(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】屈折特性測定装置、測定治具、及び屈折特性測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A61B3/028
(21)【出願番号】P 2018247322
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 隆之
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04943151(US,A)
【文献】米国特許第05988814(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0140903(US,A1)
【文献】米国特許第03841760(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363770(US,A1)
【文献】米国特許第04973151(US,A)
【文献】THIBOS N. Larry,"Principles of Hartmann-Shack Aberrometry",Journal of Refractive Surgery,2000年10月31日,Vol. 16,pp. S563-S565
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の屈折特性を測定する屈折特性測定装置であって、
入射する光を絞って光を通過させるピンホール形状あるいはスリット形状の第1の開口及び第2の開口が設けられたディスクと、
前記第1の開口及び前記第2の開口を通過する光が同時に眼に入射するように、前記ディスクから同じ距離離れた、前記ディスクの面に対して平行な平面上の異なる位置から、第1の光及び第2の光を射出する光射出部と、
前記第1の開口を通過した前記第1の光及び前記第2の開口を通過した前記第2の光が前記眼の網膜上に到達する位置の情報から、眼の屈折特性を求める処理部と、を備え、
前記第1の開口は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子を有し、
前記第2の開口は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子を有し、
前記光射出部は、前記第1の光の射出する位置と前記第2の光の射出する位置との間で、前記第1の開口及び前記第2の開口の開口配列方向に沿って相対的な位置ずれができるように、前記第1の光の射出する位置と前記第2の光の射出する位置の少なくとも一方が他方に対して前記開口配列方向に沿って移動可能に構成されて
おり、
前記第1の光と前記第2の光は、波長帯域が異なり、
前記第1の光学素子は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターであり、
前記第2の光学素子は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターである、ことを特徴とする屈折特性測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、眼の網膜上で、前記第1の光の前記開口配列方向における位置と前記第2の光の前記開口配列方向における位置とが合致するときの前記第1の光及び前記第2の光の射出する位置の位置ずれ量を用いて眼の屈折力を算出するように構成される、請求項1に記載の屈折特性測定装置。
【請求項3】
前記光射出部における前記第1の光及び前記第2の光の射出面と前記ディスクとの距離を測定する距離センサを備え、
前記処理部は、前記距離センサで測定した距離、前記位置ずれ量、及び前記第1の開口と前記第2の開口との中心間距離から、眼の屈折力を算出するように構成される、請求項2に記載の屈折特性測定装置。
【請求項4】
前記第1の光と前記第2の光は、偏光特性が異なる直線偏光であり、
前記第1の光学素子は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止する方向に配置した偏光板であり、
前記第2の光学素子は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止する方向に配置した偏光板である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の屈折特性測定装置。
【請求項5】
前記第1の開口及び前記第2の開口の開口配列方向を回転可能にして前記ディスクを支持する支持部材を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の屈折特性測定装置。
【請求項6】
前記支持部材は、眼鏡フレームであり、前記ディスクは、前記眼鏡フレームのレンズ装着部分に装着される、請求項
5に記載の屈折特性測定装置。
【請求項7】
眼の屈折特性を測定する屈折特性測定方法であって、
入射する光を絞って光を通過させるピンホール形状あるいはスリット形状の第1の開口及び第2の開口が設けられたディスクに入射した光が、前記第1の開口及び前記第2の開口を通過して同時に眼に入射するように、前記ディスクから同じ距離離れた位置であって、前記ディスクの面に対して平行な平面上の異なる位置から、第1の光及び第2の光を射出するステップと、
