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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】熱成形方法及び熱成形装置、熱成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/14 20060101AFI20240620BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20240620BHJP
   B29C 51/42 20060101ALI20240620BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240620BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240620BHJP
【FI】
B29C51/14
B29C51/10
B29C51/42
B32B27/00 B
B32B7/023
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023090061
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-06-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
(72)【発明者】
【氏名】高井 章伍
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 教史
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0273494(US,A1)
【文献】特開2009-023205(JP,A)
【文献】特開平09-090106(JP,A)
【文献】特開平06-238710(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046568(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/010242(WO,A1)
【文献】特開2016-089143(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 - 51/46
B32B 27/00
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のシートを加熱手段で加熱し、金型を用いて前記シートを金型賦形する熱成形方法において、
前記シートが、透光性を有する樹脂素材よりなり、
前記シートの第1面に光を透過する透光層を設け、該透光層に重ねて光を透過しない遮光層を設けて、該遮光層に遮られて光を通さない遮光部分と、光を通過させる透光部分を形成し、
前記第1面または該第1面に対向する第2面に前記金型を当接させて熱成形することで、少なくとも一部の前記透光部分が前記第2面側に凹または凸となる形状に立体成形され、
前記シートが成形された際に、前記透光部分と前記遮光部分の境目近くが屈曲部となり、前記第2面が意匠面となること
前記第1面側に光源を配置した際に、前記屈曲部の影響で前記遮光層の端部と立体成形された前記透光部分とのズレを前記第2面側から認識しにくくすることが可能となること、
を特徴とする熱成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱成形方法において、
前記シートの前記第1面に設ける前記遮光層は、印刷によって形成されていること、
を特徴とする熱成形方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱成形方法において、
前記シートの前記第1面に前記透光層が印刷によって形成され、前記透光層に重ねて前記遮光層を設けていること、
を特徴とする熱成形方法。
【請求項4】
樹脂製のシートを加熱する加熱手段と、前記シートを金型賦形する金型とを有する熱成形装置において
記加熱手段は、前記シートを吸着保持する熱板と、該熱板と対向する側に配置されて前記シートを加熱する輻射式ヒーターよりなり、
前記金型は、
前記シートに設けられた光を透過しない遮光部分と光を透過する透光部分のうち該透光部分に当接して凸形状を形成し、
かつ、前記シートの前記透光部と前記遮光部分の境目近くに、成形された成形品の意匠面の裏側からの光を屈折する屈曲部を形成する、
突起を有し、
または、
前記透光部分に当接して凹形状を形成し、
かつ、前記シートの前記透光部分と前記遮光部分の境目近くに、成形された前記成形品の前記意匠面の裏側からの光を屈折する屈曲部を形成する、
凹みを有すること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項5】
樹脂製のシートを加熱手段で加熱し、金型を用いて前記シートを金型賦形して成形された熱成形品において、
