(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】TLR7アゴニストを含む併用薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/505 20060101AFI20240620BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240620BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240620BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61K31/505
A61P35/00
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019560564
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2018047011
(87)【国際公開番号】W WO2019124500
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2017244675
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大坪 武史
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520729(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079431(WO,A1)
【文献】特表2017-523244(JP,A)
【文献】国際公開第2016/179475(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0077263(US,A1)
【文献】国際公開第2008/114817(WO,A1)
【文献】SINGH Manisha et al.,Effective Innate and Adaptive Antimelanoma Immunity through Localized TLR7/8 Activation,The Journal of Immunology,2014年09月,vol.193,p.4722-4731,doi: 10.4049/jimmunol.1401160, 要約,
図6
【文献】RAUSCH Johanna et al.,Combined immunotherapy: CTLA-4 blockade potentiates anti-tumor response induced by transcutaneous im,Journal of Dermatological Science,2017年09月,vo.87, no.3,p.300-306,要約, 303頁左欄13-37行,
図1, 4-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61P 35/00
A61P 31/505
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫チェックポイント阻害剤と併用される、TLR7アゴニストを含む、エフェクターメモリーT細胞の誘導剤であって、
その用途が、大腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、頭頚部癌、子宮頸癌、子宮癌、または食道癌を治療するためであり、
TLR7アゴニストが、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩であり、
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である、
エフェクターメモリーT細胞の誘導剤。
【請求項2】
免疫チェックポイント阻害剤と併用される、TLR7アゴニストを含む、MHCクラスIの誘導剤であって、
その用途が、大腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、頭頚部癌、子宮頸癌、子宮癌、または食道癌を治療するためであり、
TLR7アゴニストが、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩であり、
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である、
MHCクラスIの誘導剤。
【請求項3】
用途が、大腸癌または非小細胞肺癌を治療するためである、請求項1または2に記載の剤。
【請求項4】
用途が、大腸癌を治療するためである、請求項1または2に記載の剤。
【請求項5】
免疫チェックポイント阻害剤に対して治療抵抗性を示す患者に投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の剤。
【請求項6】
癌が再発した患者に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の剤。
【請求項7】
長期的な抗癌免疫作用を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の剤。
【請求項8】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の剤。
【請求項9】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の剤。
【請求項10】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の剤。
【請求項11】
抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10またはBCD-100である、請求項1~9のいずれか一項のいずれか一項に記載の剤。
【請求項12】
抗PD-L1抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167またはBMS-936559である、請求項1~8のいずれか一項に記載の剤。
【請求項13】
抗CTLA-4抗体が、イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145またはREGN-4659である、請求項1~7、10のいずれか一項に記載の剤。
【請求項14】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とが同時に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の剤。
【請求項15】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とが別々に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の剤。
【請求項16】
TLR7アゴニストが免疫チェックポイント阻害剤の投与前に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の剤。
【請求項17】
TLR7アゴニストが免疫チェックポイント阻害剤の投与後に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の剤。
【請求項18】
製薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の剤。
【請求項19】
TLR7アゴニスト及び免疫チェックポイント阻害剤を含む、エフェクターメモリーT細胞の誘導剤
として使用するためのキットであって、
その用途が、大腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、頭頚部癌、子宮頸癌、子宮癌、または食道癌を治療するためであり、
TLR7アゴニストが、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩であり、
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である、
キット。
【請求項20】
TLR7アゴニスト及び免疫チェックポイント阻害剤を含む、MHCクラスIの誘導剤
として使用するためのキットであって、
その用途が、大腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、頭頚部癌、子宮頸癌、子宮癌、または食道癌を治療するためであり、
TLR7アゴニストが、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩であり、
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である、
キット。
【請求項21】
用途が、大腸癌または非小細胞肺癌を治療するためである、請求項19または20に記載のキット。
【請求項22】
用途が、大腸癌を治療するためである、請求項19または20に記載のキット。
【請求項23】
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体から選択される免疫チェックポイント阻害剤と併用される、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩を含む、大腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、頭頚部癌、子宮頸癌、子宮癌、または食道癌の治療剤または予防剤。
【請求項24】
大腸癌または非小細胞肺癌の治療するための、請求項23に記載の剤。
【請求項25】
大腸癌を治療するための、請求項23に記載の剤。
【請求項26】
免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である請求項23~25のいずれか一項に記載の剤。
【請求項27】
免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体である請求項23~25のいずれか一項に記載の剤。
【請求項28】
免疫チェックポイント阻害剤が抗CTLA-4抗体である請求項23~25のいずれか一項に記載の剤。
【請求項29】
抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10またはBCD-100である、請求項23~27のいずれか一項に記載の剤。
【請求項30】
抗PD-L1抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167またはBMS-936559である、請求項23~26のいずれか一項に記載の剤。
【請求項31】
抗CTLA-4抗体が、イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145またはREGN-4659である、請求項23~25および28のいずれか一項に記載の剤。
【請求項32】
免疫チェックポイント阻害剤に対して治療抵抗性を示す患者に投与される、請求項23~31のいずれか一項に記載の剤。
【請求項33】
癌が再発した患者に投与される、請求項23~31のいずれか一項に記載の剤。
【請求項34】
長期的な抗癌免疫作用を有する、請求項23~31のいずれか一項に記載の剤。
【請求項35】
N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩と免疫チェックポイント阻害剤とが同時または別々に投与される、請求項23~31のいずれか一項に記載の剤。
【請求項36】
N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩が免疫チェックポイント阻害剤の投与前または投与後に投与される、請求項23~31のいずれか一項に記載の剤。
