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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/16 20160101AFI20240620BHJP
   B60J 10/84 20160101ALI20240620BHJP
【FI】
B60J10/16
B60J10/84
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020210446
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097073
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000123549
【氏名又は名称】化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 竜也
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-054953(JP,A)
【文献】特開平10-287133(JP,A)
【文献】実開平06-057779(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0231954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00-10/90
B60R 13/06
B60J 10/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のホイールアーチの曲線形状に沿って取設されるシール部材であって、
前記ホイールアーチの取設面と当接する非筒状のシール基体部と、
前記シール基体部の一端から延設されたシールリップ部と
を具備し、
前記シール基体部及び前記シールリップ部は、
前記シール部材の長手方向に沿って一体的に押し出されることによって形成され、
前記シールリップ部及び前記シールリップ部と接続された前記シール基体部の一部である主基体部、及び、前記シールリップ部から離間した前記シール基体部の残部である副基体部は、
それぞれ材質の異なる材料で形成され
前記副基体部は、
長手方向に沿って所定の間隔で矩形状に打ち抜き加工され、切り欠きが施された複数の切欠部を更に具備するシール部材。
【請求項2】
前記主基体部は、
軟質スポンジ材料で形成され、
前記副基体部は、
硬質ゴム材料で形成される請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記軟質スポンジ材料は、
エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とするスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴムであり、
前記硬質ゴム材料は、
前記エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とする硬質ゴムである請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記軟質スポンジ材料は、
比重が0.20~0.90の範囲であり、かつ、硬度が30°~40°の範囲であって、
前記硬質ゴム材料は、
比重が1.10~1.60の範囲であり、かつ、硬度が40°~90°の範囲であって、
前記硬質ゴム材料に対し、前記軟質スポンジ材料の前記比重及び前記硬度の値がいずれも小さく設定される請求項2または3に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。更に詳しくは、自動車のホイールアーチに沿って取設され、車両内部への水等の侵入を防ぐことが可能なシール機能を有するホイールアーチ用のシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車100のタイヤ101の形状に合わせて、車体102の一部を曲線状に切り欠いたホイールアーチ103が一般的に設けられている(図6参照)。このようなホイールアーチ103が車体102に設けられることで、タイヤ101と車体102との間にスペース104が形成され、タイヤ101の交換作業やチェーン(図示しない)の装着及び脱着作業を容易に行うことができる。また、タイヤ101が操舵輪の場合、ハンドル操作に応じてタイヤ101の操舵角が変化する場合でも、当該タイヤ101と車体102とが接触することがない。
【0003】
しかしながら、タイヤ101及び車体102の間に上記のスペース104が形成されることで、車両外部から雨水や泥等が車両内部に侵入しやすくなるおそれがある。そこで、図6に示すように、ホイールアーチ103の車体102の裏側部分に、主として硬質のゴム材料で形成されたホイールアーチ用のシール部材105(ホイールアーチシール)が曲線状のホイールアーチ103に沿うようにして取設されている。
【0004】
