(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】骨の治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20240620BHJP
A61B 17/60 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B17/60
(21)【出願番号】P 2023536664
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022025907
(87)【国際公開番号】W WO2023002817
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021120914
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518212241
【氏名又は名称】公立大学法人公立諏訪東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】橋元 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】水野 潤
(72)【発明者】
【氏名】関 康弘
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-325383(JP,A)
【文献】特開2000-225161(JP,A)
【文献】国際公開第11/48803(WO,A1)
【文献】特開2014-161434(JP,A)
【文献】特開2014-151123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 7/00
A61B 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折した骨の治療装置であって、
前記骨折した骨に直接接しないように骨折部に設置される振動子と、
前記骨折した骨が変位するように前記振動子を駆動する振動子駆動回路と、
を備え
、
前記振動子として、超音波の音響放射圧によるプッシュパルスを発生させる超音波振動子を用い、前記プッシュパルスによって超音波に比べて低い周波数の機械的振動で前記骨折した骨が変位するように構成されている
ことを特徴とする骨の治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の骨の治療装置において、
超音波に比べて低い前記周波数は、1~100Hzの範囲の周波数である
ことを特徴とする骨の治療装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の骨の治療装置において、
前記超音波振動子として超音波フェーズドアレイを用い、前記超音波フェーズドアレイは前記骨折した骨が動きやすい位置にめがけて前記プッシュパルスを送波可能に構成されている
ことを特徴とする骨の治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、骨折した骨の治療について様々な試みがなされてきた。特開2001-231788号公報(特許文献1)には、これまでに検討された様々な試みが記載されている。例えば、骨折した患部に電極を装着して患部に電気刺激を与える試みがあった。また、患部全体を磁場中に曝して患部に誘導電流を生じさせる試みがあった。更に、特許文献1の発明のように骨折した患部に超音波ビームを照射する試みもあった。なお、特開2002-360598号公報(特許文献2)のように、骨折した骨にピンを刺入してピンを介して骨に振動を与える装置の提案もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-231788号公報
【文献】特開2002-360598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、患部に電極を装着する装置は電極装着が侵襲的であり、骨にピンを刺入する装置も侵襲的であり、いずれも患者への肉体的精神的負担が大きい。また、患部全体を磁場中に曝す装置は、巨大な規模の装置が必要である。また、超音波ビームを照射する装置は、このような欠点を解消するものであり一部実用化されているが、更なる早期治癒が可能な骨の治療装置が要望されている。
また、骨の治療をするとともに、的確な診断が可能な骨の治療・診断装置も要望されている。
【0005】
そこで、本発明は、骨折した骨の更なる早期治癒が可能な骨の治療装置を提供することを目的とする。また、骨の治療をするとともに、的確な診断が可能な骨の治療・診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の骨の治療装置は、骨折した骨の治療装置であって、前記骨折した骨に直接接しないように骨折部に設置される振動子と、前記骨折した骨が変位するように前記振動子を駆動する振動子駆動回路と、を備えることを特徴とする。
なお、例えば、変位を0.2~1.0mm、周波数を1~100Hzとしてもよい。
【0007】
本発明の骨の治療装置によれば、骨折部に設置された振動子が、振動子駆動回路によって駆動され、骨折した骨が変位するため、骨折箇所が刺激され仮骨等の成長が促進される。そのため、骨折した骨の更なる早期治癒が可能な骨の治療装置を提供することが可能となる。なお、振動子は骨折した骨に直接接しないように骨折部に設置されるため、早期治癒が可能でありながら治療対象(人間又は動物)への負担が少ない非侵襲的な治療が可能となる。
【0008】
