(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置およびワーク・サポート・テーブル
(51)【国際特許分類】
B23K 37/04 20060101AFI20240620BHJP
B23K 9/32 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B23K37/04 A
B23K9/32 E
(21)【出願番号】P 2020048932
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高津 正人
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 隼
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-139714(JP,A)
【文献】登録実用新案第3069655(JP,U)
【文献】登録実用新案第3135029(JP,U)
【文献】特開平11-179584(JP,A)
【文献】特開平1-202366(JP,A)
【文献】特開平11-192577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/04
B23K 9/00 - 9/32
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱加工対象のワークを支持するためにワーク・サポート・テーブル上に設置された、炭素繊維で形成された長形のワーク支持体に、衝撃または振動を加える第1駆動部を備えるスパッタ除去装置であって、
前記ワーク・サポート・テーブルは、前記ワーク支持体の両短辺をそれぞれ支持する2個の端部支持台を有し、前記端部支持台の少なくとも一方は、前記ワーク・サポート・テーブル上面に平行な方向に動作可能になるように、ワーク・サポート・テーブル上に設置されたスライドガイド上に設置され、
前記第1駆動部は、動作可能に設置された端部支持台を動作させることで、前記ワーク支持体に衝撃または振動を加えることを特徴とする熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置。
【請求項2】
熱加工対象のワークを支持するためにワーク・サポート・テーブル上に設置された、炭素繊維で形成された長形のワーク支持体に、衝撃または振動を加える第2駆動部を備えるスパッタ除去装置であって、
前記ワーク・サポート・テーブルは、前記ワーク支持体の両短辺をそれぞれ支持する2個の端部支持台と、前記ワーク支持体の長辺方向の中間部を支持する中間部支持台と、前記2個の端部支持台または前記中間部支持台の少なくともいずれかと前記ワーク・サポート・テーブルとの間に設置された振動子とを有し、
前記第2駆動部は、前記振動子を振動させることで、前記ワーク支持体に衝撃または振動を加えることを特徴とする熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置。
【請求項3】
前記ワーク・サポート・テーブルは、前記ワーク支持体の長辺方向の中間部を
固定して支持する中間部支持台を有することを特徴とする、
請求項1または2に記載の熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置。
【請求項4】
前記ワーク・サポート・テーブルは、前記ワーク支持体の長辺方向の中間部を支持する中間部支持台と、
前記中間部支持台を動作させることで、前記ワーク支持体に衝撃または振動を加える第3駆動部とをさらに備えることを特徴とする、
請求項1または2に記載の熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置。
【請求項5】
熱加工対象のワークを支持する、炭素繊維で形成された長形のワーク支持体の両短辺をそれぞれ支持する2個の端部支持台と、前記ワーク支持体の長辺方向の中間部を支持する中間部支持台と、前記中間部支持台を動作させることで、前記ワーク支持体に衝撃または振動を加える駆動部とを有し、
前記駆動部は、前記ワーク支持体上に熱加工対象のワークを搬入または搬出する際には、前記ワーク支持体が直線状態になるように前記中間部支持台の位置を調整し、ワークの熱加工作業を行う際には、前記ワーク支持体が湾曲した状態になるように前記中間部支持台の位置を調整する、熱加工機のワーク・サポート・テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置およびワーク・サポート・テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工機またはプラズマ加工機等の熱加工機のワーク・サポート・テーブルには、加工対象の板金(ワーク)を下面から支持する支持部材として、複数の板状のワーク支持体(ワーク・サポート・メンバ)が設けられている。この複数のワーク支持体は、板面が床面に垂直な状態で、ワーク・サポート・テーブルに所定間隔で並べて配列されている。
