(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ディーゼル画分を含む供給原料から潤滑基油を製造する方法、及びこれにより製造される潤滑基油
(51)【国際特許分類】
C10G 45/58 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
C10G45/58
(21)【出願番号】P 2020118567
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0116062
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514020459
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】509349451
【氏名又は名称】エスケー エンムーブ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ・ソン オン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ハック ムック
(72)【発明者】
【氏名】オック・ジン フィ
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145714(WO,A1)
【文献】特開平11-043679(JP,A)
【文献】特開2018-104587(JP,A)
【文献】特開昭60-212487(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167081(WO,A1)
【文献】特開昭59-164391(JP,A)
【文献】特表2010-533224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C10M 101/02、177/00
C10N 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑基油の製造方法であって、
ディーゼル画分を含む供給原料を提供するステップと、
前記供給原料を接触脱ろう反応させるステップと、
前記接触脱ろう反応ステップの生成物から潤滑基油を回収するステップとを含
み、
前記供給原料は、ASTM D2887による模写蒸留試験での10%留出温度が230℃以下であり、90%留出温度が360℃以下であり、
前記供給原料は、0.81乃至0.87の比重、5.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.0cSt(100℃)以下の動粘度、5℃以下の流動点を有し、硫黄及び窒素をそれぞれ2.0重量%以下で含有する、
潤滑基油の製造方法。
【請求項2】
前記供給原料内の炭化水素分子の平均炭素数は10~25であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑基油の製造方法。
【請求項3】
前記供給原料は、前記ディーゼル画分を90重量%以上含むことを特徴とする、請求項1に記載の潤滑基油の製造方法。
【請求項4】
前記供給原料は、ディーゼル画分よりも軽質な燃料油画分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の潤滑基油の製造方法。
【請求項5】
前記ディーゼル
画分よりも軽質な燃料油画分はケロシン画分であることを特徴とする、請求項
4に記載の潤滑基油の製造方法。
【請求項6】
前記供給原料は未転換油を5重量%未満含むことを特徴とする、請求項1に記載の潤滑基油の製造方法。
【請求項7】
前記接触脱ろう反応ステップは、250~410℃の反応温度、30~200kg/cm
2の反応圧力、0.1~3.0hr
-1の空間速度(LHSV)及び150~1000Nm
3/m
3の供給原料に対する水素の体積比条件下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑基油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディーゼル画分を含む供給原料から潤滑基油を製造する方法、及びこれにより製造される潤滑基油に関し、より詳細には、ディーゼル画分を含む供給原料から超低粘度の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油を製造する方法、及びこれにより製造される潤滑基油に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑基油とは、潤滑油製品の原料となるものであり、一般的に優れた潤滑基油は、高い粘度指数を有し、安定性(酸化、熱、UVなど)に優れるうえ、揮発性が少ない特性を持つ。米国石油協会(API、American Petroleum Institute)では、潤滑基油を品質によって下記表1のとおりに分類している。
【0003】
【0004】
一般に、鉱油系潤滑基油の中でも、溶剤抽出法によって製造された潤滑基油は主にGroupI、水添改質法で製造された潤滑基油は主にGroupII、高度の水素化分解反応によって製造された粘度指数の高い潤滑基油は主にGroupIIIに該当する。一方、酷寒期又は極地などの過酷な温度で利用可能な潤滑油製品に対する必要性が存在する。このため、従来の潤滑基油に流動点降下剤、粘度改質剤などの添加剤を追加することにより、潤滑油製品の低温特性の改善を図っている。しかし、前記添加剤は、過量含有する場合には潤滑油製品自体の性能を阻害するおそれがあり、その添加に制限が伴う。これにより、潤滑基油自体の低温性能が改善され潤滑基油が求められている。
【0005】
このような潤滑基油は、低い粘度及び低い流動点を有することが要求される。これに適した潤滑基油としては、合成基油であるポリアルファオレフィン(Poly Alpha Olefins、PAOs)及びエステル系基油がある。前記PAOsは、優れた粘度安定性及び低温流動性を有し、エステル系基油も、優れた粘度安定性を有する。ところが、前記PAOs及びエステル系基油は、コストの面で高いという欠点を持つ。
【0006】
そこで、前記合成基油と同等か或いはそれより優れた低温性能を有しながら、前記合成基油に比べて価格競争力のある鉱油系潤滑基油を製造しようとする努力が続けられてきた。例えば、従来の燃料油水素化分解工程(Hydro Cracking、HC)と連携して潤滑基油の供給原料を製造する工程は、減圧蒸留工程で生産された減圧ガス油を水素化分解しながら発生する未転換油(Unconverted Oil、UCO)を用いる方法がある。この方法では、留分中に含まれている硫黄、窒素、酸素及び金属成分などの不純物を除去する水素化処理工程を経た後、主反応工程である水素化分解工程を通過しながら軽質炭化水素に相当量が転換され、一連の分別蒸留工程を経て、分解された各種のオイル及びガスを分離して軽質留分を製品化する。前記反応において、一般にパスあたりの反応転換率が40%程度に設計され、パスあたりの転換率を100%にすることは実質的に不可能なので、最後の分別蒸留工程では、常に未転換油(UCO)が発生し、その一部を外部に抜き出して潤滑基油の原料として使用し、残りを水素化分解工程に再循環させる。しかし、前記未転換油に由来した潤滑基油の中で、別の添加剤の添加なしに自体的に合成基油と同等又はそれより優れた低温性能を有する鉱油系潤滑基油は、現在まで知られていない。
