(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/10 20160101AFI20240620BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240620BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240620BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240620BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240620BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240620BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240620BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240620BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20240620BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20240620BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20240620BHJP
A23K 10/37 20160101ALI20240620BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20240620BHJP
【FI】
A23L29/10
A61K8/55
A61K8/92
A61K8/63
A61K47/24
A61K47/44
A61K47/28
A23L5/00 K
A23L27/60 A
A23D7/00 500
A23D7/00 508
A23L9/20
A23K10/37
A23K20/158
(21)【出願番号】P 2023133141
(22)【出願日】2023-08-17
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022188924
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522450831
【氏名又は名称】築野グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】築野 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】小石 翔太
(72)【発明者】
【氏名】河野 龍之進
(72)【発明者】
【氏名】本田 沙理
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智也
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑞佳
(72)【発明者】
【氏名】四▲柳▼ あけの
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-238455(JP,A)
【文献】特開2016-202077(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111840097(CN,A)
【文献】特開2014-009259(JP,A)
【文献】特開2015-189730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A61K、A23D、A23K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆レシチンと同等の乳化作用を有し、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含
み、
夾雑物を10質量%未満含む、米油由来の組成物。
【請求項2】
リン脂質を18~48質量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
米油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、請求項1
又は2に記載の組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の組成物を含む乳化剤。
【請求項5】
成分(1)請求項1
又は2に記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/又は水とを混合する工程を含む、
成分(2)と親油性成分を乳化させる方法。
【請求項6】
成分(1)請求項1
又は2に記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/又は水と、
成分(3)親油性成分とを混合する工程を含む、
成分(2)と成分(3)を乳化させる方法。
【請求項7】
成分(1)請求項1
又は2に記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/又は水と、
成分(3)親油性成分との混合物を含む組成物。
【請求項8】
乳化されている、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
乳化型が油中水型又は水中油型である、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
油相中に夾雑物を100ppm未満含む、請求項
7に記載の組成物。
【請求項11】
乳化の程度が、成分(1)の代わりに大豆レシチンを使用した場合と同等以上である、請求項
7に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1
又は2に記載の組成物を含む非水系の相溶剤。
【請求項13】
成分(1)請求項1
又は2に記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/若しくは水、又は、成分(3)親油性成分との混合物を含む組成物。
【請求項14】
油相中に夾雑物を100ppm未満含む、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項
7に記載の組成物を含む、飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品。
【請求項16】
請求項
13に記載の組成物を含む、飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品。
【請求項17】
リン脂質量が0.065gとなるように調整した量の組成物と、油119.85gとを混合して得られた混合物1を、さらに水30gと混合し、得られた混合物2を、室温、11000rpm、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)及びギャップ0.5mmの条件下で、ホモジナイザーで2分間撹拌し、静置して5時間後に、界面が存在しない性質を有する、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項18】
夾雑物が、リン脂質、油脂、脂肪酸、油溶性ビタミン、フェルラ酸、フィトステロール、ステロール脂肪酸エステル及びγ-オリザノールのいずれでもない成分である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項19】
夾雑物を10質量%未満含み、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含む、
米油由来の組成物。
【請求項20】
リン脂質を18~48質量%含む、請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも、
米油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、リン脂質及び油脂含有組成物中の夾雑物の割合を低減させる方法。
【請求項22】
少なくとも、
米油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、リン脂質及び油脂含有組成物の製造方法。
【請求項23】
請求項1
又は2に記載の組成物を含む酸化防止剤。
【請求項24】
請求項1
、2及び
18~
20のいずれかに記載の組成物と
、
成分(2)
親水性成分及び/若しくは水、並びに/又は
、
成分(3)
親油性成分を混合する工程を含む、
請求項1
、2及び
18~
20のいずれかに記載の組成物と
、成分(2)及び/又は成分(3)との混合物の製造方法。
【請求項25】
マーガリン、ホイップクリーム及びマヨネーズから選択される、請求項
15又は
16に記載の飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。より詳細には、本発明は、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レシチンの定義は種々存在するが、一説によれば、レシチンとは、様々な起源(動物性又は植物性)の食品から除去された様々なリン脂質の組み合わせで、アセトン不溶性物質が少なくとも60%あるものとして、定義されている(非特許文献1)。植物由来のレシチンとして、大豆レシチン、菜種レシチン、ひまわりレシチン、米レシチン等が知られている。大豆レシチンは優れた乳化作用を有し、食品市場で使用されているレシチンの多くは大豆レシチンである。一方で、米レシチンが大豆レシチンと同様の乳化作用を有することは知られていない(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6823511号公報
【文献】特許第6959782号公報
【文献】特許第7074427号公報
