(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】テトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物及びその合成方法と応用
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20240620BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20240620BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240620BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240620BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240620BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240620BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240620BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240620BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240620BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240620BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240620BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20240620BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240620BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240620BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240620BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240620BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240620BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240620BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C07D487/04 144
C07D487/04 CSP
A61K31/4188
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P13/02
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P15/02
A61P17/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2023504693
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2021086688
(87)【国際公開番号】W WO2021208865
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】202010287745.6
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522400113
【氏名又は名称】凱熙医薬(武漢)股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】曽慧慧
(72)【発明者】
【氏名】焦文宣
(72)【発明者】
【氏名】尹漢維
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101781283(CN,A)
【文献】国際公開第2017/084598(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102234254(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108503607(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106977472(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に示されるテトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化1】
式中、A
1、A
2、A
3とA
4は相同又は相異であり、互いに独立的にCH又はNから選ばれ、且つ多くとも1つがNであり、
A
1、A
2、A
3又はA
4がCHである場合に、それにおける水素原子はRで置換可能であり、
Rは水素、
ハロゲン、C
1-6アルキル基及びC
1-6アルコキシ基から選ばれ、
R
1はC
1-10アルキレン基から選ばれる。
【請求項2】
R
1はC
1-6アルキレン基から選ばれ、
Rは水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基及びイソペンチルオキシ基から選ばれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記化合物は、式(II)に示される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化2】
式中、A
1はCH又はNから選ばれ、
nは1、2、3、4、5又は6であり、
Rは請求項1に記載の定義を有する。
【請求項4】
前記テトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物は、以下の化合物から選ばれる、
ことを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項5】
前記薬学的に許容される塩は、前記化合物と無機酸又は有機酸で形成された酸付加塩を含み、前記無機酸は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、ピロ硫酸、リン酸又は硝酸から選ばれる少なくとも1つであり、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、カンファー酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、パモン酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、ヘミ硫酸又はチオシアン酸から選ばれる少なくとも1つであり、
或いは、前記薬学的に許容される塩は、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又は生理学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基と形成された塩である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記塩は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、モルホリン、ピペリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルグルカミン、ジメチルグルカミン、エチルグルカミン、リジン、ジシクロヘキシルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、エタノールアミン、グルコサミン、メグルミン、サルコシン、セリノール、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノプロパンジオール及び1-アミノ-2,3,4-ブタントリオールのうちの少なくとも1つと形成された塩である、
ことを特徴とする請求項5に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
以下のステップを含む:
1)化合物Aにおけるアミノ基をジアゾ化し、そしてNa
2Se
2と反応させて化合物Bを調製する:
【化4】
式中、A
1、A
2、A
3、A
4、RとR
1は請求項1~3の何れか一項に記載の定義を有し、
2)化合物Bを塩化チオニルと反応させて化合物Cを調製する:
【化5】
3)化合物CをH
2N-R
1-NHBocと反応させて化合物Dを調製する:
【化6】
式中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を示し、
4)化合物Dから酸の存在下でBoc保護基を除去して化合物Eを調製する:
【化7】
5)化合物Eを化合物Fと反応させて式(I)に示される化合物を調製する:
【化8】
式中、化合物Fにおいて、R
2は塩素、臭素、ヒドロキシ基又は-OR
3から選ばれ、
R
3はC
1-6アルキル基、スクシンイミジル基、tert-ブトキシカルボニル基、メチルスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル、イソブチルオキシカルボニル基から選ばれる、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項8】
前記ステップ1)におけるNa
2Se
2は、セレン単体及び亜ジチオン酸ナトリウムを調製して得られ、
前記ステップ2)は、触媒量のDMFの存在下で行われ、
前記ステップ4)における酸は塩酸であり、
前記ステップ4)は、有機溶剤中で行われる、
ことを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記化合物Fは、商業的に購入されてもよく、又は本分野における一般的な方法によって取得されてもよく、又は以下のステップによって調製されて得られてもよい:
a)化合物TMZ、即ち、テモゾロミドにより硫酸と亜硝酸ナトリウムの作用で化合物F-1を取得する:
【化9】
及び任意選択なステップb):化合物F-1を触媒量のDMFの存在下で、塩化チオニル又は臭化チオニルと反応させて化合物F-2を取得する:
【化10】
又は任意選択なステップc):化合物F-1を更に反応させてR
2が-OR
3である化合物Fを取得し、式中、R
3はC
1-6アルキル基、スクシンイミジル基、tert-ブトキシカルボニル基、メタンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又はイソブチルオキシカルボニル基であり、
前記ステップc)は、以下のステップc-1)、ステップc-2)、ステップc-3)、ステップc-4)又はステップc-5)から選ばれる:
ステップc-1):化合物F-1とR
4OHにより酸の作用下で化合物F-3を生成する:
【化11】
式中、R
4はC
1-6アルキル基であり、
ステップc-2):化合物F-1とR
5Clにより塩基の作用下で化合物F-4を生成する:
【化12】
式中、R
5はメタンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基又はp-トルエンスルホニル基であり、
ステップc-3):化合物F-1をN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させて化合物F-5を取得する:
【化13】
ステップc-4):化合物F-1を二炭酸ジ-tert-ブチルと反応させて化合物F-6を取得する:
【化14】
ステップc-5):化合物F-1をクロロギ酸イソブチルと反応させて化合物F-7を取得する:
【化15】
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の調製方法。
【請求項10】
