(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】熱処理装置及び熱処理システム
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20240620BHJP
F27B 9/02 20060101ALI20240620BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F27D3/12 Z
F27B9/02
F27D9/00
(21)【出願番号】P 2020153973
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390008431
【氏名又は名称】高砂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100195545
【氏名又は名称】鮎沢 輝万
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎二
(72)【発明者】
【氏名】加納 晴信
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-346743(JP,A)
【文献】特開2008-232516(JP,A)
【文献】特開2014-196854(JP,A)
【文献】特開平11-125491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/12
F27B 9/02
F27D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対して加熱処理を行う加熱室を画定する断熱容器と、
前記断熱容器の側部に形成された第一の開口部と、
前記第一の開口部を開閉する第一の開閉手段と、
前記第一の開口部を介して前記被処理物を搬送するコンベアと、
を備えた熱処理装置であって、
前記断熱容器の底部に形成された第二の開口部と、
前記第二の開口部を開閉する第二の開閉手段と、
前記コンベアを、前記断熱容器の下方の退避位置と、前記断熱容器内の搬送位置との間で、前記第二の開口部を通して昇降する昇降手段と、を備える、
ことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記コンベアは、金属製の搬送チェーンを備える、
ことを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記加熱室には、前記被処理物が載置される載置部が設けられ、
前記コンベアは、一対の搬送チェーンを備え、
前記加熱室には、前記一対の搬送チェーンの間に位置し、前記被処理物が載置される載置部が設けられ、
前記第二の開口部及び前記第二の開閉手段は、前記搬送チェーン毎に設けられる、
ことを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記断熱容器、前記コンベア及び前記昇降手段が収容される炉体を備え、
前記炉体の上部空間に前記断熱容器が配置され、
前記炉体の下部空間に前記昇降手段が配置され、
前記退避位置において前記コンベアは前記下部空間に位置する、
ことを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
第一の熱処理装置と、第二の熱処理装置とが、被処理物の搬送方向に連続して配置された熱処理システムであって、
前記第一の熱処理装置及び前記第二の熱処理装置は、それぞれ、
被処理物に対して加熱処理を行う加熱室を画定する断熱容器と、
前記断熱容器の両側部にそれぞれ形成された第一の開口部と、
前記第一の開口部毎に設けられ、前記第一の開口部を開閉する第一の開閉手段と、
前記第一の開口部を介して前記被処理物を搬送するコンベアと、
前記断熱容器の底部に形成された第二の開口部と、
前記第二の開口部を開閉する第二の開閉手段と、
前記コンベアを、前記断熱容器の下方の退避位置と、前記断熱容器内の搬送位置との間で、前記第二の開口部を通して昇降する昇降手段と、を備え、
前記第一の熱処理装置の前記コンベアと、前記第二の熱処理装置の前記コンベアとにより、前記第一の熱処理装置から前記第二の熱処理装置へ前記被処理物を搬送する、