【請求項37】
製薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項23~31のいずれか一項に記載の剤。
【請求項38】
N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体から選択される免疫チェックポイント阻害剤を含む、大腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、頭頚部癌、子宮頸癌、子宮癌、または食道癌の治療または予防剤
として使用するためのキット。
【請求項39】
大腸癌または非小細胞肺癌の治療するための、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
大腸癌を治療するための、請求項38に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
生体によるウイルスや微生物などの異物認識に関与する受容体としてtoll様受容体(TLR)が知られている。ウイルスや微生物のパターンを認識することからパターン認識受容体(PRR)の1つであり、ヒトでは10種類のサブタイプがこれまでに発見されている。TLRのサブタイプはそれぞれが異なるリガンドを認識することが明らかになっており、例として、細菌表面のリポ多糖(LPS)、リポタンパク質、鞭毛のフラジェリン、ウイルスの二本鎖RNA、細菌やウイルスのDNAに含まれる非メチル化CpGアイランドを認識する。
【0003】
TLRの活性化によりサイトカインなどの液性因子を介して自然免疫が活性化され、異物排除に働く。癌細胞の排除には細胞性免疫、とりわけ細胞傷害性T細胞(CTLと称する)が重要な働きをしている。CTLは、癌細胞上の抗原ペプチド(癌抗原ペプチド)とMHC(Major Histocompatibility Complex)クラスI抗原との複合体を認識した前駆体T細胞が分化増殖して生成されるものであり、癌細胞を攻撃する。
【0004】
TLR7はTLRファミリーの中でもエンドソームに高発現しており、主にウイルス由来の1本鎖RNAを認識する。免疫細胞の中でもTLR7は形質細胞様樹状細胞(pDC)に特に高発現しており、pDCのTLR7に対する刺激により、主にtype I インターフェロンであるインターフェロンαが分泌される。TLR7が活性化するとMYD88が集合することによりシグナルカスケードが開始され、転写因子であるNF-κBやIRF7を介して多くの免疫因子の転写を活性化させる。インターフェロンαは抗ウイルス活性および抗腫瘍作用を持つサイトカインの一種であり、HCV、HBC治療に実用化されていると共に癌の治療としても実用化されているサイトカインである。
【0005】
TLR刺激により樹状細胞を始めとする、抗原提示細胞は癌細胞由来の抗原の取り込みおよび、CD8陽性T細胞への抗原能を上昇させ、CTLの誘導を活性化する。活性化されたCTLは腫瘍を認識し、細胞傷害作用やサイトカインの産生を介して抗腫瘍効果を示す。
【0006】
例えば、TLR7及びTLR8のアゴニストであるイミキモドが、基底癌の治療薬として実用化されている。その他TLR7アゴニストとして、例えば、TLR7及びTLR8のアゴニストであるレジキモド(R848)、MEDI-9197、PF-4878691(852A)などが報告されている。また、TLR7アゴニストとして、イミキモド、ロキソリビン、特許文献1に記載の化合物が報告されている。
【0007】
ところで、癌近傍にCTLが存在するにもかかわらず、癌が縮小もしくは消失しないケースが観察される。その一つの原因として、腫瘍近傍にあるCTLが、早期に疲弊し、癌細胞への殺傷能力、複数のサイトカイン産生能力や増殖能力を消失し、結果的にCTLが細胞死に陥っていることが示唆されている。この疲弊現象は、CTLの細胞膜表面に発現する免疫チェックポイント分子から負のシグナルが入ることが原因であることが明らかとなってきた。
【0008】
これまでに、免疫チェックポイント分子として、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、KIR、TIM-3、B7-H3、B7-H4、VISTA/PD-1H、HVEM、BTLA、CD160、GAL9、TIGIT、PVR、BTNL2、BTN1A1、BTN2A2、BTN3A2、CSF-1Rなどが報告されている(非特許文献1)。例えば、PD-1は、活性化リンパ球(T細胞、B細胞及びNKT細胞)及び骨髄系細胞に発現するCD28ファミリーに属する受容体であり、抗原提示細胞に発現するPD-1リガンド(PD-L1及びPD-L2)と結合し、リンパ球に抑制性シグナルを伝達してリンパ球の活性化状態を負に調節する。PD-L1は、抗原提示細胞以外に様々な癌細胞にも発現していることが明らかとなっている。すなわち、癌は、PD-L1を利用してCTLからの攻撃を回避している。
【0009】
そこで近年、免疫チェックポイント分子の機能を阻害する抗体が開発され始めている(非特許文献2)。これら抗体はCTLの疲弊状態を解除する。例えば、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体は、PD-1とPD-L1との結合を阻害し、CTLの細胞傷害活性を回復させる。実際、非小細胞肺癌やメラノーマなどの患者を対象として抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体の臨床試験が実施され、顕著な効果が認められている。しかし、著効を示す患者は約2~3割程度に過ぎず、強い免疫関連有害事象を被るなど、抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体を用いた治療法は十分に満足された状況にはない。
【0010】
近年、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体とTLR7及びTLR8のアゴニストとして知られているMEDI-9197を併用することで、抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の抗腫瘍免疫作用の増強が認められることが報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Nat Rev Cancer. 2012; 12: 252-64
【文献】Nat Rev Drug Discov. 2015 Aug; 14 (8): 561-8
【文献】J Immunol. 2014 Nov 1;193(9):4722-31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、長期の免疫誘導作用を特徴とする癌の治療又は予防のために有用な薬剤を提供することにある。また、免疫チェックポイント阻害剤に対して治療抵抗性を示す患者、または癌が再発した患者に対しても有効性を示す、癌の治療又は予防のための薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、免疫チェックポイント阻害剤とTLR7アゴニストを併用すれば、癌細胞のMHCクラスIの発現が上昇し、それぞれ単独で投与した場合に期待されるよりも、強い抗癌作用を奏することを見出した。また、前記併用により、腫瘍に浸潤したリンパ球中のエフェクターメモリーT細胞を増加させることができ、長期的な抗癌免疫作用を持続し腫瘍再移植に対して生着拒絶に繋がることを見出した。
以上の知見に基づき、本発明は完成された。
【0015】
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
【0016】
[項1]免疫チェックポイント阻害剤と併用される、TLR7アゴニストを含む、エフェクターメモリーT細胞の誘導剤。
【0017】
[項2]免疫チェックポイント阻害剤と併用される、TLR7アゴニストを含む、MHCクラスIの誘導剤。
【0018】
[項3]癌または感染症を治療するための、項1または2に記載の剤。
【0019】
[項4]癌を治療するための、項1または2に記載の剤。
【0020】
[項5]癌が、非小細胞肺癌;小細胞肺癌;膵臓癌;悪性黒色腫;腎細胞癌;胃癌;大腸癌;直腸癌;小腸癌;乳癌;胚細胞癌;膀胱癌;前立腺癌;子宮癌;子宮頸癌;卵巣癌;肝臓癌;メルケル細胞癌;骨癌;頭頚部癌;皮膚もしくは眼窩内悪性メラノーマ;肛門部癌;精巣癌;食道癌;内分泌系癌;甲状腺癌;副甲状腺癌;副腎癌;柔組織肉腫;尿道癌;陰茎癌;多型性膠芽腫;脳腫瘍;急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性もしくは急性白血病;ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含む悪性リンパ腫;骨髄異形成症候群;および多発性骨髄腫からなる群から選択される、項3または4に記載の剤。
【0021】
[項6]
免疫チェックポイント阻害剤に対して治療抵抗性を示す患者に投与される、項1~5のいずれか一項に記載の剤。
【0022】
[項7]癌が再発した患者に投与される、項1~6のいずれか一項に記載の剤。
【0023】
[項8]長期的な抗癌免疫作用を有する、項1~7のいずれか一項に記載の剤。
【0024】
[項9]TLR7アゴニストが、ピリミジン骨格、アデニン骨格、イミダゾキノリン骨格、グアニン骨格、またはジヒドロプテリジン骨格を有する化合物またはその製薬学的に許容される塩である、項1~8のいずれか一項に記載の剤。
【0025】
[項10]TLR7アゴニストが、ピリミジン骨格、アデニン骨格、またはイミダゾキノリン骨格を有する化合物またはその製薬学的に許容される塩である、請求項9に記載の剤。
【0026】
[項11]TLR7アゴニストが、イミキモド、ロキソリビン、もしくは以下のいずれかの化合物:
N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン;
N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン;
6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン;
6-アミノ-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-エトキシ-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン;
N-(4-{[6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-8-オキソ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル]メチル}ベンゾイル)グリシン;またはそれらの製薬学的に許容される塩である、項1~8のいずれか一項に記載の剤。
【0027】
[項12]TLR7アゴニストが、以下のいずれかの化合物:
N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン;
N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン;
6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン;
6-アミノ-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-エトキシ-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン;
またはその製薬学的に許容される塩である、項11に記載の剤。
【0028】
[項13]TLR7アゴニストが、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン、またはそれらの製薬学的に許容される塩である、項12に記載の剤。
【0029】
[項14]免疫チェックポイント阻害剤が、