医薬組成物であって、前記医薬組成物は、請求項1~6の何れか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む、
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は、経腸、局所又は非経口投与に適用される、
ことを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物は、経口投与、注射、インプラント、外用、スプレー又は吸入に適用される、
ことを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記経口投与に適用される前記経口医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、経口液体製剤、顆粒剤、注射剤、外用剤又は粉末剤の何れか1つである、
ことを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記錠剤は、普通錠、バッカル錠、舌下錠、口腔貼付剤、チュアブル錠、分散錠、溶解錠、発泡錠、膣錠、膣内発泡錠、持続放出錠、制御放出錠、腸溶錠又は経口速放錠であり、
前記カプセル剤は、ハードカプセル、ソフトカプセル、持続放出カプセル、制御放出カプセル又は腸溶性カプセルであり、
前記丸剤は、ドリッピングピル、シュガーピル又は小丸薬を含み、
前記経口液体製剤は、シロップ剤、懸濁剤、経口液剤、経口懸濁剤、経口エマルジョン、シロップ剤、混合剤、ディスティレート又は塗布剤であり、
前記顆粒剤は、懸濁顆粒、発泡顆粒、腸溶性顆粒、持続放出顆粒又は制御放出顆粒であり、
前記注射剤は、注射液、注射用無菌粉末又は無菌塊状物、輸液・注射用濃縮液の何れか1つであり、
前記外用剤は、坐剤、エアロゾル剤、粉末吸入剤、スプレー剤、フィルム剤、ゲル剤、パッチ剤、ゼリー剤、硬膏剤、膏薬、軟膏剤、塗布剤、ローション剤、塗布薬及びクリーム剤の何れか1つである、
ことを特徴とする請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物は、包接製剤又は分散製剤である、
ことを特徴とする請求項10~14の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~6の何れか一項に記載の化合物又は前記その薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される持続/制御放出担体と合わせて、持続/制御放出製剤の一般的な調製方法によって持続/制御放出製剤に調製されてもよい、
ことを特徴とする請求項10~15の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~6の何れか一項に記載の化合物又はは前記その薬学的に許容される塩は、
遅延剤コーティングを添加してもよいし、
マイクロカプセル化した後にペレットを作製してもよい、
ことを特徴とする請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~6の何れか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は請求項10~17の何れか一項に記載の医薬組成物の使用であって、下記(i)~(iii)の何れかである使用:
(i)チオレドキシン還元酵素(TrxR)阻害剤の調製における使用;
(ii)TrxR発現のアップレギュレーション又は活性の向上に相関する疾患又は病状を治療又は緩和する薬物の調製における使用;
(iii)腫瘍を治療する薬物の調製における使用。
【請求項19】
前記腫瘍は、神経膠腫、肺がん、肝がん、白血病、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、胃がん、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、軟部組織肉腫、尿道がん、前立腺がん、リンパ細胞腫、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、肺がん、肝がん又は白血病から選ばれる何れか1つである、
請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記腫瘍は、神経膠腫である、
請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年4月13日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010287745.6で、発明名称が「テトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物及びその合成方法と応用」である特許出願の優先権を主張する。当該先行出願の全内容は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、医薬分野に属し、具体的には、テトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物の合成方法、及び腫瘍、特に神経膠腫を治療するための薬物の調製におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
神経膠腫は、よく見られる原発性頭蓋内腫瘍であり、頭蓋内腫瘍の50%以上を占め、その罹患率が全身性悪性腫瘍の1~3%を占め、患者の全生存期間中央値がわずか12~15ヶ月である。神経膠腫のほとんどは浸潤性増殖を示し、正常な脳組織と明らかな組織学的境界がないため、手術による切除で神経膠腫を根治することが非常に困難である。なお、放射線治療法(RT)も、臨床上一般的に使用される治療法であり、通常の放射線治療、3次元原体放射線治療及び定位放射線治療などを含む。しかし、神経膠腫は、その細胞自身が放射線治療に対する感受性が高くなく、サブタイプによって差異があり、放射線治療の効果が向上し難くて、一定の治療効果を得るために薬物療法と併用しなければならない。ところが、血液脳関門の存在のため、多くの薬物は腫瘍の位置する部位に効果的に作用することができず、腫瘍に対する殺傷効果が限られてしまう。テモゾロミド(TMZ)は、新世代のアルキル化剤として、経口投与後に急速に吸収されることが可能で、高効率、低毒性、広域スペクトルの特徴を有する。生理的条件下で、TMZは、細胞毒性作用を有するジアゾメタンに最終的に転換され、グアニンO6部位でメチル化されて細胞毒性を発生可能なことが、その殺傷作用が発揮される要因である。単独で応用されても、放射線治療と一緒に神経膠腫の治療に応用されても、TMZは比較的良い治療効果を有する。現在、テモゾロミドの主な臨床プロトコールは「stupp」プロトコールであり、即ち、放射線治療とテモゾロミドによる補助化学療法とを同期させ、放射線治療終了後の1ヶ月に、TMZで補助化学療法を行い、28日間を1サイクルとして、投薬時間が連続5日間、1日1回で、間隔が23日間である。第1サイクルは150 mg/m2/d×5日間であり、第2~6サイクルは200 mg/m2/d×5日間である。Stuppプロトコールで治療された患者の全生存期間中央値は14.6ヶ月であるが、単独でRTが使用された患者の全生存期間中央値は12.1ヶ月である。
【0004】
一定の成果が得られたが、TMZにはいくつかの欠点がある。まず、効率はまだ理想的とは言えない。次に、副作用は比較的多く、患者には、骨髄抑制、胃腸への副作用、末梢神経毒性などの副作用が出てしまう。更に、薬剤耐性という問題もあり、O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)は、直接的にメチル基を切除してTMZの機能を失わせることができる。また、多剤耐性(MDR)にもなりやすい。これらは、神経膠腫へのTMZ化学療法が失敗になる要因である。
【0005】
チオレドキシンシステム(TRXシステム)は、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、チオレドキシン(Trx)及びチオレドキシン還元酵素(TrxR)の3つの部分を含み、そのうち、TrxRは、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)ドメインを含むNADPH依存性の二量体セレン酵素である。哺乳類TrxRは、細胞核におけるTrxR1、ミトコンドリアにおけるTrxR2及び精巣にあるTrxR3の3つのサブタイプを有する。TRXシステム全体内部の電子移動は、
図1に示すように、完全に酸化された酵素がNADPHから電子を受け取り、そして完全に還元された酵素を形成する。最後に、基質が還元され、ここで、C端末セレノチオールペアは電子を伝達する機能を発揮し、これに基づき、TrxRは酸化還元を調節する役割を果たす。
【0006】
TRXシステムは、直接的に酸化を防止すると共に、他の抗酸化酵素をサポートすることができ、外因性物質又は発がん物質による酸化ストレスを防御することにより、正常な細胞の悪性腫瘍への転換を予防することに有利である。腫瘍の進行と転移において、TrxR/Trxレベルの上昇は、細胞の増殖を促進し、細胞アポトーシスを抵抗し、血管新生を促進する機能があるため、腫瘍の成長を促進する可能性がある。
【0007】
TRXシステムは、腫瘍の発生・進行・転移中に重要な意義を持ち、腫瘍細胞において内部環境の恒常性を維持し、増殖と血管新生を促進する重要なシステムである。
【0008】
TrxRは、脳腫瘍において高発現状態を示し、433例の海綿芽細胞腫の臨床データに対する分析によると、チオレドキシン還元酵素1(TrxR1)は、66%超えの症例においてアップレギュレーションされたことが明らかになり、これは、より強い増殖活性とより悪い予後に明らかに関連している。従って、TrxR標的についての神経膠腫の治療研究は急務である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、式(I)に示されるテトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する:
【化1】
そのうち、A
1、A
2、A
3とA
4は相同又は相異であり、互いに独立的にCH又はNから選ばれ、且つ多くとも1つがNであり、A
1、A
2、A
3又はA
4がCHである場合に、それにおける水素原子はRで置換可能であり、そのうち、Rは水素、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、ニトロ基或いは1つ又は複数のRaで置換されたアミノ基、スルフヒドリル基、アシルアミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロシクリル基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれ、それぞれのRaは互いに独立的に水素、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、スルフヒドリル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれ、R
1はアルキレン基から選ばれる。
【0010】
本発明の実施形態によれば、Rは水素、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、ニトロ基或いは1つ又は複数のRaで置換されたアミノ基、スルフヒドリル基、アシルアミノ基、C1-10アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C1-10アルコキシ基、3~10員ヘテロシクリル基、C6-14アリール基、5~14員ヘテロアリール基から選ばれ、それぞれのRaは互いに独立的に水素、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、スルフヒドリル基、C1-10アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C1-10アルコキシ基、3~10員ヘテロシクリル基、C6-14アリール基、5~14員ヘテロアリール基から選ばれ、R1はC1-10アルキレン基から選ばれる。
