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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】データ管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G05B23/02 301X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021092920
(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公開番号】P2022185317
(43)【公開日】2022-12-14
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】小田 隆彦
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-152789(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250280(WO,A1)
【文献】特開2020-052714(JP,A)
【文献】特開2019-028835(JP,A)
【文献】特開2018-081421(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051568(WO,A1)
【文献】特開2017-033471(JP,A)
【文献】特開2013-152655(JP,A)
【文献】特開2019-028929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0163132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを構成する複数の機器から複数の項目のプラント信号を取得することにより、前記複数の項目のプラント信号を記憶したプラント信号データベースを生成するデータ収集装置との通信を可能にする通信部と、
前記通信部を介して前記データ収集装置と通信を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記プラント信号データベースに記憶された前記複数の項目のプラント信号のうちの所定数の項目のプラント信号からなる信号グループのトレンドチャートを生成するトレンドチャート生成部と、
生成された前記トレンドチャートを画像化することにより、前記トレンドチャートを画像化したチャート画像を生成するチャート画像化部と、
前記チャート画像に対して画像処理を行うことにより、前記所定数の項目のプラント信号のそれぞれの画像特徴点を抽出する画像処理部と、
基準となる前記画像特徴点のパターンと、判定対象となる前記画像特徴点のパターンと、を比較し、その一致率を判定することにより、前記判定対象となる前記画像特徴点のパターンの異常を判定する異常判定部と、
前記異常判定部によって判定された前記一致率が所定の閾値未満である場合に、アラームを出力する異常警告部と、
を有するデータ管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像特徴点を表す画像特徴点情報と、前記プラント信号データベースに記憶された前記複数の項目のプラント信号と、を基に、前記プラントの自動運転における正常操業時の前記信号グループの前記画像特徴点のパターンを学習する正常パターン学習部をさらに有し、
前記異常判定部は、前記正常操業時の前記信号グループの前記画像特徴点のパターンを基準となる画像特徴点のパターンとし、新たに抽出された前記画像特徴点のパターンを判定対象となる前記画像特徴点のパターンとすることにより、新たに抽出された前記画像特徴点のパターンの異常を判定する請求項1記載のデータ管理装置。
【請求項3】
前記正常パターン学習部は、蓄積記憶された複数の前記画像特徴点情報に対して相関解析を行い、関連性の無いプラント信号を前記信号グループから除外する請求項2記載のデータ管理装置。
【請求項4】
前記プラント信号データベースに記憶される前記複数の項目のプラント信号は、既設の制御装置のプラント信号と、新設の制御装置のプラント信号と、を含み、
前記チャート画像化部は、前記新設の制御装置の信号グループのトレンドチャートを画像化したチャート画像と、前記既設の制御装置の信号グループのトレンドチャートを画像化したチャート画像と、を生成し、
前記画像処理部は、前記新設の制御装置の信号グループのチャート画像の画像特徴点、及び前記既設の制御装置の信号グループのチャート画像の画像特徴点を抽出し、
