(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/08 20060101AFI20240620BHJP
B43K 5/16 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B43K24/08 150
B43K5/16
(21)【出願番号】P 2019237854
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】大池 英郎
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/08
B43K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる中心軸線を有する軸筒と、
前記軸筒内に配置され、軸方向に移動可能なペン先部材と、
前記軸筒の前部に配置され、前記ペン先部材の少なくとも一部が通過可能な開口部を有する密閉部材と、
前記ペン先部材の移動により回転軸線周りに回転可能であり、前記密閉部材に後方から当接して前記開口部を閉鎖可能なシャッター部材と、を備え、
前記軸筒の前記中心軸線と前記シャッター部材の前記回転軸線とは、互いに交差
せず、
前記シャッター部材の前記回転軸線が前記軸筒の前記中心軸線からずれた所定の位置から移動することなく、前記シャッター部材が前記回転軸線周りに回転する、筆記具。
【請求項2】
前記シャッター部材は、前記ペン先部材からの押圧力を受ける受圧部を有する、請求項
1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記受圧部は、前記回転軸線と平行に延び、且つ、前記回転軸線に対してずれている、請求項
2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記受圧部は、前記受圧部が延びる方向に直交する断面において、前記ペン先部材に当接可能な突出部を含む、請求項
3に記載の筆記具。
【請求項5】
前記突出部は、前記シャッター部材が前記開口部を閉鎖した状態において、第1突出部と、前記第1突出部よりも前方に位置する第2突出部と、を含む、請求項
4に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
ペン先を介して紙面にインキを付着させて筆記を行う筆記具において、ペン先でのインキの乾燥を防止するために、軸筒の前部にシャッター部材を設け、筆記を行わないときには、このシャッター部材で軸筒の前端部を閉鎖することが可能な筆記具が知られている。特許文献1には、直接電動式乾き防止装置を備えた筆記具が開示されている。直接電動式乾き防止装置は、軸筒の先端開口が乾き防止装置のボール状ドアにより気密に密閉されている。使用者がスイッチを操作すると、ノック体を押す力が直接伝えられてボール状ドアを直接的に開閉させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシャッター部材を備えた筆記具においては、シャッター部材による密閉性能が十分でないことがあった。この場合、シャッター部材を備えているにも関わらず、ペン先でインキが乾燥する虞がある。また、ペン先の寸法を大きくした場合には、シャッター部材も大きくする必要が生じるが、この場合にもシャッター部材による密閉性能が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、十分な密閉性能を発揮し得るシャッター部材を備えた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による筆記具は、
長手方向に延びる中心軸線を有する軸筒と、
前記軸筒内に配置され、軸方向に移動可能なペン先部材と、
前記軸筒の前部に配置され、前記ペン先部材の少なくとも一部が通過可能な開口部を有する密閉部材と、
前記ペン先部材の移動により回転軸線周りに回転可能であり、前記密閉部材に後方から当接して前記開口部を閉鎖可能なシャッター部材と、を備え、
前記軸筒の前記中心軸線と前記シャッター部材の前記回転軸線とは、互いに交差しない。
【0007】
本発明による筆記具において、
前記シャッター部材は、前記ペン先部材からの押圧力を受ける受圧部を有してもよい。
【0008】
本発明による筆記具において、
前記受圧部は、前記回転軸線と平行に延び、且つ、前記回転軸線に対してずれてもよい。
【0009】
本発明による筆記具において、
前記受圧部は、前記受圧部が延びる方向に直交する断面において、前記ペン先部材に当接可能な突出部を含んでもよい。
【0010】
本発明による筆記具において、