【0003】
上述したワーク支持体の一形態として、金属製で、上端部に連続した三角形状の突起が形成されたものがある。このようなワーク支持体が複数配列されたワーク・サポート・テーブルに加工対象のワークを載せると、各ワーク支持体上端部の突起がワークの下面に当接し、ワークが点支持される。
【0004】
ワークが点支持されることで、ワークとのワーク支持体との当接面積が最小に抑えられ、熱加工によるワークとワーク支持体との溶着、ワーク支持体の破損等を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ワークとワーク支持体とは共に金属で形成されているため、当接面積が抑えられても、熱加工によるワーク支持体の突起の消耗や損傷を完全に回避することはできない。
【0007】
また、ワーク支持体が金属で形成されると、熱加工で発生したスパッタがワーク支持体に溶着してしまう。これを除去するには、溶着したスパッタを剥ぎ取ったり削り取ったりする作業が必要であり、多大な労力を要するという問題があった。
【0008】
本発明は、炭素繊維で形成された熱加工機のワーク支持体に封着したスパッタを除去するための、熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置およびワーク・サポート・テーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱加工対象のワークを支持するためにワーク・サポート・テーブル上に設置された、炭素繊維で形成された長形のワーク支持体に、衝撃または振動を加える駆動部を備えることを特徴とするワーク支持体のスパッタ除去装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、熱加工対象のワークを支持する、炭素繊維で形成された長形のワーク支持体の両短辺をそれぞれ支持する2個の端部支持台を有し、前記端部支持台の少なくとも一方は、床面に平行または垂直な方向に動作可能に設置されることを特徴とする熱加工機のワーク・サポート・テーブルを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炭素繊維で形成された熱加工機のワーク支持体に封着したスパッタを除去するための、熱加工機のワーク支持体のスパッタ除去装置およびワーク・サポート・テーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態におけるスパッタ除去装置を用いるレーザ加工機を示す外観斜視図である。
【
図2】一実施形態におけるスパッタ除去装置でスパッタ除去処理を行うワーク支持体100の形状を示す正面図である。
【
図3】一実施形態におけるスパッタ除去装置としての、(a)ボイスコイル加振器60Aの外観斜視図、(b)ボイスコイル加振器60Aの側面図、(c)ピエゾ超音波加振器60Bの側面図、(d)エアシリンダ衝撃加振器60Cの側面図である。
【
図4】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第1ワーク支持体保持機構の、(a)上面図、(b)側面図である。
【
図5】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第1ワーク支持体保持機構の下端部支持台にハンマーで衝撃を与えたときの状態を示す上面図である。
【
図6】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第1ワーク支持体保持機構の下端部支持台にリニアアクチュエータで衝撃または振動を与えたときの状態を示す上面図である。
【
図7】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第1ワーク支持体保持機構の上下端部支持台にリニアアクチュエータで同位相の衝撃または振動を与えたときの状態を示す上面図である。
【
図8】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第1ワーク支持体保持機構の上下端部支持台にリニアアクチュエータで逆位相の衝撃または振動を与えたときの状態を示す上面図である。
【
図9】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第1ワーク支持体保持機構の中間部をほとんど振動しない状態で保持し、下端部支持台にリニアアクチュエータで衝撃または振動を与えたときの状態を示す上面図である。
【
図10】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第2ワーク支持体保持機構の支持台にピエゾ素子を用いた振動子を設置した状態を示す側面図である。
【
図11】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第3ワーク支持体保持機構の中間部支持台にリニアアクチュエータを設置した状態を示す、(a)上面図、(b)側面図である。
【
