(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 1/835 20060101AFI20240620BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20240620BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20240620BHJP
C11D 1/52 20060101ALI20240620BHJP
C11D 1/40 20060101ALI20240620BHJP
C23G 5/024 20060101ALI20240620BHJP
C23G 5/06 20060101ALI20240620BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C11D1/835
C11D3/43
C11D3/20
C11D1/52
C11D1/40
C23G5/024
C23G5/06
B08B3/08 A
(21)【出願番号】P 2019236218
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】青柳 功
(72)【発明者】
【氏名】吉田 瑞穂
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009142(WO,A1)
【文献】特開2015-074777(JP,A)
【文献】特開2005-048000(JP,A)
【文献】特開平08-231993(JP,A)
【文献】特開2017-179287(JP,A)
【文献】特開平04-059985(JP,A)
【文献】特開2017-031326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
C23G 1/00- 5/06
B08B 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系溶剤(A)と、界面活性剤(B)と、エステル化合物(C)と、水(W)とを含有し、
前記炭化水素系溶剤(A)は、炭素原子数7~22の脂肪族飽和炭化水素系溶剤を含み、
前記界面活性剤(B)は、脂肪酸アルカノールアミド(B1)及びN-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)を含
み、
前記エステル化合物(C)は、下記一般式(C-1)で表される化合物(C1)を含み、
前記炭化水素系溶剤(A)の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、10質量%以上90質量%以下であり、
前記脂肪酸アルカノールアミド(B1)の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であり、
前記N-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下であり、
前記エステル化合物(C)の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、5質量%以上30質量%以下であり、
前記水(W)の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、5質量%以上30質量%以下である、洗浄剤組成物。
【化1】
[式中、R
1
及びR
2
は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の1価の脂肪族炭化水素基である。Xは、単結合又は炭素原子数1~8の2価の脂肪族炭化水素基である。]
【請求項2】
前記N-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)は、下記一般式(B2-1)で表される化合物である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【化2】
[式中、R
3は、炭素原子数7~22のアルキル基である。R
4は、炭素原子数7~22のアルキル基又はアルケニル基である。]
【請求項3】
前記炭化水素系溶剤(A)は、
炭素原子数7~22の直鎖状の飽和炭化水素系溶剤を含む、請求項1
又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
金属加工によって被洗浄物の表面に焼き付いた汚れを除去するための洗浄剤として用いる、請求項1~
3のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記エステル化合物(C)は、シュウ酸ジメチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジエチルである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物を用いて、被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄剤組成物が付着した被洗浄物を、前記炭化水素系溶剤(A)、前記界面活性剤(B)及び前記エステル化合物(C)を含有するすすぎ液、前記炭化水素系溶剤(A)及び前記エステル化合物(C)からなるすすぎ液、又は、前記炭化水素系溶剤(A)からなるすすぎ液ですすぐすすぎ工程と、
前記すすぎ工程において、前記洗浄剤組成物中の水(W)が混入したすすぎ液から、少なくとも一部の水(W)を系外に排出する排出工程とを有する、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物及び当該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車・車両関連部品、機械部品、電気・電子部品、光学機器部品等の各種工業分野において扱われる部品の加工の際、(i)鉱物油等を主体とする不水溶性加工油、(ii)鉱物油等に界面活性剤を加えて水に分散させた水溶性加工油、(iii)研磨剤等の微粒子などが使用されている。
【0003】
切削や研削加工などを中心に水溶性加工油が多く使用されているが、複数の加工工程を経て製造される部品は、工程毎に使用される加工油が異なることがある。加工後の部品の表面には不水溶性加工油、水溶性加工油、加工屑等の様々な汚れが混ざった状態で付着している場合が多い。
また、石油精製プラントや化学プラント等の各種工場の配管や装置;自動車や産業機械等を解体した部品;日常生活で使用される金属製品、樹脂製品、及び繊維製品等の種々の物品等にも、グリース、プラスチック、機械油、コールタール、粘土、砂、脂肪質等の様々な汚れが複合して付着している。
【0004】
不水溶性加工油や水溶性加工油などの有機や無機の様々な汚れが付着した部品を洗浄する場合には、W/O型マクロエマルションを形成した洗浄剤を用いることが知られている。