ことを特徴とする熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱処理における被処理物の搬送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理装置は、装置外の被処理物を加熱室に搬送したり、逆に被処理物を加熱室外に搬送する搬送装置を備えている。搬送装置の形態として、加熱室に進退するフォークを用いた形態(特許文献1)や、トレイプッシャを用いた形態(特許文献2)或いは搬送チェーン用いた形態(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-319512号公報
【文献】特開2008-248336号公報
【文献】特開2017-142053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォークを用いた形態では、加熱室に隣接してフォークが退避する搬送室が必要となり、被処理物の搬送方向に装置が大型化する傾向にある。トレイプッシャを用いた形態ではトレイの案内機構や搬送機構が複雑化する傾向にある。搬送チェーンを用いた形態は比較的簡便であるが、加熱室のように高温環境下に長時間暴露されると潤滑性が低下し、金属製のチェーンでは焼き付く場合がある。特許文献3には耐熱型のチェーン(セラミックチェーン)が提案されているが、高価であり、また、強度の点で大型化する傾向にある。
【0005】
本発明の目的は、被処理物の搬送方向で小型化が図れ、かつ、焼き付きを抑制可能な熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
被処理物に対して加熱処理を行う加熱室を画定する断熱容器と、
前記断熱容器の側部に形成された第一の開口部と、
前記第一の開口部を開閉する第一の開閉手段と、
前記第一の開口部を介して前記被処理物を搬送するコンベアと、
を備えた熱処理装置であって、
前記断熱容器の底部に形成された第二の開口部と、
前記第二の開口部を開閉する第二の開閉手段と、
前記コンベアを、前記断熱容器の下方の退避位置と、前記断熱容器内の搬送位置との間で、前記第二の開口部を通して昇降する昇降手段と、を備える、
ことを特徴とする熱処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被処理物の搬送方向で小型化が図れ、かつ、焼き付きを抑制可能な熱処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱処理システムの模式図。
【
図4】(A)及び(B)は別の例の開閉ユニットの動作説明図。
【
図5】(A)及び(B)は別の例の開閉ユニットの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は本発明の一実施形態に係る熱処理システム1の模式図であり、
図2(A)~
図3(C)は熱処理システム1を構成する熱処理装置3Aの動作説明図である。図中、矢印X、Yは互いに直交する水平方向を、矢印Zは上下方向を示す。熱処理システム1は、ワークWの搬送方向であるX方向に、搬送装置2A、熱処理装置3A、熱処理装置3B、熱処理装置4及び搬送装置2Bが連続して配置されており、制御ユニット6による各装置の制御によって、ワークWをX方向に搬送しつつ、その熱処理を行う。以下の説明において、上流側、下流側という場合はワークWの搬送方向を基準とする。
【0011】
制御ユニット6は、CPUに代表されるプロセッサ、ROM、RAM等の記憶デバイス、制御ユニット6の外部のデバイス(センサやアクチュエータ)とプロセッサとの間で信号を入出力するI/Oインタフェース等を備える。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムが格納され、プロセッサがこのプログラムを実行し、センサの検知結果に基づいてアクチュエータ等を駆動することで熱処理システム1が動作する。
【0012】
