(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】食品製造装置、食品製造方法及び食材切断方法
(51)【国際特許分類】
A21C 11/10 20060101AFI20240620BHJP
B26D 1/40 20060101ALI20240620BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A21C11/10 A
B26D1/40 502L
B26D1/40 502H
B26D7/18 E
(21)【出願番号】P 2020056523
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜一
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓
(72)【発明者】
【氏名】間宮 稔
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-084961(JP,A)
【文献】実開平05-063290(JP,U)
【文献】実公昭51-051113(JP,Y1)
【文献】特開2003-251589(JP,A)
【文献】米国特許第05580008(US,A)
【文献】特開2012-231722(JP,A)
【文献】特開平06-000048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/10
B26D 1/40
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する受けローラー部と、
カッターを有する切断ローラー部であって、前記カッターを回転させつつ食材を前記カッターと前記受けローラー部との間で挟んで切断する切断ローラー部と、
気体吐出口を有し、当該気体吐出口から吐出させた気体を前記受けローラー部に吹き付ける気体吹付装置と、を備え、
前記気体吹付装置は、前記気体吐出口から圧縮気体を噴出させ、
前記気体吐出口は、水平方向又は鉛直方向と平行な方向に、少なくとも一部が前記受けローラー部と重なり、前記気体吐出口から吐出される前記気体が前記食材に対して直接的には吹き付けられないように設けられ、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体は、直接的には前記受けローラー部に吹き付けられ、前記受けローラー部の外周面に沿うように流れる気流を形成し、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体の主たる進行方向は、前記受けローラー部の前記外周面のうち当該気体が直接的に吹き付けられる位置における前記受けローラー部の径方向と一致する、食品製造装置。
【請求項2】
前記受けローラー部に吹き付けられる前記気体には、前記受けローラー部の外周面のうち前記気体吐出口に最も近い部分に対して直接的に吹き付けられる前記気体が含まれる請求項1に記載の食品製造装置。
【請求項3】
上流から下流に向けて送られてくる食材を切断する食品製造装置であって、
受軸線を中心に回転する受けローラー本体部を有する受けローラー部と、
切断ローラー本体部及びカッターを有する切断ローラー部であって、前記受軸線よりも下流側に位置する切断軸線を中心に前記切断ローラー本体部を回転させつつ、前記食材を前記切断ローラー本体部から突出する前記カッターと前記受けローラー本体部との間で挟んで切断する切断ローラー部と、を備え、
前記受軸線と前記切断軸線との間の直線距離は、前記受けローラー本体部の半径、前記切断ローラー本体部の半径、及び前記切断ローラー本体部からの前記切断ローラー本体部の径方向への前記カッターの突出量の和に等しく、
前記切断軸線は、前記受軸線よりも下方に位置し、
前記カッター及び前記受けローラー部は、上方から送られてくる前記食材を切断す
る、食品製造装置。
【請求項4】
上流から下流に向けて送られてくる食材を切断する食品製造装置であって、
受軸線を中心に回転する受けローラー本体部を有する受けローラー部と、
切断ローラー本体部及びカッターを有する切断ローラー部であって、前記受軸線よりも下流側に位置する切断軸線を中心に前記受けローラー部とは異なる角速度で前記切断ローラー本体部を回転させつつ、前記食材を前記切断ローラー本体部から突出するカッターと前記受けローラー本体部との間で挟んで切断する切断ローラー部と、
気体吐出口を有し、当該気体吐出口から吐出させた気体を前記受けローラー本体部に吹き付ける気体吹付装置と、を備え、
前記気体吹付装置は、前記気体吐出口から圧縮気体を噴出させ、
前記気体吐出口は、水平方向又は鉛直方向と平行な方向に、少なくとも一部が前記受けローラー部と重なり、前記気体吐出口から吐出される前記気体が前記食材に対して直接的には吹き付けられないように設けられ、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体は、直接的には前記受けローラー本体部に吹き付けられ、前記受けローラー本体部の外周面に沿うように流れる気流を形成し、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体の主たる進行方向は、前記受けローラー本体部の前記外周面のうち当該気体が直接的に吹き付けられる位置における前記受けローラー本体部の径方向と一致し、
前記カッターの角速度は、前記受けローラー部の角速度よりも大きく、
前記受軸線と前記切断軸線との間の直線距離は、前記受けローラー本体部の半径、前記切断ローラー本体部の半径、及び前記切断ローラー本体部からの前記切断ローラー本体部の径方向への前記カッターの突出量の和に等しい、食品製造装置。
【請求項5】
食材を搬送する工程と、
気体吹付装置によって受けローラー部に気体を吹き付けつつ受けローラー部及びカッターを回転させて、前記食材を前記カッターと前記受けローラー部との間で挟んで切断する工程と、を含む食品製造方法であって、
前記気体吹付装置は、気体吐出口から圧縮気体を噴出させ、
前記気体吐出口は、水平方向又は鉛直方向と平行な方向に、少なくとも一部が前記受けローラー部と重なり、前記気体吐出口から吐出される前記気体が前記食材に対して直接的には吹き付けられないように設けられ、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体は、直接的には前記受けローラー部に吹き付けられ、前記受けローラー部の外周面に沿うように流れる気流を形成し、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体の主たる進行方向は、前記受けローラー部の前記外周面のうち当該気体が直接的に吹き付けられる位置における前記受けローラー部の径方向と一致する、