[8]本発明の骨の治療・診断装置は、骨の治療及び診断をするための骨の治療・診断装置であって、上記の骨の治療装置と、骨折箇所に音波を照射する音波照射子、前記音波照射子を駆動する音波照射子駆動回路、前記骨折箇所からの反射音波又は残留音波を検出する音波検出回路、及び、検出された音波から骨の治癒状況を可視化する表示部を有する骨の診断装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の骨の治療・診断装置によれば、骨の治療装置と診断装置の双方を備えるため、治療装置による骨折した骨の早期治癒、及び、診断装置による治癒状況の的確な診断が可能となる。なお、上記したように、骨の治療装置は、所定の振動子と振動子駆動回路を備えており、これらを用いることにより早期治癒等が可能である。また、診断装置は、音波照射子、音波照射子駆動回路、音波検出子及び表示部を有するため、これらを用いることにより的確な診断が可能である。また、治療装置で治療した後、診断装置で治癒状況を診断し、その状況に応じて又はその状況をフィードバックして治療装置で再び治療する・・というサイクルを回すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る治療装置100を説明するために示す図。
【
図2】ラットの骨の治療装置100を説明するために示す図。
【
図3】実施形態3に係る治療装置130を説明するために示す図。
【
図4】実施形態4に係る治療装置140を説明するために示す図(振動子1を複数用いる場合の設置箇所に関する説明図)。
【
図5】実施形態4に係る治療装置140を説明するために示す図(振動子1を複数用いる場合の駆動波形の説明図)。
【
図6】実施形態5に係る治療装置150を説明するために示す図。
【
図7】実施形態6に係る治療・診断装置300を説明するために示す図(概要説明図)。
【
図8】実施形態6に係る治療・診断装置300を説明するために示す図(処理フローチャート)。
【
図9】実施形態7に係る治療・診断装置310を説明するために示す図。
【
図10】実施形態8に係る治療装置180を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の骨の治療装置及び骨の治療・診断装置について、
図1~
図9を参照して説明する。なお、以下に説明する各図は、実際の形状、構造、方法等を簡略化した模式図である。また、以下の実施形態で説明する骨の治療装置(100等)及び治療・診断装置(300等)は、人間(人体)又は人間以外の動物(例えば犬や猫。動物には鳥等も含む、動物の体)を対象とするものである。
【0012】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る骨の治療装置100(骨治療装置)を説明するために示す図である。
図1に示すように、実施形態1に係る治療装置100は、骨折した骨の治療装置100であって、骨折した骨8aに直接接しないように骨折部80に設置される振動子1と、前記骨折した骨8aが変位するように前記振動子1を駆動する振動子駆動回路2と、を備える。
ここで、「骨折した骨8a」とは、変位させる対象とする任意の骨折した骨をいう。筋肉、皮膚等の生体組織9で覆われている骨折箇所81には骨折した骨8a、8bがあるが、実施形態1で変位させる対象とするのは、そのうちの骨折した骨8aである。
【0013】
骨折部80は骨折箇所81を包含する領域であり、ここにギブス91が形成され、患部を固定・保護する。振動子1はバンド92を用いて骨折した骨8aに直接接しないように(非侵襲的に)骨折部80に固定的に設置される。「直接接しないように」とは、例えば、生体組織9を切開して骨折した骨8aに直接接するように振動子1を取り付けることを回避する趣旨である。骨折した骨8aにピンを刺してピンに振動子1を取り付けることもしない。実施形態1では、骨折した骨8aは生体組織9で覆われており、その外側又は更にギブスの外側に振動子1が設置されることによって、振動子1は骨折した骨に8aに直接接しないように骨折部80に設置される。
図1では振動子1の設置箇所をギブス91の骨(8a)のある側と反対側(ギブス91の外側)にしているが、ギブス91の骨側(ギブス91と生体組織9との間、ギブス91の内側)としてもよい。治療対象は人間又はラットである。
【0014】
実施形態1に係る治療装置100は、振動子1及び振動子駆動回路2を用いて骨折した骨8aが当該骨8aの長手方向D5と交差する方向D1に変位するように構成されている。
つまり、振動子1は、骨折した骨8aの長手方向D5の伸びる範囲内において、生体組織9の外側の骨折部80に設置されている。そのため、振動子1が振動子駆動回路2によって駆動されると、骨折した骨8aが当該骨8aの長手方向D5と交差する方向D1に変位する。なお、「・・を用いて」とはそれ以外のものを用いることを排除する趣旨ではない。また、なお、交差する方向D1とは、長手方向D5に垂直な方向(90°の方向)だけでなく、長手方向D5と80°、60°、45°等で交差する方向も含む。
【0015】
実施形態1に係る治療装置100は、振動子1が振動子駆動回路2による駆動で機械的な変位を生じ、この振動子1の機械的な変位によって骨折した骨8aが変位するように構成されている。そのため、振動子1としては、超音波のような高い周波数で振動するのではなく、超音波に比べて低い周波数の振動モーターを用いる。例えば、楕円状の重りを回転させて振動させる偏心回転質量方式の振動モーターである。
【0016】
図1に示すように、振動子駆動回路2は、振動子1の駆動を指令する振動子駆動指令信号が入力されると、骨折した骨8aが変位するように振動子1を駆動する駆動信号を出力する。振動子1が駆動され機械的に変位すると、それにより骨折した骨8aが変位する。この際、振動子駆動回路2で駆動信号は振幅、周期、波形等を制御し、例えば変位を0.2~1.0mmの範囲になるように、振動子1の振動周波数が1~100Hzの範囲になるように、振動子1の振動を設定しても良い。振動子駆動指令信号が駆動停止の指令信号に変わると、振動子1の振動が停止され、機械的な変位がなくなり、骨折した骨8aは変位しなくなる。なお、
図1には、骨折した骨8aが変位する前の状態を実線で、変位した状態を点線で示す。なお、