本発明の実施形態によれば、Rは水素、ハロゲン或いは1つ又は複数のRaで置換されたC1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、フェニル基、ピリジル基から選ばれ、それぞれのRaは互いに独立的に水素、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、フェニル基、ピリジル基から選ばれ、R1はC1-6アルキレン基から選ばれる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、Rは水素、ハロゲン、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基から選ばれる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、Rは水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基とイソペンチルオキシ基から選ばれる。
【0013】
好ましくは、前記テトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物の構造は、式(II)に示される通りである:
【化2】
そのうち、A
1はCH又はNから選ばれ、nは1、2、3、4、5又は6であり、Rは上記の定義を有する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、Rは水素、ハロゲン、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基から選ばれる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、Rは水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基とイソペンチルオキシ基から選ばれる。
【0016】
好ましくは、前記テトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物は、以下の表1における化合物から選ばれる。
【表1】
【0017】
本発明の実施形態によれば、式(I)又は式(II)に示される化合物の薬学的に許容される塩は、前記化合物と無機酸又は有機酸で形成された酸付加塩を含み、前記無機酸は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、ピロ硫酸、リン酸又は硝酸から選ばれる少なくとも1つであり、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、カンファー酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、パモン酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、ヘミ硫酸又はチオシアン酸から選ばれる少なくとも1つであり、
或いは、式(I)又は式(II)に示される化合物の薬学的に許容される塩は、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又は生理学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基と形成された塩であり、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、モルホリン、ピペリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルグルカミン、ジメチルグルカミン、エチルグルカミン、リジン、ジシクロヘキシルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、エタノールアミン、グルコサミン、メグルミン、サルコシン、セリノール、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノプロパンジオール、1-アミノ-2,3,4-ブタントリオールという物質のうちの少なくとも1つと形成された塩である。
【0018】
本発明は、以下のステップを含む、式(I)に示される化合物の調製方法を更に提供する:
1)化合物Aにおけるアミノ基をジアゾ化し、そしてNa
2Se
2と反応させて化合物Bを調製する:
【化3】
そのうち、A
1、A
2、A
3、A
4、RとR
1は上記の定義を有し、
2)化合物Bを塩化チオニルと反応させて化合物Cを調製する:
【化4】
3)化合物CをH
2N-R
1-NHBocと反応させて化合物Dを調製する:
【化5】
そのうち、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を示し、
4)化合物Dから酸の存在下でBoc保護基を除去して化合物Eを調製する:
【化6】
5)化合物Eを化合物Fと反応させて式(I)に示される化合物を調製する:
【化7】
そのうち、化合物Fにおいて、R
2は塩素、臭素、ヒドロキシ基又は-OR
3から選ばれ、そのうち、R
3はC
1-6アルキル基、スクシンイミジル基、tert-ブトキシカルボニル基、メチルスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル、イソブチルオキシカルボニル基から選ばれる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記ステップ1)におけるNa2Se2は、セレン単体と亜ジチオン酸ナトリウムで調製されて得られてもよい。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記ステップ2)は、触媒量のDMFの存在下で行われてもよい。本発明の実施形態によれば、前記ステップ4)における酸は、塩酸であってもよい。また、前記ステップ4)は、有機溶剤、例えば、酢酸エチルにおいて行われてもよい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、化合物Fは、商業的に購入されてもよく、又は本分野における一般的な方法によって取得されてもよく、又は以下のステップによって調製されて得られてもよい:
a)化合物TMZ、即ち、テモゾロミドにより硫酸と亜硝酸ナトリウムの作用で化合物F-1を取得する:
【化8】
及び任意選択なステップb):化合物F-1を触媒量のDMFの存在下で、塩化チオニル又は臭化チオニルと反応させて化合物F-2を取得する:
【化9】
又は任意選択なステップc):化合物F-1を更に反応させてR
2が-OR
3である化合物Fを取得し、そのうち、R
3はC
1-6アルキル基、スクシンイミジル基、tert-ブトキシカルボニル基、メタンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又はイソブチルオキシカルボニル基である。
【0022】
前記ステップc)は、以下のステップc-1)、ステップc-2)、ステップc-3)、ステップc-4)又はステップc-5)から選ばれる:
ステップc-1):化合物F-1とR
4OHにより酸の作用下で化合物F-3(即ち、R
2が-OR
3、且つR
3がC
1-6アルキル基である化合物F)を生成する:
【化10】
そのうち、R
4はC
1-6アルキル基であり、
ステップc-2):化合物F-1とR
5Clにより塩基の作用下で化合物F-4(即ち、R
2が-OR
3、且つR
3がメタンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基又はp-トルエンスルホニル基である化合物F)を生成する:
【化11】
そのうち、R
5はメタンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基又はp-トルエンスルホニル基であり、
ステップc-3):化合物F-1をN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させて化合物F-5(即ち、R
2が-OR
3、且つR
3がスクシンイミジル基である化合物F)を取得する:
【化12】
ステップc-4):化合物F-1を二炭酸ジ-tert-ブチルと反応させて化合物F-6(即ち、R
2が-OR
3、且つR
3がtert-ブトキシカルボニル基である化合物F)を取得する:
【化13】
ステップc-5):化合物F-1をクロロギ酸イソブチルと反応させて化合物F-7(即ち、R
2が-OR
3、且つR
3がイソブチルオキシカルボニル基である化合物F)を取得する:
【化14】
【0023】
本発明は、式(I)に示されるテトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を更に提供する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、経腸、局所又は非経口投与、例えば、経口投与、注射、インプラント、外用、スプレー又は吸入などの投与方法に適用される。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記経口医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、経口液体製剤、顆粒剤、注射剤、外用剤又は粉末剤の何れか1つであってもよい。
【0026】
前記錠剤は、普通錠、バッカル錠、舌下錠、口腔貼付剤、チュアブル錠、分散錠、溶解錠、発泡錠、膣錠、膣内発泡錠、持続放出錠、制御放出錠、腸溶錠又は経口速放錠であってもよく、前記カプセル剤は、ハードカプセル、ソフトカプセル、持続放出カプセル、制御放出カプセル又は腸溶性カプセルであってもよく、前記丸剤は、ドリッピングピル、シュガーピル又は小丸薬を含み、前記経口液体製剤は、シロップ剤、懸濁剤、経口液剤、経口懸濁剤、経口エマルジョン、シロップ剤、混合剤、ディスティレート又は塗布剤であってもよく、前記顆粒剤は、懸濁顆粒、発泡顆粒、腸溶性顆粒、持続放出顆粒又は制御放出顆粒であってもよい。前記注射剤は、注射液、注射用無菌粉末又は無菌塊状物、輸液・注射用濃縮液の何れか1つであってもよい。前記外用剤は、坐剤、エアロゾル剤、粉末吸入剤、スプレー剤、フィルム剤、ゲル剤、パッチ剤、ゼリー剤、硬膏剤、膏薬、軟膏剤、塗布剤、ローション剤、塗布薬及びクリーム剤の何れか1つであってもよい。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、本分野で良く知られている製剤技術により調製することができる。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、包接製剤又は分散製剤であってもよい。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記薬学的に許容される担体は、本分野で良く知られている上記製剤を調製するための一般的な賦形剤又は補助材料であり、ここで、経口製剤又は外用剤に良く使用される賦形剤又は補助材料は、充填剤、希釈剤、潤滑剤、流動促進剤、付着防止剤、分散剤、湿潤剤、結合剤、調整剤、溶解補助剤、酸化防止剤、静菌剤、乳化剤などを含むが、これらに限定されない。
【0030】
