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  • 特許-一液型水性塗料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】一液型水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240620BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240620BHJP
   C09D 163/10 20060101ALI20240620BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240620BHJP
   C09D 167/06 20060101ALI20240620BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240620BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/02
C09D163/10
C09D133/00
C09D167/06
C09D7/63
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020052031
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021147596
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 康人
(72)【発明者】
【氏名】西川 昂志
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 智子
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃司
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-239569(JP,A)
【文献】特開2003-064302(JP,A)
【文献】特開2006-089560(JP,A)
【文献】特開2012-224771(JP,A)
【文献】特開2011-168662(JP,A)
【文献】特開平09-263625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)エポキシエステル樹脂、(B)アクリル樹脂、(C)乾性油または乾性油の重合物から選択される少なくとも一種の化合物とを含有する一液型水性塗料組成物であって、
前記(A)エポキシエステル樹脂が、前記一液型水性塗料組成物の固形分中において5~30質量%の含有量であり、
前記(B)アクリル樹脂が、スチレン・アクリル樹脂であり、前記一液型水性塗料組成物の固形分中において5~35質量%の含有量であり、および、
前記(C)乾性油または乾性油の重合物から選択される少なくとも一種の化合物が、前記一液型水性塗料組成物の固形分中において0.1~5.0質量%の含有量である、一液型水性塗料組成物。
【請求項2】
前記(A)エポキシエステル樹脂が、ビニル変性エポキシエステル樹脂である、請求項に記載の一液型水性塗料組成物。
【請求項3】
前記乾性油は、分子内に共役二重結合を有する脂肪酸を含む、請求項1または2に記載の一液型水性塗料組成物。
【請求項4】
前記一液型水性塗料組成物が、さらに、(D)硬化促進剤を含有し、前記一液型水性塗料組成物の固形分中において0.1~0.6質量%の含有量であり、かつ、前記(D)硬化促進剤が水に可溶な金属石鹸である、請求項1~3のいずれかに記載の一液型水性塗料組成物。
【請求項5】
前記一液型水性塗料組成物が、黒皮鋼材に塗装される、請求項1~4のいずれかに記載の一液型水性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型水性塗料組成物に関し、詳しくは黒皮鋼材に対する付着力に優れた一液型水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械や産業機械のライン塗装では、種々の基材に対する付着性や耐食性が求められるため、これら性能の優れる溶剤系塗料が一般的に用いられていた。しかし近年では、環境保護の観点から有害大気汚染物質や揮発性有機化合物が規制されており、建機向けのライン塗装においても溶剤系塗料から水系塗料への転換が検討されている(特許文献1)。
【0003】
一方で建設機械や産業機械は部品により鋼材の種類が異なることが多く、鉄やステンレス、アルミニウム等の様々な金属が用いられる。そのため、建設機械用の塗料には、種々の基材に対する付着性が求められるが、従来の建設機械向け水系塗料ではいまだ十分な性能が得られなかった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-084663号公報
【文献】特開2018-172504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中でも、表面にミクロな凹凸が存在する黒皮鋼材(表面に黒色の酸化鉄を残した状態の鋼材)上に塗装する場合、水系塗料は溶剤系塗料と比較して表面張力が高く濡れ広がりにくいため、鋼材との付着性が劣り、早期の剥離や赤錆が生じることがあった。
【0006】