シール部材105は、一般的な構成として、車体102のホイールアーチ103の装着面と当接するシール基体部(図示しない)と、シール基体部から所定方向に突出し、車体102の一部と先端が当接可能なシールリップ部(図示しない)とを具備している。これにより、雨水等の車両内部への侵入を防ぐことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシール部材の場合、下記に示すような不具合を生じる可能性があった。すなわち、一般的なホイールアーチ用のシール部材の場合、予め所定温度で加熱され、溶融状態となったエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム材料を、シール部材の外観形状に基づいて型彫りされ、製作された成形用金型のキャビティ内に流し込み、当該成形用金型内でゴム材料を冷却して固化させることによって主に製造されていた。すなわち、成形用金型を用いる型成形加工によって製造されていた。
【0006】
したがって、取設対象となる自動車の車種やホイールアーチの形状、或いはサイズ等に応じて、それぞれに適合するシール部材を製造するために、複数の成形用金型を予め準備する必要があり、当該成形用金型の製作コストを含むシール部材の製造開始までの初期コスト(イニシャルコスト)が高くなるといった問題があった。
【0007】
また、成形用金型への溶融状態のゴム材料の流し込みのための工程、ゴム材料を冷却固化させるための工程、及び、固化したシール部材を成形用金型から取り出す工程等の各工程を経る必要があり、それぞれの工程のための必要な作業時間が多くなることがあった。
【0008】
そのため、短時間で大量のシール部材を製造することができない場合もあり、作業効率や生産効率の点で問題となったり、作業工程が複雑化したりするなどの種々の課題を生じる場合があった。また、成形用金型によって製造された成形加工品には、一般的に所謂「バリ」が生じる可能性が高く、当該バリを取り除くバリ除去工程が必要となることもあった。
【0009】
成形用金型による型成形加工の場合、製造されるシール部材は、基本的には一種類の素材、例えば、硬質のEPDM等で構成されていた。すなわち、上述したシール基体部及びシールリップ部は、同一の素材で一体的に形成されていた。しかしながら、シール基体部に求められる、例えば、シール部材全体の強度の向上やホイールアーチの取設面に対する装着性や密着性を良好にする特性と、シールリップ部による水等の止水効果を発揮するための特性とは、互いに相反する材料を用いる場合もあった。
【0010】
更に具体的に説明すると、シール部材の強度を強くしようとした場合、シール基体部をホイールアーチの曲線状に沿って変形させることが困難となる。換言すれば、ホイールアーチの曲線形状に対するシール部材の追従性が低下し、ホイールアーチとシール部材との間に隙間が生じ、十分な密着性を維持することができず、高いシール性を得ることができないおそれがあった。一方、上記のシール部材の変形性や追従性を良好に使用とした場合、シール部材全体の強度が低下するおそれがあった。その結果、強度及び変形性のバランスを勘案し、シール部材を構成するゴム材料等の素材を選定する必要があった。
【0011】
また、シール部材のシールリップ部の一端は、自動車の車体と当接するように取設されている。そのため、シールリップ部が硬質のゴム材料で形成されている場合、当該車体とシールリップ部とが点接触し、走行時の振動等によって車体にダメージを与える可能性があった。加えて、硬質のゴム材料の場合、その他の樹脂成形品と比較して比重が高くなる傾向があり、自動車の車両全体の重量増に影響する可能性があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、成形用金型を用いることなく製造することが可能であり、かつ取設対象となるホイールアーチの曲線形状に沿って良好な追従性や変形性を有し、かつ、高いシール性(止水性)を発揮可能なシール部材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、押出成形技術を用いてシール部材を製造することにより、良好な追従性や強度を備え、かつ、高いシール性を発揮可能なことを見出し、下記に示す本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
[1] 自動車のホイールアーチの曲線形状に沿って取設されるシール部材であって、前記ホイールアーチの取設面と当接するシール非筒状の基体部と、前記シール基体部の一端から延設されたシールリップ部とを具備し、前記シール基体部及び前記シールリップ部は、前記シール部材の長手方向に沿って一体的に押し出されることによって形成され、前記シールリップ部及び前記シールリップ部と接続された前記シール基体部の一部である主基体部、及び、前記シールリップ部から離間した前記シール基体部の残部である副基体部は、それぞれ材質の異なる材料で形成され、前記副基体部は、長手方向に沿って所定の間隔で矩形状に打ち抜き加工され、切り欠きが施された複数の切欠部を更に具備するシール部材。