【文献】特許第6487762号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Deepali Lehri et al., Composition, production, physicochemical properties and applications of lecithin obtained from rice (Oryza sativa L.) - A review, Plant Science Today (2019年12月31日) 6(sp1): p.613-622
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大豆レシチンでない組成物及び/又はその用途を提供することを一つの目的とする。
本発明は、大豆レシチンでない組成物の製造方法を提供することを一つの目的とする。
本発明は、植物油精製工程において、リン脂質及び油脂含有組成物中の夾雑物の割合を低減させる方法を提供することを一つの目的とする。
本発明は、リン脂質及び/又は油脂を含む組成物、その用途及び/又はその製造方法を提供することを一つの目的とする。
発明が解決しようとする課題は上記目的のいずれか1以上である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特に、米レシチンの場合、夾雑物が多いために製造時のハンドリングが悪く、特に脱ガム工程以降の後工程でリン脂質及び油脂を含む組成物から夾雑物を分離することは困難であり、食品用途としては敬遠されていた。そのため、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有する、リン脂質及び油脂を含む組成物の製造において、米レシチンを使用することは困難と思われた。本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、米油等の植物油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させることによって、夾雑物の含有割合の少ない、リン脂質及び油脂含有組成物を容易に製造できることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]大豆レシチンと同等の乳化作用を有し、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含む、組成物。
[2]夾雑物を10質量%未満含む、前記[1]に記載の組成物。
[3]リン脂質を18~48質量%含む、前記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]米油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物の製造方法。
[5]前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物を含む乳化剤。
[6]成分(1)前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/又は水とを混合する工程を含む、
成分(2)と親油性成分を乳化させる方法。
[7]成分(1)前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/又は水と、
成分(3)親油性成分とを混合する工程を含む、
成分(2)と成分(3)を乳化させる方法。
[8]成分(1)前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/又は水と、
成分(3)親油性成分との混合物を含む組成物。
[9]乳化されている、前記[8]に記載の組成物。
[10]乳化型が油中水型又は水中油型である、前記[9]に記載の組成物。
[11]油相中に夾雑物を100ppm未満含む、前記[8]に記載の組成物。
[12]乳化の程度が、成分(1)の代わりに大豆レシチンを使用した場合と同等以上である、前記[8]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]前記[1]~[3]のいずかに記載の組成物を含む非水系の相溶剤。
[14]成分(1)前記[1]~[3]のいずかに記載の組成物と、
成分(2)親水性成分及び/若しくは水、又は、成分(3)親油性成分との混合物を含む組成物。
[15]油相中に夾雑物を100ppm未満含む、前記[14]に記載の組成物。
[16]前記[8]~[12]のいずかに記載の組成物を含む、飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品。
[17]前記[14]に記載の組成物を含む、飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品。
[18]リン脂質量が0.065gとなるように調整した量の組成物と、油119.85gとを混合して得られた混合物1を、さらに水30gと混合し、得られた混合物2を、室温、11000rpm、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)及びギャップ0.5mmの条件下で、ホモジナイザーで2分間撹拌し、静置して5時間後に、界面が存在しない性質を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[19]夾雑物が、リン脂質、油脂、脂肪酸、油溶性ビタミン、フェルラ酸、フィトステロール、ステロール脂肪酸エステル及びγ-オリザノールのいずれでもない成分である、前記[2]に記載の組成物。
[20]夾雑物を10質量%未満含み、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含む、組成物。
[21]リン脂質を18~48質量%含む、前記[20]に記載の組成物。
[22]少なくとも、植物油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、リン脂質及び油脂含有組成物中の夾雑物の割合を低減させる方法。
[23]少なくとも、植物油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、リン脂質及び油脂含有組成物の製造方法。
[24]前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物を含む酸化防止剤。
[25]前記[1]~[3]及び[19]~[21]のいずれかに記載の組成物と、上記成分(2)及び/又は成分(3)を混合する工程を含む、前記[1]~[3]及び[19]~[21]のいずれかに記載の組成物と、上記成分(2)及び/又は成分(3)との混合物の製造方法。
[26]マーガリン、チョコレート及びクリームから選択される、前記[16]に記載の飲食品。
[27]夾雑物を100ppm未満含み、リン脂質及び油脂を含む、組成物。
[28]マーガリン、ホイップクリーム及びマヨネーズから選択される、前記[16]に記載の飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、大豆レシチンでない組成物及び/又はその用途を提供することができる。当該組成物は好ましくは大豆由来成分を含まないので、大豆由来のアレルゲンを含まない。市場で大豆として遺伝子組み換え大豆が使用されることが多いが、当該組成物は、その製造過程で好ましくはそのような大豆を使用しないため、遺伝子組み換えでない組成物として有用である。当該組成物は、夾雑物の含有割合が少ない(例えば、10質量%未満、2質量%以下)。
本発明は、夾雑物の含有割合が少ないリン脂質及び油脂含有組成物を提供することができる(例えば、10質量%未満、2質量%以下)。
本発明は、大豆レシチンでない組成物の製造方法を提供することができる。
上記の大豆レシチンでない組成物は、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有し得る。
本発明は、植物油精製工程において、リン脂質及び油脂含有組成物中の夾雑物の割合を低減させる方法を提供することができる。
本発明は、リン脂質及び/又は油脂を含む組成物、その用途及び/又はその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実験例3の乳化性評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.組成物
第1の態様において、本発明の組成物は、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有し、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含むことを特徴とする。
第2の態様において、本発明の組成物は、夾雑物を10質量%未満(好ましくは100ppm未満)、リン脂質及び/又は油脂を含むことを特徴とする。当該組成物は大豆レシチンそのものである場合を除いてもよい。当該組成物はリン脂質を18~48質量%含むことが好ましい。当該組成物は大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有することが好ましい。当該組成物は、夾雑物を100ppm未満、及び、リン脂質を含み、さらに油脂を含んでいてもよい。
第3の態様において、本発明の組成物は、夾雑物を10質量%未満含み、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含むことを特徴とする。当該組成物は大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有することが好ましい。当該組成物は、夾雑物を100ppm未満含み、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含んでいてもよい。当該組成物は、リン脂質を18~48質量%含んでいてもよい。
好ましい態様において、本発明の組成物は、夾雑物を2質量%未満(より好ましくは100ppm未満)、リン脂質を18~48質量%含み、さらに油脂及びγ-オリザノールを含むことを特徴とする。当該組成物は大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有することが好ましい。
