(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガス濃度流量測定装置、酸素濃縮装置、およびガス濃度流量測定装置の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/667 20220101AFI20240620BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20240620BHJP
G01N 29/024 20060101ALI20240620BHJP
A61M 16/10 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01F1/667 A
G01F1/66 101
G01N29/024
A61M16/10 B
(21)【出願番号】P 2020093010
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】本多 茂
(72)【発明者】
【氏名】溝田 巌
(72)【発明者】
【氏名】上山 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅彦
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-030954(JP,A)
【文献】特開2003-329651(JP,A)
【文献】特開平08-105865(JP,A)
【文献】特開平07-209259(JP,A)
【文献】中国実用新案第208621560(CN,U)
【文献】中国実用新案第210572119(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66- 1/667
G01N 29/02-29/036
A61M 16/00-16/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流通する測定流路を形成する測定部と、
前記測定流路における上流側および下流側にそれぞれ配置された一対の超音波センサと、
前記ガスの温度を測定する温度センサと、
一方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度と、他方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに、前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出し、前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置と、
少なくとも前記超音波センサおよび前記温度センサを電気的に接続する装置基板パターンを有する装置基板と、
を備え、
前記温度センサは、
前記装置基板の表面上に配置されて前記ガスに接触可能な位置に配置されたセンサ本体部と、
センサ本体部に設けられたセンサ端子と、
を有し、
前記装置基板は、前記センサ端子を前記装置基板パターンに電気的に接続する装置基板ランドを有
し、
前記測定部には、前記測定流路に連通して、内側に前記温度センサを配置可能なセンサ流路が形成され、
前記測定流路は前記装置基板の表面に対して該装置基板の表面に直交する基板上下方向に離れた位置に配置されて前記装置基板の表面に沿って延び、かつ、前記センサ流路は前記測定流路と前記装置基板との間に配置され、
前記測定部は、
前記装置基板の表面に対向して配置されて前記装置基板に前記測定部を支持させる対向面と、
前記対向面に形成されて前記センサ流路を前記装置基板の表面に向けて開口させる基板側開口と、
を有し、
前記温度センサは前記基板側開口を通じて前記センサ流路に配置され、
前記測定部は、前記基板側開口を囲むように前記対向面に形成された測定部側接触面を有し、
前記測定部側接触面と前記装置基板の表面とに接触して挟まれたシールリングと、
前記測定部と前記装置基板とを近接させるように固定する付勢固定部と、
をさらに備えるガス濃度流量測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記測定部側接触面に連続して形成されて前記シールリングの径方向を向くとともに前記シールリングの径方向から前記シールリングに接触可能な径方向接触面をさらに有する請求項
1に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記対向面に形成されて前記装置基板の表面から離れる方向に凹むとともに前記シールリングが配置されるリング保持溝をさらに有し、
前記リング保持溝は、前記測定部側接触面、および前記径方向接触面によって形成されている請求項
2に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項4】
前記センサ流路は、前記測定流路から前記装置基板の表面に向かって延びる第一中継流路と、前記第一中継流路に連通して前記温度センサ周りに形成されたセンサ周囲流路と、前記センサ周囲流路に連通して前記装置基板から離れるように延びる第二中継流路と、
を含む請求項
1から
3のいずれか一項に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項5】
前記測定部には、
前記第一中継流路と前記測定流路とを連通する第一流路開口と、
前記第一中継流路とセンサ周囲流路とを連通する第二流路開口とが形成され、
前記温度センサは、前記装置基板の表面に直交する基板上下方向に、前記第一流路開口および前記第二流路開口と並んで配置されている請求項
4に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項6】
前記測定部には、
前記測定流路の下流側に配置されて前記ガスを前記測定流路から導出口まで導出する導出流路が形成され、
前記導出流路には、上流側から下流側に向かって前記第一中継流路、前記センサ周囲流路、前記第二中継流路、および前記第二中継流路に連通するとともに前記導出口を有する流出側流路がこの順に形成されている請求項
4または
5に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項7】
前記測定部には、
前記測定流路の上流側に配置されて導入口から供給される前記ガスを前記測定流路に導入する導入流路が形成され、
