(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ブロック共重合体を含有する液晶シール剤組成物
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20240620BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240620BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C08F2/44 C
C08F299/00
(21)【出願番号】P 2021070893
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健介
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134329(JP,A)
【文献】特開2013-134330(JP,A)
【文献】特開2017-223828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)、及び当該エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ基の一
部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)からなる群より選択される1種以上の硬化性樹脂(A)と、
ブロック共重合体化合物(B)と、
光重合開始剤(C)及び/又は熱硬化剤(D)と
を含
み、
前記(B)成分が、(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックaと、(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックb(但し、重合体ブロックaとは異なる。)とのブロック共重合体である、液晶シール剤組成物
(但し、さらに(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む液晶シール剤組成物を除く)。
【請求項2】
前記(B)成分が、トリブロック共重合体、又はジブロック共重合体である、請求項
1に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項3】
前記重合体ブロックaのガラス転移温度が50℃超180℃以下であり、かつ、前記重合体ブロックbのガラス転移温度が-100℃以上50℃以下である、請求項
1又は
2に記載の液晶シール剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体を含有する液晶シール剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の製造方法において、滴下工法はシール剤の閉ループ内に液晶を直接滴下、真空貼り合わせ、真空開放を行うことでパネルを作成することができる工法である。この滴下工法では、液晶の使用量の低減、液晶のパネルへの注入時間の短縮等のメリットが数多くあり、現在の大型基板を使った液晶パネルの製造方法として主流となっている。滴下工法を含む方法では、シール・液晶を塗布して、貼り合わせた後、ギャップだし、位置あわせを行い、シールの硬化を主に紫外線硬化により行っている。
【0003】
特許文献1には、シール剤の原料として、2官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸誘導体で部分変性した硬化性樹脂を含む液晶シール剤が、液晶の配向特性を改善することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された(メタ)アクリレート樹脂は、液晶表示素子の基材(特に、金属酸化膜や配向膜)に対する接着強度が低いという問題があった。よって、本発明は、金属酸化膜や配向膜等の液晶表示素子の基材に対する接着強度に優れる、液晶シール剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討の結果、硬化性樹脂中に、特定のブロック共重合体化合物を溶解させた液晶シール剤組成物を用いることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明は、以下の[1]~[4]に関する。
[1]2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)、及び当該エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)からなる群より選択される1種以上の硬化性樹脂(A)と、ブロック共重合体化合物(B)と、光重合開始剤(C)及び/又は熱硬化剤(D)とを含む、液晶シール剤組成物。
[2]前記(B)成分が、(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックaと、(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックb(但し、重合体ブロックaとは異なる。)とのブロック共重合体である、[1]の液晶シール剤組成物。
[3]前記(B)成分が、トリブロック共重合体、又はジブロック共重合体である、[2]の液晶シール剤組成物。
[4]前記重合体ブロックaのガラス転移温度が50℃超180℃以下であり、かつ前記重合体ブロックbのガラス転移温度が-100℃以上50℃以下である、[2]又は[3]の液晶シール剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属酸化膜や配向膜等の液晶表示素子の基材に対する接着強度に優れる、液晶シール剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本明細書において、「グリシジル基」とは、2,3-エポキシプロピル基を意味する。「メチルグリシジル基」とは、2,3-エポキシ-2-メチルプロピル基を意味する。「エポキシ基」とは、グリシジル基及びメチルグリシジル基の少なくとも一方を含む。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基(CH2=CH2-C(=O)-)及びメタクリロイル基(CH2=CH(CH3)-C(=O)-)の少なくとも一方を含む。「置換されていてもよい」とは、「置換又は非置換」を意味する。
【0010】
[液晶シール剤組成物]
液晶シール剤組成物(以下、単に「シール剤」ともいう。)は、2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)、及び当該エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)からなる群より選択される1種以上を含む硬化性樹脂(A)と、ブロック共重合体化合物(B)と、光重合開始剤(C)及び/又は熱硬化剤(D)とを含む。
【0011】
シール剤は、液晶への溶解性が抑えられ、液晶の汚染を防止することができる。
ブロック共重合体化合物(B)を、シール剤の各成分(特に、硬化性樹脂(A))中に溶解させることで、シール剤の接着強度を向上させることができる。そのため、液晶シール剤において、接着強度向上を目的として一般的に使用されている粉体材料の含有量を削減することができ、塗布性や洗浄性等の作業性を改善できる可能性がある。ここで、溶解とは、室温(例えば、25℃)下で液状を維持できる状態を意味する。
