(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240620BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/34 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020041775
(22)【出願日】2020-03-11
(62)【分割の表示】P 2016525903の分割
【原出願日】2014-10-20
【審査請求日】2020-04-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-14
(32)【優先日】2013-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522464159
【氏名又は名称】ネオゲン フード セイフティ ユーエス ホルドコ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビョーク,ジェイソン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ケルト,マーラ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ステインナス,アダム ジェイ.
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】長井 啓子
【審判官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-535522(JP,A)
【文献】特開昭62-285778(JP,A)
【文献】醸協(2010)Vol.105,No.2,pp.69-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 3/00
C12M 1/00 - 3/10
C12N 1/00 - 7/08
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の微生物の存在又は不存在を検出するための培養デバイスであって、
内側表面及び外側表面を有する第1の基材と、
前記第1の基材の内側に形成された第1のドライコーティングと、
内側表面及び外側表面を有する第2の基材と、
前記第2の基材の内側に形成された第2のドライコーティングと、
前記第1及び第2のドライコーティングの対向する表面間に配置された容積として定義され、且つ前記第1及び第2のドライコーティングの少なくとも一部を包含する増殖領域であって、酵素を介在した酸素低減系の乾燥した酵素成分及び乾燥した
酵素基質成分、乾燥した冷水溶解性ゲル化剤、並びに発酵性炭水化物を含む増殖領域と
を備え、
前記冷水
溶解性ゲル化剤は、前記第1のドライコーティングとして配置されており、
前記第1の基材及び前記第2の基材は、気体状酸素に対して不透過性であり
、
水性液体が前記第1及び第2の基材間に配置された際、前記第1及び第2のドライコーティングは流体連通下におかれ、
前記検出は、前記発酵性炭水化物の代謝に付随する気泡を検出することにより行われる、培養デバイス。
【請求項2】
水性液体を前記第1及び第2の基材間に配置すると、前記酵素成分と前記酵素基質成分とが反応して、前記水性液体中の第1の溶存酸素濃度を、前記第1の溶存酸素濃度より低い第2の溶存酸素濃度へと低減させる、請求項1に記載の培養デバイス。
【請求項3】
微生物の増殖を促進する栄養素を更に含む、請求項1又は2に記載の培養デバイス。
【請求項4】
有効量の還元剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の培養デバイス。
【請求項5】
前記酵素成分がアスコルビン酸オキシダーゼを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の培養デバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2013年10月24日に出願された米国特許仮出願第61/895,170号の優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[背景]
多数の細菌は酸素に対して感受性があり、酸素存在下では増殖しない。このような嫌気性微生物の生存率を測定することは、種々の環境において有用であり得る。例えば、嫌気性微生物が食品加工施設及び/又は包装施設に存在するかどうかを測定することが重要であり得る。医療環境にて嫌気性微生物の存在を測定すること、例えば、診断検査で病原菌の存在を測定することもまた重要であり得る。別の例として、水処理施設では試料水を試験し、このような微生物の有無を決定している。
【0003】
微生物培養に利用できる種々のデバイスが提供されている。例えば、微生物は長きにわたりペトリ皿を使用して培養されてきた。当技術分野において既知の通り、ペトリ皿とは寒天及び栄養素などの微生物増殖に好適な培地を入れた浅い平底の円形皿である。しかし、寒天培地の使用には手間と時間を要する。例えば、寒天培地は試料の添加前に殺菌、溶解、冷却を必要とする。
【0004】
加えて、ペトリ皿を使用した嫌気性微生物の培養に好適な環境を得ることが困難な場合がある。嫌気性微生物は酸素存在下では繁殖しないため、このような微生物を増殖させるには物理的かつ化学的に煩雑な手法が必要となることがある。典型的には、酸素透過に対する物理的障壁を付与するため、このようなデバイスを修正、すなわち成形又は設計変更する必要がある。
【0005】
それ以外に、嫌気性培養デバイスに組み込んだ化学薬剤を使用して酸素を除去する手法が開発されている。一般に、このようなデバイスは、ゲル又は栄養培地に組み込まれた還元剤又は無菌膜片を含む。加えて、米国特許第3,338,794号は、酸素不透過性フィルム層とそのフィルム間にある栄養培地とから形成され、還元性化合物を含む嫌気性菌培養デバイスについて記載している。
【0006】
しかし、これらのデバイス及びその他のデバイスでは、費用が高額であり、簡単に使い捨てすることができない。また、これらのデバイスは組み立て及び/又は使用に手間がかかる場合がある。好気性環境において嫌気性微生物を培養するための簡易なデバイスの製造が試みられているが、依然として嫌気性培養デバイスの改善が必要とされている。
【0007】
[概要]
広くは、本開示は試料中の微生物の検出、及び所望により計数に関する。特に、本開示は、微耐気性(microaerotolerant)、微好気性、又は偏性嫌気性微生物の増殖及び検出に関する。現在では、この増殖及び検出を、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを使用して実施できることが知られている。
【0008】
本明細書に開示される本発明の培養デバイス及び方法は、酸素を含有する(例えば、通常の大気中酸素を含有する)環境で微生物を培養する場合であっても、微耐気性、微好気性、又は偏性嫌気性微生物(例えば、細菌、酵母菌)の増殖、検出、及び鑑別を提供する。このデバイスでは、嫌気性微生物の培養に典型的に必要とされる、特別な培養設備及び試薬(例えば、嫌気ジャー、使い捨て嫌気菌用袋、パラジウム触媒、嫌気性グローブボックス)を不要とする点で有利である。加えて、本方法は、個々のコロニーから産生される二酸化炭素ガスの検出を可能にし、それによって純粋培養の単離に要する付加的な培養時間と、ガス産生を検出するための発酵管とを不要にすることにより、細菌の鑑別を提供する。更に本開示は、試料中の微耐気性、微好気性、又は偏性嫌気性菌の計数に関する。微耐気性、微好気性、及び偏性嫌気性微生物は、増殖及び再生時に酸素還元環境を要するという共通の性質を有する。
【0009】
一態様では、本開示は、試料中の微生物を検出する方法を提供する。本方法は、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの増殖領域を所定量の水性液体と接触させることであって、増殖領域が、増殖領域を所定量と接触させる工程以前に、乾燥した冷水溶解性ゲル化剤と、酵素を介在した酸素低減系(oxygen depletion system)である実質的に乾燥した有効量の酵素成分とを含む。本方法は更に増殖領域を試料と接触させることと、微生物のコロニーの形成を可能にするのに十分な期間、培養デバイスを培養することと、微生物のコロニーを検出することとを含み得る。
【0010】
別の態様において、本開示は試料中の微生物を検出する方法を提供する。本方法は、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの増殖領域を所定量の水性液体と接触させることを含み、増殖領域が、増殖領域を所定量と接触させる工程以前に、冷水溶解性ゲル化剤を含む。本方法は更に、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素成分を付着させることと、増殖領域を試料と接触させることと、微生物のコロニーの形成を可能にするのに十分な期間、培養デバイスを培養することと、微生物のコロニーを検出することとを含み得る。いずれの実施形態でも、本方法は更に、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素基質成分を増殖領域に付着させることを含み得る。
【0011】
更に別の態様において、本開示は試料中の微生物を検出する方法を提供する。本方法は、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの増殖領域を所定量の水性液体と接触させることを含み、増殖領域が、増殖領域を所定量と接触させる工程以前に、冷水溶解性ゲル化剤を含む。本方法は更に、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素基質成分を付着させることと、増殖領域を試料と接触させることと、微生物のコロニーの形成を可能にするのに十分な期間、培養デバイスを培養することと、微生物のコロニーを検出することとを含み得る。いずれの実施形態でも、本方法は更に、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素成分を増殖領域に付着させることを含み得る。
【0012】
更に別の態様では、本開示は、微生物のコロニーを計数するための培養デバイスを提供する。培養デバイスは、対向する内側表面及び外側表面を有する第1の基材と、対向する内側表面及び外側表面を有する第2の基材と、前記第1及び第2の基材の内側表面間に配置された増殖領域と、酵素を介在した酸素低減系である実質的に乾燥した第1の有効量の酵素成分と、酵素を介在した酸素低減系である実質的に乾燥した第2の有効量の酵素基質成分と、増殖領域内に配置される乾燥した冷水溶解性ゲル化剤を含み得る。第1の有効量は、増殖領域の第1のコーティング内に配置され得る。第2の有効量は、増殖領域の第2のコーティング内に配置され得る。第1の基材及び第2の基材は、気体状酸素に対して実質的に不透過性であり得る。
【0013】
更に別の態様では、本開示は、嫌気性微生物を培養するための培養デバイスを作製する方法を提供する。本方法は、第1のコーティングを第1の基材の一部に付着させることであって、第1のコーティングが、液体と、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素成分とを含む液体混合物を使用して形成されることと、第1のコーティングを乾燥させることと、第2のコーティングを第2の基材上に付着させることであって、第2のコーティングが、酵素を介在した酸素低減系の酵素基質成分を含むことと、第1のコーティングが第2のコーティングに対面するように、かつ第1の基材と第2の基材との間に配置された増殖領域が第1のコーティングの一部及び第2のコーティングの一部と重なり合うように、第1の基材を第2の基材と隣接して位置決めすることと、を含む。
【0014】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で、特定の効果をもたらしうる本発明の実施形態を指す。しかしながら、同一又は他の環境下では、他の実施形態が好まれる場合もある。更に、1つ又は2つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、また、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0015】
用語「含む」及びこの変形は、説明及び請求項においてこれらの用語が現れる箇所で制限する意味を持たない。
【0016】
本明細書で使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ又は2つ以上の」は、互換可能に使用される。したがって、例えば、栄養素は、「1つ又は2つ以上の」栄養素を意味するように、解釈され得る。
【0017】
用語「及び/又は」は、列挙した要素の1つ又は全て、あるいは列挙した要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0018】
また本明細書において、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、など)が包含される。
【0019】
本発明の上記概要は、本発明のそれぞれ開示された実施形態又は全ての実施を説明することを意図したものではない。以下の説明は、例示的実施形態をより詳細に例証する。本出願の全体を通じて幾つかの箇所で、実施例のリストによって指針が与えられるが、これらの実施例は異なる組み合わせで使用することができる。いずれの場合も、記載されるリストは、あくまで代表的な群としてのみの役割を果たすものであって、排他的なリストとして解釈するべきではない。
【0020】
これらの実施形態及び他の実施形態の更なる詳細を、添付の図面及び以下の説明文に記載する。他の特徴、目的、及び利点は、その説明と図面、及び「特許請求の範囲」から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示による内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの一実施形態の、部分的に切り欠いた上面図である。
【
図2】本開示による内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの代替的な実施形態の上面図である。
【
図3】
図2の培養デバイスの断面図であり、ここに示す培養デバイスでは、培養デバイスの増殖領域に液体及び/又は試料を付着させるために第1の基材12と第2の基材18とが分離されている。
【
図4】培養デバイスでの酸素濃度対時間のグラフを示し、その一部はその中に酵素を介在した酸素低減系が与えられたものである。
【
図5】複数の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスでの酸素濃度対時間のグラフを示し、培養デバイスには種々の有効量の酸素基質が与えられた。
【0022】
[詳細な説明]
本開示のいずれかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されるか、又は以下の図面に例示される構成の詳細及び構成要素の配置に、その適用が限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な態様で実施又は実行することができる。また、本明細書で使用される専門語句及び専門用語は説明を目的としたものであり、発明を限定するものとして見なされるべきものではない点は理解されるべきである。「含む(including)」、「備える・含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変化形は、その後に列記される要素及びそれらの均等物、並びに更なる要素を包含することを意味する。別段の指定又は限定がない限り、用語「接続された」及び「結合された」並びにその変化形は、広義で使用され、直接的及び間接的な接続及び結合の両方を包含する。更に、「接続される」及び「結合される」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。他の実施形態が利用されてもよく、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的又は論理的な変更がなされてもよいことが理解されるべきである。更に、例えば、「前側」、「背側」、「上部」、「下部」、などの用語は、要素の互いの関係を記載するためにのみ使用され、器具の特定の配向を述べる、又は器具に必要である若しくは要求される配向を指示すること若しくは暗示すること、あるいは本明細書に記載される本発明が、使用においてどのように使用され、取り付けられ、表示され、若しくは設置されるかを特定すること、を決して意味しない。
【0023】
本開示は、一般に、試料中の微生物の検出及び所望により計数に関する。特に、本開示は、微耐気性、微好気性、又は偏性嫌気性微生物の増殖と検出に関する。現在では、こうした増殖及び検出を、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを使用して実施できることが知られている。
【0024】
現在では、乾燥性の再水和可能な、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製できることが知られている。培養デバイスは、有効量の実質的に乾燥した酵素成分と実質的に乾燥した酵素基質成分とを含み、各成分は培養デバイスの増殖区域に配置され、所定量の水溶液中で再水和可能であり、再水和時に、成分が酸素消費反応に関与できる。更に、現在では酸素消費反応が微耐気性微生物、微好気性微生物、又は偏性嫌気性微生物の増殖を促進するに足る酸素を消費できることが知られている。更に、培養デバイスが少なくとも約8日間は酸素低減環境を維持できる嫌気性環境下に培養デバイスが保持され、上述の微生物の増殖を促進することができる。
【0025】
対象となる細菌種は、例えば、血液、唾液、接眼レンズ液、滑液、脳脊髄液、膿汁、汗、排出物、尿、粘液、粘膜組織(例えば、頬、歯肉、鼻、眼球、気管、気管支、胃腸、直腸、尿道、尿管、膣、頸部、及び子宮粘膜)、母乳、糞便、又は同等物等の生理的液体のような任意の源に由来することができる試験試料内で分析することができる。更に、試験試料は、例えば、傷、皮膚、前鼻孔、鼻咽頭腔、鼻腔、前鼻前庭、頭皮、爪、外耳、中耳、口、直腸、膣、腋窩、会陰、肛門、又は他の同様の身体部位に由来することができる。