例えば、特許文献1には、沸点130~350℃の炭化水素(A)を20~60質量部と、沸点130~350℃の水に微溶であって、水酸基を有しない極性有機化合物(B)を40~80質量部と、水(C)を前記炭化水素(A)および前記水酸基を有しない極性有機化合物(B)の合計100質量部に対し1.0~100質量部の割合で含み、静置の際、前記炭化水素(A)と前記水酸基を有しない極性有機化合物(B)とが相溶した有機相と前記水(C)相とに2相分離し、洗浄の際、物理力の付加によりW/Oマクロエマルションを形成することにより、有機から無機までの幅広い汚れが洗浄可能であることを特徴とする洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の洗浄剤組成物において、ステンレスの深絞り加工等の金属加工によって生じる、該金属表面に焼き付いた汚れ等の難洗浄性の汚れの洗浄性については、さらなる検討の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ステンレスの深絞り加工等の金属加工によって生じる、該金属表面に焼き付いた汚れの洗浄性に優れる洗浄剤組成物、及び当該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、炭化水素系溶剤(A)と、界面活性剤(B)と、エステル化合物(C)と、水(W)とを含有し、前記界面活性剤(B)は、脂肪酸アルカノールアミド(B1)及びN-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)を含む、洗浄剤組成物である。
【0009】
本発明の第1の態様に係る洗浄剤組成物において、エステル化合物(C)は、下記一般式(C-1)で表される化合物(C1)を含んでいてもよい。
【0010】
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の1価の脂肪族炭化水素基である。Xは、単結合又は炭素原子数1~8の2価の脂肪族炭化水素基である。]
【0011】
本発明の第1の態様に係る洗浄剤組成物において、N-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)は、下記一般式(B2-1)で表される化合物であってもよい。
【0012】
【化2】
[式中、R
3は、炭素原子数7~22のアルキル基である。R
4は、炭素原子数7~22のアルキル基又はアルケニル基である。]
【0013】
本発明の第1の態様に係る洗浄剤組成物において、炭化水素系溶剤(A)は、飽和炭化水素系溶剤であってもよい。
【0014】
本発明の第1の態様に係る洗浄剤組成物は、金属加工によって被洗浄物の表面に焼き付いた汚れを除去するための洗浄剤として用いてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る洗浄剤組成物を用いて、被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄剤組成物が付着した被洗浄物を、前記炭化水素系溶剤(A)、前記界面活性剤(B)及び前記エステル化合物(C)を含有するすすぎ液、前記炭化水素系溶剤(A)及び前記エステル化合物(C)からなるすすぎ液、又は、前記炭化水素系溶剤(A)からなるすすぎ液ですすぐすすぎ工程と、前記すすぎ工程において、前記洗浄剤組成物中の水(W)が混入したすすぎ液から、少なくとも一部の水(W)を系外に排出する排出工程とを有する、洗浄方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ステンレスの深絞り加工等の金属加工によって生じる、該金属表面に焼き付いた汚れの洗浄性に優れる洗浄剤組成物及び当該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
(洗浄剤組成物)
本実施形態の洗浄剤組成物は、炭化水素系溶剤(A)と、界面活性剤(B)と、エステル化合物(C)と、水(W)とを含有する。
【0019】
<炭化水素系溶剤(A)>
本実施形態の洗浄剤組成物における炭化水素系溶剤(A)(以下、(A)成分ともいう)としては、脂肪族飽和炭化水素系溶剤、脂肪族不飽和炭化水素系溶剤(オレフィン系炭化水素)、脂環式炭化水素系溶剤(ナフテン系炭化水素)、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
該脂肪族飽和炭化水素系溶剤は、直鎖状の飽和炭化水素系溶剤(ノルマルパラフィン系炭化水素)であっても、分岐鎖状の飽和炭化水素系溶剤(イソパラフィン系炭化水素)であってもよい。
【0020】
直鎖状の飽和炭化水素系溶剤(ノルマルパラフィン系炭化水素)としては、炭素原子数7~22の直鎖状の飽和炭化水素系溶剤(ノルマルパラフィン系炭化水素)が好ましく、炭素原子数7~16の直鎖状の飽和炭化水素系溶剤(ノルマルパラフィン系炭化水素)がより好ましく、炭素原子数9~15の直鎖状の飽和炭化水素系溶剤(ノルマルパラフィン系炭化水素)がさらに好ましい。
好適な具体例としては、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン等が挙げられ、その中でも、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカンがより好ましい。
【0021】
分岐鎖状の飽和炭化水素系溶剤としては、炭素原子数7~22の分岐鎖状の飽和炭化水素系溶剤(イソパラフィン系炭化水素)が好ましく、炭素原子数7~16の分岐鎖状の飽和炭化水素系溶剤(イソパラフィン系炭化水素)がより好ましく、炭素原子数9~15の分岐鎖状の飽和炭化水素系溶剤(イソパラフィン系炭化水素)がさらに好ましい。
好適な具体例としては、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン(2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン等)、イソトリデカン(2,3,4-トリメチルデカン、2,3-ジメチルウンデカン、2-メチルドデカン等)、イソテトラデカン、イソヘキサデカン(2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン等)、イソオクタデカン(2-メチルヘプタデカン)等が挙げられる。
【0022】
環式炭化水素系溶剤(ナフテン系炭化水素)として、具体的には、デカヒドロナフタレン、ヘキシルシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤として、具体的には、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,4-ジメチル-2-(1-フェニルエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0023】
本実施形態の洗浄剤組成物における(A)成分は、上記の中でも、脂肪族飽和炭化水素系溶剤が好ましく、直鎖状の脂肪族飽和炭化水素系溶剤(ノルマルパラフィン系炭化水素)がより好ましい。
【0024】
本実施形態の洗浄剤組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本実施形態の洗浄剤組成物における(A)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、(A)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態における(A)成分の含有量は、例えば、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