【0012】
<硬化性樹脂(A)>
硬化性樹脂(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)は、シール剤の硬化性成分である。硬化性樹脂(A)は、2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)、及び当該エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)からなる群より選択される1種以上を含む。
硬化性樹脂(A)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0013】
≪2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)≫
2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)は、特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。その他、2官能以上のフェノール類のグリシジルエーテル化物、2官能以上のアルコール類のグリシジルエーテル化物及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等も使用することができる。また、3官能及び4官能のエポキシ樹脂として、特開2012-077202号公報記載のエポキシ樹脂が挙げられる。2官能以上のエポキシ樹脂の官能数は、特に限定されないが、2~4であることが好ましい。
2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)は、ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0014】
≪エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)≫
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)は、エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性した変性樹脂である。すなわち、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)は、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方を有するか、又は、樹脂中にエポキシ基を有さず、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する。ここで、エポキシ樹脂(A-1)は、好ましいものを含め、前記した通りである。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)は、エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性した変性樹脂であることが好ましく、2官能のエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性した変性樹脂であることが特に好ましい。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0015】
≪その他の硬化性樹脂(A-3)≫
その他の硬化性樹脂(A-3)は、(A-1)成分及び(A-2)成分以外の樹脂であれば特に限定されず、液晶シール剤の主剤として用いられる従来の不飽和基及び/又はエポキシ基を有する樹脂、エポキシ基を1つ有する樹脂、並びに、不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂が挙げられる。ここで、「不飽和基」とは、エチレン性不飽和基及び/又はアセチレン性不飽和基を意味する。その他の硬化性樹脂(A-3)は、カチオン重合性樹脂、ラジカル重合性樹脂及び/又はアニオン重合性樹脂から、シール剤に含まれる重合開始剤及び/又は熱硬化剤の種類に応じて適宜選択される。
【0016】
不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリレート化合物、脂肪族アクリルアミド化合物、脂環式アクリルアミド化合物、芳香族を含むアクリルアミド化合物、N-置換アクリルアミド系化合物、ジエン系ポリマー(例えば、ポリブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー等)が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物の官能性は、1官能性、2官能性又は3官能性以上の多官能性であることができる。1官能性の(メタ)アクリレート化合物は、(B)成分において後述するとおりである。
【0017】
2官能性の(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート(例えば、ARONIX M-6100、東亜合成株式会社製)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、4G、新中村化学工業株式会社製)、及びシリコンジ(メタ)アクリレート(例えば、EBECRYL 350、ダイセル・オルネクス株式会社製)からなる群より選択される1以上の化合物が好ましい。ここで、「EO」はエチレンオキシドを意味し、「PO」はプロピレンオキシドを意味する。
【0018】
3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(6官能性)及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(4官能性)より選択される1以上の化合物が好ましい。
【0019】
更に、不飽和基を有する樹脂として、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有する変性化合物(但し、(メタ)アクリル酸、アクリル酸無水物を除く。)で変性されたエポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ基を1つ有する樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有さない変性化合物で変性された変性エポキシ樹脂、水酸基含有化合物とイソシアネート基含有化合物から形成されるウレタン樹脂等が挙げられる。
その他の硬化性樹脂(A-3)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
<ブロック共重合体化合物(B)>
ブロック共重合体化合物(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)は、シール剤の接着強度を向上させる成分である。ブロック共重合体化合物(B)は、シール剤において、シール剤の各成分(特に、硬化性樹脂(A))中で溶解していることができる。ブロック共重合体化合物を構成するブロック体としては、(メタ)アクリル系ブロック体、スチレン系ブロック体、オレフィン系ブロック体等が挙げられる。
【0021】
≪(メタ)アクリル系ブロック体≫
