(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】基板エッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H01L21/306 B
(21)【出願番号】P 2020091749
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】590002172
【氏名又は名称】株式会社プレテック
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昭広
(72)【発明者】
【氏名】青島 史哲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸
(72)【発明者】
【氏名】木下 哲男
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-194090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0096665(US,A1)
【文献】特開2016-066740(JP,A)
【文献】特開平11-111661(JP,A)
【文献】特開2001-332842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる保持テーブルと、該保持テーブルに保持されて回転する前記基板の中心にエッチングのための薬液を供給する薬液供給ノズルと、前記保持テーブルを囲うように配設されており、前記基板に供給された前記薬液が飛散するのを防止するカップを有する枚葉式の基板エッチング装置であって、
前記カップは、前記基板の中心から外れた周辺領域に向けて純水を供給可能なカップノズルを
複数有しており、
該複数のカップノズルの各々は、平面視において、前記基板の周りに等間隔で配置されているものであることを特徴とする基板エッチング装置。
【請求項2】
前記カップノズルの向きは、平面視において、前記基板の中心に向かう方向から前記基板の回転方向に沿うように傾斜しているものであることを特徴とする
請求項1に記載の基板エッチング装置。
【請求項3】
前記基板エッチング装置は、前記カップを上下駆動可能なカップ用モーターを有しており、
該カップ用モーターでの前記カップの上下位置制御により、前記カップノズルから供給される前記純水の前記基板の周辺領域中の到達位置が調整可能なものであることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の基板エッチング装置。
【請求項4】
前記カップは、PTFE、PVDF、PFA、PCTFE、PEEK、PPS、PVC、PE、およびPPのうちのいずれかの材質からなるものであることを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載の基板エッチング装置。
【請求項5】
前記基板は、フォトマスク、ガラスディスク、Siウエハ、Geウエハ、GaAsウエハ、およびSiCウエハのうちのいずれか、または、フラットパネル、および多層セラミックスのいずれかの製造工程に使用される基板であることを特徴とする請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の基板エッチング装置。
【請求項6】
前記薬液は、無機酸溶液、無機アルカリ溶液、有機酸溶液、有機アルカリ溶液、オゾン水、および電解水のうちのいずれかであるか、または、これらのうち2種類以上を混合した溶液であることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載の基板エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を供給して基板をエッチングする枚葉式の基板エッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品製造分野において、基板表面を平坦化する技術としてCMP(化学機械研磨)やガスを使用したドライエッチング処理などが知られている。また、エッチング溶液を供給して基板表面を化学反応でエッチングするWetエッチング工程もその一つとして認識されている。
例えば特許文献1では、基板中心(回転軸)周りで基板を回転させながら、基板中心にエッチング用の薬液を上方からノズルで供給する枚葉式のエッチング装置が記載されている。
【0003】
近年、半導体、フォトマスク、画像パネル製造等の電子部品製造分野において集積度向上に伴って、基板表面の平坦性がより高度なオーダーで要求されるようになった。特には、基板表面の高低差が結晶構造単位(結晶単位とも言う)で数える程度の数nmオーダーで平坦性の調整が求められるようになった。
【0004】