図12】一実施形態におけるワーク・サポート・テーブル20に設置した第3ワーク支持体保持機構の支持台によりワーク支持体100を直線状態にし、ワーク支持体100の隙間にフォーク部材110の歯を挿入したときの状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態によるワーク・サポート・テーブルに用いるワーク支持体のスパッタ除去装置を利用する熱加工機であるレーザ加工機について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態によるレーザ加工機1は切断加工を行うものであり、
図1に示すように、ベース10上に熱加工対象のワークWを設置するためのワーク・サポート・テーブル20が設けられている。ワーク・サポート・テーブル20上には、加工対象のワークWを支持する複数のワーク支持体100がX方向に配列されている。各ワーク支持体100の素材、形状、およびワーク・サポート・テーブル20への設置状態については、後述する。
【0015】
レーザ加工機1は、ワーク・サポート・テーブル20を跨ぐように配置された門型のフレーム30を備える。フレーム30は、サイドフレーム31、32と上部フレーム33とを有する。
【0016】
上部フレーム33内には、Y方向に移動自在のキャリッジ40が設けられている。キャリッジ40には、レーザを射出するレーザヘッド41が取り付けられている。フレーム30がX方向に移動し、キャリッジ40がY方向に移動することによって、レーザヘッド41は、ワークWの上方で、XおよびY方向に任意に移動するように構成されている。
【0017】
フレーム30には、レーザ加工機1を制御するためのNC装置50が取り付けられている。NC装置50は、ワークWを加工するための加工データ(NCデータ)に従ってレーザ加工機1を制御する。NC装置50は、レーザ加工機1を制御する制御装置である。
【0018】
NC装置50の制御によりレーザヘッド41がX方向またはY方向に移動しながら、ワークWに対してレーザを照射することにより、ワークWは切断加工される。
【0019】
ワーク・サポート・テーブル20に設置されるワーク支持体100について説明する。各ワーク支持体100は、紐状の炭素繊維、例えば炭素繊維強化炭素複合材(C/Cコンポジット材)を平織りした薄板から長形に切り出されて形成される。平織りとは、繊維を縦と横とで1本ごとに交差させる織り方である。なお、炭素繊維の織り方は、その繊維が何等かの構造で織り込まれていればよく、繻子(朱子)織りであっても、綾織りであっても、梨地織りや不規則な織りであっても構わない。
【0020】
炭素繊維は融点が3550℃であり、一般的な金属のワークWの融点1580℃に比べて非常に高温である。そのため、ワーク支持体100の素材として炭素繊維を用いることにより、ワークWの切断加工の際に、レーザビームの照射によるワークWとワーク支持体100との溶着を防止することができる。
【0021】
ワーク支持体100は、
図2に示すように、上端部に三角形状の突起101が連続的に設けられている。このようなワーク支持体100をワーク・サポート・テーブル20に複数配列し、その上にワークWを載せると、各ワーク支持体100上端部の三角形状の突起101がワークWの下面に当接し、ワークWが点支持される。ワークWが点支持されることにより、ワークWが切断加工される際にワーク支持体100の上部にレーザビームが当たる確率が低減され、ワーク支持体100の破損が抑えられる。
【0022】
従来は、金属板の上端部に三角形状の突起を連続的に設けたワーク支持体が用いられていたが、このような金属板のワーク支持体は融点がワークWと同等であり、切断加工で生じたスパッタが溶着して堆積してしまう。
【0023】
しかし、本実施形態のワーク支持体100は、上述したように融点の高い炭素繊維で形成されており、スパッタが発生して堆積してもワーク支持体に溶着しない。また、C/Cコンポジット材は織り込まれた炭素繊維に各種物質を含浸することで繊維強化されているため、薄板状に形成することで弾性が生じる。これを利用し、ワーク支持体にスパッタが堆積したときに、ワーク支持体に衝撃または振動を加えて弾性で伝播させることで、容易にスパッタを除去することができる。ワーク支持体100に堆積したスパッタを適宜除去することで、当該ワーク支持体100の寿命を延ばすことができる。
【0024】
ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去するために、ワーク支持体100に衝撃または振動を加える方法について、以下に例を用いて説明する。
【0025】
(1) ハンディタイプの加振器によるワーク支持体100への加振方法
ハンディタイプの加振器をスパッタ除去装置として用いることで、ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去する場合について説明する。ハンディタイプの加振器としては例えば、
図3(a)、(b)に示すボイスコイル加振器60A、(c)に示すピエゾ超音波加振器60B、または、(d)に示すエアシリンダ衝撃加振器60Cがある。