前記突出部は、前記シャッター部材が前記開口部を閉鎖した状態において、第1突出部と、前記第1突出部よりも前方に位置する第2突出部と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な密閉性能を発揮し得るシャッター部材を備えた筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明による第1実施形態を説明するための図であって、シャッター部材を有する筆記具の一例を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、シャッター部材の受圧部の断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態におけるシャッター部材の動作について説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態におけるシャッター部材の動作について説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明による第2実施形態を説明するための図であって、シャッター部材を有する筆記具の他の例を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、
図6の筆記具のペン先部材を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態におけるシャッター部材の動作について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態におけるシャッター部材の動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0014】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0015】
本明細書では、筆記具10の中心軸線A1が延びる方向(長手方向)を軸方向da、軸方向daと直交する方向を径方向dr、中心軸線A1周りの円周に沿った方向を周方向dcとする。また、軸方向daに沿って、筆記する際に紙面等の被筆記面に近接する側を前方とし、被筆記面から離間する側を後方とする。すなわち、ペン先側が前方であり、ペン先と反対側が後方である。これにともなって、軸方向daと平行な方向を前後方向と呼ぶこともある。
【0016】
第1実施形態
図1は、本発明による第1実施形態を説明するための図であって、シャッター部材60を有する筆記具10の一例を示す縦断面図であり、
図2は、
図1のシャッター部材60を示す斜視図である。本実施形態の筆記具10は、軸筒20と、ペン先部材40と、密閉部材50と、シャッター部材60と、を有している。
【0017】
密閉部材50は、ペン先部材40の少なくとも一部が通過可能な開口部52を有している。この筆記具10では、ペン先部材40が密閉部材50の開口部52を通過しているときには、シャッター部材60が退避して密閉部材50の開口部52を閉鎖しない。この状態において、筆記具10は、ペン先部材40により筆記が可能になる。その一方、ペン先部材40が軸筒20内に没入しており、ペン先部材40が密閉部材50の開口部52を通過していないときには、シャッター部材60が密閉部材50に後方から当接して開口部52を閉鎖する。この状態において、ペン先部材40は軸筒20内に密閉され、ペン先部材40でのインキの乾燥が抑制される。
【0018】
軸筒20は、筆記具10を構成する各部品を収容する部材である。軸筒20は、長手方向に延びる中心軸線A1を有しており、長手方向の前端に前端開口部24を有し、後端に後端開口部28を有している。前端開口部24は、ペン先部材40の先端が通過する開口部である。また、後端開口部28は、後述のノック部材29が通過する開口部である。軸筒20は、前軸22及び後軸26を含んでいる。
図1に示された例では、前端開口部24は前軸22の前端に設けられ、後端開口部28は後軸26の後端に設けられている。前軸22の後端の外面には雄ネジ部が形成されており、この雄ネジ部が後軸26の前端の内面に形成された雌ネジ部と螺合することにより、前軸22が後軸26に対して取り付けられる。
【0019】
軸筒20(前軸22)内には、内筒部材30が配置されている。内筒部材30は内部にペン先部材40を収容している。本実施形態では、筆記具10は万年筆であり、ペン先部材40は、万年筆用のペン先である。なお、ペン先部材40は他の筆記具用のペン先であってもよい。ペン先部材40は、軸筒20内に配置されており、軸方向daに移動可能に構成される。内筒部材30の内面には前方段部32が設けられている。また、ペン先部材40の外面には、後方段部42が設けられている。前方段部32と後方段部42との間には、コイルばね82が圧縮状態で配置されている。したがって、ペン先部材40は、コイルばね82により、内筒部材30に対して後方へ向けて付勢されている。なお、内筒部材30の前端部には、後述の付勢部材84と係合する第1係合部34が設けられている。
【0020】
ノック部材29は、ペン先部材40を出没させるために使用者が操作する部材である。ペン先部材40が軸筒20内に没入した状態で、ノック部材29をコイルばね82の付勢力に抗して前方へ向かって押圧し、その後押圧力を解除すると、ペン先部材40は、その先端が前端開口部24から前方へ突出して停止する。ペン先部材40の先端が前端開口部24から前方へ突出した状態で、ノック部材29をコイルばね82の付勢力に抗して前方へ向かって押圧し、その後押圧力を解除すると、ペン先部材40は軸筒20内に没入して停止する。このようなノック機構そのものは公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0021】
