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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】蘭用育苗ポット及び蘭の育成方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20240620BHJP
   A01G 22/63 20180101ALI20240620BHJP
【FI】
A01G9/02 101R
A01G22/63
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021171350
(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公開番号】P2023061457
(43)【公開日】2023-05-02
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】708002942
【氏名又は名称】株式会社リーフ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 幹憲
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058167(JP,A)
【文献】特開昭57-141225(JP,A)
【文献】実開平06-033444(JP,U)
【文献】実開昭59-150246(JP,U)
【文献】特開平10-056874(JP,A)
【文献】特開平10-178903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 22/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蘭を植えて苗木の状態から花芽が伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる蘭用育苗ポットであって、
前記蘭用育苗ポットは、前記苗木の状態の前記蘭を植え付ける収容部を有する略筒状の第1育苗ポットと、
前記第1育苗ポットを当該第1育苗ポットの上端開口部まで中へ嵌入可能に形成された下収容部と前記下収容部の上端から当該下収容部に嵌入した前記第1育苗ポットの上端開口部より上方へ延設された上収容部とを有する略筒状の第2育苗ポットと、から成ること
前記下収容部は、嵌入した前記第1育苗ポットと取り外し可能に密着し、前記上収容部は、前記蘭の葉や花芽が当該上収容部の内壁に沿って上方へ伸びることができるように形成されていることを特徴とする蘭用育苗ポット。
【請求項2】
請求項1に記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの上収容部には、前記下収容部に嵌入した前記第1育苗ポットの上端開口部と近接した位置に複数の空気流通孔が形成されていることを特徴とする蘭用育苗ポット。
【請求項3】
請求項2に記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの上収容部には、前記空気流通孔と前記第2育苗ポットの上端開口部との間で上下方向に延設された複数の縦補強部を周方向へ所定の間隔で形成したことを特徴とする蘭用育苗ポット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの上端開口部には、先端へ行くほど徐々に薄くなり外方へ湾曲されたリップ部を備えていることを特徴とする蘭用育苗ポット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの底部の中央部には、前記第1育苗ポットの底部の中央部に形成した水抜き孔より大きい水抜き孔が形成されていることを特徴とする蘭用育苗ポット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された蘭用育苗ポットを用いた蘭の育成方法であって、
前記蘭用育苗ポットを嵌入して支持可能な複数のポット受け部が縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔で形成された育苗パレットを備え、
前記苗木の状態の前記蘭を植え付けた前記第1育苗ポットを前記各ポット受け部に嵌入し支持して、前記蘭を育成させる第1育成ステップと、
前記蘭の葉が前記第1育苗ポットの上端開口部より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、前記第1育苗ポットを前記第2育苗ポットの中に嵌入し、その後に、前記第2育苗ポットを前記各ポット受け部に嵌入し支持して、成長期の前記蘭を花芽が伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる第2育成ステップと、を備えたことを特徴とする蘭の育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蘭用育苗ポット及び蘭の育成方法に関し、より詳しくは、葉や花芽を傷付けずに良好な蘭を育成させる蘭用育苗ポット及び当該蘭用育苗ポットを用いて効率的かつ低コストに育成可能な蘭の育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蘭は、優美な花を咲かせ、私たちの目を楽しませてくれる。そのため、一般家庭や喫茶店、レストランその他の施設に配置して、観賞できる鉢植えの蘭が、数多く栽培され販売されている。しかし、蘭は、もともと熱帯の植物であって、樹木の幹や樹皮に根を張って育つ着生ランを起源としている。そのため、空気中に晒されている根と葉から雨や霧などの水分を摂取して生育できるよう、乾燥に強い性質を備えている。この乾燥に強い性質を備えるべく、蘭の葉は、水分や養分を極力多く蓄えるよう、肉厚に形成されて、根の株元から横方向の左右反対方向へ伸びる性質がある。そして、葉がある程度の大きさに成長すると、株元付近で葉の間から花芽が伸び、花芽の先端に複数の美しい花を咲かせる。