(メタ)アクリル系ブロック体を構成するモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、その他の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0022】
・アルキル(メタ)アクリレートモノマー
アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
・水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオールのポリ(メタ)アクリレート(但し、水酸基を含有する)等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート以外の水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。ここで、ポリオールのポリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
・環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー
環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、芳香族(メタ)アクリレートモノマー、脂環式(メタ)アクリレートモノマー及びヘテロ環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物ジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン)等が挙げられる。
脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヘテロ環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコール(メタ)アクリル酸多量体のエステル等が挙げられる。
【0025】
・その他の(メタ)アクリレートモノマー
その他の(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリルアミドモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
アクリルアミドモノマーとしては、脂肪族アクリルアミド化合物、脂環式アクリルアミド化合物、芳香族を含むアクリルアミド化合物、N-置換アクリルアミド系化合物が挙げられる。アクリルアミドモノマーの具体例としては、アクリロイルモルフォリン、ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、脂肪族系の多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、脂肪族系の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のモノ又はポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
≪スチレン系ブロック体、オレフィン系ブロック体≫
スチレン系ブロック体を構成するモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。
オレフィン系ブロック体を構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0027】
≪好ましい態様≫
ブロック共重合体化合物を構成するブロック体は、(メタ)アクリレート単位を主体とする(メタ)アクリル系ブロック体であることが好ましい。ここで、「(メタ)アクリレート単位を主体とする」とは、(メタ)アクリル系ブロック体中の全単位のモル数に対する、(メタ)アクリレート単位のモル数の割合が、70~100モル%であることを意味する。(メタ)アクリル系ブロック体中の全単位のモル数に対する、(メタ)アクリレート単位のモル数の割合は、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることが特に好ましい。
【0028】
ブロック共重合体化合物は、(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックaと、(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックb(但し、重合体ブロックaとは異なる。)とのブロック共重合体であることがより好ましく、トリブロック共重合体又はジブロック共重合体であることが特に好ましい。ここで、ブロック共重合体化合物が、トリブロック共重合体である場合は、a-b-a型又はb-a-b型のトリブロック共重合体であることができ、a-b-a型のトリブロック共重合体であることが好ましい。ここで、「a」は、重合体ブロックaに対応し、「b」は、重合体ブロックbに対応する。
【0029】
重合体ブロックaは、重合体ブロックaの全単位に対して、アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位のモル数の割合が80~100モル%であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレート単位のモル数の割合が80~100モル%であることが特に好ましい。重合体ブロックbは、重合体ブロックbの全単位に対して、アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位のモル数の割合が80~100モル%であることが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート単位のモル数の割合が80~100モル%であるか、又はn-ブチル(メタ)アクリレート単位と2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート単位のモル数の割合の合計が80~100モル%であることが特に好ましい。
【0030】
重合体ブロックaのガラス転移温度は、50℃超180℃以下であることが好ましい。また、重合体ブロックbのガラス転移温度は、-100℃以上50℃以下であることが好ましい。よって、ブロック共重合体化合物は、前記重合体ブロックaのガラス転移温度が50℃超180℃以下であり、かつ、前記重合体ブロックbのガラス転移温度が-100℃以上50℃以下であることが特に好ましい。
【0031】
本明細書において、ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)測定により求められる値である。なお、ブロック共重合体化合物のDSC測定によって、重合体ブロックa及びbに由来するガラス転移温度を含む、複数のガラス転移温度が求められる。その中で、重合体ブロックaに由来するガラス転移温度は、重合体ブロックaと同様の化学構造(モノマー組成等)を有する重合体のDSC測定によって求められるガラス転移温度とほぼ同等である。重合体ブロックbについても同様である。よって、ブロック共重合体化合物は、50℃超180℃以下の温度範囲、及び、-100℃以上50℃以下の温度範囲に、ガラス転移温度を有することが好ましい。
【0032】
ブロック共重合体化合物が、a-b-a型又はa-b型のブロック共重合体である場合、重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計100質量%中、重合体ブロックaの含有量は、硬化性樹脂との相溶性や、接着強度の観点から、5~60質量%であることが好ましく、10~30質量%であることが特に好ましい。