別の好ましい態様において、本発明の組成物は、夾雑物を0.3質量%未満(より好ましくは100ppm未満)、リン脂質を7~18質量%含み、さらに油脂を含むことを特徴とする。当該組成物は大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有することが好ましい。当該組成物はγ-オリザノールを含むことが好ましい。
いずれの態様においても、本発明の組成物は、上記各含有成分以外の成分を含んでいてもよく、上記各含有成分からなっていてもよい。
【0011】
1つの特定の実施形態において、リン脂質、油脂及びγ-オリザノールを含む組成物において、夾雑物を10質量%未満とすることにより、当該組成物は、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有し得る。ここで、夾雑物は、組成物全体に対して9質量%以下でも、8質量%以下でも、7質量%以下でも、6質量%以下でも、5質量%以下でも、4質量%以下でも、3質量%以下でも、2質量%以下でも、1.3質量%以下でも、1質量%以下でも、0.5質量%以下でも、0.4質量%以下でも、0.3質量%以下でもよく、100ppm以下でもよく、低い方が、組成物を食品素材又は食品添加物として用いる場合の品質が向上するため、及び/又は、常温下で組成物が清澄な状態になるため、好ましい。本明細書において常温とは、例えば15~25℃を意味する。
【0012】
夾雑物は、例えば、日本工業規格JIS K 2276:2203に従って、組成物等の試料を温キシレンに溶解した場合の不溶解残分と定義される。夾雑物は、リン脂質、油脂、脂肪酸、油溶性ビタミン、フェルラ酸、フィトステロール、ステロール脂肪酸エステル及びγ-オリザノールのいずれでもない成分であってもよい。夾雑物は、組成物を一定時間(例えば1カ月間)静置後、沈殿する成分又は不溶の成分であってもよい。夾雑物として、例えばワックスエステル(炭素数10以上の脂肪酸と炭素数8以上の脂肪族アルコールのエステル)、配糖体、殻、さや、デンプン質、糖エステル、糖、スフィンゴ脂質、繊維質、グリセロ糖脂質、ステロール糖脂質、スフィンゴ糖脂質等が挙げられる。
組成物中の夾雑物の含有割合は、例えば、常套手段、例えば、抽出、ろ過、濃縮、遠心分離等を含む方法により確認することができる。組成物中の夾雑物の含有割合は、例えば、日本工業規格JIS K 2276:2203に従って、組成物を温キシレンに溶解した場合の不溶解残分の百分率を求めることによって、導き出される。
【0013】
本開示において、本発明の組成物とは、後述の本発明の組成物1の態様を包含していてもよい。
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物は、リン脂質を18~48質量%含むことが好ましい。
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物に含まれるリン脂質の割合は、18質量%以上でも、20質量%以上でも、25質量%以上でも、28質量%以上でも、30質量%以上でもよい。リン脂質が18質量%以上であると、乳化作用を高いレベルで維持できる。
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物に含まれるリン脂質の割合は、48質量%以下でも、45質量%以下でも、43質量%以下でも、40質量%以下でもよい。リン脂質が48質量%以下であると、組成物全体の粘度が低く、操作が容易である。
【0014】
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物は、リン脂質を7~18質量%含むことが好ましい。
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物に含まれるリン脂質の割合は、7質量%以上でも、8質量%以上でもよい。
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物に含まれるリン脂質の割合は、18質量%以下でも、15質量%以下でも、10質量%以下でもよい。リン脂質が18質量%以下であると、常温下で清澄になりやすく、好ましい。
【0015】
組成物中のリン脂質の含有割合は、例えば、溶剤分別、ICP(Inductively Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)、液体クロマトグラフィー、NMR等を含む方法により確認することができる。
【0016】
リン脂質として、具体的には、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、リゾホスファチジン酸(LPA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)のアミノ基の一部がメチル化したもの(NAPE)又はこれらの任意の組み合わせが例示される。PC:LPC:PI:PE:LPE:PS:PAの比率(31P NMRによる面積比)の例として、(35~40):(17~22):(11~16):(10~15):(0~5):(0~5):(10~15)、又は、38.7:19.9:14.4:12.6:0:1:13.4が例示される。PC:LPC:PI:LPI:PE:LPE:NAPE:PA:LPAの質量比の例として、(45~50):(3~7):(20~25):(1~5):(8~13):(0~3):(0~3):(5~10):(0~3)、又は、47:5:23:2:10:1:2:8:1が例示される。PC:LPC:PI:PE:LPE:PAの比率として、大豆レシチンのそれ、例えば、(33~37):(4~6):(15~20):(25~30):(4~8):(8~10)でないこと又は、34.5:5:17:28:6:9.5でないことが好ましい。PC:LPC:PI:PE:LPE:NAPE:PA:LPAの比率として、大豆レシチンのそれ、例えば、(33~40):(2~4):(18~20):(25~27):(1~3):(4~6):(7~9):(0~2)、でないこと又は、34:3:19:26:2:5:8:1:2でないことが好ましい。リン脂質全体に対するPCの割合は、例えば、35~50%であること、又は、35%未満でないことが好ましい。リン脂質全体に対するPEの割合は、例えば、8~15%であること、又は、25%以上でないことが好ましい。
【0017】
油脂とは、例えば、天然由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物を意味する。油脂として、具体的には、複数のトリアシルグリセロールの混合物、複数のジアシルグリセロールの混合物及び/又は複数のモノアシルグリセロールの混合物等が例示される。油脂は、植物油脂でもよく、動物油脂でもよいが、植物油脂であることが好ましい。植物油脂の例として、米油、パーム油、ナタネ油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、オリーブ油、ヤシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、モンゴンゴ油、ペカン油、松の実油、クルミ油、ツバキ油、茶油等が挙げられるが、大豆油でない植物油が好ましく、米油が特に好ましい。
本発明の組成物は、脂肪酸を含有していてもよい。
本発明の組成物中の油脂又は脂肪酸の含有割合は、例えば、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法により確認することができる。
本発明の組成物中の油脂の含有割合は、例えば、50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。本発明の組成物中の油脂及び脂肪酸の合計の含有割合は、例えば、50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0018】
γ-オリザノールは、米糠由来成分である。すなわち、γ-オリザノールを含む組成物を、米由来の組成物と言い換えてもよい。組成物全体に対するγ-オリザノールの含有割合は、0.1質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよい。
組成物中のγ-オリザノールの含有割合は、例えば、以下のような公知の方法により求められる。すなわち、組成物を2~5g秤量し、n-ヘキサンで100mLとし、このうちの2mLを採り、n-ヘキサンで100mLに希釈したものについて、315nmの吸光度を測定し、組成物質量をX(g)、吸光度をAとすると、γ-オリザノール含有量G(%)は、以下の式で求められる。
【0019】
【0020】
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物は、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有する。本発明において、「大豆レシチンと同等以上の乳化作用」とは、大豆レシチンと同等の乳化作用であってもよいし、大豆レシチンよりも優れた乳化作用を有していてもよいことを意味する。ここで、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有することは、例えば、O/W系又はW/O系において、本発明の組成物と大豆レシチンとを同質量添加した場合の乳化能や、大豆レシチンとリン脂質含量が同質量になるように添加量を調整した本発明の組成物と大豆レシチンの乳化能を比較して、本発明の組成物が大豆レシチンの乳化能と同等以上であるかを評価することにより、確認することができる。
【0021】
大豆レシチンは、(1)大豆由来のレシチン、(2)大豆油を得る工程で脱ガム工程によって得られる水和物、(3)リン脂質を含み、大豆油を得る工程で脱ガム工程によって得られる水和物、(4)リン脂質を含み、大豆由来の成分、例えば、大豆タンパク質、大豆イソフラボン等をさらに含む組成物等と言い換えることができる。大豆レシチンは、食品又は医薬品の乳化剤として利用可能な程度に脱色、精製されていることが好ましい。また、大豆レシチンは、ペースト状(液状)レシチン、液状酵素分解レシチン、粉末酵素分解レシチン、分別酵素分解レシチン等であってもよく、中でもペースト状レシチンであることが好ましい。ペースト状の大豆レシチンとして、SLPペースト(辻製油株式会社製)が用いられてもよい。
【0022】