前記結合剤は、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、セルロース及びその誘導体、ゼラチン粘液、シロップ、デンプンスラリー、ポリビニルピロリドンであり、好ましいセルロース誘導体は、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、前記充填剤は、例えば、ラクトース、粉糖、デキストリン、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、無機カルシウム塩、ソルビトール又はグリシンであり、前記無機カルシウム塩は、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウムが好ましく、前記潤滑剤は、例えば、フュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、タルク粉末、水酸化アルミニウム、ホウ酸、硬化植物油、ポリエチレングリコールであり、前記崩壊剤は、例えば、デンプン及びその誘導体、ポリビニルピロリドン又は微結晶性セルロースであり、前記デンプン誘導体は、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファー化デンプン、加工デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、トウモロコシデンプンが好ましく、前記湿潤剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、水又はアルコールであり、前記賦形剤は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、Celadon102CG、ポビドン(PVP)-Kシリーズ(ポリビドンK30(PVPK30)を含む)、タルク粉末、ステアリン酸マグネシウムやエタノールなどが好ましい。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記注射剤によく使用される賦形剤又は補助材料は、酸化防止剤、静菌剤、pH調整剤、乳化剤、溶解補助剤を含む。
【0032】
前記酸化防止剤は、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチル安息香酸又はピロ亜硫酸ナトリウムを含み、前記静菌剤は、フェノール、クレゾール、クロロブタノールを含み、好ましくは0.5%のフェノール、0.3%のクレゾール、0.5%のクロロブタノールであり、前記pH調整剤は、塩酸、枸櫞酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、枸櫞酸ナトリウム、リン酸二酸素ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウムを含み、前記乳化剤は、ポリソルベート80、脂肪酸ソルビタン、プルロニックF-68、レシチン、大豆レシチンを含み、前記溶解補助剤は、ツイーン80、グリセリンを含む。
【0033】
本発明の実施形態によれば、式(I)に示される化合物又は前記その薬学的に許容される塩と薬学的に許容される持続/制御放出担体とを、持続/制御放出製剤の一般的な調製方法によって持続/制御放出製剤に調製してもよい。例えば、遅延剤コーティングを添加し、或いは式(I)に示される化合物又は前記その薬学的に許容される塩をマイクロカプセル化した後にペレット、例えば、持続放出ペレット又は制御放出ペレットを作製してもよい。
【0034】
前記持続/制御放出担体は、油性添加剤、親水性コロイド又はコーティング遅延剤を含むが、これらに限定されず、前記油脂性添加剤は、モノステアリン酸グリセリン、硬化ヒマシ油、鉱物油、ポリシロキサン又はジメチルシロキサンを含み、前記親水性コロイドは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、アラビアゴム、トラガカント、又はカーボポールを含み、前記コーティング遅延剤は、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、アクリル樹脂を含む。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、必要な投与方法によって、前記医薬組成物は、約1~99重量%の式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容される塩の何れか1つ又はその組合と、1~99重量%の薬学的に許容される担体とを含む。
【0036】
本発明は、式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いはそれを含む医薬組成物の、チオレドキシン還元酵素(TrxR)活性を阻害するための応用、又はチオレドキシン還元酵素(TrxR)阻害剤を調製するための応用を更に提供する。
【0037】
本発明は、式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いはそれを含む医薬組成物の、TrxR発現のアップレギュレーション又は活性の向上に相関する疾患又は病状を治療又は緩和するための応用、又はTrxR発現のアップレギュレーション又は活性の向上に相関する疾患又は病状を治療又は緩和する薬物の調製における応用を更に提供する。
本発明は、式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いはそれを含む医薬組成物の、腫瘍を治療するための応用、又は腫瘍を治療する薬物の調製における応用を更に提供する。
【0038】
本発明は、チオレドキシン還元酵素(TrxR)活性の阻害に用いられ、TrxR発現のアップレギュレーション又は活性の向上に相関する疾患又は病状の治療又は緩和に用いられ、腫瘍の治療に用いられ、腫瘍を治療する方法に用いられ、腫瘍を治療する薬物の調製に用いられる、式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いはそれを含む医薬組成物を更に提供する。
【0039】
本発明は、被験者において、TrxR発現のアップレギュレーション又は活性の向上に相関する疾患又は病状を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする被験者に治療有効量の式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いはそれを含む医薬組成物を投与すること含む方法を更に提供する。
【0040】
本発明は、被験者の腫瘍を治療する方法であって、それを必要とする被験者に治療有効量の式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いはそれを含む医薬組成物を投与することを含む方法を更に提供する。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記TrxR発現のアップレギュレーション又は活性の向上に相関する疾患又は病状は腫瘍であり、前記腫瘍は、神経膠腫、肺がん、肝がん、白血病、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、胃がん、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、軟部組織肉腫、尿道がん、前立腺がん、リンパ細胞腫、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、肺がん、肝がん又は白血病の何れか1つを含むが、これらに限定されず、好ましくは神経膠腫である。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係るテトラジン置換基を含むアロイソセレナゾール化合物は、TrxR標的を標的とする特徴を有し、TrxRが腫瘍増殖調節酵素であるため、腫瘍増殖マーカーという特徴を有する。しかも、神経膠腫において、TrxRは、高発現のいくつかの公認された腫瘍マーカーであるため、TrxR阻害を標的とする化合物は、神経膠に対して良好な抗腫瘍効果を有する。現在、化合物は、体内レベルでも体外レベルでも各神経膠腫細胞株の増殖を比較的に効率良く阻害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】TRXシステム内部の電子移動の模式図である。
【
図2】化合物1による担腫瘍(U87)マウスの体重への影響を示す。
【
図3】化合物1による担腫瘍(U87)マウスの腫瘍体積への影響を示す。
【
図4】化合物1による担腫瘍(U87)マウスの腫瘍重量への影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
〔用語の定義と説明〕
「アルキル基」という用語は、1~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基を示すと理解すべきである。例えば、「C1-10アルキル基」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖アルキル基を示す。前記アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基や1,2-ジメチルブチル基など又はそれらの異性体である。
「アルコキシ基」という用語は、-O-C1-10アルキル基であると理解すべきであり、そのうち、C1-10アルキルは、上記の定義を有する。
【0045】
「シクロアルキル基」という用語は、3~20個の炭素原子を有する飽和一価単環式又は二環式炭化水素環を示すと理解すべきである。「C3‐10シクロアルキル基」という用語は、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する飽和一価単環式又は二環式炭化水素環を示すと理解すべきである。前記C3-10シクロアルキル基は、単環式炭化水素基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基又はシクロデシル基であってもよく、或いは二環式炭化水素、例えば、デカリン環であってもよい。
【0046】
本文において、「アルキレン基」は二価アルキル基を示し、例えば、C1-10アルキレン基は、二価C1-10アルキル基を示す。
【0047】
「ヘテロシクリル基」という用語は、3~20個の原子を含む飽和一価単環式又は二環式炭化水素環を指し、それは、N、OとSから独立的に選ばれる1~5個のヘテロ原子を含み、好ましくは「3~10員ヘテロシクリル基」である。「3~10員ヘテロシクリル基」という用語は、N、O及びSから選ばれる1~5個、好ましくは1~3個のヘテロ原子を含む飽和一価単環式又は二環式炭化水素環を指す。前記ヘテロシクリル基は、前記炭素原子の何れか1つ又は窒素原子(存在する場合)で分子の残りの部分と連結してもよい。特に、前記ヘテロシクリル基は、アゼチジニル基、オキセタニル基などの4員環、テトラヒドロフラニル基、ジオキソリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリニル基などの5員環、又はテトラヒドロピラニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ジチアニル基、チオモルホリニル基、ピペラジニル基やトリチアニル基などの6員環、又はジアゼパニル基などの7員環を含むが、これらに限定されない。任意選択的に、前記ヘテロシクリル基はベンゾ縮合のものであってもよい。前記ヘテロシクリル基は、二環式であってもよく、例えば、ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-イル環などの5,5員環、又はヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2(1H)-イル環などの5,6員二環を含むが、これらに限定されない。窒素原子含有の環は部分的に不飽和のものであってもよく、即ち、1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、例えば、2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル基、4H-[1,3,4]チアジアジニル基、4,5-ジヒドロオキサゾリル基又は4H-[1,4]チアジニル基を含んでもよいが、これらに限定されず、或いは、それはベンゾ縮合のもの、例えば、ジヒドロイソキノリニル基であってもよいが、これに限定されない。本発明によれば、前記ヘテロシクリル基は非芳香族性のものである。
【0048】
