(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックス
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240620BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240620BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240620BHJP
C08K 5/3437 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
C08L53/00
C08K5/3437
(21)【出願番号】P 2020080511
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】杉江 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大泊 研
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓也
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-344996(JP,A)
【文献】特開2014-137466(JP,A)
【文献】特開2019-179111(JP,A)
【文献】特開2018-090788(JP,A)
【文献】特開2013-195538(JP,A)
【文献】国際公開第2019/083003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/004
C08L 53/00
C08K 5/3437
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色着色剤と、顔料分散剤と、オキサジン化合物と、有機溶剤とを含有し、
前記顔料分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体である
ことを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項2】
顔料分散助剤を更に含む請求項1に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項3】
前記顔料分散助剤は、フタロシアニン系化合物のスルホン化物である請求項2に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項4】
前記オキサジン化合物は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表される化合物である請求項1~3のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【化1】
〔一般式(1)中、R
1及びR
2は、不飽和結合を有してもよいアルキル基又はアリール基を表し、相互に同一であっても異なってもよい。X
1は2価の連結基である。
一般式(2)中、R
3及びR
4は、不飽和結合を有してもよいアルキル基又はアリール基を表し、相互に同一であっても異なってもよい。X
2は2価の連結基である。〕
【請求項5】
前記黒色着色剤は、カーボンブラックを含む請求項1~4のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項6】
前記カーボンブラックは、酸性カーボンブラックである請求項5に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成されるブラックマトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶やプラズマ等を用いた画像表示装置においては、画面の表示領域内の着色パターンの間隙や表示領域周辺部分の縁、また、TFTを用いた液晶ディスプレイではTFTの外光側等で遮光膜(ブラックマトリックス)が設けられている。
そして、液晶表示装置では主にバックライトからの漏れ光が、また、プラズマ表示装置では主に各色光の混濁によるにじみが画面に写り込むのを防止して、表示特性(コントラスト及び色純度)を向上させるために役立っている。
【0003】
例えば、液晶表示装置のバックライトの白色光を着色光に変換するために利用されるカラーフィルターでは、通常、ブラックマトリックスを形成したガラスやプラスチックシート等の透明基板表面に、赤、緑、青の異なる色相の画素を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等のパターンで形成する方法で製造されている。
【0004】
また、画像表示装置と位置入力装置を合わせたタッチパネルにおいても、同様に遮光膜としてブラックマトリックスが形成されたカラーフィルターが利用されており、これまでは、カバーガラスを挟んで、センサー基板と反対の側に形成することが一般的になされていた。しかし、タッチパネルの軽量化への要求が高まるにつれて、より軽量化が図れるよう、カバーガラスの同じ側に遮光膜とタッチセンサーを同時に形成する技術の開発が進んでいる。
【0005】
例えば、特許文献1では、黒色着色剤と、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤と、有機溶剤と、分子内に複数のオキサジン環を持つ多価オキサジン化合物とを含有することを特徴とするブラックマトリックス用レジスト組成物が開示されている。
【0006】
特許文献1では、顔料分散剤としてカルボジイミド系の顔料分散剤を用いている。
多価オキサジン化合物を含むブラックマトリックス用レジスト組成物において上記カルボジイミド系の顔料分散剤を用いた場合、得られるブラックマトリックスは表面抵抗値に優れるが、ブラックマトリックス用レジスト組成物の現像性が低下するといった課題があった。
【0007】
一方で、多価オキサジン化合物を含むブラックマトリックス用レジスト組成物において、従来から一般的に用いられている顔料分散剤(例えば、ウレタン系顔料分散剤)を用いた場合には、ブラックマトリックス用レジスト組成物の現像性は問題ないものの、得られるブラックマトリックスの表面抵抗値が低下するといった課題があった。
【0008】