レシチンとは、例えば、様々な動物又は植物由来の様々なリン脂質の組み合わせを含む組成物として、定義される。本開示において、本発明の組成物は、レシチンに分類され得る。組成物(レシチン)全体に対する、リン脂質の合計の含有割合は特に限定されず、1~100質量%であってもよく、10~100質量%であってもよく、20~100質量であってもよく、30~100質量%であってもよく、40~100質量%であってもよく、50~100質量%であってもよく、7~48質量%であってもよく、7~18質量%であってもよく、18~48質量%であってもよい。また、起源(動物又は植物の種類)により、レシチンに含まれる成分は異なる。米レシチン(米糠由来レシチン)は、例えば、γ-オリザノールを含むことを特徴とする。γ-オリザノールを含む態様の本発明の組成物は、米レシチン(米糠由来レシチン)と言い換えてもよい。一方、大豆レシチン(大豆由来レシチン)は、例えば、大豆たんぱく質及び/若しくは大豆イソフラボンを含むこと並びに/又はγ-オリザノールを含まないことを特徴とする。本発明の組成物は、大豆レシチン(大豆由来レシチン)であってもよいが、大豆レシチン(大豆由来レシチン)でないことが好ましい。本発明の組成物が、大豆レシチン(大豆由来レシチン)でないとは、本発明の組成物が、大豆レシチン(大豆由来レシチン)そのものでないということを意味し、本発明の組成物が、大豆レシチン(大豆由来レシチン)を含む態様を除外するものではない。本発明の組成物に、例えばγ-オリザノールが含まれていることを確認することにより、本発明の組成物が、大豆レシチン(大豆由来レシチン)そのものでないと、判断することができる。本発明の組成物は、大豆レシチン(大豆由来レシチン)を含んでいてもよく、含まなくてもよい。本発明の組成物は、米レシチン(米糠由来レシチン)を含まず、夾雑物が100ppm未満のものであってもよい。
【0023】
具体的な確認方法としては、例えば、リン脂質量が0.065g(0.0645g以上、0.0655g未満)となるように調整した量の組成物と、油119.85g(119.845g以上、119.855g未満)とを混合して得られた混合物1を、さらに水30g(29.5g以上30.5g未満)と混合し、得られた混合物2を、ホモジナイザー(室温、11000rpm、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)及びギャップ0.5mm)で2分間撹拌し、静置して5時間後に、界面が存在しないことを、例えば目視にて確認することができる。なお、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)は、ステータの直径が、25mmであり、ロータの直径が、18mmであることを意味し、ギャップとは、ステータとロータの間の空間又は空隙を意味する。また、水と油と、本発明の組成物とを、適当割合混合し(例えば、油100質量部に対して約0.1質量部添加し、その混合物の約4倍の質量の水とを混合し、ホモジナイザーで約2分間激しく攪拌し)、一定時間(例えば、3時間、5時間)静置後、公知の乳化評価方法で乳化能を測定する、界面が存在するか否かを目視で確認する等した結果が、水と油と、大豆レシチンとを、同じ割合混合した場合のそれと比較して同程度以上であることを確認してもよい。乳化作用を確認する際、油として、一般的な植物油を使用してもよく、米サラダ油(築野食品工業株式会社製)を使用してもよい。乳化作用を確認する際、水として、水道水、RO水、イオン交換水、軟水等を使用してもよい。尚、本開示において、室温は、例えば1~30℃を意味する。本開示において、「約」とは、例えば少々逸脱した場合も含ませる意図で使用する用語である。このような範囲は、所与の値又は範囲の測定及び/又は定量に使用される標準の方法に特有である実験誤差内(例えば±2%以内、±1%以内等)の場合も含まれる。従って、「約」は必ずしも不明瞭ではないといえる。
具体的には、本発明の組成物の乳化能を公知の乳化性評価方法によって数値化した場合に、大豆レシチンの乳化能を100%として、例えば、±15%、±13%、±11%、±10.5%、±10%、±9%、±8%、±7.8%、±7%、±6%、±5%、±3%、±2%、±1.8%等の範囲の乳化能であれば、大豆レシチンと同等の乳化作用を有していると判断することができる。公知の乳化評価方法としては、例えば、Creaming Index (CI)(Garba, Umar, et al. “Extracting lecithin from water degumming by-products of rice bran oil and its physicochemical, antioxidant and emulsifying properties.” Food Bioscience 38 (2020): 100745.)を求める方法、本発明の組成物及び大豆レシチンのそれぞれを原料として使用したホイップクリームにおいてオーバーラン値を求める方法等が挙げられる。
【0024】
本発明者らは、リン脂質及び油脂を含有する組成物において、夾雑物が少なければ少ないほど、優れた乳化作用を示すことを見出している。この知見に基づけば、非特許文献1記載の米レシチン及び特許文献1に記載のライスレシチンオイルは、それに含まれる夾雑物が多いため(例えば10質量%以上)、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を示さないと考えられる。そして、特許文献1に記載のライスレシチンオイルが、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を示さないことについて、実験で確認している。
【0025】
比較対象の大豆レシチンを含む組成物と本発明の組成物を含む組成物とは、含有リン脂質の割合が同程度であることが好ましい。本明細書において、同程度とは、±10質量%を包含していてもよく、±5質量%を包含していてもよい。
【0026】
2.組成物の製造方法
第4の態様において、本発明は、米油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程(本明細書において、工程1ともいう。)を含む、本発明の組成物の製造方法(本明細書において、本発明の組成物の製造方法1ともいう。)を提供する。工程1を含むことにより、夾雑物の分離又は除去を効率的に実施できる点で好ましい。また、別の態様において、米油精製工程の中の脱ガム工程により得られた水和物が、工程1を経ずとも夾雑物が少ない(例えば、10質量%未満、8質量%以下、2質量%以下)場合は、工程1を経ずに、当該水和物をそのまま本発明の組成物として使用することができる。
【0027】
米油精製方法としては、原料となる植物からヘキサン等による抽出により原油を分離し、その後、原油の脱ガム工程、脱ロウ工程、脱酸工程、脱色工程及び脱臭工程を経て精製米油を得る方法が一般的である。ここで脱ガム工程では、通常、米糠抽出粗油に蒸気又は熱水を加え攪拌し、水相と油相を遠心分離し、水相にて水和物が得られ、油相にて脱ガム油が得られる。脱ガム油には、通常油脂及び/又は脂肪酸が含まれる。水和物はその後乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。乾燥剤としては、例えば硫酸マグネシウム等が使用されてもよい。乾燥の手段として、加熱、撹拌、脱水等公知の方法を採用してよい。
【0028】
米油精製工程の中の脱ガム工程により得られる水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程として、例えば、脱ガム工程における遠心分離条件を、脱ガム工程により得られる水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合が増大するように、調整する方法(例えば、遠心分離装置の分離境界面設定をずらす方法)がある。
油脂及び/又は脂肪酸は、米油精製工程の中の脱ガム工程により、通常油相で得られる脱ガム油を構成する成分である。油脂の例として、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール等のグリセリンと脂肪酸のエステルが挙げられる。
【0029】
米油精製工程の中の脱ガム工程により得られた水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程として、例えば、脱ガム工程により得られた水和物に、油脂及び/又は脂肪酸を添加し混合する方法がある。
油脂及び/又は脂肪酸は、米油等の植物油精製工程の中間又は精製後の油脂であってもよく、植物油精製工程の中の脱ガム工程により、油相で得られる脱ガム油であってもよく、脱ガム油を脱ロウ工程、脱酸工程、脱色工程及び脱臭工程から選択される1以上の工程に付して得られる油脂及び/又は脂肪酸であってもよく、米油以外の植物油精製工程の中で得られた油脂、脂肪酸及び/又は精製油脂であってもよい。
【0030】
水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程において、どの程度油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させるかを導き出す方法の例について詳述する。
まず、本発明の組成物全体に対する夾雑物の含有割合をA質量%、リン脂質の含有割合をB質量%、油脂及び脂肪酸の合計の割合をC質量%と設定する。ここで、Aの値は、例えば、10未満の数値で希望の値を適宜設定してよい。また、Bの値は、例えば、7~9、9~18、18~48等の間で希望の値を適宜設定してよい。
さらに、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる前の水和物全体に対する夾雑物の含有割合、リン脂質の含有割合、及び油脂及び脂肪酸の合計の割合を、ガスクロマトグラフィー分析等の公知の方法で求める。ここでは、それぞれ、A1質量%、B1質量%、C1質量%と表記する。油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる前の水和物全体100質量部に対する、増大させる油脂及び/又は脂肪酸の割合X質量部は、(B1×C)/B-C1の計算式により求めることができる。この計算式に基づいて、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる前の水和物全体100質量部に対して、油脂及び/又は脂肪酸をX質量部の割合で混合する。