本発明は、黒皮鋼材を含む種々の基材に対して優れた付着性を有し、建機向け水性塗料として耐食性に優れた一液型水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記によって達成された。
【0008】
1. 少なくとも、
(A)エポキシエステル樹脂、
(B)アクリル樹脂、および、
(C)乾性油または乾性油の重合物から選択される少なくとも一種の化合物、
とを含有する一液型水性塗料組成物。
2. 前記一液型水性塗料組成物の固形分中における前記(A)エポキシエステル樹脂の含有量が5~30質量%である前記1記載の一液型水性塗料組成物。
3. 前記一液型水性塗料組成物の固形分中における前記(C)乾性油または乾性油の重合物から選択される少なくとも一種の化合物の含有量が0.1~5.0質量%である前記1または2記載の一液型水性塗料組成物。
4. 前記(A)エポキシエステル樹脂が、ビニル変性エポキシエステル樹脂である前記1~3のいずれかに記載の一液型水性塗料組成物。
5. (D)酸化促進剤を含有する前記1~4のいずれかに記載の一液型水性塗料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、黒皮鋼材を含む種々の基材に対して優れた付着性を有し、建機向け水性塗料として耐食性に優れた一液型水性塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の黒皮鋼材のミクロな凹凸を示す表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に述べる。
<一液型水性塗料組成物>
本発明の一液型水性塗料組成物は、少なくとも、(A)エポキシエステル樹脂、(B)アクリル樹脂、および、(C)乾性油または乾性油の重合物から選択される少なくとも一種の化合物、とを含有することを特徴とする。
【0012】
≪(A)エポキシエステル樹脂≫
本発明のエポキシエステル樹脂は,通常のエポキシエステル樹脂を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂と脂肪族酸などの酸との付加物、さらに該付加物とジイソシアネ-ト化合物やヒドロキシカルボン酸との反応生成物、さらにそのビニル変性物等が挙げられる。特にビニル変性エポキシエステル樹脂であることが好ましい。
【0013】
本発明のビニル変性エポキシエステル樹脂は、ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するビニル変性エポキシエステル樹脂であって、ビニル重合体部分が下記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有し、かつ、下記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の一部または全部が塩基性化合物で中和されているビニル変性エポキシエステル樹脂である。
【0014】
【化1】
nは1~10、Rは炭素数2~18のアルキレン基を示す。
【0015】
本発明の(A)エポキシ樹脂は、特許第3858934号、特開2001-261759号に記載のビニル変性エポキシ樹脂を好ましく使用することができる。
【0016】
本発明で使用する(A)エポキシエステル樹脂は、1,000~100,000の数平均分子量を有するものが好ましく、2,000~50,000の数平均分子量を有するものがより好ましく、2,000~10,000の数平均分子量を有するものが更に好ましい。
【0017】
本発明の(A)エポキシエステル樹脂の軟化点(Tm)やガラス転移点(Tg)は特に限定されず必要に応じて選択できるが、好ましい軟化点は-20~100℃、より好ましくは-20~70℃、更に好ましくは-10~40℃である。好ましいガラス転移点は-20~100℃、より好ましくは-10~60℃、さらに好ましくは0~40℃である。
Tm,Tgは、JISK7121-1987に準じDSCによって測定することができる。
【0018】
本発明で使用する(A)エポキシエステル樹脂は、5~100の酸価を有するものが挙げられるが、なかでも15~40の酸価を有するものが好ましく、20~35の酸価を有するものがより好ましい。
【0019】
本発明においては、この(A)エポキシエステル樹脂は、一部または全部が塩基性化合物で中和されて、水中に分散された状態で使用される。平均粒径は40~200nmであり、好ましくは80~150nmである。なお、平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計(マイクロトラック9340-UPA、日機装株式会社製)で測定することができる。
(A)エポキシエステル樹脂は、固形分として20~60質量%の水分散物とすることが好ましい。
【0020】
本発明の(A)エポキシエステル樹脂の水分散物としては、ウォーターゾールBM-1000P、CD-540P、EFD-5520、EFD-5530、EFD-5550、EFD-5560、EFD-5570、EFD-5580、EFD-5501P(以上DIC株式会社製)等を市販品として入手することができる。
【0021】
本発明の(A)エポキシエステル樹脂は、一液型水性塗料組成物の4~16質量%含有され、8~14質量%であることが好ましく、一液型水性塗料組成物の固形分中には5~30質量%含有され、10~25質量%であることが好ましい。
【0022】
≪(B)アクリル樹脂≫