前記導入流路には、上流側から下流側に向かって前記第二中継流路に連通するとともに前記導入口を有する流入側流路、前記第二中継流路、前記センサ周囲流路、および前記第一中継流路がこの順に形成されている請求項
4または
5に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項8】
前記ガスとしての酸素含有ガス中の酸素濃度、および前記酸素含有ガスの流量を測定する請求項1から
7のいずれか一項に記載のガス濃度流量測定装置と、
前記ガス濃度流量測定装置を組み込んだ濃縮装置本体と、
を備える酸素濃縮装置。
【請求項9】
ガスの濃度および流量を測定するガス濃度流量測定装置の組み立て方法であって、
前記ガスの温度を測定する温度センサのセンサ端子を、前記装置基板の装置基板パターンに電気的に接続された装置基板ランドに電気的に接続する工程と、
前記ガスが流通する測定流路と、前記測定流路に連通するセンサ流路とを形成している測定部を、前記センサ流路を前記装置基板の表面に向けて開口させる基板側開口を通じて前記温度センサが前記センサ流路に配置されるように、前記装置基板の表面に押し付けて前記装置基板に固定する工程と、
超音波を発信および受信可能な超音波センサを、前記測定流路の上流側と下流側とに配置し、かつ、前記装置基板パターンに電気的に接続する工程と、
一方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度と他方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出して前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置を設ける工程と、
を含
み、
前記測定部が前記装置基板に固定された状態において、該測定部は、
前記装置基板の表面に対向して配置されて前記装置基板に前記測定部を支持させる対向面と、
前記対向面に形成されて前記センサ流路を前記装置基板の表面に向けて開口させる前記基板側開口と、
前記基板側開口を囲むように前記対向面に形成された測定部側接触面と、
を有し、
前記測定部を前記装置基板に固定する工程では、前記測定流路が前記装置基板の表面に対して該装置基板の表面に直交する基板上下方向に離れた位置に配置されて前記装置基板の表面に沿って延びるように配置し、かつ、前記センサ流路を前記測定流路と前記装置基板との間に配置し、前記測定部側接触面と前記装置基板の表面とに接触するように該測定部側接触面と該装置基板の表面との間にシールリングを挟むとともに、前記測定部と前記装置基板とを近接させるように固定するガス濃度流量測定装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの濃度および流量を測定するガス濃度流量測定装置と、ガス濃度流量測定装置を組み込んだ酸素濃縮装置と、ガス濃度流量測定装置の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているようにガスの流通する測定管に超音波送受信器を対向して配置して、ガスの流量および濃度を計測する超音波式のガス濃度流量測定装置が知られている。
【0003】
このようなガス濃度流量測定装置は酸素濃縮装置にも使用されている。特許文献2に示すように酸素濃縮装置は、例えば空気を圧縮した後に空気中の窒素を取り除き、高濃度の酸素を生成する装置である。なお酸素濃縮装置は、例えば呼吸不全等の理由により在宅で酸素を補給しなければならない患者に対して酸素を供給するために用いられる装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6305209号公報
【文献】特許5499265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の超音波式のガス濃度流量測定装置では、ガス濃度を測定するため、ガス温度を測定する温度センサが設けられている。この温度センサは、ガス濃度流量測定装置においてガスに接触する位置に設置される必要があるため、温度センサの設置位置に制約があり、温度センサを取り付ける作業に手間を要する。
【0006】
そこで本発明は、構造を簡素化して温度センサを容易に設置することが可能なガス濃度流量測定装置を提供する。
【0007】
本発明の一態様に係るガス濃度流量測定装置は、ガスが流通する測定流路を形成する測定部と、前記測定流路における上流側および下流側にそれぞれ配置された一対の超音波センサと、前記ガスの温度を測定する温度センサと、一方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度と、他方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに、前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出し、前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置と、少なくとも前記超音波センサおよび前記温度センサを電気的に接続する装置基板パターンを有する装置基板と、を備え、前記温度センサは、前記装置基板の表面上に配置されて前記ガスに接触可能な位置に配置されたセンサ本体部と、センサ本体部に設けられたセンサ端子と、を有し、前記装置基板は、前記センサ端子を前記装置基板パターンに電気的に接続する装置基板ランドを有している。
【0008】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部には、前記測定流路に連通して、内側に前記温度センサを配置可能なセンサ流路が形成されていてもよい。
【0009】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定流路は前記装置基板の表面に対して該装置基板の表面に直交する基板上下方向に離れた位置に配置されて前記装置基板の表面に沿って延び、かつ、前記センサ流路は前記測定流路と前記装置基板との間に配置されていてもよい。
【0010】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部は、前記装置基板の表面に対向して配置されて前記装置基板に前記測定部を支持させる対向面と、前記対向面に形成されて前記センサ流路を前記装置基板の表面に向けて開口させる基板側開口と、を有し、前記温度センサは前記基板側開口を通じて前記センサ流路に配置されていてもよい。