(1)CTLA-4、
(2)PD-1、
(3)LAG-3、
(4)BTLA、
(5)KIR、
(6)TIM-3、
(7)PD-L1、
(8)PD-L2、
(9)B7-H3、
(10)B7-H4、
(11)HVEM、
(12)GAL9、
(13)CD160、
(14)VISTA、
(15)BTNL2、
(16)TIGIT、
(17)PVR、
(18)BTN1A1、
(19)BTN2A2、
(20)BTN3A2、および
(21)CSF-1R
からなる群から選択される分子の機能を阻害する1以上の薬剤である、項1~13のいずれか一項に記載の剤。
【0030】
[項15]免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、LAG-3、TIM-3、BTLA、VISTA、HVEM、TIGIT、PVR、PD-L1およびCD160からなる群から選択される分子の機能を阻害する1以上の薬剤である、項14に記載の剤。
【0031】
[項16]免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、LAG-3、TIM-3、BTLA、VISTA、HVEM、TIGIT、PVR、PD-L1およびCD160からなる群から選択される分子の機能を阻害する1以上の薬剤である、項14に記載の剤。
【0032】
[項17]免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1またはPD-L1の分子の機能を阻害する薬剤である、項14に記載の剤。
【0033】
[項18]免疫チェックポイント阻害剤である分子の機能を阻害する1以上の薬剤が、当該分子に対する抗体である、項14~17のいずれか一項に記載の剤。
【0034】
[項19]免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である、項18に記載の剤。
【0035】
[項20]免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である、項18に記載の剤。
【0036】
[項21]抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10またはBCD-100である、項19または20に記載の剤。
【0037】
[項22]抗PD-L1抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167またはBMS-936559である、項19または20に記載の剤。
【0038】
[項23]免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4抗体である、項18に記載の剤。
【0039】
[項24]抗CTLA-4抗体が、イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145またはREGN-4659である、項19または23に記載の剤。
【0040】
[項25]TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とが同時に投与される、項1~24のいずれか一項に記載の剤。
【0041】
[項26]TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とが別々に投与される、項1~24のいずれか一項に記載の剤。
【0042】
[項27]TLR7アゴニストが免疫チェックポイント阻害剤の投与前に投与される、項1~24のいずれか一項に記載の剤。
【0043】
[項28]TLR7アゴニストが免疫チェックポイント阻害剤の投与後に投与される、項1~24のいずれか一項に記載の剤。
【0044】
[項29]製薬学的に許容される担体をさらに含む、項1~28のいずれか一項に記載の剤。
【0045】
[項30]TLR7アゴニスト及び免疫チェックポイント阻害剤を含む、エフェクターメモリーT細胞の誘導剤のキット。
【0046】
[項31]TLR7アゴニスト及び免疫チェックポイント阻害剤を含む、MHCクラスIの誘導剤のキット。
【0047】
[項32]治療上の有効量のTLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とを哺乳動物に投与することを含む、エフェクターメモリーT細胞を誘導またはMHCクラスIを誘導する方法。
【0048】
[項33]免疫チェックポイント阻害剤と併用される、エフェクターメモリーT細胞の誘導またはMHCクラスIの誘導における使用のための、TLR7アゴニスト。
【0049】
[項34]TLR7アゴニストと併用される、エフェクターメモリーT細胞の誘導またはMHCクラスIの誘導における使用のための、免疫チェックポイント阻害剤。
【0050】
[項35]免疫チェックポイント阻害剤と併用される、エフェクターメモリーT細胞を誘導またはMHCクラスIを誘導するための医薬の製造のための、TLR7アゴニストの使用。
【0051】
[項36]TLR7アゴニストと併用される、エフェクターメモリーT細胞を誘導またはMHCクラスIを誘導するための医薬の製造のための、免疫チェックポイント阻害剤の使用。
【0052】
[項37]エフェクターメモリーT細胞を誘導またはMHCクラスIを誘導するための医薬の製造のための、TLR7アゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤の使用。
【0053】
[項38]免疫チェックポイント阻害剤と併用される、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはそれらの製薬学的に許容される塩を含む、癌の治療剤または予防剤。
【0054】
[項39]免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である項38に記載の剤。
【0055】
[項40]免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である項38に記載の剤。
【0056】
[項41]免疫チェックポイント阻害剤が抗CTLA-4抗体である項38に記載の剤。
【0057】
[項42]抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10またはBCD-100である、項39または40に記載の剤。
【0058】
[項43]抗PD-L1抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167またはBMS-936559である、項39または40に記載の剤。
【0059】
[項44]抗CTLA-4抗体が、イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145またはREGN-4659である、項39または41に記載の剤。
【0060】
[項45]免疫チェックポイント阻害剤に対して治療抵抗性を示す患者に投与される、項38~44のいずれか一項に記載の剤。
【0061】
[項46]癌が再発した患者に投与される、項38~44のいずれか一項に記載の剤。
【0062】
[項47]長期的な抗癌免疫作用を有する、項38~44のいずれか一項に記載の剤。
【0063】
[項48]N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはそれらの製薬学的に許容される塩と免疫チェックポイント阻害剤とが同時または別々に投与される、項38~44のいずれか一項に記載の剤。
【0064】
[項49]N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはそれらの製薬学的に許容される塩が免疫チェックポイント阻害剤の投与前または投与後に投与される、項38~44のいずれか一項に記載の剤。
【0065】
[項50]製薬学的に許容される担体をさらに含む、項38~44のいずれか一項に記載の剤。
【0066】
[項51]N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはそれらの製薬学的に許容される塩及び免疫チェックポイント阻害剤を含む、癌の治療または予防剤のキット。
【0067】
[項52]治療上の有効量のTLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とを哺乳動物に投与することを含む、癌を治療または予防するための方法。
【0068】
[項53]免疫チェックポイント阻害剤と併用される、癌の治療または予防における使用のための、TLR7アゴニスト。
【0069】
[項54]TLR7アゴニストと併用される、癌の治療または予防における使用のための、免疫チェックポイント阻害剤。
【0070】
[項55]免疫チェックポイント阻害剤と併用される、癌を治療または予防するための医薬の製造のための、TLR7アゴニストの使用。
【0071】
[項56]TLR7アゴニストと併用される、癌を治療または予防するための医薬の製造のための、免疫チェックポイント阻害剤の使用。
【0072】
[項57]癌を治療または予防するための医薬の製造のための、TLR7アゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤の使用。
【0073】
[項58]TLR7アゴニストが、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはそれらの製薬学的に許容される塩である、項52に記載の方法、項53あるいは54に記載の剤、または項55~57に記載の使用。
【発明の効果】
【0074】
本発明により、TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とを併用することを特徴とするエフェクターメモリーT細胞の誘導剤またはMHCクラスIの誘導剤、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるためのTLR7アゴニストを含有する医薬、並びに、TLR7アゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤を含むエフェクターメモリーT細胞の誘導剤またはMHCクラスIの誘導剤のキット等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】
図1は、各投与群における腫瘍増殖曲線を示す。縦軸は腫瘍容積を示し、横軸は移植からの日数を示す。
【
図2】
図2は、FACS解析により得られた、各投与群におけるCD8陽性細胞中のエフェクターメモリーT細胞の割合を示す。
【
図3】
図3は、FACS解析により得られた、各投与群におけるH-2KdのMFIを示す。
【
図4】
図4は、各群における治療応答した個体の数と、再移植後に生着が認められた個体数を示す。
【
図5】
図5は、各投与群における腫瘍増殖曲線を示す。縦軸は腫瘍容積を示し、横軸は移植からの日数を示す。
【
図6】
図6は、FACS解析により得られた、各投与群におけるCD8陽性細胞中のエフェクターメモリーT細胞の割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0077】
本発明においてTLR7の生理活性を亢進する、すなわちTLR7受容体アゴニスト活性を有するTLR7アゴニストとしては、特に限定はなく、TLR7受容体の機能を亢進する化合物を意味する。
本明細書におけるTLR7アゴニストとして、好ましくは低分子量化合物を挙げることができ、具体的には分子量200~600、好ましくは分子量250~500、より好ましくは分子量300~500を有するものが挙げられる。