【0031】
下記表に、当該式によって導き出される増大させる油脂及び/又は脂肪酸の割合(油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる前の水和物全体100質量部に対するX質量部)の例を、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる前の水和物における各成分の割合、並びに、組成物における各成分の目標割合の例とともに示す。組成物における油脂及び脂肪酸の合計の目標割合C、すなわち、増大後の油脂及び/又は脂肪酸の割合は、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大した後の組成物全体に対して、例えば50~80質量%であることが好ましい。
【0032】
【0033】
本発明の組成物の製造方法1において、工程1の後に、ろ過、デカンテーション、遠心分離、溶剤使用等の公知の手段又はその任意の組み合わせの手段で、夾雑物(沈殿している成分又は不溶成分)を分離又は除去する工程(本明細書において、工程2ともいう。)を包含することが好ましい。上記工程1で、水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させることにより、水和物の粘度が低くなり、ろ過、デカンテーション等による操作性が向上し、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させた水和物から夾雑物を効率的に分離又は除去することが可能となる。夾雑物は、工程2により、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させた水和物から、それに含まれる夾雑物の全部が分離又は除去されてもよく、一部が分離又は除去されてもよい。好ましくは、工程2において、工程1で設定した組成物の夾雑物の含有割合になるまで、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させた水和物から夾雑物を分離又は除去する。工程2は、40~80℃の温度条件下で行うことが好ましい。また、工程1及び工程2の後に、工程1をさらに実施し、その後、好ましくは、さらに15~25℃の温度条件下で工程2を実施することが好ましい。
【0034】
また、工程2の前、工程1の後に静置してもよく、撹拌してもよく、工程2における設定温度(例えば、40~80℃、15~25℃)到達後すぐ工程2を実施してもよいが、工程2の前、工程1の後に静置することが好ましい。静置時間は、例えば、1時間であってもよく、12時間であってもよく、24時間であってもよく、7日間であってもよく、28日間であってもよく、1カ月間であってもよく、3カ月間であってもよく、6カ月間であってもよく、1年間であってもよい。静置時間は長いほど、夾雑物が水和物からよく分離又は除去され得るため、好ましい。静置期間中の組成物の経時的劣化を防ぐために、窒素雰囲気下で静置することが好ましい。
【0035】
工程2において、溶剤を使用して、夾雑物を分離又は除去する場合、水和物に対して、ヘキサン、アセトン、イソプロピルアルコール、エタノール等又はそれらの混合溶剤を使用して実施してもよい。但し、溶剤を管理する煩雑さがでてくる。
【0036】
本発明の組成物の製造方法において、いずれかの工程において、適宜、溶剤、酸アルカリ、酵素等の薬品を使ってもよいが、脱ガム工程及び/又はその後の工程において、溶剤、酸アルカリ、酵素等の薬品を使わないことが好ましい。脱ガム工程及び/又はその後の工程において、溶剤、酸アルカリ、酵素等の薬品を使わなくても、上記工程を採用することにより、水のみで、水和物から夾雑物を分離又は除去することができる点で、本発明の組成物の製造方法は優れている。
【0037】
3.本発明の乳化剤
第5の態様において、本発明は、本発明の組成物を含有する乳化剤(本明細書において、本発明の乳化剤ともいう。)を提供する。
本発明の乳化剤は、本発明の組成物以外に、更に、食品に用いることが出来る脂肪酸、油溶性ビタミン、色素、香料等を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明の乳化剤は、本発明の組成物からなるものであってもよい。乳化作用の確認方法は、上記例を参照することができる。本発明の乳化剤は、通常の乳化剤と同様の方法及び/又は同様の使用量で、使用され得る。
【0038】
4.本発明の乳化方法a
第6の態様において、本発明は、成分(1)本発明の組成物と、成分(2)親水性成分及び/又は水とを混合する工程を含む、成分(2)と親油成分を乳化させる方法(本明細書において、本発明の乳化方法aともいう。)を提供する。
5.本発明の乳化方法b
第7の態様において、本発明は、成分(1)本発明の組成物と、成分(2)親水性成分及び/又は水と、成分(3)親油性成分とを混合する工程を含む、成分(2)と成分(3)を乳化させる方法(本明細書において、本発明の乳化方法bともいう。)を提供する。
【0039】
(2)親水性成分として、親水基を有する成分、塩等が例示される。親水性成分として、具体的には、塩、糖、牛乳、水あめ等が例示される。水は、精製水、蒸留水、水道水、浄水等であってもよい。
(3)親油性成分として、親油基を有する成分が例示される。親油性成分として、具体的には、油脂(例えば、固形油脂(エステル交換油含む)、液状油脂等)、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン、β-カロチン、香料等が例示される。油脂は、精製された植物性油脂、精製された動物性油脂等が例示される。また、成分(3)は、成分(1)に含まれる親油性の成分であってもよい。
成分(1):成分(2):成分(3)の混合割合(質量比)は、例えば、(0.1~1):(15~60):(30~90)であってもよく、後述の製造例における表を参照してもよい。
成分(1)と成分(2)とを混合した後に、さらに成分(3)を混合してもよく、成分(1)と成分(3)とを混合した後に、さらに成分(2)を混合してもよい。混合方法は、撹拌機による撹拌、さじ等による撹拌等公知の方法に従ってよい。
【0040】
6.本発明の組成物a
第8の態様において、本発明は、上記成分(1)本発明の組成物と、上記成分(2)親水性成分及び/又は水と、上記成分(3)親油性成分との混合物を含む組成物(本明細書において、本発明の組成物aともいう。)を提供する。本発明の組成物aは、乳化されている状態であることが好ましい。乳化型が油中水型又は水中油型のいずれであってもよい。
乳化の程度は、成分(1)の代わりに、本発明の組成物のリン脂質の含有割合と同程度のリン脂質を含有する大豆レシチンを使用した場合と同等以上であることが好ましい。乳化作用の確認方法は、上記例を参照することができる。
本発明の組成物a全体に対する成分(1)の割合は、例えば0.01~10質量%であってもよく、0.01~5質量%であってもよく、0.1~6質量%であってもよく、0.1~5質量%であってもよく、0.1~3質量%であってもよく、0.1~1質量%であってもよい。
本発明の組成物a全体に対する成分(2)の割合は、例えば10~70質量%であってもよく、15~70質量%であってもよく、15~60質量%であってもよい。
本発明の組成物a全体に対する成分(3)の割合は、例えば10~90質量%であってもよく、20~90質量%であってもよく、25~90質量%であってもよく、30~90質量%であってもよい。
本発明の組成物a全体に対する混合物の割合は、20~100質量%であってもよく、50~100質量%であってもよく、80~100質量%であってもよい。
成分(1)と成分(2)とを混合した後に、さらに成分(3)を混合してもよく、成分(1)と成分(3)とを混合した後に、さらに成分(2)を混合してもよい。混合方法は、撹拌機による撹拌、さじ等による撹拌等公知の方法に従ってよい。
本発明の組成物a全体に対する、夾雑物の割合は、例えば、100ppm未満であってもよい。また、油相中の夾雑物の割合が、例えば、100ppm未満であることが好ましい。ここでいう、油相中とは、本発明の組成物、後述の本発明の組成物を含む組成物(食品等)、乳化剤、相溶剤又は酸化防止剤等の油脂組成物に含まれる親油性成分中を意味し、親油性成分が親水性成分と乳化されていても、されていなくても良い。
【0041】
7.本発明の非水系の相溶剤
第9の態様において、本発明は、本発明の組成物を含む非水系の相溶剤(本明細書において、本発明の非水系の相溶剤ともいう。)を提供する。
本発明の非水系の相溶剤は、本発明の組成物以外に、更に、食品に用いることが出来る成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明の非水系の相溶剤は、本発明の組成物からなるものであってもよい。本発明の非水系の相溶剤は、水溶性でない液状物質及び/又は固形状物質を溶解させることができる。
【0042】
8.本発明の組成物b
第10の態様において、本発明は、上記成分(1)本発明の組成物と、成分(2)親水性成分及び/若しくは水、又は、上記成分(3)親油性成分との混合物を含む組成物(本明細書において、本発明の組成物bともいう。)を提供する。
本発明の組成物b全体に対する成分(1)の割合は、0.01~30質量%であってもよく、1~30質量%であってもよく、0.1~20質量%であってもよく、0.1~10質量%であってもよく、0.1~5質量%であってもよく、0.1~1質量%であってもよい。
本発明の組成物b全体に対する成分(2)の割合は、例えば10~70質量%であってもよく、15~70質量%であってもよく、15~60質量%であってもよい。
本発明の組成物b全体に対する成分(3)の割合は、50~99.99質量%であってもよく、60~99.9質量%であってもよく、60~99質量%であってもよい。
本発明の組成物b全体に対する混合物の割合は、20~100質量%であってもよく、50~100質量%であってもよく、80~100質量%であってもよい。