【0026】
生理学的な流体に加えて、他の検査試料には、他の液体並びに液体媒体中に溶解又は懸濁した固体が含まれてもよい。対象となる試料としては、プロセス流、水、食品、食材、飲料、土壌、植物又はその他の植生、空気、表面(例えば、製造工場、病院、診療所、又は家庭内の壁、床、設備、器具)などが挙げられ得る。
【0027】
増殖するために酸素分圧の低減環境を必要とする細菌(すなわち微好気性菌)及び/又は許容する細菌(すなわち、耐気性細菌)の非限定的例としては、ヘリコバクター・ピロリ、カンピロバクター種(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フェタス)、ストレプトコッカス・インターメディウス、ストレプトコッカス・サンギス、ストレプトコッカス・コンステラータス、ゲメラ・モルビロルム、ラクトバチルス種、及びストレプトコッカス-ピオゲネスが挙げられる。
【0028】
嫌気性菌は本質的に偏在性を持つ。嫌気性菌は、偏性嫌気性であり得、あるいは通性嫌気性でもあり得る。偏性嫌気性菌の非限定的例としては、放射菌種、クロストリジウム種(例えば、ウェルシュ菌、クロストリジウム・テタニ、クロストリジウム・スポロゲネス、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・ブチリカム、クロストリジウム・アセトブチリカム)、乳酸菌(例えば、ラクトバチルス種、ロイコノストック種、ペディオコッカス種、ラクトコッカス種)、バクテロイデス種(例えば、バクテロイデス・フラジリス)、及びペプトストレプトコッカス種(例えば、ペプトストレプトコッカス・ミクロス、ペプトストレプトコッカス・マグナス、ペプトストレプトコッカス・アサッカロリチカス、ペプトストレプトコッカス・アネロビウス、ペプトストレプトコッカス・テトラディウス)が挙げられる。通性嫌気性菌の非限定的例としては、腸内細菌(例えば、大腸菌)、サルモネラ種、シトロバクター・フロインデイ、黄色ブドウ球菌、及びリステリア種(例えばリステリア・モノサイトゲネス)が挙げられる。
【0029】
酵母菌種の多くが通性嫌気性であり、酵母種の一部が偏性嫌気性であるため、本開示の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスは、酵母菌微生物の増殖及び検出にも有用であることが企図される。
【0030】
一態様では、本開示は、酸素低減環境で微生物を培養及び検出するための培養デバイスを提供する。
図1に関して、本開示の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス10は、耐水性の第1の基材12、耐水性の第2の基材18、及び第1の基材12と第2の基材18との間に配置される増殖領域45を含む。第1の基材12は、内側表面14及び内側表面の反対側となる外側表面16を有する。第2の基材18は、内側表面20及び内側表面の反対側となる外側表面22を有する。いずれの実施形態でも、第1の基材12の内側表面14は、第2の基材18の内側表面20と対面関係に配置される。
【0031】
第1の基材12の内側表面14には、第1のドライコーティング30が配置される。第1のドライコーティング30は、少なくとも第1の基材12の内側表面14にある増殖領域45に固着され、増殖領域全体を覆う。第1のドライコーティング30は、乾燥した冷水溶解性ゲル化剤と、酵素を介在した酸素低減系の成分とを含む。いずれの実施形態でも、第1のコーティング中の成分は、酵素を介在した酸素低減系である実質的に乾燥した第1の有効量の酵素基質成分を含む。あるいは、いずれの実施形態でも、第1のコーティング中の成分は、酸素を利用する反応中に酵素成分と反応できる実質的に乾燥した第2の有効量の酵素基質を含む。第1のドライコーティング30は、第1の基材12の内側表面14全体を覆うことができるが、培養デバイス10の増殖領域45のうち少なくとも第1の部分40の範囲に限定される、内側表面14の少なくとも一部を覆うことが好ましい。増殖領域45とは培養デバイス10の内部部分であり、デバイスに試料が接種される間、及び試料中に微生物が存在する場合はそれが増殖及び検出される間、試料を保持する。
【0032】
図1に図示した実施形態では、第1のドライコーティング30は第1の基材12の内側表面14のほぼ全体を覆っている。したがって、増殖領域は、第1の基材12と第2の基材18との間の培養デバイス10内であれば、どの位置とも接触可能であり得る。増殖領域は周辺端部50から離れた位置にあることが好ましい。
【0033】
増殖領域45は、第1の基材12の内側表面(内側表面14)と第2の基材18の内側表面(内側表面20)との間に配置される容積であると定義され、その容積は第1のドライコーティング30及び/又は第2のドライコーティング(以下で説明)の少なくとも一部を包含する。したがって、水性液体が増殖領域に分配されるとき、水性液体は第1のドライコーティング30及び/又は第2のドライコーティングの少なくとも一部と流体接触する。増殖領域45の厚さは、例えば、培養デバイスに付着した水性液体(図示せず)の容積、試料(図示せず)に付随する固体(例えば、浮遊微粒子及び/若しくはメンブレンフィルター)の有無、並びに/又は存在する場合は培養デバイス10内のスペーサー手段(以下で説明)に応じて変化してよい。
【0034】
第1の基材12は、好ましくは、水を吸着しない又は水による影響を受けない材料(例えばポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレン)製の比較的剛性の耐水フィルムである。第1の基材12は、実質的に気体状酸素を透過しない材料を使用して作製されることが好ましい。第1の基材12の好適な材料の非限定的例は、少なくとも約15μm~少なくとも約180μm厚のポリエステルフィルム、少なくとも約100μm~少なくとも約200μm厚のポリプロピレンフィルム、少なくとも約300μm~約380μm厚のポリスチレンフィルムが挙げられる。その他の好適な第1の基材としては、エチレンビニルアルコール共重合フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、及びポリ塩化ビニリデンフィルムが挙げられる。第1の基材12は、第1の基材を通してコロニーを観察することが望ましい場合には透明とすることができる。
【0035】
第2の基材18は、第1の基材12の内側表面14を覆い、増殖領域45の範囲を限定し、所望により輸送、貯蔵、培養、及び/又はコロニー計数中に増殖領域を観察するために使用される。第2の基材18は、好ましくは、水を吸着しない又は水による悪影響を受けない材料(例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレン)製の比較的剛性の耐水フィルムである。第2の基材18は、培養デバイス10を開口しなくても容易にコロニーを計数するために透明であることが好ましく、微生物及び水蒸気を実質的に浸透させないことが好ましい。
【0036】
概して、第2の基材は、第1の基材12の作製に使用される材料から作製することができる。第2の基材18は、実質的に気体状酸素を透過しない材料を使用して作製されることが好ましい。第1の基材12の好適な材料の非限定的例は、少なくとも約15μm~少なくとも約180μm厚のポリエステルフィルム、少なくとも約100μm~少なくとも約200μm厚のポリプロピレンフィルム、少なくとも約300μm~約380μm厚のポリスチレンフィルムが挙げられる。その他の好適な第1の基材としては、エチレンビニルアルコール共重合フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、及びポリ塩化ビニリデンフィルムが挙げられる。
図1に示すように、第2の基材18はヒンジ状形態で(例えば、両面接着テープを使用して)、第1の基材12及び第2の基材18のそれぞれの内側表面の片端部に沿って結合することができる。
【0037】
当業者であれば、所定の種類のポリマーフィルムを通る酸素ガスの透過性を、ポリマーフィルムの厚さを増加させることにより減少させ得ることが理解されよう。いずれの実施形態でも、本開示の第1の基材及び第2の基材は、気体状酸素を実質的に透過しない好適な厚さを有するポリマーフィルムである。
【0038】
好ましくは、第1のコーティング30が乾燥粉末及び乾燥粉末凝集体を主成分とする場合、第1のコーティングは、第1の基材12の内側表面14の少なくとも一部分上に配置される接着剤層32上に配置される。第1のドライコーティング30は、複合処理、接着剤コーティング処理、及び液体コーティング処理、並びに/又は例えば、参照によりその全体が本明細書に全て組み込まれる米国特許第4,565,783号、第5,089,413号、第5,232,838号に記載のドライコーティング処理を使用して、第1の基材12上、又は所望の接着剤層32上に堆積され得る。
【0039】
第1のドライコーティング30に関して、冷水復元性があり、ゲル化剤の冷水ゲル化特性を実質的に妨害せず、嫌気性微生物の増殖をサポートする栄養素又は栄養培地を所望によりコーティングに含むことができる。培養デバイスに使用するのに好適な具体的な栄養素(複数可)は、デバイス内で増殖させる微生物によって異なるが、当業者であれば選択は容易である。概して、このような栄養素は冷水溶解性である。細菌の増殖をサポートする好適な栄養素は当業者に既知であり、酵母抽出物、ペプトン、糖類、好適な塩などが挙げられるが、これらに限定されない。いずれの実施形態でも、第1のドライコーティングは、別の微生物又は微生物群よりも、特定の嫌気性微生物又は微生物群の増殖を促進する選択的試剤(例えば、栄養素、抗生物質、及びこれらの組み合わせ)を更に含み得る。当業者は、それ以外の種々の配合物が使用可能であり、それによって本発明の範囲が損なわれないことを理解されるであろう。
【0040】
第1のドライコーティング30に使用するのに好適なゲル化剤としては、冷水溶解性の天然及び合成ゲル化剤が挙げられる。アルギン、カルボキシメチルセルロース、タラガム、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガムなどの天然ゲル化剤、並びにポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、及びこれらの組み合わせなどの合成ゲル化剤が概して好適である。適切なゲル化剤は、本開示並びに米国特許第4,565,783号、第5,089,413号、及び第5,232,838号の開示で教示される内容にしたがって選択することができる。好ましいゲル化剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、及びキサンタンガムが挙げられる。これらゲル化剤は個々に有用であるが、互いに組み合わせることが好ましい。
【0041】
本開示の培養デバイスは、その中に配置された、酵素を介在した酸素低減系のうち少なくとも1つの実質的な乾燥成分を含む。本明細書に記載するように、少なくとも1つの乾燥成分は、試料材料が培養デバイスの増殖領域に導入(例えば、接種)される前、その間、又はその後に水性液体にて水和される。通常、試料材料及び/又は水性液体は、周囲条件(すなわち好気ガス環境)にて培養デバイスの増殖領域に導入される。よって、好気的状況下で増殖領域に試料が接種された後、培養デバイスの増殖領域内の水性液体は、第1の溶存酸素濃度を含む。培養デバイス中の酵素を介在した酸素低減系は、増殖領域内の水性液体中の第1の溶存酸素濃度を、第1の溶存酸素濃度よりも実質的に低い第2の溶存酸素濃度へと低減させるように機能する。このように接種後の培養デバイスの増殖領域内の溶存酸素濃度が低減されることで、培養デバイス中の嫌気性又は微好気性微生物の増殖が促進される。
【0042】
いずれの実施形態でも、少なくとも1種の乾燥成分は酵素成分を含む。酵素成分は、酸素(例えば水性培地中の溶存酸素)を利用する反応中で、酵素基質と反応することができる。使用時に、本開示の酵素を介在した酸素低減系は、第1の有効量の酵素成分と第2の有効量の酵素基質成分とを含む。本開示にしたがって培養デバイスの増殖領域中の水性液体と流体連通されると、第1の有効量と第2の有効量が反応して、水性液体中の第1の溶存酸素濃度が、第1の溶存酸素濃度よりも実質的に低い第2の溶存酸素濃度へと低減され、第2の溶存酸素濃度が、嫌気性微生物又は微好気性微生物の増殖を促進するのに十分な低さになる。
【0043】
いずれの実施形態でも、第1の有効量と第2の有効量は、酵素成分と酵素基質成分とが培養デバイスの増殖領域内の所定量の水性液体中で流体接触されてから約120分以内に、第1の溶存酸素濃度から第2の溶存酸素濃度への低減が生じるように選択される。いずれの実施形態でも、第1の有効量と第2の有効量は、酵素成分と酵素基質成分とが培養デバイスの増殖領域内の所定量の水性液体中で流体接触されてから約60分以内に、第1の溶存酸素濃度から第2の溶存酸素濃度への低減が生じるように選択される。いずれの実施形態でも、第1の有効量と第2の有効量は、酵素成分と酵素基質成分とが培養デバイスの増殖領域内の所定量の水性液体中で流体接触されてから約30分以内に、第1の溶存酸素濃度から第2の溶存酸素濃度への低減が生じるように選択される。
【0044】
具体的な酵素又は反応に固有である温度範囲内であれば、多くの酵素触媒による反応速度は、一般に反応温度と相関することは当業者に理解されよう。いずれの実施形態でも、第1の溶存酸素濃度から第2の溶存酸素濃度への低減は、周囲温度(例えば約23℃)から約42℃までの温度で生じる。よって、本開示による方法のいずれの実施形態でも、酵素成分と酵素基質成分とが培養デバイスの増殖領域内の所定容積の水性液体中で流体接触されてから約120分以内、約60分以内、又は約30分以内に、第1の溶存酸素濃度から第2の溶存酸素濃度への低減を生じさせるために、培養デバイスを高温(すなわち周囲温度以上)で培養する必要がない。
【0045】
多数の酸化還元酵素を介在した酸素消費反応が知られており、例えば、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ、チロシナーゼ、及びアスコルビン酸オキシダーゼなどによって触媒される反応が挙げられる。ただし、酸化還元酵素の一部(例えばペルオキシダーゼ)は、相対的に不安定で、かつ比較的低い水中濃度で微生物(例えば、特に一部の嫌気性微生物)に対して有毒性のある酵素基質(例えば過酸化水素)と反応する。加えて、酸化還元酵素の一部(例えばグルコースオキシダーゼ)は酸素と反応し、微生物に対して有毒である反応生成物(例えば過酸化水素)を生成する。いずれの実施形態でも、過酸化水素の蓄積度を低減させるために、カタラーゼ又はその他の過酸化物を消費する酵素を反応に付加することができる。したがって、本開示による好適な酵素を介在した酸素低減系は、培養デバイスの増殖領域内に有効量で存在すると、嫌気性微生物の増殖を実質的に抑制せずに、嫌気性微生物の増殖に好適な状況下で嫌気性微生物と流体連通することができる酵素基質を利用する。同様に、本開示による好適な酵素を介在した酸素低減系は、培養デバイスの増殖領域内に各々の有効量が存在し、同時に低酸素環境又は嫌気性局所環境を生成するだけの酸素を消費するとき、嫌気性微生物の増殖を実質的に抑制せずに、嫌気性微生物に好適な状況下で嫌気性微生物と流体連通できる量と種類の反応生成物を産出する酵素及び酵素基質を利用する。
【0046】
微生物の培養に好適な時間内に本開示の培養デバイスの増殖領域から除去される酸素量は、とりわけ酵素成分及び酵素基質成分の量(すなわち活性)に依存することを当業者であれば理解されるであろう。本明細書で提示された実験結果は、酸素低減反応に関与するために使用可能な酵素基質成分の量と、増殖領域から除去される酸素の比率及び限度との間に相関性があることを示している。したがって、本開示による酵素を介在した酸素低減系の成分量を調整することにより、微耐気性微生物の培養、微好気性微生物の培養、又は偏性嫌気性微生物の培養に適した培養デバイスを構成することができる。
【0047】
本開示による好適な酵素を介在した酸素低減系の非限定的例として、アスコルビン酸オキシダーゼとその対応する酵素基質(例えばL-アスコルビン酸)を含有する系、及びラッカーゼとその対応する酵素基質(例えばp-ジフェノール又は2,6-ジメトキシフェノール)を含有する系が挙げられる。
【0048】
再び図を参照すると、いずれの実施形態でも、培養デバイス10は所望により、第2の基材18の内側表面20上に配置される第2のドライコーティング(
図2に示す)を含み得る。第2のドライコーティングは、乾燥した冷水溶解性ゲル化剤及び/又は酵素を介在した酸素低減系の成分を含んでよい。いずれの実施形態でも、第2のコーティング中の成分は、酵素を介在した酸素低減系である実質的に乾燥した第1の有効量の酵素成分を含む。あるいは、いずれの実施形態でも、第2のコーティング中の成分は、酸素を利用する反応中に酵素成分と反応できる実質的に乾燥した第2の有効量の酵素基質成分を含む。第2のドライコーティングに使用する好適なゲル化剤として、好適な第1のドライコーティングとして上記に示したゲル化剤が挙げられる。
【0049】
図2は、本開示による別の実施形態である培養デバイス10’を示す。
図1のデバイス10と同様、培養デバイス10’は、耐水性の第1の基材12、耐水性の第2の基材18、及び第1の基材12と第2の基材18との間に配置される増殖領域45を含む。第1の基材12は、内側表面14及び内側表面の反対側となる外側表面16を有する。第2の基材18は、内側表面20及び内側表面の反対側となる外側表面22を有する。いずれの実施形態でも、第1の基材12の内側表面14は、第2の基材18の内側表面20と対面関係に配置される。加えて、第1のドライコーティング30は、第1の基材12の内側表面14の少なくとも一部分40上に配置される。所望により、接着剤層32は、第1のドライコーティング30の少なくとも一部分と、第1の基材12との間に配置される。
【0050】
第2の基材18はコーティングを含まなくてもよく、あるいは、例えば