【0003】
このように、厚肉の葉が左右反対方向に伸び、伸びた葉の間から花芽が伸び、乾燥に強い特質を有する蘭は、従来、苗木の状態で水苔等に包んだ根を円筒状の育苗ポットに植えて、ポット受け部が縦方向と横方向に所定のピッチで形成された育成パレットに多数の育苗ポットを配置し、所定の温度管理を行い、定期的に水やり等を行いながら、苗木の状態から花芽が伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させていた。
【0004】
ところが、ポット受け部が縦方向と横方向に所定のピッチで形成された育成パレットに多数の育苗ポットを配置すると、葉が小さい苗木の時期は良いが、葉が成長するに従って、隣り合う育苗ポットに植えた蘭から横方向へ伸びる葉が互いに上下で重なり、光が当たらない部分や水やり時に給水されない部分ができて、育成上好ましくない状態が生じるという問題があった。また、成長した蘭を育成パレットから取り出す時、隣り合う蘭の葉が上下で重なり、花芽が隣の葉の間に伸びていることもあるため、葉や花芽が傷付き易いという問題があった。
【0005】
この問題に対して、例えば、特許文献1には、図7図8に示すように、蘭101の育苗ポット102を嵌入して支持するポット受開口103を上面に複数縦横に設けた育苗器(育成パレット)において、ポット受開口103の縦方向の列の列間隔L1とポット受開口103の横方向の行の行間隔L2とに少なくとも20ミリ以上の差があるように設けると共に、ポット受開口103の形状を多角形状とした蘭用育苗器100が提案されている。この蘭用育苗器100には、蘭用育苗器上面105のポット受開口103の間に、空気が上下に流通する空気流通口104が複数設けられている。
【0006】
上記蘭用育苗器100では、育苗ポット102に植えられた蘭101の葉101aを対角線方向になるように配置すれば、葉101aの重なりを低減して、葉101aの採光を均一にでき、高品質の欄101に育成できる。また、葉101aの重なりも少ないので、給水も容易となる。さらに、空気流通口104によって、育苗ポット102周囲の空気の流通を良好にして、蘭101の根の乾燥力を高め、蘭101の育成を良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-178903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された蘭用育苗器100では、ポット受開口103の縦方向の列の列間隔L1とポット受開口103の横方向の行の行間隔L2とに少なくとも20ミリ以上の差があるように設けるので、同一の表面積からなる蘭用育苗器100において、単位面積当たりの蘭101の育成数量が減少して、生産効率が低下するという問題があった。
【0009】
また、上記蘭用育苗器100では、蘭101の成長が進むほど、列間隔L1と行間隔L2との差を大きくしないと、葉101aの重なりが増加するため、列間隔L1と行間隔L2と差が異なる複数種類の蘭用育苗器100を用意する必要がある。さらに、ポット受開口103の列間隔L1と行間隔L2とに差を設けるので、ポット受開口103が縦横同一の間隔で形成された汎用の蘭用育苗器(育苗パレット)を用いることができず、特別の蘭用育苗器100を製造する必要があって、生産コストを増加させるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、葉や花芽を傷付けずに良好な蘭を育成させる蘭用育苗ポット及び当該蘭用育苗ポットを用いて効率的かつ低コストに育成できる蘭の育成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る蘭用育苗ポット及び蘭の育成方法は、次のような構成を有している。
(1)蘭を植えて苗木の状態から花芽が伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる蘭用育苗ポットであって、
前記蘭用育苗ポットは、前記苗木の状態の前記蘭を植え付ける収容部を有する略筒状の第1育苗ポットと、
前記第1育苗ポットを当該第1育苗ポットの上端開口部まで中へ嵌入可能に形成された下収容部と前記下収容部の上端から当該下収容部に嵌入した前記第1育苗ポットの上端開口部より上方へ延設された上収容部とを有する略筒状の第2育苗ポットと、から成ることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、蘭用育苗ポットは、苗木の状態の蘭を植え付ける収容部を有する略筒状の第1育苗ポットと、第1育苗ポットを当該第1育苗ポットの上端開口部まで中へ嵌入可能に形成された下収容部と下収容部の上端から当該下収容部に嵌入した第1育苗ポットの上端開口部より上方へ延設された上収容部とを有する略筒状の第2育苗ポットと、から成るので、葉が小さい苗木の状態の蘭には、第1育苗ポットのみを使用して育成し、葉が第1育苗ポットの上端開口部より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、第1育苗ポットを第2育苗ポットの中に嵌入し、背の高い第2育苗ポットの中で成長期の蘭を育成することができる。そのため、成長期の蘭は、葉が第2育苗ポットの上収容部の内壁に沿って上方へ伸びることができ、隣接する他の蘭の葉と上下で重なり合うことを回避できる。また、花芽も第2育苗ポットの上収容部の内壁に沿って上方へ伸びることができるので、隣接する他の蘭の葉の間に花芽が侵入することを回避できる。その結果、成長段階の蘭に対して、葉への採光不良や根への給水不良を低減でき、良好な蘭を育成できる共に、成長した蘭を密集して配置する育成パレットから取り出す時に、葉や花芽の傷付きを低減できる。
【0013】
よって、本発明によれば、葉や花芽を傷付けずに良好な蘭を育成させる蘭用育苗ポットを提供することができる。