本明細書におけるTLR7アゴニストとして好ましくは、TLR7選択的アゴニストが挙げられる。ここでTLR7選択的とは、TLR7以外のTLR受容体アゴニスト活性が、TLR7受容体アゴニスト活性よりも弱いことを意味し、例えばTLR7受容体アゴニスト活性が、単鎖RNAを内在性リガンドとするTLR8受容体アゴニスト活性よりも強い場合、更に具体的にはTLR7受容体アゴニスト活性(EC50値)がTLR8受容体アゴニスト活性の30倍以上である場合を例示することができる。
本明細書におけるTLR7アゴニストとして好ましくは、アデニン骨格、ピリミジン骨格、イミダゾキノリン骨格、グアニン骨格、ジヒドロプテリジン骨格、を有する化合物が挙げられ、更に好ましくは、アデニン骨格、ピリミジン骨格、イミダゾキノリン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0078】
アデニン骨格を有する化合物としては4-アミノ-8-オキソ-プリン(8-オキソアデニン)骨格を有する化合物が挙げられ、例えば9位が5~6員の芳香族炭素環、5~6員の芳香族複素環もしくは4~7員の脂肪族含窒素複素環で置換されていてもよいアルキル基(例えば炭素数1~6の直鎖アルキル基)で置換された4-アミノ-8-オキソ-プリン骨格を有する化合物が挙げられる。具体的には、GSK-2245035〔6-アミノ-2-{[(1S)-1-メチルブチル]オキシ}-9-[5-(1-ピペリジニル)ペンチル]-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン〕、PF-4171455〔4-アミノ-1-ベンジル-6-トリフルオロメチル-1,3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-オン〕等のMedChemComm 2011, 2, 185. に記載された化合物、又は、WO 1998/01448、WO 1999/28321、WO 2002/085905、WO 2008/114008、WO 2008/114819、WO 2008/114817、WO 2008/114006、WO 2010/018131、WO 2010/018134、WO 2008/101867、WO 2010/018133、WO 2009/005687等に記載された化合物が挙げられる。アデニン骨格を有する化合物として好ましくは、6-アミノ-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-エトキシ-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン、6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン、CL264〔N-(4-{[6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-8-オキソ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル]メチル}ベンゾイル)グリシン〕が挙げられる。
【0079】
ピリミジン骨格を有する化合物としては、2,4-ジアミノピリミジン骨格を有する化合物が挙げられ、例えば、6位は適宜アルキル基等で置換され、5位は5~6員の芳香族炭素環、5~6員の芳香族複素環もしくは4~7員の脂肪族含窒素複素環で置換されていてもよいアルキル基(例えば炭素数1~6の直鎖アルキル基)で置換された2,4-ジアミノピリミジンが挙げられる。具体的には、WO 2000/12487、WO 2010/133885、WO 2013/172479又はWO 2012/136834に記載された化合物を挙げることができる。ピリミジン骨格を有する化合物として好ましくは、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン(特許文献1、実施例4、下記式(I))、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン(特許文献1、実施例3、下記式(II))が挙げられる。
【化1】
【0080】
イミダゾキノリン骨格を有する化合物としては、イミキモド(Imiquimod)、レジキモド(resiquimod)又は852A〔N-[4-(4-アミノ-2-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)ブチル]メタンスルホンアミド〕をはじめとする4-アミノ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン骨格を有する化合物が挙げられ、例えば1位がC1-6アルキル基もしくはC1-6アルコキシ基で置換され、2位がC1-6アルキル基もしくはC1-6アルコキシ基で置換された4-アミノ-1H[4,5-c]キノリンが挙げられる。具体的には、WO2010/48520、WO2008/135791、US4689338、US 4698348、又はWO2007/030777に記載された化合物を挙げることができる。
【0081】
イミダゾキノリン骨格を有する化合物として好ましくは、イミキモド(Imiquimod)が挙げられる。
グアニン骨格を有する化合物としては、2-アミノ-6-オキソプリン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的にはロキソリビン(Loxoribine)が挙げられる。
ジヒドロプテリジン骨格を有する化合物としては、4-アミノ-7,8-ジヒドロプテリジン-6(5H)-オン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的にはベサトリモド〔4-アミノ-2-ブトキシ-8-[[3-[(ピロリジン-1-イル)メチル]フェニル]メチル]-7,8-ジヒドロプテリジン-6(5H)-オン〕が挙げられる。
その他、TLR7アゴニストである低分子量化合物として、イサトリビン(Isatoribine)、ANA-773、及びWO 2010/077613に記載の化合物を例示することができる。
【0082】
本発明において「免疫チェックポイント阻害剤」とは、癌細胞や抗原提示細胞による免疫抑制作用を阻害する物質を意味する。免疫チェックポイント阻害剤としては、特に限定されないが、免疫阻害作用の寄与が報告されている分子の機能を阻害する薬剤が挙げられ、例えば、以下からなる群から選択される分子の機能を阻害する薬剤が挙げられる:(1)CTLA-4(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など);(2)PD-1(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ(Spartalizumab)、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など);(3)PD-L1(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など);(4)PD-L2;(5)LAG-3(IMP-321、BMS-986016など);(6)KIR(IPH2101など);(7)TIM-3;(8)B7-H3(MGA-271など);(9)B7-H4;(10)VISTA;(11)HVEM;(12)BTLA;(13)CD160;(14)GAL9;(15)TIGIT;(16)PVR;(17)BTNL2;(18)BTN1A1;(19)BTN2A2;(20)BTN3A2(Nat Rev Drug Discov. 2013; 12: 130-146;日経メディカル Cancer Review 2014; 9;Nat Rev Immunol. 2014; 14: 559-69);および(21)CSF1-R。
免疫チェックポイント阻害剤として好ましくは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、VISTA、HVEM、BTLA、CD160、TIGIT、またはPVRの機能を阻害する薬剤が挙げられ、更に好ましくは、CTLA-4、PD-1またはPD-L1の機能を阻害する薬剤が挙げられる。
【0083】
また、免疫チェックポイント阻害剤として好ましくは上記分子に対する抗体であることが挙げられ、例えば、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗LAG-3抗体、抗TIM-3抗体、抗VISTA抗体、抗HVEM抗体、抗BTLA抗体、抗CD160抗体、抗TIGIT抗体、または抗PVR抗体が挙げられる。
【0084】
抗CTLA-4抗体とは、CTLA-4分子を認識するタンパク質であり、Y字型の4本鎖構造(軽鎖・重鎖の2つのポリペプチド鎖が2本ずつ)を有し、Fragment antigen binding部位(以下、「Fab部位」という。)により1つの分子を選択的に認識する分子である。抗CTLA-4抗体は、抗体を産生するB細胞とミエローマを細胞融合させて得られるハイブリドーマを作製した後、培養上清中に分泌される抗体を精製することで製造される。
抗PD-1抗体とは、PD-1分子を認識するタンパク質であり、Y字型の4本鎖構造(軽鎖・重鎖の2つのポリペプチド鎖が2本ずつ)を有し、Fab部位により1つの分子を選択的に認識する分子である。抗PD-1抗体は、抗体を産生するB細胞とミエローマを細胞融合させて得られるハイブリドーマを作製した後、培養上清中に分泌される抗体を精製することで製造される。
抗PD-L1抗体とは、PD-L1を認識するタンパク質であり、Y字型の4本鎖構造(軽鎖・重鎖の2つのポリペプチド鎖が2本ずつ)を有し、Fab部位により1つの分子を選択的に認識する分子である。抗PD-L1抗体は、抗体を産生するB細胞とミエローマを細胞融合させて得られるハイブリドーマを作製した後、培養上清中に分泌される抗体を精製することで製造される。
同様に、抗LAG-3抗体、抗TIM-3抗体、抗VISTA抗体、抗HVEM抗体、抗BTLA抗体、抗CD160抗体、抗TIGIT抗体、または抗PVR抗体とは、それぞれの分子を認識するタンパク質であり、Y字型の4本鎖構造(軽鎖・重鎖の2つのポリペプチド鎖が2本ずつ)を有し、1つの分子を選択的に認識する分子である。これらの抗体は、抗体を産生するB細胞とミエローマを細胞融合させて得られるハイブリドーマを作製した後、培養上清中に分泌される抗体を精製することで製造される。
具体的に、免疫チェックポイント阻害剤である抗体として好ましくは、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など)、抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など)、抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など)、抗LAG-3抗体(IMP-321、BMS-986016など)、抗TIM-3抗体、抗VISTA抗体、抗HVEM抗体、抗BTLA抗体、抗CD160抗体、抗TIGIT抗体、または抗PVR抗体が挙げられる。更に好ましくは、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など)、抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など)、または抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など)が挙げられる。特に好ましくは、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ)、抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ)、または抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ)が挙げられる。
【0085】
本明細書におけるエフェクターメモリーT細胞の誘導剤またはMHCクラスIの誘導剤において、