食品製造方法。
【請求項6】
上流から下流に向けて食材を搬送する工程と、
気体吹付装置によって受けローラー部の受けローラー本体部に気体を吹き付けつつ、受軸線を中心に前記受けローラー本体部を回転させるとともに、前記受軸線よりも下流側に位置する切断軸線を中心に前記受けローラー部とは異なる角速度で切断ローラー部の切断ローラー本体部を回転させて、前記食材を前記切断ローラー本体部から突出するカッターと前記受けローラー本体部との間で挟んで切断する工程と、を含む食材切断方法であって、
前記気体吹付装置は、気体吐出口から圧縮気体を噴出させ、
前記気体吐出口は、水平方向又は鉛直方向と平行な方向に、少なくとも一部が前記受けローラー部と重なり、前記気体吐出口から吐出される前記気体が前記食材に対して直接的には吹き付けられないように設けられ、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体は、直接的には前記受けローラー本体部に吹き付けられ、前記受けローラー本体部の外周面に沿うように流れる気流を形成し、
前記気体吐出口から吐出させた前記気体の主たる進行方向は、前記受けローラー本体部の前記外周面のうち当該気体が直接的に吹き付けられる位置における前記受けローラー本体部の径方向と一致し、
前記カッターの角速度は、前記受けローラー部の角速度よりも大きく、
前記受軸線と前記切断軸線との間の直線距離は、前記受けローラー本体部の半径、前記切断ローラー本体部の半径、及び前記切断ローラー本体部からの前記切断ローラー本体部の径方向への前記カッターの突出量の和に等しい、
食材切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造装置、食品製造方法及び食材切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上流から送られてくる食材を連続的に切断し、切断分離された食材を下流に送り出す装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1が開示する押出麺揺動装置は、上流の押出機から送られてくる麺を、回転する主ローラーのカッター刃と回転する当接ローラーとにより挟んで切断し、下流に送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食材は、種類、環境或いは季節等の様々な要因で含水量が一定せず、粘着性が変わる。例えば餃子等に用いられる皮は、様々な配合で小麦粉や米粉から作られ、配合に応じた含水性及び粘着性を呈する。
【0006】
例えばウェットな食材を、切断ローラーに設けられたカッターと受けローラーとの間で挟んで切断する場合、食材が受けローラーに貼り付きやすい。またドライな食材を同様に切断する場合、食材の粉が受けローラーに付着し、当該粉が原因で食材が受けローラーに貼り付くことがある。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、食材のローラーへの貼り付きを抑制しつつ、当該ローラーを使って食材を連続的に切断することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、回転する受けローラー部と、カッターを有する切断ローラー部であって、カッターを回転させつつ食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する切断ローラー部と、気体吐出口を有し、当該気体吐出口から吐出させた気体を受けローラー部に吹き付ける気体吹付装置と、を備える食品製造装置に関する。
【0009】
気体吹付装置は、気体吐出口から圧縮気体を噴出させてもよい。
【0010】
気体吐出口は、水平方向又は鉛直方向と平行な方向に、少なくとも一部が受けローラー部と重なってもよい。
【0011】
受けローラー部に吹き付けられる気体には、受けローラー部の外周面のうち気体吐出口に最も近い部分に対して直接的に吹き付けられる気体が含まれてもよい。
【0012】
本発明の他の態様は、回転する受けローラー部と、カッターを有する切断ローラー部であって、受けローラー部とは異なる角速度でカッターを回転させつつ、食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する切断ローラー部と、を備える食品製造装置に関する。
【0013】
カッターの角速度は、受けローラー部の角速度よりも大きくてもよい。
【0014】
本発明の他の態様は、上流から下流に向けて送られてくる食材を切断する食品製造装置であって、受軸線を中心に回転する受けローラー部と、カッターを有する切断ローラー部であって、受軸線よりも下流側に位置する切断軸線を中心にカッターを回転させつつ、食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する切断ローラー部と、を備える食品製造装置に関する。
【0015】
切断軸線は、受軸線よりも下方に位置し、カッター及び受けローラー部は、上方から送られてくる食材を切断してもよい。
【0016】
食品製造装置は、切断ローラー部よりも下流側に位置し、食材を受け取って送出方向へ送る送出装置を備え、切断ローラー部は、受けローラー部よりも、送出方向の下流側に位置してもよい。
【0017】
本発明の他の態様は、上流から下流に向けて送られてくる食材を切断する食品製造装置であって、受軸線を中心に回転する受けローラー部と、カッターを有する切断ローラー部であって、受軸線よりも下流側に位置する切断軸線を中心に受けローラー部とは異なる角速度でカッターを回転させつつ、食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する切断ローラー部と、気体吐出口を有し、当該気体吐出口から吐出させた気体を受けローラー部に吹き付ける気体吹付装置と、を備える食品製造装置に関する。
【0018】
本発明の他の態様は、食材を搬送する工程と、気体吹付装置によって受けローラー部に気体を吹き付けつつ受けローラー部及びカッターを回転させて、食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する工程と、を含む食品製造方法に関する。
【0019】
本発明の他の態様は、食材を搬送する工程と、受けローラー部及びカッターをお互いに異なる角速度で回転させて、食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する工程と、を含む食品製造方法に関する。
【0020】