図1では骨折した骨8aが図上で上に変位する場合を示しているが下にも変位する。図面が複雑になるため、下に変位する場合の図示は省略する。
【0017】
そして、治療装置100は、振動子1が振動子駆動回路2によって所定の周期で駆動され、当該周期で骨折した骨8aが変位するように構成されている
例えば、振動子1が振動子駆動回路2によって毎日同じ時刻に同じ時間(5分~30分)駆動されるように構成する。振動子1が駆動される時間帯では骨折した骨8aは変位し、駆動されない時間帯では骨折した骨8aの変位は生じない。
また、骨折した骨8aの変位が、例えば0.2~1.0mmの範囲になるように、振動子1の振動を設定する。振動子1の振動周波数は、例えば1~100Hzの範囲に設定する(骨折した骨8aも同様の周波数で変位する)。
【0018】
[実施形態1の効果]
実施形態1に係る治療装置100によれば、振動子1と振動子駆動回路2とを備え、振動子駆動回路2によって骨折した骨8aが変位するように振動子1が駆動されるため、骨折箇所81が刺激され仮骨等の成長が促進される。そのため、骨折した骨8の更なる早期治癒が可能な骨の治療装置100を提供することが可能となる。また、振動子1は骨折した骨8aに直接接しないように骨折部80に設置されるため、非侵襲的な治療が可能である。
【0019】
実施形態1に係る治療装置100によれば、振動子1及び振動子駆動回路2を用いて骨折した骨8aが当該骨8aの長手方向D5と交差する方向D1に変位するように構成されているため、骨折した骨8aをより一層変位させやすい。
なお、骨折した骨8aの変位が0.2~1.0mmの範囲であると、仮骨等の成長が促進されるとともに、形成された仮骨の損傷も回避又は抑制できると思われる。また、振動子1の振動周波数が1~100Hzの範囲であると、仮骨等の成長が促進されやすいと思われる。
また、骨折した骨8aが他の骨8bに対して相対的に変位すると、骨折箇所81へ荷重印加がされ、変位がなくなると抜重状態となることにより、骨折箇所81が刺激され仮骨等の成長が促進されるとの推測もあり得る。
【0020】
また、振動子1として振動モーターを用いると、振動子1(振動モーター)は、振動子駆動回路2による駆動で機械的な変位を生じる。振動子1の機械的な変位によって骨折した骨8aを変位させるため、骨折した骨8aを確実に変位させやすい。
【0021】
また、振動子1が所定の周期で駆動され、当該周期で骨折した骨8aが変位するため、所定の周期で、骨折した骨8aが変位する時間帯と変位しない時間帯とが生ずる。骨折した骨8aが変位する時間帯では骨折箇所81が刺激され、変位しない時間帯ではその刺激によって仮骨等が成長するものと推測される。このような刺激・仮骨等成長のサイクルによって、治癒がより一層促進することが期待できる。
【0022】
[実験用の治療装置100]
図2は、ラットの骨の治療装置100(実験用の治療装置)を説明するために示す図である。
図2は、腓骨が骨切り(完全骨折)されている骨の治療装置100を示す。骨折箇所81は一旦切開されて骨折箇所81に薬剤塗布等して縫合されているか、切開されていないか、のいずれかであるが、いずれにしても骨折した骨(8a、8b)は本来の骨位置に調整された状態となっている。骨折部80は例えばギブス91で固定され、ギブス91の骨折箇所81側と反対側(又は骨折箇所81側、又はギブス91のない箇所)に振動子1が設置される。骨折箇所81は2箇所である。振動子1は、骨折した骨8a(2つ)の長手方向D5の伸びる範囲内において、生体組織9の外側の骨折部80に設置されている。振動子1が振動子駆動回路2によって駆動されると、骨折した骨8a(2つ)がそれらの長手方向D51、D52と交差する方向D11、D12に変位する。
【0023】
振動子1としては偏心回転質量方式の振動モーターを用いる。振動子1はバンド92で固定される。振動子1は振動子駆動回路2で駆動され振動して機械的な変位を生じ、その機械的な変位で骨折した骨8aを変位させる。振動子1は毎日決まった時刻(例えば午前9時)に、同じ時間(例えば、10~25分間)駆動され、変位0.4~0.8mm、周波数5~80Hzの範囲で振動され、骨折した骨8aがその長手方向D51、D52と交差する方向D11、D12に変位させる。他の時刻では振動子1の振動は停止し、骨折した骨8aは変位しない。
【0024】
ここで、骨折が治るまでを、炎症期、修復期、及びリモデリング期の3つの期間に分けたとき、骨折した骨8aが他の骨8bに対して相対的に変位するように振動子1を駆動するのは、主として、炎症期、又は、炎症期及び修復期が好ましい。修復期やリモデリング期では、変位によって仮骨がかえってダメージを受けることがないように、治癒状況に応じて振動子1の駆動を停止する。又は、振動子の振幅や駆動周波数を変える(骨折した骨8aの変位は振動子1の振動に対応する)。
なお、炎症期(骨折血腫期)とは、骨折箇所81に大量の血液が集まって炎症が生じ、骨形成細胞の増殖が起きる期間である。修復期(初期仮骨形成期)とは、骨折箇所81を取り囲んで徐々に新しい骨(仮骨)に置き換わっていく期間である。リモデリング期(再造形期~硬化期)とは、仮骨が層板骨に置換され、骨折した骨が元の正常な状態に修復されていく期間である。
なお、
図2では骨の治療装置100の治療対象をラットとするが、治療対象を人間(人体)としてもよい。
【0025】
[実施形態2]
実施形態2に係る治療装置(図示せず)は、基本的には、実施形態1に係る治療装置100と同様であるが、振動子1として超音波振動子、例えば超音波フェーズドアレイを用い、振動子駆動回路2による駆動で超音波の音響放射圧によるプッシュパルスを発生させ、このプッシュパルスによって骨折した骨8aが変位するように構成されている点が異なる。
ここで、「超音波」とは周波数が高くて耳に聞こえない音をいう。人間に聞こえる周波数の範囲(可聴域)は、20Hz~20kHzであり、20kHzより高い周波数の音をいう。「音響放射圧」とは物体に超音波を当てたときに物体が受ける圧力をいう。「プッシュパルス」とは単一の超音波をいう。振動子1としては例えば超音波フェーズドアレイを用いる。