本発明の組成物b全体に対する、夾雑物の割合は、例えば、100ppm未満であってもよい。また、油相中の夾雑物の割合が、例えば、100ppm未満であることが好ましい。ここでいう、油相中とは、本発明の組成物、後述の本発明の組成物を含む組成物(食品等)、乳化剤、相溶剤又は酸化防止剤等の油脂組成物に含まれる親油性成分中を意味し、親油性成分が親水性成分と乳化されていても、されていなくても良い。
混合方法は、撹拌機による撹拌、さじ等による撹拌等公知の方法に従ってよい。
【0043】
9.本発明の飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品
第11の態様において、本発明は、本発明の組成物を含む飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品(本明細書において、本発明の飲食品若しくは飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品ともいう。)を提供する。
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物、本発明の組成物を含む組成物(食品等)、本発明の飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品は、離型油の態様でないこと、又は離型油を含まないことが好ましい。
【0044】
本発明の飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品は、飲食品、飲食品用素材、飼料、化粧品、生活用品、医薬品又は医薬部外品等の分野において一般的に使用されるその他の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加物として、例えば、増粘安定剤、酵素、調味料、強化剤、製造用剤、着色料、甘味料、苦味料、酸味料、ガムベース、光沢剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤、乳化安定剤、乳化助剤、殺菌料、漂白剤、発色剤、香料、防かび剤、抽出溶剤、豆腐用凝固剤、被膜剤、離型剤、小麦粉処理剤、イーストフード、pH調整剤、pH緩衝剤、膨張剤、栄養強化剤、保存剤、賦形剤、安定剤、矯味剤、溶解補助剤、緩衝剤、懸濁化剤、着香剤、粘稠剤、収斂剤、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、紫外線散乱剤、紫外線遮蔽剤、ナノ化物質、防腐剤、界面活性剤、金属封鎖剤、油剤、保護剤、保湿剤、洗浄剤、消炎剤、抗菌剤、美白剤、抗たるみ剤、皮膜剤、剥離剤、結合剤、エモリエント剤、可塑剤、ビタミン剤、感触改良剤、泡安定剤、安定化剤、加脂肪剤、滑剤、可溶化剤、還元剤、酸化剤、顔料、基剤、希釈剤、起泡剤、吸着剤、緊張剤、経皮吸収促進剤、結合剤、血行促進剤、ゲル化剤、抗酸化剤、抗脂漏剤、コンディショニング剤、細胞賦活剤、柔軟剤、浸透剤、スクラブ剤、成形改良剤、成形剤、洗浄剤、造膜剤、帯電防止剤、中和剤、鎮静剤、パール化剤、肌荒れ防止剤、撥水剤、発泡剤、発毛促進剤、付着剤、分散剤、噴霧剤、変性剤、抱水剤、保香剤、保留剤、溶解剤、溶剤、養毛剤等が挙げられる。
【0045】
飲食品には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品、サプリメント、タブレット等が含まれる。飲食品の形態は特に限定されないが、例えば、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、又はドリンク剤等の加工形態とすることもできる。飲食品の形態として、例えば茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、発酵飲料、アルコール飲料等の飲料;そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子(例えば、パウンドケーキ等)、パン等の菓子及びパン類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;植物性クリーム、コンパウンドクリーム(乳脂と植物油脂との混合物)、ホイップクリーム等のクリーム;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、ファットスプレッド、マヨネーズ、フラワーペースト、ショートニング、ドレッシング、離型油、炊飯油等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品;練り製品;アイスクリーム、シャーベット、又はかき氷等の冷菓;卵加工食品;嗜好品等を挙げることができる。また、当該飲食品は、例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース、又はリン酸ナトリウム等の賦形剤を含んでいてもよい。
1つの特定の実施形態において、飲食品は、離型油を含まない飲食品であることが好ましい。
【0046】
飲食品用素材の形態は特に限定されないが、例えば、粉末状、フレーク状、液状、ペースト状、顆粒状等が挙げられる。当該飲食品用素材は、一般的な食品添加剤の製造方法に従って製造することができる。飲食品用素材は、乳化剤、非水系の相溶剤又は飛び跳ね防止剤とする旨が表示されている飲食品用素材であってもよい。
【0047】
飼料としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、リャマ、アルパカ、ラクダ、ウサギ、ミンク、キツネ、チンチラ、ガチョウ、鶏若しくはアヒル等の家畜用飼料、養殖魚用飼料、イヌ、若しくはネコ等のペット用飼料等が挙げられる。当該飼料は、飼料中に本発明の剤を添加する工程を除いて、一般的な飼料の製造方法に従って加工製造することができる。
【0048】
化粧品は特に限定されないが、例えば、口紅、乳液、化粧水、保湿液、美容液、潤滑液、ファンデーション、洗顔剤、コンシーラー、ベース、クレンジング、アイカラー、アイブロウ、チークカラー、フェイスカラー、ルージュ、グロス、リップライナー等が挙げられる。
【0049】
生活用品は特に限定されないが、例えば、潤滑油、塗料、磁気カード、衛生用品、洗剤、家庭用日用品、オーラルケア用品、トイレタリー用品、家庭用化学製品、トイレットペーパー、ティッシュペーパ-、ウェットティッシュ、絆創膏、マスク、包帯、医療用テープ、タオル、手ぬぐい、洗濯用洗剤、歯磨剤、歯ブラシ、洗口液、口中清涼剤、石けん、ハンドソープ、ボディソープ、スキンケアクリーム、日焼け止め剤、制汗剤、シャンプー、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアスプレー、ヘアワックス、育毛剤、シェービングフォーム、入浴剤、アロマ用品、消臭剤、芳香剤等が挙げられる。
【0050】
医薬は、経口用の固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、若しくは顆粒剤等)、又は経口用の液剤等の形態で実施することができる。これらの製剤は、この分野でよく知られた一般的な医薬の製造方法に従って製剤化することができる。医薬品は特に限定されないが、例えば、止瀉剤、麻酔剤等が挙げられる。
【0051】
医薬部外品は特に限定されないが、例えば、ビタミン剤、のど清涼剤、殺菌消毒薬、しもやけ又はあかぎれ用薬、健胃薬、いびき防止薬、口腔咽喉薬、胃の不快感を改善することが目的とされている物、カルシウム剤、含嗽薬、コンタクトレンズ装着薬、瀉下薬、消化薬、滋養強壮剤、虚弱体質改善剤、栄養補給剤、生薬を主たる有効成分とする保健薬、整腸薬、仁丹(登録商標)、染毛剤、ソフトコンタクトレンズ用消毒剤、パーマネント用剤、ウェーブ用剤、鼻づまり改善薬、ビタミン含有保健薬、浴用剤等が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物を投与される動物は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒト、又はヒト以外の動物等であってもよい。ヒト以外の動物としては、特に限定されないが、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、リャマ、アルパカ、ラクダ、ウサギ、ミンク、キツネ、チンチラ、ガチョウ、鶏、アヒル、イヌ、ネコ、ハムスター、魚、サル、パンダ等が挙げられる。
【0053】
本発明の組成物を投与する動物の部位又は本発明の組成物が効果を奏する動物の部位は、特に限定されるものではないが、例えば、肌、目、血管、リンパ管、筋肉、脂肪、関節、頭皮、脳、鼻、生殖器、口から肛門までの消化器、その他内臓等が挙げられるが、より好ましくは肌である。投与形態は経口でも非経口(例えば注射)であってもよい。
【0054】
10.リン脂質及び油脂含有組成物中の夾雑物の割合を低減させる方法
第12の態様において、本発明は、少なくとも、植物油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、リン脂質及び油脂含有組成物中の夾雑物の割合を低減させる方法(本明細書において、本発明の低減方法ともいう。)を提供する。
本発明の低減方法は、例えば、ろ過、遠心分離、静置後のデカンテーション等の従来の方法よりも、処理が容易かつ効率的である点で好ましい。また、本発明の低減方法は、ヘキサン、アセトン、エタノール等の有機溶剤を利用するよりも、コストや安全管理の点で好ましい。
【0055】
植物油の例として、米油、パーム油、ナタネ油、大豆油、ゴマ油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、オリーブ油、ヤシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、モンゴンゴ油、ペカン油、松の実油、クルミ油、ツバキ油、茶油等が挙げられるが、大豆油でない植物油が好ましく、米油が特に好ましい。
【0056】
植物油精製方法としては、原料となる植物からヘキサン等による抽出により原油を分離し、その後、原油の脱ガム工程、脱ロウ工程、脱酸工程、脱色工程及び脱臭工程を経て精製植物油を得る方法が一般的である。ここで脱ガム工程では、通常、植物抽出粗油に蒸気又は熱水を加え攪拌し、水相と油相を遠心分離し、水相にて水和物が得られ、油相にて脱ガム油が得られる。脱ガム油には、通常油脂及び/又は脂肪酸が含まれる。水和物はその後乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。乾燥剤としては、例えば硫酸マグネシウム等が使用されてもよい。乾燥の手段として、加熱、撹拌等公知の方法を採用してよい。