密閉部材50は、軸筒20の前部に配置されており、シャッター部材60と協働して筆記具10の前端開口部24を密閉する部材である。本実施形態では、密閉部材50は、例えば、ブチルゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコンゴム等の弾性部材で構成される。密閉部材50として弾性部材を用いると、シャッター部材60が密閉部材50に当接した際に、密閉部材50がシャッター部材60の形状に追従して変形する。これにより、密閉部材50とシャッター部材60との間の気密性を向上させることができる。密閉部材50は、開口部52を有している。開口部52は、ペン先部材40の少なくとも一部、とりわけペン先部材40の先端部、を通過させることができるように構成される。本実施形態では、開口部52は、軸方向daから見て円形の輪郭を有しているが、開口部52の形状はこれに限られない。
【0022】
シャッター部材60は、密閉部材50と協働して筆記具10の前端開口部24を密閉する部材である。シャッター部材60は、回転軸線A2を有しており、回転軸線A2周りに回転可能に構成されている。シャッター部材60は、ペン先部材40の軸方向daの移動にともなって、回転軸線A2周りに回転する。この回転により、シャッター部材60は、密閉部材50に後方から当接して開口部52を閉鎖する閉鎖位置と、閉鎖位置から退避してペン先部材40が開口部52を通過することを許容する退避位置と、の間を遷移する。とりわけ、シャッター部材60は、回転軸線A2周りの一方側に回転することにより退避位置へ移動し、回転軸線A2周りの他方側に回転することにより閉鎖位置へ移動する。
【0023】
図2に示されているように、シャッター部材60は、軸部62と、閉鎖部64と、受圧部70と、を有している。軸部62は、回転軸線A2に沿って延びている。軸部62は円柱形状を有しており、この円柱の中心軸線とシャッター部材60の回転軸線A2は一致している。したがって、シャッター部材60は、軸部62を回転軸として回転軸線A2周りに回転する。軸部62は、内筒部材30に形成された孔部又は溝部内に配置され、当該孔部又は溝部内で回転する。
【0024】
閉鎖部64は、密閉部材50に当接して開口部52を閉鎖する部分である。閉鎖部64は、回転軸線A2と反対側に閉鎖面64aを有しており、この閉鎖面64aが密閉部材50に当接する。密閉部材50の開口部52が、軸方向daから見て円形の輪郭を有している場合、閉鎖面64aは、例えば球面の一部を構成する形状を有していることが好ましい。この場合、円形の輪郭を有する開口部52と、球面の一部を構成する形状を有する閉鎖面64aにより、密閉部材50とシャッター部材60との間の気密性を向上させることができる。本実施形態では、閉鎖部64は、閉鎖面64aの反対側に切欠部66を有している。切欠部66は、シャッター部材60が退避位置に位置するときに、閉鎖部64とペン先部材40とが干渉することを防止するために設けられる。
図1に示された例では、切欠部66は、閉鎖部64の一部が直線的に切り欠かれることにより設けられているが、切欠部66の形状は特に限定されない。
【0025】
受圧部70は、ペン先部材40からの押圧力を受ける部分である。
図2に示された例では、受圧部70は、シャッター部材60の回転軸線A2と平行に延び、且つ、回転軸線A2に対してずれて配置されている。したがって、受圧部70がペン先部材40からの押圧力を受けることにより、シャッター部材60は、回転軸線A2周りに回転する。
【0026】
本実施形態では、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに交差しない。すなわち、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに対してずれている。換言すると、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いにねじれの位置にある。回転軸線A2は、中心軸線A1に対して、シャッター部材60が退避位置に位置する際に閉鎖面64aが位置する側の反対側に位置する。換言すると、回転軸線A2は、中心軸線A1に対して、シャッター部材60が退避位置に位置する際に受圧部70が位置する側に位置する。
【0027】
軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とが互いに交差している場合、シャッター部材60が閉鎖位置から退避位置へ移動する際に、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合う。具体的には、シャッター部材60の閉鎖面64aが閉鎖位置から移動を開始する瞬間に、閉鎖面64aが軸筒20の中心軸線A1と直交する方向に移動することにより、閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合う。したがって、シャッター部材60を閉鎖位置から退避位置へと移動させるために必要な力が大きくなる。また、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことによって、閉鎖面64a及び/又は密閉部材50に傷が生じ得る。とりわけ密閉部材50に傷が生じ得る。この場合、密閉部材50とシャッター部材60との間の気密性が低下し、ペン先部材40においてインキが乾燥しやすくなる。
【0028】