【0026】
[実施形態2の効果]
実施形態2に係る治療装置によれば、振動子1(超音波振動子、例えば超音波フェーズドアレイ)は、振動子駆動回路2による駆動で超音波の音響放射圧によるプッシュパルスを発生させる。この方式を用いると、超音波フェーズドアレイの時間的な制御で、超音波素子を動かさなくても骨折骨が動きやすい位置にめがけて、プッシュパルスを送波することができ、超音波素子の固定方法や設置個所等の自由度が増し、骨折した骨8aを変位させることがより一層容易になる。
【0027】
なお、実施形態2に係る治療装置は、超音波の音響放射圧によるプッシュパルスによって骨8を変位させる以外の点については、実施形態1に係る治療装置100と同様であり、実施形態1に係る治療装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0028】
[実施形態3]
図3は、実施形態3に係る治療装置130を説明するために示す図である。
実施形態3に係る治療装置130は、基本的には、実施形態1に係る治療装置100と同様であるが、
図3に示すように、振動子1を、骨折した骨8aを固定するギブス91の骨折箇所81側、骨折箇所81側と反対側、ギブス91のない箇所のいずれかに設置する点が異なる。なお、これらの設置個所は、いずれも骨折した骨8aを囲む生体組織9の外側である。
【0029】
図3(a)は、振動子1(1つ)を、骨折した骨8aを固定するギブス91の骨折箇所81側の箇所(ギブス91と生体組織9との間の箇所)に設置した様子を示す図(断面図)である。振動子1は骨折箇所81と離れた設置箇所P1、又は骨折箇所81に近い設置箇所P2、又は骨折箇所81に最短の設置箇所P3に設置する。
図3(b)は、振動子1(1つ)を、骨折した骨8aを固定するギブス91の骨折箇所81側と反対側の箇所に設置した様子を示す図(断面図)である。設置箇所P1、P2及びP3は、
図3(a)と同様であるが、振動子1を、骨折箇所81と反対側に設置している。なお、
図3(b)の設置箇所P1は、
図1(実施形態1)に図示した設置箇所と同様である。
図3(c)は、振動子1(1つ)を、ギブス91のない箇所に設置した様子を示す図(断面図)である。振動子1は、骨折箇所81と関節部82との間で、生体組織9の外側に設置されている。
【0030】
[実施形態3の効果]
実施形態3に係る治療装置130によれば、人間又はラットの状態、骨折状態、骨折した骨8aの振動状態、ギブス91の場所等を勘案して、振動子1を、骨折した骨8aを固定するギブス91の骨折箇所81側、骨折箇所81と反対側、ギブス91のない箇所のいずれかの適切な箇所に設置することによって、振動子1をより一層的確に振動させることが可能となる。これらの設置個所は、いずれも骨折した骨8aを囲む生体組織9の外側であり、非侵襲的な治療が可能である。
なお、振動子1をギブス91の骨折箇所81側に設置する、又はギブス91のない箇所に設置する方が、ギブス91の骨折箇所81側の反対側に設置する場合より、骨折した骨8aを変位させやすい。
【0031】
また、実施形態3に係る治療装置130は、振動子1の設置箇所(P2、・・)以外の点については、実施形態1に係る治療装置100と同様であり、実施形態1に係る治療装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0032】
[実施形態4]
図4は、実施形態4に係る治療装置140を説明するために示す図(振動子1を複数用いる場合の設置箇所に関する説明図)である。
[複数の振動子1の設置]
図4に示すように、実施形態4に係る治療装置140は、基本的には、実施形態1に係る治療装置100と同様であるが、複数(2つ)の振動子1を設置する点が異なる。なお、これらの設置個所は、いずれも骨折した骨8aを囲む生体組織9の外側である。
【0033】
図4(a)には、2つの振動子1の設置箇所を、骨折箇所81を挟んで骨折した骨8aの長手方向(図面の左右方向)の異なる方向で、骨折箇所81から等距離離した箇所とする場合を3例示す。設置箇所P21は2つの振動子1をギブス91がある箇所で骨折箇所81から等距離離した設置箇所を示す。設置箇所P23は2つの振動子1をギブス91がある箇所で骨折箇所81から等距離離した設置箇所を示す。設置箇所P24は2つの振動子1をギブス91がない箇所で骨折箇所81から等距離離した設置箇所を示す。なお、「等距離」は、厳密に等しい距離の他に、おおよそ等しい距離も含む。
【0034】
図4(a)では図に示すように骨折した骨8a及び8bを共に変位対象とする。骨折した骨8aは当該骨8aの長手方向D5と交差する方向D1に変位し、骨折した骨8bは当該骨8bの長手方向D6と交差する方向D2に変位する。この図では、骨折箇所81を挟んで図上で左右に設置される2つの振動子1を、駆動する波形を180°ずらして逆相にし骨折した骨8a、8bを逆相で変位させる場合を図示している(
図4(b)も同様、駆動波形については後述の
図5(c)参照)。
【0035】
図4(b)には、2つの振動子1の設置箇所を、骨折箇所81を挟んで骨折した骨8aの長手方向(図面の左右方向)の異なる方向で、骨折箇所81から異なる距離離した箇所とする場合を2例示す。設置箇所P31は、ギブス91がある箇所に設置する2つの振動子1のうちの一方の振動子1を骨折箇所81の近くに設置し、他方の振動子1を骨折箇所81から遠くに設置する場合を示す。設置箇所P32は、2つの振動子1のうちの一方の振動子1を骨折箇所81の近くのギブス91がある箇所に設置し、他方の振動子1を骨折箇所81から遠くのギブス91がない箇所に設置する場合を示す。
【0036】