また、近年では、画像表示装置がモバイル用途等、様々な場面で使用されるようになっている。
このような画像表示装置の用途の拡大に伴い、より堅固なブラックマトリックスが求められるようになってきている。
【0009】
ブラックマトリックスをより堅固にする方法として、高温かつ長時間のポストベークを行う方法が用いられることがある。
しかしながら、従来のブラックマトリックス用顔料分散物では、高温かつ長時間のポストベークを行うと、表面抵抗値が低下してしまうといった問題があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、ブラックマトリックス用レジスト組成物の現像性に優れ、かつ、高温かつ長時間のポストベークをしたとしても表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、黒色着色剤と、顔料分散剤と、オキサジン化合物と、有機溶剤とを含有し、上記顔料分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体であることにより、ブラックマトリックス用レジスト組成物の現像性に優れ、かつ、高温かつ長時間のポストベークをしたとしても表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、黒色着色剤と、顔料分散剤と、オキサジン化合物と、有機溶剤とを含有し、上記顔料分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体である
ことを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散組成物である。
【0014】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物において、顔料分散助剤を更に含むことが好ましい。
また、上記顔料分散助剤は、フタロシアニン系化合物のスルホン化物であることが好ましい。
また、上記オキサジン化合物は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
〔一般式(1)中、R
1及びR
2は、不飽和結合を有してもよいアルキル基又はアリール基を表し、相互に同一であっても異なってもよい。X
1は2価の連結基である。
一般式(2)中、R
3及びR
4は、不飽和結合を有してもよいアルキル基又はアリール基を表し、相互に同一であっても異なってもよい。X
2は2価の連結基である。〕
また、上記黒色着色剤は、カーボンブラックを含むことが好ましい。
また、上記カーボンブラックは、酸性カーボンブラックであることが好ましい。
本発明は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物でもある。
本発明は、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成されるブラックマトリックスでもある。
以下、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、それにより形成されるブラックマトリックスについて詳細に説明する。
【0015】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物>
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、黒色着色剤と、エポキシ樹脂と、オキサジン化合物と、有機溶剤とを含有し、上記エポキシ樹脂が、芳香環を有することを特徴とする。
【0016】
(黒色着色剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、黒色着色剤を含有する。
上記黒色着色剤としては、カーボンブラックを含むことが好ましく、上記カーボンブラックが酸性カーボンブラックであることがより好ましい。
上記カーボンブラックとしては、平均一次粒子径20~60nmが好ましく、なかでも平均一次粒子径20~60nmの中性カーボンブラック及び/又は平均一次粒子径20~60nmの酸性カーボンブラックがより好ましい。
上記黒色着色剤の一次粒子径が20nmより小さい場合、又は60nmより大きい場合は、十分な遮光性を有しないことや、保存安定性に劣ることがある。
なお、上記平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値である。
【0017】
上記中性カーボンブラックと酸性カーボンブラックとを併用する場合には、中性カーボンブラックと酸性カーボンブラックとの混合比率(質量比)は85/15~15/85が好ましく、75/25~40/60がより好ましい。
上記カーボンブラックの中性カーボンブラックの割合が85/15より多い場合は、シール強度が低下することがあり、酸性カーボンブラックの割合が15/85より多い場合は、現像マージンや細線密着性が低下することがある。
【0018】
上述した酸性カーボンブラックと中性カーボンブラックについて説明する。
カーボンブラックは、表面の構造により、酸性カーボンと中性カーボンに大別できる。酸性カーボンとは、元々あるいは人工的に酸化した炭素質物質であり、蒸留水と混合煮沸した時に酸性を示す。一方、中性カーボンは、蒸留水と混合煮沸した時に中性またはそれより高いpHを示すことが知られている。
【0019】
上記中性カーボンブラックとしては、pHが8.0~10.0の範囲が好ましく、具体的には、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のプリンテックス25(平均一次粒子径56nm、pH9.5)、プリンテックス35(平均一次粒子径31nm、pH9.5)、プリンテックス65(平均一次粒子径21nm、pH9.5)、三菱ケミカル社製のMA#20(平均一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#40(平均一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#30(平均一次粒子径30nm、pH8.0)等が挙げられる。
【0020】