【0011】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部は、前記基板側開口を囲むように前記対向面に形成された測定部側接触面を有し、前記測定部側接触面と前記装置基板の表面とに接触して挟まれたシールリングと、前記測定部と前記装置基板とを近接させるように固定する付勢固定部と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部は、前記測定部側接触面に連続して形成されて前記シールリングの径方向を向くとともに前記シールリングの径方向から前記シールリングに接触可能な径方向接触面をさらに有していてもよい。
【0013】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部は、前記対向面に形成されて前記装置基板の表面から離れる方向に凹むとともに前記シールリングが配置されるリング保持溝をさらに有し、前記リング保持溝は、前記測定部側接触面、および前記径方向接触面によって形成されていてもよい。
【0014】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記センサ流路は、前記測定流路から前記装置基板の表面に向かって延びる第一中継流路と、前記第一中継流路に連通して前記温度センサ周りに形成されたセンサ周囲流路と、前記センサ周囲流路に連通して前記装置基板から離れるように延びる第二中継流路と、を含んでいてもよい。
【0015】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部には、前記第一中継流路と前記測定流路とを連通する第一流路開口と、前記第一中継流路とセンサ周囲流路とを連通する第二流路開口とが形成され、前記温度センサは、前記装置基板の表面に直交する基板上下方向に、前記第一流路開口および前記第二流路開口と並んで配置されていてもよい。
【0016】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部には、前記測定流路の下流側に配置されて前記ガスを前記測定流路から導出口まで導出する導出流路が形成され、前記導出流路には、上流側から下流側に向かって前記第一中継流路、前記センサ周囲流路、前記第二中継流路、および前記第二中継流路に連通するとともに前記導出口を有する流出側流路がこの順に形成されていてもよい。
【0017】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部には、前記測定流路の上流側に配置されて導入口から供給される前記ガスを前記測定流路に導入する導入流路が形成され、前記導入流路には、上流側から下流側に向かって前記第二中継流路に連通するとともに前記導入口を有する流入側流路、前記第二中継流路、前記センサ周囲流路、および前記第一中継流路がこの順に形成されていてもよい。
【0018】
また上記のガス濃度流量測定装置では、前記壁部は、前記流路開口を囲むように筒状をなしていてもよい。
【0019】
また本発明の一態様に係る酸素濃縮装置は、前記ガスとしての酸素含有ガス中の酸素濃度、および前記酸素含有ガスの流量を測定する上記のガス濃度流量測定装置と、前記ガス濃度流量測定装置を組み込んだ濃縮装置本体と、を備えている。
【0020】
また本発明の一態様に係る組み立て方法は、ガスの濃度および流量を測定するガス濃度流量測定装置の組み立て方法であって、前記ガスの温度を測定する温度センサのセンサ端子を、前記装置基板の装置基板パターンに電気的に接続された装置基板ランドに電気的に接続する工程と、前記ガスが流通する測定流路と、前記測定流路に連通するセンサ流路とを形成している測定部を、前記センサ流路を前記装置基板の表面に向けて開口させる基板側開口を通じて前記温度センサが前記センサ流路に配置されるように、前記装置基板の表面に押し付けて前記装置基板に固定する工程と、超音波を発信および受信可能な超音波センサを、前記測定流路の上流側と下流側とに配置し、かつ、前記装置基板パターンに電気的に接続する工程と、一方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度と他方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出して前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置を設ける工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0021】
上記のガス濃度流量測定装置等によれば、構造を簡素化して温度センサを容易に設置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る酸素濃縮装置の全体図である。
【
図2】上記酸素濃縮装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】上記酸素濃縮装置におけるガス濃度流量測定装置のブロック図である。
【
図4】上記酸素濃縮装置におけるガス濃度流量測定装置の全体斜視図である。
【
図5】上記酸素濃縮装置におけるガス濃度流量測定装置の全体斜視図であって、構成部品に分解して示す図である。
【
図6】上記ガス濃度流量測定装置における測定部の断面図であって、
図5のI-I断面図である。
【
図7】上記ガス濃度流量測定装置における測定部の要部を装置基板側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(全体構成)
図1および
図2に示すように、本実施形態の酸素濃縮装置1は、患者に酸素を供給する装置であり、外部から取り込んだ空気Aを濃縮し、高濃度(例えば、90%程度)の酸素含有ガスGを生成する。具体的には酸素濃縮装置1は、吸気フィルタ11、圧縮機12、窒素吸着機構13、タンク14、および筐体120(
図1参照)を有する濃縮装置本体100と、濃縮装置本体100に組み込まれたガス濃度流量測定装置15とを備えている。
【0024】
酸素濃縮装置1では、筐体120の背面に設けられた吸気フィルタ11を介して外部から取り込まれた空気Aを圧縮機12で圧縮し、圧縮された空気Aに含まれる窒素を窒素吸着機構13で触媒(図示省略)に吸着させて高濃度の酸素を含有する酸素含有ガス(酸素および窒素を含有するガス)Gを生成し、患者へ供給可能とする。以下、酸素含有ガスGを単に「ガスG」とする。