ここで、結晶単位や数nmオーダーという数値の理解のため、表1に例を挙げる。表1のうち、例えばシリコンウエハの結晶は、一般的にはダイヤモンド構造を示し、結晶構造が連鎖的に続いて物質を構成している。
図5にダイヤモンド構造を示す。
図5中のaは格子定数を示す。結晶単位での原子間距離は5.43Å(0.543nm)となる。近年要求されている平坦度レベルは、このような結晶構造単位の数個分という高レベルとなっている。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように高度な基板平坦性を求める中で、基板表面には従来のようなCMP、ドライ、WETのエッチング工程で対応できない結晶構造単位で数える程度の部分的な凹凸が発生しており、基板表面の周辺領域(特には外周部)が凹となり基板中心領域が凸となる基板があった。より平坦性を求めた場合では、基板表面のこの凸の中心領域を選択的にエッチングする必要があった。
枚葉方式の場合で基板中心に供給した薬液は、基板の回転運動により必ず基板外周部等の周辺領域にも広がっていき、該周辺領域に対してもエッチング作用をもたらすため、エッチングを抑制するためのリンス液を効率的に基板周辺領域に供給する機構が必要であった。
【0008】
そこで本発明は、Wet処理装置で基板と化学反応によってエッチング処理する工程に用いることができ、基板表面において基板中心領域にある、部分的な凸領域を容易にエッチングすることができ、特には基板表面の高低差が均一になるように処理することができる基板エッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、基板を保持して回転させる保持テーブルと、該保持テーブルに保持されて回転する前記基板の中心にエッチングのための薬液を供給する薬液供給ノズルと、前記保持テーブルを囲うように配設されており、前記基板に供給された前記薬液が飛散するのを防止するカップを有する枚葉式の基板エッチング装置であって、
前記カップは、前記基板の中心から外れた周辺領域に向けて純水を供給可能なカップノズルを有することを特徴とする基板エッチング装置を提供する。
【0010】
このような本発明の基板エッチング装置であれば、薬液供給ノズルにより、回転する基板の中心に薬液を供給できるとともに、カップノズルにより、基板の周辺領域に純水を供給することができる。これにより、周辺領域では薬液が希釈され、中心領域に比べて、薬液によるエッチング作用を抑制することができる。このため、中心領域の部分的な凸領域を容易に選択的にエッチングすることができ、結晶構造単位レベルの高低差を調整することができる。例えば基板表面の中心領域が凸で、周辺領域(特に外周部)が凹の基板において、中心領域を選択的に効率良くエッチングすることができ、表面の高低差が均一な基板を得ることができる。
また、カップにより基板の回転による薬液等の飛散を防止することができる。
【0011】
また、前記カップは前記カップノズルを複数有しており、
該複数のカップノズルの各々は、平面視において、前記基板の周りに等間隔で配置されているものとすることができる。
【0012】
このようにカップノズルが複数配置されていれば、周辺領域に純水を効率良く供給することができるし、等間隔配置であれば周辺領域に均等に純水を供給することができる。この結果、周辺領域におけるエッチング作用をより効率良く抑制することができる。
【0013】
また、前記カップノズルの向きは、平面視において、前記基板の中心に向かう方向から前記基板の回転方向に沿うように傾斜しているものとすることができる。
【0014】
このようにカップノズルの向きが傾斜していれば、傾斜していないものよりも、回転方向に沿って純水を供給することができるため、供給される純水が基板の周辺領域に到達したときに、回転する基板や該回転基板上で回転しつつ外側に向かって移動する薬液との衝突により生じる液流の乱れや液はねを効果的に抑制することができる。
【0015】
また、前記基板エッチング装置は、前記カップを上下駆動可能なカップ用モーターを有しており、
該カップ用モーターでの前記カップの上下位置制御により、前記カップノズルから供給される前記純水の前記基板の周辺領域中の到達位置が調整可能なものとすることができる。
【0016】
このようなカップ用モーターを有するものであれば、より容易に、基板の周辺領域中の所望の位置に純水を供給して到達させることが可能である。
【0017】
また、前記カップは、PTFE、PVDF、PFA、PCTFE、PEEK、PPS、PVC、PE、およびPPのうちのいずれかの材質からなるものとすることができる。
【0018】
このような材質のものであれば、酸等の薬液に耐性があり基板を汚染することもないし、また、簡便にカップを用意することができる。
【0019】
また、前記基板は、フォトマスク、ガラスディスク、Siウエハ、Geウエハ、GaAsウエハ、およびSiCウエハのうちのいずれか、または、フラットパネル、および多層セラミックスのいずれかの製造工程に使用される基板とすることができる。
