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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】平ボディ車用空力パーツ
(51)【国際特許分類】
   B62D 35/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B62D35/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023126942
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2023-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596166313
【氏名又は名称】株式会社 いそのボデー
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 信勝
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-063682(JP,U)
【文献】米国特許第05522637(US,A)
【文献】米国特許第05653493(US,A)
【文献】中国特許出願公開第110329225(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0175395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/00
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の一部がキャビンの上面よりも高くなっている貨物自動車に取り付け、該荷台の一部に当たる風の流れを変える空力パーツであって、
貨物自動車のキャビン上面に、進行方向に対して鋭角の鉛直角をもって後方に立ち上がるように取り付けられた、細長く、翼断面の形状が上面よりも下面の方が長くなっている前方翼および後方翼と、
前記前方翼および後方翼の各両翼端に垂直に取り付けられた、該前方翼および後方翼の外周よりも大きい外周を有する板状の翼端板と、
前記キャビン上部後端に取り付けられた、該キャビンと荷台の隙間を覆い当該隙間に走行風が入り込まないように取り付けられた該キャビン上面から荷台上面までの高さと同じ高さを有する前面板と、該前面板上端縁の長手方向に沿って配置された該キャビン後面と荷台前面の間隔と同じ幅を有する上面板と、該前面板と上面板の両側方に配置された側面板と、を備え、
前記前方翼および後方翼が間隔を空けて設置された、
平ボディ車用空力パーツ。
【請求項2】
前記前方翼および後方翼が角度調整可能に取り付けられた、
請求項1に記載の平ボディ車用空力パーツ。
【請求項3】
前記後方翼が、第一後方翼と、該第一後方翼と長手方向で平行に配置された第二後方翼、から成り、
該第二後方翼は、前記第一後方翼と異なる鉛直角をもって配置された、
請求項2に記載の平ボディ車用空力パーツ。
【請求項4】
前記上面板および側面板ならびに前記キャビンの側面に取り付けられた、前方および後方が細く中央部が膨らんだ紡錘形状の渦流生成器を、さらに備えた、
請求項1に記載の平ボディ車用空力パーツ。
【請求項5】
前記上面板と前記荷台の上端部の高さが略一致するように構成された、
請求項1に記載の平ボディ車用空力パーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車用の空力部品に係り、特にトラックのキャビン上部に取り付ける平ボディ車用空力パーツに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車には、平ボディやバンボディ、ウィングボディなど様々な種類のものが存在する。荷台の一部がキャビンの上面よりも高くなっている場合は、当該はみ出している部分に走行風が当たり空気抵抗となる。
平ボディ車は、容易に積み下ろしができ、積載重量を多く確保するよう、荷室に屋根が無い貨物車である。そのため、雨風を防いだり積荷が飛んでしまうのを防いだりするために布製の幌をかけることが多い。平ボディ車は、「鳥居」と呼ばれる枠を荷台前端に備えている。鳥居は、積荷からキャビンの背面および上面を保護するためにキャビンより高くなっている。この鳥居枠に幌を取り付ける。
【0003】
幌は走行中に生じる風によってバタつき、空気抵抗を生じる。その結果、燃費を悪化させる原因となる。また、幌がバタつくことで車体が不安定となり、危険であった。
【0004】
特許文献1の「トラックの導風板装置」には、トラック運転席の上方に設けられる導風板を備えたトラックの導風板装置において、上記導風板は、上面板を円弧状に窪ませ下面板を円弧状に膨出させて上面板よりも下面板の前後寸法を長くした翼形の断面形状に形成され、トラックの進行方向に対して下向きの傾斜角度に取り付けられたことを特徴とする技術が記載されている。
【0005】
従来のトラックの上部に取り付ける導風板は、キャビン上面の面積と同等の大きさの面を有する必要があるため、大きく重いという問題点があった。その重量は40~50kg程になり、運搬や付け外しが大変であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3171247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の導風板装置は、大型で重く、付け外しが大変という問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、貨物自動車に当たる風の流れを変える整流パーツを部分的に構成することで、軽量で手軽にキャビン上面へ付け外しできる平ボディ車用空力パーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様にかかる平ボディ車用空力パーツ(1)は、