前記異常判定部は、前記既設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンを基準となる画像特徴点のパターンとし、前記新設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンを判定対象となる画像特徴点のパターンとし、これらを比較して一致率を判定することにより、前記新設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンの異常を判定する請求項1~3のいずれか1つに記載のデータ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラント信号のデータ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用プラントの制御システムには、膨大な情報の高速処理、制御の高応答化、高精度化が求められる。その制御システムは、電動機、ドライブ装置、油圧制御装置を含むレベル0、高速制御装置(シーケンサ)によるレベル1、プロセス制御計算機のレベル2、などの異なる制御階層を常用ネットワークで接続し、膨大な時系列データ、製品単位データ、および操作履歴やアラームなどのプラント信号を、専用のデータベースにまとめて長期保存している。
【0003】
データベースは、例えば、用途に応じて任意に選択した複数のプラント信号をトレンドチャートなどで可視化するために用いられている。これにより、生産ラインの健全性をモニタリングすることができ、生産性向上・品質改善・操業安定化などを図ることができる。
【0004】
また、こうしたプラント信号の可視化において、複数のプラント信号からなる信号グループを設定するとともに、2つの信号グループを比較することにより、2つの信号グループの差異を抽出することも行われている。
【0005】
例えば、プラントの自動運転において異常停止や事故などが発生した場合に、正常時の信号グループと異常時の信号グループとを比較することにより、2つの信号グループの差異から異常や事故の原因を調査、特定することが行われている。
【0006】
あるいは、制御装置の更新において、既設の制御装置の信号グループと新設の制御装置の信号グループとを比較することにより、新設の制御装置の動作を確認することが行われている。
【0007】
こうした2つの信号グループの比較は、オペレータなどが目視確認で行っている。しかしながら、このように、人の目で2つの信号グループを比較する方法では、プラントを構成する各種の機器の動作や各プラント信号の内容に関する知見、及び信号グループの比較に関する経験が、オペレータなどに必要になる。また、人の目で2つの信号グループを比較する方法では、比較の処理に時間がかかってしまう場合がある。
【0008】
このため、産業用プラントの制御システムにおいては、2つの信号グループの比較をより容易に行えるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2020-140278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施形態は、2つの信号グループの比較をより容易に行うことができるプラント信号のデータ管理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態によれば、プラントを構成する複数の機器から複数の項目のプラント信号を取得することにより、前記複数の項目のプラント信号を記憶したプラント信号データベースを生成するデータ収集装置との通信を可能にする通信部と、前記通信部を介して前記データ収集装置と通信を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記プラント信号データベースに記憶された前記複数の項目のプラント信号のうちの所定数の項目のプラント信号からなる信号グループのトレンドチャートを生成するトレンドチャート生成部と、生成された前記トレンドチャートを画像化することにより、前記トレンドチャートを画像化したチャート画像を生成するチャート画像化部と、前記チャート画像に対して画像処理を行うことにより、前記所定数の項目のプラント信号のそれぞれの画像特徴点を抽出する画像処理部と、基準となる前記画像特徴点のパターンと、判定対象となる前記画像特徴点のパターンと、を比較し、その一致率を判定することにより、前記判定対象となる前記画像特徴点のパターンの異常を判定する異常判定部と、前記異常判定部によって判定された前記一致率が所定の閾値未満である場合に、アラームを出力する異常警告部と、を有するデータ管理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