【0026】
図3(a)、(b)のボイスコイル加振器60Aは、持ち手部分61Aと、持ち手部分61Aから延伸して設けられた振動板62と、振動板62に取り付けられ、振動板62を電動で振動させる駆動部としてのボイスコイルアクチュエータ63とを有する。
【0027】
このボイスコイル加振器60Aを利用する際には、作業者が持ち手部分61Aを握って振動板62の先端をワーク支持体100に接触させ、接触状態を維持しつつボイスコイルアクチュエータ63を駆動させる操作を行うことで、ワーク支持体100に振動を加える。この作業を、ワーク支持体100ごとに行うことで、各ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去することができる。
【0028】
図3(c)のピエゾ超音波加振器60Bは、持ち手部分61Bと、持ち手部分61Bから延伸して設けられた駆動部としてのピエゾ振動板64とを有する。ピエゾ振動板64はピエゾ素子を用いて構成され、電圧が加えられることで超音波振動を発する。
【0029】
このピエゾ超音波加振器60Bを利用する際には、作業者が持ち手部分61Bを握ってピエゾ振動板64の先端をワーク支持体100に接触させ、接触状態を維持しつつピエゾ超音波加振器60Bに電圧を加える操作を行うことで、ワーク支持体100に振動を加える。この作業を、ワーク支持体100ごとに行うことで、各ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去することができる。
【0030】
図3(d)のエアシリンダ衝撃加振器60Cは、持ち手部分61Cと、持ち手部分61Cの先端に設置された駆動部としてのエアシリンダ65とを有する。エアシリンダ65は、空気圧で往復運動を行うピストン651を有する。
【0031】
このエアシリンダ衝撃加振器60Cを利用する際には、作業者が持ち手部分61Cを握ってエアシリンダ65のピストン651の先端をワーク支持体100に近接させ、エアシリンダ65のピストン651を動作させる操作を行うことで、ワーク支持体100にピストン651を衝突させて振動を加える。この作業を、ワーク支持体100ごとに行うことで、各ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去することができる。
【0032】
これらのハンディタイプの加振器は、構造が単純で、小型軽量化が容易であるため、実用上の利便性が高い。また、C/Cコンポジット材で形成されたワーク支持体100は弾性を生じ、所定箇所で与えられた振動が周辺部分へ伝播するため、ハンディタイプの加振器を用いる際に、1枚のワーク支持体100に対する作業箇所は少なくて済み、効率よくスパッタ除去作業を行うことができる。
【0033】
(2) 第1ワーク支持体保持機構によるワーク支持体100への加振方法
ワーク・サポート・テーブル20の上面に、第1ワーク支持体保持機構として、
図4(a)の上面図に示すように、複数のワーク支持体100の下端部の短辺をまとめて支持する下端部支持台21、上端部の短辺をまとめて支持する上端部支持台22、および中間部をまとめて支持する第1中間部支持台23を設置する。
【0034】
下端部支持台21および上端部支持台22にはそれぞれ、ワーク支持体100の厚みに対応した幅の複数のスリット211、221が設けられ、ワーク支持体100の端部が差し込まれる。
【0035】
また、下端部支持台21および上端部支持台22はそれぞれ、バネ24A、25Aでワーク・サポート・テーブル20のフレーム左端に接続されるとともに、バネ24B、25Bでワーク・サポート・テーブル20のフレーム右端に接続される。また、下端部支持台21および上端部支持台22はそれぞれ、
図4(b)の側面図に示すように、ワーク・サポート・テーブル20に設置されたスライドガイド26上に設置される。スライドガイド26は、ワーク・サポート・テーブル20上面に平行で、支持するワーク支持体100の長辺に垂直な左右方向にスライド動作可能な部材である。
【0036】
(2-1) 手動による加振方法
図5に示すように、上述した第1ワーク支持体保持機構の第1中間部支持台23に、ワーク支持体100の厚みよりも十分に広い幅の複数のスリット231を設け、ワーク支持体100の中間部を左右方向に振動可能な状態で支持する。そして、作業者がハンマー70等を用いて、上述した端部支持台21、22の少なくともいずれかに衝撃を与えることで、該当する端部支持台21、22を左右方向にスライド動作させ、保持されている各ワーク支持体100に振動を加える。例えば、下端部支持台21に衝撃を与えることで、ワーク支持体100は
図5の細線矢印で示すように、上端部が固定された状態で中間部および下端部が左右方向に振動し、各ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去することができる。
【0037】
(2-2) リニアアクチュエータを用いた加振方法