前記第1の開口を通過した前記第1の光及び前記第2の開口を通過した前記第2の光が前記眼の網膜上に到達する位置の情報から、眼の屈折特性を求めるステップと、
前記第1の開口を通過した前記第1の光の、前記第1の開口及び前記第2の開口の開口配列方向における前記眼の網膜上の到達位置と、前記第2の開口を通過した前記第2の光の前記開口配列方向における前記眼の網膜上の到達位置とが合致するように、前記第1の光の射出する位置と前記第2の光の射出する位置との間で、前記開口配列方向に沿って相対的に位置ずれさせるステップと、
前記第1の光の前記開口配列方向における眼の網膜上の到達位置と、前記第2の光の前記開口配列方向における眼の網膜上の到達位置が合致するときの前記第1の光及び前記第2の光の射出する位置の前記開口配列方向に沿った位置ずれ量を用いて眼の屈折力を算出するステップと、を有し、
前記第1の開口は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子を有し、
前記第2の開口は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子を有
し、
前記第1の光と前記第2の光は、波長帯域が異なり、
前記第1の光学素子は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターであり、
前記第2の光学素子は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターである、ことを特徴とする屈折特性測定方法。
【請求項8】
前記第1の光及び前記第2の光は、前記平面上の異なる2つの発光部分の夫々から同時に射出され、
2つの前記発光部分は、前記開口配列方向と直交する方向に沿って配列されており、少なくとも一方の前記発光部分が他方の前記発光部分に対して前記開口配列方向に沿って移動可能に構成されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の屈折特性測定装置。
【請求項9】
前記2つの発光部分は、それぞれ矩形形状であり、それぞれの一辺が互いに重なるように配置された、請求項
8に記載の屈折特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の屈折特性を測定する屈折特性測定装置及び屈折特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡やコンタクトレンズを処方する際に必要な屈折矯正量を測定するために、一般的に眼の屈折検査が行なわれる。
屈折検査には、呈示された視標や光に被検者自身が応答して検査を行う自覚式検査と、照射した光を眼球の外から観察することで検査を行う他覚式検査がある。
自覚式検査として一般的に行われているのがレンズ交換法である。レンズ交換法は、視力表を用いて矯正レンズを交換しながら、最良視力が得られる最もプラス寄りの屈折力(度数)を求める。矯正レンズを収める試験枠と検眼レンズセットがあればレンズ交換法は実施可能であるが、矯正レンズの屈折力(度数)を僅かに変更しながら同じ視力検査の作業を繰り返す必要があり、作業が煩雑である。また、乱視矯正の場合は、矯正レンズを交換しながら、直前の状態での見え方を記憶して比較する必要があり、手間と忍耐が必要である。
【0003】
一方、他覚式検査では、オートレフラクトメータを用いた方法や検影法が一般的に用いられる。
オートレフラクトメータには、Scheinerの原理に基づき2本(あるいは複数本)の細い光束を眼底に照射し、それらの眼底上での相対位置関係から屈折力(度数)を求める合致式や、眼底に照射した像を撮像素子で取り込み画像解析することで屈折力(度数)を求める画像解析式などがある。これらオートレフラクトメータは検者の熟練度を要さずに短時間での検査が可能であるが非常に高価である。
【0004】
例えば、眼の屈折力(度数)の検査を、自覚式検査で簡単に行う方法及び装置が提案されている(特許文献1)。
上記方法及び装置によれば、2つの離間した光ビームを光源から眼に向けて交互に射出し、1つのピンホールを通過する光を被験者は見る。このとき、1つのピンホールを有する回転板を回転させ、ピンホールの位置が互いに180度離れた対向する2つの位置(例えば、鉛直線上の最上位置と最下位置)に来るタイミングに合わせて2つの光ビームを交互に射出させ、この2つの光ビームが、網膜上の同じ到達位置に来るように、光ビーム間の距離を調整する。2つの光ビームの点が網膜上の同じ到達位置に来るときの光ビーム間の距離を測定して眼の屈折力を算出する。また、2つのピンホールを用い、2つの光ビームを交互に射出し、一方の光ビームの射出のタイミングに合わせて、一方のピンホールを遮蔽する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記装置では、1つのピンホールを有する回転板を一定の速度で回転させるための専用装置、及びピンホールが対向する所定の2つの位置に来るタイミングに合わせて光ビームを射出するための専用装置等が必要になる。
また、2つのピンホールを用い、2つの光ビームを交互に射出する場合、一方の光ビームの射出のタイミングに合わせて、一方のピンホールを遮蔽するための専用装置が必要となる。