【0020】
これらの基板は表面の部分エッチングにより高い平坦度が求められるものであり、部分エッチングを可能にする本発明は好適である。
【0021】
前記薬液は、無機酸溶液、無機アルカリ溶液、有機酸溶液、有機アルカリ溶液、オゾン水、および電解水のうちのいずれかであるか、または、これらのうち2種類以上を混合した溶液であるものとすることができる。
【0022】
このようなものであれば、基板のエッチングを効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の基板エッチング装置であれば、基板の中心領域に結晶構造単位レベルの部分的な凸領域が存在していても、その凸領域を容易に選択的にエッチングすることができ、特には表面の高低差が均一な基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の基板エッチング装置の一例を示す縦断面図である。
【
図2】カップおよびカップノズル周辺の一例を示す上面図である。
【
図3A】実施例におけるエッチング量(リンス位置が基板の中心から半径方向に70mmの位置の場合)の等高線図である。
【
図3B】実施例におけるエッチング量(リンス位置が基板の中心から半径方向に80mmの位置の場合)の等高線図である。
【
図3C】実施例におけるエッチング量(リンス位置が基板の中心から半径方向に90mmの位置の場合)の等高線図である。
【
図4】実施例における、リンス位置が基板の中心から半径方向に70mmの位置と90mmの位置の場合の、半径方向における基板中心からの位置に対するエッチング量の分散データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について図面を参照して実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は本発明の基板エッチング装置の一例を示す縦断面図である。本発明の基板エッチング装置1は枚葉式のものであり、まず全体として、主に保持テーブル2と、薬液供給ノズル3と、カップノズル4を有するカップ5を有している。
ここでエッチング対象である基板Wは保持テーブル2により保持され、例えば、フォトマスク、ガラスディスク、Siウエハ、Geウエハ、GaAsウエハ、およびSiCウエハのうちのいずれか、または、フラットパネル、および多層セラミックスのいずれかの製造工程に使用される基板とすることができる。これらは表面の部分エッチングにより高い平坦度が求められるものである。そのため後述するような部分エッチングが可能な本発明の装置は好適である。
以下、本発明の基板エッチング装置1の各部について詳述する。
【0026】
保持テーブル2は、基板Wを保持して回転(基板Wの中心Cを中心軸とする回転)させるものである。保持テーブル2の上端にはピン6が設けられており、このピン6により基板Wが保持されて固定されている。なおピン6の数はここでは4本であるが、これに限定されない。また、保持テーブル2はテーブル回転軸7を介してテーブル回転用モーター8と連結されている。このような構成により、テーブル回転用モーター8を駆動させることで、テーブル回転軸7を回転(軸回転)させ、該テーブル回転軸7と連結されている保持テーブル2を回転(軸回転)させることができる。そして、この保持テーブル2の回転に伴い、ピン6で保持されている基板Wを回転(軸回転)させることができる。
【0027】
薬液供給ノズル3は、保持テーブル2に保持されて回転する基板Wの中心Cにエッチングのための薬液9を吐出して供給するものである。薬液供給ノズル3は薬液供給パイプ10とつながっており、該薬液供給パイプ10を通して薬液9を供給できるようになっている。また、保持テーブル2の上方にまでアーム11がのびて配設されており、このアーム11により薬液供給ノズル3が支持されている。このような構成により、保持テーブル2上の基板Wの中心Cに向けて薬液供給ノズル3から薬液9を供給できるようになっている。
【0028】
なお、薬液9としては、例えば、無機酸溶液、無機アルカリ溶液、有機酸溶液、有機アルカリ溶液、オゾン水、および電解水のうちのいずれかであるか、または、これらのうち2種類以上を混合した溶液であるものとすることができる。これらは、基板Wのエッチングを効果的に行うことができる。
【0029】
カップ5は保持テーブル2の周囲を囲うように配設されている。カップ5の形状は特に限定されず、保持テーブル2上の基板Wの回転により飛んでくる薬液9等が、基板エッチング装置1の外に飛散するのを防止することができる形状であればよい。
図1に示す例では、円筒と、該円筒の上端に内側に向かって水平に突出する部位(天板)と、下端に外側に向かって水平に突出する部位(底板)とからなっており、円筒の内側に位置する基板Wからの薬液9等の飛散を効果的に防ぐことができる。この内側への突出部位にカップノズル4が配設されている。また、円筒の中ほどの位置にも外側に向かって突出する部位が設けられており、カップシャフト12の上端と連結されている。