【0014】
(2)(1)に記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの上収容部には、前記下収容部に嵌入した前記第1育苗ポットの上端開口部と近接した位置に複数の空気流通孔が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、第2育苗ポットの上収容部には、下収容部に嵌入した第1育苗ポットの上端開口部と近接した位置に複数の空気流通孔が形成されているので、給水したときの湿気を空気流通孔から外部へ逃がして、根の株元における乾燥を確保できる。そのため、成長期における蘭の根の根腐りを防止して、育成状況をより一層良好に保つことができる。また、空気流通孔は、第2育苗ポットの上収容部において、第1育苗ポットの上端開口部と近接した位置に形成したので、成長期における蘭の葉が伸びる位置より、空気流通孔を低くできる。そのため、成長途中の蘭の葉が、空気流通孔に侵入する恐れを低減できる。
【0016】
(3)(2)に記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの上収容部には、前記空気流通孔と前記第2育苗ポットの上端開口部との間で上下方向に延設された複数の縦補強部を周方向へ所定の間隔で形成したことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、第2育苗ポットの上収容部には、空気流通孔と第2育苗ポットの上端開口部との間で上下方向に延設された複数の縦補強部を周方向へ所定の間隔で形成したので、成長段階の蘭の葉が第2育苗ポットの上収容部の内壁に沿って上方へ伸びる際、葉からの圧力を受けても、上収容部の内壁が周方向で緩やかに湾曲しつつ、上下方向で屈曲するのを縦補強部によって回避できる。そのため、成長に伴う葉の横方向への拡張を、上下方向で屈曲することなく周方向で緩やかに湾曲する上収容部が適度な反力で規制して、上収容部の内壁による葉の傷付きを防止することができる。その結果、成長段階の蘭の葉の傷付きを回避しながら、より一層良好な蘭を育成できる。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの上端開口部には、先端へ行くほど徐々に薄くなり外方へ湾曲されたリップ部を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、第2育苗ポットの上端開口部には、先端へ行くほど徐々に薄くなり外方へ湾曲されたリップ部を備えているので、成長した蘭の葉は、柔軟なリップ部によって支持されつつ、第2育苗ポットの上端開口部より上方へ伸びることができる。そのため、成長段階の蘭の葉が、第2育苗ポットの上端開口部に当接して傷付くことを回避して、より一層良好な蘭を育成できる。
【0020】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された蘭用育苗ポットにおいて、
前記第2育苗ポットの底部の中央部には、前記第1育苗ポットの底部の中央部に形成した水抜き孔より大きい水抜き孔が形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、第2育苗ポットの底部の中央部には、第1育苗ポットの底部の中央部に形成した水抜き孔より大きい水抜き孔が形成されているので、成長した蘭の根が第2育苗ポットの水抜き孔から外方へ伸びている場合でも、第1育苗ポットの水抜き孔によって根の横方向への広がりを抑制できる。そのため、成長した蘭を第1育苗ポットに植えた状態で、第2育苗ポットから取り出す際、第2育苗ポットの水抜き孔の外方へ伸びた根が第2育苗ポットの水抜き孔に引っ掛かりにくく、傷付きにくい。その結果、成長した蘭の根の傷付きを回避しながら、第1育苗ポットに植えた良好な蘭を第2育苗ポットから取り出すことができる。
【0022】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された蘭用育苗ポットを用いた蘭の育成方法であって、
前記蘭用育苗ポットを嵌入して支持可能な複数のポット受け部が縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔で形成された育苗パレットを備え、
前記苗木の状態の前記蘭を植え付けた前記第1育苗ポットを前記各ポット受け部に嵌入し支持して、前記蘭を育成させる第1育成ステップと、
前記蘭の葉が前記第1育苗ポットの上端開口部より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、前記第1育苗ポットを前記第2育苗ポットの中に嵌入し、その後に、前記第2育苗ポットを前記各ポット受け部に嵌入し支持して、成長期の前記蘭を花芽が伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる第2育成ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明においては、蘭用育苗ポットを嵌入して支持可能な複数のポット受け部が縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔で形成された育苗パレットを備えたので、例えば、特許文献1に記載されたような特殊な蘭育苗器(育成パレット)を用いることなく、一般的に市販されている安価な育成パレットを用いることができる。そのため、蘭の生産コストを低減させることができる。
【0024】
また、苗木の状態の蘭を植え付けた第1育苗ポットを育成パレットの各ポット受け部に嵌入し支持して、蘭を育成させる第1育成ステップを備えたので、第1育苗ポットに植え付けた苗木の蘭を、育苗パレットに縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔で数多く配列して、効率的に育成できる。すなわち、育苗パレットに数多く配列した蘭の葉が、隣の蘭の葉に邪魔されることなく採光や給水等を受けることができ、単位面積当たりの蘭の育成数量を増大させて、苗木の状態の蘭に対して、効率的な育成ができる。
