(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】タイヤトレッド補助装置
(51)【国際特許分類】
B60C 27/20 20060101AFI20240620BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60C27/20 F
B60C19/00 K
(21)【出願番号】P 2023189916
(22)【出願日】2023-11-07
【審査請求日】2023-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522191990
【氏名又は名称】有限会社八瀬園
(74)【代理人】
【識別番号】100198498
【氏名又は名称】高橋 靖
(72)【発明者】
【氏名】瀬端 好宏
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03945162(US,A)
【文献】実開昭62-027808(JP,U)
【文献】実開平01-098705(JP,U)
【文献】特開2017-088079(JP,A)
【文献】米国特許第04324278(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0095393(US,A1)
【文献】実開昭62-111208(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 27/00 - 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央にボルト挿通孔が複数形成された平板からなる底部、
環状平板からなり複数の係止孔が形成された上端部、及び、前記底部
から延び前記環状平板に繋がる複数の脚部からなる係止部材と、
一端に前記係止部材の前記係止孔に係止される留め具が設けられ、他端に引掛部が設けられ、中央に所望形状のトレッド部が形成された複数の補助パッドと、
前記複数の補助パッドの前記引掛部に架けられて該複数の補助パッドを固定する固定部材とを有し、
前記係止部材は、車輌のハブとタイヤホイールのハブ取付部との間に配され、前記ボルト挿通孔に前記ハブ側からボルトが挿通されて、前記ハブと前記ハブ取付部との間にナットで固定され、
前記補助パッドは、前記トレッド部が前記タイヤホイールに装着されたタイヤのトレッド面に合された状態で、前記留め具が前記係止部材の前記係止孔に係止され、前記引掛部に前記固定部材が架けられて固定されることを特徴とするタイヤトレッド補助装置。
【請求項2】
前記補助パッドの前記トレッド部の中央に形成された所望形状のトレッドの形状は、網目状であり、かつ、スパイクピンが埋設されていることを特徴とする請求項
1に記載のタイヤトレッド補助装置。
【請求項3】
前記補助パッドの前記トレッド部の中央に形成された所望形状のトレッドの形状は、段差の大きな全地形対応車用タイヤのトレッド形状であることを特徴とする請求項
1に記載のタイヤトレッド補助装置。
【請求項4】
中央にボルト挿通孔が複数形成された平板からなる底部、環状平板からなり複数の係止孔が形成された上端部、及び、前記底部から延び前記環状平板に繋がる複数の脚部からなる係止部材と、
一端に前記係止部材の前記係止孔に係止される留め具が設けられ、他端に引掛部が設けられ、滑止め用凹凸を有する複数の滑止め部と、
前記複数の滑止め部の前記引掛部に架けられて該複数の滑止め部を固定する固定部材とを有し、
前記係止部材は、車輌のハブとタイヤホイールのハブ取付部との間に配され、前記ボルト挿通孔に前記ハブ側からボルトが挿通されて、前記ハブと前記ハブ取付部との間にナットで固定され、
前記滑止め部は、前記滑止め用凹凸が前記タイヤホイールに装着されたタイヤのトレッド面を覆う状態で、前記留め具が前記係止部材の前記係止孔に係止され、前記引掛部に前記固定部材が架けられて固定されることを特徴とするタイヤトレッド補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の使用目的に応じてタイヤのトレッド面を変更することができるタイヤトレッド補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自家用乗用車等の車両には、通常、走行性能、耐久性能、燃費性能等に最適なノーマルタイヤが装着されるが、冬季にはノーマルタイヤに代えて、凍結した路面、積雪がある路面での走行に適したスタッドレスタイヤが装着される。