本発明の他の態様は、上流から下流に向けて食材を搬送する工程と、受軸線を中心に受けローラー部を回転させつつ、受軸線よりも下流側に位置する切断軸線を中心にカッターを回転させて、食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する工程と、を含む食品製造方法に関する。
【0021】
本発明の他の態様は、上流から下流に向けて食材を搬送する工程と、気体吹付装置によって受けローラー部に気体を吹き付けつつ、受軸線を中心に受けローラー部を回転させるとともに、受軸線よりも下流側に位置する切断軸線を中心に受けローラー部とは異なる角速度でカッターを回転させて、食材をカッターと受けローラー部との間で挟んで切断する工程と、を含む食材切断方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、食材のローラーへの貼り付きを抑制しつつ、当該ローラーを使って食材を連続的に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、食品製造装置の一例の概略構成を示す側方図である。
【
図2】
図2は、切断装置の構成の一部を上方から見た概略図である。
【
図3】
図3は、食品製造装置の制御構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、食品製造装置を使った食品製造方法(食材切断方法を含む)の一例を示す食品製造装置の側方図である。
【
図5】
図5は、食品製造方法(食材切断方法を含む)の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る食品製造装置の一例の概略構成を示す側方図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して食品製造装置、食品製造方法及び食材切断方法を例示的に説明する。
【0025】
以下の説明において、「高さ方向」は重力の作用方向である鉛直方向と平行な方向であり、「水平方向」は高さ方向に対して直角を成す方向である。また「上方」及び「下方」の用語は、ことわりがない限り、高さ方向を基準とする。また「上流」及び「下流」の用語は、ことわりがない限り、食材の搬送(すなわち移動)を基準とする。
【0026】
図1は、食品製造装置10の一例の概略構成を示す側方図である。理解を容易にするため、
図1では、切断ケース30及び搬送路カバー35の一側方部分が仮想的に切断され、切断ケース30及び搬送路カバー35の内側の装置構成が示されている。
【0027】
食品製造装置10は、上流から下流に向けて送られてくる食材(
図4の符号「90」参照)を所望の大きさに切断する装置である。食品製造装置10によって切断可能な食材は限定されない。本実施形態では、小麦粉や米粉から作られる皮等のシート状の柔軟食材が食品製造装置10において切断される。食品製造装置10は、典型的には食材を切断して2以上の部分に完全に分離させるが、食材を部分的に切断してもよく、必ずしも食材を2以上の部分に完全分離させなくてもよい。
【0028】
図1に示す食品製造装置10は、供給装置11、切断装置12及び送出装置13を備える。供給装置11、切断装置12及び送出装置13は上流から下流に向けて順次設けられており、
図1に示す例では、供給装置11の下方に切断装置12が設置され、切断装置12の下方に送出装置13が設置されている。食材は、供給装置11から切断装置12に供給され、切断装置12において切断され、切断後の食材は送出装置13を介して後段装置(図示省略)に送られる。後段装置は限定されず、食材の搬送のみを行う装置であってもよいし、任意の加工を食材に施す装置であってもよい。
【0029】
供給装置11は、切断装置12に向けて食材を送り出す。供給装置11の具体的な構成は限定されない。例えば、供給装置11は、上流に設けられた前段装置(図示省略)から送られてくる食材の中継搬送を行うコンベア装置(例えばワイヤーベルト(ネット)等の無端状搬送ベルトを具備するコンベア装置)であってもよい。また供給装置11は、食材の生成や調製を行う食材供給装置(例えばミキサー等)であってもよいし、他の装置(例えば食材を下流に押し出す押出機等)であってもよい。
【0030】
切断装置12は、供給装置11から供給される食材を切断し、切断分離された食材を送出装置13に向けて送り出す。本実施形態の切断装置12は、受けローラー部31、カッター33を有する切断ローラー部32、及び気体吐出口38を有する気体吹付装置37を有する。
【0031】
受けローラー部31は、切断ケース30によって回転可能に支持され且つ切断ケース30の内側に配置されており、水平方向に延びる受軸線A1を中心に回転する。
【0032】
切断ローラー部32は、切断ケース30によって回転可能に支持され且つ切断ケース30の内側に配置されており、水平方向に延びる切断軸線A2を中心に、カッター33を回転させる。切断軸線A2は、受軸線A1よりも下流側に位置し、受軸線A1と同じ方向へ受軸線A1と平行に延びる。切断ローラー部32及び切断軸線A2は、受けローラー部31及び受軸線A1よりも、送出装置13が食材を送る方向(すなわち送出方向)の下流側に位置する。
図1に示す例において、カッター33及び受けローラー部31は上方から送られてくる食材を切断し、切断軸線A2は受軸線A1よりも下方に位置し、切断ローラー部32及び切断軸線A2は、受けローラー部31及び受軸線A1から水平方向(
図1の右側)にずれて位置する。
【0033】
なお、受けローラー部31の設置位置は受軸線A1の位置によって代表的に表すことができ、切断ローラー部32の設置位置は切断軸線A2の位置によって代表的に表すことができる。
図1に示す例において、切断ローラー部32の設置位置(すなわち切断軸線A2の位置)は、受けローラー部31の設置位置(すなわち受軸線A1の位置)よりも下方(すなわち下流)である。食材の搬送経路のうち、切断軸線A2に最も近づく位置(搬送経路のうちのある範囲が切断軸線A2に最も近づく場合には、当該範囲のうち最も上流側の位置)は、受軸線A1に最も近づく位置(搬送経路のうちのある範囲が受軸線A1に最も近づく場合には、当該範囲のうち最も上流側の位置)よりも下流側である。
【0034】
切断ローラー部32の回転に応じてカッター33と受けローラー部31との間の距離が変わり、カッター33が受けローラー部31に最も近づいた際に、食材はカッター33及び受けローラー部31により挟まれて切断される。
図1において、受軸線A1を中心とした角度位置に関し、受けローラー部31の外周面において最も右側の位置(すなわち受軸線A1と同じ水平面に含まれ且つ切断ローラー部32により近い位置)を「角度位置=0°」に設定し、受けローラー部31の外周面において最も下側の位置(すなわち受軸線A1と同じ垂直面に含まれる位置)を「角度位置=90°」に設定した場合を想定する。この場合、受けローラー部31の外周面のうち食材が切断される箇所の角度位置(すなわち「切断角度位置」)は、「0°<切断角度位置<90°」を満たす。切断後の食材をスムーズに送出装置13へ送り出す観点からは、好ましくは「0°<切断角度位置≦45°」が満たされ、例えば「0°<切断角度位置≦30°」が満たされる。