【0015】
[2] 前記主基体部は、軟質スポンジ材料で形成され、前記副基体部は、硬質ゴム材料で形成される前記[1]に記載のシール部材。
【0016】
[3] 前記軟質スポンジ材料は、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とするスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴムであり、前記硬質ゴム材料は、前記エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とする硬質ゴムである前記[2]に記載のシール部材。
【0017】
[4] 前記軟質スポンジ材料は、比重が0.20~0.90の範囲であり、かつ、硬度が30°~40°の範囲であって、前記硬質ゴム材料は、比重が1.10~1.60の範囲であり、かつ、硬度が40°~90°の範囲であって、前記硬質ゴム材料に対し、前記軟質スポンジ材料の前記比重及び前記硬度の値がいずれも小さく設定される前記[2]または[3]に記載のシール部材。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシール部材は、押出成形技術を用い、性状の異なる材料を一体的に押出成形することで形成され、シールリップ部及びシール基体部の一部である主基体部と、シール基体部の残部である副基体部との性状を異ならせ、ホイールアーチの曲線状に沿った良好な追従性を維持しつつ、かつ、高いシール性を発揮可能なものである。特に、成形用金型の製作にかかる製作コストを抑え、シール部材の製造における初期コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のシール部材の概略構成を示す参考斜視図である。
図2】シール部材の概略構成を示す正面図である。
図3】シール部材の概略構成を示す平面図である。
図4】シール部材の概略構成を示す底面図である。
図5図2におけるA-A’線拡大断面図である。
図6】ホイールアーチに対するシール部材の取設の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のシール部材の実施の形態について説明する。なお、本発明のシール部材は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0022】
1.シール部材
本発明の一実施形態のシール部材1は、図1図5に示すように、長手形状を呈し、自動車100のタイヤ101の形状に合わせて車体102の一部を曲線状に切り欠いて形成されたホイールアーチ103に沿って弾性変形させながら取設可能なものである。なお、取設対象となるホイールアーチ103の構成等については既に説明した図6と略同一のものであり、同一符号を付してここでは詳細な説明は省略する。更に、図5において、取設対象となるホイールアーチ103の取設面106、及びシール部材1を取設面106に貼着するための両面テープ107に係る構成を併せて図示している。
【0023】
本実施形態のシール部材1は、ホイールアーチ103の取設面106(図5参照)と当接可能なシール基体部2と、当該シール基体部2の一端部2aから延設されたシールリップ部3とを具備して主に構成されている。更に具体的に説明すると、シール基体部2は、取設面106と両面テープ107を介して貼着される主基体部4と、主基体部4と接続する副基体部5とを備えている。すなわち、シール基体部2は、主基体部4及び副基体部5の二つの部材を組み合わせて一体的に構成されている。
【0024】
ここで、主基体部4は略平板状を呈する部材であり、一方、副基体部5は、取設面106と点接触で当接可能となるように副基体部5のベース体6から所定方向(図5における紙面下方向に相当)に突出してなる一対の当接脚部7a,7b、及び、当該当接脚部7a,7bの突出方向と相対する方向(図5における紙面上方向に相当)に突出してなる一対の凸部8a,8bを有している。当接脚部7a,7bの高さは、貼着用の両面テープ107のテープ厚さと略同一となるように設定されている。
【0025】
一方、シールリップ部3は、シール基体部2の一端部2a(主基体部4の一端に相当)から所定方向(図5における略鉛直上方向に相当)に延設された主リップ部9と、主リップ部9の先端から副基体部5側に向かって斜めに屈曲した第一副リップ部10と、第一副リップ部10の先端から更に副基体部5から離間する側に向かって斜めに屈曲した第二副リップ部11とを備えている。すなわち、シールリップ部3は、二箇所で互い異なる方向に屈曲した断面形状を有している。更に、シールリップ部3は、その他の構成として、主リップ部9の途中から斜め下方に枝分かれした分枝リップ部12を備えている(図5参照)。
【0026】
本実施形態のシール部材1は、図1図4に示すように、長手形状を呈し、上述したシール基体部2の副基体部5に係る構成は、長手方向の全体に亘って形成されているものではなく、シール部材1の全長の略半分に設けられている(図2における紙面右部分)。シール部材1の残りの部分(図2における紙面左部分)は、前述したシール基体部2の主基体部4及びシールリップ部3のみが形成されている。また、主基体部4の一部にはホイールアーチ103の取設面106に固定するための固定用孔13が二箇所に設けられている。