搬送装置2Aはシステム1へ搬入される被処理物Wを熱処理装置3Aへ搬送する装置であり、搬送装置Bは処理済みの被処理物Wをシステム1から外部へ搬出する装置である。搬送装置2A及び2Bは、それぞれコンベアCVを備える。本実施形態のコンベアCVは、搬送チェーン11を備えたチェーンコンベアであり、コンベアCVは、同期的に駆動されるY方向に離間した二列の搬送チェーンユニット10を備えている。各搬送チェーンユニット10は、無端の搬送チェーン11と、複数のスプロケット12と、駆動ユニット13とを備える。本実施形態の搬送チェーン11は金属製の搬送チェーンであり、被処理物Wが載置される多数のリンクが、ピンを介して連結されて構成される。無端の搬送チェーン11は複数のスプロケット12に巻き回されており、モータを駆動源とした駆動ユニット13によるスプロケット12の回転によって、X-Z平面上で循環的に走行する。搬送チェーン11の走行により、搬送チェーン11上の被処理物WがX方向に搬送される。
【0013】
熱処理装置3A及び3Bは、被処理物Wに対して加熱処理を行うセルである。熱処理装置3A及び3Bは同様の構成を有している。以下、熱処理装置3A及び3Bを区別しない場合は、熱処理装置3と呼ぶことにする。
【0014】
熱処理装置3は、ハウジング(炉体)30を有する。ハウジング30は、断熱容器31、コンベアCV及び昇降ユニット36を収容する。ハウジング30は、内部を気密に維持可能な鋼板製の中空体であり、ハウジング30のX方向の各側部には、それぞれ被処理物Wの出し入れが可能な開口部30aが形成されている。熱処理装置3Aの上流側の開口部30aは開閉ユニット5Aにより開閉される。熱処理装置3Aの下流側の開口部30a及び熱処理装置3Bの上流側の開口部30aは開閉ユニット5Bにより開閉される。熱処理装置3Bの下流側の開口部30aは開閉ユニット5Cにより開閉される。
【0015】
開閉ユニット5A~5Cは、それぞれ、開口部30aを開閉する扉50と、扉50を開位置と閉位置との間で移動するアクチュエータ51とを備える。アクチュエータ51は例えばZ方向に伸縮する油圧シリンダである。なお、扉50はY方向に移動されてもよく、また、アクチュエータ51は、電動モータとその駆動力を扉50に伝達する機構(例えばチェーン機構)であってもよい。
【0016】
熱処理装置3Aのハウジング30の内部は、開閉ユニット5A及び5Bが閉状態の場合に、気密状態となる。熱処理装置3Bのハウジング30の内部は、開閉ユニット5B及び5Cが閉状態の場合に、気密状態となる。
【0017】
ハウジング30内の上部空間には、断熱容器31が配置されている。断熱容器31は被処理物Wに対して加熱処理を行う加熱室を画定する。断熱容器31は断熱材で形成された中空体である。加熱室を断熱容器31で画定することで、加熱処理時においてハウジング30の内部空間のうち、断熱容器31の外部の空間を相対的に低温に維持することが可能となる。
【0018】
断熱容器31のX方向の各側部には、それぞれ被処理物Wの出し入れが可能な開口部31aが形成されている。上流側の開口部31aは開閉ユニット33Aにより開閉され、下流側の開口部31aは開閉ユニット33Bにより開閉される。開閉ユニット33A及び33Bは、それぞれ、開口部31aを開閉する扉33aと、扉33aを開位置と閉位置との間で移動するアクチュエータ33bとを備える。アクチュエータ33bは例えばZ方向に伸縮する油圧シリンダである。なお、扉33aはY方向に移動されてもよく、また、アクチュエータ33bは、電動モータとその駆動力を扉33aに伝達する機構(例えばチェーン機構)であってもよい。
【0019】
断熱容器31の内部には、複数のヒータ35と、載置部(炉床)32とが設けられている。ヒータ35は、その駆動により発熱し、断熱容器31内を加熱する。載置部32は被処理物Wが載置される台である。ヒータ35の熱により載置部32上の被処理物Wの加熱処理を行うことができる。
【0020】
断熱容器31の底部には、コンベアCVを出し入れ可能な開口部31bが形成されている。開口部31bは、Y方向に離間して二か所形成されており、二か所の開口部31bの間に載置部32が配置されている。各開口部31bには、開閉ユニット34が設けられている。各開閉ユニット34は、対応する開口部31bを開閉する。各開閉ユニット34は、開口部31bを開閉する扉34aと、扉34aを開位置と閉位置との間で移動するアクチュエータ34bとを備える。扉34aはX方向の軸を回動中心として回動自在に設けられており、アクチュエータ34bは例えばモータを駆動源とした機構であって扉34aを回動させる。断熱容器31の内部は、開閉ユニット33A及び33B並びに開閉ユニット34が閉状態の場合に、外部に対して断熱状態となる。
