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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】唾液分泌促進用組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20240620BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240620BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20240620BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20240620BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20240620BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240620BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20240620BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240620BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240620BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61K31/12
A61P1/02
A61K36/9068
A61K8/35
A61K8/9794
A61Q11/00
A61K9/68
A61K9/48
A61K9/28
A61K9/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020104287
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021001164
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】62/864,729
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大川原 正喜
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 博文
(72)【発明者】
【氏名】小山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖和
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088878(JP,A)
【文献】特開2015-044766(JP,A)
【文献】特開2020-195364(JP,A)
【文献】Goli Chamani et al.,Evaluation of Effects of Zingiber officinale on Salivation in Rats,Acta Medica Iranica,Teheran University of Medical Sciences,2011年,vol.49, no.6,336-340
【文献】Seon Ok et al.,Optimization of Extraction Conditions for the 6-Shogaol-rich Extract from Ginger (Zingiber officinale Roscoe),Preventive Nutrition and Food Science,2012年,vol.17,166-171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61P 1/00- 43/00
A61K 36/00- 36/9068
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 99/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-ショウガオールを有効成分として含有し、
前記6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する前記6-ショウガオールの含有量が30~70質量%であることを特徴とする唾液分泌促進用組成物。
【請求項2】
前記6-ショウガオールを含有するショウガ由来抽出物を含有する、請求項1記載の唾液分泌促進用組成物。
【請求項3】
製品で規定された1日当たりの摂取量又は、使用量に占める前記6-ショウガオールの含有量が0.05~1.00mgである請求項1又は2に記載の唾液分泌促進用組成物。
【請求項4】
製品で規定された1回当たりの摂取量又は、使用量に占める前記6-ショウガオールの含有量が0.05~1.00mgである請求項1又は2に記載の唾液分泌促進用組成物。
【請求項5】
前記6-ショウガオール及び前記6-ジンゲロールの合計量に対する前記6-ショウガオールの含有量が40~70質量%である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の唾液分泌促進用組成物。
