグネシウムを60mg/日摂取できる。
【0038】
処方例4 カプセル剤
処方 含有量(g)
1.ゲンチアナのエタノール抽出物 5.0
2.微結晶セルロース 60.0
3.トウモロコシデンプン 15.0
4.乳糖 18.0
5.ポリビニルピロリドン 2.0
全量 100.0
[製造方法]成分1~5を混合して顆粒化した後、2号硬カプセルに250mg充填してカプセル剤を得る。当該カプセル剤を1日6個摂取することで、ゲンチアナ抽出物を75mg/日摂取できる。
【0039】
処方例5 トローチ
処方 含有量(g)
1.ゲンチアナの熱水抽出物 1.0
2.マルチトール 50.0
3.キシリトール 45.0
4.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
5.香料 1.0
全量 100.0
[製造方法]成分1~3を混合し、流動層造粒装置で造粒する。得られた顆粒に成分4及び5を加えて打錠し、1個1gのトローチを得る。当該トローチを1日6個摂取することで、ゲンチアナ抽出物を60mg/日摂取できる。
【0040】
処方例6 軟膏
処方 含有量(g)
1.ゲンチアナの1,3-ブチレングリコール抽出物 1.0
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水 65.9
全量 100.0
[製造方法]成分2~5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6~8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0041】
処方例7 散剤
処方 含有量(g)
1.アスコルビン酸リン酸マグネシウム 5.0
2.微結晶セルロース 40.0
3.トウモロコシデンプン 55.0
全量 100.0
[製造方法]成分1~3を混合し、常法により散剤を得る。当該散剤を1日1g摂取することで、アスコルビン酸リン酸マグネシウムを50mg/日摂取できる。
【0042】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【0043】
実験例1 ヒト表皮角化細胞におけるIL-37産生に及ぼすゲンチアナ抽出物及びアスコルビン酸リン酸マグネシウムの影響
コンフルエントになったヒト表皮角化細胞(HaCaT)にゲンチアナ抽出物(製造例1のエタノール抽出物)及び/又はアスコルビン酸リン酸マグネシウム(昭和電工)を加え、血清を含まないDMEM培地にて24時間培養した後、RNAiso plus(TAKARA)を用いて総RNAの抽出を行った。尚、ゲンチアナ抽出物の終濃度は12.5又は125μg/mLにて行った。アスコルビン酸リン酸マグネシウムの終濃度は1mMにて行った。内部標準としてGAPDHを用いた。総RNAを基に、SYBR Select Master Mix(ライフテクノロジーズ)を用いたリアルタイムRT-PCR法により、IL-37mRNA発現量を内部標準であるGAPDHmRNA発現量に対する割合として求めた。尚、各遺伝子の発現量の測定に使用したプライマーは次の通りである。
【0044】
IL-37用のプライマーセット
TCTTTGCATTAGCCTCATCC(配列番号1)
ATCAGTTTCTCCTTCTTCAGC(配列番号2)
GAPDH用のプライマーセット
TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号3)
TCTTCTGGGTGGCAGTGATG(配列番号4)
【0045】
その結果を表1に示す。表1の通り、ゲンチアナ抽出物及びアスコルビン酸リン酸マグネシウムはヒト表皮角化細胞におけるIL-37mRNA発現量を増加させた。又、ゲンチアナ抽出物とアスコルビン酸リン酸マグネシウムを併用することにより一層高いIL-37産生促進作用を示した。尚、製造例2のゲンチアナの熱水抽出物及び製造例3のゲンチアナの1,3-ブチレングリコール抽出物においても同様の効果が認められた。
【0046】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0047】
ゲンチアナ抽出物又はL-アスコルビン酸誘導体を用いることにより、IL-37の産生が促進され、PI3K―AKT-mTOR経路を阻害し、オートファジーを誘導することで、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型痴呆、レビー小体型痴呆、PD痴呆、多系統委縮症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症及びクローン病等の神経変性疾患を予防若しくは軽減する化粧品、医薬部外品、医薬品及び食品を提供することができる。又、ゲンチアナ抽出物とL-アスコルビン酸誘導体を併用することにより、これらの効果をより一層高めることができる。
【配列表】
0007506903000001.app