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  • 特許-せん断強度測定用治具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】せん断強度測定用治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/04 20060101AFI20240620BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20240620BHJP
   G01N 3/24 20060101ALI20240620BHJP
   G01N 3/34 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N3/04 P
G01N3/04 B
G01N3/00 Q
G01N3/24
G01N3/34 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020178908
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069943
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593004843
【氏名又は名称】メークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅明
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173196(JP,A)
【文献】特開2007-278791(JP,A)
【文献】登録実用新案第3130550(JP,U)
【文献】実公昭46-002703(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/04
G01N 3/00
G01N 3/24
G01N 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦筋と横筋を溶接によって接合した接合鉄筋の接合部のせん断強度を測定するためにせん断強度測定機に取り付けられるせん断強度測定用治具であって、
前記接合鉄筋を保持する保持部であって、上方側から下方側に向かって次第に幅狭に形成された保持部を備えた本体と、
前記本体を前記せん断強度測定機に取り付けるためのシャフトと、
前記保持部に保持させた前記接合鉄筋の前記横筋を長手方向に上方から支持する支持部材と、
を備えていることを特徴とするせん断強度測定用治具。
【請求項2】
請求項1に記載のせん断強度測定用治具において、
前記支持部材は、本体の横幅よりも長く形成されていることを特徴とするせん断強度測定用治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のせん断強度測定用治具において、
前記本体の正面には前記接合鉄筋を前記保持部に位置させるための開口部が設けられ、
前記開口部に対向する位置の前記支持部材には切欠き部が設けられていることを特徴とするせん断強度測定用治具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のせん断強度測定用治具において、
前記保持部は、断面略三角形状の傾斜部材を斜面側が内側を向くようにして配置することによって上方側から下方側に向かって次第に幅狭に形成されると共に、前記傾斜部材は着脱自在に配置されていることを特徴とするせん断強度測定用治具。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のせん断強度測定用治具において、
前記シャフトは前記縦筋の中心軸と当該シャフトの中心軸を合わせることができるように位置調整が可能とされていることを特徴とするせん断強度測定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断強度測定用治具に関し、さらに詳しくは、正確なせん断強度の測定を可能とするせん断強度測定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接によって接合された鉄筋の接合部のせん断強度を測定するためにせん断強度測定機、例えば、特許文献1に開示された「せん断測定機」のような測定機器を用いてせん断強度が測定される。そして、せん断強度試験を行う場合の試験用の鉄筋としては、一般に縦筋と横筋を十字状に直交させ、その交差部分を溶接によって接合した接合鉄筋が用いられる。
【0003】
特許文献1に示された「せん断測定機」は、図7に示すように、縦筋51と横筋52を溶接して接合した試験片(接合鉄筋)50の横筋52をせん断測定装置(図示せず)に試験片固定具100を介して取り付け、縦筋51をせん断測定装置に設けた引張手段(図示せず)によって下方に引っ張ることによって、溶接部分のせん断強さを測定するものであり、試験片固定具100は、本体101と、本体101に設けられたせん断測定装置に着脱自在に固定されるシャフト103と、横筋52を載置する断面形状が略V字型の載置部105を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4622923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような試験片固定具100の場合、せん断測定装置によって縦筋51を下方側に向かって荷重を加えた場合に接合部55(図5(a)~(c)参照)が下方に引き込まれ、横筋52の接合部55の両側が上方に向かうようにして折り曲げられた状態となってしまう場合があった。横筋52が折り曲げられてしまうと正確なせん断強度を測定することができないという問題があった。
【0006】