このため、上記装置は煩雑な構成であり、自覚式検査で個人で眼の屈折力を測定するための簡素な構成とはいえない。
【0007】
また、この装置では、2つの光ビームを交互に射出するので、眼の網膜に到達する光ビームの到達位置が合致しているか否かを判断するには、以前に網膜に到達した光ビームの到達位置を正確に記憶しておく必要があるが、この記憶を頼りにして合致しているか否かを判断して屈折力を測定するので、精度の良い測定結果は得られ難い。
一方、網膜に到達した光ビームの到達位置の記憶を不要とするには、2つの光ビームを同時に射出し、2つのピンホールを用いて眼に光ビームを到達させることが好ましい。しかし、この場合、1つのピンホールに2つの光ビームが通過するので、2つのピンホールから眼の網膜に到達する光ビームの到達位置は4つになる。すなわち、被験者には、4つの光の点が見えることになる。
このため、被験者自ら眼の屈折特性を測定する自覚式検査において、4つの到達位置のうち、どの到達位置が合致しているか否かを比較すればよいのか、被験者にとってはわからない。
【0008】
そこで、本発明は、眼の屈折特性を測定する際、簡素な構成で、測定者(被験者)による光ビームの到達位置の記憶を不要とする精度の高い測定を行なうことができる屈折特性測定装置、測定治具、及び屈折装置測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、眼の屈折特性を測定する屈折特性測定装置である。当該屈折特性測定装置は、
入射する光を絞って光を通過させるピンホール形状あるいはスリット形状の第1の開口及び第2の開口が設けられたディスクと、
前記第1の開口及び前記第2の開口を通過する光が同時に眼に入射するように、前記ディスクから同じ距離離れた、前記ディスクの面に対して平行な平面上の異なる位置から、第1の光及び第2の光を射出する光射出部と、
前記第1の開口を通過した前記第1の光及び前記第2の開口を通過した前記第2の光が前記眼の網膜上に到達する位置の情報から、眼の屈折特性を求める処理部と、を備える。
前記第1の開口は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子を有し、
前記第2の開口は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子を有する。
【0010】
前記光射出部は、前記第1の光の射出する位置と前記第2の光の射出する位置との間で、前記第1の開口及び前記第2の開口の開口配列方向に沿って相対的な位置ずれができるように、前記第1の光の射出する位置と前記第2の光の射出する位置の少なくとも一方が移動可能に構成されている、ことが好ましい。
【0011】
前記処理部は、眼の網膜上で、前記第1の光の前記開口配列方向における位置と前記第2の光の前記開口配列方向における位置とが合致するときの前記第1の光及び前記第2の光の射出する位置の位置ずれ量を用いて眼の屈折力を算出するように構成される、ことが好ましい。
【0012】
前記光射出部における前記第1の光及び前記第2の光の射出面と前記ディスクとの距離を測定する距離センサを備え、
前記処理部は、前記距離センサで測定した距離、前記位置ずれ量、及び前記第1の開口と前記第2の開口との中心間距離から、眼の屈折力を算出するように構成される、ことが好ましい。
【0013】
前記第1の光と前記第2の光は、波長帯域が異なり、
前記第1の光学素子は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターであり、
前記第2の光学素子は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターである、ことが好ましい。
【0014】
前記第1の光と前記第2の光は、偏光特性が異なる直線偏光であり、
前記第1の光学素子は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止する方向に配置した偏光板であり、
前記第2の光学素子は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止する方向に配置した偏光板である、ことも好ましい。
【0015】
前記第1の開口及び前記第2の開口の開口配列方向を回転可能にして前記ディスクを支持する支持部材を有する、ことが好ましい。
【0016】
前記支持部材は、眼鏡フレームであり、前記ディスクは、前記眼鏡フレームのレンズ装着部分に装着される、ことが好ましい。
【0017】
本発明の他の一態様は、眼の前方から第1の光と第2の光の入射を受けて眼の屈折特性を測定する際に、前記第1の光および前記第2の光の射出位置と眼の間に配置する測定冶具である。当該測定治具は、
入射する前記第1の光及び前記第2の光を絞って通過させ、通過した前記第1の光及び前記第2の光を眼の網膜に到達させるように構成されたピンホール形状あるいはスリット形状の第1の開口及び第2の開口が設けられたディスクと、
前記ディスクを眼の前方で固定する支持部材と、を備える。
前記第1の開口を通過した前記第1の光及び前記第2の開口を通過した前記第2の光が前記眼の網膜上に到達する到達位置を識別可能にするために、
前記第1の開口は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子を有し、