2つの信号グループの比較をより容易に行うことができるプラント信号のデータ管理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るプラント制御システム、及びこれに用いられるデータ管理装置を模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係るデータ管理装置を模式的に表すブロック図である。
図3】実施形態に係る制御部を模式的に表すブロック図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、鉄鋼プロセスラインの一例を模式的に表す概略図である。
図5】鉄鋼プロセスラインの動作フローの一例を模式的に表すフローチャートである。
図6図6(a)及び図6(b)は、鉄鋼プロセスラインの動作フローの一例を模式的に表すトレンドチャートである。
図7図7(a)~図7(c)は、トレンドチャート生成部、チャート画像化部、及び画像処理部の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図8】正常パターン学習部及び異常判定部の動作の一例を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係るプラント制御システム、及びこれに用いられるデータ管理装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、プラント制御システム2は、データ管理装置10と、データ収集装置12と、を備える。プラント制御システム2は、例えば、鋼板の製造を行う圧延機や紙の製造を行う抄紙機などのプラントに用いられる。プラント制御システム2を適用するプラントは、これらに限ることなく、製品の製造や加工などを行う任意のプラントでよい。
【0016】
データ収集装置12は、ネットワーク14を介してプラントを構成する複数の機器と通信を行うことにより、複数の機器から複数の項目のプラント信号を取得する。ネットワーク14は、例えば、制御のリアルタイム性を実現するスキャン伝送機能を付与した制御基幹LANである。
【0017】
複数の項目のプラント信号は、例えば、センサ信号やドライブ信号などのレベル0のプラント信号PS0、操作入出力信号やPLC制御信号などのレベル1のプラント信号PS1、及び製品品質信号や生産計画信号などのレベル2のプラント信号PS2などの異なる制御階層の信号によって構成される。複数の項目とは、換言すれば、センサ信号やドライブ信号などのプラント信号の内容である。レベル0のプラント信号PS0を出力する機器は、例えば、電動機、ドライブ装置、油圧制御装置などである。レベル1のプラント信号PS1を出力する機器は、例えば、高速制御装置(シーケンサ)などである。レベル2のプラント信号PS2を出力する機器は、例えば、プロセス制御計算機などである。
【0018】
データ収集装置12は、設定された収集周期に基づき、ネットワーク14上に流れている各種のプラント信号を読み込み、長期保存することにより、複数の項目のプラント信号を記憶したプラント信号データベース12aを生成する。プラント信号データベース12aは、より詳しくは、プラントを構成する各機器から出力される複数の項目のプラント信号のデータを、項目毎に時系列的にまとめて記憶したデータの集合体である。
【0019】
データ管理装置10は、データ収集装置12と通信を行い、プラント信号データベース12aに記憶された複数の項目のプラント信号を活用することにより、プラントの管理を可能とする。
【0020】
データ管理装置10は、トレンドチャートビューワ機能と、画像化・画像解析機能と、を有する。トレンドチャートビューワ機能は、時系列に収集したプラント信号をチャートグラフで表示し、複数のプラント信号を同時に確認できるようにする機能である。異なる階層の複数のプラント信号をリアルタイム表示だけでなく、過去のプラント信号も表示できるため、問題発生時の収集データを活用したトラブルシューティングやレベル0機器のフィードバック信号を傾向監視することで予防保全に役立てる事ができる。画像化・画像解析機能は、表示したトレンドチャートの画像化、及び画像化したトレンドチャートの解析を行う機能である。
【0021】
図2は、実施形態に係るデータ管理装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、データ管理装置10は、制御部20と、記憶部22と、通信部24と、表示部26と、操作部28と、スピーカ30と、を有する。
【0022】
制御部20は、データ管理装置10の各部の動作を統括的に制御する。記憶部22は、例えば、データ管理装置10の制御を行うための種々のプログラムやデータなどを記憶する。制御部20は、例えば、記憶部22から種々のプログラムやデータなどを読み出し、プログラムに従って逐次処理を実行することにより、データ管理装置10の各部の動作を統括的に制御する。制御部20は、例えば、記憶部22に記憶されたプログラムやデータに基づいて、トレンドチャートビューワ機能、及び画像化・画像解析機能を実行する。