前記シートが透光性を有する樹脂素材よりなり、
前記シートの第1面に光を透過する透光層を設け、該透光層に重ねて光を透過しない遮光層が設けられて、遮光部分と透光部分を有し、
少なくとも一部の前記透光部分が、前記第1面側と対向する第2面側に凹または凸となる形状に立体成形され、前記透光部分と前記遮光部分の境目近くに屈曲部にあり、
前記第2面側が意匠面であること
前記第1面側に光源を配置した際に、前記屈曲部の影響で前記遮光層の端部と立体成形された前記透光部分とのズレを前記第2面側から認識しにくくすることが可能となること、
を特徴とする熱成形品。
【請求項6】
請求項5に記載の熱成形品において、
前記第1面には、光を透過する透光層を有し、該透光層に重ねられて前記遮光層有すること、
を特徴とする熱成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製シートを熱成形する装置、手段及びその製品に関し、具体的には樹脂製シートを加熱手段で加熱して成形するにあたって、成形品に形成された透光部分における印刷ずれなどを目立たなくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱成形機は、加熱して軟化した樹脂製シートを成形し、食品容器やブリスターパックを作るのに用いられる。また、自動車部品や家電、工業用トレーなど様々なプラスチック製品を作るのに利用されている。そして近年、熱成形機を用いて模様を転写したり、成形基材に外表面に接着したりといった、位置精度を求められる成形にも使われている。
【0003】
特許文献1には、絵付け装置に関する技術が公開されている。第1チャンバ部材の開口端面を成す第1フランジと、第2チャンバ部材の開口端面を成す第2フランジとを突き合わせることによって閉じられた作業室で、第1チャンバ部材内に配されたワークにフィルムを被覆させる絵付けを行う技術である。立体的に成形される成形品に絵付けを施すことで、より成形品の意匠的な効果を高めることができる。
【0004】
特許文献2には、真空成形機に関する技術が公開されている。上方に開口した下ボックスと下方に開口した上ボックスとによって、成形空間が密閉形成され、成形空間内において、被着体の表面に加飾フィルムを密着させて成形する真空成形機であって、下ボックスには被着体を載置収納する収容部が設置されており、上ボックスの下端側には、加飾フィルムの浮き上がりを抑える治具が設置されている。こうした構造を採用することで、外観上の不具合(しわ等)の解消に効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3203881号公報
【文献】特開2015-107638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載される技術では、絵付け(加飾フィルムの貼り付け)に関する位置精度をより高める必要がある場合には、対応が難しい。特に、立体形状に絵付けを行うにあたって、目印となるような凸部が模様の近くにある場合には、凸部と模様のズレは目視で確認し易くなり、僅かなズレでも気が付きやすくなる為である。
【0007】
また、例えば透明樹脂を用いたシートに加飾印刷をして遮光部分と透光部分を有する成形品を製造し、裏側からライトアップして使うような場合であって、立体成形された部分が透光部分となり、遮光部との境界がハッキリしていると、遮光印刷部分とのズレは更に気になりやすい。この結果、少しの印刷ズレで製品の歩留まりが下がる要因となる。
【0008】
そこで、樹脂製シートを用いて透光部分と遮光部分を有する加飾印刷を施した成形品を成形する場合に、立体装飾部に対して印刷部分のズレがなるべく目立ちにくい成形品を製造可能な熱成形方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による熱成形方法は、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)樹脂製のシートを加熱手段で加熱し、金型を用いて前記シートを金型賦形する熱成形方法において、
前記シートが、透光性を有する樹脂素材よりなり、
前記シートの第1面に遮光層を設けて、該遮光層に遮られて光を通さない遮光部分と、光を通過させる透光部分を形成し、
前記第1面または該第1面に対向する第2面に前記金型を当接させて熱成形することで、少なくとも一部の前記透光部分が前記第2面側に凹または凸となる形状に立体成形され、
前記シートが形成された際に、前記第2面が意匠面となること、
を特徴とする。
【0011】
上記(1)に記載の態様により、立体成形された成形品の透光部分と遮光部分の境目が目立ちにくくなる。これは、遮光層を設けた第1面に対向する第2面(つまり第1面の裏側の面)が意匠面となるように透光部分を凹または凸となるように成形することで、透光部分の境目(遮光層の端部)近辺が、谷または山に折られた格好となる。この結果、シートの屈曲部では光の屈折が起きるから、意匠面から目視する場合には遮光層の端部の位置が把握しにくくなる。そして、遮光層は意匠面と対向する第1面側に形成されることから、意匠面となる第2面側から目視した場合には、こうした作用によって遮光層の端部と凹または凸となる形状に立体成形された部分に僅かなズレが生じたとしても気づかれにくくなる。