【請求項6】
歯磨き粉、歯磨き用ペースト、マウスウォッシュ、チューインガム、カプセル、ハードキャンディー、ソフトキャンディー、グミ、ゼリー、噴霧剤、トローチ剤から選ばれた1種の製品形態をなす、請求項1乃至のいずれか1項に記載の唾液分泌促進用組成物。
【請求項7】
ショウガ粉砕物、ショウガ搾り汁及びショウガ搾り粕からなる群から選ばれた1種又は2種以上の抽出エキスを含む原料を、圧力1~10MPa、温度120~250℃の亜臨界水で処理し、6-ショウガオールを含有し、かつ前記6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する前記6-ショウガオールの含有量が30~70質量%である組成物を得ることを特徴とする唾液分泌促進用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6-ショウガオールを含む唾液分泌促進用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
唾液には、口腔内の自浄作用、口腔内の渇きを防止する、口臭予防等の効果があることが知られている。このため、唾液の分泌を促進させる組成物の提案がなされている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、香料による嗅覚刺激を介して唾液の分泌を促進させる唾液分泌促進方法が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、唾液分泌促進薬の混合物を含有し、使用者に増加および持続した唾液流を提供するバイオフィルムに反応性口腔ケア製品が開示されている。
【0005】
また、レモン果汁や、カプサイシンなどによって、唾液分泌を促進することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-040752号公報
【文献】特表2009-531287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の唾液分泌促進組成物は、効果の点で未だ十分なものではなく、さらに唾液分泌促進効果を高めた製品の開発が望まれている。
【0008】
また、レモン果汁などは強酸性のため、誤嚥した場合に肺が侵襲される虞れがある。また、カプサイシンのように辛味を有するものは、辛味が苦手なユーザが用いることができない問題がある。
【0009】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、唾液分泌促進効果に優れると共に、使用しやすい唾液分泌促進組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の唾液分泌促進用組成物は、6-ショウガオールを有効成分として含有し、前記6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する前記6-ショウガオールの含有量が10質量%以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の唾液分泌促進組成物によれば、ユーザがこの唾液分泌促進用組成物を口中に含んだり、経口摂取したりすることにより、ユーザの交感神経及び副交感神経を刺激して唾液の分泌を促進し、唾液分泌量を増やすことができる。その結果、例えば、ユーザによって食される飲食物の消化作用を促し、ユーザの口腔内の軟組織の保護作用を促進させ、ユーザの口腔内の洗浄作用を促し、ユーザの口腔内の殺菌作用を促し、ユーザの口腔内のpHの緩衝作用、ユーザの歯の再石灰化作用の促進等の効果が得られる。また、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールは、強酸性ではなく、かつカプサイシンを用いた場合よりも辛味も抑えられているため、多くのユーザの利用が可能となる。
【0012】
本発明の唾液分泌促進組成物においては、前記6-ショウガオールを含有するショウガ由来抽出物を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の唾液分泌促進組成物においては、製品で規定された1日当たりの摂取量又は、使用量に含まれる前記6-ショウガオールの含有量が0.05~1.00mgであることが好ましい。
【0014】
本発明の唾液分泌促進組成物においては、製品で規定された1回当たりの摂取量又は、使用量に占める前記6-ショウガオールの含有量が0.05~1.00mgであることが好ましい。
【0015】
本発明の唾液分泌促進組成物においては、前記6-ショウガオール及び前記6-ジンゲロールの合計量に対する前記6-ショウガオールの含有量が30~90質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明の唾液分泌促進組成物においては、前記6-ショウガオール及び前記6-ジンゲロールの合計量に対する前記6-ショウガオールの含有量が40~70質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の唾液分泌促進組成物においては、歯磨き粉、歯磨き用ペースト、マウスウォッシュ、チューインガム、カプセル、ハードキャンディー、ソフトキャンディー、グミ、ゼリー、噴霧剤、トローチ剤から選ばれた1種の製品形態をなすことが好ましい。