【0023】
通信部24は、データ収集装置12との通信を可能にする。制御部20は、通信部24を介してデータ収集装置12と通信を行う。表示部26は、制御部20の制御に基づいて種々の画面を表示する。表示部26には、例えば、液晶ディスプレイなどの周知の表示装置が用いられる。操作部28は、オペレータなどからの操作指示の入力を受け付け、入力された操作指示に応じた操作信号を制御部20に入力する。操作部28には、マウス、キーボード、タッチパネルなどの周知の入力装置が用いられる。スピーカ30は、制御部20の制御に基づいて種々の音声を出力する。
【0024】
制御部20は、操作部28からの操作信号の入力に応じてトレンドチャートビューワ機能、及び画像化・画像解析機能を実行し、各機能の実行に応じてトレンドチャートなどの画面を表示部26に表示する。オペレータなどは、例えば、問題発生時などに操作部28を操作し、トレンドチャートビューワ機能の実行を制御部20に指示する。これにより、オペレータなどの操作指示に応じたトレンドチャートが表示部26に表示され、トレンドチャートの参照が可能になる。
【0025】
図3は、実施形態に係る制御部を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、制御部20は、トレンドチャート生成部40と、チャート画像化部42と、画像処理部44と、正常パターン学習部46と、異常判定部48と、異常警告部50と、を有する。トレンドチャート生成部40、チャート画像化部42、画像処理部44、正常パターン学習部46、異常判定部48、及び異常警告部50は、例えば、記憶部22に記憶されたプログラムに基づいて制御部20に構成される機能ブロックである。但し、トレンドチャート生成部40、チャート画像化部42、画像処理部44、正常パターン学習部46、異常判定部48、及び異常警告部50は、ハードウェアとして制御部20に構成してもよい。
【0026】
トレンドチャート生成部40は、プラント信号データベース12aに記憶された複数の項目のプラント信号のうちの所定数の項目のプラント信号を表す信号グループの情報を有する。信号グループの情報は、例えば、オペレータなどが操作部28を操作し、表示部26に表示された複数の項目のプラント信号の中から所望のプラント信号を選択することによって入力される。なお、信号グループの情報は、記憶部22などに記憶させ、記憶部22などから読み出すようにしてもよい。
【0027】
トレンドチャート生成部40は、信号グループの情報を基に、所定数の項目のプラント信号からなる信号グループのトレンドチャートを生成する。トレンドチャート生成部40は、例えば、生成したトレンドチャートを表示部26に表示する。これにより、トレンドチャートビューワ機能を実現することができる。オペレータなどは、例えば、操作部28を操作し、所望の信号グループ及び所望の期間を指定する。これにより、所望の信号グループの所望の期間の時間的な変化を、トレンドチャートとして表示部26に表示することができる。
【0028】
また、トレンドチャート生成部40は、例えば、データ収集装置12において信号グループに関する新たなプラント信号が収集される毎に、トレンドチャートを更新することにより、信号グループのトレンドチャートをリアルタイムに表示することもできる。
【0029】
チャート画像化部42は、生成されたトレンドチャートを画像化することにより、トレンドチャートを画像化したチャート画像を生成する。チャート画像化部42は、例えば、トレンドチャート生成部40においてリアルタイムに更新されるトレンドチャートを一定時間単位で画像化することにより、一定時間単位にチャート画像を生成する。
【0030】
チャート画像化部42は、例えば、一定時間の経過毎にチャート画像を生成する。チャート画像化部42は、例えば、プラントの所定の動作の期間を表す期間情報を有し、期間情報の表すプラントの所定の動作が行われる毎に、チャート画像を生成してもよい。換言すれば、チャート画像化部42は、プラントの所定の動作に関連するトレンドチャートのチャート画像を生成してもよい。期間情報は、例えば、オペレータなどによる操作部28の操作によって入力することができる。
【0031】
画像処理部44は、チャート画像に対して画像処理を行うことにより、所定数の項目のプラント信号のそれぞれの立ち上り、立ち下り、あるいは傾向の変化箇所といった画像特徴点を抽出する。画像処理部44は、抽出した画像特徴点を表す画像特徴点情報を、データ収集装置12に設けられた画像特徴点情報格納部12bに記憶させる。画像特徴点情報格納部12bは、例えば、画像特徴点情報を時系列データとして記憶する。なお、画像特徴点情報は、例えば、記憶部22などに記憶させてもよいし、プラント信号を記憶するデータ収集装置12とは別のサーバなどに記憶させてもよい。