前記第2の開口は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子を有する。
【0018】
本発明のさらに他の一態様は、眼の屈折特性を測定する屈折特性測定方法である。当該方法は、
入射する光を絞って光を通過させるピンホール形状あるいはスリット形状の第1の開口及び第2の開口が設けられたディスクに入射した光が、前記第1の開口及び前記第2の開口を通過して同時に眼に入射するように、前記ディスクから同じ距離離れた位置であって、前記ディスクの面に対して平行な平面上の異なる位置から、第1の光及び第2の光を射出するステップと、
前記第1の開口を通過した前記第1の光及び前記第2の開口を通過した前記第2の光が前記眼の網膜上に到達する位置の情報から、眼の屈折特性を求めるステップと、を有する。
前記第1の開口は、前記第1の光を透過させ、前記第2の光の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子を有し、
前記第2の開口は、前記第2の光を透過させ、前記第1の光の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子を有する。
【0019】
前記屈折特性測定方法は、
前記第1の開口を通過した前記第1の光の、前記第1の開口及び前記第2の開口の開口配列方向における前記眼の網膜上の到達位置と、前記第2の開口を通過した前記第2の光の前記開口配列方向における前記眼の網膜上の到達位置とが合致するように、前記第1の光の射出する位置と前記第2の光の射出する位置との間で、前記開口配列方向に沿って相対的に位置ずれさせるステップと、
前記第1の光の前記開口配列方向における眼の網膜上の到達位置と、前記第2の光の前記開口配列方向における眼の網膜上の到達位置が合致するときの前記第1の光及び前記第2の光の射出する位置の前記開口配列方向に沿った位置ずれ量を用いて眼の屈折力を算出するステップと、を有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上述の屈折特性測定装置、測定治具、及び屈折装置測定方法によれば、簡素な構成で、測定者(被験者)による光ビームの到達位置の記憶を不要とする精度の高い測定を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)~(e)は、一実施形態の屈折特性の測定を説明する図である。
【
図2】(a)、(b)は、実際の発光部分と、眼で見える発光部分の像の例を示す図である。
【
図3】一実施形態の屈折特性測定装置の構成を説明する図である。
【
図4】一実施形態の処理装置が行う眼の屈折力の算出方法を説明する図である。
【
図5】(a)~(d)は、眼の屈折特性を測定する他の例を説明する図である。
【
図6】眼の屈折力の方向依存性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る屈折特性測定装置及び屈折特性測定方法を添付の図に基づいて説明する。
【0023】
(実施形態の屈折特性の測定)
一般に、異なる二つの開口を通過した光はレンズで屈折し、焦点位置で一つになり、焦点位置から外れた場所では二つに分離する。この原理はScheinerの原理として知られている。この原理に従って視標を視力測定の被験者に呈示した時に、視標から射出して、ピンホール形状あるいはスリット形状の2つの開口を通過した光の像が、眼のレンズを通して視標の像が一つに見えるか二つに見えるかを判断することができるが、二つの像のずれ量を自覚で定量的に、例えばずれ量が何mmであるといったように答えることは難しい。しかし、視標内の一部分を他の部分に対して適切に位置ずれさせた場合、互いに離間した2つの開口を通過した視標の像が一つに見える。このときの視標の位置ずれ量を測定し、この位置ずれ量を用いて、眼の屈折特性を求めることができる。
本明細書において、眼の屈折特性とは、裸眼の屈折特性の他、矯正レンズで矯正された眼の屈折特性、すなわち裸眼と矯正レンズ(眼鏡レンズあるいはコンタクトレンズ)の屈折特性を合計した屈折特性も含む。屈折特性とは、屈折力の他、後述する適正な眼の屈折力に対する屈折力の大小(裸眼の場合、近視あるいは遠視の種類)、さらには、乱視のように屈折力の方位方向依存性と、屈折力の上記最大及び上記最小の差の情報を含む。
【0024】
図1(a)~(e)は、実施形態の屈折特性の測定を説明する図である。ディスクには、ピンホール形状の開口、あるいはスリット形状の開口があけられている。以降の説明では、開口としてピンホールの例を用いて説明する。なお、開口として2つのスリット形状の開口を用いる場合、2つのスリットは互いに平行に設けられる。
図1(a)は、入射する光を絞って光を通過させる第1のピンホール10及び第2のピンホール12が設けられたディスク14の一例を示す。第1のピンホール10と第2のピンホール12の大きさは同じであり、第1のピンホール10と第2のピンホール12の大きさ(例えば直径)及び第1のピンホール10と第2のピンホール12の中心間距離は、Scheinerの原理が発現する程度に設定される。例えば、第1のピンホール10と第2のピンホール12の大きさは0.5~2mmであり、第1のピンホール10と第2のピンホール12の中心間距離(間隔)は、2~5mmである。