【0057】
植物油精製工程の中の脱ガム工程により得られる水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程として、例えば、脱ガム工程における遠心分離条件を、脱ガム工程により得られる水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合が増大するように、調整する方法(例えば、遠心分離装置の境界面設定をずらす方法)がある。
油脂及び/又は脂肪酸は、植物油精製工程の中の脱ガム工程により、通常油相で得られる脱ガム油を構成する成分である。油脂の例として、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール等のグリセリンと脂肪酸のエステルが挙げられる。
【0058】
植物油精製工程の中の脱ガム工程により得られた水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程として、例えば、脱ガム工程により得られた水和物に、油脂及び/又は脂肪酸を添加し混合する方法がある。
油脂及び/又は脂肪酸は、植物油精製工程の中の脱ガム工程により、油相で得られる脱ガム油であってもよく、脱ガム油を脱ロウ工程、脱酸工程、脱色工程及び脱臭工程から選択される1以上の工程に付して得られる油脂及び/又は脂肪酸であってもよく、別の植物油精製工程の中で得られた油脂、脂肪酸及び/又は精製油脂であってもよい。
【0059】
水和物に含まれる油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程のその他の詳細及びその後の任意の工程については、上記組成物の製造方法における工程1及び工程2の説明を参照することができる。
【0060】
本発明の低減方法において、いずれかの工程において、適宜、溶剤、酸アルカリ、酵素等の薬品を使ってもよいが、脱ガム工程及び/又はその後の工程において、溶剤、酸アルカリ、酵素等の薬品を使わないことが好ましい。脱ガム工程及び/又はその後の工程において、溶剤、酸アルカリ、酵素等の薬品を使わなくても、上記工程を採用することにより、水のみで、水和物から夾雑物を分離又は除去することができる点で、本発明の低減方法は優れている。
【0061】
11.本発明の組成物の製造方法2
第13の態様において、本発明は、少なくとも、植物油精製工程の中の脱ガム工程により得られる又は得られた水和物に含まれる、油脂及び/又は脂肪酸の割合を増大させる工程を含む、リン脂質及び油脂含有組成物の製造方法(本明細書において、本発明の組成物の製造方法2ともいう。)を提供する。本発明の組成物の製造方法2における各用語の説明として、本発明の組成物の製造方法におけるそれを参照することができる。但し、本発明の組成物の製造方法における説明中の米油は、植物油と読み替える。植物油の説明として、本発明の低減方法における植物油に関する説明を参照することができる。
【0062】
12.本発明の組成物の製造方法3
第14の態様において、本発明は、上記成分(1)又は、夾雑物(例えば10質量%未満、100ppm未満)、リン脂質(例えば18~48質量%)、油脂及びγ-オリザノールを含む組成物(本明細書において、本発明の組成物1ともいう。)と、上記成分(2)及び/又は成分(3)を混合する工程を含む、上記成分(1)又は本発明の組成物1と、上記成分(2)及び/又は成分(3)の混合物の製造方法を提供する。
【0063】
本発明の組成物の製造方法1~3のいずれかによって製造された本発明の組成物には、組成物の組成及び/又は成分が、製造直後から経時的に変化(例えば、加水分解)した組成物も包含する。
【0064】
13.酸化防止剤
第15の態様において、本発明は、本発明の組成物を含有する酸化防止剤(本明細書において、本発明の酸化防止剤ともいう。)を提供する。本発明の酸化防止剤は、本発明の組成物以外に、更に、食品に用いることが出来る成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明の酸化防止剤は、本発明の組成物からなるものであってもよい。本発明の酸化防止剤は、記憶力の向上、認知症の予防、ADHD(注意欠如及び/又は多動症)の症状の改善、動脈硬化の予防、脂肪肝及び/又は肝硬変の改善、血中の悪玉コレステロールを減らす等の効果を奏し得る。
【0065】
14.粗大結晶抑制剤
第16の態様において、本発明は、本発明の組成物を含有する粗大結晶抑制剤(本明細書において、本発明の粗大結晶抑制剤ともいう。)を提供する。本発明の粗大結晶抑制剤は、本発明の組成物以外に、更に、食品に用いることが出来る成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明の粗大結晶抑制剤は、本発明の組成物からなるものであってもよい。本発明の粗大結晶抑制剤は、油脂結晶の析出を遅くする、結晶の粗大化を抑制する等の効果を奏し得る。
【0066】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【実施例】
【0067】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0068】
[各サンプル]
大豆レシチン:SLPペースト(辻製油株式会社製)を用いた。
比較例1:公知の製造方法(Van Nieuwenhuyzen, W. “Lecithin production and properties.” Journal of the American Oil Chemists' Society 53.6Part2 (1976): 425-427.)に準じて製造した。具体的には、(1)米糠原油(Camil社製)1000gをウォーターバスで70℃まで加温した後、(2)原油に対し3質量%の温水を添加し、(3)70℃、500rpm(70Φプロペラ)の条件で20分攪拌した。その後、(4)バスケット型遠心分離機により3000rpm、半径200mmで5分間遠心分離によって脱ガムを行い、(5)上清を除去し、水和ガム29gを得、(6)エバポレーターにて、80℃で脱水することにより、米レシチン13gを得た。
比較例2:米糠原油(Irgovel社製)を使用して、比較例1と同様の方法で、水和ガム50gを得、エバポレーターにて、80℃で脱水することにより、米レシチン20gを得た。
比較例3:米糠原油(築野食品工業社製)を使用して、比較例1と同様の方法で、水和ガム52gを得、エバポレーターにて、80℃で脱水することにより、米レシチン18gを得た。
実施例1:上記比較例の製造方法(4)の脱ガム時に、組成物全体に対するリン脂質の含有割合が21.7%になるように前述の方法(表1の2段落前の段落から表1までの説明を参照)で算出した量のこめ油(築野食品株式会社製、油脂及び脂肪酸に相当)を加え、その後、40~80℃の条件下で、夾雑物をろ過し、米レシチンを得た。
実施例2:上記比較例の製造方法(4)の脱ガム時に、組成物全体に対するリン脂質の含有割合が7.7%になるように前述の方法(表1の2段落前の段落から表1までの説明を参照)で算出した量のこめ油(築野食品株式会社製、油脂及び脂肪酸に相当)を加え、その後、15~25℃の条件下で、一カ月間保持した後、夾雑物をろ過し、米レシチンを得た。
【0069】
[測定方法]
各サンプル(レシチン)に含まれる、レシチン全体に対するリン脂質の含有割合及び夾雑物の含有割合を、以下のようにして測定した。
[リン脂質の含有割合]
各サンプル0.02gをキシレンで5倍希釈後、10%ベースオイル(CONOSTAN社製、商品名:CONOSTAN Element Blank Oil,75cStをキシレンで希釈したもの)で全量を10gに調製し、遠心分離(3000rpm、半径200mm、5分間)後の上清を測定溶液として、マルチタイプICP発光分光分析装置ICPE-9820(株式会社島津製作所製)に供した。リン標準油(CONOSTAN社製、商品名:CONOSTAN Oil Analysis Standards Phosphorous(P),20cSt,5000ppm)を用いて作成した検量線に基づき、各サンプル中のリン(P)含有量を測定、下記の式よりリン脂質含有割合に換算した。
【0070】
【0071】
[夾雑物の含有割合]
ブフナー型ガラスろ過器を105℃の恒温乾燥機で30分間乾燥させ、デシケーター内で30分間放冷後、乾燥重量を精密天秤で測定した。各サンプル10gを採取し、温キシレンを100mL加えて溶解させた後、ブフナー型ガラスろ過器により減圧ろ過を行い、さらに温キシレンを用いて再抽出、洗浄した。残分を含むブフナー型ガラスろ過器を105℃の恒温乾燥機中で30分間乾燥させ、デシケーター内で30分間放冷後、乾燥重量を精密天秤で測定した。残分の重量を算出、下記の式より夾雑物含有割合を算出した。
【0072】
【0073】
[各サンプルのリン脂質及び夾雑物の含有割合]
大豆レシチン、比較例1及び比較例2の米レシチン並びに実施例1及び実施例2の米レシチンのそれぞれに含まれるレシチン全体に対するリン脂質の含有割合及び夾雑物の含有割合は下記表の通りであった。
【0074】
【0075】
[実験例1]乳化性評価(О/W系)(質量合わせ)
大豆レシチン、実施例1~2、及び比較例1の各サンプル(レシチン)を米サラダ油(築野食品工業株式会社製)100質量部に対して0.1質量部添加した。この混合物と、その4倍の質量の水とを混合し、ホモジナイザー(室温、11000rpm、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)及びギャップ0.5mm)で2分間激しく撹拌した。その後、静置し、油層と水層の分離を目視で確認した。静置3時間後のCreaming Index (CI)の評価を行った(n=3)。なお、上記CIは、下記式にて求めた。CIは数値が小さい程、乳化作用が高いことを示し、CIの数値が0の場合は、液相分離していないことを示す。
【数4】
【0076】
CIの平均値の結果を下記表3に示す。表3中のBlankは、レシチン無添加を意味する。O/W系において、比較例1では大豆レシチンと比較してCIが大きく、乳化作用が大豆レシチンより劣っている結果となった。一方、実施例1及び2は、大豆レシチンと同等以上のCIが得られ、大豆レシチンと同等以上の乳化作用を有することが示された。
