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特許7507012ガス濃度流量測定装置、酸素濃縮装置、およびガス濃度流量測定装置の組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガス濃度流量測定装置、酸素濃縮装置、およびガス濃度流量測定装置の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/667 20220101AFI20240620BHJP
   G01F 1/66 20220101ALI20240620BHJP
   G01N 29/024 20060101ALI20240620BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01F1/667 A
G01F1/66 101
G01N29/024
A61M16/10 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020093011
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188981
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】本多 茂
(72)【発明者】
【氏名】溝田 巌
(72)【発明者】
【氏名】上山 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅彦
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-030954(JP,A)
【文献】中国実用新案第210123294(CN,U)
【文献】中国実用新案第208621560(CN,U)
【文献】中国実用新案第210572119(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66- 1/667
G01N 29/02-29/036
A61M 16/00-16/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流通する測定流路を形成する測定部と、
前記測定流路における上流側および下流側にそれぞれ配置された一対の超音波センサと、
前記ガスの温度を測定する温度センサと、
一方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度と、他方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに、前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出し、前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置と、
少なくとも前記超音波センサを電気的に接続する装置基板パターンを有する装置基板と、
を備え、
前記測定部および前記装置基板のうちの一方には該一方から他方に向かって突出するように爪部が設けられ、
前記測定部および前記装置基板のうちの他方には、前記爪部が係合して前記測定部と前記装置基板とが前記装置基板の厚さ方向へ相対移動することを規制する係合面が設けられ
前記装置基板の表面には、前記装置基板パターンに電気的に接続されて前記ガスの圧力を測定する圧力センサが設けられ、
前記測定部は、
前記測定流路を形成する流路形成部と、
前記測定流路に連通して前記圧力センサを配置可能なセンサ配置空間を内側に形成するとともに、前記流路形成部から前記装置基板の表面に向かって延びる圧力センサ取付部と、
を有し、
前記爪部は、前記センサ配置空間周りに設けられているガス濃度流量測定装置。
【請求項2】
前記測定部には、前記装置基板へ向かって突出するように前記爪部が設けられ、
前記装置基板には前記厚さ方向に貫通して前記爪部が前記装置基板の表面側から挿通可能な爪挿通孔が設けられ、
前記係合面は、前記装置基板における前記表面とは反対側の裏面に形成されている請求項1に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項3】
前記装置基板には前記爪挿通孔とは離れた位置で固定部が設けられ、
前記測定部には、前記爪部と前記係合面とが係合した状態で、前記固定部に固定可能な被固定部が設けられている請求項2に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記測定部と前記装置基板とが前記装置基板の面方向へ相対移動することを規制する請求項3に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項5】
前記爪部は前記センサ配置空間を前記装置基板の面方向から挟むように対をなして設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項6】
前記圧力センサ取付部は、前記圧力センサ配置空間を内部に有する筒形状の収容筒を有しており、
前記爪部が前記係合面に係合した状態で、前記収容筒が前記装置基板または前記圧力センサに接近することで、前記センサ配置空間が外気から隔離される請求項1から5のいずれか一項に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項7】
前記収容筒における前記装置基板または前記圧力センサに接近する部分に、前記センサ配置空間を外気から隔離するようにシールリングが配置される請求項に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項8】
前記収容筒の内周面には、前記装置基板に向かって拡径する環状の段部が形成されており、
前記シールリングは、前記爪部が前記係合面に係合した状態で、前記段部および前記装置基板によって前記厚さ方向に挟まれる請求項に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項9】