図2に示すように第1の基材12と対面する内側表面20上を感圧接着剤の層(例えば接着剤37)でコーティングされていてもよい。いずれの実施形態でも、接着剤層37の一部分を使用して、第2の基材18を、第1の基材12の少なくとも一部分又はそこに配置されたコーティング(例えば第1のドライコーティング30)と容易に密着させることができる。付加的に又は代替的に、接着剤層37の一部分を本明細書に記載された第2のドライコーティング35を用いてコーティングすることができる。
【0051】
第2の基材18上に配置される接着剤37は、第1の基材12上に配置される接着剤層32と同一であっても異なっていてもよい。加えて、第2の基材18上に配置される第2のドライコーティング35は、第1の基材12上に配置される第1のドライコーティング30と同一であっても異なっていてもよい。第2の基材18上のコーティングは、第1の基材と対面する表面全体を覆うことができるが、培養デバイス10’の増殖領域45のうち少なくとも一部分41を画定する、内側表面20の少なくとも一部を覆うことが好ましい。このようにコーティングされた第2の基材は、第1の乾燥組成物だけに組み込むことが可能な量よりも多量のゲル化剤をデバイスに供給することが望まれるときに特に好ましい。
【0052】
好ましくは、第2のドライコーティング35が乾燥粉末又は乾燥粉末凝集体を主成分とする場合、第2のコーティングは、第2の基材18の内側表面20のうち少なくとも一部分上に配置される接着剤層37上に配置される。第2のドライコーティング35は、複合処理、接着剤コーティング処理、及び液体コーティング処理、及び/又は例えば米国特許第4,565,783号、第5,089,413号、第5,232,838号に記載のドライコーティング処理を使用して、第2の基材18上、又は所望の接着剤層37上に堆積され得る。
【0053】
第2のドライコーティング35に関して、冷水復元性があり、ゲル化剤の冷水ゲル化特性を実質的に妨害せず、嫌気性微生物の増殖をサポートする栄養素又は栄養培地を所望によりコーティングに含むことができる。培養デバイスに使用するのに好適な具体的な栄養素(複数可)は、デバイス内で増殖させる微生物によって異なるが、当業者であれば選択は容易である。概して、このような栄養素は冷水溶解性である。いずれの実施形態でも、第2のドライコーティング35は、他の微生物又は微生物群よりも、特定の嫌気性微生物又は微生物群の増殖を促進する選択的試剤(例えば、栄養素、抗生物質、及びこれらの組み合わせ)を更に含み得る。
【0054】
培養デバイス10’は、第1の基材12と第2の基材18との間に配置されるスペーサー手段を更に含み、これは、培養デバイス10’の増殖領域45の位置と厚さの両方を画定し、増殖領域45内に水性試料を閉じ込める役割を果たすウェルを形成する。スペーサー手段は、円形孔48を画定するスペーサー46として
図2に例示されている。孔48の壁によって、所定の寸法及び形状のウェルが形成され、培養デバイス10の増殖領域45の厚さを画定する。スペーサー46は、増殖領域の寸法及び培養デバイス内に配置される試料の容積に応じて、所望の容積、例えば、1mL、2mL、又は3mLのウェルを形成するのに十分な厚みにすべきである。任意の実施形態では、スペーサー46は、独立気泡ポリエチレンフォームで作製されるが、疎水性(非湿潤性)であり、微生物に対し不活性であり、滅菌可能である任意の材料を使用できる。いずれの実施形態でも、スペーサー手段を第1の基材又は第2の基材と(例えば感圧接着剤を介して)直接結合することができる。付加的に又は代替的に、スペーサー手段を第1の基材又は第2の基材に(例えば感圧接着剤を介して)間接的に結合することができる(例えば、第1又は第2の基材上に各々コーティングされる第1又は第2のドライコーティングにスペーサー手段を結合できる)。
【0055】
図2に図示した実施形態では、培養デバイス10’は、第1の基材12の内側表面14上の増殖領域45内に配置される第1のドライコーティング30、及び第2の基材18の内側表面20上の増殖領域内に配置される第2のドライコーティング35を含む。第1のドライコーティング30は、酵素を介在した酸素低減系である第1の有効量の成分(例えば酵素成分)を含み、第2のドライコーティング35は、酵素を介在した酸素低減系である第2の有効量の別の成分(例えば酵素成分に対応する酵素基質)を含む。よって、水性液体(例えば、水、水性緩衝液、水性栄養培地、水を含有する試料)を培養デバイスの増殖領域に導入すると、第1の有効量と第2の有効量とが流体連通するように配置され、系がコーティング及び水性液体中に存在する酸素と反応することにより、培養デバイスの増殖領域内の酸素が消費されて、微好気性微生物又は嫌気性微生物の増殖を促進する環境が生成される。
【0056】
図2及び
図3に図示した実施形態では、第1のドライコーティング30が、第1の基材12の内側表面14のほぼ全体を覆うが、スペーサー46内の円形孔48によって露出される部分40のみ接触可能となる。したがって、培養デバイス10’の増殖領域45は、円形孔48の領域、及び第1の基材12と第2の基材18とが互いに近傍に位置するときに円形孔48と重なり合う第1のドライコーティング30及び第2のドライコーティング35の一部分(それぞれ40と41)によって画定される。本実施形態では、増殖領域は周辺端部50から離れて位置し、増殖領域45と外部環境(例えば、空気)との間の連通はスペーサー46によって実質的に遮断される。
【0057】
所望により、本開示の培養デバイスは、培養デバイス中の酸素を示す手段を更に含む。好ましくは、この手段は、デバイス中に存在する酸素の量(例えば、所定の閾値量又は相対量)を示すことができる。この手段は、酵素を介在した酸素低減系が培養デバイスの増殖領域内の酸素を、微好気性微生物又は嫌気性微生物の増殖を促進する濃度まで適切に低減させたかどうか、あるいは低減させた時点を示せる点で有利である。培養デバイス内の酸素検出手段は、当技術分野において既知であり、例えば、レドックス色素(例えば、メチレンブルー)及び酸素消光性蛍光色素が挙げられる。
【0058】
この手段は、デバイス内部の酸素不存在を示す発光化合物であり得る。好適な酸素指示薬は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,689,438号(Kennedy et al.)に開示されている。本開示の培養デバイス用の指示薬として適切な発光化合物は、酸素によって消光される発光を呈する。より正確には、指示薬は、酸素濃度と反比例する放出によって、励起周波数に晒されると発光する。指示薬はコーティング、ラミネート加工、又はデバイス内の別の層若しくは別の層の一部分と押出成形されていてよい。このような層は、増殖領域内に配置されてよく、所望により1つ又は2つ以上の他の酸素透過層によって増殖領域と分離される。酸素を示す好適な化合物としては、オクタエチルポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、テトラベンゾポルフィリン、クロリン、又はバクテリオクロリンの金属誘導体が挙げられる。その他の好適な化合物としては、パラジウムコプロポルフィリン(PdCPP)、白金及びパラジウムのオクタエチルポルフィリン(PtOEP、PdOEP)、白金及びパラジウムのテトラフェニルポルフィリン(PtTPP、PdTPP)、カンファーキノン(CQ)、並びにエリトロシンB(EB)などのキサンテン系色素が挙げられる。その他の好適な化合物としては、2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンなどの配位子を有するルテニウム、オスミウム、及びイリジウム錯体が挙げられる。これらの好適な例としては、トリ(4,7,-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)パークロレート、トリ(2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)パークロレート、トリ(1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)パークロレートなどが挙げられる。
【0059】
酵素触媒による反応速度が、反応の行われる環境のpHに影響される場合があることを当業者であれば理解されるだろう。更に、本開示の培養デバイス中での微好気性微生物又は嫌気性微生物の増殖が、微生物が培養される環境のpHによって影響される場合があることも当業者であれば理解されるだろう。酸素を消費する酵素反応を促進しつつ、微生物の増殖も促進するように、増殖領域のpHを事前に選択できることが知られている。いずれの実施形態でも、緩衝剤を少なくとも1種のドライコーティングに組み込むことによって、及び/又は緩衝水溶液を用いてプレートに接種することによって増殖領域のpHを制御することができる。
【0060】
使用時、本開示のデバイスの増殖領域は、互いに流体連通される、酵素を介在した酸素低減系である第1の有効量の一成分(例えば、酵素成分)、及び酵素を介在した酸素低減系である第2の有効量の別の成分(例えば、酵素成分に対応する酵素基質)を含む。通常、系による酸素低減の最大容量は、増殖領域内の酵素基質量によって決定される。水和した増殖領域中の溶存酸素のほぼ全てと反応するのに十分な量の酵素基質があることが好ましい。水和した増殖領域中に通常存在すると思われるよりも多くの溶存酸素と反応するのに十分な量の酵素基質がある方が好ましい。
【0061】
いずれの実施形態でも、増殖領域を、水性液体の容積1mLで水和されるように寸法設定することができる。水は、1ミリリットルあたり約0.54μモルの溶存酸素を含む。したがって、第1のドライコーティング及び/又は第2のドライコーティングは、約22℃~約42℃にて120分以下の間に0.54μモルの酸素を消費するだけの酵素基質を少なくとも含むことが好ましい。第1のドライコーティング及び/又は第2のドライコーティングは、約22℃~約42℃にて120分以下の間に0.54μモル超の酸素を消費するだけの酵素基質を少なくとも含むことがより好ましい。
【0062】
いずれの実施形態でも、第1のドライコーティング及び/又は第2のドライコーティングは、任意の数の他の成分、例えば、色素(例えば、pH指示薬)、架橋剤、試薬(例えば、発色性若しくは蛍光性の酵素基質などの選択的試薬若しくは指示薬)、又は上述の成分の2種以上の組み合わせを含み得る。例えば、一部の用途では、微生物増殖の指示薬(例えば、pH指示薬、発色性酵素基質、レドックス色素)を第1の及び/若しくは第2のドライコーティング内、又はドライコーティングを堆積させる接着剤中に組み込むことが望ましい。好適な色素には、微生物の増殖により代謝され又は微生物の増殖により反応して、コロニーを着色し又は蛍光させて可視化を容易にするものが挙げられる。このような色素として、トリフェニルテトラゾリウムクロライド、p-トリルテトラゾリウムレッド、テトラゾリウムバイオレット、ベラトリルテトラゾリウムブルー及び関連する色素、並びに5-ブロモ-4-クロロインドリルホスフェートの二ナトリウム塩が挙げられる。その他の好適な色素としては、微生物の増殖中にpHの変化を感知するもの、例えばニュートラルレッドが挙げられる。
【0063】
一部の用途では、水溶液を用いて再溶解されたとき、画線接種が可能である硬さのヒドロゲルが生じるようにドライコーティングを形成することが好ましい。画線可能な培地を形成させるため、ゲル化剤を含有する1つ又は2つ以上のドライコーティングに有効量の好適な架橋剤を組み込むことができる。好適な架橋剤は、意図される微生物の増殖に実質的な影響を与えないものである。架橋剤の好適な種類及び量は、当業者により容易に選択される。例えば、グアーガムについては、四ホウ酸カリウム、アルミニウム塩、又はカルシウム塩などの架橋剤が好適であり、有効量、例えば、ドライコーティングの約1.0重量%未満を添加することができる。
【0064】
少なくとも1つのドライコーティングは、ある種の微生物学的試験を行うために必要な試薬を任意に含み得る。例えば、抗生物質感受性試験を実施するため、抗生物質を含有させることができる。微生物を同定するため、特定種の微生物が存在すると色が変化する鑑別試薬を含有させることができる。
【0065】
本発明の培養デバイスは、種々の技術を使用して作製することができる。一般に、デバイスは、手作業によって、又は本明細書並びに米国特許第4,565,783号、5,089,413号、及び第5,232,838号に記載されているような通常の実験設備を用いて作製することができる。
【0066】
本開示の培養デバイスの第1のドライコーティング及び/又は第2のドライコーティングは、接着性粉末培地を包含し得る。接着性粉末培地は、第1及び/又は第2の基材の内側表面の増殖領域のうち少なくとも一部分に接着剤層(それぞれ層32又は層37)を最初に形成することにより作製され凝固される。接着剤は好ましくは感圧性で、水に不溶性で、かつデバイス内で培養される微生物の増殖を実質的に阻害しないものである。好ましくは、接着層32又は層37はまた、湿潤させたときに微生物のコロニーを視認するのに十分透明である。
【0067】
好適な感圧接着剤の非限定例は、モル比90/10の2-メチルブチルアクリレート/アクリル酸の共重合体である。使用することができる他の好ましい感圧接着剤としては、モル比95/5又は94/6のイソオクチルアクリレート/アクリル酸、及びシリコーンゴムが挙げられる。水への露出時に白化(例えば、不透明化)する接着剤は、あまり好ましくないが、不透明な第1の基材と共に、又はコロニーの視認が必要とされない場合には使用することができる。高溶融性基剤上に低溶融性基剤がコーティングされた熱活性接着剤、及び/又は粘着液などの水活性接着剤も知られており、本発明で使用することができる。コロニーの視認を容易にする目的で上記の通り指示薬試剤を組み込むとき、概して、粉末よりも接着剤又はブロスコーティング混合物内に指示薬試剤を組み込むことが好ましい。
【0068】
接着剤を(例えば、ナイフコーターを使用して)第1の基材又は第2の基材の上面にコーティングして接着剤層を形成するが、この厚みは、接着剤に付着された乾燥粉末又は凝集粉末の平均粒径未満であることが好ましい。概して、粒子を基材(例えば、本明細書に記載する第1又は第2の基材)に接着させるのに十分だが、粒子が接着剤に完全に埋没しない程度の接着剤をコーティングする。概して、厚さ約5μm~約12μmの接着層が好適である。
【0069】
接着性粉末培地を形成するため、冷水溶解性粉末の層(例えば、冷水溶解性ゲル化剤)、所望により、栄養素、選択的試薬、酵素を介在した酸素低減系である成分、又は上述の粉末の2種類以上の組み合わせが、培養デバイスの増殖領域の少なくとも一部分に配置される接着剤層に実質的に均一に付着される。
【0070】
好ましくは、第1のドライコーティング及び/又は第2のドライコーティング内にゲル化剤を含有させるとき、ゲル化剤は、所定量の、例えば1~3mLの水又は水性試料が増殖領域に配置されると、好適な粘度、例えば、ブルックフィールドモデルのL VF粘度計を使用して25℃にて60rpmで測定したときに約1500cps以上を有する、ヒドロゲルを形成するような量で含まれる。この粘度のヒドロゲルは、培養中のデバイスの簡便な取り扱い及び積み重ねを可能にし、その培地に特異的なコロニー形成をもたらす。例えば、0.025g~0.050gの粉末グアーガムを、20.3cm2の表面領域を覆って実質的に均一に広げることで、1~3mlの水性サンプルにより溶解させたときに、十分な粘性の培地がもたらされる。単位面積当たりのコーティング重量を制御するために、粉末粒径が使用され得る。例えば、100メッシュのグアーガムが使用される条件下では、重量が約0.05g/20.3cm2になるようコーティングされ、400メッシュのグアーガムが使用される条件下では、重量が約0.025g/20.3cm2になるようコーティングされる。
【0071】
いずれの実施形態でも、第1のドライコーティング又は第2のドライコーティングは、微生物の増殖を促進する1種又は2種以上の栄養素を含み得る。コーティングが粉末又は粉末凝集体から本質的になるとき、ゲル化剤と、接着される粉末培地中の栄養素との好ましい比は、デバイスで増殖させる具体的な微生物により決定される。しかしながら、汎用目的では、約4:1~約5:1(重量を基準とした合計栄養素に対する合計ゲル化剤)の比率が好ましい。実質的に均一な層の適用に好適な任意の手段によって、接着される粉末培地中の粉末を、接着剤層(接着剤層32及び/又は接着剤層37)に適用することができる。粉末の層を適用するための好適な方法として、シェーカー型デバイスの使用、又は粉末コーターの使用が挙げられる。
【0072】
ドライコーティング、すなわち第1のドライコーティング及び/又は第2のドライコーティングを形成する別の好ましい方法は、液体コーティング方法である。この方法では、ゲル化剤を含む液体混合物(例えば、水溶液混合物)、酵素を介在した酸素低減系の成分(例えば、酵素成分)、並びに所望により栄養素、選択的試薬、及び/又は指示薬試剤を調製する。液体混合物は、第1の基材又は第2の基材に(例えば、ナイフコーターを使用して)コーティングされ、実質的に、液体のほぼ全てを(例えば、フラッシュ蒸着により)除去して実質的に乾燥した(例えば、実質的に水を含まない)コーティングを生成する。ゲル化剤は、基材へのコーティングを容易にする目的で、液体混合物を増粘する役割を果たすことができる。実用目的では、ゲル化剤の量は、実際に培地を基材上にコーティングできない程度まで、混合物が増粘される量よりも少ないことが好ましい。コーティング混合物は、概して自己接着して基材になり、基材と培地との間には接着剤層は必要とされない。
【0073】
いずれの実施形態でも、第1のドライコーティングと第2のドライコーティングとを、類似の処理により調製(すなわち、両方を粉末コーティング処理又は液体コーティング処理のいずれかにより調製)してもよい。あるいは、いずれの実施形態でも、ドライコーティングのどちらか(例えば、第1のドライコーティング)が、液体コーティング処理を使用してコーティングされ、別のドライコーティング(例えば、第2のドライコーティング)が粉末コーティング処理を使用してコーティングされる。加えて、第1のドライコーティング及び第2のドライコーティングは、同一栄養素又は異なる栄養素を含んでよい。
【0074】