(A)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、不水溶性加工油の洗浄性がより向上する。
(A)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、水溶性加工油や微粒子の洗浄性がより向上する。
【0028】
<界面活性剤(B)>
本実施形態の洗浄剤組成物における界面活性剤(B)(以下、(B)成分ともいう)は、脂肪酸アルカノールアミド(B1)及びN-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)を含む。
【0029】
≪脂肪酸アルカノールアミド(B1)≫
本実施形態の洗浄剤組成物における脂肪酸アルカノールアミド(B1)(以下、(B1)成分ともいう)は、例えば、脂肪酸とアルカノールアミンとを反応させることにより得ることができる。
【0030】
・脂肪酸
脂肪酸アルカノールアミド(B1)の原料として使用される脂肪酸としては、炭素原子数7~22の脂肪酸が好ましく、炭素原子数8~20の脂肪酸がより好ましい。
好適な具体例としては、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸(カプリル酸)、n-ノナン酸、n-デカン酸(カプリン酸)、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸(ラウリン酸)、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸(ミリスチン酸)、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸(ステアリン酸)、n-イコサン酸(アラキジン酸)等の直鎖状の飽和脂肪酸;イソヘプタン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソイコサン酸等の分岐鎖状の飽和脂肪酸;9-テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、9-オクタデセン酸(オレイン酸)、エイコセン酸、リノール酸(9,12-オクタデカジエン酸)等の不飽和脂肪酸これらの混合物;これらの脂肪酸を1種以上含む天然由来の脂肪酸(例えば、牛脂、ヤシ油など)等が挙げられる。
【0031】
・アルカノールアミン
脂肪酸アルカノールアミド(B1)の原料として使用されるアルカノールアミンとしては、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基とを持つ化合物であれば特に限定されず、例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソ-プロパノールアミン、これらの混合物等が挙げられる。
【0032】
上記脂肪酸とアルカノールアミンとを反応させることにより得られる脂肪酸アルカノールアミド(B1)としては、ドデカン酸(ラウリン酸)モノエタノールアミド、ドデカン酸ジエタノールアミド、オクタデカン酸ジエタノールアミド、オクタデカン酸モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、テトラデカン酸(ミリスチン酸)ジエタノールアミド、テトラデカン酸モノエタノールアミド、ドデカン酸テトラデカン酸ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸モノエタノールアミド、ドデカン酸イソプロパノールアミド、イソ-オクタデカン酸ジエタノールアミド、イソ-オクタデカン酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸モノエタノールアミド等を挙げることができる。
【0033】
本実施形態の洗浄剤組成物における脂肪酸アルカノールアミド(B1)としては、上記の中でも、入手の容易さの点から、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸モノエタノールアミドが好ましく、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドがより好ましい。
【0034】
上記脂肪酸アルカノールアミド(B1)の製造方法としては、例えば、所定量の脂肪酸に対して2倍モル量のアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、又はモノイソ-プロパノールアミン)を添加し、窒素気流下で加熱、脱水縮合させる方法を用いることができる。なお、該脂肪酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0035】
本実施形態の洗浄剤組成物において、(B1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本実施形態の洗浄剤組成物における(B1)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、(B1)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本実施形態における(B1)成分の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.25質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
(B1)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、洗浄性がより向上する。
(B1)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、洗浄剤組成物の動粘度が適度となり、洗浄性が十分な洗浄剤組成物がより得られやすい。
【0039】
≪N-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)≫
本実施形態の洗浄剤組成物におけるN-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)(以下、(B2)成分ともいう)は、例えば、トリメチレンジアミンの1つのアミノ基の水素原子が、アルキル基で置換された化合物と、脂肪酸とを反応させることにより得ることができる。
【0040】
本実施形態の洗浄剤組成物におけるN-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)として、具体的には、下記一般式(B2-1)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化3】
[式中、R
3は、炭素原子数7~22のアルキル基である。R
4は、炭素原子数7~22のアルキル基又はアルケニル基である。]
【0042】
式(B2-1)中、R3は、炭素原子数7~22のアルキル基であり、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等の直鎖状のアルキル基;10-メチルオクタデシル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0043】