上記酸性カーボンブラックとしては、pHが2.0~4.0の範囲が好ましく、具体的には、コロンビアケミカルズ社製のRaven1080(平均一次粒子径28nm、pH2.4)、Raven1100(平均一次粒子径32nm、pH2.9)、三菱ケミカル社製のMA-8(平均一次粒子径24nm、pH3.0)、MA-100(平均一次粒子径22nm、pH3.5)、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のスペシャルブラック250(平均一次粒子径56nm、pH3.0)、スペシャルブラック350(平均一次粒子径31nm、pH3.0)、スペシャルブラック550(平均一次粒子径25nm、pH4.0)等が挙げられる。
【0021】
上記黒色着色剤としては、顔料分散性や表面抵抗値を好適に付与する観点から、スペシャルブラック250であることが好ましい。
【0022】
なお、上記pHは、カーボンブラック1gを、炭酸を除いた蒸留水(pH7.0)20mlに添加してマグネチックスターラーで混合して水性懸濁液を調製し、ガラス電極を使用して25℃で測定することができる(ドイツ工業品標準規格 DIN ISO 787/9)。
【0023】
上記黒色着色剤の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の全固形分に対する質量分率として、3~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
上記黒色着色剤の含有量が3質量%未満では、ブラックマトリックスを形成した場合の遮光性が低くなることがあり、70質量%を超えると、顔料分散が困難となることがある。
【0024】
(顔料分散剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、顔料分散剤を含有する。上記顔料分散剤は、窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体である。
上記顔料分散剤と、後述するオキサジン化合物とを含有することにより、ポストベーク時の高温によって上記オキサジン化合物が重合して高分子量体となることで、高温によって軟化した塗膜の中で上記黒色着色剤の移動が発生しても、当該オキサジン化合物の重合体がスペーサーとなることで上記黒色着色剤同士が接触しない。
また、上記顔料分散剤は上記黒色着色剤への吸着が強いために、上記オキサジン化合物の重合体同様、スペーサーとなることで上記黒色着色剤同士が接触しない。
したがって、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物では、導電性のストラクチャー構造を形成しないことにより、高い表面抵抗値が確保できたと推定される。
ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0025】
上記窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体としては、特開2019-35970号公報で開示されているもの、及び、製造方法を適宜選択して用いることができる。
上記窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体としては、具体的には、側鎖に4級アンモニウム塩基及びアミノ基のうち少なくとも一方を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなることが好ましく、A-Bブロック共重合体及びB-A-Bブロック共重合体のうち少なくとも一方であることがより好ましい。
【0026】
上記窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体のアミン価は、10~200mgKOH/gが好ましく、20~150mgKOH/gがより好ましい。
なお、アミン価は、アクリル系ブロック共重合体1g中のアミノ基を中和するのに必要な酸のモル当量に対応したKOHのmg数で表した値である。
【0027】
上記窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体の分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1000~40000であることが好ましく、2000~20000であることがより好ましい。
【0028】
上記窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体の市販品としては、BYK-LPN21116、BYK-2000、BYK-LPN6919、BYK-LPN21324、BYK-LPN22012(いずれもビックケミー社製)等が挙げられる。
【0029】
上記顔料分散剤の含有量としては、上記黒色着色剤100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0030】
(オキサジン化合物)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、オキサジン化合物を含有する。
上記オキサジン化合物は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
〔一般式(1)中、R
1及びR
2は、不飽和結合を有してもよいアルキル基又はアリール基を表し、相互に同一であっても異なってもよい。X
1は2価の連結基である。
一般式(2)中、R
3及びR
4は、不飽和結合を有してもよいアルキル基又はアリール基を表し、相互に同一であっても異なってもよい。X
2は2価の連結基である。〕
【0031】
R1及びR2、並びに、R3及びR4は不飽和結合を有してもよいアルキル基又はアリール基である。
上記アルキル基としては、例えば、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等や、カシューナッツ殻液 (CNSL)由来の不飽和結合を有してもよいアルキル基等 が挙げられる。
【0032】
上記アリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0033】
X
1及びX
2は2価の連結基である。
上記2価の連結基としては、下記式(3)~(5)に示す連結基の他、炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基や、上記アルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が、-O-、-S-、-NH-、ウレタン基、ウレア基、アミド基、置換基を有してもよいシロキサン結合、又は、-CO-に置換された2価の連結基等が挙げられる。