【0025】
また、蘭の葉が第1育苗ポットの上端開口部より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、第1育苗ポットを第2育苗ポットの中に嵌入し、その後に、第2育苗ポットを育成パレットの各ポット受け部に嵌入し支持して、成長期の蘭を花芽が伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる第2育成ステップを備えたので、成長期の蘭は、葉が第2育苗ポットの上収容部の内壁に沿って上方へ伸びることができ、隣接する他の蘭の葉と上下で重なり合うことを回避できる。また、花芽も第2育苗ポットの上収容部の内壁に沿って上方へ伸び、隣接する他の蘭の葉の間に侵入するのを回避させることができる。その結果、成長期の蘭に対して、葉への採光不良や根への給水不良を低減でき、良好な蘭を育成できる。また、成長した蘭を植えた第1育苗ポットを育成パレットのポット受け部に嵌入し支持された第2育苗ポットから取り出す時に、葉や花芽の傷付きを低減できる。
【0026】
また、第2育成ステップでは、第2育苗ポットを育成パレットの各ポット受け部に嵌入し支持して、成長期の蘭を花芽が伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させるので、第1育成ステップと同様に、単位面積当たりの蘭の育成数量を増大させて、成長期の蘭に対して、効率的な育成ができる。よって、本発明によれば、葉や花芽を傷付けずに良好な蘭を育成させ、効率的かつ低コストに育成できる蘭の育成方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、葉や花芽を傷付けずに良好な蘭を育成させる蘭用育苗ポット及び当該蘭用育苗ポットを用いて効率的かつ低コストに育成できる蘭の育成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る蘭用育苗ポットの斜視図である。
図2図1に示す蘭用育苗ポットにおいて、第1育苗ポットに苗木の蘭を植え付けた状態の概略断面図である。
図3図1に示す蘭用育苗ポットにおいて、第1育苗ポットが第2育苗ポットの中に嵌入された後、蘭が出荷可能な大きさに成長した状態の概略断面図である。
図4図2に示す第1育苗ポットを育成パレットの各ポット受け部に嵌入・支持して苗木期の蘭を育成する第1育成ステップを表す部分断面図である。
図5図3に示す第2育苗ポットを育成パレットの各ポット受け部に嵌入・支持して成長期の蘭を育成する第2育成ステップを表す部分断面図である。
図6図5に示す第2育苗ポットと成長期の蘭とを上方から見た斜視図である。
図7】特許文献1に記載された蘭育苗器において、ポット受開口に育苗ポットに植えられた蘭の葉を対角線方向になるように配置した平面図である。
図8図7に示すX-X断面のポット受開口に蘭を植えた育苗ポットを嵌入・支持する動作を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本実施形態に係る蘭用育苗ポット及び当該蘭用育苗ポットを用いた蘭の育成方法について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る蘭用育苗ポットの構成及びその機能を詳細に説明する。次に、本他の実施形態に係る蘭の育成方法を詳細に説明する。
【0030】
<本蘭用育苗ポットの構成及びその機能>
まず、本実施形態に係る蘭用育苗ポットの構成及びその機能を、図1図3を用いて詳細に説明する。図1に、本実施形態に係る蘭用育苗ポットの斜視図を示す。図2に、図1に示す蘭用育苗ポットにおいて、第1育苗ポットに苗木の蘭を植え付けた状態の概略断面図を示す。図3に、図1に示す蘭用育苗ポットにおいて、第1育苗ポットが第2育苗ポットの中に嵌入された後、蘭が出荷可能な大きさに成長した状態の概略断面図を示す。なお、A部に第2育苗ポットの上端開口部の拡大図を示す。
【0031】
図1図3に示すように、本実施形態に係る蘭用育苗ポット10は、蘭K(K1、K2)を植えて苗木の状態から花芽HMが伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる蘭用育苗ポット10である。本蘭用育苗ポット10は、苗木の状態の蘭K1を植え付ける収容部1Sを有する略円筒状の第1育苗ポット1と、第1育苗ポット1を当該第1育苗ポット1の上端開口部11まで中へ嵌入可能に形成された下収容部2S1と下収容部2S1の上端から当該下収容部2S1に嵌入した第1育苗ポット1の上端開口部11より上方へ延設された上収容部2S2とを有する略円筒状の第2育苗ポット2と、から成る。
【0032】
ここでは、蘭K(K1、K2)を胡蝶蘭の例で説明するが、各種の蘭に適用できることは言うまでもない。蘭Kは、根NNを培養土を含む水苔等に包んで第1育苗ポット1の収容部1S内に植え付けられている。第1育苗ポット1は、一般的に使用される樹脂製の育苗ポットであって、略円筒状に形成された収容部1Sを有し、その底部12に円形の水抜き孔121が形成されている。また、収容部1Sの上端にて開口する上端開口部11の外径は、底部12の外径より僅かに大きく形成され、収容部1Sは、全体として先開き状に形成されている。
【0033】
また、第2育苗ポット2は、本発明特有の構成となる樹脂製の育苗ポットであって、底部22に円形の水抜き孔221が形成された下収容部2S1と、上端にて開口する上端開口部21が形成された上収容部2S2とを有している。下収容部2S1は、第1育苗ポット1を当該第1育苗ポット1の上端開口部11まで中へ嵌入可能に形成されている。下収容部2S1の内壁は、第1育苗ポット1と略同程度の大きさに形成されている。下収容部2S1には、上下方向に延設された複数の縦補強溝27が形成されている。
【0034】