式(B2-1)中、R3は、上記の中でも、炭素原子数10~20の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数14~18の直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0044】
式(B2-1)中、R4は、炭素原子数7~22のアルキル基又はアルケニル基である。該炭素原子数7~22のアルキル基としては、上記式(B2-1)中のR3と同様のものが挙げられる。
【0045】
炭素原子数7~22のアルケニル基としては、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基が挙げられる。なお、二重結合の位置は任意であり、例えば、8-トリデセニル基、8-ペンタデセニル基、8-ヘプタデセニル基、10-ノナデセニル基等が挙げられる。
【0046】
式(B2-1)中、R4は、上記の中でも、炭素原子数10~20のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数14~18のアルケニル基であることがより好ましく、炭素原子数16~18のアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0047】
本実施形態の洗浄剤組成物におけるN-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)として、好適な具体例としては、オクタデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、ヘキサデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、テトラデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、牛脂トリメチレンジアミンジオレイン酸塩が挙げられ、その中でも、原料が安価であるという観点から、牛脂トリメチレンジアミンジオレイン酸塩が好ましい。
【0048】
上記N-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)の製造方法としては、例えば、相当するN-アルキル一級アミンとアクリロニトリルを窒素雰囲気下、100~200℃で触媒を用いて反応させ、さらに水素化し、得られたN-アルキルジアミンに窒素雰囲気下で脂肪酸を加える方法を採用することができる。なお、該N-アルキル一級アミン及び該脂肪酸は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、それぞれ2種以上の混合物を用いてもよい。
【0049】
本実施形態の洗浄剤組成物において、(B2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本実施形態の洗浄剤組成物における(B2)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
一方で、(B2)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態における(B2)成分の含有量は、例えば、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
(B2)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、洗浄性がより向上する。
(B2)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、洗浄剤組成物の動粘度が適度となり、洗浄性が十分な洗浄剤組成物がより得られやすい。
【0053】
本実施形態の洗浄剤組成物において、上記(B2)成分の含有量に対する上記(B1)成分の含有量は、上記(B2)成分の含有量に対して、上記(B1)成分を0.01倍以上含有することが好ましく、0.1倍以上含有することがより好ましく、0.2倍以上含有することがさらに好ましい。
一方で、上記(B2)成分の含有量に対して、上記(B1)成分を2倍以下含有することが好ましく、1.5倍以下含有することがより好ましく、1.0倍以下含有することがさらに好ましい。
【0054】
本実施形態の洗浄剤組成物において、上記(B2)成分の含有量に対する上記(B1)成分の含有量は、例えば、上記(B2)成分の含有量に対して、上記(B1)成分を0.01倍以上2倍以下含有することが好ましく、0.1倍以上1.5倍以下含有することがより好ましく、0.2倍以上1.0倍以下含有することがさらに好ましい。
【0055】
本実施形態の洗浄剤組成物における(B)成分は、上記(B1)成分及び上記(B2)成分以外の界面活性剤を含有してもよい。該界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましく、具体的には、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
(B)成分中の(B1)成分と(B2)成分との合計割合は、(B)成分の総含有量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
(B)成分中の(B1)成分と(B2)成分との合計割合が25質量%以上であると、洗浄性がより向上する。
【0057】
≪エステル化合物(C)≫
本実施形態の洗浄剤組成物におけるエステル化合物(C)(以下、(C)成分ともいう)は、脂肪酸等のモノカルボン酸と1価のアルコールとを反応させることにより得られるモノエステル、ジカルボン酸と1価のアルコールとを反応させることにより得られるジエステルである。
なお、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の多価アルコールとカルボン酸とを反応させることにより得られる化合物(界面活性剤)は、上記(B)成分に該当し、(C)成分には該当しない。
【0058】
・モノカルボン酸
エステル化合物(C)の原料として使用されるモノカルボン酸としては、メタン酸(ギ酸)、エタン酸(酢酸)、n-プロパン酸、n-ブタン酸(酪酸)、n-ペンタン酸(吉草酸)、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸(カプリル酸)、n-ノナン酸、n-デカン酸(カプリン酸)、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸(ラウリン酸)、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸(ミリスチン酸)、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸(ステアリン酸)、n-イコサン酸(アラキジン酸)等の直鎖状の飽和脂肪酸;2-メチルプロパン酸(イソ酪酸)、3-メチルブタン酸(イソ吉草酸)、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソイコサン酸等の分岐鎖状の飽和脂肪酸;9-テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、9-オクタデセン酸(オレイン酸)、エイコセン酸、リノール酸(9,12-オクタデカジエン酸)等の不飽和脂肪酸;これらの混合物;これらの脂肪酸を1種以上含む天然由来の脂肪酸(例えば、牛脂、ヤシ油など)等が挙げられる。