いずれの実施形態でも、本開示の培養デバイスは、ゲル化剤及び酵素を介在した酸素低減系の酵素成分を含むドライコーティング(例えば、第1のドライコーティング)を有する一方の基材(例えば、第1の基材)と、ゲル化剤及び/又は酵素を介在した酸素低減系の酵素基質成分を含むドライコーティング(例えば、第2のドライコーティング)を有する他方の基材(例えば、第2の基材)とを含む。好ましくは、第1のドライコーティングは、液体コーティング処理を使用してコーティングされ、第2のドライコーティングは、粉末コーティング処理を使用してコーティングされる。
【0075】
本開示の培養デバイスを使用する場合、存在する微生物のコロニーの正確な計数が望まれる場合がある。したがって、いずれの実施形態でも、本開示の培養デバイスは、第1の基材、又はその代わりに第2の基材にグリッドパターンを含んでよい。グリッドパターンは正方形のグリッドパターン、例えば米国特許第4,565,783号に開示されるような正方形のグリッドパターンを含んでよい。例えば印刷手段のような任意の好適な処理によって、第1又は第2の基材上にグリッドパターンを形成してもよい。
【0076】
酵素を介在した酸素低減系を、本明細書に参考により組み込まれる米国特許第6,331,429号に記載されたものと類似した培地にも使用できることが企図される。培地は、本明細書で開示する培養デバイス内に配置する場合、又はその代わりに本明細書で開示する好適な第1と第2の基材の間に配置する場合、微好気性微生物又は偏性嫌気性微生物の培養方法に使用することができる。
【0077】
別の態様において、本開示は、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製する方法を提供する。本方法は、第1のコーティングを第1の基材の一部に堆積させることであって、この第1のコーティングが、液体と、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素成分とを含む液体混合物を使用して形成されることと、コーティングを乾燥させることと、第1のコーティングが第2のコーティングに対面するように、かつ第1の基材と第2の基材との間に配置された増殖領域が第1のコーティングの一部及び第2のコーティングの一部と重なり合うように、第1の基材を第2の基材と隣接して位置決めすることと、を含む。
【0078】
第1のコーティングの酵素成分は、酵素基質及び酸素との反応により生成物を形成できる酵素である。反応は水性混合物内で起り、その結果、本明細書に記載するような水性混合物から酸素が局所的に低減される。所望により、本方法のいずれの実施形態でも、接着剤層は、第1のコーティングと第1の基材との間の第1の基材上に配置されてよい。所望により、本方法のいずれの実施形態でも、第1のコーティングは、本明細書に記載したような、栄養素又は栄養培地、選択的試剤、指示薬試剤、架橋剤、色素、又は上述の任意の2つ以上の組み合わせを更に含んでよい。第1のコーティングの組成物は、有効量の酵素成分(例えば、アスコルビン酸オキシダーゼ)が第1の基材により画定される増殖領域の第1の部分全体に分布(例えば、均一に分布)するように調整される。
【0079】
本方法のいずれの実施形態でも、所望により本方法は、第2の基材上に第2のコーティングを形成することを更に含む。第2のコーティングは、酵素を介在した酸素低減系の酵素基質成分を含み、水性培地中で酵素成分及び酸素との反応により生成物を形成できる。所望により、本方法のいずれの実施形態でも、接着剤層は、第2のコーティングと第2の基材との間の第2の基材上に配置されてよい。いずれの実施形態でも、第2のコーティングは、第2の基材に付着された接着剤層上に配置される、実質的に乾燥した粉末又は粉末凝集体を含む。第2のコーティングの組成物は、有効量の酵素基質成分(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)が第2の基材により画定される増殖領域の第2の部分全体に分布(例えば、均一に分布)するように調整される。
【0080】
本方法のいずれの実施形態でも、液体混合物の形成に使用した液体は水性液体を含む。いずれの実施形態でも、液体混合物の形成に使用した液体は有機液体を含む。本方法のいずれの実施形態でも、第1のコーティングの形成に使用した液体混合物は冷水溶解性ゲル化剤を更に含む。
【0081】
本方法のいずれの実施形態でも、第1のコーティングを第1の基材の一部分上に堆積させることは、所定量の水性液体中で酵素成分とゲル化剤とを混合させてコーティング混合物を形成することと、第1の基材上にコーティング混合物をコーティングすることと、を含む。いずれの実施形態でも、本明細書に記載されたように、第1の基材上にコーティング混合物をコーティングすることは、第1の基材上に配置された接着剤層上にコーティング混合物をコーティングすることを含み得る。
【0082】
第1のコーティングの乾燥は、当該技術分野において既知である多数のプロセスによって実行することができる。コーティングは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,601,998号に記載のプロセスにしたがって、オーブン(例えば、重力式オーブン、対流式オーブン)で乾燥させることができる。好ましくは、第1のコーティングは実質的に水を含まない状態になるまで乾燥される。本明細書で使用される「実質的に乾燥」、「実質的に水を含まない」などのフレーズは、いったんそれが周囲環境と平衡化できるようになると、およそ、脱水コーティングの含水量以下の含水量を有するコーティングを指す。
【0083】
第1のコーティングが第2のコーティングに対面するように、かつ第1の基材と第2の基材との間に配置された増殖領域が第1のコーティングの一部及び第2のコーティングの一部と重なり合うように、第2の基材に隣接する第1の基材を配置することは、種々の方法で実施することができる。第1及び第2のコーティングの一部分が互いに重なり合うように、第1及び第2の基材を互いに隣接して配置する好適な方法の代表的な例を、
図1~
図3に示す。この重なり合った配置では、操作者が第1及び第2の基材間に水性液体を付着させると、第1のコーティングと第2のコーティング(存在する場合)とが流体連通下に置かれることがわかる。
【0084】
更に別の態様では、本開示は、試料中のクロストリジウム・ディフィシルのコロニー形成単位を計数するための培養デバイスを提供する。上記で記載したように培養デバイスは、対向する内側表面及び外側表面を有する第1の基材と、対向する内側表面及び外側表面を有する第2の基材と、両基材間に配置された増殖領域とを含む。培養デバイスは、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した第1の有効量の酵素成分であって、第1の有効量が増殖領域の第1のコーティング内に配置される、成分と、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した第2の有効量の酵素基質成分であって、第2の有効量が増殖領域の第2のコーティング内に配置される、成分と、増殖領域内に配置される有効量の実質的に乾燥した栄養素組成物と、を更に含む。いずれの実施形態でも、栄養素組成物が、難培養性微生物の増殖を促進する、栄養素混合物(例えば、ブレインハートインフュージョン及び/又は酵母抽出物)を含む。いずれの実施形態でも、培養デバイスは、有効量の少なくとも1種の実質的に乾燥した選択的試剤(例えば、タウロコール酸ナトリウムなどの胆汁塩、例えば、セフォキシチン及びサイクロセリンなどの1種又は2種以上の抗生物質)を更に含み、所定量の水性液体で水和されると、クロストリジウム・ディフィシルの増殖を実質的に可能にし、クロストリジウム・ディフィシル以外の微生物、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム・スポロゲネス、ウェルシュ菌、バクテロイデス・フラジリス、プレボテラ・メラニノゲニカ、フソバクテリウム種、及びペプトストレプトコッカス・アネロビウスなどの増殖を実質的に阻害する。所望により、培養デバイスは、増殖領域内に配置される有効量の実質的に乾燥した還元剤(例えば、チオグリコール酸ナトリウム及び/又はL-システイン)を更に含む。
【0085】
更に別の態様では、本開示は、微生物を検出する方法を提供する。いずれの実施形態でも、本方法は、本開示の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを使用する。培養デバイスは、対向する内側表面及び外側表面を有する第1の基材と、対向する内側表面及び外側表面を有する第2の基材と、第1及び第2の基材の内側表面間に配置された増殖領域と、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した有効量の酵素成分であって、第1の有効量が増殖領域に配置される、成分と、増殖領域内に配置される実質的に乾燥した冷水溶解性ゲル化剤と、を含み、第1の基材及び第2の基材は、気体状酸素に対して実質的に不透過性であり得る。所望により、培養デバイスは、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した有効量の酵素基質成分であって、第2の有効量が増殖領域に配置される、成分を更に含む。好適な実施形態では、培養デバイスは、増殖領域の外周部を画定するスペーサーを更に含む。
【0086】
本方法のいずれの実施形態でも、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの増殖領域内に配置される、実質的に乾燥した冷水溶解性ゲル化剤は所定量の水性液体にて水和され、i)酵素を介在した酸素低減系の成分との反応を促進し、かつii)微生物の増殖を促進するための水性環境を提供する。本明細書に記載したように、培養デバイス内の冷水溶解性ゲル化剤は、試料がデバイス内に付着される前、試料がデバイスに付着されている間、及び/又は試料がデバイス中に付着された後、水和され得る。
【0087】
いずれの実施形態でも、培養デバイスでの水和及び/又は接種に使用される所定量の水性液体は、約1ミリリットルである。いずれの実施形態でも、培養デバイスでの水和及び/又は接種に使用される所定量の水性液体は、約2ミリリットルである。いずれの実施形態でも、培養デバイスでの水和及び/又は接種に使用される所定量の水性液体は、約3ミリリットルである。いずれの実施形態でも、培養デバイスでの水和及び/又は接種に使用される所定量の水性液体は、約4ミリリットルである。いずれの実施形態でも、培養デバイスでの水和及び/又は接種に使用される所定量の水性液体は、約5ミリリットルである。いずれの実施形態でも、培養デバイスでの水和及び/又は接種に使用される所定量の水性液体は、約10ミリリットルである。いずれの実施形態でも、培養デバイスの増殖領域の水和に使用される水性液体は領域全体に分布し、結果的に増殖領域の20.3cm2あたり約1ミリリットルの液体となる。
【0088】
いずれの実施形態でも、培養デバイスの増殖領域内の有効量の酵素基質成分(例えば、L-アスコルビン酸又はその塩)は、増殖領域に付着させる所与の量の水性液体を基準にして選択することができる。例えば、所定量が約1ミリリットルの場合、増殖領域内に配置又は付着させる有効量の酵素基質成分(例えば、L-アスコルビン酸又はその塩)は、(微好気性又は微耐気性微生物を培養する環境を生成するためには)約3マイクロモル~約4.5マイクロモル、(偏性嫌気性微生物を培養する環境を生成するためには)7マイクロモル~約30マイクロモルであり得る。例えば、所定量が約2ミリリットルの場合、増殖領域内に配置又は付着させる有効量の酵素基質成分(例えば、L-アスコルビン酸又はその塩)は、(微好気性又は微耐気性微生物を培養する環境を生成するためには)約6マイクロモル~約9マイクロモル、(偏性嫌気性微生物を培養する環境を生成するためには)14マイクロモル~約60マイクロモルであり得る。所与の酵素を介在した酸素低減系に適した酵素基質のマイクロモル数は、特定の酵素成分によって触媒される反応中に、酵素基質成分のマイクロモル数あたり、何マイクロモル数の酸素が消費されるかに応じて変化し得ることが、当業者であれば理解されるであろう。
【0089】
いずれの実施形態でも、所定量の水性液体は、所定領域(例えば、
図2の培養デバイス10’のスペーサー46内の孔48によって画定される領域)を有する増殖領域内に分布する。したがって、第1又は第2の基材上に酵素基質成分をコーティングする場合、培養デバイスの増殖領域内の有効量の酵素基質成分(例えば、L-アスコルビン酸又はその塩)は、増殖領域の所定領域に基づいて選択され得る。例えば、増殖領域の所定領域が、約2インチ(約5.1cm)の直径を有する円によって画定される場合、増殖領域内に配置された又は付着された有効量の酵素基質成分(例えば、L-アスコルビン酸又はその塩)は、(増殖領域が液体1mLで水和されるときに微好気性又は微耐気性微生物を培養する環境を生成するためには)約0.15マイクロモル/cm
2~約0.22マイクロモル/cm
2、(増殖領域が液体1mLで水和されるときに偏性嫌気性微生物を培養する環境を生成するためには)0.35マイクロモル/cm
2~約1.5マイクロモル/cm
2であり得る。
【0090】
通常、培養デバイスは、略水平面に配置され、かつ第1の基材及び第2の基材を分離する(例えば、上部基材を引き上げる)ことにより、増殖領域が水和及び/又は接種される間、培養デバイスの増殖領域と接触可能となる。本培養デバイスは、好気性環境(すなわち、空気中)で水和及び/接種が可能である点で有利である。通常、デバイスの水和に使用される水性液体(試験する試料材料を含む場合がある)は、第1と第2の基材間の増殖領域上にピペットで移される。所定量の水性液体を増殖領域に付着させた後、培養デバイスを閉じる。所望により、PETRIFILM培養デバイスの接種に使用されるものと類似した、水平又は凹状のスプレッダーを使用して、培養デバイス内の所定領域全体に水性液体を分布させることができる。
【0091】
培養デバイスが水和された後、酵素を介在した酸素低減系の酵素成分及び酵素基質成分が、増殖領域内に存在する(一方の基材の増殖領域内の実質的に乾燥した第1の組成物に酵素成分が存在し、他方の基材の増殖領域内の実質的に乾燥した第2の組成物に酵素基質成分が存在する)場合、増殖領域の水和は、酵素成分を酵素基質成分と水性流体連通下に置くことを含む。
【0092】
流体連通下に置かれると、第1の組成物、第2の組成物、及び水性液体は第1の濃度の溶存酸素を含む混合物を形成する。いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度は、偏性嫌気性微生物、微好気性微生物、及び/又は微耐気性微生物の増殖を実質的に阻害する濃度であってよい。これらの実施形態では、両成分が水性流体連通下に置かれると、酵素と、酵素基質並びにコーティング及び/又は水性流体中に溶解された酸素との反応が開始され、それによって増殖領域内の溶存酸素の第1の濃度が、第1の濃度より低い第2の濃度(例えば、第1の濃度の少なくとも約50%未満、少なくとも約60%未満、少なくとも約70%未満、少なくとも約80%未満、少なくとも約90%未満、少なくとも約95%未満、少なくとも約98%未満、少なくとも約99%未満)まで低減される。
【0093】
いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を微耐気性微生物の増殖をサポートするのに十分な低さの第2の濃度にまで低減させることを含み得る。いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を微好気性微生物の増殖をサポートするのに十分な低さの第2の濃度にまで低減させることを含み得る。いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を偏性嫌気性微生物の増殖をサポートするのに十分な低さの第2の濃度にまで低減させることを含み得る。
【0094】
いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を、混合物の形成後、約120分以内に第2の濃度まで低減させることを含み得る。いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を、混合物の形成後、約90分以内に第2の濃度まで低減させることを含み得る。いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を、混合物の形成後、約60分以内に第2の濃度まで低減させることを含み得る。いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を、混合物の形成後、約45分以内に第2の濃度まで低減させることを含み得る。いずれの実施形態でも、溶存酸素の第1の濃度を溶存酸素の第2の濃度まで低減させることは、溶存酸素を、混合物の形成後、約30分以内に第2の濃度まで低減させることを含み得る。
【0095】
いずれの実施形態でも、培養デバイスの水和に使用される水性液体は、水(例えば、無菌脱イオン水、生体緩衝液、無菌栄養培地)を含み、所望により、1種又は2種以上の添加剤を含んでよい。1種又は2種以上の添加剤は、本方法の種々の機能を実現することができる。例えば、いずれの実施形態でも、1種又は2種以上の添加剤が、デバイス中で培養される嫌気性、微好気性、又は微耐気性微生物の増殖をサポートする栄養素又は栄養培地を含んでよい。このような栄養素又は栄養培地は当該技術分野で周知されており、培養する具体的な微生物に応じて選択してよい。栄養素又は栄養培地は、酵素を介在した酸素低減系によって実質的に阻害されるものではない。これは、本明細書に記載したような酸素センサーを使用して容易に試験することができる。
【0096】
代替的に又は付加的に、いずれの実施形態でも、添加剤は、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した酵素基質成分(例えば、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸の金属塩、ヒドロキノン、例えば2,5-ジクロロヒドロキノン、D-エリスロアスコルビン酸、クロロヒドロキノン)の有効量のうち少なくとも一部(又は全部)を占める。よって、培養デバイスは、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した有効量の酵素成分は含み得るが、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素基質成分は含まない可能性がある。これら実施形態では、酵素基質成分は、培養デバイスの水和に使用される水性流体中の添加剤である。よって、水性液体を増殖領域内に付着させると、培養デバイス中に存在する実質的に乾燥した酵素成分が、水性流体中に存在する酵素基質成分と水性流体連通され、それによって、酵素と、酵素基質成分並びにコーティング及び/又は水性液体中に溶解した酸素との反応が開始される。この反応は、培養デバイスの増殖領域から酸素を低減させる。