【0021】
熱処理装置3のコンベアCVは、搬送装置2A及び2BのコンベアCVと同様のコンベアである。熱処理装置3においてもコンベアCVはY方向に離間して二列設けられた搬送チェーンユニット10を備えており、これら一対の搬送チェーンユニット10の間に載置部32が位置している。二つの開口部31bは、一対の搬送チェーンユニット10に対応して配置されている。具体的には、X-Y平面上で、一方の開口部31bは一方の搬送チェーンユニット10と同じ位置に形成され、他方の開口部31bは他方の搬送チェーンユニット10と同じ位置に形成されている。
【0022】
熱処理装置3のコンベアCVは、断熱容器31の下方の退避位置(
図1等の位置)と、断熱容器31内の搬送位置(
図2(C)等の位置)との間で、開口部31bを通して、昇降ユニット36によって昇降される。本実施形態の昇降ユニット36は、ベース部36a、昇降テーブル36b、一対のクロスアーム36c、アクチュエータ36dを備えたパンタグラフ式の昇降機である。
【0023】
各クロスアーム36cは、二本のアームが中央部で回動自在に連結して構成されており、一方のアームの一端は、ベース部36aに回動自在に連結され、他端は昇降テーブル36bにX方向にスライド自在かつ回動自在に連結されている。他方のアームの一端は、昇降テーブル36bに回動自在に連結され、他端はベース部36aにX方向にスライド自在かつ回動自在に連結されている。アクチュエータ36dは例えば油圧シリンダであり、ベース部36側でクロスアーム36cの端部の位置をX方向にスライドさせ、これにおり昇降テーブル36bが昇降する。退避位置におけるコンベアCVと、昇降ユニット36はハウジング30内の下部空間に配置されている。
【0024】
熱処理装置3は、減圧ユニット37と、ガス供給ユニット38とを備える。減圧ユニット37はハウジング30内を減圧する機構であり、ハウジング30の内部と配管を介して連通した真空ポンプ37aと、ハウジング30内と真空ポンプ37aとの間の配管の途中に設けられた制御弁37bとを備える。真空ポンプ37aの駆動によりハウジング30内を排気し、減圧することができる。制御弁37bを開弁するとハウジング30と真空ポンプ37aとが連通状態となり、閉弁すると遮断状態となる。ハウジング30の減圧に際して、真空ポンプ37aは事前に作動させておき、制御弁37bを閉弁状態から開弁状態へ切り替えることで、減圧を開始することができる。
【0025】
ガス供給ユニット38はハウジング30内に窒素ガス等のガスを供給する機構であり、ハウジング30の内部と配管を介して連通したガスタンク38aと、ハウジング30内とガスタンク38aとの間の配管の途中に設けられた制御弁38bとを備える。制御弁38bを開弁するとガスタンク38aからハウジング30へガスが供給され、閉弁するとガスの供給が遮断される。
【0026】
熱処理装置4は、熱処理装置3によって加熱処理がなされた被処理物Wを冷却するセルである。本実施形態の熱処理装置4は、ハウジング40と、被処理物Wを搬送するコンベアCVと、冷却器4とを備える。ハウジング40は、内部を気密に維持可能な中空体であり、X方向の各端部に、それぞれ開口部40aが形成されている。冷却器4は、一例として、ファン41aと、モータを駆動源としてファン41aを回転する駆動ユニット41bとを備える、ファン41aの回転によりハウジング40内の空気を循環し、コンベアCV上に載置される被処理物Wを冷却する。冷却方式としては、油冷、ガス冷、放冷であってもよい。熱処理装置4のコンベアCVも、搬送装置2A及び2BのコンベアCVと同様のコンベアである。
【0027】