【0032】
正常パターン学習部46は、画像特徴点情報格納部12bに記憶された画像特徴点情報と、プラント信号データベース12aに記憶された複数の項目のプラント信号と、を基に、プラントの自動運転における正常操業時の信号グループの画像特徴点のパターンを学習する。
【0033】
正常パターン学習部46は、プラント信号データベース12aに記憶された複数の項目のプラント信号を基に、正常運転や運転モード条件を把握する。すなわち、正常パターン学習部46は、プラント信号データベース12aに記憶された複数の項目のプラント信号を基に、画像特徴点情報格納部12bに記憶された画像特徴点情報が、正常操業時の情報か異常操業時の情報かを判定する。
【0034】
正常パターン学習部46は、正常操業時の情報と判定した画像特徴点情報を基に、正常操業時の信号グループの画像特徴点のパターンを学習する。正常パターン学習部46は、例えば、プラントの所定の動作について、正常操業時の情報と判定した複数の画像特徴点情報の平均値を基に、正常操業時の信号グループの画像特徴点のパターンを学習する。
【0035】
また、この際、正常パターン学習部46は、蓄積記憶された画像特徴点情報に対して相関解析を行い、関連性、パターン性のあるプラント信号を自動的にグループ化する。正常パターン学習部46は、相関解析にて関連性、パターン性なしと判定したプラント信号を自動的に信号グループから除外する。
【0036】
例えば、信号グループの中にプラントの所定の動作と無関係なプラント信号が紛れていたとする。プラントの所定の動作が正常に複数回行われ、複数の画像特徴点情報が取得された場合、信号グループに含まれるプラントの所定の動作と関係の有るプラント信号の画像特徴点は、複数の画像特徴点情報のそれぞれで実質的に同じパターンを示す。一方、無関係なプラント信号の画像特徴点は、プラントの所定の動作が正常に複数回行われ、複数の画像特徴点情報が取得された場合にも、複数の画像特徴点情報のそれぞれにおいて、異なるパターンを示す可能性がある。そこで、正常パターン学習部46は、例えば、正常操業時の情報と判定した複数の画像特徴点情報のそれぞれにおいて、異なるパターンを示すプラント信号を信号グループから除外する。この場合、正常パターン学習部46は、例えば、対応するプラント信号を削除するように、トレンドチャート生成部40に記憶された信号グループの情報を更新することにより、関連性のないプラント信号を信号グループから除外する。
【0037】
異常判定部48は、基準となる画像特徴点のパターンと、判定対象となる画像特徴点のパターンと、を比較し、その一致率を判定することにより、判定対象となる画像特徴点のパターンの異常を判定する。これにより、画像化・画像解析機能を実現することができる。
【0038】
異常判定部48には、例えば、正常パターン学習部46で学習された正常操業時の信号グループの画像特徴点のパターンと、画像処理部44で新たに抽出された画像特徴点のパターンと、が入力される。
【0039】
異常判定部48は、正常操業時の信号グループの画像特徴点のパターンを基準となる画像特徴点のパターンとし、新たに抽出された画像特徴点のパターンを判定対象となる画像特徴点のパターンとすることにより、新たに抽出された画像特徴点のパターンの異常を判定する。
【0040】
換言すれば、異常判定部48は、プラントの所定の動作が行われる毎に、新たに抽出された画像特徴点のパターンと、過去に行われたプラントの同じ動作の正常操業時の画像特徴点のパターンと、を基に、新たに行われたプラントの所定の動作が正常か否かを判定する。
【0041】
この際、上記のように、関連性の無いプラント信号を自動的に信号グループから除外しておくことで、関連性の無いプラント信号によって異常と判定されてしまうことを抑制することができる。
【0042】
異常警告部50は、異常判定部48によって判定された一致率が所定の閾値未満である場合に、アラームを出力する。異常警告部50は、例えば、一致率が所定の閾値未満である場合に、アラーム音をスピーカ30から出力することにより、アラームを出力する。これにより、オペレータなどに、異常の発生を報知することができる。
【0043】
異常警告部50は、例えば、一致率が所定の閾値未満である場合に、警告表示を表示部26に表示させることにより、アラームを出力してもよい。異常警告部50によるアラームの出力の態様は、これらに限ることなく、オペレータなどに対して異常の発生を適切に報知することができる任意の態様でよい。あるいは、一致率が所定の閾値未満である場合に、異常警告部50からプラントにアラームを出力することにより、プラントの動作が自動的に停止されるようにしてもよい。
【0044】