【0018】
本発明の唾液分泌促進組成物の製造方法は、ショウガ粉砕物、ショウガ搾り汁、及びショウガ搾り粕からなる群から選ばれた1種又は2種以上の抽出エキスを含む原料を、圧力1~10MPa、温度120~250℃の亜臨界水で処理して得られる、6-ショウガオールを含有し、かつ前記6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する前記6-ショウガオールの含有量が10質量%以上である組成物を得ることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザがこの唾液分泌促進用組成物を口中に含んだり、経口摂取したりすることにより、唾液の分泌を促進し、唾液分泌量を増やすことができるため、ユーザの口腔ケアを行うことができる。また、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールは、強酸性ではなく、かつカプサイシンを用いた場合よりも辛味も抑えられているため、多くのユーザの利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】試験例1における生姜抽出物「SUNショウガ」(商品名、三生医薬株式会社製)の使用量に対する唾液分泌量を示すグラフである。
図2】試験例2における6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの割合に対する唾液分泌量を示すグラフである。
図3】試験例3における6-ショウガオールの含有量に対する唾液分泌量を示すグラフである。
図4】試験例4における6-ショウガオールの含有量に対する唾液分泌量を示すグラフである。
図5】試験例5における生姜抽出物「SUNショウガ」(商品名、三生医薬株式会社製)の摂取日数に対する唾液分泌量を示すグラフである。
図6】試験例6における6-ショウガオールの含有量に対する唾液分泌量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る唾液分泌促進組成物及びその製造方法について、好ましい態様を挙げて詳細に説明する。
【0022】
本発明の唾液分泌促進組成物は、6-ショウガオールを有効成分として含有し、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が10質量%以上である組成物である。上記6-ショウガオール及び6-ジンゲロールは、例えば、ショウガの地下茎等に含まれている成分であり、ショウガを原料として、本発明の唾液分泌促進組成物を製造することができる。
【0023】
具体的には、ショウガ粉砕物、ショウガ搾り汁、及びショウガ搾り粕からなる群から選ばれた1種又は2種以上の抽出エキスを含む原料を、圧力1~10MPa、温度120~250℃の亜臨界水で処理することにより、本発明の唾液分泌促進組成物を効率よく製造することができる。
【0024】
原料の抽出エキスとなり得るショウガは、ショウガ属に属するショウガ(Zingiber officinale)のことをいう。ショウガの品種などは特に限定されず、おたふくショウガ、近江ショウガなどの大ショウガ、三州ショウガ、黄ショウガなどの中ショウガ、金時ショウガ、谷中ショウガなどの小ショウガなどが挙げられる。
【0025】
ショウガ粉砕物は、ショウガを公知の方法で粉砕したものである。粉砕の方法は特に限定されず、ミキサー、マスコロイダー、コミットロール、サイレントカッターなどの粉砕処理装置を用いて行う方法が挙げられる。
【0026】
ショウガ搾り汁は、ショウガを搾って、そこから粕(搾り粕)が除かれたものである。搾る方法は特に限定されず、パルパー、スクリュープレス、ギナーなどの搾汁機を用いて行う方法が挙げられる。
【0027】
ショウガ抽出物は、ショウガを公知の方法で抽出したものである。抽出の方法は特に限定されず、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法、超臨界抽出法、炭酸ガス抽出法などの方法が挙げられ、温度条件や使用する溶媒などについては、適宜選択することができる。この場合、ショウガは、抽出効率を高めるために、粉砕物、搾り汁、搾り粕とした状態で抽出に用いることができる。
【0028】
原料となり得る抽出エキスは、これらのショウガ粉砕物、ショウガ搾り汁及びショウガ搾り粕の1種又は2種以上を用いて抽出したエキスである。
【0029】
亜臨界水処理における亜臨界水とは、大気圧における水の沸点(100℃)から水の臨界温度(374.15℃)の温度範囲において、加圧により水が液状を保持している状態の水である。亜臨界水は、温度が高くなるにつれて、イオン積が増加し、比誘電率が下がる特性を有する。イオン積が増加すると加水分解力が強まる。また、比誘電率が低下すると、液体が有機溶媒に似た性質、すなわち液体の極性が低下する。
【0030】
亜臨界水処理は、市販のバッチ式亜臨界処理装置などを使用して、公知の方法で行うことができる。亜臨界水処理は、好ましくは120~250℃、より好ましくは160~200℃の亜臨界水で上述の原料が処理される。亜臨界水の温度が120℃未満では、亜臨界水による加水分解作用が弱く、十分にジンゲロールをショウガオールに変換させることができない傾向がある。亜臨界水の温度が250℃を超えると、処理後に得られる6-ジンゲロールと6-ショウガオールの総量が減少したり、亜臨界水による加水分解作用が強く処理物に焦げや苦味が付与されたりする傾向がある。