「アリール基」という用語は、6~20個の炭素原子、好ましくは6~14個の炭素原子を有する一価芳香族性又は部分的芳香族性の単環式、二環式又は三環式炭化水素環であり、好ましくは「C6-14アリール基」であると理解すべきである。「C6-10アリール基」という用語は、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の炭素原子を有する一価芳香族性又は部分的芳香族性の単環式、二環式又は三環式炭化水素環(「C6-14アリール基」)、特に、6個の炭素原子を有する環(「C6アリール基」)、例えば、フェニル基、又はビフェニル基、又は9個の炭素原子を有する環(「C9アリール基」)、例えば、インダニル基やインデニル基、又は10個の炭素原子を有する環(「C10アリール基」)、例えば、テトラヒドロナフチル基、ジヒドロナフチル基やナフチル基、又は13個の炭素原子を有する環(「C13アリール基」)、例えば、フルオレニル基、又は14個の炭素原子を有する環(「C14アリール」)、例えば、アントリル基を示すと理解すべきである。前記C6-14アリール基は置換される場合、単一又は複数の置換であってもよい。しかも、その置換部位は限定されず、例えば、オルト、パラ、又はメタ置換であってもよい。
【0049】
「ヘテロアリール基」という用語は、3~20個の環原子を有し、且つN、OとSから独立的に選ばれる1~5個のヘテロ原子を含む一価の単環式、二環式又は三環式芳香環基、例えば、「5~14員ヘテロアリール」であると理解すべきである。「5~14員ヘテロアリール基」という用語は、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の環原子、特に5又は6又は9又は10個の炭素原子を有し、且つN、OとSから独立的に選ばれる1~5個、好ましくは1~3個のヘテロ原子を含む一価の単環式、二環式又は三環式芳香環基であり、また更に、何れの場合にもベンゾ縮合のものであってもよいと理解すべきである。特に、ヘテロアリール基は、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、チアジアゾリル基など及びそれらのベンゾ誘導体、例えば、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インダゾリル基、インドリル基、イソインドリル基など、又はピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基など及びそれらのベンゾ誘導体、例えば、キノリル基、キナゾリニル基、イソキノリル基など、又はアゾシニル基、インドリジニル基、プリニル基など及びそれらのベンゾ誘導体、又はシンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基などから選ばれる。
【0050】
「アシルアミノ基」という用語は、Ra-C(=O)-NH-基を指し、そのうち、Raは上記の定義を有する。
【実施例】
【0051】
以下、具体的な実施例に合わせて本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現された技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0052】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって調製することができる。
【0053】
〔実施例1〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号1)
【0054】
1)ビーカーに2-アミノ安息香酸28 gを添加し、更に濃塩酸40 mLと水40 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(18 gが水40 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水100 mLを取ってその中に16 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム17.6 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末16 gを添加し、添加完了後、引き続き3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、2,2'-ジセレノジ安息香酸(25 g、63%)を調製した。
【0055】
2)2,2'-ジセレノジ安息香酸(4 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶である2-セレノクロロベンゾイルクロリド(3 g、59%)を得た。
【0056】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.54 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.4 g、41%))を得た。
【0057】
4)50 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.500 g、1.47 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体、即ち、2-アミノエチル-[1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン]塩酸塩(0.405 g、90%)を得た。
【0058】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.97 g、5.0 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、系溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、75%)を得た。
【0059】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0060】
7)2-アミノエチル-[1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン]塩酸塩(0.611 g、2.2 mmol)をまずトリエチルアミン1 mLと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.363 g、1.7 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、黄色固体である目標化合物(441 mg、62%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.67 (s, 1H), 8.04 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.59 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.40 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 3.94 (s, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.66 - 3.56 (m, 2H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 166.55, 159.92, 139.62, 139.11, 134.44, 131.37, 130.19, 128.43, 127.73, 127.27, 125.85, 125.64, 42.75, 39.41, 36.13.
【0061】
〔実施例2〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-5-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号2)
【0062】
1)ビーカーに2-アミノ-5-フルオロ安息香酸7.75 gを添加し、更に濃塩酸15 mLと水15 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(4.35 gが水10 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水30 mLを取ってその中に4 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム4.35 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末4 gを添加し、添加完了後、引き続き2~3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、5,5'-ジフルオロ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(6 g、55%)を調製した。
【0063】
2)5,5'-ジフルオロ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(4.36 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶、即ち、5-フルオロ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(3.25 g、60%)を得た。
【0064】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に5-フルオロ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.72 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-5-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.22 g、34%)を得た。
【0065】
4)25 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-5-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.359 g、1.00 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体、即ち、2-(2-アミノエチル)-5-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(0.251 g、85%)をを得た。
【0066】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.97 g、5.0 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、系溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、75%)を得た。
【0067】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0068】
7)2-(2-アミノエチル)-5-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(222 mg、0.75 mmol)をまずトリエチルアミンと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(107 mg、0.5 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、白色固体である目標化合物(50 mg、23%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.67 (s, 1H), 8.04 (dd, J = 8.6, 4.9 Hz, 1H), 7.63 - 7.44 (m, 2H), 3.94 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.66 - 3.55 (m, 2H).13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 165.62, 165.59, 162.25, 159.95, 159.84, 139.13, 134.61, 134.46, 130.17, 129.40, 129.33, 128.46, 127.88, 127.81, 119.63, 119.39, 113.07, 112.84, 43.01, 38.98, 36.15.