図4(c)には、2つの振動子1の設置箇所を、骨折した骨8aの長手方向(図面の左右方向)方向で、骨折箇所81から同じ方向(図面の右方向側)とした場合を3例示す。設置箇所P41は、ギブス91がある箇所に設置する2つの振動子1を、骨折箇所81の近くに設置する場合を示す。設置箇所P42は、ギブス91がある箇所に設置する2つの振動子1のうちの一方の振動子1を骨折箇所81の近くに設置し、他方の振動子1を骨折箇所81から遠くに設置する場合を示す。設置箇所P43は、2つの振動子1のうちの一方の振動子1を骨折箇所81の近くのギブス91がある箇所に設置し、他方の振動子1を骨折箇所81から遠くのギブス91がない箇所に設置する場合を示す。
【0037】
なお、振動子1をギブス91のある箇所に設置する場合、
図4では振動子1をギブス91の骨折箇所81側と反対側に設置する場合を図示しているが、振動子1をギブス91の骨折箇所81側に設置してもよい(図示省略)。
【0038】
[複数の振動子1の駆動]
図5は、実施形態4に係る治療装置140を説明するために示す図(振動子1を複数用いる場合の駆動波形の説明図)である。説明をわかりやすくするため、振動子1の数を2つにしており、
図5(a)~(d)は、振動子駆動回路2から出力される複数(2つ)の振動子1の駆動波形を示す図である(骨折した骨8aの変位は振動子1の駆動波形に対応する)。
実施形態4に係る治療装置140においては、振動子駆動回路2によって複数(2つ)の振動子1は、振幅若しくは駆動タイミングが同じ又は異なるように駆動される。骨折した骨8aはそれに対応する振幅若しくはタイミングで変位する。
【0039】
説明をわかりやすくするため、2つの振動子1を第1及び第2の振動子とし、駆動波形をそれぞれW1及びW2とする。
図5(a)は、駆動波形W1及びW2が、同じ振幅及び駆動タイミングの波形である場合を示す。ここで「同じ」とは完全に同じ場合だけでなく、ほぼ同じ場合も含む。
【0040】
図5(b)~(d)は、2つの振動子に対応する2つの駆動波形について、振幅及び駆動タイミングの少なくとも一方が異なる場合を示す。
【0041】
図5(b)は、駆動波形W1とW2の駆動タイミングは同じであるが、振幅が異なる場合(W2の振幅がW1より大きい場合)を示す。
図5(c)は、2つの振動子の駆動波形として、駆動波形W1及びW2の組を用いる場合と、駆動波形W1及びW3の組を用いる場合を示す。駆動波形W1及びW2の組を用いる場合、W1とW2の振幅は同じであるが、駆動タイミングが180°異なる。駆動波形W1及びW3の組を用いる場合、W3はW1より振幅が大きく、駆動タイミングも180°異なる。
図5(d)は、2つの振動子の駆動波形として、駆動波形W1及びW2の組を用いる場合と、駆動波形W1及びW3の組を用いる場合を示す。駆動波形W1及びW2の組を用いる場合、W1とW2の振幅は同じであるが、駆動タイミングが90°異なる。駆動波形W1及びW3の組を用いる場合、W3はW1より振幅が大きく、駆動タイミングも90°異なる。
なお、
図5では駆動波形(W1,W2,W3)として台形形状の波形を図示したが、駆動波形は、矩形形状の波形、三角形状の波形、正弦波の波形等であってもよい。
【0042】
[複数の振動子1の設置箇所と駆動波形との組み合わせ]
図4(a)~(c)示す複数の振動子1の設置箇所と、
図5(a)~(d)示す複数の振動子1の駆動波形との組み合わせとしては、次のような組み合わせがある。
例えば、複数の振動子1の設置箇所/複数の振動子1の駆動波形の組み合わせを、
図4(a)/
図5(a)、
図4(a)/
図5(b)、
図4(a)/
図5(c)、
図4(a)/
図5(d)、
図4(b)/
図5(a)、
図4(b)/
図5(b)、
図4(b)/
図5(c)、
図4(b)/
図5(d)、
図4(c)/
図5(a)、
図4(c)/
図5(b)、
図4(c)/
図5(c)、又は
図4(c)/
図5(d)とする組み合わせである。
【0043】
[実施形態4の効果]
実施形態4に係る治療装置140によれば、
図4及び
図5のように複数の振動子1を設置して駆動することにより、骨折した骨8aをより一層容易に振動することが可能となる。例えば、振動子1が1つではパワー不足であっても複数用いることで十分なパワーが得られる、荷重を分散させることによって骨折した骨8aに過度の負荷がかかることを抑制する、複数の振動子を離して設置することにより骨8aに対するパワー(負荷)を分散できる(例えば、強力なパワーの振動子を1つ用いて骨8aを変位させると骨8aの1か所にパワー(負荷)が集中するが、パワーが半分の2つの振動子を離して設置すると1か所へのパワー集中を回避しつつ同様の大きさの変位をさせることができる)、振動させる骨の大きさ等に応じて適切な駆動条件を設定できる、等のいずれかの効果が期待できる。
【0044】
なお、実施形態4に係る治療装置140は、複数の振動子1を用いる以外の点については、実施形態1に係る治療装置100と同様であり、実施形態1に係る治療装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0045】
[実施形態5]
実施形態5に係る治療装置150は、基本的には、実施形態1に係る治療装置100と同様であるが、多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma、PRP)が含浸された構造体7(構造体7は骨折箇所81に巻かれる)を更に備える点が異なる。
【0046】
図6は、実施形態5に係る治療装置150を説明するために示す図である。
図6に示すように、実施形態5に係る治療装置150では、多血小板血漿が含浸された構造体7を備える。この構造体7は骨折箇所81近傍に設置される。
治療装置150を人間又はラットの骨の治療装置として用いる場合について説明する。まず、骨折した箇所の生体組織(皮膚や筋肉)を切開して、骨折箇所81近傍に多血小板血漿が含浸された構造体7を設置する。構造体7を骨折箇所81近傍に設置する態様としては、