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの一つの態様として、TLR7アゴニストと、以下の分子の機能を阻害する薬剤が挙げられる:(1)CTLA-4;(2)PD-1;(3)PD-L1;(4)PD-L2(5)LAG-3;(6)KIR;(7)TIM-3;(8)B7-H3;(9)B7-H4;(10)VISTA;(11)HVEM;(12)BTLA;(13)CD160;(14)GAL9;(15)TIGIT;(16)PVR;(17)BTNL2;(18)BTN1A1;(19)BTN2A2;(20)BTN3A2;および(21)CSF1-R。
【0086】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7選択的アゴニストと、以下の分子の機能を阻害する薬剤が挙げられる:CTLA-4;PD-1;PD-L1;LAG-3;TIM-3;VISTA;HVEM;BTLA;CD160;TIGIT;およびPVR。
【0087】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、アデニン骨格、ピリミジン骨格、イミダゾキノリン骨格、グアニン骨格、またはジヒドロプテリジン骨格を有するTLR7選択的アゴニストと、以下の分子の機能を阻害する抗体が挙げられる:CTLA-4;PD-1;PD-L1;LAG-3;TIM-3;VISTA;HVEM;BTLA;CD160;TIGIT;およびPVR。
【0088】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、アデニン骨格、ピリミジン骨格、またはイミダゾキノリン骨格を有するTLR7選択的アゴニストと、以下の抗体が挙げられる:抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など);抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など);抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など);抗LAG-3抗体(IMP-321、BMS-986016など);抗TIM-3抗体;抗VISTA抗体;抗HVEM抗体;抗BTLA抗体;抗CD160抗体;抗TIGIT抗体;および抗PVR抗体。
【0089】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7選択的アゴニストである以下の化合物:イミキモド;ロキソリビン;N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン;N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン;6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン;6-アミノ-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-エトキシ-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン;N-(4-{[6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-8-オキソ-7,8-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル]メチル}ベンゾイル)グリシン(CL264)、またはその製薬学的に許容される塩と、以下の抗体が挙げられる:抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など);抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など);抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など)。
【0090】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7選択的アゴニストである以下の化合物:N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン;N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン;6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン;6-アミノ-9-({6-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-エトキシ-7,9-ジヒドロ-8H-プリン-8-オン(DSR-29133)、またはその製薬学的に許容される塩と、以下の抗体が挙げられる:抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など);抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など);抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など)。
【0091】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7選択的アゴニストである以下の化合物:N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン;N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン、またはその製薬学的に許容される塩と、以下の抗体が挙げられる:抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブなど);抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、など);抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、など)。
【0092】
本発明の別の態様として、免疫チェックポイント阻害剤と併用される、TLR7アゴニストであるN-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはそれらの製薬学的に許容される塩を含む、癌の治療剤または予防剤が挙げられる。ここにおいて、TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの一つの態様として、TLR7アゴニストであるN-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシン、またはその製薬学的に許容される塩と、以下の分子の機能を阻害する薬剤が挙げられる:(1)CTLA-4;(2)PD-1;(3)PD-L1;(4)PD-L2(5)LAG-3;(6)KIR;(7)TIM-3;(8)B7-H3;(9)B7-H4;(10)VISTA;(11)HVEM;(12)BTLA;(13)CD160;(14)GAL9;(15)TIGIT;(16)PVR;(17)BTNL2;(18)BTN1A1;(19)BTN2A2;(20)BTN3A2;および(21)CSF1-R。
【0093】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7アゴニストであるN-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩と、以下の分子の機能を阻害する薬剤が挙げられる:CTLA-4;PD-1;PD-L1;LAG-3;TIM-3;VISTA;HVEM;BTLA;CD160;TIGIT;およびPVR。
【0094】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7アゴニストであるN-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩と、以下の抗体が挙げられる:抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など);抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など);抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など);抗LAG-3抗体(IMP-321、BMS-986016など);抗TIM-3抗体;抗VISTA抗体;抗HVEM抗体;抗BTLA抗体;抗CD160抗体;抗TIGIT抗体;および抗PVR抗体。
【0095】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7アゴニストであるN-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン、N-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2-ジフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩と、以下の抗体が挙げられる:抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、MK-1308、ADU-1604、BMS-986249、CS-1002、BCD-145、REGN-4659など);抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ、JNJ-3283、BI-754091、INCMGA-00012、ABBV-181、CC-90006、AGEN-2034w、GSL-010、LZM-009、Sym-021、AB-122、AK-105、CS-1003、HLX-10、BCD-100など);抗PD-L1抗体(デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、STI-1014、CK-301、BMS-986189、LY-3300054、CX-072、CBT-502、FAZ-053、FS-118、HTI-1088、MSB-2311、BGB-A333、IMC-001、HLX-20、A-167、BMS-936559など)。
【0096】
TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤の組み合わせの別の態様として、TLR7アゴニストであるN-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシンまたはその製薬学的に許容される塩と、以下の抗体が挙げられる:抗PD-1抗体であるニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、ドスタリマブ、スパタリズマブ、カムレリズマブ、ゲノリムズマブ、シンチリマブ;抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ;または抗CTLA-4抗体であるイピリムマブ、トレメリムマブ。
【0097】
本明細書においてエフェクターメモリーT細胞とは、長期間生体内に循環し、癌細胞の細胞表面上に発現する抗原に出会うと、短期間で増殖することで癌細胞を殺傷できるCD8陽性T細胞の一部の集団である。エフェクターメモリーT細胞の誘導剤とは、エフェクターメモリーT細胞の誘導を介して長期間抗癌作用を持続し、かつ癌の再燃又は再発を抑制することができる薬剤をいう。以上より、免疫チェックポイント阻害剤及びTLR7アゴニストを組み合わせてなる本発明のエフェクターメモリーT細胞の誘導剤は、癌の治療剤、予防剤、または癌の再発予防剤として使用できる。
【0098】
本明細書においてMHCクラスIとは、癌細胞に発現する癌抗原のペプチド断片と結合し、当該抗原ペプチド断片を細胞外に提示する分子である。MHCクラスIの誘導剤とは、癌細胞上の抗原提示量が上昇することで、癌を攻撃するCTLによる認識が上昇し、抗癌免疫作用を増強することができる薬剤をいう。以上より、免疫チェックポイント阻害剤及びTLR7アゴニストを組み合わせてなる本発明のMHCクラスI誘導剤は、単独で投与されるよりも強い抗癌作用を示す癌の治療剤または予防剤として使用できる。