本発明の(B)アクリル樹脂は、炭素数1~18のアルキル(メタ)アクリレートを30~100質量%有し、その他スチレン系モノマー(スチレン、α-メチルスチレン等)、酢酸ビニル、オレフィン(塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、プロピレン等)等を共重合させた樹脂である。
【0023】
炭素数1~18のアルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
水酸基を有する2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アタクリレートへのラクトン付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのエチレンオキシドの開環付加物又はプロピレンオキシドの開環付加物、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体又は3量体よりなる群から選択される少なくとも1種のヒドロキシ基含有重合性不飽和モノマーを含むことも好ましい。
【0025】
水酸基を有するモノマーは0~5質量%以下であることが好ましい。スチレン系モノマーは、0~70質量%含有することが好ましい。
【0026】
なお、本発明において、数平均分子量、重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0027】
本発明の(B)アクリル樹脂は、そのガラス転移温度が-50~40℃であることが好ましく、-30~40℃の範囲内にあることがより好ましく、-10~40℃であることが更に好ましい。
【0028】
なお、本発明の(B)アクリル樹脂において、ガラス転移温度(Tg)とは、次のFOX式を用いて計算されるものをいう。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wi/Tgi+・・・+Wn/Tgn
上記FOX式において、Tgは、n種類のモノマーからなるポリマーのガラス転移温度(K)であり、Tg(1、2、i、n)は、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)であり、W(1、2、i、n)は、各モノマーの質量分率であり、W1+W2+・・・+Wi+・・・+Wn=1である。
【0029】
本発明の(B)アクリル樹脂は、水分散物として使用されるが、アクリル樹脂を合成した後有機溶媒に溶解し、界面活性剤を加えた水中でせん断力を与えることで水分散物とすることができるし、初めから乳化重合によって水分散物とすることもできる。
【0030】
本発明のアクリル樹脂は、固形分として20~60質量%の水分散物とすることが好ましく、特開2018-172504号公報等に記載の水分散したアクリル樹脂を使用することができる。
【0031】
本発明の(B)アクリル樹脂の水分散物は、50体積%粒子径(D50)が50~300nmの範囲内にあることが好ましく、50~200nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0032】
本発明において、50体積%粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD-7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0033】
本発明の(B)アクリル樹脂は、一液型水性塗料組成物の4~20質量%含有され、6~15質量%であることが好ましく、一液型水性塗料組成物の固形分中に5~35質量%含有され、10~25質量%であることが好ましい。
【0034】
≪(C)乾性油または乾性油の重合物(以下、乾性油等ともいう)≫
本発明の乾性油は、そのヨウ素価が130以上である。140以上であるのが好ましい。また、分子内に共役二重結合を有し、分子内の共役二重結合の数が、1分子に含まれる二重結合の数の25%以上である。また、1分子の乾性油に含まれる共役二重結合の数は、1分子に含まれる二重結合の全数の、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。
【0035】
本発明の乾性油は、分子内に共役二重結合を有する脂肪酸のエステルを含む。共役二重結合を有する脂肪酸としては、例えば、エレオステアリン酸、オクタデカジエン酸が挙げられる。
【0036】
本発明の乾性油は、共役二重結合を有する脂肪酸のほかに、例えば、二重結合を1個有する脂肪酸、共役していない2個以上の二重結合を有する脂肪酸、飽和脂肪酸を含むことができる。二重結合を1個有する脂肪酸、共役していない2個以上の二重結合を有する脂肪酸、飽和脂肪酸は、それぞれ特に制限されない。本発明の乾性油は、具体的には例えば、脱水ヒマシ油、桐油が挙げられる。
【0037】
乾性油は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には、例えば、ヒドロキシ基を有する脂肪酸エステルを含む乾性油(例えば、ヒマシ油。)を脱水することによって、製造することができる。
【0038】
本発明の乾性油の重合物については特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には、例えば、乾性油に、熱を加えること、光を照射することによって乾性油を重合物とすることができる。
【0039】