また、全地形対応車(所謂「バギーカー」)等のレジャー目的に用いられる車輌にあっては、ダートや砂地での走行に適する全地形対応車専用のATVタイヤ(四輪バギー用タイヤ)が装着される。
【0003】
また、近年、路面に対してよりハイグリップとなる多種多様のタイヤの開発が行われ、これらの使用目的に応じてタイヤを交換することで様々な使用環境に応じた最適な走行が可能になる。
【0004】
しかしながら、様々な使用環境に応じて、その都度、自家用車のタイヤ交換が必要となり作業が煩わしい。
【0005】
タイヤ交換を行わずに特殊な使用環境に適した走行を行うタイヤトレッド補助装置として、従来より、積雪がある路面、凍結した路面の走行に用いられる非金属タイヤチェーンが知られている。
非金属タイヤチェーンは、主に降雪量の少ない地域において使用され、路面に積雪がある場合や凍結した場合に、適宜、ノーマルタイヤのトレッド面に補助的に取り付けられるもので、タイヤのトレッド面をスパイクピンが埋設された網目状のパッド(補助パッド)で覆うことで、路面をグリップするものである。
この非金属タイヤチェーンに関しては、従来より装着作業を容易にするため様々な工夫がなされている。
【0006】
装着作業を容易にする工夫がなされた非金属タイヤチェーンは、例えば特許文献1により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の非金属タイヤチェーン(タイヤトレッド補助装置)は、通常、補助パッドが頑丈な金属部品で互いに連結されて、帯状に繋がるようになっており、この帯状の補助パッドをタイヤの全周に取り付ける必要がある。
よって、取付作業時には車両をジャッキアップしたり、帯状の非金属タイヤチェーンを接地面以外のタイヤ外周に仮り止めし、仮止めしたままタイヤを回転させ、その後、帯状の補助パッドの両端を結合させてタイヤの全周に巻き付ける等、依然として装着作業に手間がかかり、面倒であった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、積雪・凍結路の走行、砂地走行、ダート走行等、その使用環境に応じてタイヤのトレッド面の形状を、簡易な作業で他の形状に付け替えることが可能なタイヤトレッド補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本願の第1の発明は、中央にボルト挿通孔が複数形成された平板からなる底部、環状平板からなり複数の係止孔が形成された上端部、及び、前記底部から延び前記環状平板に繋がる複数の脚部からなる係止部材と、一端に前記係止部材の前記係止孔に係止される留め具が設けられ、他端に引掛部が設けられ、中央に所望形状のトレッド部が形成された複数の補助パッドと、前記複数の補助パッドの前記引掛部に架けられて該複数の補助パッドを固定する固定部材とを有し、前記係止部材は、車輌のハブとタイヤのホイール側のハブ取付部との間に配され、前記ボルト挿通孔に前記ハブ側からボルトが挿通されて、前記ハブと前記ハブ取付部との間にナットで固定され、前記補助パッドは、前記トレッド部が前記タイヤホイールに装着されたタイヤのトレッド面に合された状態で、前記留め具が前記係止部材の前記係止孔に係止され、前記引掛部に前記固定部材が架けられて固定されるようにしたものである。
【0011】
また、本願の第2の発明は、第1の発明において、前記補助パッドの前記トレッド部の中央に形成された所望形状のトレッドが網目状であり、かつ、スパイクピンが埋設されたものである。
また、本願の第3の発明は、第1の発明において、前記補助パッドの前記トレッド部の中央に形成された所望形状のトレッドの形状を段差の大きな全地形対応車用タイヤのトレッド形状としたものである。
【0012】
また、第4の発明は、中央にボルト挿通孔が複数形成された平板からなる底部、環状平板からなり複数の係止孔が形成された上端部、及び、前記底部から延び前記環状平板に繋がる複数の脚部からなる係止部材と、一端に前記係止部材の前記係止孔に係止される留め具が設けられ、他端に引掛部が設けられ、滑止め用凹凸を有する複数の滑止め部と、前記複数の滑止め部の前記引掛部に架けられて該複数の滑止め部を固定する固定部材とを有し、前記係止部材は、車輌のハブとタイヤホイールのハブ取付部との間に配され、前記ボルト挿通孔に前記ハブ側からボルトが挿通されて、前記ハブと前記ハブ取付部との間にナットで固定され、前記滑止め部は、前記滑止め用凹凸が前記タイヤホイールに装着されたタイヤのトレッド面を覆う状態で、前記留め具が前記係止部材の前記係止孔に係止され、前記引掛部に前記固定部材が架けられて固定されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1の発明によれば、補助パッドの留め具を、それぞれ車輌のハブとタイヤホイールとの間に取り付けられた係止部材の係止孔に係止できる構造であるため、個々の補助パッドをタイヤと車輌のフェンダーとの間に差し込んで留め具を簡単に係止孔に挿入することができる。