【0099】
本明細書において、「癌」とは、固形癌および血液癌を含む概念を意味する。
固形癌としては、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、悪性黒色腫、腎細胞癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、小腸癌、乳癌、胚細胞癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、メルケル細胞癌、骨癌、頭頚部癌、皮膚もしくは眼窩内悪性メラノーマ、肛門部癌、精巣癌、食道癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、多型性膠芽腫または脳腫瘍などが挙げられる。
血液癌とは、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性もしくは急性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含む悪性リンパ腫などが挙げられる。
【0100】
本明細書において、「癌細胞」とは、固形癌および、血液癌を構成する無制限に増殖する個別の細胞を意味する。
【0101】
「癌が再発する」とは、固形癌においては、手術や既存治療により、腫瘍の増加抑制、縮小が一定期間認められたのちに再び原発部位、もしくは遠隔部位に腫瘍が発生することを意味する。血液癌においては、既存療法により、血液学的寛解(血液中に癌細胞が一定以下の状態)、細胞遺伝学的寛解(血液中に癌に関連する遺伝子が検出されない)が一定期間認められたのちに再び血液中に癌細胞が認められることを意味する。
【0102】
「免疫チェックポイント阻害剤に対して治療抵抗性を示す」とは、固形癌においては免疫チェックポイント阻害剤を投与しても腫瘍の増大を抑えられない状態を意味する。抗PD-1抗体に対して抵抗性を示すとは、上述の抗PD-1抗体を投与しても腫瘍の増大が抑えられない状態を意味する。抗PD-L1抗体に対して抵抗性を示すとは、上述の抗PD-L1抗体を投与しても腫瘍の増大が抑えられない状態を意味する。血液癌においては免疫チェックポイント阻害剤を投与しても血液中の癌細胞の数の増加を抑えられない状態を意味する。抗PD-1抗体に対して抵抗性を示すとは、上述の抗PD-1抗体を投与しても血液中の癌細胞の数の増加を抑えられない状態を意味する。抗PD-L1抗体に対して抵抗性を示すとは、上述の抗PD-L1抗体を投与しても血液中の癌細胞の数の増加を抑えられない状態を意味する。
【0103】
「長期的な抗癌免疫作用を有する」とは、癌細胞特異的な抗原を認識する免疫細胞が長期的に生存する結果、抗癌作用が長期的に持続することを意味する。一旦治療によって癌細胞が退縮もしくは数が減少して奏功状態に至っても、体内における癌細胞を認識し攻撃する免疫細胞の数が時間とともに減少すると、癌細胞が再び増殖し再発に至ることが知られている。しかし、癌特異的抗原を記憶した免疫細胞が長期的に生存していると、治療奏功後に癌が再発する可能性を低下できる。
【0104】
本発明の剤は、TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とを併用することにより優れた抗癌作用を示すが、更に幾つかの薬剤又は治療法複合的に併用(例えば多剤併用)することにより、その効果がより一層増強され又は患者のQOLを改善させることができる。更に複合的に併用することのできる薬剤又は治療法として、具体的に、化学療法剤(例えばイホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、メルファラン、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール、ネララビン、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メトトレキサート、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、アクラルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン)、キナーゼ阻害剤(例えばゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブ、アファチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、イブルチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、トファシチニブ、バリシチニブ、ルキソリチニブ、オラパリブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、パルボシクリブ)、モノクローナル抗体(例えばリツキシマブ、セツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、モガムリズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、ラムシルマブ、デノスマブ)、免疫賦活化剤(例えばTLR3アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR8アゴニスト、TLR9アゴニスト、STINGアゴニスト、NOD2アゴニスト)、癌ワクチン(例えばWT1、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、DAM-10、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、GAGE-8、NA88-A、NY-ESO-1、NY-ESO-1a、MART-1/Melan-A、MC1R、Gp100、PSA、PSM、Tyrosinase、Proteinase 3、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Ep-CAM、Cyp-B、Her2/neu、VEGFR、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-2、SART-3、AFP、β-Catenin、Caspase-8、CDK-4、ELF2、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、Myosin、RAGE、SART-2、TRP-2、707-AP、Survivin、LivinおよびSYT-SSXからなる群から選ばれる癌抗原タンパク質由来のMHCクラスI癌抗原ペプチド)、又は放射線療法などが挙げられ、それらの薬剤又は治療法から選択される1又は複数の薬物又は治療法を併用することができる。好ましくは、放射線療法が挙げられる。
【0105】
本発明の剤は、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、吸入剤、経鼻剤等として用いられる。経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。また錠剤には舌下錠、口腔内貼付錠、口腔内速崩壊錠などが含まれる。
【0106】
このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定化剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0107】
口腔内速崩壊錠は公知の方法に準じて製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質をそのまま、あるいは原末もしくは造粒原末粒子に適当なコーティング剤、可塑剤を用いて被覆を施した活性物質に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散補助剤、安定化剤、溶解補助剤、香味料等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0108】
経口投与のための内服用液剤は、製薬学的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0109】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定化剤、溶解補助剤(グリシン等のアミノ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、一般に医薬品製剤に用いられるpH調整剤(塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、酢酸ナトリウム水和物、無水酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸二水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムおよびリン酸三ナトリウム等)懸濁化剤、乳化剤、分散剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤、着色剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0110】
非経口投与のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0111】
一態様において、TLR7アゴニストを含む医薬組成物は、トレハロース、マンニトール、グリシン、メチオニン、クエン酸、乳酸、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸およびpH調整剤からなる群から選択される1以上の製薬学的に許容される担体を含む。
【0112】
一態様において、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物は、マンニトール、クエン酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ポリソルベート80(商標登録)およびpH調整剤からなる群から選択される1以上の製薬学的に許容される担体を含む。
【0113】
TLR7アゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤の投与方法は、疾患の種類、対象の状態、標的部位などの条件に応じて適宜選択することができる。前記投与方法は、例えば、注射または輸液による、静脈内、筋肉内、皮膚内、腹腔内、皮下、もしくは脊髄投与、または他の非経口投与経路を含む。また、本文中、「非経口投与」とは、腸および局所投与以外の通常の注入による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腹腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、経気管的、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注入および点滴が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
本発明のTLR7アゴニストは、免疫チェックポイント阻害剤に加えて、非薬剤療法と組み合わせることにより、より効果的に癌を予防または治療することができる。非薬剤療法としては、例えば、手術、放射線療法、遺伝子治療、温熱療法、凍結療法、レーザー灼熱療法などが挙げられ、これらを2種以上組み合わせることもできる。非薬剤療法を使用するタイミングは、特に限定はなく、例えば、本発明の剤、または本発明の剤と併用薬物である免疫チェックポイント阻害剤とを、手術等の非薬剤療法の前または後に、あるいは2または3種の非薬剤療法を組み合わせた治療前または後に投与することができる。これによって、非薬剤療法による耐性発現の阻止、無病期(Disease-Free Survival)の延長、癌転移あるいは再発の抑制、延命等の効果を増強することができる。