【0069】
〔実施例3〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-6-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号3)
【0070】
1)ビーカーに2-アミノ-6-フルオロ安息香酸7.75 gを添加し、更に濃塩酸15 mLと水15 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(4.35 gが水10 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水30 mLを取ってその中に4 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム4.35 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末4 gを添加し、添加完了後、引き続き3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、4,4'-ジフルオロ-2,2'-ジジセレノジ安息香酸(5.5 g、50%)を調製した。
【0071】
2)4,4'-ジフルオロ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(4.36 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶、即ち、4-フルオロ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(3.00 g、55%)を得た。
【0072】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に4-フルオロ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.72 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-6-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.07 g、30%)を得た。
【0073】
4)25 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-6-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.359 g、1.00 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体、即ち、2-(2-アミノエチル)-6-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(0.275 g、93%)を得た。
【0074】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.97 g、5.0 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、系溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、80%)を得た。
【0075】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0076】
7)2-(2-アミノエチル)-6-フルオロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(222 mg、0.75 mmol)をまずトリエチルアミンと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(107 mg、0.5 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、白色固体である目標化合物(120 mg、55%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.68 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 7.82 (ddd, J = 16.4, 8.8, 3.8 Hz, 2H), 7.26 (td, J = 8.7, 2.1 Hz, 1H), 3.93 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.64 - 3.53 (m, 2H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 165.71, 165.25, 162.77, 160.01, 141.75, 141.65, 139.17, 134.50, 130.18, 129.49, 129.40, 128.50, 124.55, 114.16, 113.92, 112.45, 112.18, 42.85, 38.97, 36.19.
【0077】
〔実施例4〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-5-クロロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号4)
【0078】
1)ビーカーに2-アミノ-5-クロロ安息香酸8.85 gを添加し、更に濃塩酸15 mLと水15 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(4.35 gが水10 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水30 mLを取ってその中に4 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム4.35 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末4 gを添加し、添加完了後、引き続き3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、5,5'-ジクロロ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(5.98 g、51%)を調製した。
【0079】
2)5,5'-ジクロロ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(4.69 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶、即ち、5-クロロ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(3.63 g、63%)を得た。
【0080】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に5-クロロ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.88 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-5-クロロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.12 g、30%)を得た。
【0081】
4)25 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-5-クロロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.375 g、1.00 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体、即ち、2-(2-アミノエチル)-5-クロロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(0.284 g、91%)を得た。
【0082】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.93 g、4.8 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、系溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、80%)を得た。
【0083】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0084】
7)2-(2-アミノエチル)-5-クロロ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(234 mg、0.75 mmol)をまずトリエチルアミンと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(147 mg、0.5 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、白色固体である目標化合物(147 mg、65%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.67 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.64 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.94 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.60 (d, J = 5.6 Hz, 2H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 165.35, 159.98, 139.14, 138.29, 134.46, 131.31, 130.89, 130.18, 129.47, 128.47, 127.77, 126.46, 42.97, 38.98, 36.16.
【0085】
〔実施例5〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-5-ブロモ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号5)
【0086】
1)ビーカーに2-アミノ-5-ブロモ安息香酸10.80 gを添加し、更に濃塩酸15 mLと水15 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(4.35 gが水10 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水30 mLを取ってその中に4 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム4.35 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末4 gを添加し、添加完了後、引き続き3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、5,5'-ジブロモ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(8.37 g、60%)を調製した。
【0087】
2)5,5'-ジブロモ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(5.58 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶、即ち、5-ブロモ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(4.19 g、63%)を得た。
【0088】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に5-ブロモ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(3.33 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-5-ブロモ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.72 g、41%)を得た。
【0089】
4)25 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-5-ブロモ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.420 g、1.00 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体、即ち、2-(2-アミノエチル)-5-ブロモ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(0.338 g、95%)を得た。
【0090】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.97 g、5.0 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、80%)を得た。
【0091】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0092】
7)2-(2-アミノエチル)-5-ブロモ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(267 mg、0.75 mmol)をまずトリエチルアミンと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(107 mg、0.5 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、白色固体である目標化合物(151 mg、61%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.66 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 8.12 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.92 - 7.84 (m, 1H), 7.74 (dd, J = 8.5 Hz, 1H), 3.92 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.59 (q, J = 5.8 Hz, 2H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 165.18, 159.93, 139.25, 139.13, 134.45, 130.21, 130.16, 129.25, 129.06, 128.57, 128.45, 118.74, 42.76, 39.05, 36.16.
【0093】
〔実施例6〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-5-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号6)
【0094】
1)ビーカーに2-アミノ-5-メチル安息香酸7.75 gを添加し、更に濃塩酸15 mLと水15 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(4.35 gが水10 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水30 mLを取ってその中に4 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム4.35 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末4 gを添加し、添加完了後、引き続き3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、5,5'-ジメチル-2,2'-ジセレノジ安息香酸(5.88 g、54%)を調製した。
【0095】
2)5,5'-ジメチル-2,2'-ジセレノジ安息香酸(4.28 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶である5-メチル-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.84 g、53%)を得た。
【0096】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に5-メチル-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.68 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-5-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.31 g、37%)を得た。
【0097】
4)25 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-5-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.355 g、1.00 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体である2-(2-アミノエチル)-5-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(0.262 g、90%)を得た。
【0098】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.97 g、5.0 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、75%)を得た。
【0099】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0100】
7)2-(2-アミノエチル)-5-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(231 mg、0.75 mmol)をまずトリエチルアミンと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(107 mg、0.5 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、白色固体である目標化合物(147 mg、68%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.66 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.92 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.59 (q, J = 6.1 Hz, 2H), 2.39 (s, 3H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 166.56, 159.93, 139.14, 136.28, 135.22, 134.46, 132.69, 130.18, 128.46, 127.73, 127.32, 125.56, 42.80, 39.22, 36.16, 20.47.
【0101】
〔実施例7〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-5-メトキシ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチルイル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号7)
【0102】
1)ビーカーに2-アミノ-5-メトキシ安息香酸8.35 gを添加し、更に濃塩酸15 mLと水15 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(4.35 gが水10 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水30 mLを取ってその中に4 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム4.35 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末4 gを添加し、添加完了後、引き続き3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、5,5'-ジメトキシ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(5.17 g、45%)を調製した。
【0103】
2)5,5'-ジメトキシ-2,2'-ジセレノジ安息香酸(4.60 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶、即ち、5-メトキシ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.67 g、47%)を得た。
【0104】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に5-メトキシ-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.84 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-5-メトキシ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.67 g、45%)を得た。
【0105】
4)25 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-5-メトキシ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.371 g、1.00 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体、即ち、2-(2-アミノエチル)-5-メトキシベンゾ[d][1,2]セレノアゾ-3(2H)-オン塩酸塩(0.271 g、88%)を得た。
【0106】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.97 g、5.0 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、系溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、80%)を得た。
【0107】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0108】
7)2-(2-アミノエチル)-5-メトキシ-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(231 mg、0.75 mmol)をまずトリエチルアミンと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(107 mg、0.5 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、白色固体である目標化合物(159 mg、71%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.67 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.91 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.23 (dd, J = 8.8, 2.7 Hz, 1H), 3.93 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.87 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 3.60 (q, J = 6.0 Hz, 2H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 166.36, 159.93, 158.14, 139.14, 134.46, 130.43, 130.19, 128.72, 128.46, 126.80, 120.46, 109.69, 55.46, 42.96, 39.23, 36.16.