【0097】
代替的に又は付加的に、いずれの実施形態でも、添加剤は、少なくとも1種の他の微生物よりも1つの微生物の増殖に有利となる1種又は2種以上の選択的試剤(例えば、抗生物質、塩)を含む。一実施形態において、選択的試剤は、クロストリジウム・ディフィシルの増殖に有利である。代替的に又は付加的に、いずれの実施形態でも、添加剤は、微生物の存在を検出するための指示試薬(例えば、pH指示薬、レドックス指示薬、発色性酵素基質、蛍光性酵素基質)を含む。微生物の検出に有用である選択的試剤及び指示試薬を当業者は理解されるであろう。選択的試剤又は指示薬は、酵素を介在した酸素低減系によって実質的に阻害されるものではない。これは、本明細書に記載したように、酸素センサーを使用して容易に試験することができる。培養デバイスの水和に使用する溶液に1種又は2種以上の選択的試剤及び/又は指示薬を添加することにより、特定の栄養培地(例えば、多種の微生物を増殖させるための一般的な栄養培地)を含む特定の培養デバイスを、種々の具体的な微生物又は微生物群を培養するために使用できる点で有利である。
【0098】
試料材料をデバイス内に配置する前に培養デバイスを水和させる場合は、デバイスを再度開いて培養材料を接種する前に、所望により冷水溶解性ゲル化剤を水和させ、数分間から約30分以上かけて(例えば、室温で)ゲルを形成することができる。ゲル化剤が水和されゲルを形成するまでの期間、酵素を介在した酸素低減系の成分が全て存在する場合、この成分によって、本明細書に記載したように、水和されたゲル化剤中の溶存酸素の濃度が第1の濃度から、微耐気性、微好気性、条件的嫌気性、又は偏性嫌気性微生物の増殖を促進する第2の濃度へと低減される。
【0099】
培養デバイスの増殖領域の水和前後に、当技術分野において既知である種々の方法で試料材料を増殖領域と接触させることができる。いずれの実施形態でも、試料材料は増殖領域内に試料材料を付着させることにより増殖領域と接触される。例えば、これは、ピペット操作、試料材料の採取に用いたスワブによる増殖領域への接触(例えば、スワブによる表面塗抹)、白金耳又はニードルによる増殖領域への接触(例えば、画線平板法)、あるいは試料採取具(例えば、スワブ、スポンジ、又はメンブレンフィルター)を増殖領域に直接配置させ、培養デバイスを閉め直すことにより行うことができる。試料を付着させ、(培養デバイス中に目視可能な気泡が混入しないように注意して)培養デバイスを再び閉じた後、酵素を介在した酸素低減系は増殖領域の溶存酸素の低減を再開する。
【0100】
いずれの実施形態でも、培養デバイスの増殖領域が水和され、ゲル化剤がゲルを形成した後は、培養デバイスをコンタクトプレート(例えば、ロダックプレート)として使用することができる。このようにしてゲルが形成された後、培養デバイスの第1及び第2の基材を分離して、増殖領域内の水和ゲルを露出させる。水和ゲルを試料となる表面と接触させ、培養デバイス中に目視可能な気泡が混入しないように注意して培養デバイスを再度閉じる。コンタクトプレート操作を好気性環境内で実施でき、培養デバイスを再度閉じた後は、酵素を介在した酸素低減系によって培養デバイス中に酸素還元環境を再構築できる点で有利である。
【0101】
本方法のいずれの実施形態でも、増殖領域を試料と接触(接種)させて閉じた後、培養デバイスを一定時間(例えば、所定の期間)培養する。培養状況(例えば、培養温度)は、当業者に周知のように、微耐気性、微好気性、条件的嫌気性、又は偏性嫌気性の細菌の増殖率に影響を与える可能性があり、検出される細菌の種類に影響する場合もある。例えば、低温での培養(例えば、約25℃)では、低温細菌が検出されやすくなる。高温での培養(例えば、約30℃、約32℃、約35℃、約37℃)では、ある種の微耐気性、微好気性、条件的嫌気性、又は偏性嫌気性微生物の急速な増殖を促す場合がある。
【0102】
いくつかの実施形態では、培養デバイスは、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、又は少なくとも約48時間の間培養され得る。いくつかの実施形態では、培養デバイスは、約24時間以下、約48時間以下、又は約72時間以下の間培養され得る。ある種の実施形態では、培養デバイスは、約24時間~約48時間培養される。いずれの実施形態でも、培養デバイスは、増殖領域内で増殖する嫌気性微生物を検出又は計数する前に、約72時間、約96時間、約120時間、約7日間、又は約8日間の間培養でき、その間、その中で酸素還元環境を維持することができる。いずれの実施形態でも、微生物のコロニーの形成が可能になるまで一定時間にわたり培養デバイスを培養することは、好気ガス環境中で一定期間にわたり培養デバイスを培養することを含む。
【0103】
本方法では、接種済み培養デバイスを培養した後、微生物のコロニーを検出することを更に含む。微生物のコロニーは、当技術分野において既知である種々の手法によって培養デバイス内で検出することができる。好適な培養期間後、観察可能なコロニーの不在、増殖指示薬(例えば、pH指示薬、発色性酵素基質、TTCなどのレドックス指示薬、蛍光性酵素基質)内での変化の不在、及び増殖培地内の発酵性(fermentable)炭化水素の代謝に付随する気泡の不在によって、培養デバイス中の微生物の不存在を検出できる。
【0104】
微生物のコロニーに付随する酸性区域は、目視及び/又は撮像装置の使用により検出することができる。例えば、培地がpH指示薬としてブロムクレゾールパープルを含む方法では、培地はほぼ中性pH時には紫色又は灰色の外観を示す。微生物が増殖して、培地内の炭化水素(例えば、グルコース)を発酵させるにつれ、ブロムクレゾールパープル指示薬は、増殖している細菌コロニー近傍で黄変する。例えば、培地がpH指示薬としてクロロフェノールレッドを含む方法では、培地はほぼ中性pH時には赤色又は紫色の外観を示す。微生物が培地内の炭化水素を発酵させるにつれ、クロロフェノールレッド指示薬は、増殖している微生物のコロニー近傍で黄変する。
【0105】
微生物のコロニーに付随して増殖領域に気泡が存在する場合、これを目視及び/又は撮像装置の使用により検出することができる。目視可能なコロニー及び/又は微生物のコロニー近傍の領域内でpH指示薬の色変化により検出可能である酸性域に、気泡を伴う場合がある。気泡は、例えば、炭化水素の嫌気発酵により生成される二酸化炭素を含む場合がある。一部の微生物は、硫酸イオンの還元によって硫化水素(H2S)ガスを生成することもある。硫化水素は培養デバイス中に存在する金属イオン(例えば、Feイオン)と反応して、硫酸を還元する細菌コロニー近傍で不溶性の黒い沈殿物(例えば、FeS)を生成し得る。よって、いずれの実施形態でも、本開示の第1のコーティング又は第2のコーティングは、硫化水素と反応して不溶性の有色沈殿物を生成し得る金属塩を含んでよい。
【0106】
本方法の上記いずれの実施形態でも、培養デバイスは、増殖領域を所定量と接触させる工程以前は、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した有効量の酵素成分を含まない増殖領域を有してよい。これら実施形態で、本方法は、酵素を介在した酸素低減系である有効量の酵素基質成分を増殖領域に付着させる工程を更に含む。酵素成分は、乾燥形態又は液体形態で分配され得る。いずれの実施形態でも、酵素成分は、試料を増殖領域に付着させる前に、液体試料と混合させることができる。いずれの実施形態でも、本方法は、酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した有効量の酵素基質成分を増殖領域に付着させることを更に含む。
【0107】
上記実施形態のいずれにおいても、本方法は、培養デバイスの像を得る工程を更に含み得る。これらの実施形態では、微生物の有無を検出する工程は、培養デバイスの画像を表示する、印刷する、又は分析することを含む。撮像システムは撮像装置を含み、また、プロセッサを含んでもよい。いくつかの実施形態において、撮像装置は、ラインスキャナ又はエリアスキャナ(例えば、カメラ)を含み得る。撮像装置は、単色の(例えば、白黒)又は多色の(例えば、色付き)スキャナを含み得る。有利には、単色の撮像システムは、より解像度の高い画像を準備することができ、結果の精度を向上させる及び/又は培養デバイス内の微生物の存在を検出するのに必要な時間を低減することが可能である。
【0108】
いくつかの実施形態において、撮像システムは、照明システムを更に含む。照明システムは、少なくとも1つの広域スペクトル可視光(例えば、「白色」光)源を含み得る。いくつかの実施形態において、照明システムは、少なくとも1つの狭スペクトル可視光源(例えば、例えば、赤色光、緑色光、又は青色光といった比較的狭帯域幅の可視光を放射する発光ダイオード)を含み得る。特定の実施形態において、照明システムは、発光ピークが事前選択された波長(例えば、約525nm)である狭スペクトル可視光源(例えば、発光ダイオード)を含み得る。
【0109】
画像は、培養デバイスの増殖領域内の成分(例えば、微生物のコロニー、増殖培地、及び指示薬)によって反射された光から得ることができ、あるいは画像は培養デバイスの増殖領域内の成分を透過した光から得ることができる。好適な撮像システム及び対応する照明システムは、例えば、国際公開WO 2005/024047、並びに米国特許出願公開第2004/0101954号及び同第2004/0102903号に記載されており、当該文献のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好適な画像システムの非限定例としては、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能なPETRIFILM Plate Reader(PPR)、Spiral Biotech(Norwood,MA)から入手可能なPETRISCAN Colony Counter、並びに、Synbiosis(Cambridge,U.K.)から入手可能なPROTOCOL及びACOLYTEプレートスキャナーが挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態において、画像を得ることは、波長バイアス画像(wavelength-biasedimage)を得ることを含む。例えば、撮像システムは、撮像装置が収集した光にバイアスをかけるバイアス・フィルターを含み得る。フィルタエレメントは当該技術分野において既知であり、「カットオフ」フィルター(即ち、ある特定の波長より大きい又は小さいのいずれかの光波長を通すことができるフィルター)及び「バンドパス」フィルター(即ち、ある特定の上限値と下限値との間の光波長を通すことができるフィルター)の両方を包含する。バイアス・フィルターは、照明光源と培養デバイスとの間に配置することができる。あるいは又はこれに加えて、バイアス・フィルターは、培養デバイスと撮像装置との間に配置することができる。
【0111】
典型的な実施形態
実施形態Aは、試料中の微生物を検出する方法であって、本方法は、
内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの増殖領域を所定量の水性液体と接触させることであって、増殖領域が、増殖領域を所定量と接触させる前に、乾燥した冷水溶解性ゲル化剤を含むことと、
酵素を介在した酸素低減系の、有効量の酵素成分を増殖領域に付着させることと、
増殖領域を試料と接触させることと、
微生物のコロニーの形成を可能にするのに十分な期間、培養デバイスを培養することと、
微生物のコロニーを検出することと、を含む。
【0112】
実施形態Bは、実施形態Aの方法であって、酵素を介在した酸素低減系の、有効量の酵素基質成分を増殖領域に付着させることを更に含む。
【0113】
実施形態Cは、試料中の微生物を検出する方法であって、本方法は、
内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの増殖領域を所定量の水性液体と接触させることであって、増殖領域が、増殖領域を所定量と接触させる工程以前に、乾燥した冷水溶解性ゲル化剤と、酵素を介在した酸素低減系の、実質的に乾燥した有効量の酵素成分とを含むことと、
増殖領域を試料と接触させることと、
微生物のコロニーの形成を可能にするのに十分な期間、培養デバイスを培養することと、
微生物のコロニーを検出することと、を含む。
【0114】
実施形態Dは、試料中の微生物を検出する方法であって、本方法は、
内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの増殖領域を所定量の水性液体と接触させることであって、増殖領域が、増殖領域を所定量と接触させる前に、乾燥した冷水溶解性ゲル化剤を含むことと、
酵素を介在した酸素低減系の、有効量の酵素基質成分を増殖領域に付着させることと、
増殖領域を試料と接触させることと、
微生物のコロニーの形成を可能にするのに十分な期間、培養デバイスを培養することと、
微生物のコロニーを検出することと、を含む。
【0115】
実施形態Eは、実施形態Dの方法であって、酵素を介在した酸素低減系の、有効量の酵素成分を増殖領域に付着させることを含む。
【0116】
実施形態Fは、実施形態A~Cのいずれか1つの方法であって、培養デバイスの増殖領域が酵素を介在した酸素低減系の実質的に乾燥した有効量の酵素基質成分を更に含む。
【0117】
実施形態Gは、前述の実施形態のいずれか1つの方法であって、増殖領域を水性液体と接触させることが増殖領域を試料と接触させることを含む。
【0118】
実施形態Hは、前述の実施形態のいずれか1つの方法であって、増殖領域を試料と接触させる工程が増殖領域を所定量の水性液体と接触させる工程とが同時ではない。
【0119】
実施形態Iは、実施形態Hの方法であって、増殖領域を所定量の水性液体と接触させる工程後に、増殖領域を試料と接触させる工程が存在する。
【0120】
実施形態Jは、実施形態Hの方法であって、増殖領域を所定量の水性液体と接触させる工程前に、増殖領域を試料と接触させる工程が存在する。
【0121】
実施形態Kは、前述の実施形態のいずれか1つの方法であって、増殖領域を試料に接触させること又は増殖領域を所定量の水性液体と接触させることが、試料又は所定量の水性液体中に添加剤を提供することを含む。
【0122】
実施形態Lは、実施形態Kの方法であって、添加剤は微生物の増殖を検出するための有効量の選択的試剤又は指示薬を含む。
【0123】
実施形態Mは、実施形態Lの方法であって、有効量の選択的試剤が、培養デバイス中のクロストリジウム・ディフィシル微生物の発芽及び増殖を実質的に可能にし、有効量の選択的試剤が、大腸菌、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム・スポロゲネス、ウェルシュ菌、バクテロイデス・フラジリス、プレボテラ・メラニノゲニカ、フソバクテリウム種、及び/又はペプトストレプトコッカス・アネロビウスの増殖を実質的に阻害する。
【0124】
実施形態Nは、前述の実施形態のいずれか1つの方法であって、微生物のコロニーの形成を可能にするのに十分な期間にわたり培養デバイスを培養することが、好気ガス環境中で一定期間にわたり培養デバイスを培養することを含む。
【0125】
実施形態Oは、前述の実施形態のいずれか1つの方法であって、第1の乾燥組成物が培養デバイスの第1の基材上にコーティングされ、第2の乾燥組成物が培養デバイスの第2の基材上にコーティングされている。
【0126】
実施形態Pは、実施形態A~Oのうちいずれか1つの方法であって、
第1の組成物、第2の組成物、及び水性液体が培養デバイスの増殖領域内で流体連通下に置かれるとき、それらが第1の濃度の溶存酸素を含む水性混合物を形成し、
液体混合物の形成後、デバイスが約120分以下の間好気性環境に維持され、溶存酸素の第1の濃度が、酵素を介在した酸素低減系によって、微耐気性微生物の増殖を実質的に阻害しない第2の濃度の溶存酸素まで低減される。
【0127】
実施形態Qは、実施形態A~Oのうちいずれか1つの方法であって、
第1の組成物、第2の組成物、及び水性液体が培養デバイスの増殖領域内で流体連通下に置かれるとき、それらが第1の濃度の溶存酸素を含む水性混合物を形成し、
液体混合物の形成後、デバイスが約120分以下の間好気性環境に維持され、溶存酸素の第1の濃度が、酵素を介在した酸素低減系によって、微好気性微生物の増殖を実質的に阻害しない第2の濃度の溶存酸素まで低減される。
【0128】
実施形態Rは、実施形態A~Oのうちいずれか1つの方法であって、
第1の組成物、第2の組成物、及び水性液体が培養デバイスの増殖領域内で流体連通下に置かれるとき、それらが第1の濃度の溶存酸素を含む水性混合物を形成し、
液体混合物の形成後、デバイスが約120分以下の間好気性環境に維持され、溶存酸素の第1の濃度が、酵素を介在した酸素低減系によって、偏性嫌気性微生物の増殖を実質的に阻害しない第2の濃度の溶存酸素まで低減される。
【0129】
実施形態Sは、前述の実施形態のいずれか1つの方法であって、微生物のコロニーを検出する工程が、カンピロバクター微生物のコロニーを検出することを含む。
【0130】
実施形態Tは、実施形態A~Rのいずれか1つの方法であって、微生物のコロニーの検出がグルコースを乳酸に発酵させる微生物のコロニー検出を含む。
【0131】
実施形態Uは、微生物のコロニーを計数するための培養デバイスであって、本デバイスは、
対向する内側表面及び外側表面を有する第1の基材と、
対向する内側表面及び外側表面を有する第2の基材と、
第1及び第2の基材の内側表面間に配置された増殖領域と、
酵素を介在した酸素低減系の、実質的に乾燥した第1の有効量の酵素成分であって、第1の有効量が増殖領域の第1のコーティング内に配置される、酵素成分と、
酵素を介在した酸素低減系の、実質的に乾燥した第2の有効量の酵素基質成分であって、第2の有効量が増殖領域の第2のコーティング内に配置される、酵素基質成分と、