前記シールリングは、前記収容筒の内周面、および、該収容筒の内部に配置される前記圧力センサの外周面の間によって前記シールリングの径方向に挟まれる請求項またはに記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項10】
前記測定部は、
前記測定流路の上流側に配置されて、前記ガスを前記測定流路に導入する導入流路が内側に形成された導入部と、
前記測定流路の下流側に配置されて、前記ガスを前記測定流路から導出する導出流路が内側に形成された導出部と、
をさらに有し、
前記導入部および前記導出部のうちの少なくとも一方は、前記装置基板の表面に沿って前記流路形成部から突出して設けられ、
前記圧力センサ取付部は、前記導入部および前記導出部のうちの少なくとも一方から前記装置基板の表面に向かって突出して設けられ、
前記センサ配置空間は、前記導入流路および前記導出流路のうちの一方を介して前記測定流路に連通している請求項からのいずれか一項に記載のガス濃度流量測定装置。
【請求項11】
前記ガスとしての酸素含有ガス中の酸素濃度、および前記酸素含有ガスの流量を測定する請求項1から10のいずれか一項に記載のガス濃度流量測定装置と、
前記ガス濃度流量測定装置を組み込んだ濃縮装置本体と、
を備える酸素濃縮装置。
【請求項12】
ガスの濃度および流量を測定するガス濃度流量測定装置の組み立て方法であって、
前記ガスが流通する測定流路を形成する測定部を前記装置基板の表面に接近させて、前記装置基板および前記測定部のうちの一方に設けられた爪部を他方に設けられた係合面に対して係合させる工程と、
前記装置基板の固定部に前記測定部に設けられた被固定部を固定する工程と、
超音波を発信および受信可能な超音波センサを、前記測定流路の上流側と下流側とに配置し、かつ、前記装置基板パターンに電気的に接続する工程と、
一方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度と他方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出して前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置を設ける工程と、
を含み、
前記爪部を前記係合面に係合させた状態において、前記測定部は、前記測定流路に連通して周りに前記爪部が配置されるセンサ配置空間を内側に形成するとともに、前記流路形成部から前記装置基板の表面に向かって延びる圧力センサ取付部を有し、
前記爪部を前記係合面に係合させる工程では、前記爪部を前記測定部および前記装置基板のうちの前記一方から前記他方に向かって突出するように配置して前記爪部を前記係合面に係合させて前記測定部と前記装置基板とが前記装置基板の厚さ方向へ相対移動することを規制する際、前記装置基板の表面において前記センサ配置空間に、前記装置基板パターンに電気的に接続されて前記ガスの圧力を測定する圧力センサを設けるガス濃度流量測定装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの濃度および流量を測定するガス濃度流量測定装置と、ガス濃度流量測定装置を組み込んだ酸素濃縮装置と、ガス濃度流量測定装置の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているようにガスの流通する測定管に超音波送受信器を対向して配置して、ガスの流量および濃度を計測する超音波式のガス濃度流量測定装置が知られている。
【0003】
このようなガス濃度流量測定装置は酸素濃縮装置にも使用されている。特許文献2に示すように酸素濃縮装置は、例えば空気を圧縮した後に空気中の窒素を取り除き、高濃度の酸素を生成する装置である。なお酸素濃縮装置は、例えば呼吸不全等の理由により在宅で酸素を補給しなければならない患者に対して酸素を供給するために用いられる装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6305209号公報
【文献】特許5499265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで従来の超音波式のガス濃度流量測定装置では、例えば超音波送受信器からの信号を受信してガスの流量や濃度を算出する演算装置が設けられた装置基板に対して測定管が取り付けられる。しかしながら現状ではガス濃度流量測定装置のコンパクト化によって装置基板は非常に小さく、測定管を装置基板へ取り付ける作業には手間を要する。
【0006】
そこで本発明は、組み立ての簡素化を図り、コスト低減が可能なガス濃度流量測定装置等を提供する。
【0007】
本発明の一態様に係るガス濃度流量測定装置は、ガスが流通する測定流路を形成する測定部と、前記測定流路における上流側および下流側にそれぞれ配置された一対の超音波センサと、前記ガスの温度を測定する温度センサと、一方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度と、他方の前記超音波センサから発信された超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに、前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出し、前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置と、少なくとも前記超音波センサを電気的に接続する装置基板パターンを有する装置基板と、を備え、前記測定部および前記装置基板のうちの一方には爪部が設けられ、前記測定部および前記装置基板のうちの他方には、前記爪部が係合して前記測定部と前記装置基板とが前記装置基板の厚さ方向へ相対移動することを規制する係合面が設けられている。