【0109】
〔実施例8〕
3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-6-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(番号8)
【0110】
1)ビーカーに2-アミノ-6-メチル安息香酸7.75 gを添加し、更に濃塩酸15 mLと水15 mLからなる混合液を添加し、氷浴で、反応温度を5℃以下に保持し、NaNO2(4.35 gが水10 mLに溶解される)の溶液を緩やかに滴下し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、ジアゾニウム塩溶液を調製して使用に備え、水30 mLを取ってその中に4 gのNaOHを添加し、50℃で置いて撹拌して溶解した後、少量で数回に分けて亜ジチオン酸ナトリウム4.35 gを添加し、清澄になった後、セレン粉末4 gを添加し、添加完了後、引き続き3 h反応させ、Na2Se2溶液を調製して使用に備え、撹拌しながら、ジアゾニウム塩をNa2Se2溶液に滴下し、反応温度を5℃以下に保持し、滴下完了後、引き続き2 h反応させ、且つ溶液が塩基性を示すように確保した。反応完了後、混合物を塩酸で酸性化し、ろ過して固体を取得し、水で洗浄した後、乾燥箱に置いて乾燥し、4,4'-ジメチル-2,2'-ジセレノジ安息香酸(5.88 g、55%)を調製した。
【0111】
2)4,4'-ジメチル-2,2'-ジセレノジ安息香酸(4.28 g、10 mmol)に、塩化チオニル(20 mL)と1~2滴のDMFを添加し、5 h撹拌して還流し、塩化チオニルを減圧留去し、残分を石油エーテル(100 mL)で再結晶し、珪藻土でろ過し、ろ液を冷蔵庫に置いて黄色針状結晶、即ち、4-メチル-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.84 g、53%)を得た。
【0112】
3)Boc-エチレンジアミン(1.60 g、10 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、そしてトリエチルアミン1.39 mLを添加し、氷浴で、混合物に4-メチル-2-セレノクロロベンゾイルクロリド(2.68 g、10 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液を緩やかに滴下し、室温まで昇温して3 h反応させ、溶剤を減圧留去し、エーテルを添加して撹拌して白色固体を析出し、順次に水と石油エーテルで洗浄し、固体を乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:ジクロロメタン:メタノール=200:200:1)によって、黄色固体、即ち、(3(2H)-オキソ-6-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.85 g、52%)を得た。
【0113】
4)25 mLの一つ口フラスコに(3(2H)-オキソ-6-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-1-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.355 g、1.00 mmol)を添加し、そして2 Nの塩酸酢酸エチル溶液(5 mL)を添加し、1 h反応させ、溶液は清澄になってから混濁になって白色沈殿を生成し、吸引ろ過し、酢酸エチルで洗浄し、白色固体、即ち、2-(2-アミノエチル)-6-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(0.265 g、91%)を得た。
【0114】
5)室温で、撹拌しながら、TMZ(0.97 g、5.0 mmol)を回数に分けて濃硫酸に添加し、完了後、氷浴でNaNO2(1.3 g、18.8 mmol)水溶液8 mLを滴下し、温度を0℃に制御し、滴下完了後、常温で緩やかに撹拌し、系溶液は黄褐色から緑色ゲル状物へ、更に淡黄色ゲル状物へ変換された。ゲル状物を砕けた氷に注ぎ、激しく撹拌し、溶液は白色スラリーになり、吸引ろ過し、氷水で洗浄して乾燥し、白い無定形固体、即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.75 g、80%)を得た。
【0115】
6)3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-ギ酸(0.585 g、3 mmol)、塩化チオニル30 mLと2滴のDMFを5 h反応させ、溶剤を減圧留去し、少量のトルエンを添加し、トルエンを減圧留去し、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(0.545 g、85%)を得た。
【0116】
7)2-(2-アミノエチル)-6-メチル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン塩酸塩(219 mg、0.75 mmol)をまずトリエチルアミンと、ジクロロメタンにおいて1 h反応させ、氷浴で、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボニルクロリド(107 mg、0.5 mmol)のジクロロメタン溶液を添加し、滴下完了後、室温まで昇温し、一晩反応させ、溶剤を減圧留去し、ジクロロメタン、水、アセトンで固体を洗浄し、乾燥した後、白色固体である目標化合物(153 mg、71%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (s, 1H), 8.67 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.84 (s, 1H), 7.70 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 3.92 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.59 (q, J = 5.9 Hz, 2H), 2.40 (s, 3H). 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 166.55, 159.92, 141.55, 139.78, 139.13, 134.45, 130.18, 128.45, 127.05, 126.98, 125.68, 125.43, 42.70, 38.96, 36.15, 21.46.
【0117】
〔実施例9:本発明に係る化合物の体外抗腫瘍活性の研究〕
MTT法により、本発明に係る化合物1~8によるヒト神経膠腫細胞(U87とLN229)、ヒト肝がん細胞(SMMC-7721)とヒト膵臓がん細胞(Panc1)への体外増殖阻害活性を研究した。
【0118】
対数増殖期にあるU87、LN229、SMMC-7721とPanc1細胞を取って、それぞれ96ウェルプレートに接種し、接種密度は何れも5×104個/mL、180 μL/ウェルであり、細胞が壁に貼り付けた後、1ウェルごとに液剤20 μLを添加し、薬剤最終濃度をそれぞれ0 μM、5 μM、10 μM、20 μMと50 μMにし、48 h作用した後、5 mg/mLのMTT溶液(20 μL/ウェル)を添加し、CO2インキュベーターに置いて3~4 h培養した後、上清を慎重に捨て、残留液体が風乾された後、酸化イソプロピルアルコール(濃塩酸50 μLをイソプロピルアルコール500 mLに溶解する)を添加し、200 mL/ウェルで、シェーカーにより30 min振とうし、結晶が完全に溶解された後、マイクロプレートリーダーの570 nmにおける吸光度OD値を測定し、結果は表2に示された。
細胞生存率%=(投薬細胞OD-ブランク群OD)/(対照細胞OD-ブランク群OD)×100
細胞殺傷率%=1-細胞生存率%
【0119】
【0120】
表2における実験結果から明らかなように、ヒト神経膠腫U87細胞株において、本発明に係る化合物1及び3~8のIC50は何れもTMZよりも著しく低かった。ヒト神経膠腫LN229細胞株において、本発明に係る化合物は何れも良好な阻害活性を示し、特に化合物6のIC50はTMZよりも著しく低く、化合物3、5と8のIC50はTMZに相当した。ヒト肝がんSMMC-7721細胞株において、本発明に係る化合物は何れも良好な阻害活性を示し、特に化合物4、5と8のIC50はTMZよりも著しく低く、化合物2と6のIC50はTMZに相当した。ヒト膵臓がんPanc1細胞株において、本発明に係る化合物は何れも良好な阻害活性を示し、特に化合物3、5と8のIC50はTMZよりも著しく低く、残りの化合物のIC50はTMZに相当した。