ここでは、下収容部2S1には、底部22に円形の水抜き孔221が形成されているが、底部22は必ずしも必要としない。下収容部2S1は、嵌入した第1育苗ポット1と密着して上収容部2S2を支持できれば良い。また、上収容部2S2は、下収容部2S1の上端から下収容部2S1の高さより大きく延設されているが、上収容部2S2の高さは、出荷可能な時期における蘭K2の成長度合いに応じて適宜設定すればよい。また、上収容部2S2は、下収容部2S1の上端から下収容部2S1の延長線上で延設されているが、下収容部2S1の上端から下収容部2S1の延長線より外方へ傾斜して、より大きく先開きするように延設しても良い。
【0035】
以上のように、本蘭用育苗ポット10は、苗木の状態の蘭K1を植え付ける収容部1Sを有する略円筒状の第1育苗ポット1と、第1育苗ポット1を当該第1育苗ポット1の上端開口部11まで中へ嵌入可能に形成された下収容部2S1と下収容部2S1に嵌入した第1育苗ポット1の上端開口部11より上方へ延設された上収容部2S2とを有する略円筒状の第2育苗ポット2と、から成るので、葉H1が小さい苗木の状態の蘭K1には、第1育苗ポット1のみを使用して育成し、葉H2が第1育苗ポット1の上端開口部11より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の下収容部2S1の中に嵌入し、背の高い第2育苗ポット2の中で成長期の蘭K2を育成することができる。
【0036】
そのため、成長期の蘭K2は、葉H2が第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びることができ、隣接する他の蘭K2の葉H2と上下で重なり合うことを回避できる。また、花芽HMも第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びることができるので、隣接する他の蘭K2の葉H2の間に花芽HMが侵入することを回避できる。
【0037】
その結果、成長段階の蘭K2に対して、葉H2への採光不良や根NNへの給水不良を低減でき、良好な蘭K2を育成できる共に、成長した蘭K2を後述する育成パレット4から取り出す時に、葉H2や花芽HMの傷付きを低減できる。なお、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の中に嵌入するだけで良いので、成長期の蘭K2を第1育苗ポット1から第2育苗ポット2へ植え替える手間が省けると共に、植え替えによって蘭K2が枯れる等のリスクも回避できる。
【0038】
また、本蘭用育苗ポット10において、第2育苗ポット2の上収容部2S2には、下収容部2S1に嵌入した第1育苗ポット1の上端開口部11と近接した位置に複数の空気流通孔23が形成されていることが好ましい。ここでは、下収容部2S1の上端と連結された上収容部2S2の境界部に、周方向へ水平状に延設された上下2つのリング溝25、26が形成されている。空気流通孔23は、下リング溝25と上リング溝26との間で、周方向へ等間隔に離間した位置に形成されている。リング溝25、26は、上収容部2S2における略円筒状の形状を保持する機能を備えている。
【0039】
上記構成によって、給水したときの湿気を空気流通孔23から外部へ逃がして、根NNの株元における乾燥を確保できる。そのため、成長段階における蘭K2の根NNの根腐りを防止して、育成状況をより一層良好に保つことができる。また、空気流通孔23は、第2育苗ポット2の上収容部2S2において、第1育苗ポット1の上端開口部11と近接した位置に形成したので、成長段階における蘭K2の葉H2が伸びる位置より、空気流通孔23を低くできる。そのため、成長段階の蘭K2の葉H2が、空気流通孔23に侵入する恐れを低減できる。
【0040】
また、本蘭用育苗ポット10において、第2育苗ポット2の上収容部2S2には、空気流通孔23と第2育苗ポット2の上端開口部21との間で上下方向に延設された複数の縦補強溝24を周方向へ所定の間隔で形成したことが好ましい。ここでは、縦補強溝24は、2種類の長さに形成されている。上リング溝26と上端開口部21の間には、長さの異なる縦補強溝24が交互に配置されている。縦補強溝24は、上リング溝26より細く、かつ浅く形成されていることが好ましい。
【0041】
上記構成によって、成長段階の蘭K2の葉H2が第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びる際、葉H2からの圧力を受けても、上収容部2S2の内壁が周方向で緩やかに湾曲しつつ、上下方向で屈曲するのを縦補強溝24によって回避できる。そのため、成長に伴う葉H2の横方向への拡張を、上下方向で屈曲することなく周方向で緩やかに湾曲する上収容部2S2が適度な反力で規制して、上収容部2S2の内壁による葉H2の傷付きを防止することができる。その結果、成長段階の蘭K2の葉H2の傷付きを回避しながら、より一層良好な蘭Kを育成できる。
【0042】
また、本蘭用育苗ポット10において、第2育苗ポット2の上端開口部21には、先端へ行くほど徐々に薄くなり外方へ湾曲されたリップ部211を備えていることが好ましい。リップ部211は、先端へ行くほど徐々に薄くなり外方へ湾曲されているので、先端が柔軟に撓むことができ、リップ部211の円弧上面で葉H2を柔らかく受け止めることができる。リップ部211の先端は、周方向で波打つように形成しても良い。
【0043】
上記構成によって、成長した蘭K2の葉H2は、柔軟なリップ部211によって柔らかく支持されつつ、第2育苗ポット2の上端開口部21より上方へ伸びることができる。そのため、成長段階の蘭K2の葉H2が、第2育苗ポット2の上端開口部21に当接して傷付くことを回避して、より一層良好な蘭Kを育成できる。
【0044】
また、本蘭用育苗ポット10において、第2育苗ポット2の底部22の中央部CLには、第1育苗ポット1の底部12の中央部CLに形成した水抜き孔121より大きい水抜き孔221が形成されていることが好ましい。