【0031】
また、当該処理は、好ましくは1~10MPa、より好ましくは3~5MPaの圧力条件下で行われる。処理圧力が1MPa未満では、処理装置内の水が沸騰し亜臨界状態に達せず、亜臨界水処理にたり得ない。また処理圧力が10MPa以上になると、その圧力に耐え得る処理装置を用いる必要があるので、製造コストが高くなる傾向がある。
【0032】
さらに、当該処理において、120~250℃の温度範囲まで昇温した後、当該温度範囲において、好ましくは10秒~60分、より好ましくは10~30分、保持される。10秒以上当該温度範囲に保持されることで、6-ショウガオールへの変換作用を更に効率的に行うことができ、6-ショウガオールの収率を高めることができる。一方、当該温度範囲における保持時間が60分を超えると、亜臨界水による加水分解作用が強く、処理物に焦げや苦味が付与される傾向がある。
【0033】
ショウガに亜臨界水処理を行うことにより、原料に含まれている6-ジンゲロールが脱水反応によって6-ショウガオールに変換される。その結果、原料に亜臨界水処理を行った抽出物の6-ショウガオールの含有量は、当該処理前の原料に含有されている6-ショウガオールの約70倍となる。
【0034】
こうして得られる抽出物は、6-ショウガオールを含有し、かつ6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が10質量%以上である。したがって、当該抽出物は唾液分泌促進組成物として用いることができる。
【0035】
上述のように唾液分泌促進組成物は、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールを含む。唾液分泌促進組成物は、上記の製造方法によって製造されているため6-ショウガオールを含有するショウガ由来抽出物を含有する。唾液分泌促進組成物は、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が10質量%以上である。
【0036】
唾液分泌促進組成物は、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が30~90質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましく、50~70質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が10質量%未満であると、十分な唾液の分泌促進効果を得られにくい傾向がある。また、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が90質量%を超えると、製造コストが高くなる傾向がある。
【0038】
尚、唾液分泌促進組成物における6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)、ガスクロマトグラフィー法(GC)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)、核磁気共鳴法(NMR)、比色法等を用いて測定することができる。
【0039】
本発明の唾液分泌促進組成物は、ユーザの口に含んで用いられる各種製品に応用することができる。例えば、歯磨き粉、歯磨き用ペースト、マウスウォッシュ、チューインガムのように、口に含むだけで飲み込まれないものであってもよい。また、例えば、錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセルなどの形態のサプリメントであってもよい。さらに、例えば、ハードキャンディー、ソフトキャンディー、グミ、ゼリーのような飲食品であってもよい。さらにまた、例えば、噴霧剤、トローチ剤のように、口中に含んで所定時間滞在させた後に飲み込まれるものであってもよい。このように、本発明の唾液分泌促進組成物は、各種の製品形態にして製造することができる。
【0040】
尚、マウスウォッシュのような親水性の溶媒に唾液分泌促進組成物を含有させる場合、適宜乳化剤を添加して乳化状態にしてもよい。
また、唾液分泌促進組成物は、例えば、ショウガオールオイルやジンゲロールオイル等を添加して用いてもよい。ショウガオールオイルとしては、例えば、「ジンジャーオイルHJK-5088」(商品名、稲畑香料株式会社製)などの市販品を用いることができる。また、ジンゲロールオイルとしては、例えば、「しょうがオイル(国産)」(商品名、辻製油株式会社製)などの市販品を用いることができる。
【0041】
唾液分泌促進組成物は、製品で規定された1日当たりの摂取量又は、使用量に占める6-ショウガオールの含有量が0.05~1.00mgであることが好ましい。1日当たりの摂取量又は、使用量においては、0.20~1.00mgであることがより好ましく、0.60~1.00mgであることがさらに好ましい。ここで「製品で規定された」とは、製品の容器や、当該製品の説明資料中に、好ましい1日当たりの摂取量又は、使用量として記載された量を意味する。
【0042】