荷台の一部がキャビンの上面よりも高くなっている貨物自動車に取り付け、該荷台の一部に当たる風の流れを変える空力パーツであって、貨物自動車のキャビン(C)上面に、進行方向に対して鋭角の鉛直角をもって後方に立ち上がるように取り付けられた細長く翼断面の形状が上面よりも下面の方が長くなっている前方翼(121)および後方翼(122)と、前方翼および後方翼の各両翼端に垂直に取り付けられた、該前方翼および後方翼の外周よりも大きい外周を有する板状の翼端板(123)と、
前記キャビン上部後端に取り付けられた、該キャビンと荷台の隙間を覆い当該隙間に走行風が入り込まないように取り付けられた該キャビン上面から荷台上面までの高さと同じ高さを有する前面板(134)と、該前面板上端縁の長手方向に沿って配置された該キャビン後面と荷台前面の間隔と同じ幅を有する上面板(131)と、該前面板と上面板の両側方に配置された側面板(132,133)と、を備え、前方翼および後方翼が間隔を空けて設置されたものである。
【0010】
前方翼および後方翼が角度調整可能に取り付けられた、ものとすることが望ましい。
【0012】
後方翼が、第一後方翼(1221)と、該第一後方翼長手方向で平行に配置された第二後方翼(1222)、から成り、該第二後方翼は、第一後方翼と異なる鉛直角をもって配置された、ものとすることが望ましい。
【0014】
上面板および側面板ならびにキャビンの側面に取り付けられた、前方および後方が細く中央部が膨らんだ紡錘形状の渦流生成器(14)を、さらに備えた、ものとすることが望ましい。
【0015】
前記上面板と前記荷台の上端部の高さが略一致するように構成された、ものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の平ボディ車用空力パーツは、従来の導風板と比べて各部品が小さい。従来の導風板が40~50kg程度あるのに対し、本発明の平ボディ車用空力パーツは、25kg程度と軽量にすることができる。そのため、運搬が容易で、キャビンに手軽に付け外しを行える。
また、従来の導風板の様に走行風を押し退けるのではなく、ボディに沿って後方へ流すことで、より空気抵抗を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1を貨物車に装着した様子を示す斜視図。
図2】実施例1の平面図。
図3】整流翼の断面図。
図4】実施例1の斜視図。
図5】実施例1の側面図。
図6】実施例2の斜視図。
図7】実施例2の側面図。
図8】実施例2の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の平ボディ車用空力パーツの実施の一例について図を用いて説明する。
【0019】
<全体概要>
図1の斜視図に示す通り、本発明の平ボディ車用空力パーツ1の実施例1は、桁11、整流翼12、整流板13および渦流生成器14から成る。
【実施例1】
【0020】
<桁>
桁11は、細長い棒状の部材であり、貨物車の進行方向と平行にキャビンCの上面に取り付けられる。実施例1では、2本の桁11を貨物車のキャビンC上のルーフラックに、ネジで取り付けている。図2の平面図に示す通り、桁11は各2箇所の取付部111によってルーフラックに取り付けられている。
整流翼12および整流板13は、桁11に固定される。
【0021】
<整流翼>
整流翼12は、細長い板状の部材である。整流翼12は、2本の桁11に架けるかたちで、進行方向と水平面において直角に取り付けられる。実施例1では、整流翼12の両翼端付近で各桁11に固定している。
【0022】
図3の整流翼12の断面図に示す通り、整流翼12の翼断面の形状は、上面よりも下面の方が長くなっている。上面を流れる空気よりも下面を流れる空気の方が速く流れることで下面方向に対して負圧となり、ダウンフォースが発生する。
【0023】
翼端板123は、その外周が整流翼12の端の外周よりも大きい板状の部材である。翼端板123は、整流翼12の各翼端に垂直に取り付けられる。整流翼12の上面から下面に空気が回り込むのを防ぎ、翼端での空気の渦の発生を抑える。つまり、空気抵抗を抑える効果がある。
【0024】
<前方翼>
前方翼121は、整流翼12を構成する部材であり、キャビンC上の前端部付近(実施例では前端部よりやや後方)に取り付けられる。前方翼121は、進行方向に対して鋭角に傾斜して桁11に取り付けられる。実施例では、鉛直角9°にて取り付けられている。キャビンC上前端に鉛直角をもって取り付けられることで、走行風を跳ね上げる。
【0025】
<後方翼>
後方翼122は、整流翼12を構成する部材であり、キャビンC上の後方部に取り付けられる。つまり、前方翼121より後方で、整流板13より前方に取り付けられる。前方翼121と同様に、桁11上に取り付けられる。
後方翼122は、第一後方翼1221および第二後方翼1222によって構成することができる。実施例では、第一後方翼1221が鉛直角9°、第二後方翼1222が鉛直角15°で取り付けられている。キャビンC上後方部に取り付けられることで、前方翼121が跳ね上げた走行風を、さらに後方にある整流板13に導く。
なお、整流翼12の構成は上記のものに限定されず、前方翼121を2枚以上としてもよいし、後方翼122を3枚以上としてもよい。
【0026】
<整流板>
整流板13は、上面板131、右側面板132、左側面板133および前面板134から成る。図4および図5に示す通り、各桁11の後端に取り付けられる。
上面板131は、鳥居枠Fの上面と同じ高さに設けられる。右側面板132は、鳥居枠Fの右側面と同じ位置に設けられる。左側面板133は、鳥居枠Fの左側面と同じ位置に設けられる。前面板134は、上面板131、右側面板132および左側面板133によって囲まれる領域に設けられる。