【0008】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部には、前記装置基板へ向かって突出するように前記爪部が設けられ、前記装置基板には前記厚さ方向に貫通して前記爪部が前記装置基板の表面側から挿通可能な爪挿通孔が設けられ、前記係合面は、前記装置基板における前記表面とは反対側の裏面に形成されていてもよい。
【0009】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記装置基板には前記爪挿通孔とは離れた位置で固定部が設けられ、前記測定部には、前記爪部と前記係合面とが係合した状態で、前記固定部に固定可能な被固定部が設けられていてもよい。
【0010】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記固定部は、前記測定部と前記装置基板とが前記装置基板の面方向へ相対移動することを規制してもよい。
【0011】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記装置基板の表面には、前記装置基板パターンに電気的に接続されて前記ガスの圧力を測定する圧力センサが設けられ、前記測定部は、前記測定流路を形成する流路形成部と、前記測定流路に連通して前記圧力センサを配置可能なセンサ配置空間を内側に形成するとともに、前記流路形成部から前記装置基板の表面に向かって延びる圧力センサ取付部と、を有し、前記爪部は、前記センサ配置空間周りに設けられていてもよい。
【0012】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記爪部は前記センサ配置空間を前記装置基板の面方向から挟むように対をなして設けられていてもよい。
【0013】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記圧力センサ取付部は、前記圧力センサ配置空間を内部に有する筒形状の収容筒を有しており、前記爪部が前記係合面に係合した状態で、前記収容筒が前記装置基板または前記圧力センサに接近することで、前記センサ配置空間が外気から隔離されていてもよい。
【0014】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記収容筒における前記装置基板または前記圧力センサに接近する部分に、前記センサ配置空間を外気から隔離するようにシールリングが配置されてもよい。
【0015】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記収容筒の内周面には、前記装置基板に向かって拡径する環状の段部が形成されており、前記シールリングは、前記爪部が前記係合面に係合した状態で、前記段部および前記装置基板によって前記厚さ方向に挟まれてもよい。
【0016】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記シールリングは、前記収容筒の内周面、および、該収容筒の内部に配置される前記圧力センサの外周面の間によって前記シールリングの径方向に挟まれてもよい。
【0017】
上記のガス濃度流量測定装置では、前記測定部は、前記測定流路の上流側に配置されて、前記ガスを前記測定流路に導入する導入流路が内側に形成された導入部と、前記測定流路の下流側に配置されて、前記ガスを前記測定流路から導出する導出流路が内側に形成された導出部と、をさらに有し、前記導入部および前記導出部のうちの少なくとも一方は、前記装置基板の表面に沿って前記流路形成部から突出して設けられ、前記圧力センサ取付部は、前記導入部および前記導出部のうちの少なくとも一方から前記装置基板の表面に向かって突出して設けられ、前記センサ配置空間は、前記導入流路および前記導出流路のうちの一方を介して前記測定流路に連通していてもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る酸素濃縮装置は、前記ガスとしての酸素含有ガス中の酸素濃度、および前記酸素含有ガスの流量を測定する上記のガス濃度流量測定装置と、前記ガス濃度流量測定装置を組み込んだ濃縮装置本体と、を備えている。
【0019】
また本発明の一態様に係る組み立て方法は、ガスの濃度および流量を測定するガス濃度流量測定装置の組み立て方法であって、前記ガスが流通する測定流路を形成する測定部を前記装置基板の表面に接近させて、前記装置基板および前記測定部のうちの一方に設けられた爪部を他方に設けられた係合面に対して係合させる工程と、前記装置基板の固定部に前記測定部に設けられた被固定部を固定する工程と、超音波を発信および受信可能な超音波センサを、前記測定流路の上流側と下流側とに配置し、かつ、前記装置基板パターンに電気的に接続する工程と、一方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度と他方の前記超音波センサから発信されて前記測定流路内を通過する超音波の伝搬速度との差分に基づいて前記ガスの流量を算出するとともに前記ガスの流量および前記超音波の伝搬速度から前記超音波の音速を算出して前記音速と前記ガスの温度と前記ガスの成分とに基づいて前記ガス中の特定の成分の濃度を算出する演算制御装置を設ける工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0020】
上記のガス濃度流量測定装置等によれば、組み立ての簡素化を図り、コスト低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る酸素濃縮装置の全体図である。
図2】上記酸素濃縮装置の構成を示すブロック図である。
図3】上記酸素濃縮装置におけるガス濃度流量測定装置のブロック図である。
図4】上記酸素濃縮装置におけるガス濃度流量測定装置の全体斜視図である。
図5】上記酸素濃縮装置におけるガス濃度流量測定装置の全体斜視図であって、構成部品に分解して示す図である。
図6】上記ガス濃度流量測定装置における測定部の圧力センサ取付部を測定部長手方向から見た図であって、図5のI-I断面図である。