【0025】
ここで
図2に示すように窒素吸着機構13は一対の吸着塔13a、13bを備えている。一対の吸着塔13a、13bの中にはゼオライト等の触媒が充填されている。吸着塔13aおよび13bのうちの一方を加圧して触媒に窒素を吸着させ、他方を減圧して触媒に吸着されている窒素を放出し、次の加圧に備える。このように窒素吸着機構13では、一対の吸着塔13a、13bを交互に加圧および減圧させて高濃度の酸素が生成される。窒素吸着機構13で生成された高濃度の酸素はタンク14に蓄えられる。タンク14に蓄えられた酸素は、ガスGとしてガス濃度流量測定装置15を通った後に患者に供給される。すなわち、本実施形態の酸素濃縮装置1はPSA(Pressure Swing Adsorption)方式を採用している。
【0026】
ここで酸素濃縮装置1の各構成部品は、不図示の制御ユニットによって統括的に制御される。制御ユニットは、CPU、RAM及びROMなどから構成され、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行されるプログラムを記憶する。
【0027】
図1に示すように筐体120は略直方体形状をなしている。筐体120には操作ボタン121、ディスプレイ122、および、ガス濃度流量測定装置15に接続されてガスGを吐出する吐出チューブ(ゴムチューブ等)123が設けられている。
【0028】
(ガス濃度流量測定装置)
次にガス濃度流量測定装置15の詳細について説明する。
ガス濃度流量測定装置15は筐体120に組み込まれている。
図2に示すように、ガス濃度流量測定装置15は、タンク14の下流側に設けられて、ガスG中の酸素の濃度および流量を計測可能となっている。より具体的には
図3に示すように、ガス濃度流量測定装置15は超音波式の測定装置であって、測定部20と、温度センサ30と、演算制御装置40と、装置基板50と、超音波センサ60と、圧力センサ70と、比例弁80とを備えている。
【0029】
(装置基板)
図4および
図5に示すように装置基板50は、矩形のプリント基板であって、基材51、基材51に設けられて伝導体によって形成された装置基板パターン52、および、基材51を貫通する装置基板ホール51a周りに設けられて装置基板パターン52に電気的に接続される複数の装置基板ランド53を有している。なお装置基板ホール51aは、後述する各電子部品を挿入実装するための孔であるが、装置基板ホール51aの無い装置基板ランド53も設けられて、後述する各電子部品が装置基板50に面実装されてもよい。装置基板ランド53には後述する素子基板62や温度センサ30が電気的に接続される。
【0030】
(温度センサ)
次に温度センサ30について詳細に説明する。
図5に示すように温度センサ30は、装置基板50の表面上に設けられている。温度センサ30は、後述する測定流路Fを流通するガスGの温度Tを測定流路Fの下流側で測定可能となっている。
【0031】
具体的には
図6に示すように、温度センサ30はセンサ本体部31と、センサ端子32とを有している。
センサ本体部31は装置基板50の表面上に配置されている。センサ本体部31は後述する測定部20によって覆われることでガスGに接触可能となっている。
【0032】
センサ端子32はセンサ本体部31の表面に設けられている。センサ端子32が装置基板50の表面側で装置基板ランド53にはんだ付けされることで温度センサ30が面実装され、装置基板パターン52(
図4参照)に電気的に接続されている。よって温度センサ30は装置基板50に直付けされている。なお温度センサ30は面実装されなくともよく、センサ端子32が装置基板ホール51aに挿通された上で装置基板ランド53に接続される挿入実装によって設けられてもよい。
【0033】
(圧力センサ)
圧力センサ70は、温度センサ30と同じように装置基板50の表面上に設けられている。圧力センサ70は後述する測定流路Fを流通するガスGの圧力を測定流路Fの上流側で測定可能となっている。圧力センサ70は装置基板ランド53にはんだ付けによって固定されて装置基板パターン52(
図4参照)に電気的に接続されている。圧力センサ70で測定されたガスGの圧力は、例えば後述する演算制御装置40(
図3参照)における演算において、圧力によって変動し得る定数を確定する際に用いられる。
【0034】
(測定部)
図4および
図5に示すように測定部20は、装置基板50の表面上に固定されて設けられている。以下、装置基板50を基準として表面から離れる方向を基板上方とし、装置基板50の表面と反対側の裏面から離れる方向を基板下方とする。測定部20は筒状をなしている。より具体的には測定部20は、測定管(流路形成部)21と、測定管21の両端部に設けられた超音波センサ取付部22、温度センサ取付部23、吐出口部24、吸込口部25、および圧力センサ取付部26とを有している。
【0035】
(測定管)
測定管21は、タンク14(
図3参照)からのガスGが流通する測定流路Fを内側に形成する円筒状をなしている。測定流路Fは装置基板50の表面に対して装置基板50の表面に直交する基板上下方向に離れた位置に配置されて、装置基板50の表面に沿って延びている。測定管21は例えばABS樹脂等の樹脂材料によって形成されている。以下、測定管21の延びる方向を測定部長手方向とする。また測定部長手方向に直交する測定管21の径方向を測定部径方向とし、測定管21の周方向を測定部周方向とする。
【0036】
図6に示すように測定管21には、測定部長手方向の下流側の端部において基板下方に向かって開口する第一流路開口21aが形成されている。第一流路開口21aの周りには、第一流路開口21aを囲むとともに測定管21の外周面から基板下方に向かって突出する円筒状の壁部21bが設けられている。壁部21bは測定管21から装置基板50の表面と離れた位置まで突出している。また壁部21bの内側は基板上下方向に延びる第一中継流路C1となっている。壁部21bにおける装置基板50側の端部には、第一中継流路C1を開口させる第二流路開口21cが形成されている。第一流路開口21aと第二流路開口21cとは、基板上下方向に並んで配置されている。
【0037】
(超音波センサ取付部)
超音波センサ取付部22は、測定管21における測定部長手方向の両端部、すなわち測定流路Fの上流側および下流側の端部に一つずつ設けられている。本実施形態では超音波センサ取付部22は測定管21と同じ樹脂によって測定管21と一体成型されている。超音波センサ取付部22は測定管21よりも外径が大径の筒状をなしている。