唾液分泌促進組成物は、製品で規定された1回当たりの摂取量又は、使用量に占める6-ショウガオールの含有量が0.05~1.00mgであることが好ましい。1回当たりの摂取量又は、使用量においては、0.05~0.50mgであることがより好ましく、0.05~0.10mgであることがさらに好ましい。ここで「製品で規定された」とは、製品の容器や、当該製品の説明資料中に、好ましい1回当たりの摂取量又は、使用量として記載された量を意味する。
【0043】
唾液分泌促進組成物の1日当たりの摂取量若しくは使用量又は、1回当たりの摂取量若しくは使用量に占める6-ショウガオールの含有量が0.05mg未満であると、十分な唾液の分泌促進効果を得られにくい傾向がある。また、唾液分泌促進組成物の1日当たりの摂取量若しくは使用量又は、1回当たりの摂取量若しくは使用量に占める6-ショウガオールの含有量が1.00mgを超えると、費用対効果が低下する傾向がある。また、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールは、強酸性ではなく、かつカプサイシン等に比べて辛味も抑えられているため、多くのユーザの利用が可能となる。したがって、このような態様で唾液分泌促進組成物を摂取又は、使用することにより、十分な唾液分泌促進効果を得ることができる。また、この6-ショウガオールの含有量を満たす限り、唾液分泌促進組成物を薄めて用いてもよい。
【0044】
また、本発明の唾液分泌促進組成物は、古くから食用に用いられているショウガを原料としたショウガ由来の抽出物を用いているため、摂取者又は、使用者に対して安全性が担保される。
【0045】
以上のように、本発明の唾液分泌促進組成物によれば、ユーザがこの唾液分泌促進用組成物を口中に含んだり、経口摂取したりすることにより、ユーザの交感神経及び副交感神経を刺激して唾液の分泌を促進し、唾液分泌量を増やすことができる。その結果、例えば、ユーザの消化作用を促し、ユーザの口腔内の軟組織の保護作用を促進させ、ユーザの口腔内の洗浄作用を促し、ユーザの口腔内の殺菌作用を促し、ユーザの口腔内のpHの緩衝作用、ユーザの歯の再石灰化作用の促進等の効果が得られる。
【実施例
【0046】
[試験例1](唾液分泌促進組成物を用いた唾液分泌量の測定)
6-ショウガオールを0.55質量%含有し、かつ6-ジンゲロールを0.44質量%含有する唾液分泌促進組成物(以下、SUNショウガとも称する)を用いて、SUNショウガの使用量に対する唾液分泌量を測定した。
【0047】
尚、SUNショウガは、6-ショウガオールを2.0質量%含有する高濃度品(以下、SUNショウガ(2.0%)とも称する)を6-ショウガオール及び6-ジンゲロールを含有しない食用油脂で希釈したものである。従って、SUNショウガ及びSUNショウガ(2.0%)は、6-ショウガオールと6-ジンゲロールとを同じ割合で含む。
【0048】
(測定試料)
以下の要領でブランク1及び実施例1~4のサンプルを作製した。
ブランク1:ガーゼのみのサンプル
実施例1:ガーゼにSUNショウガを10mg滴下したサンプル
実施例2:ガーゼにSUNショウガを20mg滴下したサンプル
実施例3:ガーゼにSUNショウガを50mg滴下したサンプル
実施例4:ガーゼにSUNショウガを100mg滴下したサンプル
【0049】
(唾液分泌量の測定)
サクソンテストによる唾液分泌量の評価を行った。具体的には、秤量した滅菌ガーゼ(7.5cm×7.5cm、12折)に試料(SUNショウガ)を滴下し、当該ガーゼを被験者の口に含み2分間安静にした。尚、ガーゼは、被験者の舌と下顎の前歯との間に載置した。前後の重量の差、すなわち、被験者が口に含んだ後のガーゼの重量から、試料を滴下させた際のガーゼの重量を引くことにより唾液分泌量を算出した。測定は、1人の被験者に対して3回実施した(n=3)。測定値の平均を図1に示す。
【0050】
図1に示すように、ガーゼにSUNショウガを10mg~100mg滴下した実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4は、いずれもブランク1よりも唾液分泌量が増加したことが確認された。具体的には、ブランク1の唾液分泌量の平均が3.4であったが、実施例1~4の平均値は、いずれにおいてもブランク1の平均値を越えた。したがって、SUNショウガを10mg~100mg滴下した実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4は、唾液分泌促進効果を有することが確認された。また、SUNショウガの滴下量に伴って唾液分泌量が増加することが確認された。
【0051】
[試験例2](6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの含有割合に応じた唾液分泌量の測定)
6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの含有割合が互いに異なる複数のサンプルを用いて唾液分泌量を測定した。
【0052】
(測定試料)
以下の要領で実施例5~13のサンプルを作製した。
実施例5:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが10質量%、6-ジンゲロールが90質量%のサンプル
実施例6:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが20質量%、6-ジンゲロールが80質量%のサンプル