【0077】
【0078】
[実験例2]乳化性評価(W/О系)(質量合わせ)
大豆レシチン、実施例1及び比較例1の各サンプル(レシチン)を米サラダ油(築野食品工業株式会社製)100質量部に対して0.1質量部添加した。この混合物と、その1/4の質量の水とを混合し、ホモジナイザーで2分間激しく撹拌した。その後、静置し、油層と水層の分離を目視で確認した。静置3時間後のCreaming Index (CI)の評価を行った(n=3)。なお、上記CIは、下記式にて求めた。CIは数値が小さい程、乳化作用が高いことを示し、CIの数値が0の場合は、液相分離していないことを示す。
【数5】
【0079】
CIの平均値の結果を下記表4に示す。表4中のBlankは、レシチン無添加を意味する。比較例1では明らかに大豆レシチンと比較して、CIが大きく、乳化作用が大豆レシチンより劣っている結果となった。一方、実施例1は、大豆レシチンと同等のCIが得られ、大豆レシチンと同等の乳化作用を有することが示された。
【0080】
【0081】
上記結果から、含まれている夾雑物の割合が少ない実施例のレシチンは、大豆レシチンと同様の乳化作用を示すことが確認できた。
【0082】
[実験例3]乳化性評価(О/W系、W/O系)(夾雑物の乳化性への影響)
(O/W系)
実験例1と同様の手順で、実施例1を米サラダ油と混合し、得られた混合物をさらに水と混合して実施例1(O/W)を得た。また、実験例1と同様の手順で、比較例1を米サラダ油と混合し、得られた混合物をさらに水と混合して参考例4(比較例1(O/W))を得た。また、夾雑物の割合が下表の通り、3.5、5又は10質量%となるように、実施例1(O/W)に、比較例1(O/W)を添加して、参考例1~3を得た。また、夾雑物の割合が下表の通り、20又は27質量%となるように、実施例1(O/W)に、比較例3を添加して、参考例5~6を得た。それぞれについて、静置3時間後のCIの評価を行った。
(W/O系)
実験例2と同様の手順で、実施例1を米サラダ油と混合し、得られた混合物をさらに水と混合して実施例1(W/O)を得た。また、実験例2と同様の手順で、比較例1を米サラダ油と混合し、得られた混合物をさらに水と混合して参考例10(比較例1(W/O))を得た。また、夾雑物の割合が下表の通り、3.5、5又は10質量%となるように、実施例1(W/O)に、比較例1(W/O)を添加して、参考例7~9を得た。また、夾雑物の割合が下表の通り、20又は27質量%となるように、実施例1(W/O)に、比較例3を添加して、参考例11~12を得た。それぞれについて、静置3時間後のCIの評価を行った。
【0083】
【0084】
結果を
図1に示す。O/W系において夾雑物が15質量%以下の割合で添加した場合(参考例1~4)には、夾雑物が0質量%の場合のCIとほとんど差がなく、乳化力が、夾雑物の増加に影響を受けず保持される結果となった。W/O系においては、夾雑物の添加量が10質量%未満の場合(参考例7~9)に、添加割合の減少に伴いCIが低下する結果となった。
したがって、夾雑物の含有量は、乳化性に影響を与え、О/W系及びW/O系の両方で十分な乳化性を示すためには、組成物(レシチン)に対する夾雑物の含有量が、10質量%未満であること、並びに、組成物(レシチン)、油及び水の混合物中の油相に対する夾雑物の含有量が、100ppm未満であることが好ましいことが示された。
【0085】
[実験例4]乳化性評価(О/W系)(リン脂質含量合わせ)
実施例1及び比較例2の各サンプル(レシチン)のリン脂質の質量が大豆レシチンサンプル0.15gのそれと同等になるように、下表の添加量の各サンプルを米サラダ油(築野食品工業株式会社製)に対して添加し30gとした。この混合物と、その4倍の質量の水とを混合し、ホモジナイザーで2分間激しく撹拌した。その後、静置し、油層と水層の分離を目視で確認した。静置3時間後のCreaming Index (CI)の評価を行った(n=3)。上記CIは、上記実験例1と同じ式にて求めた。
【0086】
【0087】
CIの平均値の結果を下記表に示す。表中のBlankは、レシチン無添加を意味する。O/W系において、比較例2では大豆レシチンと比較してCIが大きく、乳化作用が大豆レシチンより劣っている結果となった。一方、実施例1は、大豆レシチンと同等のCIが得られ、大豆レシチンと同等の乳化作用を有することが示された。
【0088】
【0089】
[実験例5]乳化性評価(W/О系)(リン脂質含量合わせ)
実施例1~2、及び比較例2の各サンプル(レシチン)のリン脂質含有割合が大豆レシチンサンプル0.15gと同等になるように、下表の添加量の各サンプルを米サラダ油(築野食品工業株式会社製)に対して添加し120gとした。この混合物と、その1/4の質量の水とを混合し、ホモジナイザーで2分間激しく撹拌した。その後、静置し、油層と水層の分離を目視で確認した。静置3時間後のCreaming Index (CI)の評価を行った(n=3)。上記CIは、上記実験例2と同じ式にて求めた。
【0090】
【0091】
CIの平均値の結果を下記表9に示す。表中のBlankは、レシチン無添加を意味する。比較例2では明らかに大豆レシチンと比較して、CIが大きく、乳化作用が大豆レシチンより劣っている結果となった。一方、実施例1及び2では、大豆レシチンと同等のCIが得られ、大豆レシチンと同等の乳化作用を有することが示された。
【0092】
【0093】
以上の結果から、リン脂質含量を大豆レシチンのそれと合わせた場合であっても、夾雑物の割合が乳化性に影響することが確認された。
【0094】
[製造例1]マーガリン(W/O系)
【0095】
各マーガリンの製造方法
下表に示す油層の材料(固形油脂、液状油脂、各レシチン(比較例2、大豆レシチン、実施例1及び2)並びにモノグリセリド)をそれぞれ測り取り、70℃に加温して調製した。また、下表に示す水層の材料(水及び食塩)を測り取り、70℃に加温して調製した。ホモジナイザー(70℃、11000rpm、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)及びギャップ0.5mm)で油層を攪拌しているところに水層を加え、2分間乳化した。この乳化液をステンレスボールにて-20℃で冷却攪拌し、保存容器に入れて冷蔵庫(約5℃)にて冷却することにより、マーガリンを得た。各レシチンに含まれるリン脂質含有割合が大豆レシチンサンプル0.30gと同等になるように、下表のとおり各サンプルを添加した。
【0096】
【0097】
各マーガリンの乳化性評価
上記製造例1の各マーガリンの冷却前の乳化液について、ホモジナイザーでの攪拌(70℃、11000rpm、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)及びギャップ0.5mm後、5分後における液相分離の状態を測定し、CIの評価を行った。
【0098】
結果
CIの結果を下記表に示す。比較例2使用マーガリンでは、油層と水層の混合後すぐの乳化液において液相分離が始まり、大豆レシチン、実施例1及び実施例2使用マーガリンに比べてはるかに乳化性が悪かった。以上の結果から、乳化以降の冷却工程後のマーガリンにおいても均質性が損なわれ、乳化性の悪い米レシチンを使用することが製品としてそぐわないことが明白となった。
【0099】
【0100】
[製造例2]ホイップクリーム(O/W系)
【0101】
各ホイップクリームの製造方法
ビーカーに、下表に示す水層の材料(スキムミルク、ショ糖脂肪酸エステル及び水)をそれぞれ測り取り、70℃に加温して調整した。また、下表に示す油層の材料(RBOパーム油、各レシチン(比較例2、大豆レシチン、実施例1及び2)並びにモノグリセリド)をそれぞれ測り取り、70℃に加温して調製した。ホモジナイザー(70℃、11500rpm、直径25mm/18mm(ステータ/ロータ)及びギャップ0.5mm)で水層を攪拌しているところに油層を加え、6分半、乳化した。この乳化液をステンレスボールにて5℃で冷却攪拌し、保存容器に入れて冷蔵庫(約5℃)にて半日冷却することにより、ホイップ前のクリームを得た。その後、約5℃を保持したホイップ前のクリームとグラニュー糖をボウルに入れ、約5℃を保持しながら、卓上ホイッパ―にて3分間攪拌することにより、ホイップクリームを得た。各レシチンに含まれるリン脂質含有割合が大豆レシチンサンプル0.60gと同等になるように、下表のとおり各サンプルを添加した。
【0102】
【0103】
各ホイップクリームの乳化性評価(1)(オーバーラン)
上記製造例2のホイップ前のクリーム及び製造直後(製造から1時間以内)の各ホイップクリームについて、室温(1~30℃)にて、各レシチン使用のホイップ前クリーム及びホイップクリームが同体積となるように、それぞれのクリームを50mL容量のプラスチック製カップに詰め、各重量を測定し、オーバーランを算出した。なお、オーバーランは、下記式にて求めた。オーバーランの値が大きいほど、クリーム中に取り込まれている空気が多く、乳化状態が保たれていると評価することができる。
【数6】
【0104】
結果
比較例2使用ホイップクリーム、大豆レシチン使用ホイップクリーム、実施例1使用ホイップクリーム及び実施例2使用ホイップクリームのオーバーランの値は、それぞれ、94%、180%、166%及び190%であった。すなわち、比較例2使用ホイップクリームと比較して、大豆レシチン使用ホイップクリーム、実施例1使用ホイップクリーム及び実施例2使用ホイップクリームのオーバーランの値がはるかに大きかった。また、実施例2使用ホイップクリームのオーバーランは、大豆レシチン使用ホイップクリームよりも大きく、実施例1使用ホイップクリームのオーバーランは、大豆レシチン使用ホイップクリームの値と同等(約-7.8%)であった。さらに、実施例1及び実施例2使用ホイップクリームは、大豆使用ホイップクリームと比較して、気泡性及び口当たりが改善されていた。以上より、実施例1及び実施例2使用ホイップクリームは、大豆レシチン使用ホイップクリームと同等の乳化状態であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の組成物は、特に食品分野において、夾雑物が少ないリン脂質を含む油脂組成物として有用である。