図5に示すように各々の超音波センサ取付部22には、測定部長手方向に貫通して測定流路Fにつながる断面円形状の孔である開口22aが形成されている。
【0038】
(温度センサ取付部)
図4および
図5に示すように、温度センサ取付部23は、測定流路Fの下流側の超音波センサ取付部22Xに近接する位置で、測定管21の外周面から基板下方に突出して設けられて円筒状をなしている。本実施形態では温度センサ取付部23は測定管21と同じ樹脂によって測定管21と一体成型されている。
図6に示すように温度センサ取付部23の内側には、測定流路Fにつながる空間Sが形成されている。空間Sは上記の第一中継流路C1を介して測定流路Fに連通している。
【0039】
温度センサ取付部23の空間Sは装置基板50から基板上方に延びる円柱状の空間である。
図7に示すように空間Sにおける測定部長手方向のちょうど真ん中の位置には上記の壁部21bおよび第一中継流路C1が配置されている。そして壁部21bは、空間S内に配置されている。空間Sにおける壁部21bの第二流路開口21cよりも基板下方側の領域がセンサ周囲流路C2となっている。よってセンサ周囲流路C2は第二流路開口21cを介して第一中継流路C1に連通している。
また温度センサ取付部23の空間Sのうち、第二流路開口21cよりも基板上方側における壁部21bの周囲の領域は第二中継流路C3となっている。よって第二中継流路C3はセンサ周囲流路C2に連通して装置基板50から離れるように基板上下方向に延びている。
【0040】
また温度センサ取付部23における空間Sは基板下方に向かって開口している。温度センサ取付部23は、装置基板50上の温度センサ30におけるセンサ本体部31を基板上方から覆うとともに、装置基板50の表面に接して設けられている。この状態で温度センサ30がセンサ周囲流路C2に配置されている。ここで温度センサ30は基板上下方向に第一流路開口21aおよび第二流路開口21cと並んで配置されている。すなわち温度センサ30は基板上下方向に第一流路開口21aおよび第二流路開口21cの直下に配置されている。換言すると空間Sにおいて測定部径方向および測定部長手方向の略真ん中の位置に温度センサ30が配置され、基板上方から見て第一流路開口21aおよび第二流路開口21cの形成範囲内に温度センサ30が配置されている。なお基板上下方向は、必ずしも鉛直方向に一致する方向でなくともよい。
【0041】
具体的には温度センサ取付部23は、装置基板50の表面に対向する対向面23aと、対向面23aに空間Sを開口させる基板側開口23bとを有している。
図7に示すように、対向面23aが装置基板50の表面に接触していることで、装置基板50上に温度センサ取付部23が支持されている。対向面23aには基板上方に向かってボルト穴23cが形成されている。ボルト(付勢固定部)35が装置基板50の裏面から装置基板50を貫通してボルト穴23cに螺合することによって、温度センサ取付部23が装置基板50へ近接する方向に付勢されて固定されている。なお、ボルト35に代えて結束バンド等の他の付勢固定部によって温度センサ取付部23が装置基板50に固定されてもよい。
【0042】
基板側開口23bは、ボルト穴23cに干渉しない位置で対向面23aに形成されている。基板側開口23bは空間Sを装置基板50の表面に向けて開口させている。温度センサ30のセンサ本体部31は、この基板側開口23bを通じて空間Sにおけるセンサ周囲流路C2に配置されるとともに温度センサ取付部23によって基板上方、測定部長手方向、および基板面方向(装置基板50の表面に沿う測定部径方向)から覆われている。また基板側開口23bの外周側に上記のボルト穴23cが形成されている。さらに本実施形態では基板側開口23bの周方向に180度互いに離れた位置で、基板面方向(測定部径方向)に並んでボルト穴23cが一対形成されている。
【0043】
また
図7に示すように、温度センサ取付部23の対向面23aには装置基板50から離れる方向に凹むリング保持溝23dが形成されている。リング保持溝23dは基板側開口23bとボルト穴23cの間に形成され、基板側開口23bを囲むように環状をなしている。
【0044】
リング保持溝23dは、装置基板50に対向して基板下方を向く測定部側接触面23d1と、測定部側接触面23d1における外周側の端縁から基板下方に延びる径方向外側接触面23d2と、径方向外側接触面23d2に対向して測定部側接触面23d1における内周側の端縁から基板下方に延びる径方向内側接触面23d3とによって形成されている。
【0045】
さらに温度センサ取付部23には、位置決め部材23eが設けられている。位置決め部材23eは温度センサ取付部23から測定部長手方向に延びる腕部23fと、腕部23fの先端から基板下方に向かって突出する突起23gとを有している。腕部23fは測定管21と装置基板50との間に配置されている。突起23gは装置基板50に形成された位置決め孔50bに、装置基板50の表面側から挿入される(
図5参照)。
【0046】
(シールリング)
ここで例えば樹脂製のパッキンであるシールリング27(
図5参照)がリング保持溝23dに配置されている。ボルト35によって装置基板50に温度センサ取付部23が固定された状態で、シールリング27は測定部側接触面23d1と装置基板50の表面とに接触して挟まれて弾性変形した状態となる。またシールリング27は径方向外側接触面23d2と径方向内側接触面23d3とに接触可能に、これらの面23d2、23d3に挟まれた状態となっている。シールリング27は、例えば測定部側接触面23d1と装置基板50の表面とに接触して挟まれて弾性変形した状態で径方向外側接触面23d2および径方向内側接触面23d3に接触している。なお必ずしも径方向外側接触面23d2および径方向内側接触面23d3にシールリング27が接触していなくともよい。
【0047】
(吐出口部)
吐出口部24は、測定流路Fの下流側の超音波センサ取付部22Xに近接する位置で温度センサ取付部23に設けられている。本実施形態では吐出口部24は温度センサ取付部23と同じ樹脂によって温度センサ取付部23と一体成型されている。
図5に示すように吐出口部24は円筒状をなしている。
図6に示すように吐出口部24の内側には流出側流路C4が形成されている。吐出口部24は温度センサ取付部23から装置基板50の表面に沿って測定部径方向の外側へ突出している。吐出口部24の先端には流出側流路C4を開口させる導出口24aが形成されている。