増殖領域に配置される乾燥した冷水溶解性のゲル化剤と、を含み、
第1の基材及び第2の基材は、気体状酸素に対して実質的に不透過性であり得る。
【0132】
実施形態Vは、実施形態Uの培養デバイスであって、有効量の酵素成分と酵素基質成分を所定量の水性液体を使用して、増殖領域内で流体連通させると、酵素成分と酵素基質成分とが反応して、水性液体中の第1の溶存酸素濃度を、第1の溶存酸素濃度より実質的に低い第2の溶存酸素濃度へと低減できる。
【0133】
実施形態Wは、実施形態Vの培養デバイスであって、所定量の水性液体中で第1の有効量と第2の有効量が流体連通されてから60分以内に、第1の溶存酸素濃度から第2の溶存酸素濃度への低減が生じるように有効量の酵素成分と酵素基質成分とが選択される。
【0134】
実施形態Xは、実施形態S~Uのいずれか1つの培養デバイスであって、第1の基材と第2の基材との間に配置されたスペーサーを更に含み、このスペーサーが培養デバイス内の増殖領域の外周部を画定する。
【0135】
実施形態Yは、実施形態U~Xのいずれか1つの培養デバイスであって、微生物の増殖を促進する栄養素を更に含む。
【0136】
実施形態Zは、実施形態Yの培養デバイスであって、栄養素はクロストリジウム・ディフィシル微生物の増殖を促進する。
【0137】
実施形態AAは、実施形態Zの培養デバイスであって、有効量の選択的試剤を更に含み、増殖領域が所定量の水性液体によって再溶解されると、有効量の選択的試剤が培養デバイス中のクロストリジウム・ディフィシル微生物の発芽及び増殖を実質的に可能にし、有効量の選択的試剤が、大腸菌、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム・スポロゲネス、ウェルシュ菌、バクテロイデス・フラジリス、プレボテラ・メラニノゲニカ、フソバクテリウム種、及び/又はペプトストレプトコッカス・アネロビウスの増殖を実質的に阻害する。
【0138】
実施形態ABは、実施形態U~Yのいずれか1つの培養デバイスであって、栄養素がカンピロバクター微生物の増殖を促進する。
【0139】
実施形態ACは、実施形態AAの培養デバイスであって、有効量の選択的試剤を更に含み、増殖領域が所定量の水性液体によって再溶解されると、有効量の選択的試剤が培養デバイス中のカンピロバクター微生物の発芽及び増殖を実質的に可能にし、有効量の選択的試剤が、カンピロバクター微生物以外の増殖を実質的に阻害する。
【0140】
実施形態ADは、実施形態U~Yのいずれか1つの培養デバイスであって、栄養素が乳酸産出微生物の増殖を促進する。
【0141】
実施形態AEは、実施形態U~ADのいずれか1つの方法であって、指示薬試剤を更に含む。
【0142】
実施形態AFは、実施形態U~AEのいずれか1つの方法であって、有効量の還元剤を更に含む。
【0143】
実施形態AGは、実施形態U~AFのいずれか1つの培養デバイスであって、酵素成分がアスコルビン酸オキシダーゼを含む。
【0144】
実施形態AHは、実施形態AGの培養デバイスであって、酵素基質成分がL-アスコルビン酸又はその塩を含む。
【0145】
実施形態AIは、実施形態AHの培養デバイスであって、増殖領域中の第1のコーティングに配置されたL-アスコルビン酸又はその塩の第2の有効量が、約1.5マイクロモル/10cm2~約15マイクロモル/10cm2cmである。
【0146】
実施形態AJは、嫌気性微生物を培養する培養デバイスを作製する方法であって、本方法は、
第1のコーティングを第1の基材の一部に付着させることであって、第1のコーティングが、酵素を介在した酸素低減系の酵素成分を含む液体混合物を使用して形成されることと、
第1のコーティングを乾燥させることと、
第2のコーティングを第2の基材上に付着させることであって、第2のコーティングが酵素を介在した酸素低減系の酵素基質成分を含むことと、
第1のコーティングが第2のコーティングに対面するように、かつ第1の基材と第2の基材との間に配置された増殖領域が第1のコーティングの一部及び第2のコーティングの一部と重なり合うように、第1の基材を第2の基材と隣接して配置することと、を含む。
【0147】
実施形態AKは、実施形態AJの方法であって、液体が水を含む。
【0148】
実施形態ALは、実施形態AJの方法であって、液体が有機液体を含む。
【0149】
実施形態AMは、実施形態AJ~ALのうちいずれか1つの方法であって、液体混合物が冷水溶解性ゲル化剤を更に含む。
【0150】
実施形態ANは、実施形態AKに従属するような実施形態AMの方法であって、第1のコーティングを第1の基材の一部分に付着させることが、
所定量の液体中で酵素成分とゲル化剤とを混合させてコーティング混合物を形成することと、
コーティング混合物を第1の基材上にコーティングすることと、を含む。
【0151】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0152】
【0153】
実施例1.内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
図2及び
図3に示す培養デバイス10’と同様の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作成した。第1の基材は、5ミル(0.127mm)厚のポリエステルフィルム(MELINEX等級377二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム、DuPont Teijin(Chester,VA)から入手)からなるものであった。第2の基材は、透明ポリエステル(PET)フィルム(0.073mm厚)からなるものであった。栄養素(表2に一覧記載)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びグアーガムを含む粉末を脱イオン水中で攪拌し、3%(w/w)の栄養素、10%(w/v)のPVA、及び0.3%(w/v)のグアーガムを含む実質的に均一な混合物を得た。本混合物を米国特許第4,565,783号に記載されているように第1の基材上にナイフコーティングし、対流式オーブン内で210°F(98.9℃)で7~8分の間、乾燥させた。栄養素層は、0.150g/24in
2(1.0mg/cm
2)の目標コーティング重量(乾燥後)が得られる厚さにナイフコーティングする。乾燥後、ポリスチレン発泡体のスペーサー(約0.038cm厚、密度約19.3kg/m
3)を、第1の基材上の乾燥したコーティングに感圧接着剤(98重量%のイソオクチルアクリレートと2重量%のアクリル酸との共重合体)の薄層を介して接着させた。スペーサーは直径2インチ(5.1cm)の円形開口部を含み、この開口部は
図2に図示されたスペーサー内の孔を画定するものであった。第2の基材を両面接着テープを使用して片端部に沿って第1の基材に付着させ、このデバイスを
図2に示したものと同様の約3”(7.6cm)×4”(10.1cm)の長方形に切断した。
【0154】
【0155】
テトラゾリウム塩(2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)、最終濃度=20μg/mL)、L-アスコルビン酸(最終濃度=1mg/mL)、及びアスコルビン酸オキシダーゼ(最終濃度=4単位/mL)を水性希釈剤(バターフィールド緩衝液)に添加した。得られた溶液を濾過滅菌した。水中のクロストリジウム・スポロゲネスATCC#3584胞子保存株を水性希釈物で順次希釈して、ミリリットルあたりの細菌数が約10、100、及び1000である最終懸濁液を得た。各懸濁液の1ミリリットル部を使用して、3M PETRIFILM Aerobic Count(PAC)プレート(3M Company、St.Paul,MN)及び本実施例にしたがって作製した培養デバイスに接種した。PACプレートを、ガス発生袋(gas sachet)(Becton,Dickinson and Company、Franklin(Lakes,NJ)から入手したGASPAK EZ Anaerobe Container System Sachets)を使用して嫌気性雰囲気を生成した嫌気性チャンバ内で培養した。実施例1の培養デバイスを好気性(周囲)雰囲気を有するインキュベータ内で培養した。
【0156】
実施例1のPACプレート及び培養デバイスを37℃で24時間培養し、細菌コロニーの出現を観察した。PACプレートの全てと、実施例1にしたがって作製した培養デバイス全てに赤色のコロニーが観察された。各プレート及び培養デバイスで観察されたコロニー数は、各プレートに接種された対応する懸濁液内の概算の細菌数とほぼ整合性があった。
【0157】
実施例2~3.酸素指示薬を含む内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
3M PETRIFILM Aerobic Count(PAC)プレートを3M Company(St.Paul,MN)から入手した。プレートを開いて、表3に列挙した成分を含有する無菌バターフィールド緩衝液1ミリリットルを、製造業者のマニュアルにしたがって各プレートの増殖領域に付着させ、プレートを培養した。プレートを閉じる前に、少なくとも1つの酸素センサー(Planar Oxygen Sensor、5mm径、部品番号200000023、Presens Precision Sensing GmnH(Regensburg,DE)から入手)を水和された増殖領域に置き、上部フィルム(すなわち、第2の基材)を底部フィルム(すなわち、第1の基材)まで下げ、PACプレートの製造業者から提供されたスプレッダーの凹状側を使用して溶液をデバイス内の円形領域全体に広げた。
【0158】
【0159】
培養デバイスを閉じた後、販売業者から供給された酸素測定用ソフトウェア付属のOXY-MINI光ファイバーマイクロセンサー(Presens Precision Sensing)を使用して、センサーからの蛍光を観察した。培養デバイスを室温(約22℃)で培養した。培養デバイスを閉じてから30秒間隔でデータを収集した。結果を
図4に示す。
【0160】
図4は、酵素を介在した酸素低減系(すなわち、アスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸オキシダーゼ)を与えたプレートでは、デバイスの増殖領域内の酸素の濃度が、デバイスを閉じてから50分以内に、空気飽和した対照例の少なくとも約25%以下まで低減したことを示す。理論に束縛されるものではないが、酵素を介在した酸素低減系は、初期の段階で、実施例2及び3の培養デバイスに酸素が再侵入するよりも速い速度で、PETRIFILMプレートの接種に使用された液体から酸素を除去したと考えられる。しかし、時間の経過とともに、酸素の再侵入(例えば、ある程度の酸素透過性を持つPETRIFILMプレートのカバーシートからの拡散による)は、最終的に、酵素反応の消費速度を上回り、比較的高濃度の酸素がデバイスに戻る結果となった。理論に束縛されるものではないが、PVAが実施例3のデバイスへの酸素の再侵入を遅らせたと思われる。しかしながら、これらの実施例は、嫌気性及び/又は微好気性微生物の検出可能な増殖をなし得るだけの期間、培養デバイスから酸素を除去できることを示している。
【0161】
実施例4~6.PETの第2の基材及び実質的に乾燥した酵素を含む内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを、以下の点を除き、実施例1の記載と同様に作製した。1)第2の基材の内側表面を、基本的に米国特許第4,565,783号の実施例1に記載されているように接着剤層を用いて最初にコーティングした後、更に接着剤層をグアーガムで粉末コーティングした。2)液体コーティング混合物は、実施例1に記載した栄養素(30g/L)、粉末グアーガム(12g/L)、及び4000U/Lのアスコルビン酸オキシダーゼからなるものであった。
【0162】
得られた培養デバイスを、表4に示す各濃度のアスコルビン酸ナトリウムを含有する1ミリリットルのバターフィールド緩衝液を用いて水和した。培養デバイスの水和後、酸素センサーを培養デバイス内に置き、デバイスを閉じて、PACプレートの製造業者から提供されたスプレッダーの平面側を使用して、スペーサーによって画定される円形の増殖領域全体に液体を広げた。酸素センサーは実施例2~3に記載した各培養デバイスの増殖領域に置いた。培養デバイスの増殖領域の酸素飽和度を、実施例2~3に記載したように測定して記録した。
【0163】
【0164】
図5は、培養デバイス水和後の最初の50分間に記録された実施例4~6の酸素濃度を示す。
図5には示されていないが、データは約8日間にわたって収集した。実施例4~6それぞれの代表的な培養デバイスは、水和後、少なくとも約8日目まで、嫌気性を維持した(すなわち、増殖領域内に検出可能な酸素を有しなかった)。
【0165】
実施例7~12.実質的に乾燥した酵素及び種々の量の実質的に乾燥した酵素基質を含む内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
第2の基材上の接着剤層のコーティングに使用した粉末に、種々の量のアスコルビン酸ナトリウム粉末を含有させたことを除いて、実施例4~6と同様に培養デバイスを作製した。各粉末混合物中のアスコルビン酸ナトリウムの濃度を表5に示す。
【0166】
【0167】
培養デバイスを開いて、1ミリリットルの無菌バターフィールド緩衝液を実施例4~6に記載した各デバイスの増殖領域に付着させた。これらの実施例では、この水性液体にアスコルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸オキシダーゼを含有しなかった。液体をデバイスの増殖領域に付着させた後、酸素センサーを実施例2及び3に記載したように、各培養デバイスの増殖領域に置いた。培養デバイスの増殖領域の酸素飽和度を、実施例2~3に記載したように測定して記録した。水和された培養デバイスの増殖領域での初期(すなわち、培養デバイスを水和した後の最初の1~15分間)の酸素消費率を算出し、データを表6に示した。
【0168】
【表6】
1-この培養デバイスでは、水和後24時間以内にO
2が0%に到達しなかった。24時間以内に酸素の完全な除去は達成されなかったが、各培養デバイスはデバイスの増殖領域内での微好気性菌又は菌類の増殖をサポートし得る、安定した低酸素濃度を得た。
【0169】
表6に示すデータは、最大6%(w/w)のアスコルビン酸ナトリウムを有する粉末コーティングされた第2の基材を含む培養デバイスでは、酸素基質(アスコルビン酸ナトリウム)の量と水和された培養デバイス内の酸素消費率との間に、ほぼ比例関係があることを示している。更にデータから、実施例7及び実施例8のO2濃度が、それぞれ初期濃度の約50%と75%で平衡状態を示したことが明らかになった。
【0170】
実施例13.内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスで観察された酸素消費率にゲル化剤が与える効果
表7に示すように、(第1の基材に適用される)液体コーティング混合物の調製に使用したゲル化剤を表7に示すように変更した点を除いて、培養デバイスを実施例11(上記)にしたがって作製した。加えて、12g/Lの粉末グアーガムを用いて対照培養デバイスを作製したが、液体コーティング混合物中にアスコルビン酸オキシダーゼ(酵素)は一切含有しなかった。
【0171】
【0172】
培養デバイスを開いて、1ミリリットルの無菌バターフィールド緩衝液を実施例4~6に記載した各デバイスの増殖領域に付着させた。本実施例では、この水性液体にアスコルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸オキシダーゼを含有しなかった。液体をデバイスの増殖領域に付着させた後、酸素センサーを実施例2及び3に記載したように、各培養デバイスの増殖領域に置いた。実施例2及び3の記載と同様に、培養デバイスの増殖領域の酸素飽和度を測定して記録した。水和された培養デバイスの増殖領域の初期酸素消費率は、実施例7~12の記載と同様に算出した。算出された酸素消費率を表8に示す。
【0173】
【0174】
表8のデータは、アスコルビン酸オキシダーゼを含有しない培養デバイスでは酸素消費率が比較的低いように見えるものの、グアーガムのみが冷水溶解性ゲル化剤に含まれる培養デバイスでは酸素消費率が4倍超であったことを示している。PVA-56及びPVA-47を含有する培養デバイスは、アスコルビン酸オキシダーゼ酵素を欠いた培養デバイスよりもわずかに酸素消費率が高い。
【0175】
実施例14.酵素をコーティングして乾燥させた培養デバイスと、水和培地の成分として酵素を添加した培養デバイスとの酸素消費率の比較
一方のセットの培養デバイス(「セットE」)を実施例11に上述したように作製した。(第1の基材に適用される)液体コーティング混合物がアスコルビン酸オキシダーゼを含まない点を除き、同様に別のセット(「セットF」)を作製した。
【0176】
培養デバイスを開いて、1ミリリットルの無菌バターフィールド緩衝液を実施例4~6に記載した各デバイスの増殖領域に付着させた。本実施例では、「セットE」培養デバイスの接種に使用した水性液体に、アスコルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸オキシダーゼを含有しなかった。ただし、「セットF」培養デバイスの接種に使用した水性液体には、アスコルビン酸オキシダーゼ(濃度4単位/mL)を含有した。液体をデバイスの増殖領域に付着させた後、酸素センサーを実施例2及び3に記載したように、各培養デバイスの増殖領域に置いた。実施例2及び3の記載と同様に、培養デバイスの増殖領域の酸素飽和度を測定して記録した。水和された培養デバイスの増殖領域の初期酸素消費率は、実施例7~12の記載と同様に算出した。算出された酸素消費率を表9に示す。
【0177】
【0178】
表9のデータは、酵素(アスコルビン酸オキシダーゼ)及び酵素基質(アスコルビン酸ナトリウム)をデバイス内に実質的な乾燥形態でコーティングすることができ、かつ好適な液体と接触させると、再水和して酸素消費反応に関与できることを示している。
【0179】
実施例15~16.内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス及び使用方法