上述した第1ワーク支持体保持機構の端部支持台21、22の少なくともいずれかに、リニアアクチュエータを設置して左右方向に動作させることで、該当する端部支持台21、22を左右方向にスライド動作させ、保持されている各ワーク支持体100に衝撃または振動を加える。
【0038】
リニアアクチュエータを用いた第1ワーク支持体保持機構の第1構成例を、
図6に示す。この例では、第1中間部支持台23に、ワーク支持体100の厚みよりも十分に広い幅の複数のスリット231を設け、ワーク支持体100の中間部を左右方向に振動可能な状態で支持し、下端部支持台21のみにリニアアクチュエータ27を設置する。
【0039】
このように構成された第1ワーク支持体保持機構でリニアアクチュエータ27を駆動させることで、下端部支持台21を左右方向にスライド動作させ、保持されている各ワーク支持体100に衝撃または振動を加える。これにより、ワーク支持体100は
図6の細線矢印で示すように、上端部が固定された状態で中間部および下端部が左右方向に振動し、各ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去することができる。なお、ここでの衝撃とは、リニアアクチュエータの起動時と停止時に慣性力を伴って発生する動作である。
【0040】
リニアアクチュエータを用いた第1ワーク支持体保持機構の第2構成例を、
図7に示す。この例では、第1中間部支持台23に、ワーク支持体100の厚みに対応した幅の複数のスリット232を設け、ワーク支持体100の中間部を差し込んで支持し、端部支持台21、22双方にリニアアクチュエータ27、28を設置する。スリット232の幅は、支持しているワーク支持体100に力を加えられても、支持部分が左右方向にほとんど振動しないサイズで形成されている。
【0041】
このように構成された第1ワーク支持体保持機構で、リニアアクチュエータ27、28により、同位相の振動で端部支持台21、22を左右方向にスライド動作させ、保持されている各ワーク支持体100に衝撃または振動を加える。これにより、ワーク支持体100は
図7の細線矢印に示すように、中間部が固定された状態で上下両端部が左右方向に振動し、各ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去することができる。
【0042】
また、このように構成された第1ワーク支持体保持機構で、
図8の細線矢印で示すように、リニアアクチュエータ27、28により逆位相の振動で端部支持台21、22をスライド動作させてもよい。このときは第1中間部支持台23でワーク支持体100を固定する必要はなく、ワーク支持体100の厚みよりも十分に広い幅の複数のスリット231で支持してもよい。
【0043】
リニアアクチュエータを用いた第1ワーク支持体保持機構の第3構成例を、
図9に示す。この例では、上述した第1中間部支持台23に、ワーク支持体100の厚みに対応した幅の複数のスリット232を設け、ワーク支持体100の中間部を差し込んで支持し、下端部支持台21のみにリニアアクチュエータ27を設置する。スリット232の幅は、支持しているワーク支持体100に力を加えられても、支持部分が左右方向にほとんど振動しないが、ワーク支持体100上を振動波が伝播可能になるサイズで形成されている。
【0044】
このように構成された第1ワーク支持体保持機構でリニアアクチュエータ27を駆動させることで、下端部支持台21を左右方向にスライド動作させ、保持されている各ワーク支持体100に振動を加える。これにより、
図9の細線矢印で示すように、ワーク支持体100の下端部に振動が加えられて生じたたわみが中間部から上端部までの間で増幅されて振動し、各ワーク支持体100に堆積したスパッタを除去することができる。
【0045】
上述したような第1ワーク支持体保持機構を用いることにより、ワーク・サポート・テーブル20に設置された複数のワーク支持体100を同時に振動させて、効率よくスパッタ除去作業を行うことができる。また、ワーク支持体100への加振動作を制御装置で制御することによりスパッタ除去作業を自動化するこが可能であり、連続的なレーザ加工作業を行う際にも、適宜スパッタ除去作業を実行させてレーザ加工機を良好な状態に保つことができる。
【0046】
(3) 第2ワーク支持体保持機構によるワーク支持体100への加振方法
ワーク・サポート・テーブル20の上面に、第2ワーク支持体保持機構として、複数のワーク支持体100の下端部の短辺を支持する下端部支持台21、上端部の短辺を支持する上端部支持台22、および中間部を支持する第1中間部支持台23が設置される。加えて、
図10に示すように、これらの支持台21~23の少なくともいずれかとワーク・サポート・テーブル20との間に、ピエゾ素子を用いた複数個の振動子80が設置される。
【0047】
そして、振動子80に、ワーク支持体100の固有振動数と同等の周波数の超音波振動を左右方向または上下方向に発生させて、該当する支持台21~23を、ワーク・サポート・テーブル20上面に平行な左右方向または、ワーク・サポート・テーブル20上面に対して垂直な上下方向に振動させる。これにより、支持台21~23に支持されているワーク支持体100に振動が伝播され、堆積したスパッタを除去することができる。