【0012】
課題に示した様に、意匠面側に加飾フィルムを貼り付ける場合には、目視による位置ズレに結びつきやすい。また、立体形状の被着体に対して精度良く加飾を施すことは困難である。更に、樹脂成形におけるシートの伸びは成形段階においてコントロールが難しく、伸びによって遮光層の端部の位置がずれることも考えられる。しかし、これらの要因から少しのズレで製品の歩留まりが下がってしまうと、製品単価を押し上げる要因になるため、形状や遮光層を設ける位置を工夫することでズレを目立たなく出来ることは、結果的に歩留まりの向上とコスト削減に貢献することに繋がる。
【0013】
(2)(1)に記載の熱成形装置において、
前記シートの前記第1面に設ける前記遮光層は、印刷によって形成されていること、
が好ましい。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載の熱成形方法において、
前記シートの前記第1面に設ける前記遮光層の下に、透光層が印刷によって形成されていること、
が好ましい。
【0015】
上記(2)または(3)に記載の態様により、遮光層または透光層を印刷によって設けることで、複雑な模様の意匠を実現することが可能となる。
【0016】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による熱成形装置は、以下のような特徴を有する。
【0017】
(4)樹脂製のシートを加熱する加熱手段と、前記シートを金型賦形する金型とを有する熱成形装置において、
前記シートが、透光性を有する樹脂素材よりなり、片側の第1面に遮光層が設けられることで、遮光部分と透光部分を有し、
前記加熱手段は、前記シートを吸着保持する熱板と、該熱板と対向する側に配置されて前記シートを加熱する輻射式ヒーターよりなり、
前記金型は、前記透光部分に当接して凸形状を形成する突起、または凹形状を形成する凹みを有していること、
を特徴とする。
【0018】
上記(4)に記載の態様により、(1)に記載の態様と同様に、立体成形された成形品の透光部分と遮光部分の境目が目立ちにくくなる効果が得られる熱成形装置の提供が可能となる。これは、第2面側に凹または凸となる形状(透光部分)の境目と遮光層の端部(遮光部分)が近接することとなるためで、意匠面となる第2面側から目視した場合には、遮光層の形成に僅かなズレが生じたとしても気づかれにくくなる。
【0019】
また、熱板によってシートの第2面側(または第1面側)を吸着保持することで、シートの挙動を抑えて位置ズレを防ぎ、吸着保持する側と対向する第1面側(熱板が第1面側を吸着保持している場合には第2面側)からも加熱することで効率的にシートの加熱を行うことができる。この結果、成形時に必要なリードタイムを短縮し、結果的に歩留まりの向上とコスト削減に貢献することに繋がる。
【0020】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による熱成形品は、以下のような特徴を有する。
【0021】
(5)樹脂製のシートを加熱手段で加熱し、金型を用いて前記シートを金型賦形して成形された熱成形品において、
前記シートが透光性を有する樹脂素材よりなり、
前記シートの第1面に遮光層が設けられて、遮光部分と透光部分を有し、
前記透光部分が、前記第1面側と対向する第2面側に凹または凸となる形状に立体成形され、
前記第2面側が意匠面であること、
を特徴とする。
【0022】
上記(5)に記載の態様により、(1)に記載の態様と同様に、立体成形された成形品の透光部分と遮光部分の境目が目立ちにくくなる効果が得られる熱成形品が得られる。これは、遮光層を設けた第1面に対向する第2面(つまり第1面の裏側面)が意匠面となるように透光部分を凹または凸となるように成形することで、透光部分の境目(遮光層の端部)近辺が、谷または山に折られた屈曲部となる。この結果、意匠面となる第2面側から目視した場合には、遮光層の形成に僅かなズレが生じたとしても光の屈折の影響で気づかれにくくなり、結果的に歩留まりの向上とコスト削減に貢献することに繋がる。
【0023】
(6)(5)に記載の熱成形品において、
前記第1面には、印刷手段によって透光層が形成され、その上面に前記遮光層が重ねて形成されること、
が好ましい。
【0024】
上記(6)に記載の態様により、遮光層または透光層を印刷によって設けることで、複雑な模様の意匠を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の、熱成形装置の概略構成についての説明図である。
図2】第1実施形態の、樹脂製シートの成形の様子を示す拡大図である。
図3】第1実施形態の、成形品の平面図である。