図7】上記ガス濃度流量測定装置における測定部の圧力センサ取付部を基板下方から見た平面図である。
図8】上記ガス濃度流量測定装置における測定部の圧力センサ取付部を基板面横方向から見た図であって、図7のII矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(全体構成)
図1および図2に示すように、本実施形態の酸素濃縮装置1は、患者に酸素を供給する装置であり、外部から取り込んだ空気Aを濃縮し、高濃度(例えば、90%程度)の酸素含有ガスGを生成する。具体的には酸素濃縮装置1は、吸気フィルタ11、圧縮機12、窒素吸着機構13、タンク14、および筐体120(図1参照)を有する濃縮装置本体100と、濃縮装置本体100に組み込まれたガス濃度流量測定装置15とを備えている。
【0023】
酸素濃縮装置1では、筐体120の背面に設けられた吸気フィルタ11を介して外部から取り込まれた空気Aを圧縮機12で圧縮し、圧縮された空気Aに含まれる窒素を窒素吸着機構13で触媒(図示省略)に吸着させて高濃度の酸素を含有する酸素含有ガス(酸素および窒素を含有するガス)Gを生成し、患者へ供給可能とする。以下、酸素含有ガスGを単に「ガスG」とする。
【0024】
ここで図2に示すように窒素吸着機構13は一対の吸着塔13a、13bを備えている。一対の吸着塔13a、13bの中にはゼオライト等の触媒が充填されている。吸着塔13aおよび13bのうちの一方を加圧して触媒に窒素を吸着させ、他方を減圧して触媒に吸着されている窒素を放出し、次の加圧に備える。このように窒素吸着機構13では、一対の吸着塔13a、13bを交互に加圧および減圧させて高濃度の酸素が生成される。窒素吸着機構13で生成された高濃度の酸素はタンク14に蓄えられる。タンク14に蓄えられた酸素は、ガスGとしてガス濃度流量測定装置15を通った後に患者に供給される。すなわち、本実施形態の酸素濃縮装置1はPSA(Pressure Swing Adsorption)方式を採用している。
【0025】
ここで酸素濃縮装置1の各構成部品は、不図示の制御ユニットによって統括的に制御される。制御ユニットは、CPU、RAM及びROMなどから構成され、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行されるプログラムを記憶する。
【0026】
図1に示すように筐体120は略直方体形状をなしている。筐体120には操作ボタン121、ディスプレイ122、および、ガス濃度流量測定装置15に接続されてガスGを吐出する吐出チューブ(ゴムチューブ等)123が設けられている。
【0027】
(ガス濃度流量測定装置)
次にガス濃度流量測定装置15の詳細について説明する。
ガス濃度流量測定装置15は筐体120に組み込まれている。図2に示すように、ガス濃度流量測定装置15は、タンク14の下流側に設けられて、ガスG中の酸素の濃度および流量を計測可能となっている。より具体的には図3に示すように、ガス濃度流量測定装置15は超音波式の測定装置であって、測定部20と、温度センサ30と、演算制御装置40と、装置基板50と、超音波センサ60と、圧力センサ70と、比例弁80とを備えている。
【0028】
(装置基板)
図4および図5に示すように装置基板50は、一対の端縁50a、および端縁50aに直交する一対の端縁50bを有する矩形のプリント基板であって、基材51、基材51に設けられて伝導体によって形成された装置基板パターン52、および、基材51を貫通する装置基板ホール51a周りに設けられて装置基板パターン52に電気的に接続される複数の装置基板ランド53を有している。なお装置基板ホール51aは、後述する各電子部品を挿入実装するための孔であるが、装置基板ホール51aの無い装置基板ランド53も設けられて、後述する各電子部品が装置基板50に面実装されてもよい。
【0029】
さらに図5に示すように装置基板50には、端縁50aが延びる基板面縦方向に間隔を空けて一対が配置された爪挿通孔51bが形成されている。各々の爪挿通孔51bは、端縁50bが延びる基板面横方向に延びる矩形状の孔であって装置基板50を厚さ方向に貫通している。爪挿通孔51bには後述する測定部20の爪部28が挿通可能となっている。また装置基板50には爪挿通孔51bとは離れた位置で装置基板50を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔51cが形成されている。本実施形態ではボルト挿通孔51cは基板面縦方向および基板面横方向に爪挿通孔51bと離れた位置で、基板面横方向に間隔をあけて一対が設けられている。
【0030】
(温度センサ)
図5に示すように温度センサ30は、装置基板50の表面上に設けられている。温度センサ30は、後述する測定流路Fを流通するガスGの温度Tを測定流路Fの下流側で測定可能となっている。温度センサ30は装置基板ランド53にはんだ付けによって固定されて装置基板パターン52(図4参照)に電気的に接続されている。
【0031】
(圧力センサ)
圧力センサ70は、温度センサ30と同じように装置基板50の表面上に設けられている。より具体的には圧力センサ70は一対の爪挿通孔51bに基板面縦方向に挟まれる位置で装置基板50に設けられている。圧力センサ70は後述する測定流路Fを流通するガスGの圧力を測定流路Fの上流側で測定可能となっている。圧力センサ70は装置基板ランド53にはんだ付けによって固定されて装置基板パターン52(図4参照)に電気的に接続されている基部71と、基部71から装置基板50の表面と離れる方向に突出するセンサ部72とを有している。圧力センサ70で測定されたガスGの圧力は、例えば後述する演算制御装置40(図3参照)における演算において、圧力によって変動し得る定数を確定する際に用いられる。
【0032】
(測定部)