【0035】
受けローラー部31の外周面の切断角度位置を、当該切断角度位置における法線ベクトルが送出装置13(特に切断後の食材が着地可能な位置(送出ベルト45))を通過するように設定することによって、切断後の食材をスムーズに送出装置13に向けて送り出すことができる。
【0036】
受けローラー部31の回転速度及び切断ローラー部32の回転速度は限定されず、受けローラー部31と切断ローラー部32との間における回転速度の比率も限定されない。本実施形態では、カッター33を回転させつつ食材をカッター33と受けローラー部31との間で挟んで切断する処理を行う間、切断ローラー部32は受けローラー部31とは異なる角速度でカッター33を回転させ、より具体的にはカッター33の角速度は受けローラー部31の角速度よりも大きい。
【0037】
食材の切断の際に、受けローラー部31はカッター33から力を受ける。受けローラー部31の角速度がカッター33の角速度と同じ場合、受けローラー部31のうちの特定の一箇所のみがカッター33から力を受けることになる。受けローラー部31のうちの特定の一箇所のみがカッター33から連続的に繰り返し力を受けることによって、受けローラー部31の当該箇所が局所的に凹んでしまう懸念がある。受けローラー部31の外周面31aに生じた凹部には、構造的に食材が貼り付きやすい。また当該凹部には、食材の破片(粉を含む)が堆積しやすく、凹部に堆積した食材の破片は受けローラー部31に対する食材の貼り付きを助長する。一方、受けローラー部31の角速度がカッター33の角速度と異なる場合、受けローラー部31は少なくとも2以上の異なる箇所でカッター33から力を受けることになり、受けローラー部31がカッター33から受けるダメージを当該2以上の異なる箇所に分散することができる。そのため、受けローラー部31における凹部の発生を効果的に防ぐことができ、少なくとも、受けローラー部31に凹部が生じるまでの時間を長期化することができる。
【0038】
なお図示の例においてカッター33の角速度は受けローラー部31の角速度よりも大きいが、カッター33の角速度は受けローラー部31の角速度よりも小さくてもよい。ただし受けローラー部31の局所的ダメージを軽減する観点から、受けローラー部31の角速度がカッター33の角速度よりも大きい場合、受けローラー部31の角速度がカッター33(すなわち切断ローラー部32)の角速度の倍数とならないようにすることが好ましい。
【0039】
カッター33は、切断ローラー部32の本体部(円柱状部分)の外周面32aから外側に向けて突出するように設けられており、切断軸線A2を中心に当該本体部とともに回転する。
図1に示すカッター33は、切断ローラー部32の本体部に対してカッター留め具34により固定的に取り付けられている。カッター33の突出量は限定されないが、食材がカッター33及び受けローラー部31に挟まれることによって切断される程度に、カッター33は受けローラー部31の外周面31aに近接可能に設けられている。
【0040】
典型的には、カッター33は、切断軸線A2を中心に回転する際に、受けローラー部31の外周面31aに接触可能な程度に切断ローラー部32の本体部から突出するが、必ずしも外周面31aに接触しなくてもよい。受軸線A1と切断軸線A2との間の直線距離は、受けローラー部31の本体部(円柱状部部分)の半径、切断ローラー部32の本体部の半径、及び切断ローラー部32の外周面32aからのカッター33の径方向突出量の和に等しいことが好ましい。ここで言う「カッター33の径方向突出量」は、切断ローラー部32のうちカッター33が取り付けられている箇所における径方向(すなわち当該箇所と切断軸線A2とを結ぶ直線に沿う方向(半径方向))への突出量である。
【0041】
気体吹付装置37は、切断ケース30により支持されており、切断ケース30の内側に位置する気体吐出口38から吐出させた気体を受けローラー部31の外周面31aに吹き付ける。本実施形態の気体吹付装置37は、環境圧(通常は大気圧)よりも大きな圧力を持つ圧縮気体(特に圧縮空気)を、気体吐出口38から噴出させる。
【0042】
気体吐出口38は、水平方向又は鉛直方向と平行な方向に、少なくとも一部が受けローラー部31と重なるように設けられてもよい。例えば、
図1において符号「Rv」で示される範囲に気体吐出口38を位置づけることによって、受けローラー部31に対する効果的な気体の吹き付けと、気体吹付装置37の設置のしやすさとを、高いレベルで両立させることができる。特に、「Rv」で示される範囲に気体吐出口38を設置し、気体吐出口38から吐出される気体が食材に対して直接的には吹き付けられないようにすることで、食材のばたつきや食材の乾燥を防ぐことができる。「Rv」で示される範囲は、受けローラー部31の直径に応じて定められる高さ方向範囲であり、受けローラー部31(すなわち外周面31a)の最上方位置と最下方位置との間の高さ方向範囲である。
【0043】
図1に示す例では、気体吐出口38の全体が、水平方向に、受けローラー部31と重なるように設けられており、とりわけ同一の水平面が気体吐出口38及び受軸線A1の双方を通過するように気体吐出口38の位置が決められている。気体吐出口38は、受けローラー部31と対向するように水平方向に向けられており、気体吐出口38から吐出される気体の主たる進行方向は、水平方向と平行である。ここで言う「主たる進行方向」とは、気体吐出口38から噴出された直後の気体の大部分(例えば50%以上)が進行する方向である。
【0044】
気体吐出口38から吐出された気体の少なくとも一部は、いわゆるコアンダ効果によって、受けローラー部31の外周面31aに沿うように流れる。これにより、受けローラー部31に対する食材の貼り付きを効果的に防ぐことができる。
【0045】
一般に、食材のばたつきを抑える観点からは、食材の搬送方向と直角を成す方向へ食材に対して大きな力が働くような気流を、食材に作用させることは好ましくない。また食材に対して直接的に気体が吹き付けられると、食材の乾燥が促進され、食材には本来的に意図していない硬化やひび割れなどが生じて、食材の品質低下を招きうる。一方、本実施形態の食品製造装置10では、気体吐出口38からの気体は直接的には受けローラー部31に吹き付けられ、受けローラー部31の外周面31aに沿うように流れる気流が食材に接触しうる。そのため本実施形態の食品製造装置10によれば、食材のばたつき及び品質低下を抑制しつつ、受けローラー部31に対する食材の貼り付きを防ぐことができる。