【0033】
(B)成分の重量平均分子量は、特に限定されないが、5,000~150,000であることが好ましく、10,000~130,000であることが特に好ましい。分子量は、ゲル濾過/浸透クロマトグラフィー(GPC/GFC)で測定することができる。
【0034】
ブロック共重合体化合物(B)は、各ブロック体を構成する原料モノマーを重合することにより合成しても良いし、市販されているものを用いても良い。(メタ)アクリル系ブロック体から構成されるブロック共重合体化合物の市販品としては、「KURARITY」(登録商標、クラレ社)(例えば、LA2140、LA2250、LA4285、LA2330、LA3270、LA1114、LA1892)が挙げられる。
ブロック共重合体化合物(B)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
<光重合開始剤(C)及び/又は熱硬化剤(D)>
光重合開始剤(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)は、シール剤を光重合硬化性の組成物とすることができる成分である。熱硬化剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)は、シール剤を熱硬化性の組成物とすることができる成分である。光重合開始剤(C)及び/又は熱硬化剤(D)は、シール剤に含まれる硬化性樹脂の種類及び所望の硬化条件(エネルギー線硬化及び/又は熱硬化)に応じて適宜選択できる。よって、シール剤は、光重合開始剤(C)及び熱硬化剤(D)のいずれか一方を含んでいてもよく、光重合開始剤(C)及び熱硬化剤(D)の両方を含んでいてもよい。
【0036】
≪光重合開始剤(C)≫
光重合開始剤(C)としては、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤及び/又はカチオン重合開始剤が挙げられる。
【0037】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、α-アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類、有機過酸化物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、液晶への溶解性が低く、また、それ自身で光照射時に分解物がガス化しないような反応性基を有するものが好ましい。また、ラジカル重合開始剤として、WO2012/077720に記載されている、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ジメチルアミノ安息香酸とを反応させて得られる化合物、及び、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ヒドロキシチオキサントンとを反応させて得られる化合物との混合物である重合開始剤が好ましい。
【0038】
アニオン重合開始剤としては、イミダゾール類、アミン類、ホスフィン類、有機金属塩、金属塩化物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0039】
カチオン重合開始剤としては、オニウム塩、鉄アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノールアルミニウム錯体、ルイス酸化合物、ブレンステッド酸化合物、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド、スルホン化合物類、スルホン酸エステル類、スルホンイミド類、ジスルホニルジアゾメタン類、及びアミン類等が挙げられる。
【0040】
光重合開始剤(C)は、市販されているか、又は、公知の方法に従い調製することができる。
光重合開始剤(C)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0041】
≪熱硬化剤(D)≫
熱硬化剤(D)は、特に限定されないが、アミン系熱硬化剤、例えば有機酸ジヒドラジド化合物、アミンアダクト、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、及びポリアミノウレア等が挙げられ、VDH(1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH(7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド)及びLDH(オクタデカン-1,18-ジカルボン酸ジヒドラジド)等の有機酸ジヒドラジド;株式会社ADEKAから、アデカハードナーEH-5030S等として販売されているポリアミン系化合物;味の素ファインテクノ株式会社から、アミキュアPN-23、アミキュアPN-30、アミキュアMY-24、アミキュアMY-H等として市販されているアミンアダクトが好ましい。
熱硬化剤(D)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0042】
<その他の成分(E)>
シール剤は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、その目的に応じて、その他の成分(以下、「(E)成分」ともいう。)を含むことができる。その他の成分として、シランカップリング剤、重合禁止剤、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。なお、その他の成分は、上記した(A)成分~(D)成分ではない。
【0043】
≪シランカップリング剤≫
シランカップリング剤としては、エポキシ基、アルケニル基(例えば、ビニル基)、(メタ)アクリロイル基、第1級又は第2級アミノ基、メルカプト基、イソシアナト基、ウレイド基及びハロゲン原子からなる群より選択される1種以上の反応性官能基又は前記基で置換されたアルキル基と、1以上のアルコキシ基とを有し、非置換のアルキル基を有していてもよいシラン化合物が挙げられる。なお、前記反応性官能基は、前記反応性官能基で置換されたアルキル基として、シラン化合物のケイ素原子に結合していてもよい。
【0044】
シランカップリング剤の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等のアルケニル基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級又は第2級アミノ基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基、イソシアナト基、ウレイド基及びハロゲン原子からなる群より選択される1種以上の基と、1以上のアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0045】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(沈降性シリカ、フュームドシリカ(煙霧質シリカ)等)、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、水酸化アルミニウム、石綿粉、酸化銅、水酸化銅、酸化鉄、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、カーボン、マイカ、スメクタイト、カーボンブラック、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。無機フィラーは、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0046】