図4および図5に示すように測定部20は、装置基板50の表面上に固定されて設けられている。以下、装置基板50を基準として表面から離れる方向を基板上方とし、装置基板50の表面と反対側の裏面から離れる方向を基板下方とする。測定部20は筒状をなしている。より具体的には測定部20は、測定管21と、測定管21の両端部に設けられた超音波センサ取付部22、温度センサ取付部23、導出部24、導入部25、および圧力センサ取付部26とを有している。
【0033】
(測定管)
測定管21は、タンク14(図3参照)からのガスGが流通する測定流路Fを内側に形成する円筒状をなしている。測定管21は例えばABS樹脂等の樹脂材料によって形成されている。
【0034】
以下、測定管21の延びる方向を測定部長手方向とする。測定部長手方向は上述の基板面縦方向に一致する。また測定部長手方向に直交する測定管21の径方向を測定部径方向とし、測定管21の周方向を測定部周方向とする。測定部径方向のうち、装置基板50の表面に沿う方向が上述の基板面横方向に一致する。
【0035】
(超音波センサ取付部)
超音波センサ取付部22は、測定管21における測定部長手方向の両端部、すなわち測定流路Fの上流側および下流側の端部に一つずつ設けられている。本実施形態では超音波センサ取付部22は測定管21と同じ樹脂によって測定管21と一体成型されている。超音波センサ取付部22は測定管21よりも外径が大径の筒状をなしている。図5に示すように各々の超音波センサ取付部22には、測定部長手方向に貫通して測定流路Fにつながる断面円形状の孔である開口22aが形成されている。
【0036】
(温度センサ取付部)
温度センサ取付部23は、測定流路Fの下流側の超音波センサ取付部22Xに近接する位置で、測定管21の外周面から基板下方に突出して設けられている。本実施形態では温度センサ取付部23は測定管21と同じ樹脂によって測定管21と一体成型されている。温度センサ取付部23の内側には、測定流路Fにつながる空間(不図示)が形成されている。この空間は基板下方に向かって開口し、装置基板50に設けられた温度センサ30を基板上方から覆うようにして装置基板50の表面に接して温度センサ取付部23が設けられている。温度センサ取付部23にはボルト穴(被固定部)23aが設けられている。ボルト(固定部)35が装置基板50のボルト挿通孔51cに装置基板50の裏面側から挿通され、ボルト穴23aに螺合することで温度センサ取付部23が装置基板50に固定されている。これにより測定部20と装置基板50とが、装置基板50の表面に沿う面方向(基板面縦方向および基板面横方向)へ相対移動することが規制されている。
【0037】
(導出部)
導出部24は、測定流路Fの下流側の超音波センサ取付部22Xに近接する位置で温度センサ取付部23に設けられている。本実施形態では導出部24は温度センサ取付部23と同じ樹脂によって温度センサ取付部23と一体成型されている。図5に示すように導出部24は円筒状をなしている。そして導出部24は温度センサ取付部23から装置基板50の表面に沿って測定部径方向の外側(基板面横方向)へ突出するとともに、温度センサ取付部23の上記空間を介して測定流路Fに連通する導出流路F1を内側に形成している。したがって測定流路Fを流通したガスGは、温度センサ取付部23における上記空間を介して導出部24から導出される。
【0038】
(導入部)
導入部25は、測定流路Fの上流側の超音波センサ取付部22Yに近接する位置で測定管21の外周面から装置基板50の表面に沿って測定部径方向の外側(基板面横方向)へ突出して導出部24と平行に延びている。本実施形態では導入部25は測定管21と同じ樹脂によって測定管21と一体成型されている。導入部25は円筒状をなし、測定流路Fに連通する導入流路F2を内側に有している。導入部25は後述の比例弁80を介してタンク14に接続されている(図2参照)。したがってタンク14からは比例弁80および導入流路F2を介して測定流路FにガスGが流入するようになっている。
【0039】
ここで図6に示すように、導入部25の外周面を貫通して基板下方に開口する流路開口25aが形成されている。流路開口25aは測定部径方向(基板面横方向)に、測定管21から離れた位置で導入部25に形成されている。
【0040】
(圧力センサ取付部)
次に圧力センサ取付部26について図6から図8を参照して詳細に説明する。
圧力センサ取付部26は導入部25に設けられている。本実施形態では圧力センサ取付部26は導入部25と同じ樹脂によって圧力センサ取付部26と一体成型されている。図6および図7に示すように圧力センサ取付部26は、円筒形状の収容筒26xを有している。収容筒26xは装置基板50の表面に対向する対向面26aと、対向面26aに開口する基板側開口26bとを有している。収容筒26xは導入部25における流路開口25aを外周側から囲むように設けられている。収容筒26xは導入部25から基板下方に突出して測定管21から装置基板50の表面に向かって延びている。対向面26aは装置基板50の表面に設けられた圧力センサ70の基部71に接近または接触していることで測定部20を装置基板50に支持する支持面として機能し、圧力センサ取付部26は測定部20を装置基板50に支持する支持柱として機能する。
【0041】
また収容筒26xの内部には導入部25の内側の導入流路F2につながるセンサ配置空間Sが形成されている。センサ配置空間Sは対向面26aに開口する基板側開口26bによって基板下方に向かって開口している。またセンサ配置空間Sは導入部25の流路開口25aを通じて導入流路F2および測定流路Fに連通している。本実施形態では図7に示すように、センサ配置空間Sは流路開口25aと同心状に同径に形成されている。一方でセンサ配置空間Sの径寸法は基板側開口26bよりも小径になっている。すなわち、収容筒26xの内周面には、対向面26aからは基板側開口26bに連続して基板上方に延びる環状の段部26yが形成されており、段部26yによって収容筒26xの内径が装置基板50に向かって拡径されている。そして圧力センサ取付部26は、収容筒26xによって、装置基板50に設けられた圧力センサ70のセンサ部72を基板上方から覆うようにして装置基板50に取り付けられている。