図4】(A)第1実施形態の、成形品の部分拡大図でバックライトの消灯時の様子である。(B)成形品の部分拡大図でバックライトの点灯時の様子である。
図5】第1実施形態の、成形後の透光部の拡大断面図である。
図6】第2実施形態の、成形後の透光部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る第1の実施形態の熱成形装置100の構成の概略について説明をする。図1は、第1実施形態の、熱成形装置100の概略構成について説明する説明図である。熱成形装置100は、第1チャンバ101、第2チャンバ102、熱板110、及び金型200を有している。第1チャンバ101と第2チャンバ102で、成形対象となる樹脂製シートSを保持し、加熱手段として用意された上側に配置された熱板110及び下側に移動可能な輻射式加熱手段150により樹脂製シートSを加熱した後、金型200を用いて成形をする構成の熱成形装置100である。
【0027】
熱成形装置100の、第1チャンバ101及び第2チャンバ102には、それぞれコンプレッサーや真空ポンプが接続され、コンプレッサーや真空ポンプを作動させることで第1チャンバ101及び第2チャンバ102内の圧力調整を行うことができる。第1チャンバ101は下方に開口し、第2チャンバ102は上方に開口し、第1チャンバ101と第2チャンバ102を昇降させる機能を有する。そして、第1チャンバ101と第2チャンバ102で樹脂製シートSを挟み込むことで、樹脂製シートSを保持する。なお、図1では、樹脂製シートSを第1チャンバ101と第2チャンバ102で直接挟み込むような形状としているが、間接的に挟み込むような構造を採用することを妨げない。
【0028】
樹脂製シートSは、矩形にカットされた熱可塑性樹脂よりなる透明なシート材を採用している。なお、JISの規格によればフィルムとは、厚さが250μm未満のプラスチックの膜状のものと定義され、シートとは厚さが250μm以上のプラスチックの薄い板状のものを指し、第1実施形態では樹脂製シートSの厚みについては2mm~6mm程度のものを使用することを想定している。これより薄手のワークに対して本発明を適用することを妨げないが、後述する理由からシートの厚みが厚手である方が好ましい。また、樹脂製シートSに透明なシート材を用いているが、透光性を示すシートであれば本発明を適用することが可能である。
【0029】
熱板110は、樹脂製シートSの上方に配置されて、樹脂製シートSを上面から加熱する目的で用いられ、図示しない吸気孔を備えて樹脂製シートSを上面側から吸着保持することができる構成となっている。熱板110は、図示しない昇降装置に保持されており、第1チャンバ101内を任意の高さに移動可能な構成となっている。金型200は、図示しない任意の高さに昇降可能な昇降機構を備えた下側昇降台210に保持されており樹脂製シートSの成形に用いる。
【0030】
また、第1チャンバ101の下部に移動可能な移動手段を備える輻射式加熱手段150を有しており、輻射式加熱手段150は、輻射式加熱を複数のヒーター群がタイル状に並べられてなる。また、それぞれのヒーターは、任意に出力調整することができる。輻射式加熱手段150は、樹脂製シートSの下面より加熱する目的で備えられ、熱板110に保持されている樹脂製シートSの下側に移動した後に、樹脂製シートSの輻射加熱を行う。つまり、樹脂製シートSの上面からは熱板110で保持しつつ加熱し、下面側を輻射式加熱手段150によって補助的に加熱する。つまり、樹脂製シートSの加熱手段としては、熱板110と輻射式加熱手段150の2つを備えている。
【0031】
図2に、樹脂製シートの成形の様子を拡大図に示す。樹脂製シートSの表面(第1面SA側)にはスクリーン印刷でインクを用いて光を透過する透光層L2を設け、その上に更にスクリーン印刷で光を透過しない遮光層L1を設けている。つまり、透光層L2に重ねられて遮光層L1が形成されている。なお、透光層L2は成形品50となった時に、第1面SA側にバックライトを配置し点灯した時に光が透過する程度の透過度を設定するのが望ましい。
【0032】
また、透光層L2は、樹脂製シートSの一面全体を覆うように印刷して作られ、一方の遮光層L1は、部分的に印刷されない欠損部分(透光部S1)が作られている。つまり、遮光層L1で遮光する遮光部S4と、遮光層L1の設けられない透光部S1が作られることになる。透光層L2は模様の付いた印刷を採用することで後述する成形品50の意匠性をより高めることが可能である。なお、遮光層L1及び透光層L2は印刷ではなくフィルムを貼り付けるような手法(加熱成形によるシート貼り付け)で設けても良い。
【0033】
このような樹脂製シートSを、予熱した後に熱成形装置100に投入して成形を行う。具体的には、まず、図1に示すように樹脂製シートSを第1チャンバ101および第2チャンバ102で挟み込むように保持をする。この時に、図2に示すように、熱成形装置100に保持される金型200側が、樹脂製シートSの第1面SA側、つまり遮光層L1及び透光層L2を設けた側に面するように、第1チャンバ101及び第2チャンバ102に保持される。そして、第1チャンバ101を加圧、第2チャンバ102を減圧することで、圧空・真空成形を行う。