【0048】
また吐出口部24は、流出側流路C4と空間Sにおける第二中継流路C3とを連通する空間側開口24bを有している。空間側開口24bは空間Sにおいて第二流路開口21cよりも基板上方の位置で基板面方向(測定部径方向)に開口している。よって空間側開口24bと、測定管21における第一流路開口21aとの間には壁部21bが配置されている。この結果、
図7に矢印で示すように、測定流路FのガスGは第一流路開口21aから壁部21bの内側の第一中継流路C1を通って基板下方に温度センサ30に向かって流通してセンサ周囲流路C2に流入した後に、壁部21bの外側の第二中継流路C3を通って基板上方に向かって流通する。その後、空間側開口24bを通じて流出側流路C4に流入し、導出口24aから導出される。よって測定部20における測定流路Fの下流側には、上流側から下流側に向かって第一中継流路C1、センサ周囲流路C2、第二中継流路C3、および流出側流路C4がこの順に形成されている。すなわち測定流路Fの下流側には第一中継流路C1、センサ周囲流路C2、および第二中継流路C3を含むセンサ流路CSが形成され、センサ流路CSおよび流出側流路C4を含む導出流路F1が形成されている(
図6参照)。ここでセンサ流路CS(空間S)は基板上下方向に測定流路Fと装置基板50との間に配置されていることになる。
【0049】
(吸込口部)
図5に戻って、吸込口部25は、測定流路Fの上流側の超音波センサ取付部22Yに近接する位置で測定管21の外周面から装置基板50の表面に沿って測定部径方向の外側へ突出して吐出口部24と平行に延びている。本実施形態では吸込口部25は測定管21と同じ樹脂によって測定管21と一体成型されている。吸込口部25は円筒状をなして内側に流入側流路C5が形成されている。吸込口部25の先端には流入側流路C5を開口させる導入口25aが形成されている。また流入側流路C5は測定流路Fに連通し、ガスGを測定流路Fに導入する導入流路として機能する。吸込口部25は後述の比例弁80を介してタンク14に接続されている(
図2参照)。タンク14からは比例弁80および吸込口部25の導入口25aを介して測定流路FにガスGが流入するようになっている。
【0050】
(圧力センサ取付部)
圧力センサ取付部26は、吸込口部25に設けられている。本実施形態では圧力センサ取付部26は吸込口部25と同じ樹脂によって圧力センサ取付部26と一体成型されている。圧力センサ取付部26は円筒状をなし、吸込口部25から基板下方に突出している。圧力センサ取付部26の内側には吸込口部25の内側につながる空間(不図示)が形成されている。この空間は基板下方に向かって開口し、装置基板50に設けられた圧力センサ70を基板上方から覆うようにして装置基板50の表面に接して圧力センサ取付部26が設けられている。圧力センサ取付部26は例えば爪75によって装置基板50に取り付けられている。
【0051】
(比例弁)
比例弁80は装置基板50の表面上に固定されて設けられている。比例弁80は測定管21に対して吸込口部25および吐出口部24が設けられた側で、装置基板50の端縁50aに沿って、測定部長手方向に吸込口部25と吐出口部24との間に配置されている。比例弁80は、濃縮装置本体100の操作ボタン121で指定された数値に基づき、測定流路Fを流通するガスGの流量を制御する。
【0052】
比例弁80には、比例弁80に対して装置基板50の端縁50aから装置基板50の表面に沿う基板面方向(測定部径方向)に一部が突出するとともに、装置基板50と比例弁80との間に介在された比例弁ブラケット81が設けられている。比例弁ブラケット81は、例えばボルト85によって比例弁80に取り付けられている。比例弁ブラケット81は、比例弁80を基板下方から支持するとともに、基板下方に突出する爪81aによって装置基板50に取り付けられている。また比例弁ブラケット81には、タンク14に接続される入口部82と、吸込チューブ84を介して吸込口部25に接続される出口部83とが設けられている。
【0053】
入口部82は装置基板50の端縁50aに沿って、測定部長手方向に吸込口部25の側に向かって延びる円筒状をなしている。出口部83は入口部82に併設され、入口部82を挟んで比例弁80とは装置基板50の表面に沿う基板面方向(測定部径方向)に反対側に配置されている。出口部83は入口部82と同様に装置基板50の端縁50aに沿って測定部長手方向に吸込口部25の側に向かって延びる円筒状をなしている。入口部82と出口部83とは比例弁80を介して連通している。入口部82および出口部83と比例弁80との間にはパッキン86が介在されている。
【0054】
よってタンク14内のガスGが入口部82に流入し、比例弁80を経由して出口部83に流入し、吸込チューブ84を介して吸込口部25から測定流路Fに流入する。また後述する演算制御装置40(
図2参照)によって算出されるガスGの流量が操作ボタン121で指定された流量となるように、比例弁80が演算制御装置40によってフィードバック制御されるようになっている。
【0055】
(超音波センサ)
各々の超音波センサ60は、測定部20における超音波センサ取付部22に一つずつ設けられている。よって超音波センサ60は測定流路Fの上流側および下流側に対向して配置されている。各々の超音波センサ60は、超音波素子61と、超音波素子61を支持する素子基板62と、素子基板62に設けられた基板端子63とを有している。
【0056】
(超音波素子)
超音波素子61は、超音波を発信および受信可能な送受信器である。超音波素子61は、測定部20における超音波センサ取付部22の開口22a内に配置されている。測定流路Fの上流側の超音波素子61Aから発信された超音波は、測定流路Fの下流側の超音波素子61Bによって受信可能となっている。一方で、測定流路Fの下流側の超音波素子61Bから発信された超音波は、測定流路Fの上流側の超音波素子61Aによって受信可能となっている。超音波素子61は円柱状をなしており、開口22a内に設置された状態で測定部長手方向に延びている。
【0057】
(素子基板)
素子基板62の表面は超音波素子61に対向して設けられている。素子基板62は矩形のプリント基板であって、超音波素子61と電気的に接続されている。
【0058】