【0042】
段部26yは対向面26aから基板上方に延びる環状の径方向面26d1、および、径方向面26d1に連続して基板下方を向く環状の段差面26d2によって形成されている。
【0043】
段部26yには例えば樹脂製のパッキンであるシールリング27(図5参照)が配置されている。装置基板50に圧力センサ取付部26が取り付けられた状態で、シールリング27は段差面26d2と装置基板50の表面とによって装置基板50の厚さ方向に挟まれて、圧力センサ70の基部71と段差面26d2とに接触可能になっている。またシールリング27は、圧力センサ70のセンサ部72を挿通させた状態で、センサ配置空間Sにセンサ部72の一部を突出させている。すなわちセンサ部72は収容筒26xの内側に配置されている。シールリング27は径方向面26d1とセンサ部72の外周面との間に挟まれて弾性変形した状態となっている。これによりシールリング27はセンサ配置空間Sを外気から隔離するように設けられている。
【0044】
ここで図8に示すように測定部20には、圧力センサ取付部26の収容筒26xを測定部長手方向(基板面縦方向)から挟むようにして、一対の爪部28が設けられている。よって爪部28はセンサ配置空間S周りに設けられている。より具体的には、一対の爪部28は導入部25に支持された一対の腕28aと、各々の腕28aの先端に設けられた爪体28bとを有している。なお測定部20における爪部28を設ける位置は本実施形態の場合に限定されるものではない。
【0045】
一対の腕28aは、導入部25の外周面において導入部25の周方向に180度離れた位置に設けられている。一対の腕28aは、導入部25の外周面から測定部長手方向に互いに離れる側に延びた後に屈曲または湾曲し、基板下方に向かって延びる板状をなしている。そして一対の腕28aはセンサ配置空間Sを測定部長手方向から挟むように設けられている。
【0046】
爪体28bは各々の腕28aの先端に設けられている。爪体28bは圧力センサ取付部26から離れる側へ腕28aから突出して設けられている。爪体28bにおける腕28aからの突出寸法が基板下方に向かって漸次小さくなることで、爪体28bは先細り形状をなしている。また爪体28bには基板上方を向く平面状の爪面29が設けられている。腕28aおよび爪体28bは、装置基板50の爪挿通孔51bに基板上方から挿通可能になっているとともに、爪面29が装置基板50の裏面に係合するようになっている。すなわち爪面29が係合する装置基板50の裏面は係合面50cとして機能する。圧力センサ取付部26の対向面26aが装置基板50の表面に接触した状態で爪体28bが装置基板50の係合面50cに係合することで対向面26aおよび爪面29によって圧力センサ70の基部71および装置基板50が挟み込まれ、測定部20と装置基板50とが装置基板50の厚さ方向へ相対移動することが規制されている。
【0047】
ここで図7および図8に示すように測定部20には、導入部25が設けられた測定部長手方向の位置において、測定管21の外周面から基板下方に突出する位置決め突起21aが設けられている。爪部28が装置基板50に係合した状態で、この位置決め突起21aが装置基板50に形成された位置決め孔51dに挿通されるようになっている。
【0048】
(比例弁)
図4および図5に戻って、比例弁80は装置基板50の表面上に固定されている。比例弁80は測定管21に対して導入部25および導出部24が設けられた側で、装置基板50の端縁50aに沿って、基板面縦方向(測定部長手方向)に導入部25と導出部24との間に配置されている。比例弁80は濃縮装置本体100の操作ボタン121で指定された数値に基づき、測定流路Fを流通するガスGの流量を制御する。
【0049】
比例弁80には、比例弁80に対して装置基板50の端縁50aから装置基板50の表面に沿う面方向(測定部径方向)に一部が突出するとともに、装置基板50と比例弁80との間に介在された比例弁ブラケット81が設けられている。比例弁ブラケット81は、例えばボルト85によって比例弁80に取り付けられている。比例弁ブラケット81は、比例弁80を基板下方から支持するとともに、基板下方に突出する爪81aによって装置基板50に取り付けられている。また比例弁ブラケット81には、タンク14に接続される入口部82と、チューブ84を介して導入部25に接続される出口部83とが設けられている。
【0050】
入口部82は装置基板50の端縁50aに沿って、測定部長手方向に導入部25の側に向かって延びる円筒状をなしている。出口部83は入口部82に併設され、入口部82を挟んで比例弁80とは装置基板50の表面に沿う面方向(測定部径方向)に反対側に配置されている。出口部83は入口部82と同様に装置基板50の端縁50aに沿って測定部長手方向に導入部25の側に向かって延びる円筒状をなしている。入口部82と出口部83とは比例弁80を介して連通している。入口部82および出口部83と比例弁80との間にはパッキン86が介在されている。
【0051】
よってタンク14内のガスGが入口部82に流入し、比例弁80を経由して出口部83に流入し、チューブ84を介して導入部25から測定流路Fに流入する。また後述する演算制御装置40(図2参照)によって算出されるガスGの流量が操作ボタン121で指定された流量となるように、比例弁80が演算制御装置40によってフィードバック制御されるようになっている。
【0052】
(超音波センサ)
超音波センサ60は、測定部20における超音波センサ取付部22に一つずつ設けられている。よって超音波センサ60は測定流路Fの上流側および下流側に対向して配置されている。各々の超音波センサ60は、超音波素子61と、超音波素子61を支持する素子基板62と、素子基板62に設けられた基板端子63とを有している。
【0053】
(超音波素子)