係る構成のシステム1では、搬送装置2AのコンベアCVから、熱処理装置3AのコンベアCVへ被処理物Wが搬送され、載置部32上に被処理物Wが載置されて加熱処理が行われる。その後、熱処理装置3AのコンベアCVから、熱処理装置3BのコンベアCVへ被処理物Wが搬送され、載置部32上に被処理物Wが載置されて再び加熱処理が行われる。その後、熱処理装置3BのコンベアCVから、熱処理装置4のコンベアCVへ被処理物Wが搬送され、熱処理装置4内で被処理物Wの搬送を一時停止して被処理物Wの冷却処理が行われる。その後、熱処理装置4のコンベアCVから、搬送装置2BのコンベアCVへ被処理物Wが搬送され、搬送装置2Bによってシステム外へ被処理物Wが搬出される。
【0028】
熱処理装置3A、3Bにおいて、被処理物Wに対して高温の加熱処理を行う場合、コンベアCVが長時間高温に曝されると、潤滑油が揮発して潤滑性が低下し、焼き付きの原因となる。本実施形態では、断熱容器31内で被処理物Wの加熱処理を行い、かつ、コンベアCVが搬送時にのみ断熱容器31内に進入し、加熱処理時には断熱容器31外へ退避する。これにより、コンベアCVが高温に曝される時間を短縮し、コンベアCVの潤滑性を長期間にわたって維持することができる。
図2(A)~
図3(C)を参照して、熱処理装置3に対する被処理物Wの搬入時の動作について説明する。これらの図では熱処理装置3Aを例示するが、熱処理装置3Bも同様の動作を行う。
【0029】
図2(A)は搬入前の状態を示している。コンベアCVは退避位置に位置し、開閉ユニット34は閉状態にある。なお、
図2(A)には図示されていないが、開閉ユニット33A、33Bや開閉ユニット5A、5Bは閉状態にある。ハウジング30内が減圧ユニット37により真空状態とされていた場合は、ガス供給ユニット38により窒素ガス等をハウジング30内に供給して大気圧まで復圧し、外の圧力と同圧にする。
【0030】
次に、
図2(B)に示すように開閉ユニット34を開状態にする。断熱容器31の底部の開口部31bが開放される。
図2(C)に示すように昇降ユニット36を駆動してコンベアCVを上昇して搬送位置へ移動する。コンベアCVの各搬送チェーンユニット10は、対応する開口部31bを通って断熱容器31内に進入する。コンベアCVの搬送面(搬送高さ)Sは載置部32よりも僅かに高い位置である。
【0031】
図3(A)に示すように開閉ユニット5A及び開閉ユニット33Aを開状態とする。搬送装置2AのコンベアCVと熱処理装置3AのコンベアCVとを駆動することで、
図3(B)に示すように、被処理物Wが断熱容器31内に搬送される。被処理物Wが載置部32上に到達すると、各コンベアCVの搬送を停止し、
図3(C)に示すように昇降ユニット36を駆動してコンベアCVを降下して退避位置へ移動する。被処理物Wは載置部32上に載置される。また、開閉ユニット5A、開閉ユニット33A及び開閉ユニット34を閉状態とする。
【0032】
その後、減圧ユニット37によってハウジング30内の減圧等を必要に応じて行い、ヒータ35を駆動して断熱容器31内を加熱する。これにより被処理物Wに対して加熱処理を行うことができる。加熱処理として例えば浸炭処理や焼鈍処理等を行ってもよい。加熱処理中、コンベアCVは断熱容器31外に位置しているので、高温に曝されることを抑制できる。
【0033】
加熱処理が収容すると、熱処理装置3Aから熱処理装置3Bへ被処理物Wを搬送する。その際の各装置の動作は、
図2(A)~
図3(C)を参照して説明した上述した手順と略同じであり、熱処理装置3Aから熱処理装置3Bへ各コンベアCVを駆動して被処理物Wを搬送する。熱処理装置3Bから熱処理装置4への被処理物Wの搬送もまた同様である。
【0034】
以上の通り、本実施形態によれば、熱処理装置3のコンベアCVが高温に晒される時間を短縮でき、コンベアCVの潤滑性を長期間にわたって維持することができる。したがって、コンベアCVに焼き付きが生じることも防止できる。したがって、コンベアCVの搬送チェーン11として、高価かつ大型のセラミック製の搬送チェーンを使用する必要はなく、金属製の搬送チェーンを用いることができる。
【0035】
また、熱処理装置3にコンベアCVを用いることで、フォークを用いた形態等のように熱処理装置3に隣接して搬送室を設ける必要もない。したがって、
図1に例示するように熱処理装置3A~4を隣接して配置することができ、被処理物Wの搬送方向(X方向)で熱処理装置3の小型化も図れる。
【0036】