【0025】
図1(b)は、第1のピンホール10及び第2のピンホール12を通過する光が同時に眼に入射するように、第1の光L1及び第2の光L2を射出する光射出装置(光射出部)が呈示する視票の表示例を示す。光射出装置は、第1の光L1及び第2の光L2を射出する光源であり、あるいは、第1の光L1及び第2の光L2を射出するディスプレイ画面であってもよい。
図1(b)に示す視標として、2つの矩形形状の発光部分16、18が示されている。発光部分16、18の一辺は、互いに重なっているが、重ならなくてもよい。しかし、網膜上の発光部分16、18の像が位置ずれしているか否かを正確に判断するためには、発光部分16、18の一辺同士が重なっていることが好ましい。発光部分16、18には、方位方向を示す角度の目盛りが10度刻みで表されている。発光部分16、18は、後述するように、屈折特性の方位方向依存性を測定するために、発光部分16、18は、傾斜方向を例えば10度刻みで調整することができる。目盛りは、発光部分16、18の傾斜方向を変えるときの指標として用いられる。
なお、本実施形態では、視標として、自ら光を射出する発光部分16、18を用いて説明するが、入射した光の反射光を第1の光L1及び第2の光L2として射出する印刷物であってもよい。すなわち、一例として光射出装置を含む光射出部には、反射光を第1の光L1及び第2の光L2とする印刷物も含まれる。
【0026】
図1(c)~(e)は、発光部分16、18から射出した第1の光L1及び第2の光L2が第1のピンホール10、第2のピンホール12に入射したときの光の軌跡の一例を示している。
図1(d)に示すように、眼の屈折特性が適正な場合、第1のピンホール10を通過した第1の光L1の網膜上に到達する位置は、第2のピンホール12を通過した第2の光L2の網膜上に到達する位置と、第1のピンホール10と第2のピンホール12の開口配列方向において合致する。すなわち、測定者(被験者)は、第1の光L1と第2の光L2の像が開口配列方向において重なって見える。したがって、第1の光L1と第2の光L2の像が重なって見える眼の屈折特性を、適正な屈折特性あるいは適正な屈折力という。
一方、適正な眼の屈折力に対して眼の屈折力が大きい場合、例えば近視、あるいは矯正後の眼の屈折力(眼と矯正レンズの屈折力の合計)が適正な眼の屈折力よりも大きい場合、
図1(c)に示すように、第1の光L1と第2の光L2は、網膜に到達する前に交差して、第1の光L1と第2の光L2の位置ずれが生じる。
図1(c)に示す例では、第1の光L1が、第2の光L2に対して開口配列方向右側に位置ずれする。開口配列方向とは、第1のピンホール10と第2のピンホール12の配列方向をいう。
図1(a)に示す開口配列方向は、水平方向である。
一方、適正な眼の屈折力に対して眼の屈折力が小さい場合、例えば遠視、あるいは矯正後の眼の屈折力(眼と矯正レンズの屈折力の合計)が適正な眼の屈折力よりも小さい場合、
図1(e)に示すように、第1の光L1と第2の光L2は、網膜上で交差せず、さらに網膜に到達する前に交差せず、網膜に到達する。このため、第1の光L1と第2の光L2は、網膜上で位置ずれする。
図1(e)に示す例では、第1の光L1が、第2の光L2に対して開口配列方向左側に位置ずれする。
したがって、本実施形態では、眼の屈折力が適正な屈折力でない場合、第1の光L1と第2の光L2が網膜上に到達する到達位置が開口配列方向において合致するように、予め、発光部分16、18を配列方向に沿って互いに位置ずれさせる。
【0027】
図2(a)、(b)は、実際の発光部分16、18と、眼で見える発光部分16、18の像の例を示す図である。
図2(a)に示す例は、
図1(c)に示す状態で見える像を示している。
図2(a)の左側に示すように、実際の発光部分16、18が位置ずれしていない場合、測定者(被験者)には、発光部分16、18の像は、
図2(a)の右側に示すように、水平方向(開口配列方向)において、発光部分16の像が発光部分18の像に対して左側に位置ずれして見える(視神経の作用により網膜上の位置ずれと逆方向の位置ずれとして見える)。
したがって、
図2(b)の左側に示すように、実際の発光部分16、18が相対的に位置ずれし、例えば、発光部分16が開口配列方向に移動して発光部分18に対して相対的に位置ずれし、その位置ずれ量δが適正な場合、測定者(被験者)には、発光部分16、18の像は、
図2(b)の右側に示すように、発光部分16の像と発光部分18の像の水平方向(開口配列方向)の位置が合致して見える。なお、発光部分16、18の相対的な位置ずれは、発光部分16、18の一方が、移動して相対的な位置ずれをしてもよいし、発光部分16、18の双方が開口配列方向の逆方向に移動して相対的な位置ずれをしてもよい。
したがって、
図2(b)に示す位置ずれ量δを測定することにより、後述する式(2)にしたがって眼の屈折力を測定することができる。
このような原理により、本実施形態では、眼の屈折特性を測定することができる。
【0028】
しかし、発光部分16から射出した第1の光L1は、第1のピンホール10の他に、第2のピンホール12も通過する。この場合、網膜上には、第1の光L1の到達位置が2つ存在する。同様に、第1の光L1と同時に射出した第2の光L2は、第2のピンホール12の他に、第1のピンホール10も通過するので、網膜上には、第2の光L2の到達位置が2つ存在する。したがって、適正な眼の屈折力を持たない測定者(被験者)には、4つの発光部分16、18の像が見える。このため、発光部分16、18の像の位置ずれの有無を正しく判断することは難しい。