また、接合鉄筋50は縦筋51と横筋52が交差する溶接点において、同じサイズの鉄筋を用いた場合であっても、例えば、図5(a)~(c)に示すように、溶接部の溶け込み具合や、節と節の間(谷)に入る場合と節の上(山)に乗った場合の相違によって縦筋51の中心軸から横筋52の幅サイズが数mm単位で変化する。例えば、図5(b)に示すように、溶接点が節と節の間(谷)に入った場合の縦筋51の中心から横筋52の側面までの距離をXとすると、溶接点が深く溶け込んだ場合(図5(a))にはその距離はX-αとなり、溶接点が節の上(山)に乗った場合(図5(c))にはその距離はX+αとなる。そのため、試験片固定具100のシャフト103をせん断測定装置に固定する場合に、シャフト101の中心軸と縦筋51の中心軸が一致しない場合がある。また、横筋52の径サイズの相違によってもシャフト101の中心軸と縦筋51の中心軸がズレる。試験片固定具100の中心軸と縦筋51の中心軸が一致しないと縦筋51の下方への引っ張り方向が鉛直方向からズレるため正しいせん断強度を測定することができないという問題があった。さらに、縦筋51の下方への引っ張り方向がズレると、縦筋51が下方への引き込まれるのに応じて横筋52が回転してしまい、これも正しいせん断強度を測定することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、せん断測定装置によって縦筋を下方側に向かって荷重を加えて接合部を下方に引き込んだ場合であっても、横筋の接合部の両側が上方に折り曲げられることなく水平状態を維持したままでせん断強度を測定することが可能なせん断強度測定用治具を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、せん断測定装置のシャフトと接合鉄筋の縦筋の中心軸とを一致させた状態でせん断強度の測定を行うことが可能なせん断強度測定用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、縦筋と横筋を溶接によって接合した接合鉄筋の接合部のせん断強度を測定するためにせん断強度測定機に取り付けられるせん断強度測定用治具であって、前記接合鉄筋を保持する保持部であって、上方側から下方側に向かって次第に幅狭に形成された保持部を備えた本体と、前記本体を前記せん断強度測定機に取り付けるためのシャフトと、前記保持部に保持させた前記接合鉄筋の前記横筋を長手方向に上方から支持する支持部材とを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のせん断強度測定用治具において、前記支持部材は、本体の横幅よりも長く形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のせん断強度測定用治具において、前記本体の正面には前記接合鉄筋を前記保持部に位置させるための開口部が設けられ、前記開口部に対向する位置の前記支持部材には切欠き部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のせん断強度測定用治具において、前記保持部は、断面略三角形状の傾斜部材を斜面側が内側を向くようにして配置することによって上方側から下方側に向かって次第に幅狭に形成されると共に、前記傾斜部材は着脱自在に配置されている。
【0014】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明は、請求項1からのいずれか1項に記載のせん断強度測定用治具において、前記シャフトは前記縦筋の中心軸と当該シャフトの中心軸を合わせることができるように位置調整が可能とされている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るせん断強度測定用治具によれば、保持部に保持させた接合鉄筋の横筋を長手方向に上方から支持する支持部材を設けたのでせん断測定装置によって縦筋を下方側に向かって引き込んでも横筋が折れ曲がることが防止され、正確なせん断強度を測定することができるという効果がある。
【0016】
また、本発明に係るせん断強度測定用治具によれば、せん断強度測定機に取り付けるためのシャフトの中心軸と縦筋の中心軸を合わせることができるように位置調整可能としたので溶接部の溶け込み具合の相違による縦筋の中心軸から横筋の側面までの長さが異なる場合(図5(a)~(c)参照)であっても正確なせん断強度の測定が可能となる。また、シャフトの中心軸と縦筋の中心軸を合わせることができるように位置調整可能としたので、縦筋を鉛直方向へ引き込むことが可能となり、横筋の回転を抑制して正確なせん断強度を測定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係るせん断強度測定用治具の一実施形態の平面図である。
図2図2は、図1に示すせん断強度測定用治具の正面図である。
図3図3は、図1に示すせん断強度測定用治具の側面図である。
図4図4(a)は図1に示すせん断強度測定用治具のB-B断面図、図4(b)は図1に示すせん断強度測定用治具のA-A断面図である。
図5図5(a)は接合鉄筋の溶接部が深く溶け込んだ場合の説明図、図5(b)は溶接部が節と節の間(谷)に入った場合の説明図、図5(c)は溶接部が節の上(山)に乗った場合の説明である。
図6図6は、図1に示すせん断強度測定用治具の斜視図である。
図7図7は、従来のせん断強度測定用治具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るせん断強度測定用治具の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明に係るせん断強度測定用治具の一実施形態の平面図、図2図1に示すせん断強度測定用治具の正面図、図3図1に示すせん断強度測定用治具の側面図である。
【0019】
図示されたせん断強度測定用治具10は、縦筋51と横筋52を溶接によって接合した接合鉄筋50の接合部55(図5(a)~(c)参照)のせん断強度を測定するためにせん断強度測定機(図示せず)に取り付けられるものであり、概略として、接合鉄筋50を保持する保持部15を備えた本体11と、本体11をせん断強度測定機に取り付けるためのシャフト13と、保持部15に保持させた接合鉄筋50の横筋52を長手方向に上方から支持する支持部材17を備えて構成されている。