【0059】
・ジカルボン酸
エステル化合物(C)の原料として使用されるジカルボン酸としては、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタン酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸、デカン二酸等が挙げられる。
【0060】
・1価のアルコール
エステル化合物(C)の原料として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
【0061】
本実施形態の洗浄剤組成物におけるエステル化合物(C)は、上記の中でも、下記一般式(C-1)で表される化合物(C1)(以下、(C1)成分ともいう)を含むことが好ましい。
【0062】
【化4】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の1価の脂肪族炭化水素基である。Xは、単結合又は炭素原子数1~8の2価の脂肪族炭化水素基である。]
【0063】
式(C-1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の1価の脂肪族炭化水素基である。
該脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基及びアルカトリエニル基が挙げられる。
【0064】
・炭素原子数1~4のアルキル基
式(C-1)中のR1及びR2における炭素原子数1~4のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても、分岐鎖状のアルキル基であってもよい。
炭素原子数1~4の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が挙げられる。
炭素原子数3又は4の分岐鎖状のアルキル基としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基及びtert-ブチル基が挙げられる。
【0065】
・炭素原子数2~4のアルケニル基
式(C-1)中のR1及びR2における炭素原子数2~4のアルケニル基は、直鎖状のアルケニル基であっても、分岐鎖状のアルケニル基であってもよい。
炭素原子数2~4の直鎖状のアルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、及びブチニル基が挙げられる。
炭素原子数3又は4の分岐鎖状のアルケニル基としては、1-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、及び2-メチルプロペニル基が挙げられる。
【0066】
式(C-1)中のR1及びR2における炭素原子数3又は4のアルカジエニル基としては、プロパジエニル基及びブタジエニル基が挙げられ、炭素原子数4のアルカトリエニル基としては、ブタトリエニル基が挙げられる。
【0067】
上記の中でも、式(C-1)中のR1及びR2における炭素原子数1~4の1価の脂肪族炭化水素基は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~4の直鎖状アルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0068】
式(C-1)中、Xは、単結合又は炭素原子数1~8の2価の脂肪族炭化水素基である。
該脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルカジエニレン基及びアルカトリエニレン基が挙げられる。
式(C-1)中のXにおけるアルキレン基、アルケニレン基、アルカジエニレン基及びアルカトリエニレン基の好適な具体例としては、上記式(C-1)中のR1及びR2におけるアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基及びアルカトリエニル基からそれぞれ水素原子を一つ除いた基が挙げられる。
【0069】
例えば、式(C-1)中のXにおける炭素原子数1~8の直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]、ヘキサメチレン基[-(CH2)6-]等が挙げられる。
式(C-1)中のXにおける炭素原子数2~8の分岐鎖状のアルキレン基としては、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。
【0070】
上記式(C-1)中のXは、上記の中でも、単結合又は炭素原子数1~8のアルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基であることがより好ましく、単結合、メチレン基、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、又はテトラメチレン基[-(CH2)4-]であることがさらに好ましい。
【0071】
本実施形態の洗浄剤組成物におけるエステル化合物(C)として、具体的には、シュウ酸ジメチル(下記化学式(C-1-1)で表される化合物)、マロン酸ジメチル(下記化学式(C-1-2)で表される化合物)、コハク酸ジメチル(下記化学式(C-1-3)で表される化合物)、グルタル酸ジメチル(下記化学式(C-1-4)で表される化合物)、アジピン酸ジメチル(下記化学式(C-1-5)で表される化合物)、マロン酸ジエチル(下記化学式(C-1-6)で表される化合物)、シュウ酸ジエチル(下記化学式(C-1-7)で表される化合物)が好ましく、コハク酸ジメチル(下記化学式(C-1-3)で表される化合物)、グルタル酸ジメチル(下記化学式(C-1-4)で表される化合物)、アジピン酸ジメチル(下記化学式(C-1-5)で表される化合物)、及びマロン酸ジエチル(下記化学式(C-1-6)で表される化合物)がより好ましい。
【0072】
【0073】
本実施形態の洗浄剤組成物において、(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄剤組成物において、(C)成分は、原料が安価であり、かつ、低融点であるという観点から、コハク酸ジメチルと、グルタル酸ジメチルと、アジピン酸ジメチルとの混合物を用いてもよい。
【0074】
本実施形態の洗浄剤組成物における(C)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
【0075】
一方で、(C)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
本実施形態における(C)成分の含有量は、例えば、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、7質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
(C)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、洗浄性がより向上する。
(C)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、洗浄剤組成物の動粘度が適度となり、洗浄性が十分な洗浄剤組成物がより得られやすい。