有機フィラーとしては、アクリル粒子、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン(ポリスチレンビーズ)、これらを構成するモノマー(即ち、メタクリル酸メチル又はスチレン)と他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエチレン粒子、ポリシロキサン樹脂粒子、ポリアミド粒子、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、及びゴム微粒子(アクリルゴム粒子、イソプレンゴム粒子)が挙げられる。有機フィラーは、コアシェル構造を有していてもよい。有機フィラーは、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0047】
無機フィラー、有機フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、0.01μm~10μmであることが好ましく、1μm~5μmであることが特に好ましい。無機フィラー、有機フィラーの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0048】
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、パラメトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール等が挙げられる。
上記した成分以外は、シール剤に用いられる公知の成分から適宜選択できる。
【0049】
その他の成分(E)は、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。例えば、(E)成分は、1種以上のシランカップリング剤と、1種以上の重合禁止剤との組み合わせであってもよい。
【0050】
<各成分の含有量>
硬化性樹脂(A)の含有量は、シール剤の合計100質量部に対して、50~99質量部であることが好ましく、55~90質量部であることが特に好ましい。
2官能以上のエポキシ樹脂(A-1)及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)の合計の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、70~100質量部であることが好ましく、80~100質量部であることがより好ましく、90~100質量部であることが特に好ましい。
ブロック共重合体化合物(B)の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、0.1~40質量部であることが好ましく、1~30質量部であることが特に好ましい。
光重合開始剤(C)の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることが特に好ましい。
熱硬化剤(D)の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることが特に好ましい。
その他の成分(E)の含有量は、(A)成分~(D)成分の合計100質量部に対して、2~50質量部であることが好ましく、5~40質量部であることが特に好ましい。
【0051】
(特性)
シール剤の粘度は、シール剤として通常用いられる粘度であれば特に限定されないが10万~150万mPa・sであることが好ましく、20万~100万mPa・sであることが特に好ましい。粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0052】
<シール剤の調製方法>
シール剤は、各成分を混合することで製造することができる。ここで、(B)成分は、予め(A)成分に溶解させて、シール剤の製造に供されてもよい。(B)成分を、(A)成分に溶解させる方法としては、特に限定されず、(B)成分と(A)成分との混合物を、10~120℃(例えば、80~120℃)の温度下で撹拌する方法が挙げられる。また、(A)成分が(A-2)成分を含む場合、(B)成分を溶解させた(A)成分を得る方法としては、(A-2)成分に(B)を溶解させる方法、又は、(A-1)成分に(B)成分を溶解させた後、(A-1)成分を変性して(A-2)成分を得る方法が挙げられる。ここで、後者の方法としては、具体的には、工程1:(B)成分を、エポキシ樹脂(A-1)に溶解させる工程と、工程2:エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で変性してエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(A-2)を得る工程とを含む方法が挙げられる。また、(A-2)成分を含むシール剤を効率良く得るために、工程1と工程2は同時に実施しても良い。
【0053】
<硬化方法>
シール剤は、紫外線等のエネルギー線の照射により、熱を加えることにより、又は紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させることができる。よって、シール剤は、光(エネルギー線)硬化性、熱硬化性、又は、エネルギー線及び熱硬化性の組成物である。
【0054】
<用途>
シール剤の硬化物は、液晶表示体をシールするために用いられる。よって、本発明は、シール剤でシールされた、液晶表示体も対象とする。液晶表示体を製造する方法としては、ディスペンサーを用いて、二枚の電極付き透明基板の一方に、シール剤を塗布して、シール剤のパターンを形成する工程、液晶を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐにもう一方の透明基板を貼り合わせる工程、及び、シールパターン部分に紫外線等の光を照射するか、シール剤を加熱するか、シールパターン部分に紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させる工程を含む方法が挙げられる。
【実施例】
【0055】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0056】
[使用成分]
1.硬化性樹脂(A)
部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(比較合成例1参照)
部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂(比較合成例2参照)
【0057】
2.ブロック共重合体化合物(B)
KURARITY LA1892(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaとn-ブチルアクリレート単位で構成された重合体ブロックbとにより構成されるa-b型のジブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計質量中、重合体ブロックaが、約50質量%。重量平均分子量約80,000。)