【0048】
上述したような第2ワーク支持体保持機構を用いることにより、レーザ加工機を使用する際の加工条件や加工対象のワークWの材質の違いにより、ワーク支持体100に堆積したスパッタの付着状態が異なる場合にも、加振する方向や周波数を変えることで、確実なスパッタ除去作業を行うことができる。
【0049】
(4) 第3ワーク支持体保持機構によるワーク支持体100への加振方法
ワーク・サポート・テーブル20の上面に、第3ワーク支持体保持機構として、
図11(a)の上面図に示すように、複数のワーク支持体100の中間部の異なる2箇所をそれぞれ支持する第2中間部支持台91および第3中間部支持台92が設置される。これらの中間部支持台91、92はそれぞれ、
図11(b)に示すように、ワーク・サポート・テーブル20に設置された支持ローラ93A、93B、94A、および94Bの回転により床面に平行な左右方向に動作可能な状態で設置される。また、これらの中間部支持台91、92の右端には、トグル機構部材95、96によりリニアアクチュエータ97、98が設置されている。
【0050】
そして、リニアアクチュエータ97、98を駆動させ、トグル機構部材95、96により中間部支持台91、92を同位相または逆位相で動作させて、ストローク停止時の衝撃を与えるかまたは、中間部支持台91、92をワーク・サポート・テーブル20のフレーム内側に衝突させることで、保持されている各ワーク支持体100に衝撃または振動を加える。これにより、ワーク支持体100が振動し、堆積したスパッタを除去することができる。上述した中間部支持台の数は2個には限定されず、ワーク支持体100の中間部の異なる箇所に3個以上設置してもよい。
【0051】
上述した第3ワーク支持体保持機構では、リニアアクチュエータ97、98によるワーク支持体100の動作方向をトグル機構部材95、96の取り付け状態により調整することができるため、これらの部材を既存のワーク・サポート・テーブル20のフレーム内側に収めるように設置が可能であり、実用上有用である。
【0052】
一方で、ワーク支持体100は、ワーク・サポート・テーブル20上で長辺方向に湾曲した状態で設置されることにより、ワークWが直線的に切断加工される際にワーク支持体100の上部に連続的にレーザビームが照射されることが回避され、スパッタの堆積や破損が抑えられ、ワーク支持体100の寿命を延ばすことができる。
【0053】
そこで、上述した第3ワーク支持体保持機構を用いたレーザ加工機でレーザ加工を行う際に、
図11(a)の矢印で示すように、第2中間部支持台91と第3中間部支持台92とを異なる方向に移動させてワーク支持体100をS字状に湾曲させた状態で熱加工作業を行うことで、ワーク支持体100の破損を抑えることができる。
【0054】
また、ワーク支持体100上にワークWを搬入および搬出する際は、
図12に示すように、ワーク支持体100同士の各隙間に挿入する歯111を有するフォーク部材110を用いて作業が行われる。その際、ワーク支持体100が湾曲しているとフォーク部材110の歯111とワーク支持体100が接触して正常にワークWの搬入、搬出作業を行うことができない。
【0055】
そこで、ワークWの搬入、搬出を行う際には、移動させた第2中間部支持台91および第3中間部支持台92の位置を戻して、
図12に示すようにワーク支持体100を直線状態にすることで、適切にワークWの搬入、搬出作業を行うことができる。
【0056】
また、NC装置に、中間部支持台91、92の動作を制御する支持台位置調整装置としての機能を搭載してもよい。NC装置は、当該機能により、ワーク支持体100上にワークWを搬入または搬出する際にはワーク支持体100が直線状態になるように中間部支持台91、92の位置を調整し、ワークWの熱加工作業を行う際にはワーク支持体100が湾曲した状態になるように調整するようにしてもよい。
【0057】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 レーザ加工機
10 ベース
20 ワーク・サポート・テーブル
21 下端部支持台
22 上端部支持台
23 第1中間部支持台
24A,24B,25A,25B バネ
26 スライドガイド
27、28 リニアアクチュエータ
30 フレーム
31,32 サイドフレーム
33 上部フレーム
40 キャリッジ
41 レーザヘッド
50 NC装置
60A ボイスコイル加振器
60B ピエゾ超音波加振器
60C エアシリンダ衝撃加振器
61A,61B,61C 持ち手部分
62 振動板
63 ボイスコイルアクチュエータ
64 ピエゾ振動板
65 エアシリンダ
70 ハンマー
80 振動子
91 第2中間部支持台
92 第3中間部支持台
93A,93B,94A,94B 支持ローラ
95、96 トグル機構部材
97、98 リニアアクチュエータ
100 ワーク支持体
101 突起
110 フォーク部材
111 歯
211,221,231,232 スリット
651 ピストン