【0078】
本実施形態の洗浄剤組成物における(C)成分は、上記(C1)成分以外のエステル化合物を含有してもよいが、(C)成分中の(C1)成分の割合が、(C)成分の総含有量に対し、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
(C)成分中の(C1)成分の割合が25質量%以上であると、洗浄性がより向上する。
【0079】
≪水(W)≫
本実施形態の洗浄剤組成物における水(W)(以下(W)成分ともいう)としては、蒸留水、イオン交換水、水道水等を用いることが好ましい。
【0080】
本実施形態の洗浄剤組成物における(W)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
【0081】
一方で、(W)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0082】
本実施形態における(W)成分の含有量は、例えば、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、7質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0083】
(W)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、水溶性加工油と微粒子の洗浄性がより向上する。
(W)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、不水溶性加工油の洗浄性がより向上する。
【0084】
本実施形態の洗浄剤組成物は、炭化水素系溶剤(A)と、界面活性剤(B)と、エステル化合物(C)と、水(W)とを含有し、炭化水素系溶剤(A)、界面活性剤(B)及びエステル化合物(C)の総含有量が、水(W)の含有量より多いことが好ましく、((A)成分、(B)成分及び(C)成分の総含有量)/水(W)の含有量が、2.1以上であることが好ましく、3.3以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましい。
上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総含有量と、水(W)の含有量との比率が上記の範囲以上であれば、本発明の効果がより得られやすい。
【0085】
<任意成分>
本実施形態の洗浄剤組成物は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(W)成分を含有し、本発明の効果を損なわない範囲で、これらの成分以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。該任意成分としては、極性溶剤(S)、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、防錆剤等が挙げられる。
【0086】
≪極性溶剤(S)≫
本実施形態の洗浄剤組成物は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(W)成分に加えて、極性溶剤(S)(以下、(S)成分ともいう)を含有することが好ましい。
本実施形態の洗浄剤組成物における極性溶剤(S)としては、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、モノアルコール系溶剤等のプロトン性極性溶剤;アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、スルホン系溶剤、ニトリル系溶剤等の非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
【0087】
グリコール系溶剤として、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤として、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジイソプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
モノアルコール系溶剤として、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール等が挙げられる。
【0088】
アミド系溶剤として、具体的には、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ブチルプロルドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
スルホキシド系溶剤として、具体的には、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
スルホン系溶剤として、具体的には、スルホラン等が挙げられる。
ニトリル系溶剤として、具体的には、アセトニトリル等が挙げられる。
【0089】
本実施形態の洗浄剤組成物における極性溶剤(S)としては、上記の中でも、水溶性が低い極性溶剤であることが好ましい。ここで、水溶性が低い極性溶剤とは、水と極性溶剤とを1:1(質量比)で混合し、分液した場合、水層に含まれる該極性溶剤の含有量が、水層に含まれる溶液全量に対して、10質量%未満である極性溶剤である。詳細な試験方法は下記に示す通りである。
【0090】
極性溶剤と蒸留水の20℃における屈折率をアタゴ社製自動屈折計RX-5000α-Plusにて測定する。20mLスクリュー管瓶に、該極性溶剤5gと蒸留水5gを計量し、室温で一時間攪拌する。一晩静置後、上層と下層を採取し、20℃における屈折率をアタゴ社製自動屈折計RX-5000α-Plusにて測定する。試料と蒸留水と上層または下層の屈折率から水層に含まれる該極性溶剤の濃度を算出する。
【0091】
上記水溶性が低い極性溶剤として、具体的には、グリコールエーテル系溶剤が好ましく、プロピレングリコールモノブチルエーテル又はエチレングリコールモノヘキシルエーテルがより好ましい。
【0092】
本実施形態の洗浄剤組成物における(S)成分1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
本実施形態の洗浄剤組成物における(S)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0094】
一方で、(S)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0095】
本実施形態における(S)成分の含有量は、例えば、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0096】
(S)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(W)成分のそれぞれの分散性をより向上させることができる。
(S)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、他の成分とのバランスが取れ、洗浄性がより向上する。
【0097】