KURARITY LA2114(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaとn-ブチルアクリレート単位で構成された重合体ブロックbとにより構成されるa-b-a型のトリブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計質量中、重合体ブロックaが、約10質量%。)
KURARITY LA2140(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaとn-ブチルアクリレート単位で構成された重合体ブロックbとにより構成されるa-b-a型のトリブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計質量中、重合体ブロックaが、約20質量%。重量平均分子量約80,000。)
KURARITY LA2330(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaとn-ブチルアクリレート単位で構成された重合体ブロックbとにより構成されるa-b-a型のトリブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計質量中、重合体ブロックaが、約20質量%。重量平均分子量約110,000。)
KURARITY LA2250(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaとn-ブチルアクリレート単位で構成された重合体ブロックbとにより構成されるa-b-a型のトリブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計質量中、重合体ブロックaが、約30質量%。重量平均分子量約80,000。)
KURARITY LA3320(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaとn-ブチルアクリレート単位で構成された重合体ブロックbとにより構成されるa-b-a型のトリブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計質量中、重合体ブロックaが、約15質量%。重量平均分子量約125,000。)
KURARITY LA4285(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaとn-ブチルアクリレート単位で構成された重合体ブロックbとにより構成されるa-b-a型のトリブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックbの合計質量中、重合体ブロックaが、約50質量%。重量平均分子量約70,000。)
KURARITY LK9243(株式会社クラレ製。メチルメタクリレート単位で構成された重合体ブロックaと、n-ブチルアクリレート単位及び2-エチルヘキシルアクリレート単位で構成された重合体ブロックb’とにより構成されるa-b’-a型のトリブロック共重合体。重合体ブロックa及び重合体ブロックb’の合計質量中、重合体ブロックaが、15~20質量%。重量平均分子量約10,000)
重量平均分子量はLA3320>LA2330>LA1892=LA2140=LA2114=LA2250>LA4285>LK9243である。
【0058】
(ガラス転移温度の測定条件)
DSC(示差走査熱量計)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。ここで、前記重合体ブロックaのガラス転移温度は、100℃~120℃であり、前記重合体ブロックbのガラス転移温度は、-40℃~-50℃であり、前記重合体ブロックb’のガラス転移温度は、-40℃~-60℃であった。
【0059】
3.光重合開始剤(C)
光重合開始剤1(光重合開始剤の製造例1参照)
光重合開始剤2(光重合開始剤の製造例2参照)
4.熱硬化剤(D)
ポリアミン系化合物(EH-5030S、株式会社ADEKA製、活性水素当量105g/eq.)
5.その他の成分(E)
重合禁止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール(BHT、関東化学社製)
シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBM-403、信越化学工業株式会社製)
【0060】
[比較合成例1]部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA-850CRP、DIC株式会社製)340.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)86.1g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)500mgを混合し100℃で6時間撹拌した。淡黄色透明粘稠物の部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を418.0g得た。
【0061】
[比較合成例2]部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)320.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)86.1g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)500mgを混合し100℃で6時間撹拌した。淡黄色透明粘稠物の部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂を397.0g得た。
【0062】
[光重合開始剤の製造例1]光重合開始剤1
ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX-850L、ナガセケムテックス株式会社製)14.5g(0.1エポキシ当量)、4-ジメチルアミノ安息香酸16.5g(1.0当量)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.71g(0.2当量)、MIBK50gをフラスコに入れ、110℃、24時間攪拌した。反応混合物を室温(25℃、以下同じ。)に冷却し、クロロホルム50gに溶解させ、水100mlで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光重合開始剤1を23.3g得た。
【0063】
[光重合開始剤の製造例2]光重合開始剤2
ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX-850L、ナガセケムテックス株式会社製)14.5g(0.1エポキシ当量)、2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オン22.8g(1.0当量)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.71g(0.2当量)、MIBK50gをフラスコに入れ、110℃、24時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム50gに溶解させ、水100mlで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光重合開始剤2を27.8g得た。
【0064】