【0034】
図3に、成形品の平面図を示す。図4に、成形品の部分拡大図を示す。(A)に、バックライト消灯時の拡大図を、(B)に、バックライト点灯時の拡大図を示している。図5に、成形後の透光部の拡大断面図を示す。成形品50は、図3に示すように車両のバンパーに用いられる樹脂製部品であり、金型200を用いることで立体成形されている。そして、図3に一点鎖線で囲われるA部分には「ASANO」の文字意匠が施されている。なお、図3及び図4に示す成形品50はあくまで一例であり、形状を含めた意匠の変更は適宜成されるものとする。また、図3及び図4の意匠は図1及び図2の樹脂製シートSの断面図と一致しない。
【0035】
図3は意匠面(第2面SB)側から描かれている。この文字意匠は、図4に示すように成形品50の第1面SA側からバックライトを点灯することで、図4(B)に示すように光が透過して見えるように、遮光層L1に透光部S1が形成されている。そして、その部分を図2に示すように金型200の凸部200aで、第2面SB側に凸になるように成形されることで、図5に示すように透光凸部S2が形成される。つまり、第1実施形態における成形品50には、遮光層L1と透光層L2が設けられた透明な樹脂製シートSを成形し、透光部S1は凸となるように立体成形がなされている。
【0036】
第1実施形態の熱成形方法は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0037】
まず、立体装飾部に対して印刷部分のズレがなるべく目立ちにくい成形品の提供が可能になる点が効果としてあげられる。これは、樹脂製のシート(樹脂製シートS)を加熱手段(熱板110及び輻射式加熱手段150)で加熱し、金型200を用いて樹脂製シートSを金型賦形する熱成形方法において、樹脂製シートSが、透光性を有する樹脂素材よりなり、樹脂製シートSの片側の第1面SAに遮光層L1を設けて、遮光層L1に遮られて光を通さない遮光部分(遮光部S4)と、光を通過させる透光部分(透光部S1)を形成し、第1面SA側に金型200を当接させて熱成形することで、少なくとも一部の透光部S1を第1面SAと対向する第2面SB側に凸となる形状に立体成形し、樹脂製シートSが形成された際に、第2面SBが意匠面となること、を特徴とするからである。
【0038】
つまり、樹脂製シートSに予め遮光層L1を設けて透光部S1と遮光部S4を形成し、金型200を用いて遮光層L1を設けた第1面SA側を型当たり面として成形を行うことで、印刷部分のズレが目立ちにくい成形品50の提供が可能となる。これは、図3に示すような意匠面となる第2面SB側から見て、図4(B)に示すように、第1面SA側から照らすバックライトを点灯した場合、図5に示すように遮光層L1がバックライトを遮り、透光部S1を成形して作られた透光凸部S2を光が透過して、成形品50の意匠を表す。
【0039】
この時、遮光層L1の端部L1eは屈曲部S3の近くに来て、図4(B)に示したように透光部S1として印刷された「ASANO」の文字が、バックライトによって浮かび上がる。この場合、端部L1eの位置の位置ズレが生じたとしても、屈曲部S3では光が屈曲部S3の影響で屈折することとなり、結果的に第2面SB側からは位置ズレを認識しにくくなる。この際に透光層L2は、バックライト無しの状態では第1面SA側が透けない程度の透過度に設定できるとより効果的である。
【0040】
このように樹脂製シートSの屈曲部S3によって光が屈折することで、遮光層L1の位置ズレが判明しづらくなっていると予想されることから、樹脂製シートSはある程度の厚みがある方が望ましい。例えば成形前の厚みが2mm~6mm程度の樹脂製シートSを用いることで、効果的な意匠の形成が可能となる。厚みを厚くしすぎると立体形状に熱成形することが困難になる一方で、薄くすると屈曲部S3による効果が薄くなるため、適度な厚みの樹脂製シートSに用いることが効果的である。
【0041】
また成形品50の熱成形にあたって樹脂製シートSを立体形状に成形すると、樹脂製シートSの伸びが発生するので、所定の確率で遮光層L1の端部L1eの位置ズレが生じる。出願人のテストによると、樹脂製シートSを吸着保持可能な熱板110を用い、下面より輻射式加熱手段150による加熱を行うことによって、ドローダウンを防ぎ、熱成形における±0.5mm以下の繰り返し位置精度が実現可能である。樹脂製シートSの厚みは2mm~6mm程度と厚手で、加熱した際にドローダウンが問題となりやすい。そこで、熱板110を用いて吸着保持することで、それを防ぐと共に位置ズレを防止できる。また、輻射式加熱手段150による補助的な加熱によって、加熱時間の短縮の効果が期待できる。このことも位置ズレ防止に効果がある。
【0042】
