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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】超音波診断システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020123818
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020362
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】榎田 誠
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060637(JP,A)
【文献】特開2015-093140(JP,A)
【文献】特開平06-339478(JP,A)
【文献】特開2006-204475(JP,A)
【文献】特開2004-298205(JP,A)
【文献】特開平06-007326(JP,A)
【文献】特開2013-123605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158411(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ本体と、
人体の膝に巻き付けて使用し、内圧の調整によって前記膝に対する密着度を可変とするマンシェット型の支持バンド、および、前記支持バンドの内側と外側を連通し、前記プローブ本体を取り付け可能であり、前記内圧を増加させることによって前記プローブ本体を前記膝に押し付けるように前記プローブ本体を保持する開口部を有す音波診断用プローブ保持器具と、
前記膝に対して付加される荷重を計測する荷重計測部と
を備える、超音波診断システム
【請求項2】
前記超音波診断用プローブ保持器具は、前記支持バンドを前記膝に巻き付けた状態において前記開口部の径方向内側に、超音波を透過するジェルを含む緩衝材をさらに備える、請求項1に記載の超音波診断システム。
【請求項3】
前記緩衝材は、透明である、請求項2に記載の超音波診断システム。
【請求項4】
前記プローブ本体は、把持部と、走査面を有して前記把持部よりも大きなヘッド部とを備え、
前記開口部は、前記把持部を保持する硬質の第1保持部と、前記ヘッド部を保持する第2保持部とを備え、
前記第2保持部は、前記支持バンドを前記膝に巻き付けた状態において、前記ヘッド部の前記走査面を前記膝に向かって押圧するように前記膝と対向する押圧面を有している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断用プローブ保持器具および超音波診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
変形性膝関節症(以下、膝OAともいう。)は、近年、中高齢者によく発症する疾患である。膝OAでは、主に膝関節の内側区画の組織破壊とともに内側半月板のMRD(Medial Radial Displacement)と称される偏位が見られる。早期の膝OAの病態把握のためには、MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査を利用して内側半月板のMRDが確認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-122581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
早期の膝OAの診断において、MRI検査は、得られる情報量も多く、他の疾患の否定も可能である一方、高度な施設基準、画像精度のばらつき、および高額な検査費用などの問題がある。また、早期の膝OAに対しては、特殊な撮像方法を使用しない限り、明確かつ容易に異常を検出するのが困難である。また、内側半月板のMRDは膝に対して付加される荷重によって変化し得るため、膝に対して一定の荷重が付加される条件下での検査が好ましい。しかしながら、MRI検査では、装置の制約上、膝に対して一定の荷重を付加することが困難であることが多い。
【0005】
代替的な検査として、手持ち型の超音波プローブを膝関節内側部分に当て、MRI検査と同様に内側半月板のMRDを確認する方法も考えられる。この方法では、被検者が起立した状態で検査することで、膝に対して一定の荷重を付加した状態で検査できる。また、検査設備が簡便であるとともに検査費用も安価となる。しかしながら、この方法は、超音波プローブを診断毎に同じ態様で膝に押し当てる必要があり、検査の再現性の観点から熟練した検査技術を要する。
【0006】
本発明は、超音波プローブの膝への固定を再現性高くかつ容易に実現する音波診断システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明プローブ本体と、人体の膝に巻き付けて使用し、内圧の調整によって前記膝に対する密着度を可変とするマンシェット型の支持バンド、および、前記支持バンドの内側と外側を連通し、前記プローブ本体を取り付け可能であり、前記内圧を増加させることによって前記プローブ本体を前記膝に押し付けるように前記プローブ本体を保持する開口部を有す音波診断用プローブ保持器具と、前記膝に対して付加される荷重を計測する荷重計測部とを備える、超音波診断システムを提供する。
【0008】
この構成によれば、支持バンドの内圧の増加によりプローブ本体(超音波プローブ)を膝に押し付けることができるため、安定した診断を実現できる。また、患者毎に膝のサイズは異なるが、支持バンドの内圧調整により、患者毎に適したプローブ本体の固定を容易に実現できる。従って、超音波プローブの膝への固定を再現性高くかつ容易に実現できる。また、荷重計測部によって膝に対する荷重を計測できるため、診断毎に膝にかかる荷重がばらつくことを抑制でき、荷重条件を揃えて安定した診断結果を得ることができる。