素子基板62は、測定部20に対して測定部長手方向に対向して配置された状態で、ボルト90によって素子基板62が測定部20の超音波センサ取付部22に固定されている。この際、ボルト90によって素子基板62と測定部20とが測定部長手方向に近接するように付勢されて固定される。
【0059】
素子基板62において、測定部長手方向に測定部20の側を向く表面にシールリング69が接触して設けられている。シールリング69は樹脂製のパッキンである。シールリング69は超音波素子61および開口22aの外周側に設けられ、ボルト90によって素子基板62が測定部20へ固定された状態、すなわち素子基板62が測定部20に押し付けられた状態で、素子基板62の表面と超音波センサ取付部22との間にシールリング69が挟まれて接触することで、シールリング69が押しつぶされて弾性変形し、素子基板62と超音波センサ取付部22との間の隙間がシールされている。
【0060】
(基板端子)
基板端子63は素子基板62に支持されて、測定部長手方向に超音波素子61と同じ側に設けられている。また基板端子63の一端は素子基板62に電気的に接続されている。また基板端子63の他端は、素子基板62から基板下方に向かって突出している。そして基板端子63の他端は装置基板50のホール51aに挿通されて、装置基板ランド53に対してはんだ付けによって電気的に接続されている。
【0061】
そして本実施形態では素子基板62の表面が、装置基板50の表面に対して交差する(直交する)ように、素子基板62が基板上方に向かって装置基板50に立設されており、素子基板62が装置基板50の表面上に露出している。
【0062】
(演算制御装置)
図2に戻って演算制御装置40は、CPU、RAM及びROMなどから構成されている。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行されるプログラムを記憶する。本実施形態では演算制御装置40は装置基板50の裏面に設けられている(
図5参照)。
【0063】
演算制御装置40は、上流側の超音波素子61Aから発信されて下流側の超音波素子61Bで受信されるまでの超音波の伝搬速度vFWD〔m/s〕と、下流側の超音波素子61Bから発信されて上流側の超音波素子61Aで受信されるまでの超音波の伝搬速度vREV〔m/s〕とを算出し、これらの伝搬速度vFWD、vREVの差分に基づいて測定流路Fを流通するガスGの流量Q〔m3/s〕を算出する。
【0064】
上記の伝搬速度vFWD、vREVは、以下の式(1)、(2)によって算出される。なお、測定流路Fの長さ(超音波素子61A、61B間の距離)をL〔m〕とする。また、上流側の超音波素子61Aから発信されて下流側の超音波素子61Bで受信されるまでの超音波の伝搬時間をtFWD〔s〕とし、下流側の超音波素子61Bから発信されて上流側の超音波素子61Aで受信されるまでの超音波の伝搬時間をtREV〔s〕とする。
【0065】
【0066】
ここで演算制御装置40は、上記式(1)、(2)、および以下の式(3)、(4)から導かれる以下の式(5)によって測定流路Fを流通するガスGの流速v〔m/s〕を算出する。なお測定流路F内での超音波の音速をc〔m/s〕とする。
【0067】
【0068】
【0069】
そして演算制御装置40は以下の式(6)によって、測定流路Fを流通する酸素の流量Q〔m3/s〕を算出する。なお測定流路Fの流路断面積をA〔m2〕とする。演算制御装置40は算出された流量Qが予め設定された流量となるように、比例弁80の開度を制御する。
【0070】
【0071】
次に、演算制御装置40は上記の式(1)から(5)から導かれる以下の式(7)によって測定流路F内での超音波の音速c〔m/s〕を算出する。
【0072】
【0073】
ここで、ガス中を伝搬する超音波の音速c〔m/s〕は、ガスの平均分子量M〔g/mol〕と、ガスの温度T〔K〕との関数で表現できる。すなわち音速c〔m/s〕は以下の式(8)によって算出される。なお、kは比熱比、Rは気体定数である。ガスGの温度T〔K〕は温度センサ30で測定した値であり、本実施形態では測定流路Fを流通するガスGが酸素と窒素の2分子からなる混合ガスであるとしてk=1.4とする。
【0074】
【0075】
演算制御装置40は、上記式(7)、(8)から、測定流路F中のガスGの平均分子量M〔g/mol〕を算出する。そして算出された平均分子量M〔g/mol〕を基に、以下の式(9)によってガスG中の酸素濃度PO2〔%〕を算出する。なお、MO2〔g/mol〕は酸素の分子量であり、MN2〔g/mol〕は窒素の分子量である。MO2=32、MN2=28である。なお演算制御装置40は、酸素濃度が予め設定された値となるように上記の制御ユニット(不図示)へ信号を送信し、この制御ユニットで窒素吸着機構13の制御が行われる。
【0076】
【0077】
次に、
図5を参照してガス濃度流量測定装置15の組み立て方法について説明する。
まず、上記の超音波センサ60を一対準備する(ステップST1)。その後、測定部20の開口22aの各々の内側に、一つずつ超音波素子61を配置するようにして超音波センサ取付部22に対して測定部長手方向に素子基板62を押しつけ、ボルト90によって超音波センサ60を測定部20に固定する(ステップST2)。そして、比例弁80、温度センサ30、圧力センサ70、および演算制御装置40を装置基板50に固定して、これらを装置基板50に電気的に接続する(ステップST3)。ステップST3では、温度センサ30のセンサ端子を装置基板50の表面側から装置基板ランド53にはんだ付けすることで、装置基板パターン52に対して温度センサ30を電気的に接続する。
【0078】
その後、測定部20を装置基板50に固定するとともに、装置基板50に対して測定部20に固定された素子基板62の基板端子63を電気的に接続する(ステップST4)。ステップST4では、温度センサ30のセンサ本体部31が、温度センサ取付部23の基板側開口23bを通じて空間Sにおけるセンサ周囲流路C2に配置されるように、温度センサ取付部23を装置基板50の表面に押し付けて測定部20を装置基板50に固定する。なお比例弁80および演算制御装置40はステップST4の後に装置基板50に固定されてもよい。
【0079】
以上説明した本実施形態の酸素濃縮装置1では、ガス濃度流量測定装置15でガスGの濃度を測定する際に必要なガスGの温度を測定する温度センサ30を、装置基板50に直付けしている。このため装置基板50に対して他の部品を介在させずに温度センサ30を装置基板50に設けることができる。したがって構造を簡素化して温度センサ30を容易に設置することが可能である。