図6のように骨折箇所81近傍に骨折箇所81を巻くように設置する態様、巻くことはせず骨折箇所81近傍(例えば、図上の上、下、横等)に設置する態様、骨折した骨8aと8bとの間に挟むように設置する態様、これらを併用する態様等がある。
【0047】
多血小板血漿は治療対象のラットの血小板を濃縮したものである。多血小板血漿が含浸された構造体7としては、例えば、人間又はラットの細胞を採取し、シート状に培養して作製した薄い膜に治療対象の人間又はラットの多血小板血漿を含浸させたものを用いる。そして、切開した箇所を縫合する。その上にギブス91を形成して骨折箇所81を固定する。ギブス91の上に(又は下に)振動子1を設置して、バンド92で固定する。そして、振動子駆動回路2で振動子1を駆動して、骨折した骨8aを変位させる。
【0048】
[実施形態5の効果]
実施形態5に係る治療装置150によれば、多血小板血漿が含浸された構造体7が骨折箇所81近傍に設置されるため、多血小板血漿に含まれる成長因子(傷んだ組織の修復を促進する物質)が骨折箇所81に供給される。そのため、仮骨等の成長がより一層促進され、骨の早期治癒が可能となる。
【0049】
なお、実施形態5に係る治療装置150は、多血小板血漿が含浸された構造体7を更に備える以外の点については、実施形態1に係る治療装置100と同様であり、実施形態1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0050】
[実施形態6]
図7及び
図8は、実施形態6に係る骨の治療・診断装置300を説明するために示す図であり、
図7は治療・診断装置300の概要説明図で、
図8は治療・診断装置300での処理を説明するためのフローチャートである。
[治療・診断装置300の構成]
図7に示すように、実施形態6に係る治療・診断装置300は、骨の治療装置100(実施形態1参照)と骨の診断装置200(骨診断装置)とを備える。そして、骨の診断装置200は、骨折箇所81に音波を照射する音波照射子3、音波照射子3を駆動する音波照射子駆動回路4、骨折箇所81からの反射音波又は残留音波を検出する音波検出子5、及び、検出された音波から骨折した骨8aの治癒状況を可視化する表示部6を有する。
【0051】
以下、詳しく説明する。
骨の治療装置100については実施形態1で説明したので再度の説明を省略する。
骨の診断装置200について説明する。音波照射指令信号が音波照射子駆動回路4に入力されると、音波照射子駆動回路4から音波照射子3に対し駆動信号が出力され、ピエゾ等の圧電素子よりなる音波照射子3は骨折箇所81に音波を照射する。音波は生体組織9内を通過する。そして、ピエゾ等の圧電素子よりなる音波検出子5は、骨折箇所81からの反射音波又は残留音波を検出する。そして、液晶表示装置、EL表示装置等よりなる表示部6は、音波検出子5で検出された音波から骨折した骨8aの治癒状況を可視化して表示する。骨の診断装置200はウェアラブルな装置としてもよい。
なお、
図7では、音波照射子3と音波検出子5とを別体の素子としたが、通常おこなわれているように、音波照射子3が音波検出子5を兼ねるようにしてもよい。この場合、音波を照射した後で、同じ素子が照射音波に反射音波又は残留音波を検出する。
【0052】
[振動子1の駆動条件の調整]
図8は治療・診断装置300で骨折した骨8aを変位させる場合の処理(例)を説明するためのフローチャートである。
実施形態6に係る骨の治療・診断装置300においては、駆動条件調整回路28(
図7に点線で図示)を更に備えるようにしてもよい。駆動条件調整回路28は、振動子1の駆動条件をその前の駆動条件に対して調整可能な回路である。振動子1の駆動条件とは、例えば、振動子1を駆動する駆動周波数、振幅、波形等の駆動パラメーターである。
【0053】
図7及び
図8を用いて説明する。
治療・診断装置300で振動子1の駆動条件を調整する場合、まず、振動子駆動回路2で振動子1を駆動して振動子1を振動させ、骨折した骨8aを変位させる(
図8、ステップS71)。
なお、ステップS71の前に、骨折箇所81に多血小板血漿が含浸された構造体7を設置しておいてもよい(ステップS70)。
そして、音波照射子3から骨折箇所81に音波を照射し、音波検出子5で反射音波又は残留音波を検出して、表示部6に骨折箇所81を表示して可視化する(ステップS73)。
【0054】
そして、骨折した骨8aに更に振動を加えて変位させることが必要か否か判断される(ステップS75)。この判断は、例えば、骨折した骨8aの治癒状況、骨折した骨8aの変位の様子等に基づいて判断される。判断主体は、治療・診断装置300自身、又は医師(獣医師)、患者(治療対象が人の場合)等である。
そして、骨折した骨8aを更に変位させることが不要な場合(ステップS75、「不要」)、処理は終了する。
【0055】
一方、骨折した骨8aを更に変位させることが必要な場合(ステップS75、「必要」)、駆動条件(振動子1の振幅又は振動周波数)を変更するか否か判断される(ステップS77)。
駆動条件の変更が不要な場合、ステップS73の処理に進み、前と同じ駆動条件で振動子1を駆動して骨折した骨8aを前と同様に変位させる。
駆動条件の変更が必要な場合、処理がステップS79に移って駆動条件が変更される。そして、ステップS73の処理に進み、変更した駆動条件で振動子1を駆動して骨折した骨8aを前とは異なる変位をさせる。
【0056】
駆動条件の変更(又は維持)は、
図7に点線で示す駆動条件調整回路28でおこなわれる。
自動でおこなう場合は、表示部6(又は音波検出子5)の出力を、駆動条件調整回路28に、調整指示信号(自動)として入力させる。駆動条件調整回路28は調整指示信号(自動)をもとに駆動条件を変更するか否かを判断する。駆動条件を変更する場合は、振動子駆動指令信号を調整した(調整)指令信号にして振動子駆動回路2に入力する。駆動条件を変更しない場合は、調整しない。
手動でおこなう場合は、医師等が、手動で、調整指示信号(手動)を振動子駆動回路2に入力することによって駆動条件を変更する。
【0057】