また、図1に表したように、制御装置の更新において、新設の制御装置の動作を確認する、いわゆるパララン試験の実施のため、新設の制御装置のプラント信号PSnが、ネットワーク14上に出力され、新設の制御装置のプラント信号PSnが、データ収集装置12(プラント信号データベース12a)に記憶される場合がある。換言すれば、プラント信号データベース12aに記憶される複数の項目のプラント信号が、既設の制御装置のプラント信号と、新設の制御装置のプラント信号と、を含む場合がある。この場合に、新設の制御装置のプラント信号PSnの信号グループと、既設の制御装置のプラント信号の信号グループと、を作成し、上記の画像化・画像解析機能を適用することにより、既設の制御装置の動作と新設の制御装置の動作との同一性を画像評価することが可能となる。
【0045】
この場合には、例えば、新設の制御装置のプラント信号PSnの信号グループの情報と、既設の制御装置のプラント信号の信号グループの情報とが、トレンドチャート生成部40に設けられる。
【0046】
トレンドチャート生成部40は、新設の制御装置のプラント信号PSnの信号グループのトレンドチャートと、既設の制御装置のプラント信号の信号グループのトレンドチャートと、を生成する。トレンドチャート生成部40は、例えば、データ収集装置12において信号グループに関する新たなプラント信号が収集される毎に、新設の制御装置の信号グループのトレンドチャート、及び既設の制御装置の信号グループのトレンドチャートをリアルタイムに更新する。
【0047】
チャート画像化部42は、新設の制御装置の信号グループのトレンドチャートを画像化したチャート画像と、既設の制御装置の信号グループのトレンドチャートを画像化したチャート画像と、を生成する。チャート画像化部42は、例えば、一定時間の経過毎に、新設の制御装置の信号グループのトレンドチャートを画像化したチャート画像と、既設の制御装置の信号グループのトレンドチャートを画像化したチャート画像と、を生成する。
【0048】
画像処理部44は、新設の制御装置の信号グループのチャート画像の画像特徴点、及び既設の制御装置の信号グループのチャート画像の画像特徴点を抽出する。
【0049】
異常判定部48は、既設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンを基準となる画像特徴点のパターンとし、新設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンを判定対象となる画像特徴点のパターンとし、これらを比較して一致率を判定することにより、新設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンの異常を判定する。これにより、一致率が所定の閾値未満である場合に、新設の制御装置の動作を異常と判定することができる。
【0050】
次に、鉄鋼プロセスラインを例とし、本実施形態に係るデータ管理装置10の動作を説明する。
図4(a)及び図4(b)は、鉄鋼プロセスラインの一例を模式的に表す概略図である。図4(a)及び図4(b)は、より詳しくは、鉄鋼プロセスラインの入側設備における、鋼板の頭出し自動運転の動作の一例を模式的に表している。図4(a)は、自動運転の開始の状態を模式的に表し、図4(b)は、自動運転の終了の状態を模式的に表している。
【0051】
図4(a)及び図4(b)に表したように、鉄鋼プロセスラインは、鋼板を払い出すリールを駆動するモータD,鋼板位置を検出するセンサA、B、Cを有する。図4(a)に表す自動運転開始前の状態では、鋼板はセンサAの手前(ラインの上流側)にあり、図4(b)で表す自動運転終了後の状態では、鋼板はセンサCの後ろ側(ラインの下流側)にある。
【0052】
図5は、鉄鋼プロセスラインの動作フローの一例を模式的に表すフローチャートである。
図4(a)及び図4(b)に表した例における鉄鋼プロセスラインの動作フローは、図5に表したようになる。この順番は基本不変である。
【0053】
図6(a)及び図6(b)は、鉄鋼プロセスラインの動作フローの一例を模式的に表すトレンドチャートである。
図6(a)及び図6(b)は、図4(a)及び図4(b)に表した例のモータD、センサA、B、Cの信号の自動運転開始から完了までを表したトレンドチャートである。図6(a)及び図6(b)に表したように、トレンドチャートは、図5の動作フローと同様のチャートとなる。
【0054】
図6(a)及び図6(b)は、それぞれ別の製品の鋼板の頭出し自動運転の動作を行った際のトレンドチャートを表す。図6(a)の製品と図6(b)の製品とでは、動作タイミングが若干異なっている。これは、ロール経の摩耗や、制御装置(PLC)のスキャンタイミングなどにより、モータDの運転速度やセンサA、B、Cの検出タイミングに数十~数百ms単位の差異が出てくるためである。しかしながら、いずれの場合も、僅かな誤差を除いて、図5の動作フローに沿った動作パターンになる。