これに対して、本実施形態のように、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに交差しない場合、シャッター部材60の閉鎖面64aが閉鎖位置から移動を開始する瞬間に、閉鎖面64aは、軸筒20の中心軸線A1と直交する方向に対して傾斜した方向に移動する。したがって、シャッター部材60の閉鎖面64aが閉鎖位置から移動を開始する際には、閉鎖面64aは、後方に向けて移動しながら、すなわち密閉部材50から離間しながら、回転軸線A2周りに回転することになる。これにより、シャッター部材60が閉鎖位置から退避位置へ移動する際に、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことを抑制することが可能になる。したがって、シャッター部材60を閉鎖位置から退避位置へと移動させるために必要な力を比較的小さくすることができる。また、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことによって閉鎖面64a及び/又は密閉部材50に傷が生じること、とりわけ密閉部材50に傷が生じること、を抑制することができる。これにより、密閉部材50とシャッター部材60との間の気密性の低下を抑制することができる。すなわち、ペン先部材40においてインキが乾燥しやすくなることを抑制することができる。
【0029】
受圧部70についてより詳細に説明する。
図3は、受圧部70の断面図であり、とりわけ受圧部70が延びる方向に直交する断面を示す図であり、とりわけシャッター部材60が閉鎖位置に位置しているときの受圧部70の断面を示す図である。受圧部70は、受圧部70が延びる方向に直交する断面において、ペン先部材40に当接可能な突出部74,76を含んでいる。とりわけ本実施形態では、突出部74,76は、シャッター部材60が密閉部材50の開口部52を閉鎖した状態において、第1突出部74と、第1突出部74よりも前方に位置する第2突出部76と、を含んでいる。
図3に示された例において、「突出部」とは、受圧部70の断面内に基準円Cを設定し、この基準円Cの円周よりも外側に突出する部分を指す。なお、基準円Cは、受圧部70の断面に含まれ得る、最大の半径rを有する円として規定される。
【0030】
第1突出部74は、基準円Cの半径rよりも大きい高さH1を有している。また、第2突出部76は、第1突出部74の高さH1よりも大きい高さH2を有している。ここで、高さH1及び高さH2は、基準円Cの中心Oからの距離を指す。突出部74,76の頂部は、いずれも、丸められて面取りされた形状を有している。これにより、ペン先部材40が突出部74,76に当接した際に、ペン先部材40が突出部74,76に当接しながらも滑らかに前方へ移動することができる。また、ペン先部材40と突出部74,76とが当接することにより、ペン先部材40に傷が生じることを抑制することが可能になる。
【0031】
なお、本実施形態では、筆記具10は、シャッター部材60を閉鎖位置側に付勢する付勢部材84を有している。
図1に示された例では、付勢部材84はねじりコイルばねであり、付勢部材84のコイル部分が内筒部材30の前端部に設けられた第1係合部34に支持されている。付勢部材84の一端は、シャッター部材60の受圧部70に係止されている。そして、付勢部材84はシャッター部材60を
図1における反時計回り方向に付勢している。付勢部材84は、一例としてねじりコイルばねを用いることができるが、これに限られない。
【0032】
次に、主に
図1、
図4及び
図5を参照して、シャッター部材60の動作について説明する。
図1は、シャッター部材60が閉鎖位置にある状態において筆記具10を示しており、
図4は、シャッター部材60が閉鎖位置と退避位置との間に位置する状態において筆記具10を示しており、
図5は、シャッター部材60が退避位置にある状態において筆記具10を示している。
【0033】
図1に示されているように、ノック部材29がノックされておらず、ペン先部材40の全体が軸筒20内に収容されているときには、シャッター部材60は、付勢部材84の付勢力により
図1における反時計回り方向に付勢されており、閉鎖位置に位置している。閉鎖位置では、シャッター部材60の閉鎖面64aが密閉部材50に後方から当接して開口部52を閉鎖している。この状態において、密閉部材50とシャッター部材60とが協働して筆記具10の前端開口部24が密閉される。これにより、ペン先部材40においてインキが乾燥しやすくなることが抑制されている。
【0034】
使用者がノック部材29を前方へ向けてノックすると、ノック部材29に押されてペン先部材40が前方へ向けて移動する。ペン先部材40が移動すると、ペン先部材40がシャッター部材60の受圧部70に当接する。とりわけ図示された例では、ペン先部材40が受圧部70の第1突出部74に当接する。その後、ペン先部材40が受圧部70を押圧することにより、付勢部材84の付勢力に抗して、受圧部70が回転軸線A2周りに回転移動し、これにともなってシャッター部材60が回転軸線A2周りに回転する。このとき、受圧部70が第1突出部74を有していることにより、受圧部70が第1突出部74を有していない(すなわち受圧部70の断面が円形である)場合と比較して、ペン先部材40が受圧部70の第1突出部74に当接するタイミングを早めることができる。したがって、シャッター部材60が閉鎖位置から移動し始める際の、シャッター部材60の移動速度を大きくすることが可能になる。