【0046】
コアンダ効果を利用して気体吹付装置37からの気体を受けローラー部31の外周面31a(特に食材が接触しうる部分)を覆うように流動させる観点からは、気体吹付装置37から受けローラー部31に吹き付けられる気体には、受けローラー部31の外周面31aのうち気体吐出口38に最も近い部分に対して気体吹付装置37から直接的に吹き付けられる気体が含まれることが好ましい。とりわけ、気体吐出口38から吐出される気体の主たる進行方向が、受けローラー部31の外周面31aのうち当該気体が直接的に吹き付けられる位置における放射方向(すなわち受けローラー部31の径方向)と一致することが好ましい。
【0047】
図1に示す切断ケース30の天井部には貫通孔25が設けられており、切断ケース30の底部は外方(すなわち下方)に向けて開放されている。貫通孔25は、供給装置11から垂れ下がった食材が通過する位置に設けられ、当該食材が通過するのに十分な大きさを有する。切断ケース30の天井部のうち貫通孔25を取り囲む部分には、上方に向かって延びる搬送路カバー35が取り付けられている。搬送路カバー35の内側は空洞であり、供給装置11から送られてくる食材が通過する。図示の例において、搬送路カバー35のうち、切断ケース30に固定される端部とは反対側の端部を含む部分は、供給装置11に接続されている。
【0048】
このようにして搬送路カバー35及び切断ケース30は、供給装置11から切断装置12(特に受けローラー部31及び切断ローラー部32)に至る食材の経路を覆う。これにより、供給装置11から切断装置12に送られる食材に対して意図しない気流が作用するのを防いで、食材のばたつきを抑制することができる。なお搬送路カバー35は、供給装置11に接続されていなくてもよく、必ずしも供給装置11から切断装置12(特に受けローラー部31及び切断ローラー部32)に至る食材の経路の全体を覆っていなくてもよい。
【0049】
送出装置13は、切断ローラー部32よりも下流側に位置し、受けローラー部31及びカッター33により切断分離された食材を受け取って送出方向へ送る。
図1に示す送出装置13は、水平方向に離間して設けられた2つの送出ローラー(すなわち上流側送出ローラー及び下流側送出ローラー)46と、これらの送出ローラー46に掛け渡されている無端状の送出ベルト(例えば紐状の無端状輪を複数含むベルト)45とを有する。送出ベルト45は、外方に露出された表面が上方に向けられた状態で上流側送出ローラー46から下流側送出ローラー46に向けて走行し、外方に露出された表面が下方に向けられた状態で下流側送出ローラー46から上流側送出ローラー46に向けて走行する。
【0050】
図2は、切断装置12の構成の一部を上方から見た概略図である。理解を容易にするため、
図2では、切断ケース30の上方部分が仮想的に切断され、切断ケース30の内側に設けられている装置構成が示されている。
【0051】
気体吹付装置37から吐出される気体によって受けローラー部31の外周面31aを覆う観点からは、気体吐出口38は、受けローラー部31の軸方向(すなわち受軸線A1が延びる方向)に関して受けローラー部31と向かい合う距離(
図2の上下方向長さ)が大きいほど好ましい。
図2に示す気体吐出口38は、受けローラー部31の軸方向に関し、受けローラー部31の全体と向かい合う。受けローラー部31に対する食材の貼り付きを防ぐ観点からは、気体吹付装置37からの気体が、受けローラー部31の外周面31aのうち食材が接触しうる範囲を覆うように流動することが好ましい。したがって供給装置11からの食材が、軸方向に関して受けローラー部31よりも小さく、軸方向に関して受けローラー部31の外周面31aの一部のみと接触する場合、気体吐出口38が軸方向に関して受けローラー部31の一部のみと向かい合っていても、外周面31aの十分な範囲を気体吹付装置37からの気体によって覆うことが可能である。
【0052】
実際的な観点からは、気体吐出口38は、受けローラー部31の軸方向に関し、受けローラー部31の長さ(特に食材が接触しうる外周面31aの範囲の軸方向長さ)の半分(1/2)以上と向かい合うことで、比較的大きな食材貼り付き防止効果を期待することができる。ただし、気体吐出口38が受けローラー部31の軸方向長さの1/2よりも小さい範囲と向かい合う場合にも、食材貼り付き防止効果を期待することができる。
【0053】
受けローラー部31には、受軸線A1によって中心が貫通されている駆動シャフト61が固定的に取り付けられており、受けローラー部31は駆動シャフト61と一体的に受軸線A1を中心に回転する。駆動シャフト61の一方の端部(
図2の上側端部)にはサーボモーター等の回転駆動装置60が取り付けられており、駆動シャフト61は回転駆動装置60によって受軸線A1を中心に回転させられる。駆動シャフト61のうち、回転駆動装置60と受けローラー部31との間の部分には第1受けストッパー53が固定的に取り付けられており、他方の端部には第2受けストッパー54が固定的に取り付けられている。駆動シャフト61のうち、第1受けストッパー53と受けローラー部31との間の部分には受け駆動ギア58が固定的に取り付けられている。
【0054】
切断ローラー部32には、切断軸線A2によって中心が貫通されている支持シャフト62が固定的に取り付けられており、切断ローラー部32は支持シャフト62と一体的に切断軸線A2を中心に回転する。支持シャフト62の一方の端部(
図2の上側端部)には第1切断ストッパー55が固定的に取り付けられており、他方の端部には第2切断ストッパー56が固定的に取り付けられている。支持シャフト62のうち、第1切断ストッパー55と切断ローラー部32との間の部分には切断駆動ギア59が固定的に取り付けられている。切断駆動ギア59は、受け駆動ギア58と噛み合っており、受け駆動ギア58の回転に応じて回転する。
【0055】
駆動シャフト61及び支持シャフト62の各々は、切断ケース30が有する第1支持フレーム51及び第2支持フレーム52によって、回転自在に支持されている。第1支持フレーム51は、駆動シャフト61のうち第1受けストッパー53と受け駆動ギア58との間の部分に接触し、支持シャフト62のうち第1切断ストッパー55と切断駆動ギア59との間の部分に接触する。第2支持フレーム52は、駆動シャフト61のうち受けローラー部31と第2受けストッパー54との間の部分に接触し、支持シャフト62のうち切断ローラー部32と第2切断ストッパー56との間の部分に接触する。
【0056】
第1受けストッパー53及び第2受けストッパー54は、それぞれ第1支持フレーム51及び第2支持フレーム52に接触することで、水平方向(特に受軸線A1が延びる方向)への駆動シャフト61の移動を制限し、ひいては受けローラー部31の移動を制限するする。同様に、第1切断ストッパー55及び第2切断ストッパー56は、それぞれ第1支持フレーム51及び第2支持フレーム52に接触することで、水平方向(特に切断軸線A2が延びる方向)への支持シャフト62の移動を制限し、ひいては切断ローラー部32の移動を制限する。