実施例7:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが30質量%、6-ジンゲロールが70質量%のサンプル
実施例8:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが40質量%、6-ジンゲロールが60質量%のサンプル
実施例9:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが50質量%、6-ジンゲロールが50質量%のサンプル
実施例10:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが60質量%、6-ジンゲロールが40質量%のサンプル
実施例11:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが70質量%、6-ジンゲロールが30質量%のサンプル
実施例12:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが80質量%、6-ジンゲロールが20質量%のサンプル
実施例13:6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの総量に対して6-ショウガオールが90質量%、6-ジンゲロールが10質量%のサンプル
【0053】
実施例5~13は、SUNショウガ、ショウガオールオイル及びジンゲロールオイルを用いて作製した。SUNショウガ、ショウガオールオイル及びジンゲロールオイルの各々は、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールを表1に示す態様で含む。尚、ショウガオールオイルは、例えば、「ジンジャーオイルHJK-5088」(稲畑香料株式会社製)を用いることができる。また、ジンゲロールオイルは、例えば、「しょうがオイル(国産)」(辻製油株式会社製)を用いることができる。
【0054】
【表1】
【0055】
唾液分泌促進組成物における6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの含有量は、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)を用いて測定した。以下に測定条件を示す。
カラム:オクタデシルシリル(ODS)カラム
流速:1mL/min
波長:228nm
温度:40℃
注入量:20μL
移動相は、表2に示すものを用いた。
【0056】
【表2】
【0057】
6-ジンゲロール(富士フィルム和光純薬株式会社製)および、6-ショウガオール(富士フィルム和光純薬株式会社製)はアセトニトリルで、約5ppmに調製した。
TFA(Trifluoroacetic Acid:トリフルオロ酢酸)は、富士フィルム和光純薬株式会社製を用いた。
【0058】
(唾液分泌量の測定)
測定方法は、試験例1と同一であるので説明を省略する。測定結果を図2に示す。尚、同図において試験例1で測定したブランク1及び実施例3の測定結果も併せて示した。
【0059】
図2に示すように、実施例3及び実施例5~13は、ブランク1よりも高い唾液分泌量が計測された。具体的には、ブランク1の平均値が3.4であったが、実施例3及び実施例5~13の平均値は、いずれもこの平均値を越えた。また、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が30~90質量%である際に特に唾液分泌促進効果があることが確認された。さらに、6-ショウガオール及び6-ジンゲロールの合計量に対する6-ショウガオールの含有量が40~70質量%である際に顕著に効果が現れることが確認された。
【0060】
[試験例3](チュアブル錠における唾液分泌量の測定)
6-ショウガオール及び6-ジンゲロールを含むSUNショウガの含有量が互いに異なる複数のチュアブル錠のサンプルを用いて唾液分泌量を測定した。
【0061】
(測定試料)
以下の要領でブランク2及び実施例14、15のサンプル(チュアブル錠)を作製した。本試験例においては、油脂の割合を減らし、チュアブル錠を作製しやすくするために、6-ショウガオールを2.0%含有する高濃度品(SUNショウガ(2.0%))を使用した。
ブランク2:チュアブル錠のみのサンプル
実施例14:SUNショウガ(2.0%)を10mg含むチュアブル錠のサンプル(6-ショウガオールの含有量;0.2mg/粒)
実施例15:SUNショウガ(2.0%)を25mg含むチュアブル錠のサンプル(6-ショウガオールの含有量;0.5mg/粒)
尚、ブランク2、実施例14及び実施例15は、共通の賦形剤等を用いた。このチュアブル錠は、表3に示す原料配合で構成されている。
【0062】
【表3】
【0063】
(唾液分泌量の測定)
試料1粒を1分間かけて口腔内で咀嚼し、これを飲み込んだ後にサクソンテストによって唾液分泌量を測定した。測定方法は、試験例1と同一であるので説明を省略する。測定結果を図3に示す。
【0064】
図3に示すように、ブランク2の唾液分泌量の平均値は、摂取前(試験開始前)の唾液分泌量の平均値よりも多かった。また、実施例14及び15の唾液分泌量の平均値は、ブランク2の唾液分泌量の平均値よりも多かった。したがって、SUNショウガを摂取することにより唾液分泌量が増加することが分かった。