[治療・診断装置300の使用例]
治療・診断装置300は例えば次のように使用する。
骨折した骨8aの治癒状況に応じて骨折した骨8aを引き続き変位させる場合、周期的に決まっている決まった時刻に一定時間ある駆動条件で振動子1を駆動して骨折した骨8aを変位させる(ステップS71)。一定時間後、振動子1の駆動を停止する(骨折した骨8aの変位も停止する)。この状態で所定時間が経過する。
そして、次の周期(例えば翌日)の決まった時刻に振動子1を駆動する前に、骨折箇所81に音波で治癒状況を可視化する(S73)。治癒している等の理由で骨折した骨8aを引き続き変位させることが不要と判断される(S75)と、当該周期以降、振動子1の駆動を停止する。骨折した骨8aを引き続き変位させることが必要と判断される(S75)と、更に駆動条件を変更するか否かが判断され(S77)、駆動条件調整回路28で調整された駆動条件で振動子1が駆動され、骨折した骨8a変位させる。
【0058】
また、骨折した骨8aを適当に変位させるための振動子1の適当な駆動条件を出したい場合がある。この場合について
図8を使って説明すると、例えば、任意の時刻にある駆動条件で振動子1を駆動して骨折した骨8aを変位させる(ステップS71)。振動子1を駆動して骨折した骨8aを変位させながら、骨折箇所81に音波を照射して骨折した骨8aの変位状態を表示部6でチェックする(S73)。骨折した骨8aの変位(振幅)が大きすぎる、小さすぎる、早すぎる(周波数)、遅すぎる等の場合は、駆動条件調整回路28で駆動条件を調整して(S75、S77)、振動子1を駆動して骨折した骨8aを変位させ、その変位状態をチェックし、駆動条件を調整することを繰り返す。このようにして適当な駆動条件を出して使用する(
図8の治療処理フローチャートのS71にその駆動条件を適用する)。
【0059】
[実施形態6の効果]
実施形態6に係る骨の治療・診断装置300によれば、骨の治療装置100と診断装置200の双方を備えるため、治療装置100による骨折した骨8aの早期治癒、及び、診断装置200による治癒状況の的確な診断が可能となる。上記したように、骨の治療装置100は、所定の振動子1と振動子駆動回路2を備えており、これらを用いることにより早期治癒等が可能である。また、診断装置200は、音波照射子3、音波照射子駆動回路4、音波検出子5及び表示部6を有するため、これらを用いることにより的確な診断が可能である。また、治療装置100で治療した後、診断装置200で治癒状況を診断し、その状況に応じて又はその状況をフィードバックして治療装置100で再び治療する・・というサイクルを回すことも可能である。
【0060】
実施形態6に係る骨の治療・診断装置300によれば、駆動条件調整回路28を更に備えるため、骨折した骨8aの変位を変えたいときは、その前の振動子1の駆動条件をもとにして駆動条件を調整(変更)すればよいため、変位の調整が容易である。
【0061】
[実施形態7]
図9は、実施形態7に係る治療・診断装置310を説明するために示す図である。
実施形態7に係る骨の治療・診断装置310は、基本的には、実施形態6に係る骨の治療・診断装置300と同様であるが、振動子駆動回路2と音波照射子駆動回路4(
図7参照)とが、
図9に示すように両者を一体化した振動子・音波照射子駆動回路20によって構成されている点が異なる。
【0062】
図9に示すように、実施形態7に係る骨の治療・診断装置310は、振動子・音波照射子駆動回路20を備える。そして、振動子・音波照射子駆動回路20は、指令信号判別回路21と、駆動信号生成回路27と、スイッチ25A、25Bとを有する。
振動子・音波照射子駆動回路20には素子(1、3)の駆動の指令信号が入力される。指令信号判別回路21は、この指令信号が、振動子1又は音波照射子3のいずれを駆動する指令信号であるか判別して、駆動信号生成回路27に出力する(音波検出子5は音波照射子3と同時又は予め決められた所定時間後に駆動される)。
【0063】
駆動信号生成回路27は、発振器23と、周波数調整回路22と、D/A変換回路24A、24Bとを有する。発振器23は、水晶振動子、セラミック振動子等の振動子を用いて基準信号を周波数調整回路22に出力する。周波数調整回路22は、指令信号判別回路21からの判別信号に応じて、発振器23からの基準信号を、そのままの周波数で、あるいは周波数を分周又は逓倍して、振動子1又は音波検出子5の駆動に適当な周波数にしてD/A変換回路24A又は24Bに出力する。
【0064】
D/A変換回路24A又は24Bでは、周波数調整回路22からの駆動用信号(ディジタル信号)を振動子1又は音波検出子5の駆動信号(アナログ信号)に変換して、スイッチ25A、25Bに出力する。
スイッチ25A、25Bは、指令信号判別回路21での判別出力によって開閉する。振動子1を駆動する判別出力である場合には、スイッチ25Bが開き、振動子1が駆動される。音波照射子3を駆動する判別出力である場合には、スイッチ25Aが開き、音波照射子3が駆動される。
【0065】
なお、周波数調整回路22の出力で直接振動子1又は音波照射子3を駆動できる場合はD/A変換回路24A、24Bは不要である。また、振動子1又は音波照射子3を十分なパワーで駆動するために振動子1又は音波照射子3の前にバッファー回路等があってもよい。
【0066】
[実施形態7の効果]
実施形態7に係る骨の治療・診断装置310によれば、振動子駆動回路と音波照射子駆動回路とが、両者を一体化した振動子・音波照射子駆動回路20によって構成されているため、治療・診断装置310を小型化することが可能となる。
【0067】
なお、実施形態7に係る骨の治療・診断装置310は、振動子駆動回路と音波照射子駆動回路とが、両者を一体化した振動子・音波照射子駆動回路20によって構成されている以外の点については、実施形態6に係る骨の治療・診断装置300と同様であり、実施形態6が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0068】