【0057】
上述の構成を有する切断装置12では、回転駆動装置60から駆動シャフト61に回転動力が伝えられ、駆動シャフト61とともに受けローラー部31及び受け駆動ギア58が回転する。受け駆動ギア58の回転に伴って切断駆動ギア59も回転する。切断駆動ギア59が回転することによって、支持シャフト62を介して切断駆動ギア59に連結されている切断ローラー部32及びカッター33が回転する。このように
図2に示す切断装置12によれば、単一の回転駆動装置60によって、受けローラー部31及び切断ローラー部32(カッター33を含む)の両方を回転させることができる。
【0058】
図2に示す例において、受けローラー部31の回転速度(角速度)は、回転駆動装置60から出力される回転動力(すなわち駆動シャフト61の回転速度)に応じて決められる。一方、切断ローラー部32及びカッター33の回転速度は、切断駆動ギア59の歯数(特に受け駆動ギア58の歯数に対する切断駆動ギア59の歯数の比率)に応じて決められる。本実施形態では、切断駆動ギア59の歯数が受け駆動ギア58の歯数と異なっており、カッター33の角速度は受けローラー部31の角速度とは異なることになる。具体的には、切断駆動ギア59の歯数は受け駆動ギア58の歯数よりも少なく、カッター33の角速度は受けローラー部31の角速度よりも大きい。
【0059】
図3は、食品製造装置10の制御構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0060】
食品製造装置10が備える制御装置70には、供給駆動装置71、回転駆動装置60、気体吹付装置37及び送出駆動装置75が接続されている。制御装置70は、単一デバイスによって構成されていてもよいし、複数のデバイスの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0061】
供給駆動装置71は、サーボモーター等の動力発生装置により構成され、制御装置70の制御下で供給装置11に動力を与える。
【0062】
回転駆動装置60は、制御装置70の制御下で、受けローラー部31を回転させる受け駆動装置72として機能し、また切断ローラー部32(カッター33を含む)を回転させる切断駆動装置73として機能する。上述のように
図2に示す回転駆動装置60は、受け駆動装置72及び切断駆動装置73として機能する単一デバイスにより構成されているが、受け駆動装置72及び切断駆動装置73はお互いに別々の動力発生装置により構成されていてもよい。
【0063】
気体吹付装置37は、圧縮機などの送風装置により構成され、制御装置70の制御下で気体吐出口38から気体を吐出させる。特に本実施形態の気体吹付装置37は、空気を圧縮して圧縮空気を作り出し、当該圧縮空気を気体吐出口38から噴出させる。
【0064】
送出駆動装置75は、サーボモーター等の動力発生装置により構成され、制御装置70の制御下で送出装置13に動力を与える。
図1に示す例では、送出駆動装置75からの動力が一方の送出ローラー46に与えられて当該送出ローラー46が回転させられ、その結果、送出ベルト45が走行させられる。
【0065】
次に、上述の食品製造装置10の作動例を説明する。
【0066】
以下に説明する各工程は、食品製造装置10を構成する各種デバイスが制御装置70の制御下で又はユーザーの操作に応じて適宜駆動されることによって、実行される。
【0067】
図4は、食品製造装置10を使った食品製造方法(食材切断方法を含む)の一例を示す食品製造装置10の側方図である。
図4では、
図1と同様に、切断ケース30及び搬送路カバー35の一側方部分が仮想的に切断され、切断ケース30及び搬送路カバー35の内側の装置構成が示されている。
図5は、食品製造方法(食材切断方法を含む)の一例を示すフローチャートである。
【0068】
まず、受けローラー部31及び切断ローラー部32(カッター33を含む)の回転が開始される(
図5のS1)。受けローラー部31の回転方向は、受けローラー部31のうち食材90に接触することになる部分が、食材90の搬送の上流から下流に向かって移動するように、決められる。切断ローラー部32の回転方向は、カッター33が食材90を受けローラー部31に押し当てる際にカッター33が食材90の搬送の上流から下流に向かって移動するように、決められる。
図4に示す例において、受けローラー部31の回転方向(すなわち時計回り方向)は、切断ローラー部32の回転方向(すなわち反時計回り方向)とは反対の方向である。
【0069】
そして気体吹付装置37の気体吐出口38から圧縮気体39を吐出させて、気体吹付装置37による受けローラー部31への圧縮気体39の吹き付けを開始し(S2)、受けローラー部31の外周面31aに沿って圧縮気体39を流動させる。なお気体吐出口38からの圧縮気体39の吐出の開始タイミングは、
図5に示す例では受けローラー部31及び切断ローラー部32の回転の開始タイミングの後であるが、受けローラー部31及び切断ローラー部32の回転の開始タイミングと同時であってもよいし、受けローラー部31及び切断ローラー部32の回転の開始タイミングよりも前であってもよい。
【0070】
そして、受けローラー部31及びカッター33が回転駆動され且つ気体吹付装置37からの圧縮気体39が受けローラー部31に吹き付けられている状態で、供給装置11及び送出装置13が駆動され、食材90の搬送及び食材90の切断が開始される(S3)。
【0071】
すなわち、シート状且つ一体的な食材90は、供給装置11から下方に垂れ下がって、搬送路カバー35の内部及び貫通孔25を通って切断ケース30の内側に進入する。そして食材90の進行方向先端側部分は、受けローラー部31の外周面31aに接触し、当該外周面31aに支持されつつ更に下方に垂れ下がる。なお受けローラー部31の外周面31a上における食材90は、受けローラー部31の回転によって、下流への搬送が促される。一方、切断ローラー部32の回転に応じてカッター33が受けローラー部31に近づき、食材90がカッター33及び受けローラー部31により挟まれて切断される。
【0072】
食材90の垂れ下がり量は、供給装置11による食材90の供給速度(すなわち搬送速度)に応じて変わる。一方、食材90の切断タイミングはカッター33の角速度に応じて変わる。そのため制御装置70(
図3参照)は供給駆動装置71及び回転駆動装置60(特に切断駆動装置73)を適宜制御して、所望の大きさの「切断された食材90」が得られるように、供給装置11による食材90の供給速度及びカッター33の角速度が調整される。