[合成例1]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂1
比較合成例1で合成した部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100.0gにLA1892(株式会社クラレ製)15.0gを入れ、100℃で24時間加熱撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂1を得た。
【0065】
[合成例2]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂2
比較合成例1で合成した部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100.0gにLA2140(株式会社クラレ製)15.0gを入れ、100℃で24時間加熱撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂2を得た。
【0066】
[合成例3]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂3
比較合成例1で合成した部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100.0gにLA2250(株式会社クラレ製)15.0gを入れ、100℃で24時間加熱撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂3を得た。
【0067】
[合成例4]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂4
比較合成例1で合成した部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100.0gにLA3320(株式会社クラレ製)15.0gを入れ、100℃で24時間加熱撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂4を得た。
【0068】
[合成例5]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂5
比較合成例1で合成した部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100.0gにLA4285(株式会社クラレ製)15.0gを入れ、100℃で24時間加熱撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂5を得た。
【0069】
[合成例6]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂6
比較合成例1で合成した部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100.0gにLK9243(株式会社クラレ製)15.0gを入れ、100℃で24時間加熱撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂6を得た。
【0070】
[合成例7]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂7
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)160.0gにLA2140(株式会社クラレ製)40.6gを入れ、100℃~120℃で5時間加熱撹拌した。得られたエポキシ樹脂100.0gにメタクリル酸(東京化成工業株式会社製)21.5g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)130mgを混合して100℃で9時間撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂7を得た。
得られたブロック共重合体溶解硬化性樹脂7は、部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部に対してLA2140を20質量部溶解したものに相当する。
【0071】
[合成例8]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂8
LA2140をLA3320(株式会社クラレ製)とした以外は合成例7と同様にして、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂8を得た。
得られたブロック共重合体溶解硬化性樹脂8は、部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部に対してLA3320を20質量部溶解したものに相当する。
【0072】
[合成例9]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂9
LA2140をLA2330(株式会社クラレ製)とした以外は合成例7と同様にして、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂9を得た。
得られたブロック共重合体溶解硬化性樹脂9は、部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部に対してLA2330を20質量部溶解したものに相当する。
【0073】
[合成例10]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂10
比較合成例2で合成した部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100.0gにLA2114(株式会社クラレ製)20.0gを入れ、室温で17時間撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂10を得た。
【0074】
[合成例11]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂11
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC株式会社製)80.0gにLA4285(株式会社クラレ製)30.5g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)21.5g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)130mgを混合して100℃~110℃で5時間撹拌し、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂11を122.0g得た。
得られたブロック共重合体溶解硬化性樹脂11は、部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部に対してLA4285を30質量部溶解したものに相当する。
【0075】
[合成例12]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂12
LA4285をLA1892(株式会社クラレ製)とした以外は合成例11と同様にして、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂12を128.5g得た。