【0009】
前記超音波診断システムは、前記支持バンドを前記膝に巻き付けた状態において前記開口部の径方向内側に、超音波を透過するジェルを含む緩衝材をさらに備えてもよい。
【0010】
この構成によれば、緩衝材によってプローブ本体と膝との間に生じ得る隙間を埋めることができ、緩衝材を介してプローブ本体を膝に対して密着させることができる。従って、安定した診断を実現できる。
【0011】
前記緩衝材は、透明であってもよい。
【0012】
この構成によれば、緩衝材を透かして膝を視認できることにより、プローブ本体を適切な診断箇所に正確に当てることが容易となる。
【0013】
前記プローブ本体は、把持部と、走査面を有して前記把持部よりも大きなヘッド部とを備え、前記開口部は、前記把持部を保持する硬質の第1保持部と、前記ヘッド部を保持する第2保持部とを備え、前記第2保持部は、前記支持バンドを前記膝に巻き付けた状態において、前記ヘッド部の前記走査面を前記膝に向かって押圧するように前記膝と対向する押圧面を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、プローブ本体の膝への固定を再現性高くかつ容易に実現する構成を具体的に実現できる。特に、第1保持部が硬質であることにより、把持部を強固に安定して保持できる。また、第2保持部の押圧面により、プローブ本体を膝に向かって押圧できる。ここで、硬質とは、プローブ本体を安定して保持できる程度の硬い材質をいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波プローブの膝への固定を再現性高くかつ容易に実現する音波診断システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断システムの斜視図。
図2】超音波診断用プローブ保持器具の第1断面図。
図3】超音波診断用プローブ保持器具の第2断面図。
図4】超音波診断用プローブ保持器具の第3断面図。
図5図1の矢視A方向から開口部を覗いた側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1を参照して、本実施形態の超音波診断システム1は、プローブ本体(超音波プローブ)10と、プローブ本体10を保持する超音波診断用プローブ保持器具100と、荷重計測装置(荷重計測部)20とを含む。
【0021】
プローブ本体10は、公知のものを使用でき、ユーザが握る部分である円柱状の把持部11と、把持部11よりも大きなヘッド部12とを有している。ヘッド部12の先端には走査面12aが設けられている。膝OAの診断においては、主に膝Kの内側に対してプローブ本体10の走査面12aを概略垂直に当てることが好ましい。また、診断毎に当て方を変えることなく、毎回同じ態様で走査面12aを膝Kに当てて診断することが好ましい。
【0022】
超音波診断用プローブ保持器具100は、プローブ本体10の膝Kへの固定を再現性高くかつ容易に実現するためのものである。膝OAなどの膝Kの疾患では、このようにプローブ本体10の膝Kへの固定を再現性高くかつ容易に実現できることにより、安定した診断を容易に行うことができる。
【0023】
図1では、左足の膝Kの背面が示されている。向きXが膝Kの内側を示し、向きYが上向き(頭部へと向かう向き)を示している。図2以降でも同様に表示で向きを示し、向きZは前方を示す。
【0024】
超音波診断用プローブ保持器具100は、支持バンド110を有している。支持バンド110は、人体の膝Kに巻き付けて使用される。図1では、支持バンド110は膝に巻き付けられた状態で示されているが、膝Kから取り外すときには帯状に広げられる。支持バンド110には、このような巻き付けおよび取り外しを可能にするマジックテープ(登録商標)などが取り付けられていてもよい。
【0025】
支持バンド110は、内部に空気を溜めることが可能なマンシェット型であり、チューブ120を介して図示しない空気ポンプと流体的に接続されている。空気ポンプは手動式または電動式であり得る。支持バンド110は、空気ポンプの空気の供給量の調整により内圧が調整される。支持バンド110は、内圧の調整によって内径を調整可能であり、即ち膝Kに対する密着度が可変となっている。支持バンド110とチューブ120との接続部には逆止弁121が設けられている。逆止弁121により空気ポンプから支持バンド110に供給された空気は逆流することなく、支持バンド110の内圧は保たれる。
【0026】
図2を合わせて参照して、支持バンド110は、膝Kの全体と、太腿の一部と、脹脛の一部とに対して巻き付けられている。図2では、模式的に支持バンド110の断面全体にハッチングが施されているが、実際には支持バンド110内には空気層が存在する。これは以降の断面図でも同様である。支持バンド110は、空気ポンプから診断に適する所定の内圧まで当該空気層に空気を供給されることにより、膝Kのまわりに密着する。このようにして、膝Kに対して支持バンド110を容易に固定できる。
【0027】
図3,4を合わせて参照して、支持バンド110には、内側と外側を連通する開口部111が設けられている。開口部111には、プローブ本体10(図1参照)を取り付け可能なソケット112が取り付けられている。開口部111(即ち、ソケット112)には、支持バンド110の内圧を増加させることによってプローブ本体10を膝Kに押し付ける態様でプローブ本体10が保持される。なお、本実施形態では、支持バンド110にソケット112が装着されている例を示すが、ソケット112は構成部品として必須ではない。即ち、ソケット112と実質的に同形状の開口部111を支持バンド110に形成することによってプローブ本体10の保持機能を達成してもよい。