本発明の乾性油の重合物には、ナフテン酸金属塩のような酸化促進剤を加え加熱したボイル油も含まれる。乾性油および乾性油の重合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明の乾性油等は、一液型水性塗料組成物の0.1~3.0質量%含有され、1.0~2.0質量%であることが好ましく、一液型水性塗料組成物の固形分中に0.1~5.0質量%含有され、1.0~3.5質量%であることが好ましい。
【0041】
≪(D)硬化促進剤≫
本発明の硬化促進剤としては、水を溶剤とする金属石鹸を使用することができる。金属成分としては、コバルト、マンガン、錫、鉛化合物等を挙げることができ、例えば、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジオクテート、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属化合物類等が挙げられる。
【0042】
(D)硬化促進剤は、一液型水性塗料組成物の0.1~1.0質量%含有され、0.4~0.8質量%であることが好ましく、一液型水性塗料組成物の固形分中に0.1~0.6質量%含有され、0.2~0.5質量%であることが好ましい。
【0043】
≪塗料組成物≫
本発明の塗料組成物において、不揮発分の含有量は、55~73質量%であることが好ましく、55~65質量%であることがより好ましい。また、本発明の水性塗料組成物において、不揮発分中における水分散性樹脂の含有量は、15~45質量%であることが好ましく、27~43質量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1s-1の粘度が50~200Pa・sであり、且つせん断速度1,000s-1の粘度が0.2~1Pa・sであることが好ましい。 本発明において、粘度はTAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を23℃に調整した後測定される。
【0045】
なお、不揮発分とは、水や有機溶剤等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分であるが、本発明においては、塗料組成物を130℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を不揮発分という。
【0046】
本発明の塗料組成物は、完全水系化することも可能であり、使用される溶媒に占める水の割合は、好ましくは50質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0047】
本発明の塗料組成物が水以外の溶媒を含む場合、その溶媒としては、水と混合し得る極性を持つ有機溶剤が好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、t-アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。
【0048】
本発明の塗料組成物には、塗料業界において通常使用されている顔料を含有することができる。具体的には、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の着色顔料、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料、アルミニウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、ステンレス、ガラスフレーク等の光輝顔料等が挙げられる。これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
その他本発明の塗料組成物に用いる防錆顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/リン酸混合顔料等が挙げられる。また、本発明の水性塗料組成物において、不揮発分中における防錆顔料の含有量は、3~10質量%であることが好ましい。
【0050】
本発明の塗料組成物において、不揮発分中における顔料体積濃度は30~65体積%であることが好ましく、30~50体積%にあることがより好ましく、30~47体積%であることが更に好ましい。
【0051】
なお、ここでいう顔料とは、塗料組成物中に含まれる全ての顔料を指しており、防錆顔料以外の顔料が使用される場合はその顔料も含まれる。不揮発分中における顔料体積濃度(PVC:Pigment Volume Concentration)は、不揮発分を構成する各成分の組成及び比重から計算により求めることができる。
【0052】
≪その他の成分≫
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、各種樹脂、顔料、有機溶剤、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0053】
ここで、その他の成分である樹脂としては、塗料業界において通常使用されている樹脂を例示することができ、具体的には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を一種単独で用いても良く、二種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【0054】
本発明の塗料組成物において、塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装等が利用できる。
【0055】
<塗布基材>