本実施形態では、
図1(a)に示すように、第1のピンホール10は、第1の光L1を透過させ、第2の光L2の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子10Aを有し、第2のピンホール12は、第2の光L2を透過させ、第1の光L1の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子12Aを有する。
これにより、第1のピンホール10を通過して網膜に到達する光は第1の光L1であり、第2のピンホール12を通過して網膜に到達する光は第2の光L2であり、第1の光L1が第2のピンホール12を通過して網膜に到達することはなく、第2の光L2が第1のピンホール10を通過して網膜に到達することはない。この結果、測定者(被験者)には、2つの発光部分16、18の像が見えるので、発光部分16、18の像の位置ずれの有無を正確に判断することができる。
【0029】
(屈折特性測定装置)
図3は、一実施形態の屈折特性測定装置20の構成を説明する図である。
屈折特性測定装置20は、ディスク14と、光射出装置(光射出部)22と、処理装置(処理部)26と、を主に有する。
【0030】
ディスク14は、上述したように、入射する光を絞って光を通過させる第1のピンホール10及び第2のピンホール12が設けられている。ディスク14は眼鏡枠24によって支持されて構成された測定用眼鏡32として測定者(被験者)に着用される。
【0031】
光射出装置22は、第1のピンホール10及び第2のピンホール12を通過する光が同時に眼に入射するように、第1の光L1及び第2の光L2を射出する。光射出装置22の第1の光L1及び第2の光L2の射出位置は、
図1(b)に示すように、ディスク14から同じ距離離れた位置であって、ディスク14の面に対して平行な平面上の異なる位置にある。光射出装置22は、ディスク14に対して眼と反対側に設けられる。
図3に示す光射出装置22は、処理装置26に接続されたディスプレイである。なお、光射出装置22は、ディスプレイに制限されず、2つの光源であってもよい。
【0032】
処理装置26は、例えば、コンピュータで構成され、第1のピンホール10を通過した第1の光L1及び第2のピンホール12を通過した第2の光L2が眼の網膜上に到達する到達位置の情報から、眼の屈折特性を求めるように構成されている。眼の屈折特性には、上述したように、屈折力の他に、眼の屈折力の適正な屈折力に対する大小の情報(裸眼の場合、近視あるいは遠視等の種類)が少なくとも含まれる。処理装置26には、光射出装置22が接続され、入力操作系28が接続されている。処理装置26による屈折力の算出については後述する。
【0033】
入力操作系28は、例えば、キーボードやマウスで構成され、測定者(被験者)が光射出装置22の発光部分16、18の配列方向あるいは位置ずれ等を変更することができるように、指示入力することができる。したがって、測定者(被験者)に見える発光部分16、18の像が位置ずれしないように、光射出装置22における発光部分16、18の位置ずれ量を、入力操作系28を通して処理装置26に指示入力することができる。処理装置26は、位置ずれ量の入力に応じて、
図2(b)に示すように、位置ずれした発光部分16、18を視標として光射出装置22が表示するように制御する。
【0034】
屈折特性測定装置20は、さらに、測定者(被験者)の眼が所定の位置に配置されるように顔を載せる基台34と、距離センサ30とを有する。
距離センサ30は、屈折特性の測定に際して、正確な屈折力を算出するために、光射出装置22からディスク14までの観察距離dを測定する。距離センサ30は、例えばレーザ距離計等を用いることができる。距離センサ30による測定結果は、処理装置26に送られる。
【0035】
図4は、処理装置26が行う眼の屈折力の算出方法を説明する図である。光射出装置22とディスク14との間の観察距離をd[mm]とし、遠点距離をk[mm]とし、測定者(被験者)に見える発光部分16、18の像の開口配列方向の位置ずれがなくなるように調整した発光部分16、18の位置ずれ量をδ[mm]とし、第1のピンホール10と第2のピンホール12との間の中心間距離の半分をh[mm]としたとき、位置ずれ量δ及び屈折力Kは、下記式(1)、(2)のように表わすことができる。したがって、処理装置26は、式(2)を用いて、屈折力Kを算出する。Dは、距離センサ30による測定により得られた観察距離dから算出することができる。また、第1のピンホール10と第2のピンホール12との間の間隔は既知であるので、hの値も既知である。δも、入力操作系28を通して設定されるので処理装置26において既知である。
δ = h・(D-K)/D (1)
K = D・(h-δ)/h (2)
(D[m
-1]=1000/d、K[m
-1]=1000/k)
【0036】