【0121】
〔実施例10:本発明に係る化合物1の体内抗腫瘍活性の研究〕
本実験は、化合物1(即ち、3,4-ジヒドロ-3-メチル-4-オキソ-N-(3(2H)-オキソ-ベンゾイソセレナゾール-2-イル)-エチル-イミダゾ[5,1-d]-1,2,3,5-テトラジン-8-カルボキサミド(動物実験におけるコード名が0409)の体内抗腫瘍活性を調べた。
【0122】
本研究は、体重が12~17 gの4週齢の健康な雌Balb/c Nudeヌードマウスを採用してランダムに群分けし、それぞれ対照群とテモゾロミド群に8匹ずつ、0409低用量群と0409高用量群に4匹ずつがいた。ヒト神経膠腫U87細胞懸濁液2×10
7/mLを準備し、ヌードマウスの右脇の下に0.1 mLを接種し、即ち、接種量が2×10
6個/匹であった。腫瘍発生率は100%であった。接種後の12日目から投与し、11日間投与し続けた。投与量は以下の通りであった:ブランク対照群(5‰のカルボキシメチルセルロースナトリウム、1日に1回経口投与)、テモゾロミド群(30 mg・kg
-1、i.g.、q.d.)、0409低用量群(45 mg・kg
-1、、i.g.、q.d.)、0409高用量群(90 mg・kg
-1、、i.g.、q.d.)。そのうち、テモゾロミド群、0409低用量群、0409高用量群の溶剤は酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)であり、即ち、酢酸ナトリウム18 gを取り、氷酢酸9.8 mLを添加し、そして水を添加して1000 mLに希釈した。毎日、使用する時に調製した。22日間連続して毎日マウスの状態を観察し、且つ体重と腫瘍体積を記録した。腫瘍体積が100 mm
3に達することを基準としてマウスが腫瘍を発生したかどうかを判断した。結果は表3、
図2、3、4に示された。
【0123】
【0124】
[結論]
図2は、投与期間における投与前と投与後11日目の各群のマウスの体重変化状況であった。対照群、テモゾロミド(TMZ)群、0409低用量(0409L)群と0409高用量(0409H)群は、投与後11日目のマウスの体重が、それぞれ投与前のマウスの体重の1.01倍、0.91倍、1.02倍と1.02倍であった。TMZ群の体重は明らかに下がり、TMZの毒性を反映したが、他の群の薬物はマウスに対して明らかな毒性と副作用がなかった。
【0125】
ヌードマウスの腫瘍体積及び腫瘍重量を統計し、結果を表3、
図3及び
図4に示した。各投与群の腫瘍体積及び腫瘍重量は対照群と比べると、何れも統計的差異を有した。まず、TMZ群は腫瘍体積が209.18±57.83 mm
3であり、腫瘍重量が0.29±0.07 gであり、0409低用量群は腫瘍体積が96.70±24.08 mm
3であり、腫瘍重量が0.20±0.10 gであり、0409高用量群は腫瘍体積が90.00±32.64 mm
3であり、腫瘍重量が0.12±0.04 gであった。テモゾロミドと比べると、0409の薬効は明らかに改善された。次は、0409低用量群と高用量群の腫瘍体積及び腫瘍重量は順次に減少し、且つ0409低/高用量の2つの用量群の腫瘍阻害率はそれぞれ82.78%と83.97%であるので、0409の腫瘍増殖への阻害作用に一定の濃度依存性があることを示した。
【0126】
更に、同時に低用量0409(20 mg・kg-1、i.v.)、とTMZ(10 mg・kg-1、i.v.)を採用して試験し、その体積腫瘍阻害率を測定した。結果は表4に示された。
【0127】
【0128】
〔実施例11:Balb/c Nudeヌードマウスによるヒト神経膠腫細胞U87皮下モデルに対する化合物1、3、6、8の薬力学研究〕
実施例10の試験モデル及び操作過程と同じく、化合物1、化合物3、化合物6、化合物8とTMZの単独投与によるBalb/c Nudeのヒト神経膠腫細胞U87皮下モデル腫瘍増殖への阻害作用を同時に探究した。投与方法:胃内投与(i.p.、q.d.×14日間)。結果は以下の通りであった。
【0129】
1)化合物1(20 mg/Kg)、化合物3(20 mg/Kg)、化合物6(20 mg/Kg)、化合物8(20 mg/Kg)は、この研究用量で体重の低減を示さなかった。当該タイプの薬物は、ヌードマウスに対して明らかな毒性と副作用がないことを示した。
【0130】
投与4日目以降、化合物6群の腫瘍阻害率は、明らかに他の投与群よりも高く、投与7日目以降、化合物3、化合物6、化合物8の3群の腫瘍阻害率は何れも80%以上になった。試験終了時に、各投与群、即ち、TMZ群、化合物1群、化合物3群、化合物6群と化合物8群の腫瘍体積阻害率は、それぞれ14.26%、81.42%、88.01%、92.48%と82.68%であった。表5に示す通りであった。
【0131】
【0132】
チオレドキシン還元酵素は、腫瘍組織において広く高発現され、本発明に係るアロイソセレナゾロン系化合物は、チオレドキシン還元酵素を選択的に認識することができ、比較的良い標的指向性を示している。本発明の薬物は、体内でも体外でも神経膠腫細胞の増殖を非常に効率良く阻害することができ、従来のアロイソセレナゾロン系化合物の応用範囲が著しく拡大される。
【0133】
〔実施例12:本発明に係る化合物の体外抗腫瘍活性の研究〕
実施例9の方法を参考し、ヒト神経膠腫細胞U251MGとU251TRの2種の腫瘍細胞株を選び、SRB法によりテモゾロミドと本発明に係る化合物に対して体外抗がん活性のスクリーニングを行った。各化合物のIC50値(μM)は、以下の表6に示す通りであった。
【0134】
【0135】
表6の実験結果に示されるように、TrxR阻害において、本発明に係る化合物1、3、6と8は何れも5 μM以下であり、そのうち、化合物1のTrxR阻害活性は、TrxR阻害剤陽性薬BSに近い。ヒト神経膠腫細胞株U251MGとU251TRにおいて、本発明に係る化合物のIC50は何れもTMZよりも優れており、テトラジン置換のアロイソセレナゾール化合物は良好な抗神経膠腫細胞株の活性を示したことが明らかになる。そのうち、本発明に係る化合物1、3、5、6と8は、この2つの細胞株において、特に薬剤耐性株U251TRに対するIC50が非常に低く、阻害活性が非常に強い。
【0136】
〔実施例13:本発明に係る化合物のチオレドキシン還元酵素(TrxR)活性の測定〕
測定方法は以下の通りであった。
1. 細胞の総タンパク質(即ち、チオレドキシン還元酵素)を抽出して濃度を測定し、96ウェルプレートにタンパク質サンプル30 μg(それぞれの濃度に3つの二重ウェルを設置する)を添加し、0.1 Mのリン酸ナトリウム緩衝液で体積を80 μLまで補足し、37℃でオーブンにて30 minインキュベーションした。
2. 5 mMのNADPH 20 μL(対照群に同等体積の0.1 Mのリン酸ナトリウム緩衝液を添加する)を添加し、最後に10 mMのDTNB 100 μLと測定待ちの化合物(一般的に5個以上の濃度でIC50を測定する)を添加してから、すぐにマイクロプレートリーダー(FlexStation 3、Molecular Devices)によって405 nmでの吸光度を検出し、1回目の読み取り前に10 s振とうし、15 sごとに1回測定し、30回測定した。最大反応速度を酵素活性指標とした。実験は独立して3回繰り返した。
【0137】
測定結果は、以下の表7に示す通りであった。
【表7】
【0138】
当該測定結果から明らかなように、本発明に係る化合物は良好なチオレドキシン還元酵素(TrxR)阻害活性を有し、特に、化合物1、3、5、6と8のIC50とTrxR阻害剤陽性薬ButaselenのIC50は同じオーダーにあり、極めて良いTrxR阻害活性を示している。本発明に係るアロイソセレナゾロン系化合物は、TrxR阻害剤として使用され、TrxR発現のアップレギュレーション又は活性の向上に相関する疾患又は病状の治療又は緩和に使用可能なことが期待される。
【0139】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神と原則内で行われた何れの修正、等価置換、改良なども、本発明の請求範囲に含まれるべきである。