[実施形態8]
図10は、実施形態8に係る治療装置180を説明するために示す図である。実施形態8に係る治療装置180は、基本的には、実施形態1に係る治療装置100と同様であるが、振動子1として、実施形態1では振動モーターを用いたのに対し、実施形態2ではカムシャフトを用いる点が異なる。
【0069】
図10に示すように、治療装置180では、カム板11、溝12等(カム)とシャフト13によって構成されたカムシャフトを振動子1としている。このカムシャフトは、いわゆる正面カムである。なお、
図10では構造を理解しやすくするためカム板11等をデフォルメして大きく描いている。
治療装置180の概要を説明すると、台座を構成するフレーム16には、モーター(図示せず)、カム板11等が搭載され、骨折箇所81近傍の生体組織9(筋肉等)の上にバンド92で巻かれ、骨8aに対して所定の配置位置となるように設置されている。カム板11(原動節)が回転軸14を中心に回転することにより、回転軸14に対して偏心状に形成された円形(又は楕円形)の溝12(カム板11の側面に形成)が回転し、溝12に対して滑り又は転がり接触するシャフト13(従動節)が溝に沿って運動し、フレーム16に形成された案内17でガイドされ、骨折した骨8aの方向に直線往復運動する。シャフト13の直線往復運動の圧力が骨8aに伝わり、骨8aを機械的に上下に変位させる。
【0070】
なお、
図10の左下に点線で示すように、他方の骨折した骨8bの下側(骨8aに対する設置側と反対側)にも、同様のカムシャフト(カム板11、シャフト13等で構成)を設置してもよい。図示する例では、骨8a側のシャフト13(右上)が下降して骨8aを下側に押すように動くと、同じタイミングで(同位相で)、骨8b側のシャフト13(左下)が上昇して骨8bを上側に押すように動き、カムシャフトが1つだけの場合より、骨折した骨8a・8b間の変位差を更に大きくできるようにしている。
【0071】
また、ギブス91(
図1参照)のある箇所にカムシャフトの振動子1を設置する場合には、例えば、ギブス91の外側にフレーム16、カム板11等を設置し、バンド92を巻いて固定し、ギブス91に形成した貫通穴を通ってシャフト13が直線往復するようにする(図示なし)。
または、ギブス91の内側(生体組織9の側)にフレーム16、カム板11等を設置し、ギブス91に形成した貫通穴を通ってシャフト13が直線往復するようにする(図示なし)。この場合、ギブス91の外側にバンド92を巻いてもよいが、バンド92を省略してギブス91がバンド92の役割も果たすようにしてもよい。
また、カムシャフトを構成するカムは、正面カムに限られるものではなく、球面カム、円筒カム等であってもよい。
【0072】
また、
図10に示すシャフト13は、一様な太さの細長い棒状形状(長軸は直線往復方向)をしているが、先端部が直線往復方向に細長く、先端から所定距離の箇所で太い形状をしていてもよい(図示なし)。これにより、生体組織9がシャフト13で押され所定深さまで凹むと、シャフト13の太い箇所が凹部の周縁に接触し、シャフト13の先端がそれ以上進むのを妨げる。そして、骨8aが所定以上変位すること、又はシャフト13の先端が生体組織9に刺さって傷つけることを妨げるようにしてもよい。
【0073】
[実施形態8の効果]
実施形態8に係る治療装置180によれば、振動子1としてカムシャフトを用いることにより、振動子1の振動(カムシャフトの直線往復運動)が分散されることなく骨折した骨8a(8b)に向かって伝わり、骨折した骨8a(8b)を一層確実に変位(振動)させることが可能となる。
なお、実施形態8に係る治療装置180は、振動子1としてカムシャフトを用いる以外の点については、実施形態1に係る治療装置100と同様であり、実施形態1に係る治療装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0074】
[変形例]
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において変えることが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0075】
(1)上記の実施形態1においては、振動子1として偏心回転質量方式の振動モーターを用いたが、本発明の骨の治療装置等に用いる振動子は偏心回転質量方式の振動モーターに限られるものではない。例えば、バネに繋がれた重りを内蔵しており、電磁誘導の力で重りをバネ押し込み、電磁誘導を停止することによりバネの反作用で重りを動かす原理のリニア共振アクチュエータ方式の振動モーターであってもよい。空気式ポールバイブレーターや圧電振動子等であってもよい。
【0076】
(2)上記の実施形態8においては、振動子1としてカムシャフトを用いて直線往復運動をさせるが、直線往復運動機構はカムシャフトに限定されるものではない。例えば、リニア駆動モーター等を用いた直線往復運動機構でもよく、断面が卵型のカムが取り付けられたカムシャフト回転軸の卵型のカムを骨8a(又は8b)に直接押し当てて直線往復運動を作り出すような機構(振動子1)としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…振動子、2…振動子駆動回路2、20…振動子・音波照射子駆動回路、21…指令信号判別回路、22…周波数調整回路、23…発振器、24A,24B…D/A変換回路、25A,25B…スイッチ、27…駆動信号生成回路、3…音波照射子、4…音波照射子駆動回路、5…音波検出子、6…表示部、7…構造体、8a,8b…骨折した骨、81…骨折箇所、9…生体組織、91…ギブス、92…バンド、20…振動子・音波照射子駆動回路、28…駆動条件調整回路、100,110,200,210…治療装置、300,310…治療・診断装置、P1,P2,P3,P21,P22,P23,P31,P32,P41,P42,P43…設置箇所、W1,W2,W3…駆動波形