【化3】
【0034】
上記一般式(1)で表されるオキサジン化合物としては、表面抵抗値が高いブラックマトリックスを形成する観点から、R1及びR2がフェニル基、かつ、X1が上記式(3)~(5)に示す連結基のいずれかであることが好ましい。
また、上記一般式(2)で表されるオキサジン化合物としては、表面抵抗値が高いブラックマトリックスを形成する観点から、R3及びR4がH、かつ、X2がメチレンジオキシ基、又は、R3及びR4がカシューナッツ殻液 (CNSL)由来の不飽和結合を有してもよいアルキル基、かつ、X2がエチレン基であることが好ましい。
【0035】
上記オキサジン化合物を得る方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、特開2000-178332号公報、特開2003-344996号公報等に記載の方法を用いることができる。
【0036】
上記オキサジン化合物の含有量としては、高温かつ長時間のポストベークをしたとしても表面抵抗値が低下しないブラックマトリックスを好適に形成する観点から、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の全固形分に対する質量分率として、下限が0.1質量%が好ましく、下限が0.5質量%であることがより好ましく、下限が1質量%であることがさらに好ましく、下限が3質量%であることが特に好ましく、下限が5質量%であることが最も好ましい。
また、上記オキサジン化合物の含有量としては、ブラックマトリックス内の顔料濃度に由来する光学濃度確保の観点から、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の全固形分に対する質量分率として、上限が30質量%であることが好ましく、上限が25質量%であることがより好ましく、上限が20質量%であることがさらに好ましく、上限が15質量%であることが特に好ましい。
【0037】
(有機溶剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては、従来から液晶ブラックマトリックスレジストの分野で使用されている有機溶剤が好適に使用できる。
【0038】
上記有機溶剤としては、具体的には、常圧(1.013×102kPa)における沸点が100~250℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、含窒素系有機溶剤等である。
上記沸点が250℃を超える有機溶剤を多量に含有していると、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布して形成される塗膜をプレベークする際に、有機溶剤が充分に蒸発せずに乾燥塗膜内に残存し、乾燥塗膜の耐熱性が低下することがある。
また、上記沸点100℃未満の有機溶剤を多量に含有していると、ムラなく均一に塗布することが困難になり、表面平滑性に優れた塗膜が得られなくなることがある。
【0039】
上記有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、蟻酸n-アミル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤等を例示できる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
上記有機溶剤の中でも、溶解性、分散性、塗布性等の点で、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n-アミル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることがより好ましい。
【0041】
(顔料分散助剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、顔料分散助剤を含有することが好ましい。
上記顔料分散助剤は、上記黒色着色剤の微粒子化や分散の工程において、基本骨格の部分が顔料表面に吸着し、酸基が有機溶剤や顔料分散剤との親和力を高めることにより、上記黒色着色剤の分散時の微細化や分散後の経時分散安定性などを向上させる効果を有する。また、上記黒色着色剤分散助剤自身が有機溶剤中に溶解あるいは微粒子で分散状態になるものが、上記黒色着色剤の表面のより広い範囲にわたって吸着することができるためにさらに好適である。
【0042】
上記顔料分散助剤としては、酸基を有するフタロシアニン系化合物、酸基を有するアントラキノン系化合物、酸基を有するナフタレン系化合物等が例示できる。
なかでも、上記黒色着色剤の分散性の観点から、酸基を有するフタロシアニン系化合物が好ましい。
【0043】
上記酸基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。
なかでも、上記黒色着色剤の分散性させる観点上、ブラックマトリックスに表面抵抗値を好適に付与する観点から、スルホン酸基が好ましい。
【0044】
上記酸基を有するフタロシアニン系化合物の市販品としては、BYK-2100(ビックケミー社製)、ソルスパース5000(ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0045】
上記顔料誘導体の含有量は、上記黒色着色剤100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0046】
(ブラックマトリックス用顔料分散組成物)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、粘度が10mPa・s以下であることが好ましく、8mPa・s以下であることがより好ましく、6mPa・s以下であることが更に好ましい。
なお、上記粘度は、E型粘度計(東機産業社製、R100型粘度計 型式RE100L)を用いて25℃において測定した粘度を意味する。
【0047】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、40℃で1ヶ月間保存した前後の粘度変化率[(保存後の粘度-保存前の粘度)/(保存前の粘度)]が、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、6%以下であることが更に好ましい。