【0027】
更に、シール基体部2は、副基体部5の長手方向に沿って所定の間隔で切り欠きが施され、当該副基体部5が設けられていない複数の切欠部14を更に具備している。かかる切欠部14を有することにより、シール基体部の副基体部5における変形性が良好となる。
【0028】
本実施形態のシール部材1は、図5に示すように、シールリップ部3及び当該シールリップ部3と接続されたシール基体部2の一部に相当する主基体部4と、シールリップ部3から理解したシール基体部2の残部に相当する副基体部5がそれぞれ材質の異なる材料で形成されている。
【0029】
具体的に説明すると、本実施形態のシール部材1は、シールリップ部3及びシール基体部2の主基体部4は、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とし、内部に複数の空隙を有し、応力に対して弾性変形可能なスポンジの特性を有するスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴム(以下、「スポンジEPDM」と称す。)によって形成されている。一方、シール基体部2の副基体部5は、応力に対して弾性変形可能なゴムの特性を有するエチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とする硬質ゴム(以下、「硬質ゴムEPDM」と称す。)によって形成されている。スポンジEPDMが本発明における軟質スポンジ材料に相当し、硬質ゴムEPDMが硬質ゴム材料に相当する。
【0030】
本発明のシール部材において、軟質スポンジ材料は、上記したエチレン-プロピレン-ジエンゴムに限定されるものではなく、軟質スポンジ材料として、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー、或いはその他のゴム材料、またはゴム様弾性を有するその他の弾性材料を挙げることができる。その際、部分的、または全体をソリッド状の材料で構成するものであってもよい。一方、硬質ゴム材料として、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー、或いはその他のゴム材料、またはゴム様弾性を有するその他の弾性材料を挙げることができる。その際、部分的または全体をスポンジ状の材料で構成するものであってもよい。
【0031】
上記のように、スポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMのように性状の異なる二種類の材料を用いて本実施形態のシール部材1が形成される。なお、スポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMは、自動車用の樹脂成形部品の製造において使用される周知の材料であり、ここではその詳細についての説明は省略する。
【0032】
本実施形態のシール部材1において、軟質スポンジ材料であるスポンジEPDMは、その比重が0.20~0.90の範囲となるように調整され、好ましくは0.45~0.75の範囲に調整される。加えて、スポンジEPDMの硬度は、30°~40°の範囲となるように調整される。
【0033】
一方、硬質ゴム材料である硬質ゴムEPDMは、その比重が1.00~1.60の範囲となるように調整され、好ましくは1.15~1.45の範囲に調整される。加えて、硬質ゴムEPDMの硬度は、40°~90°の範囲となるように調整され、好ましくは、65°~75°の範囲に調整される。
【0034】
すなわち、硬質ゴムEPDMに対して、スポンジEPDMの比重及び硬度の値がいずれも小さくなるように設定される。その結果、ホイールアーチ103と当接脚部7a,7bを介して当接するシール基体部2の副基体部5は、比重及び硬度が高くなり、シール部材1に対して求められる十分な強度を有することができる。
【0035】
これにより、ホイールアーチ103に対する取設状態が安定する。加えて、副基体部5は、前述したように、所定の間隔で複数の切欠部14が設けられている。そのため、応力に対する変形性も十分に確保することができる。その結果、曲線状のホイールアーチ103に沿って弾性変形させながらシール部材1を当接する場合、ホイールアーチ103に対する追従性が良好となり、ホイールアーチ103の取設面106とシール部材1(シール基体部2)との密着性が良好となる。
【0036】
その結果、ホイールアーチ103及びシール部材1の間から雨水等が車両内部へ侵入することを防ぐことができる。すなわち、シール部材1によるシール性(止水性)の効果を高くすることができる。
【0037】
一方、シールリップ部3及びシール基体部2の主基体部4は、硬質ゴムEPDMに対して、比重及び硬度が低いスポンジEPDMが用いられる。その結果、硬質ゴムEPDMを用いた副基体部5よりも応力に対して柔軟に変形する変形性が良好となる。そのため、曲線状のホイールアーチ103に対する変形性を阻害することがない。