得られたブロック共重合体溶解硬化性樹脂12は、部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部に対してLA1892を30質量部溶解したものに相当する。
【0076】
[合成例13]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂13
LA4285をLA2250(株式会社クラレ製)とした以外は合成例11と同様にして、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂13を128.4g得た。
得られたブロック共重合体溶解硬化性樹脂13は、部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部に対してLA2250を30質量部溶解したものに相当する。
【0077】
[合成例14]ブロック共重合体溶解硬化性樹脂14
LA4285をLK9243(株式会社クラレ製)とした以外は合成例11と同様にして、ブロック共重合体溶解硬化性樹脂14を128.8g得た。
得られたブロック共重合体溶解硬化性樹脂14は、部分メタクリレート化ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部に対してLK9243を30質量部溶解したものに相当する。
【0078】
[実施例1~23及び比較例1~2]
合成例、及び比較合成例で製造した部分メタクリレート化エポキシ樹脂及びブロック共重合体溶解硬化性樹脂と、光重合開始剤1及び2と、熱硬化剤と、重合禁止剤と、シランカップリング剤とを用いて、以下の表に示す配合量(質量部)にて混合後、3本ロールミル(C-4 3/4×10、株式会社井上製作所製)により充分に混練して実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を作製した。
【0079】
実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物について、以下の試験による評価を行った。
【0080】
(1)接着強度測定
純水洗浄後、乾燥させたITO基板(403005XG-10SQ1500A、ジオマテック株式会社製)にエアディスペンサーを用いてポリイミド系配向液(サンエバーSE-7492、日産化学工業株式会社製)を滴下(0.4MPa、5.0秒)した後、スピンコーターにて10秒で5000rpmに達し、その後20秒キープする条件で均一塗布した。均一塗布した後、85℃のホットプレート上でプリベーク(1分)、230℃のオーブンでポストベーク(60分)し、ポリイミド配向膜付基板を作成した。
【0081】
硬化性樹脂組成物を、6μmスペーサーを散布したITO基板、ポリイミド配向膜付基板(30mm×30mm×0.5mmt)上の15mm×3mm、15mm×21mmの位置に、貼り合わせ後の硬化性樹脂組成物の直径が1.5~2.5mmφの範囲となるように点塗布した。その後、同種の基板(23mm×23mm×0.5mmt)を貼り合わせ、紫外線を積算光量3000mJ/cm2で照射(照射装置:UVX-01224S1、ウシオ電機株式会社製)して硬化させ、120℃オーブンで1時間熱硬化を行い、硬化物試験片を作成した。オートグラフ(TG-2kN、ミネベア株式会社製)を用い、試験片を固定して基板の15mm×25mmの位置を5mm/分の速度で押し抜き、ITO基板同士(ITO/ITO)及びポリイミド基板同士(PI/PI(TN))の接着強度を測定した。
【0082】
(2)粘度
E型粘度計(東機産業社製 RE105U)を用いて、25℃で、コーンロータの回転
速度2.5rpmで粘度を測定した。
【0083】
接着強度測定及び粘度の結果を以下の表1~表3に示す。なお、表1~表3には、配合比に基づいた組成比も示す。
【0084】
(3)NI点変化測定
実施例1~23、及び比較例1~2の硬化性樹脂組成物について、直径5mm、厚さ0.5mmtの型に注型し、紫外線を積算光量3,000mJ/cm2で照射して硬化させ、硬化性樹脂組成物の光硬化物を得た。得られた光硬化物をアンプル瓶に約0.1g入れ、さらに、液晶(MLC-6609、メルク社製)を光硬化物の10倍量加えた。この瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し、0.2μmフィルターによりろ過して評価用液晶サンプルとした。
【0085】
NI点の測定は、示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製、PYRIS6)を使用し、評価用液晶サンプル10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で行った。なお、上記液晶10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で測定を行った結果をブランクとした。
ブランクの吸熱ピークトップ(相転移温度)TBと、評価用液晶の吸熱ピークトップ(相転移温度)TEの差;TE-TBをNI点変化とした。
【0086】
液晶の相転移温度であるNI点(Nematic-Isotropic point)は液晶の各成分の混合組成により決定され、各配合で固有の値となる。一般的に、これら液晶に何らかの不純物(他成分)が混入することによりNI点は変化することが知られている。硬化性樹脂組成物の含有成分の液晶への溶出を抑制し、液晶の配向を安定に確保して、表示特性を向上する観点から、NI点変化の絶対値は小さいほど好ましい。
NI点変化の絶対値が5.0℃未満の場合を「〇」、5.0℃以上である場合を「×」としてNI点変化を評価した。結果を表4に示す。
【0087】
(4)液晶比抵抗値保持率
NI点変化測定にて作製した評価用液晶サンプルを用いて、液晶比抵抗測定システム(東陽テクニカ製、SR-6517型)にて、測定温度23±3℃、印可電圧10V、測定時間120秒で評価用液晶比抵抗値を測定した。同様にして、液晶(MLC-6609、メルク社製)を用いてブランク液晶比抵抗値を測定した。上記結果から、下記式にて液晶比抵抗値保持率を算出した。
液晶比抵抗値保持率(%)=(評価用液晶比抵抗値/ブランク液晶比抵抗値)×100
液晶比抵抗値保持率が0.1%より大きい場合を「〇」、0.1%以下の場合を「×」として液晶比抵抗値保持率を評価した。結果を表5に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
表1~表3より、実施例の硬化性樹脂組成物は、対ITO接着強度及び対PI接着強度の両方に優れていた。
実施例1と実施例5との比較、及び、実施例19と実施例20との比較により、(B)成分において重合体ブロックaの割合が同程度である場合、トリブロック体である方が、接着強度により優れていた。
実施例7~15の比較により、(B)成分の含有量が多くなる方が、接着強度により優れていた。
実施例7~9と実施例13~15との比較により、(B)成分の分子量が小さい方が、対ITO接着強度により優れていた。一方で、実施例9と実施例15との比較により、(B)成分の分子量が大きい方が、対PI接着強度により優れていた。
比較例1~2の硬化性樹脂組成物は、(B)成分を含まないため、接着強度が劣っていた。
また、表4及び表5より、実施例の硬化性樹脂組成物は、NI点変化の絶対値が5.0℃未満であり、液晶比抵抗値保持率が0.1%より大きかった。よって、実施例の硬化性樹脂組成物は、液晶シール剤として適していることがわかった。