また、補助パッドの一端を係止部材に係止された状態で、他端を車輌のアウター側に引っ張れば、補助パッドをタイヤのトレッド面に簡単に合わせることができる。
このとき補助パッドの他端にある引掛部はタイヤのアウター側に引き出され、この引掛部に連結部材を架けて締め付けるだけで、簡単に、タイヤトレッド補助装置を装着することができる。
また、係止孔が環状平板に形成されるため、係止部材の強度を保持することができる。
また、環状平板の外周に沿って係止孔を自在に形成できるため、補助パッドの留め具と係止孔との係合が容易になる。
【0014】
また、本願の第2の発明によれば、従前の非金属タイヤチェーンや金属チェーンと同等の走行性能を簡易に実現することができる。
また、本願の第3の発明によれば、全地形対応車用タイヤと同等の走行性能を簡易に実現することができる。
また、本願の第4の発明によれば、滑止め部の留め具を、それぞれ車輌のハブとタイヤホイールとの間に取り付けられた係止部材の係止孔に係止できる構造であるため、個々の滑止め部をタイヤと車輌のフェンダーとの間に差し込んで留め具を簡単に係止孔に挿入することができる。
また、滑止め部の一端を係止部材に係止された状態で、他端を車輌のアウター側に引っ張れば、滑止め用凸凹がタイヤのトレッド面を覆うことになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のタイヤトレッド補助装置(非金属タイヤチェーン装置)100を構成する各部材を車両のフェンダー外側(アウター側)から見た斜視図である。
【
図2】本発明のタイヤトレッド補助装置100を構成する各部材を車両のフェンダー内側(インナー側)から見た斜視図である。
【
図3】取付盤(係止部材)110の形状を説明するための斜視図、平面図、断面図である。
【
図4】取付盤110がリム21の内側で、車軸30側のハブ31とハブ取付部22の間に固定された状態を示す断面図である。
【
図5】取付盤110をホイール20のハブ取付部22と車軸30のハブ31との間に取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図6】スパイクピン付きの補助パッド120の表(トレッド側)・裏の形状をそれぞれ示す平面図である。
【
図7】スパイクピン付きの補助パッド120の表(トレッド側)・裏の形状をそれぞれ示す斜視図である。
【
図8】取付盤110にインナー取付部120Bを固定した状態でアウター取付部120Cを外側(アウター側)に引き出す様子を示す説明図である。
【
図9】取付盤110の係止孔113に、インナー取付部120Bの留め具122を係止する様子を示す説明図である。
【
図10】1つの補助パッド120のインナー取付部120Bを取付盤110に取り付けた状態で、アウター取付部120Cをフェンダー40のアウター側に引き出す様子を示す説明図である。
【
図11】2つめの補助パッド120のインナー取付部120Bを取付盤110に取り付けた状態で、アウター取付部120Cをタイヤ10の外側(アウター側)に引き出す様子を示す説明図である。
【
図12】4つの補助パッド120のインナー取付部120Bを取付盤110に取り付け、アウター取付部120Cをタイヤ10の外側に引き出し、締付ワイヤ(固定部材)130で固定する様子を示す説明図である。
【
図13】伸縮装置131による締付ワイヤ130の伸張/収縮を示す説明図である。
【
図14】4つの補助パッド120が、タイヤ10のトレッド面10Aに装着され、締付ワイヤ130で固定された状態を示す断面図である。
【
図15】互いに対向する2つの補助パッド120,120のフック123,123,123,123を予め締付ワイヤ230に取り付けておく例を示す説明図である。
【
図16】4つの補助パッド120,120,…のフック123,123,…を予め締付ワイヤ230に取り付けておく例を示す説明図である。
【
図17】ATV対応トレッドパッド320の表(トレッド側)の形状を平面図である。
【
図18】ATV対応トレッドパッド320の表(トレッド側)の形状を示す斜視図である。
【
図19】円形基板411の4つの脚部412,412,…の先端に環状平板415を取り付け、該環状平板415に多数の係止孔413,413,…を形成した取付盤400をホイール20に取り付ける様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図18を用いて説明する。