【0028】
本実施形態では、開口部111(即ちソケット112)は、把持部11(図1参照)を保持する第1保持部113と、ヘッド部12(図1参照)を保持する第2保持部114とを有している。
【0029】
第1保持部113は、把持部11と相補的な円筒状の形状を有し、好ましくは硬質である。ここで、硬質とは、プローブ本体10を安定して保持できる程度の硬い材質をいう。
【0030】
第2保持部114は、第1保持部113から連続し、ヘッド部12と相補的な形状を有している。第2保持部114は、支持バンド110の取り付け状態において、第1保持部113よりも内径側(膝Kに近い側)に位置し、ヘッド部12を膝に向かって押圧するように膝Kと対向する押圧面115を有している。プローブ本体10を取り付けた状態で支持バンド110の内圧を増加させると、押圧面115がプローブ本体10のヘッド部12を径方向内側へ押圧する(矢印B参照)。
【0031】
図3,4では、図示を明瞭にするために、プローブ本体10は図示されていない。また、図3,4では、第1保持部113と第2保持部114とに異なる種類のハッチングを付しているが、第1保持部113および第2保持部114は一体であってもよい。
【0032】
支持バンド110を膝Kに巻き付けた状態において、開口部111の径方向内側には、プローブ本体10と膝Kとの間に位置するように、超音波を透過するジェルを含む緩衝材130が設けられている。緩衝材130は、開口部111の径方向内端を塞ぐように支持バンド110に取り付けられている。ただし、緩衝材130は、必要に応じて省略され得る。
【0033】
好ましくは、緩衝材130は、透明である。この場合、プローブ本体10を支持バンド110から取り外した状態で開口部111を覗くと、透明な緩衝材130を透かして膝Kが見えるようになっている。緩衝材130を透かして膝Kを視認できることにより、プローブ本体10を適切な診断箇所に正確に当てることが容易となる。
【0034】
図5は、図1の矢視A方向から開口部111を覗いた図である。
【0035】
診断の際には膝Kの内側の適切な箇所にマーキングMが施されることがある。開口部111を通じてマーキングMを開口部111の中央で視認できることにより、適切な箇所にプローブ本体10を配置できることがわかる。従って、支持バンド110の膝Kへの取り付け方が適切であることを確認できる。
【0036】
再び図1を参照して、模式的に示されているが、荷重計測装置20は、膝Kに対して付加される荷重を計測するものである。荷重計測装置20としては、公知の体重計やその他の荷重計測可能な装置を用いてもよい。
【0037】
上記の超音波診断システム1を用いて、膝OAを診断する方法の一例について説明する。
【0038】
まず、患者の膝Kの内側にマーキングMを施し、患者が起立した状態で、即ち膝Kに負荷がかかる状態で支持バンド110を膝Kに巻き付ける。このとき、開口部111を通じて(緩衝材130を透かして)マーキングMを視認することにより、支持バンド110を膝Kに適切に取り付ける。次に、開口部111(ソケット112)にプローブ本体10を装着し、空気ポンプを使用して支持バンド110の内圧を上昇させる。そして、診断に適する内圧に調整した後に超音波プローブ10による内側半月板のMRDの測定を行う。このとき、好ましくは、荷重計測装置20で測定する膝Kへの負荷荷重を診断に適した一定値に調整する。
【0039】
本実施形態によれば、支持バンド110の内圧の増加によりプローブ本体10を膝Kに押し付けることができるため、安定した診断を実現できる。また、患者毎に膝Kのサイズは異なるが、支持バンド110の内圧調整により、患者毎に適したプローブ本体10の固定を実現できる。従って、プローブ本体10の膝Kへの固定を再現性高くかつ容易に実現できる。
【0040】
また、緩衝材130によってプローブ本体10と膝Kとの間に生じ得る隙間を埋めることができ、緩衝材130を介してプローブ本体10を膝に対して密着させることができる。従って、安定した診断を実現できる。
【0041】
また、上記開口部111(ソケット112)の詳細構造により、プローブ本体10の膝への固定を再現性高くかつ容易に実現できる。特に、第1保持部113が硬質であることにより、把持部11を強固に安定して保持できる。また、第2保持部114の押圧面115により、プローブ本体10を膝に向かって押圧できる。
【0042】
また、荷重計測装置20によって膝Kに対する荷重を計測できるため、診断毎に膝にかかる荷重がばらつくことを抑制でき、荷重条件を揃えて安定した診断結果を得ることができる。
【0043】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0044】
上記実施形態では、支持バンド110および付随する空気ポンプは、空気を利用するエアマンシェット型の物を例示したが、空気以外のその他の気体または液体を利用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 超音波診断システム
10 プローブ本体(超音波プローブ)
11 把持部
12 ヘッド部
12a 走査面
20 荷重計測装置(荷重計測部)
100 超音波診断用プローブ保持器具
110 支持バンド
111 開口部
112 ソケット
113 第1保持部
114 第2保持部
115 押圧面
120 チューブ
121 逆止弁
130 緩衝材
K 膝
M マーキング
図1
図2
図3
図4
図5