事前に上面板131、右側面板132、左側面板133および前面板134を組み合わせて箱状としてから桁11に取り付けられる。
キャビンCと鳥居枠Fの隙間を覆うことで、走行風が当該隙間に入り込むのを防ぐ。つまり、走行風を真っすぐ後方に流し渦の発生を抑えることで、空気抵抗を抑える効果がある。
【0027】
<渦流生成器>
渦流生成器14は、いわゆるボルテックスジェネレーターである。前方および後方が細く中央部が膨らんだ紡錘形をしている。
渦流生成器14は、上面板131上に取り付けられる。つまり、後方翼122から導かれてくる走行風が当たる位置に取り付けられる。
後方翼122からの走行風が渦流生成器14に当たることで渦流を生成し、鳥居枠Fの後端で気流が剥離するのを抑えることができる。
右側面板132および左側面板133に、渦流生成器14を取り付けることもできる。実施例では、上面板131に9個、右側面板132および左側面板133に各1個取り付けている。これに限らず、整流板13の大きさによって取り付ける個数は変えることができる。
【0028】
<作用効果>
前方翼121で走行風を跳ね上げ、後方翼122で整流板13に導き、整流板13上の渦流生成器14によって渦流を生成することで、鳥居枠F後端での走行風の剥離を防ぐ。
【0029】
整流翼12(前方翼121および後方翼122)は、前方からの走行風を整流しつつ跳ね上げることで、走行風が鳥居枠Fの前面に当たるのを防ぐ。また、整流翼12がダウンフォースを発生させるため、ダウンフォースによって平ボディ車用空力パーツ1自体をキャビンCに押さえつけて外れづらくする。さらに貨物車が地面に押さえつけられることで、摩擦力を増やし走行安定性を向上させる。
【0030】
平ボディ車用空力パーツ1を取り付ける手順は以下の通りである。
2本の桁11をキャビンCにネジ等で取り付ける。桁11に前方翼121、第一後方翼1221および第二後方翼1222を固定する。上面板131、右側面板132、左側面板133および前面板134を箱状に組み立て、渦流生成器14を取り付けた整流板13を、桁11に固定する。
このように、平ボディ車用空力パーツ1は、各部品を組み立ててキャビンに取り付けられるため、容易に設置することができる。従来の導風板のように大きな部材がないため、比較的容易に付け外しが行える。また、導風板よりも軽量なため、その分の貨物積載重量を増やせる。
【0031】
各部材の取付方法は、ネジ留めでもよいし、溶接やリベット留め、接着などの従来の種々の方法を使用してもよい。
取付部111は1箇所としてもよいし、3箇所以上としてもよい。
桁11は、1本としてもよいし、3本以上としてもよい。桁11を1本とする場合は、翼端部ではなく中央部で固定するとよい。整流翼12および整流板13を固定できれば面状の部材でもよい。桁11を備えずに、整流翼12および整流板13をキャビンC上に直接取り付けることもできる。
整流翼12の角度はキャビンCの長さや鳥居枠Fの高さの関係で適宜変えられるようにすることが望ましい。
【実施例2】
【0032】
本発明の第二の実施例について説明する。
図6の斜視図に示す通り、貨物車にはキャビンCと鳥居枠Fの間にシートデッキDを備えたものもある。鳥居枠FよりシートデッキDの方が高くなるため、その最高点に向けて走行風を導く必要がある。
【0033】
図7の側面図に示す通り、3枚の整流翼12(第一整流翼124,第二整流翼125,第三整流翼126)によって構成される。第一整流翼124によって前方からの走行風を跳ね上げ、第二整流翼125によって走行風をさらに上方へ導き、第三整流翼126によって走行風をシートデッキD上へ導く。
【0034】
実施例2では、整流板13をキャビンCの上面に設ける。整流板13は、キャビンCとシートデッキDの間に前方からの走行風が入り込むのを防ぐ。整流板13は、実施例1と同様に、上面板131、右側面板132、左側面板133および前面板134から成る。ただし、上面板131および前面板134は、実施例1と異なり、傾斜した状態となる。右側面板132および左側面板133は矩形ではなく、上面板131および前面板134の傾斜に合わせた形となる。
【0035】
渦流生成器14は、第三整流翼126上に設ける。シートデッキDは幌を入れるために籠型になっていて上面がないためである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の平ボディ車用空力パーツは、平ボディ車に限らずバンボディやウィングボディなど、キャビンより高い構造物を備える種々の車両に用いることができる。また、燃費を改善し排ガスを減らすことができ、走行安定性が向上することで事故のリスクを減らすこともでき、産業上利用できるばかりでなく、社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0037】
1 平ボディ車用空力パーツ
11 桁
111 取付部
12 整流翼
121 前方翼
122 後方翼
1221 第一後方翼
1222 第二後方翼
123 翼端板
124 第一整流翼
125 第二整流翼
126 第三整流翼
13 整流板
131 上面板
132 右側面板
133 左側面板
134 前面板
14 渦流生成器
C キャビン
D シートデッキ
F 鳥居枠
H 幌

【要約】
【課題】
従来の導風板装置は、大型で重く、付け外しが大変という問題があった。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、軽量で簡単に付け外しを行える平ボディ車用空力パーツを提供することを目的とする。
【解決手段】
貨物自動車のキャビン上面に進行方向に対して鋭角の鉛直角をもって取り付けられ、走行風を上方に跳ね上げる整流翼12と、該キャビン上部の後端部においてキャビンと荷台の隙間を覆うように取り付けられた整流板13を備えた、平ボディ車用空力パーツ。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8