【0045】
上記構成によって、成長した蘭K2の根NNが第2育苗ポット2の水抜き孔221から外方へ伸びている場合でも、第1育苗ポット1の水抜き孔121によって根NNの横方向への広がりを抑制できる。そのため、成長した蘭K2を第1育苗ポット1に植えた状態で、第2育苗ポット2から取り出す際、第2育苗ポット2の水抜き孔221の外方へ伸びた根NNが第2育苗ポット2の水抜き孔221に引っ掛かりにくく、傷付きにくい。その結果、成長した蘭K2の根NNの傷付きを回避しながら、第1育苗ポット1に植えた良好な蘭Kを第2育苗ポット2から取り出すことができる。
【0046】
<本蘭の育成方法>
次に、本他の実施形態に係る蘭の育成方法を、図2図6を用いて詳細に説明する。図2に、図1に示す蘭用育苗ポットにおいて、第1育苗ポットに苗木の蘭を植え付けた状態の概略断面図を示す。図3に、図1に示す蘭用育苗ポットにおいて、第1育苗ポットが第2育苗ポットの中に嵌入された後、蘭が出荷可能な大きさに成長した状態の概略断面図を示す。図4に、図2に示す第1育苗ポットを育成パレットの各ポット受け部に嵌入・支持して苗木期の蘭を育成する第1育成ステップを表す部分断面図を示す。図5に、図3に示す第2育苗ポットを育成パレットの各ポット受け部に嵌入・支持して成長期の蘭を育成する第2育成ステップを表す部分断面図を示す。図6に、図5に示す第2育苗ポットと成長期の蘭とを上方から見た斜視図を示す。
【0047】
図2図6に示すように、本他の実施形態に係る蘭の育成方法は、上述した蘭用育苗ポット10を用いた蘭の育成方法であって、蘭用育苗ポット10を嵌入して支持可能な複数のポット受け部41が縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔R1で形成された育成パレット4を備え、苗木の状態の蘭K(K1、K2)を植え付けた第1育苗ポット1を各ポット受け部41に嵌入し支持して、蘭K1を育成させる第1育成ステップS1と、蘭K1の葉H1が第1育苗ポット1の上端開口部11より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の中に嵌入し、その後に、第2育苗ポット2を各ポット受け部41に嵌入し支持して、成長期の蘭K2を花芽HMが伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる第2育成ステップS2と、を備えている。
【0048】
ここでは、育成パレット4は、平坦で矩形状の上板42に、複数のポット受け部41が、縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔R1で、かつ同一の深さで形成されたものである。ポット受け部41同士の間隔R1は、隣接するポット受け部41に嵌入し支持した第2育苗ポット2の上端開口部21が、互いに接触する程度に形成すると良い。ポット受け部41には、第1育苗ポット1又は第2育苗ポット2を支持する底受け部411が形成され、底受け部411の中央部には、水抜き孔412が形成されている。ポット受け部41の側壁にも、適宜水抜き孔が形成されても良い。
【0049】
また、複数の育成パレット4を並べて載置可能に形成された架台5を備えている。架台5は、平坦で網状に形成されたエキスパンドメタル等をフレーム材で補強した載置板51と、載置板51を支持する脚部52とで構成されている。育成パレット4は、ポット受け部41の底受け部411が載置板51に当接した状態で、架台5に載置されている。
【0050】
本蘭の育成方法では、蘭用育苗ポット10を嵌入して支持可能な複数のポット受け部41を縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔R1で形成された育成パレット4を備えたので、例えば、特許文献1に記載されたような特殊な蘭育苗器(育成パレット)を用いることなく、一般的に市販されている安価な育成パレット4を用いることができる。そのため、蘭Kの生産コストを低減させることができる。
【0051】
また、苗木の状態の蘭K1を植え付けた第1育苗ポット1を育成パレット4の各ポット受け部41に嵌入し支持して、蘭K1を育成させる第1育成ステップS1を備えたので、第1育苗ポット1に植え付けた苗木の蘭K1を、育成パレット4に縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔R1で数多く配列して、効率的に育成できる。すなわち、育成パレット4に数多く配列した蘭K1の葉H1が、隣の蘭K1の葉H1に邪魔されることなく採光や給水等を受けることができ、単位面積当たりの蘭K1の育成数量を増大させて、苗木の状態の蘭K1に対して、効率的な育成ができる。
【0052】
また、蘭K1の葉H1が第1育苗ポット1の上端開口部11より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の下収容部2S1の中に嵌入し、その後に、第2育苗ポット2を育成パレット4の各ポット受け部41に嵌入し支持して、成長期の蘭K2を花芽HMが伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる第2育成ステップS2を備えたので、成長期の蘭K2は、葉H2が第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びることができ、隣接する他の蘭K2の葉H2と上下で重なり合うことを回避できる。また、花芽HMも第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸び、隣接する他の蘭K2の葉H2の間に花芽HMが侵入するのを回避させることができる。
【0053】
その結果、成長期の蘭K2に対して、葉H2への採光不良や根NNへの給水不良を低減でき、良好な蘭Kを育成できる。また、成長した蘭K2を植えた第1育苗ポット1を育成パレット4のポット受け部41に嵌入し支持された第2育苗ポット2から取り出す時に、葉H2や花芽HMの傷付きを低減できる。