しかし、目視による位置ズレの認識は、この程度の位置ズレが生じる場合にも気になる人が出てくる。しかし、これが第2面SB側(意匠面)から目視する場合には、位置ズレを認識しにくくなることで、ある程度の位置ズレを許容することが出来るようになる。結果的に、成形品50の製造の歩留まりを向上することが可能となる。
【0043】
また、樹脂製シートSの第1面SAに設ける遮光層L1は、印刷によって形成され、第1面SAに設ける遮光層L1の下に、透光層L2が印刷によって成形されているが、これらの印刷が熱成形前に行われていることで、意匠性を高めることが可能となる。これは、樹脂製シートSの平面に透光層L2及び遮光層L1が設けられ、その後に熱成形を行う手法である為、立体形状に印刷を行う場合に比べて印刷ズレなどの影響を避けられるというメリットがあり、その結果、意匠性を高めることに貢献できるからである。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態は第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、成形品50の成形において透光部S1の突出方向が異なる。図6に、第2実施形態の成形後の透光部の拡大断面図を示す。第2実施形態の透光部S1は、第1実施形態とは逆で図6に示すように第1面SA側に凸になるように透光部S1が立体成形なされ、透光凹部S5が形成される。
【0045】
これにより、樹脂製シートSを熱板110及び輻射式加熱手段150で加熱し、金型を用いて樹脂製シートSを金型賦形する熱成形方法において、樹脂製シートSが、透光性を有する樹脂素材よりなり、樹脂製シートSの第1面SAに遮光層L1を設けて、遮光層L1に遮られて光を通さない遮光部S4と、光を通過させる透光部S1を形成し、第1面SA側に金型を当接させて熱成形することで、少なくとも一部の透光部S1が第2面SB側に凹となる形状に立体成形され、樹脂製シートSが形成された際に、第2面SBが意匠面となる。
【0046】
この場合にも、遮光層L1の端部L1eは屈曲部S6の近くに来て、第1実施形態の図4(B)に示したように透光部S1として印刷された「ASANO」の文字が、バックライトによって浮かび上がる。この場合、端部L1eの位置の位置ズレが生じたとしても、屈曲部S6では光が屈曲部S6の影響で屈折することとなり、結果的に第2面SB側からは位置ズレを認識しにくくなる。この際に透光層L2は、バックライト無しの状態では第1面SA側が透けない程度の透過度に設定できるとより効果的である。この結果、立体形状に印刷を行う場合に比べて印刷ズレなどの影響を避けられるというメリットがあり、意匠性を高めることに貢献できる。このように、図5に示される様な第2面SB側に凸になるケースでも図6に示される様な第2面SB側に凹になるケースでも、同様の効果を得られる。
【0047】
以上、本発明に係る熱成形方法及び熱成形装置100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態または第2実施形態で示した成形品50の意匠は一例を示したに過ぎないので、他の意匠を採用することを妨げない。また、第1実施形態または第2実施形態では透明な樹脂製シートSを用いて透光層L2を印刷して用いているが、透光性のある着色された樹脂製シートを用いる事を妨げない。
【0048】
また、第1実施形態において、第1面SA側に金型200を当接させて熱成形すると説明しているが、第2面SB側に金型(この場合は金型200とは異なり凹形状の金型を用いる)を当接させて熱成形することを妨げない。また、第2実施形態においても同様に、第1面SA側からまたは第2面SB側の何れから金型を当接させて熱成形しても良い。同様に、加熱手段として用意した熱板110及び輻射式加熱手段150に関しても、第1実施形態に示したように熱板110を第2面SB側に当接して加熱し、輻射式加熱手段150で第1面SA側から加熱するように説明しているが、熱板110を第1面SA側に当接して加熱し、輻射式加熱手段150で第2面SB側から加熱するように変更することを妨げない。
【符号の説明】
【0049】
S 樹脂製シート
S1 透光部
SA 第1面
SB 第2面
L1 遮光層
110 熱板
150 輻射式加熱手段
200 金型
【要約】
【課題】立体装飾部に対して印刷部分のズレがなるべく目立ちにくい成形品を製造可能な熱成形方法の提供。
【解決手段】樹脂製シートSを熱板110で加熱し、金型200を用いて樹脂製シートSを金型賦形する熱成形方法において、樹脂製シートSが、透光性を有する樹脂素材よりなり、樹脂製シートSの第1面SAに遮光層L1を設けて、遮光層L1に遮られて光を通さない遮光部S4と、光を通過させる透光部S1を形成し、第1面SA側に金型200を当接させて熱成形することで、少なくとも一部の透光部S1を第1面SAと対向する第2面SB側に凸となる形状に立体成形し、樹脂製シートSが形成された際に、第2面SBが意匠面となる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6