【0035】
本実施形態では、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに交差しない。すなわち、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに対してずれている。これにより、シャッター部材60が閉鎖位置から退避位置へ移動する際に、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことを抑制することができる。したがって、シャッター部材60を閉鎖位置から退避位置へと移動させるために必要な力を比較的小さくすることができる。また、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことによって閉鎖面64a及び/又は密閉部材50に傷が生じること、とりわけ密閉部材50に傷が生じること、を抑制することができる。これにより、密閉部材50とシャッター部材60との間の気密性の低下を抑制することができる。すなわち、ペン先部材40においてインキが乾燥しやすくなることを抑制することができる。
【0036】
さらにペン先部材40が前方へ向けて移動すると、
図4に示されているように、ペン先部材40は受圧部70の第2突出部76に当接する。受圧部70がこのような第2突出部76を有していることにより、受圧部70が第2突出部76を有していない(すなわち受圧部70の断面が円形である)場合と比較して、閉鎖位置から退避位置へ移動する途中におけるシャッター部材60の移動速度を大きくすることが可能になる。したがって、シャッター部材60の閉鎖部64とペン先部材40とが干渉することを抑制することができる。
【0037】
さらにペン先部材40が前方へ向けて移動すると、
図5に示されているように、ペン先部材40の先端が、密閉部材50の開口部52を通って軸筒20の前端開口部24から前方へ突出する。このとき、シャッター部材60は退避位置に位置するようになる。この状態において、筆記具10は、ペン先部材40を用いて筆記が可能になる。
【0038】
使用者がノック部材29を前方へ向けて再度ノックすると、
図5に示した状態から
図4に示した状態を経由して
図1に示した状態へ戻る。この状態において、密閉部材50とシャッター部材60とが協働して筆記具10の前端開口部24が再度密閉される。
【0039】
本実施形態の筆記具10は、長手方向に延びる中心軸線A1を有する軸筒20と、軸筒20内に配置され、軸方向daに移動可能なペン先部材40と、軸筒20の前部に配置され、ペン先部材40の少なくとも一部が通過可能な開口部52を有する密閉部材50と、ペン先部材40の移動により回転軸線A2周りに回転可能であり、密閉部材50に後方から当接して開口部52を閉鎖可能なシャッター部材60と、を備え、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに交差しない。
【0040】
本実施形態の筆記具10では、シャッター部材60は、ペン先部材40からの押圧力を受ける受圧部70を有する。
【0041】
本実施形態の筆記具10では、受圧部70は、回転軸線A2と平行に延び、且つ、回転軸線A2に対してずれている。
【0042】
本実施形態の筆記具10では、受圧部70は、受圧部70が延びる方向に直交する断面において、ペン先部材40に当接可能な突出部74,76を含む。
【0043】
本実施形態の筆記具10では、突出部74,76は、シャッター部材60が開口部52を閉鎖した状態において、第1突出部74と、第1突出部74よりも前方に位置する第2突出部76と、を含む。
【0044】
このような筆記具10によれば、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに交差しないことにより、シャッター部材60が閉鎖位置から退避位置へ移動する際に、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことを抑制することができる。したがって、シャッター部材60を閉鎖位置から退避位置へと移動させるために必要な力を比較的小さくすることができる。また、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことによって閉鎖面64a及び/又は密閉部材50に傷が生じること、とりわけ密閉部材50に傷が生じること、を抑制することができる。これにより、密閉部材50とシャッター部材60との間の気密性の低下を抑制することができる。すなわち、ペン先部材40においてインキが乾燥しやすくなることを抑制することができる。
【0045】
第2実施形態
次に、
図6~
図10を参照して、第2実施形態について説明する。
図6は、本発明による第2実施形態を説明するための図であって、シャッター部材60を有する筆記具10の他の例を示す縦断面図であり、
図7は、
図6のシャッター部材60を示す斜視図であり、
図8は、