【0115】
TLR7アゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤の投与量、医薬組成物の剤形、投与回数、一回の投与にかかる時間などは、疾患の種類、対象の状態、標的部位などの条件に応じて適宜選択できる。TLR7アゴニストの1回あたりの投与量は、通常、0.0001mg~1000mg、好ましくは、0.001mg~1000mg、好ましくは、0.01mg~100mg、より好ましくは0.1mg~10mgである。免疫チェックポイント阻害剤の体重1kgあたりの投与量は、通常、0.0001mg~1000mg、好ましくは、0.001mg~1000mg、好ましくは、0.01mg~100mg、より好ましくは0.1mg~10mgである。TLR7アゴニストの1日あたりの投与回数に特に限定はなく、1日あたり1回~4回、好ましくは1~3回程度投与することができる。TLR7アゴニストの1日あたりの投与回数は、好ましくは1回である。
【0116】
TLR7アゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤を併用して患者に投与する際の投与スケジュールとしては、TLR7アゴニストを0.001mg~1000mg/個体の投与量で週1回の投与を合計4~6回、2~3週間後に上記と同じ投与量で1回、3~4週間後に上記と同じ投与量で1回投与が挙げられ、TLR7アゴニストの投与期間中に免疫チェックポイント阻害剤を2週間または3週間に1回、0.01mg~1000mg/個体の投与量で投与することが挙げられる。当該スケジュールにおけるTLR7アゴニストの1回当たりの投与量として好ましくは0.001~0.01mg/個体、0.01~0.1mg/個体、0.1mg~1mg/個体、1mg~3mg/個体、3mg~10mg/個体、10~30mg/個体、30~100mg/個体、100~300mg/個体、300~1000mg/個体。免疫チェックポイント阻害剤の1回当たりの投与量として好ましくは0.01~0.1mg/個体、0.1~1mg/個体、1mg~10mg/個体、10~100mg/個体、100~400mg/個体、400mg~1000mg/個体のそれぞれの組み合わせが挙げられる。併用して投与される際の免疫チェックポイント阻害剤または併用薬物と、TLR7アゴニストの1回当たりの投与量の重量比としては、例えば、0.1~1000が挙げられ、好ましくは、0.1~100、0.1~10、0.1~1、1~1000、10~1000、100~1000、1~100、1~10、または10~100が挙げられる。
【0117】
本明細書において、「治療上の有効量」とは、癌の進行を完全または部分的に阻害するか、あるいは、癌の1以上の症状を少なくとも部分的に緩和する、TLR7アゴニストもしくは免疫チェックポイント阻害剤の量、または2種類以上のTLR7アゴニストもしくは免疫チェックポイント阻害剤の組合せの量である。有効量は、治療的または予防的に有効な量であり得る。有効量は、患者の年齢および性別、処置される状態、状態の重度、ならびに求められている結果などにより決定される。所定の患者について、有効量は、当業者に知られる方法によって決定することができる。
【0118】
本発明はまた、免疫チェックポイント阻害剤をTLR7アゴニストと併用することにより、CTLを活性化させ、宿主における腫瘍応答を増強することが期待される。よって、本発明における癌の例としては、以下に例示される固形癌または血液癌が挙げられる。
固形癌として、非小細胞肺癌;小細胞肺癌;膵臓癌;悪性黒色腫;腎細胞癌;胃癌;大腸癌;直腸癌;小腸癌;乳癌;胚細胞癌;膀胱癌;前立腺癌;子宮癌;子宮頸癌;卵巣癌;肝臓癌;メルケル細胞癌;骨癌;頭頚部癌;皮膚もしくは眼窩内悪性メラノーマ;肛門部癌;精巣癌;食道癌;内分泌系癌;甲状腺癌;副甲状腺癌;副腎癌;柔組織肉腫;尿道癌;陰茎癌;多型性膠芽腫;または脳腫瘍などが挙げられる。
血液癌として、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性もしくは急性白血病;ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含む悪性リンパ腫;骨髄異形成症候群;または多発性骨髄腫などが挙げられる。
本発明における癌の態様として、好ましくは、頭頚部癌、メラノーマ、腎臓癌、ホジキン病、尿道癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞癌、胃癌またはメルケル細胞癌が挙げられる。
本発明における癌の態様として、更に好ましくは、頭頚部癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌または胃癌が挙げられる。
【0119】
また、エフェクターメモリーT細胞を誘導すること、また、MHCクラスIを誘導することにより、癌のみならず、細菌、真菌、ウイルス等の病原体に対する免疫応答を促進することができる。従って、本発明の免疫チェックポイント阻害剤と併用されるTLR7アゴニストを含む、HCV、HBV、HIVなどの感染症を治療するためのエフェクターメモリーT細胞の誘導剤、又はHCV、HBV、HIVなどの感染症を治療するためのMHCクラスIの誘導剤は、いずれも本発明の範疇である。
【0120】
本明細書において、「哺乳動物」には、ヒトおよび非ヒト動物類が含まれる。非ヒト動物には、特に限定されないが、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシのような哺乳類が含まれる。哺乳動物の中では、ヒト、特に、免疫応答増強を必要としているヒト患者が好ましい。従って、本発明は、T細胞介在性免疫応答を促進することにより治療が期待できる疾患を有するヒト患者の治療に特に適している。
【0121】
本発明において、TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤とは、それぞれ別の製剤に含まれていても、単一の製剤に含まれていてもよい。すなわち、本発明の剤は、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるためのTLR7アゴニストを含む剤、TLR7アゴニストと併用されるための免疫チェックポイント阻害剤を含む剤、またはTLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤を含む剤(すなわち、配合剤)でありうる。本発明の剤は、キットとして提供することもでき、例えばキットは、TLR7アゴニストを含む剤と免疫チェックポイント阻害剤を含む剤を含む。本発明の剤およびキットは、TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤との併用における用法・用量等を記載した添付文書、包装容器、取扱説明書等とともに提供されうる。ある態様において、本発明の剤およびキットは、癌治療用医薬品として提供されうる。
【0122】
本発明において、TLR7アゴニストと免疫チェックポイント阻害剤は、同時に投与しても、別々に投与してもよい。また、TLR7アゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤は、さらなる併用薬物と、同時に投与しても、別々に投与してもよい。本発明において「同時に投与する」とは、同一の投与スケジュールで投与することを意味し、有効成分は単一の製剤に含まれていても、別の製剤に含まれていてもよい。有効成分が別の製剤に含まれる場合、全ての製剤は単回で投与される。「別々に投与する」とは、異なる投与スケジュールで投与することを意味し、一方を投与した後、一定の間隔をおいて他方を投与するが、いずれを先に投与してもよく、その間隔も任意である。各有効成分の投与回数は、同じであっても異なっていてもよく、例えば、一方を1日1回投与し、他方を1日2回以上投与してもよい。
【0123】
有効成分が単一の製剤に含まれる場合、その配合比は、投与対象、投与経路、対象疾患、症状、またはこれらの組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば投与対象がヒトである場合、免疫チェックポイント阻害剤または併用薬物は、TLR7アゴニスト1重量部に対し0.1~1000重量部、好ましくは、0.1~100重量部、0.1~10重量部、0.1~1重量部、1~1000重量部、10~1000重量部、100~1000重量部、1~100重量部、1~10重量部、または10~100重量部用いることができる。
【0124】
本発明の医薬組成物は、副作用抑制の目的として、制吐剤、睡眠導入剤、抗痙攣薬などの薬剤とさらに組み合わせて用いることができる。
【0125】
TLR7作動薬は腫瘍内の癌反応性CTLを活性化させる薬剤であるために、TLR7作動薬と免疫チェックポイント阻害剤の併用により、免疫チェックポイント阻害剤の投与量を減弱できる可能性がある。即ち有害事象を軽減できる可能性がある。このように、TLR7作動薬と免疫チェックポイント阻害剤との併用により、より高い効果とより高い安全を併せ持った治療法を患者に提供できる可能性がある。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0127】
実施例1:抗PD-1抗体とTLR7作動薬の併用による抗腫瘍作用
マウス大腸癌細胞株CT26(ATCC社)1×10
6細胞を6週齢雌のBalb/cマウス48匹の腹側部に移植し、移植5日後にマウスを4群に割り付けた。vehicle投与群では生理食塩水を週1回静脈から投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。TLR7アゴニスト投与群では、TLR7アゴニストであるN-{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]-3-メトキシベンジル}-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)グリシン(以下、「化合物1」と記載する)を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。抗PD-1抗体投与群では、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1と抗PD-1抗体併用群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。腫瘍細胞移植後、23日目まで腫瘍容積は週2回測定し、体重は週1回測定した。腫瘍容積は腫瘍の短径と長径をそれぞれ測定し、短径×短径×長径×0.5の計算式で算出した。
結果を
図1に示した。図は各投与群における腫瘍増殖曲線を示す。縦軸は腫瘍容積を示し、横軸は移植からの日数を示す。
その結果、抗PD-1抗体単剤投与群ではvehicle投与群に比べて腫瘍容積を変化させなかったのに対して、化合物1単剤投与群および化合物1と抗PD-1抗体の併用群では腫瘍増殖抑制作用が認められた。また、化合物1と抗PD-1抗体の併用群では、化合物1単剤投与群における腫瘍増殖抑制作用に比べて有意な腫瘍増殖抑制作用が認められた。以上より、抗PD-1抗体と化合物1の併用による抗腫瘍作用は相乗的な作用であることが考えられた。
【0128】
実施例2:腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるエフェクターメモリーT細胞の増加効果
マウス大腸癌細胞株CT26(ATCC社)1×10