【0073】
切断装置12により切断分離された食材90は、送出装置13の送出ベルト45上に載せられ、送出ベルト45とともに後段装置(図示省略)に向かって送出方向D1へ送られる。
【0074】
このように本実施形態の食品製造方法(食材切断方法)は、上流から下流に向けて食材90を搬送する工程と、気体吹付装置37によって受けローラー部31に圧縮気体39を吹き付けつつ、受軸線A1を中心に受けローラー部31を回転させるとともに、受軸線A1よりも下流側に位置する切断軸線A2を中心に受けローラー部31とは異なる角速度でカッター33を回転させて、食材90をカッター33と受けローラー部31との間で挟んで切断する工程と、を含む。
【0075】
以上説明したように本実施形態に係る上述の装置及び方法によれば、気体吹付装置37から吐出される気体を受けローラー部31の外周面31aに沿って流動させつつ、当該外周面31a上で食材90をカッター33によって切断することができる。これにより、受けローラー部31の外周面31aへの食材90の貼り付きを抑制しつつ、受けローラー部31及びカッター33を使って食材90を連続的に切断することができる。
【0076】
受けローラー部31に対する食材90の意図しない貼り付きが発生した場合、食材90の連続的な切断処理が阻害されるため、受けローラー部31に対する食材90の貼り付きを解消する必要がある。しかしながら、受けローラー部31に対する食材90の貼り付きを解消するためには食品製造装置10の稼働を停止させる必要があり、食品製造装置10全体の生産性が低下する。一方、上述の本実施形態に係る装置及び方法によれば、受けローラー部31に対する食材90の意図しない貼り付きが発生しない或いはそのような食材の貼り付きの発生頻度を低減させることができ、食品製造装置10全体として生産性を向上させることができる。
【0077】
特に、圧縮気体39を気体吐出口38から噴出させることによって、気体を受けローラー部31の外周面31aに沿って勢いよく流すことができ、外周面31aに対する食材90の貼り付きを効果的に防ぐことができる。受けローラー部31の外周面31aのうち、食材90が接触する箇所(特にカッター33との間で食材90を挟む箇所)は、構造的に気体が流入しにくい。また受けローラー部31の外周面31aのうち気体吹付装置37から直接的に気体が吹き付けられる箇所が、食材90が接触する箇所(特にカッター33との間で食材90を挟む箇所)から遠い場合、食材90が接触する箇所に気体を到達させ難い。一方、気体吹付装置37から吐出させる気体として圧縮気体39を用いることにより、受けローラー部31の外周面31aのうちの食材90が接触する箇所(特にカッター33との間で食材90を挟む箇所)に、気体を適切に流入させることが可能である。
【0078】
また食材90を切断する際にカッター33を受けローラー部31とは異なる角速度で回転させることによって、切断処理に伴う受けローラー部31の局所的ダメージの蓄積を低減することができる。
【0079】
特に、カッター33の角速度を受けローラー部31の角速度よりも速くすることによって、食材90を切断しつつ、切断分離された食材90をカッター33の回転により下流へ勢いよく送り出すことができる。これにより、切断後の食材90が受けローラー部31に貼り付いてしまうことを、より一層効果的に防ぐことができる。
【0080】
また切断ローラー部32を受けローラー部31よりも送出方向D1の下流側に位置づけることによって、切断分離された食材90を送出装置13にスムーズに渡すことが可能である。切断ローラー部32は、カッター33が本体部から外方に突出する構造を持つ。そのため、切断ローラー部32の本体部は、食材90から離れた位置で回転することが可能であり、特に食材90の切断時に、食材90に接触しないように回転することが可能である。一方、切断直後の食材90は、必ずしも真下には移動せず、斜め下方に落下しやすい。そのため切断ローラー部32を送出方向D1の下流側に位置づけることによって、切断後の食材90は、斜め下方に落下しても、切断ローラー部32の本体部等の装置に接触することなく、送出装置13に到達することが可能である。
【0081】
また受軸線A1よりも下流側に切断軸線A2が位置づけられ、切断ローラー部32が受けローラー部31よりも下流側に設けられる。これにより、食材90はカッター33に先立って受けローラー部31に接触し、食材90を適切に受けローラー部31により支持させた状態で、当該食材90をカッター33により精度良く切断することができる。
【0082】
特に切断軸線A2を受軸線A1よりも下方に位置づけて、切断ローラー部32を受けローラー部31よりも下方に設けることによって、重力を利用して食材90を搬送することができ、切断分離された食材90の下流への送り出しを簡素な装置構成で実現することが可能である。
【0083】
[第1変形例]
本変形例において、上述の実施形態と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0084】
図6は、第1変形例に係る食品製造装置10の一例の概略構成を示す側方図である。
【0085】
本変形例の食品製造装置10において、食材90は水平方向に搬送されつつ、受けローラー部31及びカッター33により挟まれて切断される。
【0086】
図6に示す供給装置11は、水平方向に離間して設けられた2つの搬送ローラー(すなわち上流側搬送ローラー及び下流側搬送ローラー)22と、これらの搬送ローラー22に掛け渡されている無端状の搬送ベルト21とを有する。例えば、供給駆動装置71(
図3参照)からの動力が一方の搬送ローラー22に与えられて当該搬送ローラー22が回転させられ、その結果、搬送ベルト21が走行させられる。搬送ベルト21は、外方に露出された表面が上方に向けられた状態で上流側搬送ローラー(図示省略)から下流側搬送ローラー22に向けて走行し、外方に露出された表面が下方に向けられた状態で下流側搬送ローラー22から上流側搬送ローラーに向けて走行する。食材90は、前段装置(図示省略)から搬送ベルト21(特に上方に向けられた露出表面)上に継続的に載せられ、搬送ベルト21とともに水平方向に搬送される。
【0087】
本変形例においても、切断軸線A2は受軸線A1よりも下流側に位置し、切断ローラー部32及び切断軸線A2は、受けローラー部31及び受軸線A1よりも、送出装置13が食材90を送る方向(すなわち送出方向D1)の下流側に位置する。ただし本変形例において、受けローラー部31及びカッター33は水平方向(
図6の左から右への方向)に送られてくる食材90を切断し、切断ローラー部32及び切断軸線A2は、受けローラー部31及び受軸線A1に対して水平方向(
図6の右側)にずれて位置する。
【0088】