【0048】
(ブラックマトリックス用顔料分散組成物の製造方法)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の製造方法としては、上述した各種成分を加え、混合及び練肉することにより得ることができる。
上記練肉をする方法としては特に限定されず、例えば、ビーズミル、レディーミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を用い、公知の方法により練肉すればよい。
【0049】
<ブラックマトリックス用レジスト組成物>
本発明は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物でもある。
【0050】
(ブラックマトリックス用顔料分散組成物)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、上述した本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を含有する。
上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全質量を基準として、30~80質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましい。
【0051】
(光重合開始剤)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射されることにより、ラジカルやカチオンを発生することのできるものであれば特に限定されず、例えば、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のベンゾフェノン系、チオキサントン系、アントラキノン系、トリアジン系等の光重合開始剤等が挙げられる。
上記光重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0052】
上記光重合開始剤の含有量は、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全固形分に対する質量分率として、1~20質量%であることが好ましい。
【0053】
(光重合性化合物)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、光重合性化合物を含有することが好ましい。
上記光重合性化合物としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個又は2個以上有するモノマー、光重合性不飽和結合を有するオリゴマー等が挙げられる。
【0054】
上記光重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとして、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレート又はアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレート又はアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート又はアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレート又はアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、イソボニルメタクリレート又はアクリレート、グリセロールメタクリレート又はアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート又はアクリレート等を用いることができる。
【0055】
上記光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとして、例えば、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタアリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を用いることができる。
【0056】
上記光重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、上記モノマーを適宜重合させて得られたものを用いることができる。
上記光重合性化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記光重合性化合物の含有量は、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全固形分に対する質量分率として、3~50質量%であることが好ましい。
【0058】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
上記アルカリ可溶性樹脂としては、上記黒色着色剤に対してバインダーとして作用し、かつ、ブラックマトリックスを製造する際に、その現像処理工程において用いられる現像液、特にアルカリ現像液に対して可溶性を有するものであることが好ましい。
【0059】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、ブロック共重合体としても良い。ブロック共重合体を採用することにより、他の共重合体よりも、顔料分散能が向上し、PGMEAやアルカリ現像液への溶解性を付与することができる。
そのブロック共重合体のなかでも、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体からなるブロックと、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックを有するブロック共重合体が好ましい。
【0060】
上記ブロック共重合体としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されているものが使用できる。なかでも、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なスチレン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、カルボエポキシジアクリレート等のモノマー、オリゴマー類の群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。