6細胞を6週齢雌のBalb/cマウス48匹の腹側部に移植し、移植5日後にマウスを4群に割り付けた。vehicle投与群では生理食塩水を週1回静脈から投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1投与群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。抗PD-1抗体投与群では、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1と抗PD-1抗体併用群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200 μgを週2回腹腔内に投与した。腫瘍細胞移植後、23日目の腫瘍を採取し、tumor dissociation kit(Miltenyi)及びgentle macs dissociater(Miltenyi)を用いて細胞懸濁液を調製した。Percollを用いて密度勾配遠心を行い、リンパ球が濃縮された細胞懸濁液を得た。さらに、ACK bufferで赤血球を溶血させ細胞懸濁液を得た。得られた細胞懸濁液を、蛍光標識された抗CD8、抗CD62L、抗CD127抗体で染色しflow cytometry(FACS)法にて解析した。エフェクターメモリーT細胞の細胞表面抗原として、CD8陽性、CD62L陰性、CD127陽性の細胞集団をエフェクターメモリーT細胞とした。
結果を
図2に示した。図はFACS解析により得られた、各投与群におけるCD8陽性細胞中のエフェクターメモリーT細胞の割合を示す。その結果、CD8陽性細胞中のエフェクターメモリー T細胞の割合が、化合物1と抗PD-1抗体併用群において有意に増加した。
化合物1、抗PD-1抗体それぞれの投与群ではvehicle投与群に比べてエフェクターメモリーT細胞の割合の増加が認められなかったのに対して、化合物1と抗PD-1抗体併用群においてエフェクターメモリー T細胞の割合が、有意に増加したことから、化合物1と抗PD-1抗体の併用は長期的な抗腫瘍免疫の増強に繋がることが分かった。
【0129】
実施例3:腫瘍上のMHCクラスI(H-2Kd)の増加効果
マウス大腸癌細胞株CT26(ATCC社)1×10
6細胞を6週齢雌のBalb/cマウス48匹の腹側部に移植し、移植5日後にマウスを4群に割り付けた。vehicle投与群では生理食塩水を週1回静脈から投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1投与群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。抗PD-1抗体投与群では、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1と抗PD-1抗体併用群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。腫瘍細胞移植後、23日目の腫瘍を採取し、tumor dissociation kit(Miltenyi)及びgentle macs dissociater(Miltenyi)を用いて細胞懸濁液を調製した。蛍光標識された抗CD45抗体と抗H-2Kdにより細胞液を染色し、flow cytometry法により癌細胞上のH-2KdをCD45陰性、H-2Kd陽性画分として検出した。
結果を
図3に示した。図はFACS解析により得られた、各投与群におけるH-2KdのMFIを示す。その結果、化合物1と抗PD-1抗体併用群のH-2Kdの平均蛍光強度(MFI)はいずれの群よりも有意に高かった。
化合物1、抗PD-1抗体それぞれの投与群ではvehicle投与群に比べてH-2Kdの平均蛍光強度の増減が認められなかったのに対して、化合物1と抗PD-1抗体併用群のH-2Kdの平均蛍光強度はいずれの群よりも有意に高かったことから、相乗的な抗腫瘍作用が認められたと考えられる。
【0130】
実施例4:再移植による生着拒絶を示すメモリー作用
マウス大腸癌細胞株CT26(ATCC社)1×10
6細胞を6週齢雌のBalb/cマウス48匹の腹側部に移植し、移植5日後にマウスを4群に割り付けた。vehicle投与群では生理食塩水を週1回静脈から投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1投与群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。抗PD-1抗体投与群では、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1と抗PD-1抗体併用群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、抗PD-1抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。腫瘍細胞移植後、23日目の腫瘍容積が500mm
3以下の個体を治療応答した個体として腫瘍を切除し、さらに5週間マウスを飼育した。生存しているマウスに対して1×10
6細胞のCT26細胞治療によるを再移植したところ、化合物1と抗PD-1抗体併用群においては6例中6匹のマウスにおいて生着が認められなかった。
結果を
図4に示した。図は各群における治療応答した個体の数と、再移植後に生着が認められた個体数を示す。化合物1と抗PD-1抗体の併用により、再移植による生着の拒絶が認められたことから、長期的な抗腫瘍作用および再発の抑制作用が期待できると考えられる。
【0131】
実施例5:抗CTLA-4抗体とTLR7作動薬の併用による抗腫瘍作用
マウス大腸癌細胞株CT26(ATCC社)1×10
6細胞を7週齢雌のBalb/cマウス40匹の腹側部に移植し、移植7日後にマウスを4群に割り付けた。vehicle投与群では生理食塩水を週1回静脈から投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。TLR7アゴニスト投与群では、化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。抗CTLA-4抗体投与群では、抗CTLA-4抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1と抗CTLA-4抗体併用群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、抗CTLA-4抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。腫瘍細胞移植後、23日目まで腫瘍容積は週2回測定し、体重は週1回測定した。腫瘍容積は腫瘍の短径と長径をそれぞれ測定し、短径×短径×長径×0.5の計算式で算出した。
結果を
図5に示した。図は各投与群における腫瘍増殖曲線を示す。縦軸は腫瘍容積を示し、横軸は移植からの日数を示す。
その結果、抗CTLA-4抗体単剤投与群および、化合物1投与群ではvehicle投与群に比べて腫瘍容積を有意に変化させなかったのに対して、化合物1と抗CTLA-4抗体の併用群では有意な腫瘍増殖抑制作用が認められた。さらに、化合物1と抗CTLA-4抗体の併用群では化合物1投与群および抗CTLA-4抗体投与群に比べて有意な腫瘍増殖抑制作用が認められた。以上より、抗CTLA-4抗体と化合物1の併用による抗腫瘍作用は相乗的な作用であることが考えられた。
【0132】
実施例6:腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるエフェクターメモリーT細胞の増加効果
マウス大腸癌細胞株CT26(ATCC社)1×10
6細胞を6週齢雌のBalb/cマウス40匹の腹側部に移植し、移植7日後にマウスを4群に割り付けた。vehicle投与群では生理食塩水を週1回静脈から投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1投与群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200 μgを週2回腹腔内に投与した。抗CTLA-4抗体投与群では、抗CTLA-4抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1と抗CTLA-4抗体併用群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、抗CTLA-4抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。腫瘍細胞移植後、26日目の腫瘍を採取し、tumor dissociation kit(Miltenyi)及びgentle macs dissociater(Miltenyi)を用いて細胞懸濁液を調製した。Percollを用いて密度勾配遠心を行い、リンパ球が濃縮された細胞懸濁液を得た。さらに、ACK bufferで赤血球を溶血させ細胞懸濁液を得た。得られた細胞懸濁液を、蛍光標識された抗CD8、抗CD62L、抗CD127抗体で染色しflow cytometry(FACS)法にて解析した。エフェクターメモリーT細胞の細胞表面抗原として、CD8陽性、CD62L陰性、CD127陽性の細胞集団をエフェクターメモリーT細胞とした。
結果を
図6に示した。図はFACS解析により得られた、各投与群におけるCD8陽性細胞中のエフェクターメモリーT細胞の割合を示す。その結果、CD8陽性細胞中のエフェクターメモリーT細胞の割合が、化合物1と抗CTLA-4抗体併用群においてvehicle投与群に対して有意に増加した。
化合物1、抗CTLA-4抗体それぞれの投与群ではvehicle投与群に比べてエフェクターメモリーT細胞の割合の増加が認められなかったのに対して、化合物1と抗CTLA-4抗体併用群においてエフェクターメモリーT細胞の割合が、有意に増加したことから、化合物1と抗CTLA-4抗体の併用は長期的な抗腫瘍免疫の増強に繋がることが分かった。
【0133】
実施例7:腫瘍上のMHCクラスI(H-2Kd)への効果
マウス大腸癌細胞株CT26(ATCC社)1×106細胞を6週齢雌のBalb/cマウスマウス40匹の腹側部に移植し、移植7日後にマウスを4群に割り付けた。vehicle投与群では生理食塩水を週1回静脈から投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200 μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1投与群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、Rat IgG2a isotype コントロール抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。抗CTLA-4抗体投与群では、抗CTLA-4抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。化合物1と抗CTLA-4抗体併用群では化合物1を週1回、5mg/kgで静脈内に投与し、抗CTLA-4抗体(Bioxcell社)200μgを週2回腹腔内に投与した。腫瘍細胞移植後、26日目の腫瘍を採取し、tumor dissociation kit(Miltenyi)及びgentle macs dissociater(Miltenyi)を用いて細胞懸濁液を調製した。蛍光標識された抗CD45抗体と抗H-2Kdにより細胞液を染色し、flow cytometry法により癌細胞上のH-2KdをCD45陰性、H-2Kd陽性画分として検出した。
その結果、各群間で有意な差が認められなかったが、化合物1と抗CTLA-4抗体併用群のH-2Kdの平均蛍光強度の上昇傾向が認められたこと、および実施例5において相乗的な抗腫瘍作用が認められたことから、腫瘍上のMHCクラスI(H-2Kd)は増強していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、医薬品などの分野、例えば、癌の治療薬及び予防薬の開発、又は製造分野において利用可能である。