超音波素子61は、超音波を発信および受信可能な送受信器である。超音波素子61は、測定部20における超音波センサ取付部22の開口22a内に配置されている。測定流路Fの上流側の超音波素子61Aから発信された超音波は、測定流路Fの下流側の超音波素子61Bによって受信可能となっている。一方で、測定流路Fの下流側の超音波素子61Bから発信された超音波は、測定流路Fの上流側の超音波素子61Aによって受信可能となっている。超音波素子61は円柱状をなしており、開口22a内に設置された状態で測定部長手方向に延びている。
【0054】
(素子基板)
素子基板62は矩形のプリント基板であって、超音波素子61が電気的に接続されている。素子基板62は、測定部20に対して測定部長手方向に対向して配置された状態で、ボルト90によって測定部20の超音波センサ取付部22に固定される。
【0055】
ここで素子基板62において、測定部長手方向に測定部20の側を向く表面にシールリング69が接触して設けられている。シールリング69は樹脂製のパッキンである。シールリング69は超音波素子61および開口22aの外周側に設けられている。ボルト90によって素子基板62が測定部20へ固定された状態、すなわち素子基板62が測定部20に押し付けられた状態でシールリング69が押しつぶされて弾性変形し、素子基板62と超音波センサ取付部22との間の隙間がシールされている。
【0056】
(基板端子)
基板端子63は素子基板62に支持されて、測定部長手方向に超音波素子61と同じ側に設けられている。また基板端子63の一端は素子基板62に電気的に接続されている。また基板端子63の他端は、素子基板62から基板下方に向かって突出している。そして基板端子63の他端は装置基板50の装置基板ホール51aに挿通されて、装置基板ランド53に対してはんだ付けによって電気的に接続されている。
【0057】
そして本実施形態では素子基板62の表面が、装置基板50の表面に対して交差する(直交する)ように、素子基板62が基板上方に向かって装置基板50に立設されており、素子基板62が装置基板50の表面上に露出している。
【0058】
(演算制御装置)
図2に戻って演算制御装置40は、CPU、RAM及びROMなどから構成されている。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行されるプログラムを記憶する。本実施形態では演算制御装置40は装置基板50の裏面に設けられている(図5参照)。
【0059】
演算制御装置40は、上流側の超音波素子61Aから発信されて下流側の超音波素子61Bで受信されるまでの超音波の伝搬速度vFWD〔m/s〕と、下流側の超音波素子61Bから発信されて上流側の超音波素子61Aで受信されるまでの超音波の伝搬速度vREV〔m/s〕とを算出し、これらの伝搬速度vFWD、vREVの差分に基づいて測定流路Fを流通するガスGの流量Q〔m/s〕を算出する。
【0060】
上記の伝搬速度vFWD、vREVは、以下の式(1)、(2)によって算出される。なお、測定流路Fの長さ(超音波素子61A、61B間の距離)をL〔m〕とする。また、上流側の超音波素子61Aから発信されて下流側の超音波素子61Bで受信されるまでの超音波の伝搬時間をtFWD〔s〕とし、下流側の超音波素子61Bから発信されて上流側の超音波素子61Aで受信されるまでの超音波の伝搬時間をtREV〔s〕とする。
【0061】
【数1】
【数2】
【0062】
ここで演算制御装置40は、上記式(1)、(2)、および以下の式(3)、(4)から導かれる以下の式(5)によって測定流路Fを流通するガスGの流速v〔m/s〕を算出する。なお測定流路F内での超音波の音速をc〔m/s〕とする。
【0063】
【数3】
【数4】
【0064】
【数5】
【0065】
そして演算制御装置40は以下の式(6)によって、測定流路Fを流通する酸素の流量Q〔m/s〕を算出する。なお測定流路Fの流路断面積をA〔m〕とする。演算制御装置40は算出された流量Qが予め設定された流量となるように、比例弁80の開度を制御する。
【0066】
【数6】
【0067】
次に、演算制御装置40は上記の式(1)から(5)から導かれる以下の式(7)によって測定流路F内での超音波の音速c〔m/s〕を算出する。
【0068】
【数7】
【0069】
ここで、ガス中を伝搬する超音波の音速c〔m/s〕は、ガスの平均分子量M〔g/mol〕と、ガスの温度T〔K〕との関数で表現できる。すなわち音速c〔m/s〕は以下の式(8)によって算出される。なお、kは比熱比、Rは気体定数である。ガスGの温度T〔K〕は温度センサ30で測定した値であり、本実施形態では測定流路Fを流通するガスGが酸素と窒素の2分子からなる混合ガスであるとしてk=1.4とする。
【0070】
【数8】
【0071】
演算制御装置40は、上記式(7)、(8)から、測定流路F中のガスGの平均分子量M〔g/mol〕を算出する。そして算出された平均分子量M〔g/mol〕を基に、以下の式(9)によってガスG中の酸素濃度PO2〔%〕を算出する。なお、MO2〔g/mol〕は酸素の分子量であり、MN2〔g/mol〕は窒素の分子量である。MO2=32、MN2=28である。なお演算制御装置40は、酸素濃度が予め設定された値となるように上記の制御ユニット(不図示)へ信号を送信し、この制御ユニットで窒素吸着機構13の制御が行われる。
【0072】
【数9】
【0073】
次に、図5を参照してガス濃度流量測定装置15の組み立て方法について説明する。
まず、上記の超音波センサ60を一対準備する(ステップST1)。その後、測定部20の開口22aの各々の内側に、一つずつ超音波素子61を配置するようにして超音波センサ取付部22に対して測定部長手方向に素子基板62を押しつけ、ボルト90によって超音波センサ60を測定部20に固定する(ステップST2)。そして、比例弁80、温度センサ30、圧力センサ70、および演算制御装置40を装置基板50に固定して、これらを装置基板50に電気的に接続する(ステップST3)。そして、測定部20を装置基板50に固定するとともに、装置基板50に対して測定部20に固定された素子基板62の基板端子63を電気的に接続する(ステップST4)。
【0074】