【0055】
図7(a)~図7(c)は、トレンドチャート生成部、チャート画像化部、及び画像処理部の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図7(a)に表したように、トレンドチャート生成部40でトレンドチャートを生成し、生成したトレンドチャートをチャート画像化部42で特定の画素数で画像化することにより、図7(b)に表したように、チャート画像を生成する。そして、生成したチャート画像に対して画像処理部44で画像処理を行うことにより、チャート画像から画像特徴点を抽出する。
【0056】
図8は、正常パターン学習部及び異常判定部の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図8に表したように、画像特徴点情報格納部12bに記憶された画像特徴点情報から、各プラント信号同士の相関関係、プラント自動運転のパターンを認識することができ、正常パターン学習部46にてシステムの正常パターンを学習する。図8では、製品A~製品Gのそれぞれの画像特徴点情報から正常パターンを学習する例を模式的に表している。
【0057】
また、図8では、チャート画像化部42において新たに生成された製品Hのチャート画像において、センサCが故障により信号検出できなかった場合を模式的に表している。このため、製品Hのトレンドチャートでは、センサCのプラント信号が、OFF状態を継続し、モータDのプラント信号が、減速・停止しないという状態となっている。
【0058】
異常判定部48は、正常パターン学習部46で学習された正常パターンと、画像処理部44で新たに抽出された製品Hの画像特徴点の異常パターンと、を比較し、一致率を判定する。この場合、一致率が所定の閾値を下回り、異常判定部48において、異常が判定され、異常警告部50によって異常の発生が報知される。これにより、機器異常や誤動作の発生をオペレータなどに報知し、機器異常や誤動作の発生をオペレータなどに判断させることが可能となる。
【0059】
以上、説明したように、本実施形態に係るデータ管理装置10は、基準となる画像特徴点のパターンと、判定対象となる画像特徴点のパターンと、を比較し、その一致率を判定することにより、判定対象となる画像特徴点のパターンの異常を判定する異常判定部48を有する。これにより、2つの信号グループの比較をより容易に行うことができる。
【0060】
例えば、異常判定部48が、正常操業時の信号グループの画像特徴点のパターンを基準となる画像特徴点のパターンとし、新たに抽出された画像特徴点のパターンを判定対象となる画像特徴点のパターンとすることにより、新たに抽出された画像特徴点のパターンの異常を判定する場合には、対象プラントの自動運転に関して、現在の運転状況が正常であるか異常であるかを、オペレータなどに早急に検知させることができる。
【0061】
例えば、衝突事故などが発生する前に、自動運転の停止処置をすることなどが可能となる。また、正常な運転とのパターンの差異により、異常原因となるバルブ、センサの動作不良、断線等を確認することで、早急に原因を特定することが可能となり、対象プラントのダウンタイムを短縮させることができる。この時、正常な運転パターンとの差異は、調査者の知見ではなく、異常判定部48によって一律に判断される。このため、オペレータなどが、プラントを構成する各種の機器の動作や各プラント信号の内容に関する知見、及び信号グループの比較に関する経験などを必要とすることもない。
【0062】
また、異常判定部48が、既設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンを基準となる画像特徴点のパターンとし、新設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンを判定対象となる画像特徴点のパターンとし、これらを比較して一致率を判定することにより、新設の制御装置の信号グループの画像特徴点のパターンの異常を判定する場合には、オペレータなどの知見、経験則に基づく必要がなく、新旧システムの同一性を容易に判定することが可能となる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
2…プラント制御システム、 10…データ管理装置、 12…データ収集装置、 12a…プラント信号データベース、 12b…画像特徴点情報格納部、 14…ネットワーク、 20…制御部、 22…記憶部、 24…通信部、 26…表示部、 28…操作部、 30…スピーカ、 40…トレンドチャート生成部、 42…チャート画像化部、 44…画像処理部、 46…正常パターン学習部、 48…異常判定部、 50…異常警告部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8