図6に示す例において、食材90の搬送経路のうち、切断軸線A2に最も近づく位置(搬送経路のうちのある範囲が切断軸線A2に最も近づく場合には、当該範囲のうち最も上流側の位置)は、受軸線A1に最も近づく位置(搬送経路のうちのある範囲が受軸線A1に最も近づく場合には、当該範囲のうち最も上流側の位置)よりも下流側である。
【0089】
図6において、受軸線A1を中心とした角度位置に関し、受けローラー部31の外周面において最も上側の位置(すなわち受軸線A1と同じ垂直面に含まれる位置)を「角度位置=0°」に設定し、受けローラー部31の外周面において最も右側の位置(すなわち受軸線A1と同じ水平面に含まれ且つ切断ローラー部32により近い位置)を「角度位置=90°」に設定した場合を想定する。この場合、受けローラー部31の外周面のうち切断角度位置は、「0°<切断角度位置≦135°」を満たす。切断後の食材をスムーズに送出装置13へ送り出す観点からは、好ましくは「0°<切断角度位置≦食材90°」が満たされ、例えば「45°≦切断角度位置≦90°」が満たされる。
【0090】
本変形例の気体吹付装置37の気体吐出口38は、高さ方向に、少なくとも一部が受けローラー部31と重なるように設けられる。例えば、
図6において符号「Rh」で示される範囲に気体吐出口38を位置づけることによって、受けローラー部31に対する効果的な気体の吹き付けと、気体吹付装置37の設置のしやすさとを、高いレベルで両立させることができる。「Rh」で示される範囲は、受けローラー部31の直径に応じた水平方向範囲であり、受けローラー部31(すなわち外周面31a)のうち水平方向に関して最も供給装置11に近接する位置と最も送出装置13に近接する位置との間の水平方向範囲である。
【0091】
図6に示す例では、気体吐出口38の全体が、高さ方向に、受けローラー部31と重なるように設けられており、とりわけ同一の垂直面が気体吐出口38及び受軸線A1の双方を通過するように気体吐出口38の位置が決められている。ここで言う「垂直面」は高さ方向と平行に延在する面であり、水平方向と直角を成す。気体吐出口38は、受けローラー部31と対向するように高さ方向(特に上方)に向けられており、気体吐出口38から吐出される気体の主たる進行方向は、高さ方向と平行である。
【0092】
なお
図6には、受けローラー部31、切断ローラー部32及び気体吹付装置37を支持する切断ケース30(
図1参照)の図示が省略されている。
図6に示す食品製造装置10には、搬送路カバー35(
図1参照)が設けられていないが、上述の実施形態と同様の搬送路カバー35が設けられていてもよい。
【0093】
他の構成は、上述の実施形態(
図1~
図5参照)と同様である。
【0094】
本変形例のように、受けローラー部31及びカッター33によって水平方向に搬送されている食材90を切断する場合にも、気体吹付装置37から受けローラー部31に吹き付けられる気体(圧縮気体39)によって、受けローラー部31に対する食材90の貼り付きを効果的に防ぐことができる。
【0095】
また食材90を切断する際にカッター33を受けローラー部31とは異なる角速度で回転させることによって、カッター33から受ける力に起因する受けローラー部31の局所的ダメージの蓄積を低減することができる。
【0096】
また切断ローラー部32を受けローラー部31よりも送出方向D1の下流側に位置づけることによって、切断分離された食材90を送出装置13にスムーズに渡すことが可能である。
【0097】
[他の変形例]
本発明は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また上述の実施形態及び変形例の構成が、全体的に又は部分的に組み合わせられてもよい。
【0098】
図2に示す例では単一の回転駆動装置60によって受けローラー部31及び切断ローラー部32(カッター33を含む)の双方が回転させられているが、受けローラー部31及び切断ローラー部32のそれぞれに別個の駆動装置が設けられていてもよい。すなわち、受けローラー部31を回転させる受け駆動装置72(
図3参照)と、切断ローラー部32を回転させる切断駆動装置73とが、お互いに別個に設けられていてもよい。この場合、受け駆動装置72及び切断駆動装置73は、制御装置70の制御下で、お互いに独立して、受けローラー部31の回転速度及び切断ローラー部32の回転速度を調整することができる。
【0099】
食材90の切断を行う際、カッター33の角速度は受けローラー部31の角速度よりも遅くてもよい。この場合、受けローラー部31は、切断ローラー部32(カッター33を含む)よりも、送出方向D1の下流側に位置していてもよい。
【0100】
切断軸線A2は、食材90の搬送方向に関して受軸線A1と同じ位置であってもよいし、受軸線A1よりも上流側に位置していてもよい。
【0101】
このように、本明細書で開示されている実施形態(変形例を含む)は例示に過ぎず限定的には解釈されない。したがって上述の実施形態の各要素は、省略、置換、或いは変更されうる。また上述の実施形態同士が組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態と組み合わされてもよい。
【0102】
[食品製造装置、食品製造方法及び食材切断方法を適用可能な食材]
上述の食品製造装置10、食品製造方法及び食材切断方法に使用可能な食材90は限定されない。上述の装置及び方法によれば受けローラー部31に対する食材90の貼り付きを効果的に抑制することができるため、粘着性が大きい食材(例えば含水量が多い食材)を切断する場合に上述の装置及び方法は特に有益となりうる。
【0103】
例えば、焼成食品(例えば、シュウマイ、餃子、春巻き、ブリトー、タコス、及びクレープ等)に用いられる皮、生ハム、チーズ及びゼリー等を、上述の食材90として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 食品製造装置
11 供給装置
12 切断装置
13 送出装置
21 搬送ベルト
22 搬送ローラー
25 貫通孔
30 切断ケース
31 受けローラー部
31a 外周面
32 切断ローラー部
32a 外周面
33 カッター
34 カッター留め具
35 搬送路カバー
37 気体吹付装置
38 気体吐出口
39 圧縮気体
45 送出ベルト
46 送出ローラー
51 第1支持フレーム
52 第2支持フレーム
53 第1受けストッパー
54 第2受けストッパー
55 第1切断ストッパー
56 第2切断ストッパー
58 受け駆動ギア
59 切断駆動ギア
60 回転駆動装置
61 駆動シャフト
62 支持シャフト
70 制御装置
71 供給駆動装置
72 受け駆動装置
73 切断駆動装置
75 送出駆動装置
90 食材
A1 受軸線
A2 切断軸線
D1 送出方向