以下の点を除き、上記実施例12にしたがって内蔵型嫌気培養デバイスを作製した。1)実施例15及び16のいずれも、液体コーティング混合物に表10に示す成分を含有した。2)実施例16では、第2の基材のコーティングに使用した接着剤(乾燥したコーティング重量は0.230g/24in2(1.49mg/cm2))は、0.04%(w/w)のALDOL 515アセテートを含有していた。3)実施例15及び16のいずれでも、第1の基材に適用された液体コーティング混合物のコーティング重量(乾燥後)は、約0.257g/24in2(1.66mg/cm2)であった。
【0180】
水中のクロストリジウム・スポロゲネス胞子保存株ATCC#3584をバターフィールド緩衝液で順次希釈して、1ミリリットルあたりの細菌数が約10~約100の最終懸濁液を得た。各懸濁液からの1ミリリットル分取を、個々の培養デバイスの増殖領域に置き、PACプレートの製造業者から提供されたスプレッダーの平面側を使用して、懸濁液を増殖領域全体に広げた。増殖対照として、各懸濁液からの1ミリリットル分取を、個々のPACプレートの接種にも使用した。懸濁液を、PACプレートの製造業者から提供されたスプレッダーの凹状側を使用して、増殖領域の円形約5cm以内に広げた。実施例15及び16の培養デバイスを、37℃の周囲空気中で約24時間培養した。接種済みPACプレートを嫌気ジャーに入れ、37℃で約24時間培養した。
【0181】
【0182】
培養後、ALDOL 515を含有する培養デバイス(実施例16)を紫外線下で観察した。デバイスの増殖領域内に、明るく蛍光するクロストリジウム・スポロゲネス菌のコロニーを観察した。
【0183】
培養後、Na2SO3を含有する接種済み培養デバイス全て(実施例16)の増殖領域が、コロニーの周囲に灰色の沈殿物を持つ特徴的な灰黒色のコロニーを有した。これはクロストリジウム・スポロゲネス菌による硫化水素の増殖及び産出を示す。加えて、灰黒色のコロニー近傍に気泡も観察されたが、これは更にガス状の硫化水素の産出を示す。
【0184】
培養後、接種済み増殖対照例は全て、PACプレートの増殖領域内で増殖しているクロストリジウム・スポロゲネスの特徴的な赤色のコロニーを有した。実施例15及び実施例16の培養デバイスで観察されたコロニー数は、嫌気培養されたPACプレート内で観察されたコロニー数の約0.5log CFU内であった。
【0185】
実施例17.内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス開口後の嫌気性環境の再生
以下の点を除き、実施例12にしたがって内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。1)粉末栄養素混合物(実施例1に記載)を使用して液体コーティング混合物を作成する代わりに、無水のラクトバチルスMRS栄養素(110g/L)を使用した。2)第2の基材のコーティングに使用した接着剤(乾燥時のコーティング重量は0.210g/24in2(1.36mg/cm2))に、0.1375%(w/w)の2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライドを含有していた。3)液体コーティング混合物中のグアーガムの濃度を、12g/Lではなく14g/Lにした。
【0186】
2ミリリットルのバターフィールド緩衝液を2つの培養デバイスの増殖領域に入れた。4つの酸素センサーを第1の培養デバイス(「G」)の増殖領域内に置き、両方の培養デバイスを閉じ、実施例2に記載したように、両方の培養デバイスの増殖領域全体に液体を広げた。両方の培養デバイスを室温(約22℃)の周囲酸素レベル環境に置き、実施例2に記載したように培養デバイスGの増殖領域内の酸素の濃度を測定して記録した。45分経過後、1分未満の間、第2の培養デバイス(「H」)を開き、4つの酸素センサーを増殖領域内に置いた。培養デバイスHを再び閉じて(すなわち、第1及び第2の基材を、その間に挟まれた水和された増殖領域と互いが接触するように戻して)、実施例2に記載したように増殖領域内の酸素の濃度を測定して記録した。酸素センサーを中に置いて再び閉じたときに、培養デバイスH中に気泡が混入しないように注意した。両方の培養デバイスの各センサーの酸素濃度データの典型的な部分を表11に示す。
【0187】
【表11】
1-培養デバイスHの時間「0」は、中に配置された酸素センサーを有するデバイスを再び閉じた直後に発生したことを意味する。理論に束縛されるものではないが、プレートを開いたときの培養デバイスHの酸素含有量は40%未満であった(培養デバイスGの40分時点を参照)が、培養デバイスが再び閉じるまでの短時間で酸素濃度が増加した可能性が高いと想定される。
【0188】
データは、デバイスが緩衝液で水和されてから40分以内に酸素の半分超が培養デバイスから除去され、約100分以内(デバイスGのセンサーからのデータを参照)に全酸素が除去されたことを示す。更にデータから、水和後45分で培養デバイスを開くと、増殖領域内の酸素濃度がデバイスの初期酸素量の約75%まで再び増加していることがわかる。しかし、開いた培養デバイスを再び閉じた後、酵素を介在した酸素低減系が、増殖領域から酸素を除去し続け、培養デバイス内の嫌気性環境を再構築できることをデータは更に示している。したがって、酸素低減系の活性後は、(例えば、培地上に接種材料を画線するため、又は試料材料を含むメンブレンフィルターを培地に配置するために)酸素存在下で培養デバイスを開いても、嫌気性環境を再構築することができる。
【0189】
実施例18.内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの画線平板培養法での使用
実施例17にしたがって、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。同一の栄養素培地組成物を有するが、酸素低減系の成分を欠く対照デバイスも作製した。嫌気性環境内のラクトバチルスMRSブロス中で24~48時間、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・パラカゼイ、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ダムノーサス、及びペディオコッカス・デクストリニクスを個別に増殖させることにより、嫌気性微生物の培養液を調製した。培養デバイスを実施例17に記載されたバターフィールド緩衝液2ミリリットルで水和した。水和後約30分で、個々の水和済み培養デバイスを開き、増殖領域内の培地を一方の培養液を白金耳量(loopful)で画線接種した。気泡が混入しないように注意して培養デバイスを再び閉じ、37℃で最大7日間、好気的に培養した。対照デバイスを同様に水和し、白金耳量の培養液で画線接種した。対照デバイスを嫌気チャンバ内で37℃で培養した。24~48時間の培養後、培養デバイス内でコロニーを通常通り観察した。
【0190】
培養後、全培養デバイス及び全対照デバイスの増殖領域に、各微生物のコロニーが典型的な画線平板の増殖パターンで観察された。
【0191】
実施例19.内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスのメンブレンフィルター培養法での使用
実施例17にしたがって、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。同一の栄養素培地組成物を有するが、酸素低減系の成分を欠く対照デバイスも作製した。実施例18で調製した嫌気性微生物の微生物培養液を無菌緩衝液で、ミリリットルあたり約10培養物形成単位(culture-forming units)(CFU)まで順次希釈した。実施例17に記載されたように、2ミリリットルのバターフィールド緩衝液で培養デバイスを水和した。
【0192】
約10mLの希釈培養液を個々の無菌メンブレンフィルター(Pall Corporation(Port Washington,NY)から入手した0.2μm SUPOREメンブレンフィルター)を通して濾過した。水和後約30分で個々の水和済み培養デバイスを開き、希釈済み培養液を濾過したフィルターのうち1つを増殖領域内の培地に置いた。培養デバイス内のメンブレンフィルターと培地との間に気泡が混入しないように注意した。気泡が混入しないように注意して培養デバイスを再び閉じ、37℃で最大7日間、好気的に培養した。対照デバイスを同様に水和し、希釈済み培養液を濾過したフィルターメンブレンのうちの1つを接種した。対照デバイスを嫌気チャンバ内で37℃で培養した。24~48時間の培養後、培養デバイス内でコロニーを通常通り観察した。
【0193】
培養後、各微生物のコロニーが、全培養デバイス及び全対照デバイスの増殖領域に付着させたメンブレンフィルター上で観察された。フィルター上の各生物のコロニー数は、対照デバイスと比較したとき、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスについても同様であった。
【0194】
実施例20.クロストリジウム・ディフィシルを培養する選択的培地を含む内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを、以下の点を除き、実施例1の記載と同様に作製した。1)第2の基材の内側表面を、基本的に米国特許第4,565,783号の実施例1に記載されているように、接着剤層を用いて最初にコーティングした後、更に接着剤層を90%(w/w)のグアーガム及び10%(w/w)のアスコルビン酸ナトリウムを含む混合物を用いて粉末コーティングした。2)第2の基材のコーティングに使用された接着剤は、接着剤1グラムあたり0.4mgのALDOL 515アセテートを含有し、1.84mg/cm2のコーティング重量で第2の基材上にコーティングされた(コーティング重量は115°F(46℃)で5分間、コーティングを乾燥させた後に測定した)。3)液体コーティング混合物は、表12に列挙した成分からなるものであった。4)液体コーティング混合物は、第1の基材上にコーティング重量2.00mg/cm2でナイフコーティングした(コーティング重量は210°F(98.9℃)で8分間、コーティングを乾燥させた後に測定した)。
【0195】
液体コーティング混合物がセフォキシチン又はサイクロセリンを含まない点を除いて、「対照」デバイスを同様に作製した。デバイス全てに、実施例1に記載したような発泡体のスペーサーを組み込んだ。
【0196】
【0197】
クロストリジウム・ディフィシルATCC 43598、大腸菌ATCC 25922、黄色ブドウ球菌ATCC 43598、及びクロストリジウム・スポロゲネスの個々の懸濁液をバターフィールド緩衝液にて調製した。懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈して、1ミリリットルあたり約10コロニー形成単位(CFU)及び1ミリリットルあたり100CFUを含有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。各懸濁液1ミリリットルを使用して、本実施例にしたがって作製された個々の培養デバイスに接種した。培養デバイスは、第2の基材を持ち上げて増殖領域を露出させ、第1の基材の増殖領域に1ミリリットルの懸濁液を滴下し、第2の基材を懸濁液及び発泡体のスペーサーと接触するまで静かに下ろし、閉じたデバイス上で平坦なプラスチック製スプレッダーを静かに押して発泡体のスペーサーの開口部全体に懸濁液を広げることにより接種した。
【0198】
全ての培養デバイスを37℃のインキュベータ内に置き、好気性環境内で約48時間培養させた。インキュベータからデバイスを取り出して、緑色光(すなわち、約530nmのピーク放出波長を有するLEDからの光)を照光しながら検査し、微生物のコロニーが存在するかどうかを判定した(コロニーを取り巻く蛍光性ハローによって示される。これはコロニー内の微生物によってALDOL 515アセテートが加水分解されたことを表す)。590nm以上をカットオフする高域透過性の赤色フィルターを使用して、蛍光性のコロニーを観察及び/又は撮像した。定性的な結果を表13に示す。この結果は、試験された微生物の全てが対照デバイス内で増殖できることを示している。これは、デバイスが条件的嫌気性微生物(例えば、大腸菌及び黄色ブドウ球菌)の増殖、並びに偏性嫌気性微生物(例えば、クロストリジウム・スポロゲネス及びクロストリジウム・ディフィシル)の増殖をサポートしたことを示す。しかし、セフォキシチン及びサイクロセリンを含有したデバイス内では、クロストリジウム・ディフィシル微生物のみが増殖でき、このデバイスがクロストリジウム・ディフィシル微生物に対して選択性を有することを示す。
【0199】
【0200】
実施例21.3種類の培養環境内でのクロストリジウム・ディフィシル増殖の定量的比較
実施例20に記載したように、セフォキシチン及びサイクロセリンを含有する内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作成した。
【0201】
2種類の寒天培地(カタログ番号R01040の嫌気性血液寒天平板、カタログ番号R01266の馬血液を含むサイクロセリン・セフォキシチン・フルクトース寒天平板)をRemel Microbiology Products(Lenexa,KS)から入手した。
【0202】
バターフィールド緩衝液にて胞子(クロストリジウム・ディフィシルATCC 43598)の懸濁液を作成した。懸濁液の第1の部(すなわち、熱処理(HT)部)を20分間80℃に維持し、第2の部(すなわち、非処理(NT)部)を周囲温度に維持した。
【0203】
HT及びNTの懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈し、希釈した懸濁液の100ミリリットル分取を用い、各種類の寒天平板の表面に無菌スプレッダーを使用して接種した。接種後、活性化すると嫌気性環境を生成する袋を入れた嫌気ジャーに寒天平板を置いた。嫌気ジャーを密閉して、好気性雰囲気を有する37℃のインキュベータに入れた。
【0204】
希釈用マイクロピペットを使用して、希釈済み懸濁液の100マイクロリットル分取を1ミリリットル容量に希釈し、これをセフォキシチン及びサイクロセリンを含む内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの接種に使用した。接種後、培養デバイスを37℃の好気性雰囲気であるインキュベータに入れた。
【0205】
接種済みの寒天ペトリプレート及び接種済みの内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス全てを48時間培養した。培養後、各プレート又はデバイス内の細菌コロニーを計数した。コロニー数を希釈倍数で乗算し、元の懸濁液中の胞子数を算出した。算出データを表14に示す。
【0206】
【表14】
1-内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの記録結果は、2つの同一培養デバイスから得たコロニー数の平均である。
【0207】
この結果は、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス内のクロストリジウム・ディフィシルコロニーの回復及び増殖が、嫌気性雰囲気内で培養されたサイクロセリン・セフォキシチン・フルクトース寒天平板でのクロストリジウム・ディフィシルコロニーの回復及び増殖と同等であったことを示す。加えて、この結果は、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス内のクロストリジウム・ディフィシルコロニーの回復及び増殖が、嫌気性雰囲気内で培養された嫌気性血液寒天平板でのクロストリジウム・ディフィシルコロニーの回復及び増殖を上回っていたことを示す。
【0208】
実施例22.乳酸産出細菌を培養するための内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
図2及び
図3に示す培養デバイス10’と同様の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作成した。第1の基材は、5ミル(0.127mm)厚のポリエステルフィルム(MELINEX等級377二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム、DuPont Teijin(Chester,VA)から入手)からなるものであった。表15に列挙した成分を脱イオン水(1L)に添加し、混合物を攪拌した。次いで、攪拌した混合物に水酸化ナトリウム(1N)を添加して、pHを約6.5に調整した。次に、グアーガム(14g)を添加して、実質的に均一な混和物を得るまで攪拌を続けた。本混合物を米国特許第4,565,783号に記載されているように第1の基材上にナイフコーティングし、対流式オーブン内で210°F(98.9℃)で7~8分の間、乾燥させた。コーティング重量(乾燥後)は、0.4g/24in
2(2.6mg/cm
2)であった。乾燥後、ポリスチレン発泡体のスペーサー(約0.038cm厚、密度約19.3kg/m
3)を、第1の基材上の乾燥したコーティングに感圧接着剤(98重量%のイソオクチルアクリレートと2重量%のアクリル酸との共重合体)の薄層を介して接着させた。スペーサーは、
図2に図示した2インチ(5.1cm)径の円形開口部を含んでいた。円形開口部はデバイスの増殖領域を画定するものであった。
【0209】
第2の基材は、透明ポリエステル(PET)フィルム(0.073mm厚)からなるものであった。第2の基材の内側表面を、実施例4~6の記載と同じ第2の基材の接着剤にTTCを含有する第1のコーティング配合物を用いてコーティングした。この構造物の乾燥後のコーティング重量は、0.2g/24in2(1.3mg/cm2)であり、乾燥後のコーティング中のTTC濃度は、約0.02mg/in2(0.003mg/cm2)であった。次に、第2の基材の接着剤層を、(0.01%のCAB-O-SIL溶融シリカを事前に混合した)グアー(90% w/w)とアスコルビン酸ナトリウム(10% w/w)との均一混合物で粉末コーティングした。
【0210】
第2の基材を両面接着テープを使用して片端部に沿って第1の基材に付着させ、作成したデバイスを