図1、
図2は、本発明のタイヤトレッド補助装置(非金属タイヤチェーン装置)100の各部材と、タイヤ10のホイール20、車軸30との関係を示す斜視図である。
タイヤトレッド補助装置100は、取付盤(係止部材)110、スパイクピン付きの補助パッド
(滑止め部)120、締付ワイヤ(固定部材)130とによって構成される。
【0017】
このうち取付盤110は、
図1、
図2に示すように車軸30のハブ31とホイール20のハブ取付部22との間に挟み込まれた状態で取り付けられるもので、
図3に示すように、平板からなる円形基板(底部)111と、該円形基板111の外周の縁から上部外周に延びる複数(補助パッド120の数と同数)の脚部(連結部)112,112,…と、この脚部112,112,…の上端を折り曲げて形成された平面部(上端部)112A,112A,…によって構成され、その断面がU字形となっている(
図3(c))。
円形基板111の中央には、複数(車軸側ハブ31のボルト32と同数)の挿通孔(ボルト挿通孔)114が、ハブ31側のボルト32と対応する位置に形成されている。
また、前記平面部112A,112A,…には、複数の係止孔113,113,…が形成されている。
この係止孔113,113,…は、径が大きな真円形部分と、その外周側の径が小さな長円形部分とからなり、詳細は後述するように、補助パッド120の装着時に留め具122がこの係止孔113,113,…内でロックされる構成となっている(
図9参照)。
【0018】
取付盤110は、該取付盤110が装着されるホイール20のリム21の内側の形状に応じてその形状(断面U字形)が決定されている。
すなわち、
図4の断面図に示すように、取付盤110が車軸30のハブ31とホイール20のハブ取付部22との間に固定されたときに、該取付盤110は、リム21の内面に沿って(ブレーキシュー等に接触しないように)配置され、このとき脚部112上端の平面部112Aが、ホイール20のリム21との間に隙間空間ができるように、その断面形状が決定されている(
図4中、二点鎖線W内の隙間)。
【0019】
図5に取付盤(係止部材)110の取付方法を示す。
同図に示すように、取付盤110の円形基板(底部)111中央には、複数の(図示例では4つの)挿通孔114,114,…が形成され、この挿通孔114,114,…が、ホイール20のボルト穴22a,22a,…と位置合わせが行われた状態で、リム21内面に沿って収容される(
図5(a))。
この状態で、車軸30のボルト32が、取付盤110の挿通孔114、ボルト穴22aを貫通し、貫通したボルト32はその先端からナット33が螺合されて(
図5(b))、取付盤110が、車軸側ハブ31とホイール20のハブ取付部22との間に固定される(
図5(c))。
【0020】
次に、タイヤトレッド補助装置100の要部をな
し滑止め部として機能する補助パッド(スパイクピン付きパッド)120について、
図6、
図7を用いて説明する。
補助パッド120は、中央に所望形状(網目状)のトレッド部120Aが設けられている。
この補助パッド120の一端はインナー取付部120Bとなっており、他端はアウター取付部120Cとなっている。
インナー取付部120Bには留め具122が設けられ、アウター取付部120Cにはフック(引掛部)123,123が設けられている。
補助パッド120をタイヤ10のトレッド面10Aに装着する際には、各フック123,123に締付ワイヤ(固定部材)130が架けられ、締付ワイヤ130の全長を伸縮装置131を用いて縮めることで、各フック123,123,…がタイヤ10の中心に向かって引き付けられる。
この引き付け動作によって、補助パッド120は、そのトレッド部120Aが、タイヤ10のトレッド面10Aに固定される。
【0021】
図6(a)は、補助パッド120の表面(スパイクピン121,121…が埋設された接地面側)、
図6(b)は、裏面(タイヤ10のトレッド面10Aと接する面)を示す平面図である。
補助パッド120は、熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる網目状の樹脂製パッドであり、中央の部分(トレッド部120A)に
滑止め用凹凸として設けられたスパイクピン121,121,…が積雪/凍結した路面をグリップする。
【0022】
補助パッド120の一端であるインナー取付部120Bに取り付けられた留め具122は、詳細は後述するように、取付盤110の係止孔113に挿入される(
図9)。