【0054】
また、第2育成ステップS2では、第2育苗ポット2を育成パレット4の各ポット受け部41に嵌入し支持して、成長期の蘭K2を花芽HMが伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させるので、第1育成ステップS1と同様に、単位面積当たりの蘭K2の育成数量を増大させて、成長期の蘭K2に対して、効率的な育成ができる。なお、第2育成ステップS2では、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の中に嵌入するだけで良いので、成長期の蘭K2を第1育苗ポット1から第2育苗ポット2へ植え替える手間が省けると共に、植え替えによって蘭K2が枯れる等のリスクも回避できる。
【0055】
よって、本蘭の育成方法によれば、葉Hや花芽HMを傷付けずに良好な蘭Kを育成させ、効率的かつ低コストに育成できる蘭Kの育成方法を提供することができる。
【0056】
<作用効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る蘭用育苗ポット10によれば、本蘭用育苗ポット10は、苗木の状態の蘭K1を植え付ける収容部1Sを有する略円筒状の第1育苗ポット1と、第1育苗ポット1を当該第1育苗ポット1の上端開口部11まで中へ嵌入可能に形成された下収容部2S1と下収容部2S1の上端から当該下収容部2S1に嵌入した第1育苗ポット1の上端開口部11より上方へ延設された上収容部2S2とを有する略円筒状の第2育苗ポット2と、から成るので、葉H1が小さい苗木の状態の蘭K1には、第1育苗ポット1のみを使用して育成し、葉H2が第1育苗ポット1の上端開口部11より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の中に嵌入し、背の高い第2育苗ポット2の中で成長期の蘭K2を育成することができる。
【0057】
そのため、成長期の蘭K2は、葉H2が第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びることができ、隣接する他の蘭K2の葉H2と上下で重なり合うことを回避できる。また、花芽HMも第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びることができるので、隣接する他の蘭K2の葉H2の間に花芽HMが侵入することを回避できる。その結果、成長段階の蘭K2に対して、葉H2への採光不良や根NNへの給水不良を低減でき、良好な蘭K2を育成できる共に、成長した蘭K2を密集して配置する育成パレット4から取り出す時に、葉H2や花芽HMの傷付きを低減できる。
【0058】
よって、本実施形態によれば、葉Hや花芽HMを傷付けずに良好な蘭Kを育成させる蘭用育苗ポット10を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、第2育苗ポット2の上収容部2S2には、下収容部2S1に嵌入した第1育苗ポット1の上端開口部11と近接した位置に複数の空気流通孔23が形成されているので、給水したときの湿気を空気流通孔23から外部へ逃がして、根NNの株元における乾燥を確保できる。そのため、成長段階における蘭K2の根NNの根腐りを防止して、育成状況をより一層良好に保つことができる。また、空気流通孔23は、第2育苗ポット2の上収容部2S2において、第1育苗ポット1の上端開口部11と近接した位置に形成したので、成長段階における蘭K2の葉H2が伸びる位置より、空気流通孔23を低くできる。そのため、成長段階の蘭K2の葉H2が、空気流通孔23に侵入する恐れを低減できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、第2育苗ポット2の上収容部2S2には、空気流通孔23と第2育苗ポット2の上端開口部21との間で上下方向に延設された複数の縦補強溝(縦補強部)24を周方向へ所定の間隔で形成したので、成長段階の蘭K2の葉H2が第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びる際、葉H2からの圧力を受けても、上収容部2S2の内壁が周方向で緩やかに湾曲しつつ、上下方向で屈曲するのを縦補強溝(縦補強部)24によって回避できる。そのため、成長に伴う葉H2の横方向への拡張を、上下方向で屈曲することなく周方向で緩やかに湾曲する上収容部2S2が適度な反力で規制して、上収容部2S2の内壁による葉H2の傷付きを防止することができる。その結果、成長段階の蘭K2の葉H2の傷付きを回避しながら、より一層良好な蘭Kを育成できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、第2育苗ポット2の上端開口部21には、先端へ行くほど徐々に薄くなり外方へ湾曲されたリップ部211を備えているので、成長した蘭K2の葉H2は、柔軟なリップ部211によって支持されつつ、第2育苗ポット2の上端開口部21より上方へ伸びることができる。そのため、成長段階の蘭K2の葉H2が、第2育苗ポット2の上端開口部21に当接して傷付くことを回避して、より一層良好な蘭Kを育成できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、第2育苗ポット2の底部22の中央部CLには、第1育苗ポット1の底部12の中央部CLに形成した水抜き孔121より大きい水抜き孔221が形成されているので、成長した蘭K2の根NNが第2育苗ポット2の水抜き孔221から外方へ伸びている場合でも、第1育苗ポット1の水抜き孔121によって根NNの横方向への広がりを抑制できる。そのため、成長した蘭K2を第1育苗ポット1に植えた状態で、第2育苗ポット2から取り出す際、第2育苗ポット2の水抜き孔221の外方へ伸びた根NNが第2育苗ポット2の水抜き孔221に引っ掛かりにくく、傷付きにくい。その結果、成長した蘭K2の根NNの傷付きを回避しながら、第1育苗ポット1に植えた良好な蘭Kを第2育苗ポット2から取り出すことができる。