上記極性溶剤(S)以外の任意成分として、具体的には、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系等の酸化防止剤;ニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、リン化合物類、硫黄化合物類、含窒素アルコール化合物等の安定剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤、アルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、多価アルコール部分エステル、金属スルフォネート、アミン類等の防錆剤などが挙げられる。
【0098】
本実施形態の洗浄剤組成物の製造方法としては、例えば、上述した炭化水素系溶剤(A)、界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)を所定量計量し、混合、撹拌した後に水(W)を添加することにより製造することができる。なお、炭化水素系溶剤(A)、界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)に加えて上述した任意成分を混合してもよい。
具体的には、炭化水素系溶剤(A)、界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)を均一に撹拌混合した後に、水(W)を添加し、撹拌や超音波照射等の物理力を加えることで、本実施形態の洗浄剤組成物を製造することができる。
【0099】
より具体的な、本実施形態の洗浄剤組成物の製造方法としては、炭化水素系溶剤(A)、脂肪酸アルカノールアミド(B1)、N-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)、及び上記一般式(C-1)で表される化合物(C1)を均一に撹拌混合した後に、水(W)を添加し、撹拌や超音波照射等の物理力を加えることで、W/O型のエマルションである洗浄剤組成物を製造することができる。
【0100】
以上説明した本実施形態の洗浄剤組成物は、炭化水素系溶剤(A)と、界面活性剤(B)と、エステル化合物(C)と、水(W)とを含有し、界面活性剤(B)は、脂肪酸アルカノールアミド(B1)及びN-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)を含む。該洗浄剤組成物は、炭化水素系溶剤(A)と水(W)と特定の界面活性剤(B1)成分及び(B2)成分とを含有するため、洗浄性が高く、極性の高低によらず様々な汚れを洗浄することができる。加えて、エステル化合物(C)を含有するため、従来の洗浄剤組成物では洗浄することが困難であった難洗浄性の汚れ(ステンレスの深絞り加工等の金属加工によって生じる、該金属表面に焼き付いた汚れ等)も洗浄することができる。
さらに、エステル化合物(C)が上記一般式(C-1)で表される化合物(C1)である場合、難洗浄性の汚れに対する洗浄性がさらに向上する。これは、該化合物(C1)がキレート剤として汚れを挟み込んで引き離すことができることによるものと推測される。
【0101】
本実施形態の洗浄剤組成物は、特に金属加工によって被洗浄物の表面に焼き付いた汚れを除去するための洗浄剤として用いるのに有用である。
【0102】
(洗浄方法)
本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る洗浄剤組成物を用いて、被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄剤組成物が付着した被洗浄物を、前記炭化水素系溶剤(A)、前記界面活性剤(B)及び前記エステル化合物(C)を含有するすすぎ液、前記炭化水素系溶剤(A)及び前記エステル化合物(C)からなるすすぎ液、又は、前記炭化水素系溶剤(A)からなるすすぎ液ですすぐすすぎ工程と、前記すすぎ工程において、前記洗浄剤組成物中の水(W)が混入したすすぎ液から、少なくとも一部の水(W)を系外に排出する排出工程とを有する、洗浄方法である。
【0103】
[洗浄工程]
洗浄工程は、上述した第1の態様に係る洗浄剤組成物を用いて、被洗浄物を洗浄する工程である。
洗浄工程として、具体的には、被洗浄物を上述した第1の態様に係る洗浄剤組成物に浸漬洗浄する方法が挙げられる。また、該浸漬洗浄の際に、洗浄効果を高めるために、撹拌、揺動、超音波照射、噴流、エアバブリング又はこれらの組み合わせを行うことが好ましい。
浸漬洗浄の際に、超音波を照射する場合、超音波の照射条件は、発振周波数20~100KHz、発振出力0.1~200W/Lが好ましい。
【0104】
上記洗浄工程の洗浄時間は、15秒~30分が好ましく、30秒~15分がより好ましい。
上記洗浄工程の洗浄温度は、20~90℃であることが好ましい。
【0105】
被洗浄物としては、電子・電気部品、光学部品、精密機械部品、自動車部品等の各種部品が挙げられる。
電気・電子部品としては、プリント配線基板、セラミック配線基板等の配線基板;リードフレーム等の半導体パッケージ部材;リレー、コネクターなどの接点部材;液晶、プラズマディスプレイ等の表示部品;ハードディスク記憶媒体、磁気ヘッド等の磁気記憶部品;水晶振動子等の圧電部品;モータ、ソレノイド等の電動機部品;センサー部品;リチウムイオン電池等の電池缶などが挙げられる。
光学部品としては、眼鏡、カメラ用などのレンズ、その筐体などが挙げられる。
精密機械部品としては、航空機、工作機械等に用いられる精密ベアリングなどの部品が挙げられる。
自動車部品としては、自動車のエンジン部に使われる燃料噴射用のニードルや駆動部分のギヤなどが挙げられる。
【0106】
被洗浄物に付着している汚れとしては、鉱油等からなる加工油、機械油、植物油、ワックス、松脂、油脂、グリース、フラックス等が挙げられる。
本実施形態の洗浄方法は、特にステンレスの深絞り加工等の金属加工によって生じる、該金属表面に焼き付いた汚れを洗浄するのに有用な方法である。
【0107】
[すすぎ工程]
すすぎ工程は、前記洗浄剤組成物が付着した被洗浄物を、前記炭化水素系溶剤(A)、前記界面活性剤(B)及び前記エステル化合物(C)を含有するすすぎ液、前記炭化水素系溶剤(A)及び前記エステル化合物(C)からなるすすぎ液、又は、前記炭化水素系溶剤(A)からなるすすぎ液ですすぐ工程である。
【0108】
すすぎ工程に用いられるすすぎ液としては、炭化水素系溶剤(A)、界面活性剤(B)及びエステル化合物(C)を含有するすすぎ液、炭化水素系溶剤(A)及びエステル化合物(C)からなるすすぎ液、又は、炭化水素系溶剤(A)からなるすすぎ液が挙げられる。
具体的には、炭化水素系溶剤(A)、脂肪酸アルカノールアミド(B1)、N-アルキルトリメチレンジアミン脂肪酸塩(B2)、及び上述した化合物(C1)からなるすすぎ液、炭化水素系溶剤(A)及び上述した化合物(C1)からなるすすぎ液、又は、炭化水素系溶剤(A)からなるすすぎ液が挙げられる。
すすぎ液が含有する炭化水素系溶剤(A)としては、炭素原子数9~15の直鎖状の飽和炭化水素系溶剤(パラフィン系炭化水素)が好ましい。
【0109】
すすぎ工程に用いられるすすぎ液が含有する炭化水素系溶剤(A)は、上記洗浄工程に用いられる洗浄剤組成物が含有する炭化水素系溶剤(A)と同一であっても、異なっていてもよい。すすぎ液が含有する炭化水素系溶剤(A)と、洗浄剤組成物が含有する炭化水素系溶剤(A)とがそれぞれ異なる場合は、すすぎ液が含有する炭化水素系溶剤(A)の方が、洗浄剤組成物が含有する炭化水素系溶剤(A)よりも沸点が低いことが好ましい。