【0030】
カップシャフト12はカップ5の周囲に複数設けられており、装置ベース13を貫通している。そしてこれらの複数のカップシャフト12の下端は板状のシャフトベース14により支持されている。またシャフトベース14に対してカップ用モーター15が配設されている。このような構成により、カップ用モーター15の駆動によってシャフトベース14を上下動させることができ、それに伴ってカップシャフト12、さらにはカップ5およびカップノズル4を一体的に上下動させることが可能である。
なお、カップシャフト12が装置ベース13を貫通する穴にはリング機構のリニアブッシュ16が設けられており、カップシャフト12が円滑に上下動できるようになっている。またカップシャフト12は、伸縮可能な蛇腹構造のシャフトベローズカバー17により覆われて保護されている。
【0031】
カップノズル4は、保持テーブル2上の基板Wの中心Cから外れた周辺領域Pに向けて純水18を供給するものである。なお、前述したカップ用モーター15の駆動により、カップ5およびカップノズル4を上下動させることができるため、この上下動可能な機構は、基板Wの周辺領域P内の所望の位置に純水18を到達させるための調整に役立てることができる。カップ5およびカップノズル4の上下動という比較的簡易な機構による調整であるため簡便である。
【0032】
ところで
図1の例では、前述したようにカップ5の内側への突出部位にカップノズル4は設けられている。該突出部位には純水供給接手19が接続されており、該純水供給接手19と連結し、かつ、上記突出部位を貫通するように純水通液路20が設けられている。外側から純水供給接手19と接続する純水供給パイプ21から供給された純水は、純水通液路20を通って基板Wに向けて吐出されるようになっている。
純水通液路20は、純水供給接手19側から一旦水平に伸び、途中で下方へ傾斜しており、斜め下の方向に純水を吐出する形状になっている。純水通液路20がこのような形状であるため、水平方向に延びたままの形状で水平方向に吐出するものよりも、基板Wの表面の狙った位置に純水18を供給しやすい。
【0033】
ここで、基板Wへの純水供給位置である周辺領域Pについて説明する。
図1に示すような基板Wの中心Cから外れた領域内であれば良く、純水を実際に到達させる位置は適宜決定することができる。基板Wの中心Cからどの程度までの領域を選択的かつ集中的にエッチングするか(逆に言えば、それ以外の外側の領域でのエッチング作用を抑制したいか)に応じて決めることができる。
なお、純水の到達位置は、前述したカップ用モーター15によるカップ5やカップノズル4の上下動のための機構や、カップノズル4の純水通液路20の形状や向き、あるいは、流速、流量、水圧等で調整可能である。
【0034】
例えば純水18の到達位置(供給位置)が基板Wの半径の1/2の位置よりも内側(内周部)の点P1の位置であれば、基板Wの回転による遠心力により、点P1から外側の領域に純水18が行き渡るため、そこでは薬液9が純水18により希釈されてエッチング作用が抑制される。一方、点P1から内側の領域では供給された薬液9により効果的にエッチングされる。
また、点P1に限らず、基板Wの半径の1/2の位置よりも外側(外周部)の点P2の位置に純水18が到達するように調整することもできる。この場合も、点P2から外側の領域ではエッチング作用が抑制される一方で、点P2から内側の領域では効果的なエッチングが可能である。
このように基板Wの凸領域の範囲に応じて、意図的にエッチングをする領域とエッチングを抑制する領域をコントロールすることができる。
【0035】
図2は基板エッチング装置1におけるカップ5およびカップノズル4の周辺の一例を示す上面図である。ここではカップノズル4は6本配置されている。
図2に示すように、平面視において、基板Wの周りに(この場合、円形の基板Wの円周に対して)等間隔で配置されている。すなわち、基板Wの中心C周りの角度で60°ごとに配置されている。もちろん、カップノズル4を1本だけ配置することも可能であるが、このように2本以上の複数本を均等に配置することにより、効率よく均等に、基板Wの周辺領域Pに純水18を供給しやすい。より一層明確に、選択的にエッチングする領域とエッチングを抑制する領域とを分けることができる。
なお、例として基板Wが円形の場合について説明したが、基板が矩形の場合においても、その周りに等間隔で配置(例えば基板中心に対して一定の中心角度ごとに配置)することができる。
【0036】
またカップノズル4の向きが、平面視において、基板Wの中心Cに向かう方向から基板Wの回転方向に沿うように傾斜していると好ましい。