【0063】
また、本他の実施形態に係る蘭の育成方法によれば、蘭用育苗ポット10を嵌入して支持可能な複数のポット受け部41が縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔R1で形成された育成パレット4を備えたので、例えば、特許文献1に記載されたような特殊な蘭育苗器(育成パレット)を用いることなく、一般的に市販されている安価な育成パレット4を用いることができる。そのため、蘭Kの生産コストを低減させることができる。
【0064】
また、苗木の状態の蘭K1を植え付けた第1育苗ポット1を育成パレット4の各ポット受け部41に嵌入し支持して、蘭K1を育成させる第1育成ステップS1を備えたので、第1育苗ポット1に植え付けた苗木の蘭K1を、育成パレット4に縦方向と横方向にそれぞれ同一の間隔R1で数多く配列して、効率的に育成できる。すなわち、育成パレット4に数多く配列した蘭K1の葉H1が、隣の蘭K1の葉H1に邪魔されることなく採光や給水等を受けることができ、単位面積当たりの蘭K1の育成数量を増大させて、苗木の状態の蘭K1に対して、効率的な育成ができる。
【0065】
また、蘭K1の葉H1が第1育苗ポット1の上端開口部11より横外方へはみ出す程度に伸びてきた段階で、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の下収容部2S1の中に嵌入し、その後に、第2育苗ポット2を育成パレット4の各ポット受け部41に嵌入し支持して、成長期の蘭K2を花芽HMが伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させる第2育成ステップS2を備えたので、成長期の蘭K2は、葉H2が第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸びることができ、隣接する他の蘭K2の葉H2と上下で重なり合うことを回避できる。また、花芽HMも第2育苗ポット2の上収容部2S2の内壁に沿って上方へ伸び、隣接する他の蘭K2の葉H2の間に花芽HMが侵入するのを回避させることができる。その結果、成長期の蘭K2に対して、葉H2への採光不良や根NNへの給水不良を低減でき、良好な蘭Kを育成できる。また、成長した蘭K2を植えた第1育苗ポット1を育成パレット4のポット受け部41に嵌入し支持された第2育苗ポット2から取り出す時に、葉H2や花芽HMの傷付きを低減できる。
【0066】
また、第2育成ステップS2では、第2育苗ポット2を育成パレット4の各ポット受け部41に嵌入し支持して、蘭K2を花芽HMが伸びる出荷可能な大きさになるまで育成させるので、第1育成ステップS1と同様に、単位面積当たりの蘭K2の育成数量を増大させて、成長期の蘭K2に対して、効率的な育成ができる。なお、第2育成ステップS2では、第1育苗ポット1を第2育苗ポット2の中に嵌入するだけで良いので、成長期の蘭K2を第1育苗ポット1から第2育苗ポット2へ植え替える手間が省けると共に、植え替えによって蘭K2が枯れる等のリスクも回避できる。
【0067】
よって、本他の実施形態によれば、葉Hや花芽HMを傷付けずに良好な蘭Kを育成させ、効率的かつ低コストに育成できる蘭Kの育成方法を提供することができる。
【0068】
<変形例>
本実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更することが可能なことは言うまでもない。例えば、本実施形態によれば、本蘭用育苗ポット10は、苗木の状態の蘭K1を植え付ける収容部1Sを有する略円筒状の第1育苗ポット1と、第1育苗ポット1を当該第1育苗ポット1の上端開口部11まで中へ嵌入可能に形成された下収容部2S1と下収容部2S1の上端から当該下収容部2S1に嵌入した第1育苗ポット1の上端開口部11より上方へ延設された上収容部2S2とを有する略円筒状の第2育苗ポット2と、から成る。したがって、本実施形態では、第1育苗ポット1と第2育苗ポット2とが、略円筒状に形成されているが、必ずしも円筒状に限る必要はない。例えば、第1育苗ポット1と第2育苗ポット2とが、略角筒状に形成されていても良い。また、第2育苗ポット2の下収容部2S1の中に第1育苗ポット1を嵌入可能に形成されていれば、円筒状の第1育苗ポット1と角筒状の第2育苗ポット2とを組み合わせること、又は角筒状の第1育苗ポット1と円筒状の第2育苗ポット2とを組み合わせることもできる。
【0069】
また、例えば、本実施形態によれば、第2育苗ポット2の上収容部2S2には、空気流通孔23と第2育苗ポット2の上端開口部21との間で上下方向に延設された複数の縦補強溝24を周方向へ所定の間隔で形成した。しかし、上下方向に延設された複数の縦補強溝24は、必ずしも溝形状に限る必要はない。例えば、上下方向に延設された円弧断面の厚肉部等を含む縦補強部24であれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、葉や花芽を傷付けずに良好な蘭を育成させる蘭用育苗ポット及び当該蘭用育苗ポットを用いて効率的かつ低コストに育成可能な蘭の育成方法として利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 第1育苗ポット
1S 収容部
2 第2育苗ポット
2S1 下収容部
2S2 上収容部
4 育成パレット
10 蘭用育苗ポット
11 上端開口部
12 底部
21 上端開口部
22 底部
23 空気流通孔
24 縦補強溝(縦補強部)
41 ポット受け部
121 水抜き孔
211 リップ部
221 水抜き孔
CL 中央部
K、K1、K2 蘭、胡蝶蘭
H、H1、H2 葉
HM 花芽
S1 第1育成ステップ
S2 第2育成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8