【0080】
また装置基板50上に温度センサ30を設けたことで、ガス濃度流量測定装置15のコンパクト化が可能となる。
【0081】
また空間Sを形成する温度センサ取付部23が測定管21から装置基板50に向かって延びている。そして温度センサ取付部23には空間Sを装置基板50の表面に向けて開口させる基板側開口23bが設けられている。このため、温度センサ取付部23の対向面23aを装置基板50の表面に押し付けることによって容易に温度センサ30を空間Sにおけるセンサ周囲流路C2に配置できる。空間Sは測定流路Fに連通しているので、温度センサ取付部23の対向面23aを装置基板50の表面に押し付けることで、必然的に温度センサ30におけるセンサ本体部31がガスGに接触可能な位置に配置される。よってガス濃度流量測定装置15の組み立ての作業性を向上することができる。
【0082】
また温度センサ取付部23は対向面23aによって装置基板50に支持される。すなわち、対向面23aが測定部20における装置基板50への支持面としても機能し、温度センサ取付部23が装置基板50への支持柱として機能する。
【0083】
また温度センサ取付部23と装置基板50との間にはシールリング27が設けられている。このため対向面23aを装置基板50の表面に押し付けた際には、温度センサ取付部23と装置基板50の表面との間がシールされる。よって温度センサ30周りのガスGが測定部20の外へ漏れ出てしまうことを回避できる。
【0084】
さらにシールリング27はリング保持溝23dに配置されている。したがってガス濃度流量測定装置15の組み立て時におけるシールリング27の位置ずれを回避することができる。
【0085】
また温度センサ30が基板上下方向に第一流路開口21aおよび第二流路開口21cと並んで配置されているため、測定流路Fから流出したガスGが第一中継流路C1からダイレクトに温度センサ30に向かって流通し、温度センサ30に対してより多くのガスGを接触させることができる。よって温度センサ30によるガスGの温度の測定精度を向上することができる。
【0086】
また測定管21における第一流路開口21aの周りには、測定管21の外周面から装置基板50の表面に向かって突出する壁部21bが形成されている。したがって測定流路Fの第一流路開口21aから流出したガスGは、壁部21bによって形成された第一中継流路C1によって基板下方へ案内されてセンサ周囲流路C2にある温度センサ30に接触した後に、壁部21bの外側の第二中継流路C3を基板上方へ向かい、空間側開口24bから流出側流路C4へ流入する。すなわちガスGを温度センサ30へ向かわせた後に、温度センサ30から離れるように案内する流路を、壁部21bによって空間S内に形成することができる。この結果、温度センサ30により多くのガスGを接触させることができ、ガスGの測定精度を向上することができる。
【0087】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施形態では温度センサ取付部23の対向面23aを装置基板50の表面に押し付けて温度センサ30を空間Sに配置しているが、このような構造に限定されない。例えば温度センサ取付部23を装置基板50上の温度センサ30を囲むように装置基板50側に設けた後、温度センサ取付部23とは別体の測定管21を温度センサ取付部23に取り付けてもよい。
【0088】
また測定管21の外周面に設けられた壁部21bは筒状をなす場合に限定されない。壁部21bは、例えば空間側開口24bと第一流路開口21aとの間に配置されて測定管21の外周面から基板下方に突出する板状またはブロック状等をなしていてもよい。すなわち壁部21bによって第一中継流路C1を形成する場合に限定されない。
【0089】
また温度センサ30は測定流路Fよりも上流側に設けられてもよい。この場合、流入側流路C5と空間Sとが連通するように温度センサ取付部23を設けるようにすることで、導入流路を構成する流入側流路C5、第二中継流路C3、センサ周囲流路C2、および第一中継流路C1を上流側から下流側に向かって設ける。
また第一中継流路C1、センサ周囲流路C2、および第二中継流路C3をすべて同径の管路状に設けてもよい。
【0090】
さらにリング保持溝23dに代えて、温度センサ取付部23には対向面23aから突出するように、径方向外側接触面23d2や径方向内側接触面23d3を有する突起を形成してもよい。
【0091】
また、装置基板50上における測定部20、演算制御装置40、および比例弁80の設置位置は上述の場合に限定されない。例えば演算制御装置40および比例弁80は装置基板50とは別の場所に設置されてもよい。また、装置基板50に対する測定部20の固定方法も上述の場合に限定されない。また圧力センサ70の設置位置も上述の場合に限定されない。
【0092】
また、上記のガス濃度流量測定装置15は、酸素濃縮装置1以外の装置にも使用可能である。また酸素濃縮装置1はPSA方式の装置に限定されることなく、膜分離方式などの他の方式を用いた装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のガス濃度流量測定装置等によれば、構造を簡素化して温度センサを容易に設置することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 酸素濃縮装置
15 ガス濃度流量測定装置
20 測定部
21 測定管(流路形成部)
21a 第一流路開口
21b 壁部
21c 第二流路開口
23 温度センサ取付部
23a 対向面
23b 基板側開口
23d リング保持溝
23d1 測定部側接触面
23d2 径方向外側接触面
23d3 径方向内側接触面
24a 導出口
24b 空間側開口
25a 導入口
27 シールリング
30 温度センサ
31 センサ本体部
32 センサ端子
35 ボルト(付勢固定部)
40 演算制御装置
50 装置基板
51a 装置基板ホール
52 装置基板パターン
53 装置基板ランド
60 超音波センサ
61(61A、61B) 超音波素子
62 素子基板
63 基板端子
69 シールリング
80 比例弁
100 濃縮装置本体
F 測定流路
C1 第一中継流路
C2 センサ周囲流路
C3 第二中継流路
C4 流出側流路
C5 流入側流路
CS センサ流路
F1 導出流路
A 空気
G 酸素含有ガス
S 空間