図2の例では、基板Wは時計回りに回転している(右回転)。ここで、各々のカップノズル4の純水供給継手19は基板Wの中心Cを向いているが、純水通液路20の途中からは基板Wの中心Cに向かってやや左側(すなわち、基板Wの回転方向)を向くように傾斜している。このような回転方向への傾斜により、傾斜がない場合や基板Wの回転方向に逆らう向きに傾斜している場合よりも、基板Wやその表面上を流れる薬液9と純水18との衝突により生じる液流の乱れや液はねを効果的に抑制することが可能である。このため、選択的にエッチングする領域とエッチングを抑制する領域との境界が乱れたりするのをより一層抑制することができる。
【0037】
これらのエッチング領域とエッチング抑制領域の範囲調整やそれらの境界の明確化は、所望の領域のみを効果的にエッチングできるかどうかに関わるものであり、エッチング後の基板の平坦度等の品質に影響してくる。
【0038】
なお、カップ5としては、例えばPTFE、PVDF、PFA、PCTFE、PEEK、PPS、PVC、PE、およびPPのうちのいずれかの材質からなるものとすることができる。
このような材質のものであれば、酸等の薬液9に対して耐性があり、処理される基板Wの汚染を抑制できるとともに、簡便にカップ5を用意することができる。
【0039】
以上のような本発明の基板エッチング装置1であれば、例えば基板Wの中心C側である中心領域に部分的な凸領域が存在する場合、基板Wの表面において簡単にその凸領域だけを選択的、集中的にエッチングすることができる。その一方でそれより外側の領域ではエッチングされるのを抑制することができる。そのため、結晶構造単位レベルのような微細な高低差を部分エッチングにより調整して平坦な基板Wを得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
図1-2に示す本発明の基板エッチング装置1を用いて、以下に示す手順(1)~(10)でSOIウエハの表面層であるSi層(SOI層)の部分エッチングを行い、エッチング量の測定を行った。
(1)ウエハ断面が下からSi基板、SiO
2層、Si層(SOI層)で形成された直径200mmのSOIウエハ(単に基板とも言う)を用意し、表面層のSi層を光干渉方式センサーを使用して基板面内の厚み分布を測定した。
(2)基板エッチング装置1に、分布測定した基板を保持テーブル2上に水平置きにした。
(3)基板回転数を200rpmに回転させて、純水18(リンス溶液)を基板の周辺領域に向けて6本のカップノズル4から供給した。
(4)薬液供給ノズル3より、薬液9としてHF溶液を供給した。
(5)HF溶液を所定時間供給した後に供給を停止し、基板に向けてオゾン水を供給して表面上に薄い酸化膜を形成させた。
(6)オゾン水の供給を停止した。
(7)(4)~(6)の操作を5回繰り返しを行い、基板の表面層をわずかにエッチングした。
(8)(7)操作後、リンス溶液を供給した後に基板を乾燥した。
(9)処理後の面内厚み分布を光干渉方式センサーを使用して確認した。
(10)処理前と処理後の膜厚を差し引きして、面内のエッチング分を算出した。
【0041】
なお(3)では、純水18の供給位置(リンス位置)を直径200mm基板に対して直径140mm位置(中心Cから半径方向に70mmの位置)、直径160mm位置(中心Cから半径方向に80mmの位置)、直径180mm位置(中心Cから半径方向に90mmの位置)と変えて、各々、比較を行った。
【0042】
上記の純水供給位置別でエッチング量の比較を行った。結果を
図3A-3C、
図4に示す。
図3A-3Cはエッチング量の等高線図である(各々、リンス位置が基板の中心Cから半径方向に70mmの位置、80mmの位置、90mmの位置の場合)。
図4はリンス位置が基板の中心Cから半径方向に70mmの位置と90mmの位置の場合の、半径方向における基板中心からの位置に対するエッチング量の分散データのグラフである。各10mm別に平均値を取得したものである。
いずれも純水供給位置より外側ではエッチングが抑制されており、純水供給位置より内側ではエッチングされている事が確認された。これにより、純水供給位置を調整することにより、基板表面の所望の中心側の領域のみ効果的にエッチングすることが可能なことが分かる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0044】
1…本発明の基板エッチング装置、 2…保持テーブル、 3…薬液供給ノズル、
4…カップノズル、 5…カップ、 6…ピン、 7…テーブル回転軸、
8…テーブル回転用モーター、 9…薬液、 10…薬液供給パイプ、
11…アーム、 12…カップシャフト、 13…装置ベース、
14…シャフトベース、 15…カップ用モーター、 16…リニアブッシュ、
17…シャフトベローズカバー、 18…純水、 19…純水供給接手、
20…純水通液路、 21…純水供給パイプ、
C…基板の中心、 P…基板の周辺領域、 P1、P2…基板の周辺領域中の点、
W…基板。