ただし、N-ビニルピロリドン、硫黄元素含有モノマーは使用しない方が望ましい。
上記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合、アニオン重合にて合成されたブロック樹脂を採用できる。
上記ブロック共重合体の一部のブロック部分は、ランダム共重合体から構成されていても良い。
【0061】
上記アルカリ可溶性樹脂として、アルカリ可溶性カルド樹脂を採用することもできる。
上記アルカリ可溶性カルド樹脂としては、フルオレンエポキシ(メタ)アクリル酸誘導体とジカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との付加生成物であるフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物等を挙げることができる。
また、本アルカリ可溶性樹脂は、光重合性の官能基を有していても良い。
【0062】
上記アルカリ可溶性樹脂の酸価としては、現像特性の観点から5~300mgKOH/gが好ましく、5~250mgKOH/gがより好ましく、10~200mgKOH/gがさらに好ましく、60~150mgKOH/gが特に好ましい。
なお、本明細書において、上記酸価は理論酸価であり、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とその含有量に基づいて算術的に求めた値である。
【0063】
上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、現像特性や有機溶剤への溶解性の観点から1,000~100,000が好ましく、3,000~50,000がより好ましく、5,000~30,000がさらに好ましい。
なお、本発明において、上記重量平均分子量は、GPCに基づいて得られるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本明細書において、上記重量平均分子量を測定する装置としては、Water2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてはPLgel 5μm MIXED-D(Agilent Technologies社製)を用いる。
【0064】
上記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、上記黒色着色剤100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、10~150質量部がさらに好ましい。
この場合、上記アルカリ可溶性樹脂の含有量が1質量部未満では、現像特性が低下することがあり、上記アルカリ可溶性樹脂の含有量が200質量部を超えると、上記黒色着色剤の濃度が相対的に低下するため、薄膜として目的とする色濃度を達成することが困難となることがある。
【0065】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、1級、2級、及び3級の何れのアミノ基も含有せず、さらに4級アンモニウム基も含有しないことが好ましい。さらに、塩基性基を有しないことがより好ましい。
なお、本発明による効果を毀損しない範囲において、ブロック共重合体以外の構造を有するアルカリ可溶性樹脂を配合してもよい。
【0066】
(有機溶剤)
上記有機溶剤としては、上述した本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物で記載した有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
【0067】
上記有機溶剤の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全質量を基準として、1~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましい。
【0068】
(その他の添加剤)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、必要に応じて、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0069】
(ブラックマトリックス用レジスト組成物)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、現像液に対する溶解性に優れる。
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物をガラス基板(コーニング1737)上にスピンコーターにて厚みが1μmとなるように塗布し、100℃で3分間プレベークした後、23℃の現像液(水酸化カリウムの0.05質量%水溶液)に浸漬させたときに、容易に溶解されることが好ましい。
【0070】
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、現像性に優れる。
上記現像性は以下の方法で試験をすることができる。
ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークする。
次いで、5μm、8μm、10μm、15μm、20μm、30μmのラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用いてUV積算光量400mJ/cm2で露光する。
その後、23℃の現像液(水酸化カリウムの0.05質量%水溶液)中に浸漬させ、0.5kgf/cm2のシャワー現像圧にて現像パターンが現れ始める時間(ブレイクポイント)を測定する。
このときに、上記フォトマスクの部分のブラックマトリックス用レジスト組成物が、60秒以内に完全に除去されることが好ましく、45秒以内に完全に除去されることがより好ましく、30秒以内に完全に除去されることが更に好ましい。
【0071】