図6の筆記具10のペン先部材40を示す斜視図である。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、第1実施形態と同様に構成され得る部分について、第1実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。本実施形態では、筆記具10がマーカーであり、ペン先部材40がマーカーのペン先である例について説明する。なお、ペン先部材40は他の筆記具用のペン先であってもよい。
【0046】
図7に示されているように、本実施形態のシャッター部材60は、付勢部材84が係止される第2係合部68を有している。本実施形態では、付勢部材84は例えばコイルばねであり、付勢部材84の一端は内筒部材30の第1係合部34に係止され、他端はシャッター部材60の第2係合部68に係止される。そして、付勢部材84はシャッター部材60を
図1における反時計回り方向に付勢している。
【0047】
図8に示されているように、ペン先部材40は、前方部分の側部に軸方向daに延びる突出部44を有している。突出部44の前端部には、押圧面46が設けられている。押圧面46は、ペン先部材40が前方に移動した際に、シャッター部材60の受圧部70に当接し、受圧部70を押圧する部分である。押圧面46は、丸められて面取りされた形状を有している。これにより、押圧面46が受圧部70に当接した際に、押圧面46が受圧部70に当接しながらも滑らかに前方へ移動することができる。また、押圧面46と受圧部70とが当接することにより、押圧面46及び受圧部70に傷が生じることを抑制することが可能になる。
【0048】
次に、主に
図6、
図9及び
図10を参照して、シャッター部材60の動作について説明する。
図6は、シャッター部材60が閉鎖位置にある状態において筆記具10を示しており、
図9は、シャッター部材60が閉鎖位置と退避位置との間に位置する状態において筆記具10を示しており、
図10は、シャッター部材60が退避位置にある状態において筆記具10を示している。
【0049】
図6に示されているように、ノック部材29がノックされておらず、ペン先部材40の全体が軸筒20内に収容されているときには、シャッター部材60は、付勢部材84の付勢力により
図6における反時計回り方向に付勢されており、閉鎖位置に位置している。閉鎖位置では、シャッター部材60の閉鎖面64aが密閉部材50に後方から当接して開口部52を閉鎖している。この状態において、密閉部材50とシャッター部材60とが協働して筆記具10の前端開口部24が密閉される。これにより、ペン先部材40においてインキが乾燥しやすくなることが抑制されている。
【0050】
使用者がノック部材29を前方へ向けてノックすると、ノック部材29に押されてペン先部材40が前方へ向けて移動する。ペン先部材40が移動すると、ペン先部材40の押圧面46がシャッター部材60の受圧部70に当接する。その後、押圧面46が受圧部70を押圧することにより、付勢部材84の付勢力に抗して、受圧部70が回転軸線A2周りに回転移動し、これにともなってシャッター部材60が回転軸線A2周りに回転する。
【0051】
本実施形態では、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに交差しない。すなわち、軸筒20の中心軸線A1とシャッター部材60の回転軸線A2とは、互いに対してずれている。これにより、シャッター部材60が閉鎖位置から退避位置へ移動する際に、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことを抑制することができる。したがって、シャッター部材60を閉鎖位置から退避位置へと移動させるために必要な力を比較的小さくすることができる。また、シャッター部材60の閉鎖面64aと密閉部材50とが互いに擦れ合うことによって閉鎖面64a及び/又は密閉部材50に傷が生じること、とりわけ密閉部材50に傷が生じること、を抑制することができる。これにより、密閉部材50とシャッター部材60との間の気密性の低下を抑制することができる。すなわち、ペン先部材40においてインキが乾燥しやすくなることを抑制することができる。
【0052】
さらにペン先部材40が前方へ向けて移動すると、
図9に示されているように、シャッター部材60が閉鎖位置から退避位置へ移動する。さらにペン先部材40が前方へ向けて移動すると、
図10に示されているように、ペン先部材40の先端が、密閉部材50の開口部52を通って軸筒20の前端開口部24から前方へ突出する。このとき、シャッター部材60は退避位置に位置するようになる。この状態において、筆記具10は、ペン先部材40を用いて筆記が可能になる。
【0053】
使用者がノック部材29を前方へ向けて再度ノックすると、
図10に示した状態から
図9に示した状態を経由して
図6に示した状態へ戻る。この状態において、密閉部材50とシャッター部材60とが協働して筆記具10の前端開口部24が再度密閉される。
【符号の説明】
【0054】
10 筆記具
20 軸筒
22 前軸
24 前端開口部
26 後軸
28 後端開口部
29 ノック部材
30 内筒部材
32 前方段部
34 第1係合部
40 ペン先部材
42 後方段部
44 突出部
46 押圧面
50 密閉部材
52 開口部
60 シャッター部材
62 軸部
64 閉鎖部
64a 閉鎖面
66 切欠部
68 第2係合部
70 受圧部
74 第1突出部
76 第2突出部
82 コイルばね
84 付勢部材
A1 中心軸線
A2 回転軸線