【0038】
更に、シールリップ部3の先端のリップ端部3aは、ホイールアーチ103に取設された状態で、車体102の一部と接し弾性変形することがある。従来のシール部材105(図5参照)のように、硬質ゴムEPDM等の硬質ゴム材料のみによって形成されている場合、当該車体102と当接する場合、硬質ゴムの性状のため応力による弾性変形は僅かであり、車体102とは点接触となる。
【0039】
しかしながら、本実施形態のシール部材1は、シールリップ部3が軟質スポンジ材料で形成されていることにより、応力に対する変形の程度が硬質ゴムよりも大きく、車体102との当接によって大きく潰れて変形する。すなわち、車体102と面接触することになる。その結果、走行時等に発生する振動等による車体102へのダメージを軽減する効果を有する。更に、シール部材1の一部を比重の小さいスポンジEPDMで構成することにより、シール部材1全体の軽量化を図ることができる。
【0040】
上記のように、シールリップ部3とシール基体部2の一部、及び、シール基体部2の残部をそれぞれの特性に応じた性状の異なる二種類の材料で形成することにより、ホイールアーチ103の曲線形状に対する追従性が良好となり、かつ、シール部材1自体の強度を十分なものとすることができる。これにより、雨水等の侵入を防ぐ高いシール性を備えたシール部材1が形成される。加えて、従来の成形用金型を用いた場合と比較して、「バリ」が発生することがないため、かかるバリの除去等を行う工程を省略化することができる。すなわち、シール部材の製造における工数の削減が可能となる。
【0041】
2.シール部材の製造方法
前述したように、本実施形態のシール部材1は、スポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMのように性状の異なる二種類の材料を用いて製造される。このとき、シール部材1の製造には、二種類の材料を同時に成形用口金から押し出す「共押出成形」の技術を用いることができる。かかる共押出成形(または、二色押出成形)は、樹脂加工やゴム加工等において周知のものであり、硬質材と軟質材とを同時押出したり、透明材と着色材とを同時押出したりすることが可能であり、製品の特定の部位の性状を変化させることが可能なものである。
【0042】
更に具体的に説明すると、始めに図5に示すような断面形状を呈する成形用口金を、共押出成形可能な押出装置にセットする。一方、押出装置に設けられた二つの原材料供給部には、それぞれ加熱され、押出可能な粘度に調整され、流動可能な状態のスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMを準備する。かかる状態で二つの原材料供給部からスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMを所定の押出圧力によって加圧し、成形用口金から同時に押し出し成形を行う。このとき、スポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMの押出圧力をそれぞれ調整することで、成形用口金の所定の位置にスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMを押し出すことができる。これにより、シール部材1の断面におけるスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMの配置及び比率を均一にすることができる。
【0043】
成形用口金から押し出されたスポンジEPDM及び硬質ゴムEPDMは、周囲の外気と接することで冷却され、流動性を失う。そして、所定の長さ(例えば、500mm程度)まで押し出した後でカットされる。これにより、二種類の材料で構成された長手形状の加工物が形成される。かかる長手形状の加工物に対してトムソン打ち抜き加工を行うことにより、前述した固定用孔13や切欠部14等を形成することができる。その結果、本実施形態のシール部材1の製造が完了する。なお、トムソン打ち抜き加工は、ベースとなる合板に刃を埋め込んだトムソン型を用い、加工材料をプレスして打ち抜く周知の加工方法であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のシール部材は、自動車等の車両に設けられたホイールアーチに適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,105:シール部材、2:シール基体部、2a:一端部、3:シールリップ部、3a:リップ端部、4:主基体部(シール基体部の一部)、5:副基体部(シール基体部の残部)、6:ベース体、7a,7b:当接脚部、8a,8b:凸部、9:主リップ部、10:第一副リップ部、11:第二副リップ部、12:分枝リップ部、13:固定用孔、14:切欠部、100:自動車、101:タイヤ、102:車体、103:ホイールアーチ、104:スペース、106:取設面、107:両面テープ。


図1
図2
図3
図4
図5
図6