本実施形態では、第1のピンホール10は、第1の光L1を透過させ、第2の光L2の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子10Aを有し、第2のピンホール12は、第2の光L2を透過させ、第1の光L1の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子12Aを有するので、網膜に同時に写る発光部分16、18の像は2つである。このため、発光部分16、18の位置ずれの有無を正確に判断することができるので、測定者(被験者)による発光部分16、18の一方の位置を記憶する必要がなく精度の高い測定を行なうことができる。しかも、従来のように、1つのピンホールを回転させ、回転位置に同期させてストロボ光のように光を射出する専用装置もないので、簡素な構成で、眼の屈折特性を測定することができる。
【0037】
一実施形態によれば、第1の光L1と第2の光L2は、偏光特性が異なる直線偏光であり、第1の光学素子10Aは、第1の光L1を透過させ、第2の光L2の透過を阻止する方向に配置した偏光板であり、第2の光学素子12Aは、第2の光L2を透過させ、第1の光L1の透過を阻止する方向に配置した偏光板である、ことが好ましい。これにより、第1のピンホール10から眼に入る光は第1の光L1とし、第2のピンホール12から眼に入る光は第2の光L2とすることができる。
【0038】
また、一実施形態によれば、第1の光L1と第2の光L2は、波長帯域が異なる光であり(すなわち、第1の光L1と第2の光L2は、色が異なり)、第1の光学素子10Aは、第1の光L1を透過させ、第2の光L2の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターであり、第2の光学素子12Aは、第2の光L2を透過させ、第1の光L1の透過を阻止するように波長帯域が設定された光フィルターである、ことが好ましい。これにより、第1のピンホール10から眼に入る光を第1の光L1とし、第2のピンホール12から眼に入る光を第2の光L2とすることができる。しかも、測定者(被験者)は、位置ずれしている発光部分16、18の光の色によって、どちらの色の光が他の光に対して右に位置ずれしたか、容易に識別できるので、適正な眼の屈折力に対する眼の屈折力の大小(裸眼の場合、近視あるいは遠視の種類)を容易に判断することができる。
【0039】
上述したように、光射出装置22は、第1の光L1の射出する位置と第2の光L2の射出する位置との間で、開口配列方向に沿って相対的な位置ずれができるように、第1の光L1の射出する位置と第2の光L2の射出する位置の少なくとも一方が移動可能に構成されているので、
図2(b)に示すように、実際の光射出装置22における発光部分16、18の位置ずれ量を調整して、測定者(被験者)に見える発光部分16、18の像において開口配列方向における位置ずれがないようにすることができるので、精度良く屈折力を算出することができる。
【0040】
処理装置26は、発光部分16から射出する第1の光L1の網膜上の開口配列方向における到達位置と、発光部分18から射出する第2の光L2の網膜上の開口配列方向における到達位置が、合致するときの第1の光L1及び第2の光L2の射出する位置の開口配列方向に沿った位置ずれ量を用いて眼の屈折力を算出するように構成されるので、式(2)に示すような簡易な式により精度良く屈折力を算出することができる。
【0041】
屈折特性測定装置20は、光射出装置26における第1の光L1及び第2の光L2の射出面とディスク14との距離を測定する距離センサ30を備えるので、光射出面22に対して基台34を任意の位置に設置しても、式(2)を用いて精度良く屈折力を算出することができる。
【0042】
図5(a)~(d)は、眼の屈折特性を測定する他の例を説明する図である。上述の実施形態では、
図1(a)に示すように、第1のピンホール10と第2のピンホール12の配列方向である開口配列方向を水平方向にしているので、眼の水平方向の屈折特性が測定される。眼の鉛直方向の屈折特性を測定する場合、
図5(a)に示すように、開口配列方向を鉛直方向にする。これとともに、
図5(b)に示すように、視標である発光部分16,18の配列方向も水平方向とするように発光部分16,18の向きを変更する。これにより、測定者(被験者)に見える発光部分16、18の像が開口配列方向に位置ずれせず、開口配列方向における位置が合致するように、発光部分16、18の位置ずれ量δを定める。これにより、眼の鉛直方向の屈折特性を測定することができ、上述した式(2)にしたがって処理装置26は眼の鉛直方向の屈折力を算出することができる。
【0043】
図5(c)、(d)は、水平方向に対して30度傾斜した傾斜方向の眼の屈折特性を測定する場合の例を示す。
図5(c)、(d)に示す例では、開口配列方向は、水平方向に対して30度傾斜した方位方向である。これとともに、
図5(d)に示すように、視標である発光部分16、18も鉛直方向に対して30度の傾斜方向を向くように発光部分16、18の向きを変更する。これにより、測定者(被験者)に見える発光部分16、18の像が開口配列方向に位置ずれせず、開口配列方向における発光部分16、18の像の位置が合致するように、発光部分16、18の開口配列方向に沿った位置ずれ量δを設定する。これにより、水平方向に対して30度傾斜した方位方向の眼の屈折特性を測定することができ、上述した式(2)にしたがって、処理装置26は、水平方向に対して30度傾斜した方位方向の眼の屈折力を算出することができる。
【0044】