【0065】
また、実施例15の唾液分泌量の平均値は、実施例14の唾液分泌量の平均値よりも多かった。したがって、SUNショウガの含有量の増加に伴って唾液分泌量が増加することが分かった。
【0066】
[試験例4](シームレスカプセルにおける唾液分泌量の測定)
6-ショウガオール及び6-ジンゲロールを含むSUNショウガの含有量が互いに異なる複数のシームレスカプセル(口腔内の唾液又は咀嚼によって速やかに皮膜が崩壊するゼラチンをベースとしたカプセル)のサンプルを用いて唾液分泌量を測定した。ここでの剤形としての「シームレスカプセル」とは、液体の界面張力を利用して製造される、継ぎ目のないカプセルを意味する。
【0067】
(測定試料)
以下の要領で実施例16、17のサンプルを作製した。
実施例16:SUNショウガを10mg含むシームレスカプセルのサンプル(6-ショウガオールの含有量;0.05mg/粒)
実施例17:SUNショウガを20mg含むシームレスカプセルのサンプル(6-ショウガオールの含有量;0.1mg/粒)
尚、実施例16及び実施例17は、共通の皮膜、賦形剤等を用いた。このシームレスカプセルの内容物は、表4に示す原料配合で構成されている。
【0068】
【表4】
【0069】
(唾液分泌量の測定)
試料1粒を1分間かけて口腔内でシームレスカプセルの皮膜を崩壊させ、これを飲み込んだ後にサクソンテストによって唾液分泌量を測定した。測定方法は、試験例1と同一であるので説明を省略する。測定結果を図4に示す。
【0070】
図4に示すように、実施例16及び17の唾液分泌量の平均値は、摂取前の唾液分泌量の平均値よりも多かった。したがって、SUNショウガを摂取することにより唾液分泌量が増加することが分かった。
【0071】
また、実施例17の唾液分泌量の平均値は、実施例16の唾液分泌量の平均値よりも多かった。したがって、SUNショウガの含有量の増加に伴って唾液分泌量が増加することが分かった。
【0072】
[試験例5](ソフトカプセルにおける唾液分泌量の測定)
SUNショウガを含むソフトカプセル(摂取を目的としたゼラチンをベースとしたカプセル)のサンプルを用いて、当該サンプルの摂取日数に応じた唾液分泌量を測定した。ここでの剤形としての「ソフトカプセル」とは、液状またはペースト状の内容物を、フィルム状の皮膜によって被包成形して製造されるものである。
【0073】
(測定試料)
以下の要領で実施例18のサンプルを作製した。
実施例18:SUNショウガのみを200mg含むソフトカプセルのサンプル(6-ショウガオールの含有量:1mg/粒)
【0074】
(唾液分泌量の測定)
以下の態様でソフトカプセルの摂取及び唾液分泌量を測定した。尚、測定方法は、試験例1と同一であるので説明を省略する。測定結果を図5に示す。
摂取0日(摂取前):昼食前に唾液分泌量を測定。
摂取1~8日:朝食後にソフトカプセル1粒を経口摂取し、昼食前に唾液分泌量を測定した。
【0075】
図5に示すように、SUNショウガのソフトカプセルの摂取後の唾液分泌量の平均値は、すべての摂取日数において摂取前の唾液分泌量の平均値よりも多く計測された。唾液分泌量の平均値は、摂取日数が6日に達するまで増加する傾向がみられた。摂取日数が7日以降の唾液分泌量の平均値は、摂取日数6日の唾液分泌量の平均値よりも減少したものの、摂取前よりも多く、かつ摂取日数が1~3日と同程度に計測された。以上のように、SUNショウガを含むカプセルを摂取することにより唾液分泌量が増加することが分かった。
【0076】
[試験例6](マウスウォッシュにおける唾液分泌量の測定)
6-ショウガオール及び6-ジンゲロールを含むSUNショウガの含有量が互いに異なる複数のマウスウォッシュのサンプルを用いて唾液分泌量を測定した。
【0077】
(測定試料)
以下の要領でブランク3及び実施例19~21のサンプルを作製した。
水:水のみのサンプル
ブランク3:マウスウォッシュのみのサンプル
実施例19:マウスウォッシュにSUNショウガを20mg加えたサンプル
実施例20:マウスウォッシュにSUNショウガを40mg加えたサンプル
実施例21:マウスウォッシュにSUNショウガを60mg加えたサンプル
マウスウォッシュは、ガム・デンタルリンス(製品名、サンスター株式会社製)を用いた。水及びブランク3の量は、それぞれ10mLとした。実施例19~21は、10mLのマウスウォッシュに6-ショウガオールが上記の量となるようにSUNショウガを加えて作製した。
【0078】
(唾液分泌量の測定)
水、ブランク3及び実施例19~21のいずれかを口に含んで20秒間ゆすぎ、吐き出した後にサクソンテストによって唾液分泌量を測定した。測定方法は、試験例1と同一であるので説明を省略する。測定結果を図6に示す。
【0079】
図6に示すように、ブランク3の唾液分泌量の平均値は、水よりも多く計測された。また、実施例19の唾液分泌量の平均値は、ブランク3よりもわずかに多く計測された。実施例20の唾液分泌量の平均値は、実施例19よりも多く計測された。実施例21の唾液分泌量の平均値は、実施例20よりも多く計測された。したがって、SUNショウガを口に含むことにより唾液分泌量が増加することが分かった。また、SUNショウガの含有量が多くなるにつれて唾液分泌量が増加することが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6