(ブラックマトリックス用レジスト組成物の製造方法)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の製造方法としては、例えば、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を作製し、その後、残りの材料を加えて攪拌装置等を用いて攪拌混合することにより作製することができる。
上記攪拌、混合する方法としては特に限定されず、超音波分散機、高圧乳化機、ビーズミル、3本ロール、サンドミル、ニーダー等、公知の方法を用いることができる。
なお、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を作製する際に、必要に応じて、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物で記載した上記黒色着色剤、上記顔料分散剤、上記オキサジン化合物、上記顔料分散助剤等を添加してもよい。
【0072】
<ブラックマトリックス>
本発明のブラックマトリックスは、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成される。
【0073】
本発明のブラックマトリックスの形成方法としては特に限定されず、例えば、透明基板上に本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、上記塗膜上にフォトマスクを置き、該フォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて光硬化等の方法によりブラックマトリックスを形成することができる。
【0074】
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布、乾燥、露光及び現像する方法等は、公知の方法を適宜選択することができる。
また、上記透明基板としては、ガラス基板、プラスチック基板等、公知の透明基板を適宜選択して用いることができる。
【0075】
上記塗膜の厚みとしては、乾燥後の膜厚として、0.2~10μmが好ましく、0.5~6μmがより好ましく、1~4μmがさらに好ましい。
上記厚みの範囲とすることにより、所定のパターンを好適に現像することができ、所定の光学濃度を好適に付与することができる。
【0076】
本発明のブラックマトリックスは、ガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光(UV積算光量400mJ/cm2)し、更に230℃で3時間ポストベークして、厚み1μmのレジストパターンを形成したときの表面抵抗値が5.0×109Ω/□以上が好ましく、1.0×1010Ω/□以上がより好ましく、1.0×1011Ω/□以上がさらに好ましく、5.0×1011Ω/□以上が特に好ましく、1.0×1012Ω/□以上が最も好ましい。
なお、上記表面抵抗値は、本体:微小電流計 R8340、オプション:シールドボックス R12702A(いずれもアドバンス社製)にて測定することができる。
【0077】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックスは、上述した特性を有するため、画像表示装置やタッチパネル等のブラックマトリックスとして好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、ブラックマトリックス用レジスト組成物の現像性に優れ、かつ、高温かつ長時間のポストベークをしたとしても表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、本実施例において、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0080】
以下の実施例、比較例で使用する各種材料は以下のとおりである。
<黒色着色剤>
(カーボンブラック1)
酸性カーボンブラック、製品名「SPECIAL BLACK 250」、平均一次粒子径56nm、pH3.0、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製
(カーボンブラック2)
中性カーボンブラック、製品名「Printex35」、平均一次粒子径31nm、pH9.5、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製
<顔料分散剤>
(顔料分散剤1)
製品名「BYK-LPN21116」、側鎖に4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体、固形分40%、ビックケミー社製
(顔料分散剤2)
製品名「BYK-2000」、側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体、固形分40%、ビックケミー社製
(顔料分散剤3)
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、イソシアネート基を有するカルボジイミド当量316のポリカルボジイミド化合物50.0部、分子量1000のポリ(3-メチルペンチルアジペート)ジオール115.7部を仕込み、約100℃で5時間保持して、イソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで末端にカルボキシル基を有する分子量2000のポリカプロラクトンの開環重合物84.6部を仕込み、約100℃で2時間保持して、カルボジイミド基とカルボキシル基とを反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート375.5部を仕込み数平均分子量約4200、カルボジイミド当量1583の顔料分散剤3の溶液(固形分40%)を得た。
(顔料分散剤4)
製品名「DISPERBYK-167」、ウレタン系顔料分散剤、固形分52%、ビックケミー社製
<顔料分散助剤>
(顔料分散助剤1)
製品名「BYK-2100」、フタロシアニン系化合物のスルホン化物、ビックケミー社製
(顔料分散助剤2)
製品名「ソルスパース5000」、フタロシアニン系化合物のスルホン化物、ルーブリゾール社製
(顔料分散助剤3)
100ml三角フラスコに濃硫酸を30ml仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながらC.I.ピグメントレッド2を10g投入し、室温で30分攪拌した。1Lビーカーに水50gと氷50gの混合物を入れ、上記の反応物をこの氷水中に注ぎ、マグネチックスターラーで30分攪拌した。これを減圧下で濾過・水洗し、得られた固体を乾燥させて、C.I.ピグメントレッド2のスルホン化物(顔料分散助剤3)12gを得た。