【0110】
また、すすぎ工程に用いられるすすぎ液は、上述した洗浄剤組成物から水(W)を除去した溶液でもよい。水を除去する方法として、具体的には、後述する比重差分離法、吸着分離法が挙げられる。
【0111】
上記すすぎ工程の際に、すすぎ効果を高めるために、撹拌、揺動、超音波照射、噴流、エアバブリング又はこれらの組み合わせを行うことが好ましい。
すすぎ工程の際に、超音波を照射する場合、超音波の照射条件は、発振周波数20~100KHz、発振出力0.1~200W/Lが好ましい。
【0112】
上記すすぎ工程のすすぎ時間は、15秒~30分が好ましく、30秒~15分がより好ましい。
上記すすぎ工程のすすぎ温度は、20~90℃であることが好ましい。
【0113】
すすぎ工程は、一回でもよく、複数回繰り返してもよい。また、すすぎ工程を繰り返す場合、すすぎ液の組成は、同一であっても、異なっていてもよい。
すすぎ工程を複数回行う方法としては、例えば、一回又は複数回上述したすすぎ液のいずれかのすすぎ液ですすぎ工程を行った後、最終的に炭化水素系溶剤(A)からなるすすぎ液ですすぐ方法が挙げられる。
【0114】
[排出工程]
排出工程は、上記すすぎ工程において、上記洗浄剤組成物中の水(W)が混入したすすぎ液から、少なくとも一部の水(W)を系外に排出する工程である。該排出方法として、具体的には、比重差分離法、吸着分離法、気化除去法が挙げられる。
【0115】
比重差分離法は、(W)成分と、(W)成分以外の成分((A)成分、(B)成分、(C)成分等)との比重差を利用して分離する方法である。具体的には、静置分離、遠心分離等の分離方法を単独又は複数を組み合わせて、(W)成分と、(W)成分以外の成分とを分離する。
該遠心分離を行うために使用する装置としては、デカンター型、バスケット型、ディスク型、サイクロン型等の遠心分離機が挙げられる。その中でも、サイクロン型の遠心分離機は、構造が簡単で可動部を持たず小型化しやすいため好ましく、ディスク型の遠心分離機は、高遠心力を得やすく微細水滴を安定的に除去しやすいため好ましい。
【0116】
吸着分離法は、(W)成分と、(W)成分以外の成分((A)成分、(B)成分、(C)成分等)との親水性(疎水性)の違いを利用して分離する方法である。具体的には、油分吸着又は水分吸着フィルターによる油水分離や、吸水性ポリマー等の有機物による油水分離、活性炭や珪藻土などの無機物による油水分離等を単独又は複数を組み合わせて、(W)成分と、(W)成分以外の成分とを分離する。
【0117】
気化除去法は、(W)成分を気化させることにより、(W)成分と、(W)成分以外の成分((A)成分、(B)成分、(C)成分等)とを分離する方法である。具体的には、減圧、加温、気液接触、超音波照射などから単独又は複数を組み合わせて行い、水を気化させて排出し、(W)成分と、(W)成分以外の成分とを分離する。
【0118】
なお、本実施形態の洗浄方法において、上述したすすぎ工程と排出工程とは同一の槽で行ってもよい。但し、この場合は、すすぎ工程と排出工程とを行う槽の構造において、すすぎ工程に用いる物理力が、排出工程に影響を与えにくい構造にする必要がある。例えば、該槽の一部で超音波照射を行いすすぎ工程を行いながら、該槽の他の一部では超音波を当たりにくくし、(W)成分の除去、すなわち、すすぎ液中の(W)成分の合一を妨げにくい構造とするものが挙げられる。
【0119】
なお、本実施形態の洗浄方法は、上述した洗浄工程、すすぎ工程及び排出工程に加えて、被洗浄物を乾燥する仕上げ工程を有することが好ましい。
【0120】
[仕上げ工程]
仕上げ工程は、すすぎ工程を行った後の被洗浄物を乾燥する工程である。乾燥方法としては、特に限定されず、温風、吸引及び減圧により乾燥する方法が挙げられる。また、加熱できない金属部品を乾燥する場合には、部品を回転させる液切り乾燥、高圧エアーでのブロー乾燥、ハロゲン系溶剤などの低沸点溶剤での置換乾燥を行うこともできる。
【0121】
以上説明した本実施形態の洗浄方法は、上述した洗浄剤組成物が用いられているため、ステンレスの深絞り加工等の金属加工によって生じる、該金属表面に焼き付いた汚れ等の難洗浄性の汚れを洗浄することができる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0123】
<洗浄剤組成物の製造>
表1及び表2に示す各成分を混合し、各例の洗浄剤組成物を調製した。
なお、該洗浄剤組成物が(W)成分を含有する場合は、(W)成分以外の成分を均一に撹拌混合した後、(W)成分を加え、超音波洗浄機(28kHz、100W、30分)を用いて超音波照射を行い、洗浄剤組成物を製造した。
【0124】
[清浄度の評価]
2種類のプレス加工油(商品名:G-751MS、日本工作油株式会社製、及び商品名:ハングスターファー オールドローJ-1、日興キャスティ株式会社製)を用いて、ステンレス板(SUS304)を深絞り加工し、プレス加工油がステンレス表面に焼き付いたものを被洗浄物とした。なお、洗浄を行う前の被洗浄物は
図1に示す通りである。
該被洗浄物を各例の洗浄剤組成物に浸漬し、超音波洗浄器(商品名:W-113、本多電子社製)を用いて、45kHz、室温(27℃)で10分間洗浄した。次いで、洗浄後の被洗浄物を該洗浄剤組成物から(W)成分を除いた洗浄剤組成物に浸漬し、上記と同じ超音波洗浄器を用いて、45kHz、室温(27℃)で10分間すすぎ洗浄した。さらに、すすぎ洗浄後の被洗浄物をn-デカンに浸漬し、上記と同じ超音波洗浄器を用いて、28kHz、室温(27℃)で10分間すすぎ洗浄した。次いで、すすぎ洗浄を行った被洗浄物を80℃で60分間乾燥した。乾燥後の被洗浄物を目視で観察し、以下の基準で評価した。また、下記の評価基準の参考図を
図1に示す。
A:被洗浄物の表面に汚れが観察されない
B:被洗浄物の表面に汚れが多少観察される
C:被洗浄物の表面に多くの汚れが観察される
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は洗浄剤組成物全量100質量%に対する含有量(質量%)である。
【0129】
(A)-1:ノルマルデカン
(A)-2:ノルマルドデカン
(B1)-1:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド
(B2)-1:牛脂トリメチレンジアミンジオレイン酸塩
【0130】
(C)-1:コハク酸ジメチル、グルタミン酸ジメチル、及びアジピン酸ジメチルの混合物(商品名:414ソルベント、大伸化学社製)
(C)-2:マロン酸ジエチル
(C)-3:コハク酸ジメチル
(W)-1:蒸留水
【0131】
(S)-1:エチレングリコールモノヘキシルエーテル
(S)-2:プロピレングリコールモノブチルエーテル
【0132】
Add-1:ソルビタンセスキオレアート
Add-2:ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート
Add-3:ソルビタントリオレアート
Add-4:ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート
【0133】
表1及び2に示すように、実施例の洗浄剤組成物は、ステンレスの深絞り加工によって生じる、該ステンレス表面に焼き付いた汚れの洗浄性が非常に高いことが確認できる。