一方、補助パッド120の他端であるアウター取付部120Cは先端がコの字型に分かれており、各々にフック(引掛部)123,123が取り付けられている。
【0023】
次に、
図8から
図13を用いて、4つの補助パッド120,120,…をタイヤ10に取り付ける手順について説明する。
先ず、1つめの補助パッド120の一端(インナー取付部120B)を、タイヤ10のインナー側にある取付盤110側に固定する。
この場合には、補助パッド120のインナー取付部120Bを、アウター側からインナー側に差し込み、インナー取付部120Bの留め具122を、取付盤110の係止孔113に差し込む(
図9(a))。その後、補助パッド120全体を、アウター側に引っ張る(
図8の矢印方向、
図9(b)の矢印方向)。
【0024】
この一連の動作によって、
図9(b)に示すように、係止孔113の真円部分に挿入された留め具122は、係止孔113内で外側に引っ張られる。
この結果、留め具122の縊れ部分が、真円部分より径の小さな長円部内を外周側に移動して、ロックされる(
図9(c))。
なお、補助パッド120を取付盤110から外すときには、インナー取付部120Bを、インナー側に押し込み、その後、上方に引き上げれば、留め具122を係止孔113から容易に外すことができる。
【0025】
インナー取付部120Bが取付盤110に固定された状態で、補助パッド120のアウター取付部120Cをフェンダー40の外側(アウター側)に引っ張り出すと(
図10の矢印)、アウター取付部120Cのフック123,123は、タイヤ10のアウター側の側面に引き出される。
【0026】
1つめの補助パッド120のアウター取付部120Cが引き出された後、2つめの補助パッド120を、同様に、インナー取付部120Bを取付盤110に取り付け、アウター取付部120Cをタイヤ10のアウター側の側面に引き出す(
図11(a)(b))。
これらの作業を4つの補助パッド120のすべてについて行うと、4つのアウター取付部120Cが、タイヤ10のアウター側の側面に引き出される(
図12(a))。
【0027】
この状態のまま4つの補助パッド120のフック123,123、123,123、123,123、123,123に、締付ワイヤ130を架けて伸縮装置131による締め付けを行うと、4つの補助パッド120,120,120,120のトレッド部120A,120A,…がタイヤ10のトレッド面10Aに固定される(
図12(b))。
なお、4つの補助パッド120,120,…のうち、下側に位置する2つの補助パッド120,120は互いに一定間隔離れているため、
図11(C)に示すように、タイヤ10が接地した状態でも、これら下側に位置する2つの補助パッド120,120も、タイヤ10を回転させることなく、タイヤ10のトレッド面10Aに装着できる。よって、この実施の形態では、4つの補助パッド120,120,…のすべてをタイヤ10を回転させることなく、タイヤ10のトレッド面10Aに、簡単に装着することができる。
【0028】
なお、車両のハンドル(図示省略)を操作して、タイヤ10を例えば
図12(b)中矢印で示す方向に切っておけば、フェンダー40とタイヤ10との間隔が広くなりインナー取付部120Bの取付盤110への取付が容易になる。
【0029】
図13は、締付ワイヤ130に備えられた伸縮装置131の動作を説明するための図であり、
図13(a)は伸縮装置131が伸びた状態を、
図13(b)は縮んだ状態をそれぞれ示す。
締付ワイヤ130をフック123,123,…に架けるときには、伸縮装置131を伸ばした状態にする。
【0030】
フック123,123,…に締付ワイヤ130を架ける作業が終わると、伸縮装置131の回転板131aに設けられた3つのハンドル用穴131d,131d、131dに取付用ハンドル(図示省略)の3つの爪部(図示省略)を嵌め合わせ、この状態で、取付用ハンドルを回動すれば回転板131aが図中時計回りに回転し、く字型の金属棒131b,131bが回転板131aに形成された凹部に嵌合してロックされ、伸縮装置131は縮んだ状態に保持される(
図13(b))。
締付ワイヤ130をフック123から外す場合には、縮んだ状態から回転板131a(
図13(b))を、取付用ハンドル(図示省略)で、図中、反時計回りに回転させればよい(
図13(a))。
【0031】
図14(a)は、4つの補助パッド120がタイヤ10のトレッド面10Aに装着され、締付ワイヤ130で固定された状態を示す断面図であり、
図14(b)は、
図14(a)の二点鎖線で囲んだ部分Wを拡大した図である。
取付盤110側の平面部112Aの端部は、フランジ(リムフランジ)23と当接した状態で支持され、平面部112Aの下方に隙間空間Pができる。