本発明の塗料組成物は、鋼材表面に見られるような黒皮が表面に付着した鋼材に対して特に好適に塗装を行うことができる(図1)。図1では、黒皮部に存在する凹凸が確認できる。通常、黒皮が付着した基材は、黒皮の隙間等に油分が多く存在しており、優れた油面適性が求められる。本発明の塗料組成物は、その他アルミニウム、ステンレス等の建機基材に対しても使用することができる。
【0056】
なお、基材には、各種表面処理、例えば酸化処理やプライマー処理が施された基材が含まれ、基材表面の少なくとも一部に旧塗膜(本発明の塗料組成物の塗装を行う前に既に形成されている塗膜)が存在していてもよい。
【実施例
【0057】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
≪実施例1~8、比較例1~6の調製≫
表1に示す配合(数値は質量部である)より、エポキシエステル樹脂水分散物、顔料、分散剤を予め混合した後に、ビーズミルにて分散処理した。この分散処理後の混合物をアクリル樹脂水分散物に撹拌しながら加えた後、その他の原料も同様に撹拌しながら加え、水性塗料組成物(実施例1~8、比較例1~6)を得た。
【0059】
使用した原料の詳細を以下に示す。
・ウォーターゾールEFD-5560:ビニル変性エポキシエステル樹脂ディスパージョン、DIC株式会社製、NV;40質量%
・ウォーターゾールEFD-5580:エポキシエステル樹脂ディスパージョン、DIC株式会社製、NV;40質量%
・アクロナール295DN:スチレン・アクリル樹脂ディスパージョン、BASF社製、NV;50質量%
・アクリセットPJ-717:アクリル樹脂エマルジョン、株式会社日本触媒製、NV;45質量%
・ヨドゾールAD201:スチレン・アクリル樹脂エマルジョン、ヘンケルジャパン株式会社製、NV46質量%
・ポリゾールAP-6750:スチレン・アクリル樹脂エマルジョン、昭和電工株式会社製、NV;45質量%
・LTボイル油:亜麻仁油と桐油の混合物、マルニ製油社製
・DICNATE3111:Co系金属石鹸、DIC株式会社製
・着色顔料:MA100、三菱ケミカル株式会社製
・防食顔料:K-White ♯140W、テイカ株式会社製
・体質顔料:サンライトSL-1000、竹原化学工業株式会社製
・分散剤:Disperbyk-190、ビックケミー・ジャパン株式会社製
・消泡剤:byk-093、ビックケミー・ジャパン株式会社製
・増粘剤:チクゾールK-130B、共栄社化学株式会社製
・表面調整剤:byk-307、ビックケミー・ジャパン株式会社製
・成膜助剤:2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート
【0060】
【表1】
【0061】
実施例及び比較例において、測定・評価は下記の方法で行った。なお測定・評価は特に断りの無い限り23℃50%RHの雰囲気下で行った。結果を表2に示す。
【0062】
≪塗板作成方法1(冷間圧延鋼板)≫
実施例1~8、比較例1~6の塗料を、各々、耐水ペーパー#180にて研磨済みの冷間圧延鋼板(JIS G3141、150×70×0.8mm、洗浄溶剤にて脱脂)に、乾燥膜厚が45μmとなるようスプレー塗装した。得られた塗膜を23℃及び50%RH雰囲気下で1週間乾燥し、目的とする塗板を得た。得られた塗板の裏面及び側面をポリエステルテープ(日東電工株式会社製)でシールし、付着性試験、耐食性試験、耐水性試験に供した。
【0063】
≪塗板作成方法2(黒皮鋼板)≫
実施例1~8、比較例1~6の塗料を、各々、構造用鋼板(黒皮鋼板)(JIS G3101、150×70×1.6mm、洗浄溶剤にて脱脂)に、得られた塗膜を23℃及び50%RH雰囲気下で1週間乾燥し、目的とする塗板を得た。得られた試験板の裏面及び側面をポリエステルテープ(日東電工株式会社製)でシールし、付着性試験、耐食性試験、耐水性試験に供した。
【0064】
≪付着性試験 クロスカット法≫
塗膜にカッターナイフにて2mm幅のマスを100個作製し、その後セロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、指で圧着した後、セロハンテープを一気に引き剥がし、残存する塗膜のマス目を数えた。評価基準は以下の通りとした。
◎:100/100
○:99/100~95/100
×:94/100以下
【0065】
≪耐食性試験(耐塩水噴霧性試験)≫
塗板に予めカッターナイフにて素地に達する、30°の角度で交わるよう長さ10cmの2本のキズを付ける。その試験板を槽内温度35℃、5%塩化ナトリウム水を連続で噴霧する塩水噴霧試験機にて240時間試験を行った。装置から取り出し、水道水で試験面の塩水を粗い流し、水分を取り除く。その後直ちに試験面に付けたキズからの腐食幅を測定する。評価基準は以下の通りとした。
塩水噴霧(240h)後の腐食幅
◎:2mm以下
○:2~5mm
×:5mm以上
【0066】
≪耐水性試験≫
塗板作製方法1および2で得られた塗板を20±5℃の水に504時間浸漬した後、水洗し、2時間風乾し、塗膜の外観を目視で判定した。
◎:塗膜に割れ、はがれ、ふくれ、錆が無く、著しい変色、つやの変化、軟化等の異常が無い。
〇:塗膜に変色、つやの低下が認められるが、その他の異常はない。
×:塗膜に割れ、はがれ、ふくれ、錆等の異常が発生。
【0067】
【表2】
【0068】
表1および表2から明らかなように、本発明の一液型水性塗料組成物は、黒皮鋼材を含む種々の基材に対して優れた付着性を有し、建機向け水性塗料として耐食性に優れている。
図1