更に、熱は上昇する性質があるところ、内部が高温となる断熱容器31をハウジング30の上方空間に、昇降ユニット36や退避位置でのコンベアCVをハウジング30の下方空間に、それぞれ配置することで、断熱容器31から漏れ出る熱が昇降ユニット36や退避位置でのコンベアCVに及ぶ影響も抑制できる。
【0037】
<第二実施形態>
開閉ユニット34のアクチュエータ34bは、エアシリンダ、油圧シリンダ等の伸縮式の駆動源を用いた機構であってもよい。
図4(A)及び
図4(Bはその一例を示す開閉ユニット34の動作説明図であり、
図4(A)は閉状態、
図4(B)は開状態をそれぞれ示している。
【0038】
図示の例では扉34aは軸34cに固定され、軸34cの回転によって回動する。軸34cはハウジング30の側壁を貫通してハウジング30の外部まで延設されている。アクチュエータ340は、ハウジング30の外部に配置されており、アーム341と、エアシリンダ342と、を備える。
【0039】
アーム341はその一端が軸34cに固定されており、かつ、軸34cの径方向に延設されている。アーム341の他端にはエアシリンダ342のロッド342aの先端が互いに回動自在に連結されている。エアシリンダ342の後端部は、軸支部342bにより回動自在に支持されている。
【0040】
図4(A)はエアシリンダ342が収縮状態にある場合を示しており、扉34aは開口部31bを閉鎖した閉位置にある。この状態からエアシリンダ342を伸長すると、アーム341が軸34cを回転させつつ、エアシリンダ342自体が軸支部342bを回動中心として回動し、
図4(B)に示すように扉34aが開口部31bを開放した開位置に回動する。
図4(B)の状態からエアシリンダ342を収縮すると
図4(A)の状態に戻ることになる。この構成例においても、第一実施形態と同様の効果を得られる。
【0041】
<第三実施形態>
第一実施形態では、開閉ユニット34の構成例として、扉34aが回動により開口部31bを開閉する構成を例示したが扉34aがスライドして開口部31bを開閉する構成であってもよい。
図5(A)及び
図5(B)はその一例を示す。
【0042】
図示の例では、開閉ユニット34’は、開口部31bを開閉する扉34a’と扉34aを開位置と閉位置との間で移動するアクチュエータ34b’とを備える。扉34a’はY方向に平行移動可能に設けられており、アクチュエータ34b’は例えばエアシリンダや油圧シリンダ等であり、その伸縮方向はY方向である。
図5(A)では開閉ユニット34’が閉状態にあり、
図5(B)では開閉ユニット34’が開状態にある。この構成例においても、第一実施形態と同様の効果を得られる。
【0043】
<他の実施形態>
上記実施形態では、コンベアCVとして搬送チェーン11を有するコンベアを例示したが、コンベアCVはローラコンベアであってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、被処理物Wが熱処理装置3A→熱処理装置3B→熱処理装置4の順に一方向搬送され、各熱処理を受ける構成としたが、熱処理装置3A→熱処理装置3B→熱処理装置4→熱処理装置3B→熱処理装置4等のように、被処理物Wを途中で逆方向に搬送し、被処理物Wに対して冷却処理後に加熱処理を行う手順が含まれてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、熱処理装置3のハウジング30が開口部30aと、断熱容器30の開口部31a並びに対応する開閉ユニット(5A、5B、33A、33B)をそれぞれ二つ備えた構成を例示したが、それぞれ一つ備えた構成としてもよい。この構成の場合、一つの各開口部30a、31aを被処理物Wの搬入口、搬出口として用い、コンベアCVの搬送方向の切り替え(搬送チェーン11の走行方向の切り替え)により、被処理物Wの搬入及び搬出を行えばよい。
【0046】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 熱処理システム、3A 熱処理装置、3B 熱処理装置、31 断熱容器、31a 開口部、33A 開閉ユニット、33B 開閉ユニット、CV コンベア、31b 開口部、34 開閉ユニット、36 昇降ユニット