ステップST4では、圧力センサ取付部26における対向面26aを装置基板50の表面に設けられた圧力センサ70の基部71に接近させるとともに、爪部28を爪挿通孔51bに挿通させる。爪体28bが爪挿通孔51bを通過する際には、爪体28bが爪挿通孔51bによって押されて腕28aが弾性変形して腕28a同士の間隔が小さくなる(図8参照)。そして爪体28bが爪挿通孔51bを通過した後に復元力によって腕28a同士の間隔が元に戻ると、爪体28bにおける爪面29が装置基板50の裏面に係合する。また対向面26aを圧力センサ70に接近させた際には、基板側開口26bを通じて圧力センサ70のセンサ部72がセンサ配置空間Sに配置される。
【0075】
またステップST4では、温度センサ取付部23のボルト穴23aに対して、装置基板50の裏面からボルト挿通孔51cに挿通されたボルト35が螺合することで、装置基板50に測定部20が固定される。
なお比例弁80および演算制御装置40はステップST4の後に装置基板50に固定されてもよい。
【0076】
以上説明した本実施形態の酸素濃縮装置1では、ガス濃度流量測定装置15の測定部20には爪部28が設けられている。また測定部20には爪部28とは離れた位置でボルト穴23aが設けられている。このため爪部28を装置基板50の裏面(係合面50c)に係合させるとともに、ボルト穴23aにボルト35を螺合させることで測定部20を装置基板50に固定できる。このように爪部28を設けたことで、ボルト35による固定箇所を削減することができ、ガス濃度流量測定装置15の組み立てを簡素化でき、コストを低減することができる。
【0077】
またセンサ配置空間Sを形成する圧力センサ取付部26の収容筒26xが測定管21から基板下方に向かって延びている。そして収容筒26xにはセンサ配置空間Sを装置基板50の表面に向けて開口させる基板側開口26bが設けられている。そして対向面26aを圧力センサ70の基部71に接近させて対向させ、爪部28を装置基板50の裏面に係合させることによって容易に圧力センサ70をセンサ配置空間Sに配置できる。センサ配置空間Sは測定流路Fに連通しているので、爪部28を装置基板50に係合させるのみで必然的に圧力センサ70がガスGに接触可能な位置に配置される。よってガス濃度流量測定装置15の組み立ての作業性を向上することができる。
【0078】
さらに爪部28がセンサ配置空間Sを挟むように一対設けられている。よって爪部28が装置基板50に係合した際には、対向面26aを圧力センサ70の基部71にしっかりと押し付けることができ、対向面26aと圧力センサ70との間に隙間が生じにくくなる。よって圧力センサ70周りにおいてガスGが測定部20の外への漏れ出てしまうことを回避できる。
【0079】
また圧力センサ取付部26にはシールリング27が設けられている。このため圧力センサ取付部26と圧力センサ70との間がシールされる。よってセンサ配置空間S内の圧力センサ70周りのガスGが測定部20の外へ漏れ出てしまうことを回避できる。
【0080】
さらにシールリング27は段部26yに配置されている。したがってガス濃度流量測定装置15の組み立て時におけるシールリング27の位置ずれを回避することができる。
【0081】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施形態の場合は測定部20に爪部28を設けたが、装置基板50側に爪部28を設け、爪部28に係合する係合面50cを測定部20に設けてもよい。
【0082】
また圧力センサ70は測定流路Fよりも下流側に設けられてもよい。この場合、導出流路F1とセンサ配置空間Sとが連通するように圧力センサ取付部26を設けるようにする。よって圧力センサ70の設置位置は上述の場合に限定されない。また圧力センサ70の全体をセンサ配置空間Sによって覆うように圧力センサ取付部26を設けてもよい。この場合、対向面26aは装置基板50の表面に接触する。
【0083】
さらに段部26yに代えて、圧力センサ取付部26には対向面26aから突出するように径方向面26d1を有する突起等を形成してもよい。
【0084】
また、装置基板50上における温度センサ30、演算制御装置40、および比例弁80の設置位置は上述の場合に限定されない。さらに上述の実施形態では温度センサ取付部23にボルト穴23aを設けて測定部20を装置基板50にボルト35で固定しているが、ボルト穴23aは測定部20における他の位置に形成してもよい。すなわち、爪部28とは異なる位置でボルト35によって測定部20が装置基板50に固定されればよい。また固定部としてボルト35に代えて結束バンドや爪等を使用してもよい。
【0085】
また、上記のガス濃度流量測定装置15は、酸素濃縮装置1以外の装置にも使用可能である。また酸素濃縮装置1はPSA方式の装置に限定されることなく、膜分離方式などの他の方式を用いた装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のガス濃度流量測定装置等によれば、組み立ての簡素化を図り、コスト低減が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 酸素濃縮装置
15 ガス濃度流量測定装置
20 測定部
21 測定管(流路形成部)
23 温度センサ取付部
23a ボルト穴(被固定部)
24 導出部
25 導入部
25a 流路開口
26 圧力センサ取付部
26x 収容筒
26y 段部
26a 対向面
26b 基板側開口
26d1 径方向面
26d2 段差面
27 シールリング
28 爪部
28a 腕
28b 爪体
29 爪面
30 温度センサ
35 ボルト(固定部)
40 演算制御装置
50 装置基板
50a 端縁
50b 端縁
51a 装置基板ホール
51b 爪挿通孔
51c ボルト挿通孔
69 シールリング
70 圧力センサ
100 濃縮装置本体
A 空気
G 酸素含有ガス
F 測定流路
F1 導出流路
F2 導入流路
S センサ配置空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8