【0020】
本体11は、図3に示すように、側面視が略L字状に形成された金属製部材であり、上部にシャフト13が着脱自在に取り付けられている。シャフト13の下端側にはネジ溝が設けられており、本体11の頂部に穿設されたネジ孔にねじ込まれることによって本体11に取り付けられるようになっている。本体11の正面には接合鉄筋50を保持部15に位置させるために開口部14(図2参照)が設けられている。支持部材17を取り外した状態で、接合鉄筋50の縦筋51を開口部14から挿入し、横筋52を保持部15に配置することで接合鉄筋50せん断強度測定用治具10に配置することができる。
【0021】
略L字状に形成された本体11の下部には断面略三角形状の傾斜部材18が配置されている。傾斜部材18は三角柱形状をしており、斜面側が内側を向くようにして配置することにより、保持部15は上方側から下方側に向かって次第に幅狭になるようにされている。これにより、異なる径サイズの横筋52を備えた接合鉄筋50であっても保持することが可能となる。また、傾斜部材18は着脱可能とされ、大きさや傾斜面の角度が異なる他の傾斜部材18を装着することで各種の径サイズの横筋52を備えた接合鉄筋50を保持することが可能となる。
【0022】
本体11の上部側の左右の側面の両側にはそれぞれ補助金具19,19がネジ19a,19aによって取り付けられており、補助金具19,19にはそれぞれ支持部材17を固定するための所定の長さを有するボルト16,16が取り付けられている。ボルト16,16をねじ込むことにより支持部材17で保持部15に配置された横筋52を上方からしっかりと押圧する。
【0023】
支持部材17は、所定の厚みを有する平板状の金属製の板材である。接合鉄筋50の横筋52を保持部15に保持させた状態でボルト16,16によって支持部材17を固定することにより横筋52を長手方向に沿って上方からしっかりと支持する。これにより、縦筋51を下方側に向かって引き込んでも横筋52が折れ曲がることが防止され、正確なせん断強度を測定することが可能となる。本実施形態では、支持部材17は本体11の横幅よりも長く形成されており、横筋52の折れ曲がりを確実に防止するようになっている。尚、支持部材17は必ずしも本体11の横幅よりも長く形成されていなくてもよく、本体11の横幅と同じ長さであってもよいが、できるだけ長い幅で横筋52を押圧した方が折れ曲がり防止効果は高い。
【0024】
尚、図示された支持部材17は、所定の厚みを有する平板状の金属製の板材であるが、これに限らず、例えば、直方体や立方体形状の角柱状の金属体でもよい。また、図3に示す横筋52よりもさらに大きな直径を有する横筋52の場合であって横筋52の頂部が傾斜部材18の頂部よりも高くなるような場合には、支持部材17の取り付け姿勢も、図3に示す状態から90°横倒しした状態で配置することもできる。
【0025】
また、支持部材17の正面側の中央下部には切欠き部17aが設けられている。具体的には、切欠き部17aは、本体11の正面側に設けられた開口部14に対向する位置の支持部材17に設けられている。これにより、開口部14と切欠き部17aは連続した空間部分となり、例えば、図6に示すように、縦筋51の上部側が曲げられた接合鉄筋50のような場合であっても保持部15に保持させることができ、このような接合手金50であってもせん断強度の測定が可能となる。
【0026】
シャフト13は、上述のように、本体11の頂部に穿設されたネジ孔にねじ込まれることによって本体11に取り付けられているが、本体11の正面側及び背面側からそれぞれシャフト13の中心軸方向に向かって配置された位置調整用ネジ12,12によって正面に向かって前後方向に移動可能とされている。例えば、本実施形態では、図4(a)~(c)に示すように、シャフト13の下端側には下部側が拡開した逆T字状のスライド台13aが取り付けられ、本体11にはスライド台13aが挿入されるT溝11aが形成されており、スライド台13aはT溝11a内を横筋52と交差する方向(本実施形態では直交する方向)にスライド可能に配置されている。そして、スライド台13aをT溝11aに挿入した状態でスライド台13aにシャフト13をネジ止めし、スライド台13aの前後方向から図示しない固定部材でT溝11aの両側を塞ぎ、位置調整用ネジ12,12を取り付けることでシャフト13と本体11の相対移動を可能とされ、正面側と背面側の位置調整用ネジ12,12の固定位置を調整することによりシャフト13の中心軸を正面に向かって前後方向に調整することができるようになっている。これにより、保持部15に配置された縦筋51の中心軸とシャフト13の中心軸を一致させることが可能となる。縦筋51の中心軸とシャフト13の中心軸を一致させることで、例えば、接合鉄筋50の溶接部の溶け込み具合の相違によって縦筋51の中心軸から横筋52の側面までの長さが異なる場合(図5(a)~(c)参照)であっても正確なせん断強度の測定が可能となる。また、シャフト13の中心軸と縦筋51の中心軸を合わせることができるので、縦筋51を鉛直方向へ引き込むことが可能となり、横筋52の回転を抑制して正確なせん断強度を測定することが可能となる。尚、縦筋51の中心軸とシャフト13の中心軸を一致させる上記位置調整構造は一例であり、位置調整構造はこれに限定されるものではなく、適宜の構造を採用することができる。
【0027】
以上のように、本発明に係るせん断強度測定用治具の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0028】
10 せん断強度測定用治具
11 本体
11a T溝
12 位置調整用ネジ
13 シャフト
13a スライド台
14 開口部
15 保持部
16 ボルト
17 支持部材
18 傾斜部材
19 補助金具
19a ネジ
50 接合鉄筋
51 縦筋
52 横筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7