このようにリム21と平面部112Aとの間に隙間空間Pを形成しておくことで、係止孔113の下方(リム21側)に空間が確保され、インナー取付部120Bの留め具122を、係止孔113に容易に挿入することができる。
【0032】
図15(a)は、タイヤトレッド補助装置100を装着するに当たり、4つの補助パッド120,120,120,120のうち、互いに対向する2つの補助パッド120,120のフック123,123,123,123を、予め、締付ワイヤ230に取り付ける例を示す。
先ず、締付ワイヤ230に取り付けられた、互いに対向する2つの補助パッド120,120のインナー取付部120Bを取付盤110に取り付ける(
図15(b))。
【0033】
次に、他の2つの補助パッド120,120のインナー取付部120B,120Bを取付盤110に取り付け(
図15(b)の矢印)、アウター取付部120C,120Cを引っ張ってタイヤ10のトレッド面10Aに畳み込むことでフック123,123,123,123がタイヤ10のアウター側の側面に位置する(
図15(c))。
あとから取り付けられる他の2つの補助パッド120,120のフック123,123,123,123は、既に2つの補助パッド120,20のフック123,123,…が取り付けられている締付ワイヤ230に、容易に架けることができる。
この状態から締付リール231を操作して締付ワイヤ130を縮めれば、4つの補助パッド120,120,120,120すべてが同時にタイヤ10のトレッド面10Aに固定される。この例でも、補助パッド120,120,…のうち、下側に位置する2つの補助パッド120,120を互いに一定間隔離すことで、タイヤ10が接地した状態でも、タイヤ10を回転させることなく、タイヤ10のトレッド面10Aに装着できる(
図11(C)参照)。
なお、締付ワイヤ230を伸縮させる締付リール231は公知のもであり、その詳細な説明は省略する。締付リールは、例えば、特許5344499号に開示されている。
【0034】
図16は、タイヤトレッド補助装置100を装着するに当たり、十分な長さの締付ワイヤ230に、予め4つの補助パッド120,120,120,120のすべてのフック123,123,…を取り付けておく例を示す。
図16(a)に示すように締付ワイヤ230に、4つの補助パッド120,120,120,120のすべてのフック123,123,…を取り付けておけば、装着作業の際、先ず、互いに対向する2つの補助パッド120,120のインナー取付部120B,120Bを取付盤110側に取り付け(
図16(b))、次いで、残りの2つの補助パッド120,120のインナー取付部120B,120Bを取付盤110側に容易に取り付けることができる。
【0035】
4つの補助パッド120,120,…のインナー取付部120B,120B,…がすべて取付盤110側に取り付けられた後、締付ワイヤ230を締付リール231で縮めることで、4つの補助パッド120,120,…をタイヤ10のトレッド面10Aに容易に固定できる。
【0036】
図17,
図18は、タイヤトレッド補助装置をATV対応のトレッド補助装置として用いるために、タイヤトレッド補助装置(非金属タイヤチェーン装置)100の補助パッド120に代えて取り付けられるATV対応トレッドパッド(補助パッド)320を示す平面図、斜視図である。
ATV対応トレッドパッド320は、これらの図に示すように、中央のトレッド部(パッド中央)320Aに段差が大きい全地形対応車用タイヤの凸パターン(ATV凸部)321が形成されている。
このように中央にATV凸部321が形成されたATV対応トレッドパッド320は、インナー取付部320Bの留め具322が取付盤110の係止孔113に係止される。
複数のATV対応トレッドパッド320の各インナー取付部320Bが取付盤110に取り付けられた状態で、これら複数のATV対応トレッドパッド320のアウター取付部320C側で互いのフック323,…が締付ワイヤ130によって連結されてこれを締め付けることにより、これらATV対応トレッドパッド320がタイヤ10のトレッド面10Aに固定される。
タイヤ10にATV対応トレッドパッド320を装着することで、タイヤ(ノーマルタイヤ)10を付けたまま全地形対応車用タイヤと同等の走行性能を実現することができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図19は、上述した取付盤(係止部材)110に代えて、ホイール20のハブ取付部22と車軸30のハブ31との間に取り付ける断面U字形の取付盤(係止部材)410を示す説明図である。
取付盤410は、