図2に示したものと同様に円形開口部がデバイスのほぼ中心に位置するように約3”(7.6cm)×4”(10.1cm)の長方形に切断した。第2の基材は、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイス用のカバーシートとしての役割を果たした。
【0211】
内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスに、細菌株セットA(表16)から選択した単一の微生物試料を接種した。各試料の懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈して、約100CFU/mL(希釈液A)、1000CFU/mL(希釈液B)、及び10000CFU/mL(希釈液C)を含有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。各懸濁液1ミリリットルを使用して、本実施例にしたがって作製された個々の培養デバイスに接種した。培養デバイスは、第2の基材を持ち上げて増殖領域を露出させ、第1の基材の増殖領域に1ミリリットルの懸濁液を滴下し、第2の基材を懸濁液及び発泡体のスペーサーと接触するまで静かに下ろし、閉じたデバイス上で平坦なプラスチック製スプレッダーを静かに押して発泡体のスペーサーの開口部全体に懸濁液を広げることにより接種した。
【0212】
接種後、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを32℃の好気性インキュベータ内で60時間培養した。24時間及び60時間経過時に、各培養デバイス内の赤色の細菌コロニーを目視検査により計数した。結果を表17及び18に示す。
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
実施例23.乳酸産出細菌を培養するための内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
表15に列挙した成分を脱イオン水(1L)に添加して混合物を攪拌した後、更に攪拌した混合物に水酸化ナトリウム(1N)を添加して、pHを約5.4(実施例22ではpH6.5)に調整した点を除いて、実施例22の記載と同一の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。
【0218】
内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスに、細菌株セットA(表16)から選択した単一の微生物試料を接種した。各試料の懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈して、約100CFU/mL(希釈液A)、10CFU/mL(希釈液D)、及び1CFU/mL(希釈液E)を含有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。各懸濁液1ミリリットルを使用して、本実施例にしたがって作製された個々の培養デバイスに接種した。培養デバイスは、第2の基材を持ち上げて増殖領域を露出させ、第1の基材の増殖領域に1ミリリットルの懸濁液を滴下し、第2の基材を懸濁液及び発泡体のスペーサーと接触するまで静かに下ろし、閉じたデバイス上で平坦なプラスチック製スプレッダーを静かに押して発泡体のスペーサーの開口部全体に懸濁液を広げることにより接種した。
【0219】
接種後、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを32℃の好気性インキュベータ内で72時間培養した。72時間経過時に、赤色の細菌コロニーの存在(陽性)又は赤色の細菌コロニーの非存在(陰性)について、培養デバイスを評価した。ロイコノストック・メセンテロイデス亜種デキストラニカム及びロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデスを接種したデバイスについては、コロニーに付随する気泡も観察した。結果を表19に示す。
【0220】
【0221】
実施例24.乳酸産出細菌を培養するための内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
表15に列挙したブロモクレゾールグリーンpH指示薬をクロロフェノールレッド(0.5g、Sigma-Aldrich製)に置き換えた点を除いて、実施例22の記載と同一の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスに、ロイコノストック・メセンテロイデス亜種デキストラニカム又はロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデスのうちいずれかの単一微生物試料を接種した。各試料の懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈して、約100CFU/mLを含有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。実施例22に記載したように接種を実施し、デバイスを32℃の好気性インキュベータ内で48時間培養した。培養後に、培養デバイスの細菌コロニーについて目視で評価した。気泡を伴うコロニー(赤色)が全ての培養デバイス内に認められた。
【0222】
実施例25.乳酸産出細菌を培養するための内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
表15に列挙したブロモクレゾールグリーンpH指示薬をクロロフェノールレッド(0.25g)に置き換えた点を除いて、実施例24の記載と同一の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスに、ロイコノストック・メセンテロイデス亜種デキストラニカム又はロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデスのうちいずれかの単一微生物試料を接種した。各試料の懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈して、約100CFU/mLを含有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。実施例22に記載したように接種を実施し、デバイスを32℃の好気性インキュベータ内で48時間培養した。培養後に、培養デバイスの細菌コロニーについて目視で評価した。気泡を伴うコロニー(赤色)が全ての培養デバイス内に認められた。
【0223】
実施例26.乳酸産出細菌を培養するための内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
次の2点を除いて、実施例22の記載と同一の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。まず、表15に列挙したブロモクレゾールグリーンpH指示薬をクロロフェノールレッド(0.5g)に置き換えた。次に、表15に列挙した成分を脱イオン水(1L)に添加して混合物を攪拌した後、攪拌された混合物に水酸化ナトリウム(1N)を更に添加して、pHを約5.4(実施例22ではpH 6.5)に調整した。内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスに、ロイコノストック・メセンテロイデス亜種デキストラニカム又はロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデスのうちいずれかの単一微生物試料を接種した。各試料の懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈して、約100CFU/mLを含有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。実施例22に記載したように接種を実施し、次いでデバイスを32℃の好気性インキュベータ内で48時間培養した。培養後に、培養デバイスの細菌コロニーについて目視で評価した。気泡を伴うコロニー(赤色)が全ての培養デバイス内に認められた。
【0224】
実施例27.乳酸産出細菌を培養するための内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
次の2点を除いて、実施例22の記載と同一の内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを作製した。まず、表15に列挙したブロモクレゾールグリーンpH指示薬をクロロフェノールレッド(0.25g)に置き換えた。次に、表15に列挙した成分を脱イオン水(1L)に添加して混合物を攪拌した後、攪拌された混合物に水酸化ナトリウム(1N)を更に添加して、pHを約5.4(実施例22ではpH 6.5)に調整した。内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスに、ロイコノストック・メセンテロイデス亜種デキストラニカム又はロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデスのうちいずれかの単一微生物試料を接種した。各試料の懸濁液をバターフィールド緩衝液で希釈して、約100CFU/mLを含有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。実施例22に記載したように接種を実施し、デバイスを32℃の好気性インキュベータ内で48時間培養した。培養後に、培養デバイスの細菌コロニーについて目視で評価した。気泡を伴うコロニー(赤色)が全ての培養デバイス内に認められた。
【0225】
実施例28.カンピロバクター菌を培養するための内蔵型微好気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
図2及び
図3に示す培養デバイス10’と同様の内蔵型微好気性環境生成培養デバイスを作成した。第1の基材は、5ミル(0.127mm)厚のポリエステルフィルム(MELINEX等級377二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム、DuPont Teijin(Chester,VA)から入手)からなるものであった。表20に列挙した成分を脱イオン水(1L)に添加し、混合物を攪拌した。次に、グアーガム(14g)を添加して、実質的に均一な混和物を得るまで攪拌を続けた。本混合物を米国特許第4,565,783号に記載されているように第1の基材上にナイフコーティングし、対流式オーブン内で210°F(98.9℃)で7~8分の間、乾燥させた。コーティング重量(乾燥後)は、0.25g/24in
2(1.6mg/cm
2)であった。乾燥後、ポリスチレン発泡体のスペーサー(約0.038cm厚、密度約19.3kg/m
3)を、第1の基材上の乾燥したコーティングに感圧接着剤(98重量%のイソオクチルアクリレートと2重量%のアクリル酸との共重合体)の薄層を介して接着させた。スペーサーは、
図2に図示した2インチ(5.1cm)径の円形開口部を含んでいた。円形開口部はデバイスの増殖領域を画定するものであった。
【0226】
第2の基材は、透明ポリエステル(PET)フィルム(0.073mm厚)からなるものであった。第2の基材の内側表面を、実施例4~6の記載と同じ第2の基材の接着剤にTTCを含有する第1のコーティング配合物を用いてコーティングした。この構造物の乾燥後のコーティング重量は、0.2g/24in2(1.3mg/cm2)であり、乾燥後のコーティング中のTTC濃度は、約0.02mg/in2(0.003mg/cm2)であった。次に、第2の基材の接着剤層を、(0.01%のCAB-O-SIL溶融シリカと事前に混合した)グアー(97.5% w/w)とアスコルビン酸ナトリウム(2.5% w/w)との均一混合物で粉末コーティングした。
【0227】
第2の基材を両面接着テープを使用して片端部に沿って第1の基材に付着させ、作成したデバイスを
図2に示したものと同様に円形開口部がデバイスのほぼ中心に位置するように約3”(7.6cm)×4”(10.1cm)の長方形に切断した。第2の基材は、内蔵型微好気性環境生成培養デバイス用のカバーシートとしての役割を果たした。
【0228】
カンピロバクター・ジェジュニATCC 29428及びカンピロバクター・ジェジュニATCC 33291の個々の懸濁液をバターフィールド緩衝液にて調製した。懸濁液をバターフィールド緩衝液で順次希釈して、約10~100のCFU数となる濃度を有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。各懸濁液1ミリリットルを使用して、本実施例にしたがって作製された個々の培養デバイスに接種した。培養デバイスは、第2の基材を持ち上げて増殖領域を露出させ、第1の基材の増殖領域に1ミリリットルの懸濁液を滴下し、第2の基材を懸濁液及び発泡体のスペーサーと接触するまで静かに下ろし、閉じたデバイス上で平坦なプラスチック製スプレッダーを静かに押して発泡体のスペーサーの開口部全体に懸濁液を広げることにより接種した。
【0229】
接種後、内蔵型嫌気性環境生成培養デバイスを41.5℃の好気性インキュベータ内で48時間培養した。接種に続いて、各培養デバイス内の赤色の細菌コロニーを目視検査により計数した。計数したコロニー数(複製2つの平均値)を希釈倍数で乗算し、元の懸濁液での細胞数(CFU/mL)を算出した。算出データを表21に示す。
【0230】
比較参照として、カンピロバクター・ジェジュニATCC 29428及びカンピロバクター・ジェジュニATCC 33291の個々の懸濁液を寒天平板にも接種した。寒天平板をカンピロバクター血液無添加選択培地(CBFSM)(カタログ番号C03-102、Alpha Biosciences(Baltimore,MD)製)を使用して調製した。CBFSM(44.5g)を1Lの精製水にて逐次懸濁させ、1分間沸騰させて培地を溶解させた。121℃で15分間、高温蒸気滅菌し、45~50℃まで冷却した。次に、冷却した培地(15~20mL)を無菌ペトリ皿に注入した。順次希釈された試料のうち100マイクロリットル分取を寒天平板に塗抹した。接種済みプレートを、培養期間を通じて微好気性雰囲気を与えるガス発生袋(Becton,Dickinson and Company(Franklin Lakes,NJ)から入手したGASPAK EZ Campy Container System Sachets)と共に嫌気性チャンバ内に置いた。上記の条件下で、寒天平板を41.5℃で48時間培養した。各寒天平板上の計数したコロニー数(複製2つの平均値)を希釈倍数で乗算し、元の懸濁液での細胞数(CFU/mL)を算出した。算出データを表21に示す。
【0231】
【0232】
【0233】
実施例29.カンピロバクター菌を培養するための内蔵型微好気性環境生成培養デバイスの作製及び使用
(表20に示す成分の代わりに)表22に列挙した成分を使用して、第1の基材上のコーティングを調製し、乾燥後のコーティング重量が0.26g/24in2(1.7mg/cm2)であったことを除いて、実施例28の記載と同一の内蔵型微好気性環境生成培養デバイスを作製した。
【0234】
カンピロバクター・ジェジュニATCC 29428、カンピロバクター・ジェジュニATCC 33291、カンピロバクター・コリATCC 33559、及びカンピロバクター・コリATCC 43476の個々の懸濁液をバターフィールド緩衝液中で調製した。懸濁液をバターフィールド緩衝液で順次希釈して、約10~100のCFU数となる濃度を有する(生物個体の)最終懸濁液を得た。各懸濁液1ミリリットルを使用して、実施例28にしたがって作製された個々の培養デバイスを培養した。培養デバイスは、第2の基材を持ち上げて増殖領域を露出させ、第1の基材の増殖領域に1ミリリットルの懸濁液を滴下し、第2の基材を懸濁液及び発泡体のスペーサーと接触するまで静かに下ろし、閉じたデバイス上で平坦なプラスチック製スプレッダーを静かに押して発泡体のスペーサーの開口部全体に懸濁液を広げることにより接種した。
【0235】
接種後、内蔵型微好気性環境生成培養デバイスを41.5℃の好気性インキュベータ内で48時間培養した。接種に続いて、各培養デバイス内の赤色の細菌コロニーを目視検査により計数した。計数したコロニー数(複製2つの平均値)を希釈倍数で乗算し、元の懸濁液での細胞数(CFU/mL)を算出した。算出データを表23に示す。
【0236】
比較参照として、CBFSM寒天平板(上記記載)に、カンピロバクター・ジェジュニATCC 29428、カンピロバクター・ジェジュニATCC 33291、カンピロバクター・コリATCC 33559、及びカンピロバクター・コリATCC 43476の懸濁液を接種して(プレートあたり1微生物)、実施例28に記載した方法にしたがって処理した。各寒天平板上の計数したコロニー数(複製2つの平均値)を希釈倍数で乗算し、元の懸濁液での細胞数(CFU/mL)を算出した。算出データを表23に示す。
【0237】
【0238】
【0239】
本明細書に引用する全ての特許、特許出願、及び公開公報、並びに電子的に入手可能な資料の開示内容の全体を、参照により援用する。本出願の開示内容と参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文書の開示内容(複数可)との間になんらかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示内容を優先するものとする。上術の詳細な説明及び実施例はあくまで理解を助けるために示したものである。したがってこれらによって不要な限定をするものと理解されるべきではない。本発明は、図示及び説明された厳密な詳細に限定されるものではなく、当業者には明らかな変形例は特許請求の範囲によって定義された本発明に含まれるものとする。
【0240】
全ての見出しは読者の便宜のためのものであって、特に断らない限り、見出しの後に続く文面の意味を限定するために使用されるものではない。
【0241】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な改変を行うことが可能である。これら及び他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。