<オキサジン化合物>
(オキサジン化合物1)
上記一般式(2)中、R3及びR4がHであり、X2がメチレンジオキシ基で表されるオキサジン化合物(商品名「JBZ-OP100N」、JFEケミカル社製)
(オキサジン化合物2)
上記一般式(1)中、R1及びR2がフェニル基、X1が上記式(3)で表される連結基であるオキサジン化合物を公知の方法(特開2000-178332号公報等に記載の方法)により合成した。
(オキサジン化合物3)
上記一般式(2)中、R3及びR4がカシューナッツ殻液 (CNSL)由来の不飽和結合を有してもよいアルキル基であり、X2がエチレン基で表されるオキサジン化合物(商品名「CR-276」、東北化工社製)
<有機溶剤>
PM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
<光重合性化合物>
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
<光重合開始剤>
OXE02(製品名「イルガキュアOXE02」、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、BASF社製)
<アルカリ可溶性樹脂>
WR-301(製品名「WR-301」、カルド系樹脂、酸価100mgKOH/g、固形分45%、ADEKA社製)
【0081】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物の作製>
上述した黒色着色剤、顔料分散剤1~4、顔料分散助剤1~3、オキサジン化合物1~3及び有機溶剤を表1の組成となるように混合し、ビーズミルで一昼夜混練してブラックマトリックス用顔料分散組成物を作製した。
【0082】
<評価試験>
(粘度)
実施例及び比較例で作製したブラックマトリックス用顔料分散組成物について、E型粘度計(東機産業株式会社製、R100型粘度計 型式RE100L)を用いて25℃における粘度を測定した。その結果を表1に示した。
【0083】
(粘度変化率)
実施例及び比較例で作製したブラックマトリックス用顔料分散組成物を、40℃で1ヶ月間保存した。
上記保存の前後において、E型粘度計(東機産業株式会社製、R100型粘度計 型式RE100L)を用いて25℃における粘度を測定し、粘度変化率[(保存後の粘度-保存前の粘度)/(保存前の粘度)]を求め、下記基準で評価した。その結果を表1に示した。
○:保管前後の粘度変化率が10%以下であった。
×:保管前後の粘度変化率が10%を超えた。
【0084】
【0085】
高速攪拌機を用いて、上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物と他の材料(光重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤及び有機溶剤)とを表2の組成になるように均一に混合した後、孔径3μmのフィルターで濾過し、実施例及び比較例のブラックマトリックス用レジスト組成物を得た。
【0086】
<評価試験>
(表面抵抗値)
実施例及び比較例の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で3時間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターンを作製した。
作製した各ブラックレジストパターンの表面抵抗値を本体:微小電流計 R8340、オプション:シールドボックス R12702A(いずれもアドバンス社製)にて測定した。その結果を表2に示した。
【0087】
(現像液溶解性)
実施例及び比較例の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、23℃の現像液(水酸化カリウムの0.05質量%水溶液)に浸漬させ、目視にて溶解状態を評価した。その結果を表2に示した。
【0088】
(現像性)
実施例及び比較例の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。
次いで、5μm、8μm、10μm、15μm、20μm、30μmのラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用いてUV積算光量400mJ/cm2で露光した。
その後、23℃の現像液(水酸化カリウムの0.05質量%水溶液)中に浸漬させ、0.5kgf/cm2のシャワー現像圧にて現像パターンが現れ始める時間(ブレイクポイント)を測定し、以下の基準で評価した。その結果を表2に示した。
○:フォトマスクの部分のブラックマトリックス用レジスト組成物を、30秒以内に完全に除去できた。
△:フォトマスクの部分のブラックマトリックス用レジスト組成物を、30秒を超えて60秒以内に完全に除去できた。
×:フォトマスクの部分のブラックマトリックス用レジスト組成物を、60秒を超えても完全に除去できない。
【0089】
【0090】
実施例より、黒色着色剤と、顔料分散剤と、オキサジン化合物と、有機溶剤とを含有し、
上記顔料分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体であるブラックマトリックス用顔料分散組成物を用いることにより、ブラックマトリックス用レジスト組成物の現像性に優れ、かつ、高温かつ長時間のポストベークをしたとしても表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができることが確認された。
一方で、カルボジイミド系の顔料分散剤を用いた比較例1では、現像液溶解性に劣っており(溶解せずに剥離した)、現像性にも劣っていた。また、ウレタン系顔料分散剤を用いた比較例2及び、オキサジン化合物を用いない比較例3では、高温かつ長時間のポストベークをしたときの表面抵抗値が十分ではないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、ブラックマトリックス用レジスト組成物の現像性に優れ、かつ、高温かつ長時間のポストベークをしたとしても表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することができる。