図19(a)に示すように、円形基板(底部)411と、該円形基板から上部外周に延びる4つの
脚部(連結部)412,412,…と、該
脚部412,412,…の先端には連なる環状平板(上端部)415とによって構成されている。
ここで環状平板415は、溶接によって
脚部412,412,…に取り付けてもよいし、金属板を板金加工により円形基板411、
脚部412、環状平板415を一体に形成してもよい。
この環状平板415には、多数(図示例では、16)の係止孔413,413,…が形成されている。なお、係止孔413の形状は、取付盤110の係止孔113の形状(
図9参照)と同一である。
【0038】
このように脚部412,412,…の先端に設けられた環状平板415に多数の係止孔413,413,…を設けることで、装着可能な補助パッド120の数を4つに限らず、適宜、必要な数とすることができる。
また、多数の係止孔413,413,…が設けられているため、インナー取付部120Bを取り付けることができる場所が増え、補助パッド120の取付位置が自由に選択できる。また、1つの補助パッド120に設けられる留め具122の数を増やすことも可能となる。
【0039】
なお、この実施の形態では、取付盤110の平板からなる底部111、取付盤410の平板からなる底部411に、挿通孔114,114,…、挿通孔414,414,…が形成された例を示したが、底部111,411の強度を保持しつつ、多数の孔を設けて軽量化を図ってもよい。
【0040】
また、この実施の形態では、取付盤110の脚部112の数を4としたので、装着する補助パッド120の数も4としたが、脚部112の数を他の数、たとえば3とすることもできる。
また、この実施の形態では、固定部材として、伸縮装置131を有する締付ワイヤ130や、締付リール231を有する締付ワイヤ230を示したが、既存の環状ゴムをフック123に架けて、その弾力により補助パッド120をタイヤ10のトレッド面10Aに固定してもよい。
【0041】
また、この実施の形態では、補助パッドとして、熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるスパイクピン付きトレッドを例にあげて説明したが、雪上でのグリップか実現できれば、これらの素材に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明は、車両のタイヤに装着されるタイヤトレッド補助装置として用いられるが、車輪を車軸に固定する他の如何なる移動手段の車輪にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 タイヤ
10A トレッド面
20 ホイール(タイヤホイール)
21 リム
22 ハブ取付部
23 フランジ
30 車軸
31 ハブ
32 ボルト
33 ナット
40 フェンダー
100 タイヤトレッド補助装置
110 取付盤(係止部材)
111 円形基板(底部)
112 脚部(連結部)
112A 平面部(上端部)
113 係止孔
114 挿通孔(ボルト挿通孔)
120 補助パッド(滑止め部)
120A トレッド部
120B インナー取付部
120C アウター取付部
121 スパイクピン(滑止め用凹凸)
122 留め具
123 フック(引掛部)
130 締付ワイヤ(固定部材)
131 伸縮装置
230 締付ワイヤ(固定部材)
231 締付リール
320 ATV対応トレッドパッド(補助パッド、滑止め部)
320A トレッド部
321 ATV用凸部(滑止め用凹凸)
410 取付盤(係止部材)
411 円形基板(底部)
412 脚部(連結部)
413 係止孔
414 挿通孔(ボルト挿通孔)
415 環状平板(上端部)
【要約】
【課題】
雪道走行や全地形対応の走行か可能で、装着にジャッキアップ等の作業が不要なタイヤトレッド補助装置を提供する。
【解決手段】
タイヤトレッド補助装置100は、取付盤110、スパイクピンが埋設された補助パッド120、締付ワイヤ130からなる。取付盤110は、円形基板111と腕部112を備え、腕部112の平面部112Aに係止孔113が形成される。補助パッド120は、中央にトレッド部120A、一端に留め具122、他端にフック123が設けられる。取付盤110は、車輌のハブ31とホイールのハブ取付部22との間に取り付けられる。補助パッド120は一端の留め具122が係止孔113に係止されてタイヤ10のアウター側に引き寄せられ、この状態でフック123,123に締付ワイヤ130が掛けられて締め付けられ、補助パッド120はタイヤ10のトレッド部分10Aの上面に合わされて固定される。
【選択図】
図1