例えば、眼の水平方向、鉛直方向、及び45度の方位方向のように、少なくとも3つの方位方向の屈折力を測定して算出することにより、眼の屈折力の方位方向に対する変化の情報を得ることができる。
図6は、眼の屈折力(図中では屈折誤差と記載している)の方位方向依存性の一例を示す図である。
図6に示す例では、水平方向(方位0度)と垂直方向(方位90度)と、傾斜方向(方位45度)の屈折力を測定した後、正弦波でカーブフィッティングすることにより、眼の屈折力の方位方向依存性の情報を得ることができる。これにより、眼の屈折力が最大、最小になる方位方向を知ることができるので、例えば、乱視における乱視軸の方向と乱視の強さ(最大の屈折力と最小の屈折力との差)の情報を得ることができる。このような処理は処理装置26で行われ、眼の屈折力の方位方向依存性の情報を屈折特性として得ることができる。
【0045】
したがって、ディスク14を支持する支持部材24(
図3参照)は、第1のピンホール10と第2のピンホール12の配列方向である開口配列方向を回転可能にしてディスク14を支持することが好ましい。これにより、眼の屈折特性の方位方向依存性を容易に測定することができる。
支持部材24は、例えば、眼鏡フレームであり、ディスク14は、眼鏡フレームのレンズ装着部分に装着されることが好ましい。これにより、ディスク14を眼の前方に確実に配置することができる。
【0046】
以上説明した実施形態の屈折特性測定装置20は、眼の屈折特性の測定を容易に行うことができるが、さらに別の一実施形態として、眼の前方から第1の光L1と第2の光L2の入射を受けて眼の屈折特性を測定する際に、第1の光L1および第2の光L2の射出位置と眼の間に配置する測定冶具が提供される。測定治具の一例として、上述の眼鏡フレームが挙げられる。
この場合、測定治具は、ディスクと、支持部材と、を有する。
ディスクは、ディスク14と同様に、入射する第1の光L1及び第2の光L2を絞って通過させ、通過した第1の光L1及び第2の光L2を眼の網膜に到達させるように構成された第1のピンホール10及び第2のピンホール12が設けられる。
なお、ディスクも、第1のピンホール10を通過した第1の光L1及び第2のピンホール12を通過した第2の光L2が眼の網膜上に到達する到達位置を識別可能にするために、第1のピンホール10は、第1の光L1を透過させ、第2の光L2の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子10Aを有し、第2のピンホール12は、第2の光L2を透過させ、第1の光L1の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子12Aを有する。
このような測定治具を用いて、測定者(被験者)は眼の屈折特性を測定することができる。この場合、用意した発光部分16、18を用いる。例えば、コンピュータに接続されたディスプレイ上に発光部分16、18を描画して発光部分16、18を視標として用いることができる。勿論、反射光を利用した視標として、印刷物を用いることもできる。
【0047】
また、一実施形態によれば、以下の屈折特性測定方法が提供される。
(1)入射する光を絞って光を通過させる第1のピンホール10及び第2のピンホール12が設けられたディスク14に入射した光が、第1のピンホール10及び第2のピンホール12を通過して同時に眼に入射するように、ディスク14から同じ距離離れた、測定する眼の側から見て奥行き方向の位置であって、ディスク14の面に対して平行な平面上の異なる位置から、第1の光L1及び第2の光L2を射出する。
(2)第1のピンホール10を通過した第1の光L1及び第2のピンホール12を通過した第2の光L2が眼の網膜上に到達する開口配列方向の位置の情報から、眼の屈折特性を求める。
(3)このとき、第1のピンホール10は、第1の光L1を透過させ、第2の光L2の透過を阻止する透過特性を有する第1の光学素子10Aを有し、第2のピンホール12は、第2の光L2を透過させ、第1の光L1の透過を阻止する透過特性を有する第2の光学素子12Aを有する。
【0048】
このとき、一実施形態によれば、
(4)第1のピンホール10を通過した第1の光L1の、開口配列方向における到達位置と、第2のピンホール12を通過した第2の光L2が眼の網膜上の開口配列方向における到達位置とが合致するように、第1の光L1の射出する位置と第2の光L2の射出する位置との間で、第1のピンホール10及び第2のピンホール12の開口配列方向に沿って、相対的に位置ずれさせる。
(5)眼の網膜上で、第1の光L1の開口配列方向における到達位置と第2の光L2の開口配列方向における到達位置が合致するときの第1の光L1と第2の光L2の射出する位置の開口配列方向に沿った位置ずれ量δを用いて眼の屈折力を算出する。これにより、眼の屈折力を容易に算出することができる。
【0049】
以上、本発明の屈折特性測定装置、測定治具、及び屈折特性測定方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
10 第1のピンホール
10A 第1の光学素子
12 第2のピンホール
12A 第2の光学素子
14 ディスク
16、18 発光部分
20 屈折特性測定装置
22 光射出装置
24 支持部材
26 処理装置
28 入力操作系
30 距離センサ
32 測定用眼鏡
34 基台