【0007】
このため、前述したように、合成基油に対して価格競争力を備えながらも、同等又はより優れた低温性能を有する新しい鉱油系潤滑基油に対する要求が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本開示の第1観点は、上述した高価な合成基油を代替することができる、低温性能が改善された潤滑基油の製造方法を提供することにある。
本開示の第2観点は、第1観点の製造方法によって製造される潤滑基油を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1観点を達成するための潤滑基油の製造方法は、ディーゼル画分を含む供給原料を提供するステップと、前記供給原料を接触脱ろう反応させるステップと、前記接触脱ろう反応ステップの生成物から潤滑基油を回収するステップとを含む。
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、ASTM D2887による模写蒸留試験での10%留出温度が250℃以下であり、50%留出温度が350℃以下である。
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、0.81乃至0.87の比重、5.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.0cSt(100℃)以下の動粘度、5℃以下の流動点を有し、硫黄及び窒素をそれぞれ2.0重量%以下で含有する。
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料内の炭化水素分子の平均炭素数は10~25である。
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、前記ディーゼル画分を90重量%以上含む。
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、ディーゼル画分よりも軽質な燃料油画分をさらに含む。
本開示の一実施形態によれば、前記ディーゼル分画よりも軽質な燃料油画分はケロシン画分である。
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、未転換油を5重量%未満含む。
本開示の一実施形態によれば、前記接触脱ろう反応ステップは、250~410℃の反応温度、30~200kg/cm2の反応圧力、0.1~3.0hr-1の空間速度(LHSV)及び150~1000Nm3/m3の供給原料に対する水素の体積比条件下で行われる。
【0011】
本開示の第2観点を達成するための潤滑基油は、本開示の第1観点の製造方法によって製造され、ここで、前記潤滑基油は、9.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.5cSt(100℃)以下の動粘度、及び-50℃以下の流動点を有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によって製造される潤滑基油は、従来の低粘度潤滑基油に比べて低い粘度及び流動点を有するので、改善された低温性能を示す。前記潤滑基油は、低温性能が重要な超低粘度の高性能潤滑油製品や極低温地方で使用される潤滑油製品への適用が可能である。また、従来の鉱油系潤滑基油と適切に配合することにより、要求される性能を満足する潤滑油製品を製造することができる。
従来、前記潤滑油製品を製造する場合、要求される性能を満足するためにはPAOやエステル系基油などの高価な合成基油を使用しなければならなかったが、本開示による潤滑基油で合成基油を代替することが可能となり、経済的な面での利点がある。
また、従来の未転換油を用いた潤滑基油の製造方法によって低粘度の潤滑基油を製造する場合には、別の分離、精製過程を経て所望の低粘度を有する潤滑基油を回収しなければならないので、追加工程及び所望しない物性の潤滑基油の不可避な生産が伴われたが、本開示の製造方法を使用する場合、目的とする低粘度の潤滑基油のみを選択的に生産することが可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態による潤滑基油のUV吸光度を測定した結果をプロットして示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態による潤滑基油の硫酸呈色試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付図面に関連している以下の詳細な説明と好適な実施形態からさらに明らかになるが、本開示が必ずしもこれに限定されるものではない。また、本開示を説明するにあたり、関連している公知の技術についての具体的な説明が本開示の要旨を不要に曖昧にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0015】
本開示で使用される用語「未転換油(UCO)」は、燃料油の製造のための水素化分解工程に供給されたが、水素化分解反応が行われていない未反応オイルを意味する。
【0016】
本開示で使用される用語「燃料油画分」、「ガソリン画分」、「ナフサ画分」、「ケロシン画分」、「ディーゼル画分」などは、石油留分から得られる画分であって、後続工程(例えば、接触脱ろう工程、水素化仕上げ工程など)を経て、それぞれ燃料油、ガソリン、ナフサ、ケロシン、ディーゼルとして利用可能な画分を意味する。
【0017】
潤滑基油の製造方法
以下、本開示の製造方法をより具体的に説明する。
潤滑基油を製造する従来の工程は、減圧ガス油(VGO)を原料とする燃料油水素化反応工程の未転換油(UCO)を用いて潤滑基油を製造するのが一般的である。具体的には、減圧蒸留工程(Vacuum distillation Unit、V)から分離された減圧ガス油(VGO)を水素化処理反応工程(HydroTreating、HDT)に供給して硫黄、窒素、酸素及び金属成分などの不純物を除去し、水素化分解反応工程(HDC)を介して軽質留分を生産し、これに伴われる未転換油(UCO)を接触脱ろう反応工程(CDW)に供給して潤滑基油を生産する。
【0018】
本開示の製造方法は、未転換油(UCO)を用いる従来の潤滑基油の製造方法とは異なり、ディーゼル画分を用いる潤滑基油の製造方法を提供する。本開示による潤滑基油の製造方法は、ディーゼル画分を含む供給原料を提供するステップと、前記供給原料を接触脱ろう反応させるステップと、前記接触脱ろう反応ステップの生成物から潤滑基油を回収するステップとを含む。
【0019】
例えば、減圧ガス油(VGO)を原料とする燃料油水素化反応工程で得られるディーゼル画分を用いて潤滑基油を製造する本開示の一実施形態によってより具体的に考察すると、常圧蒸留工程(Crude Distillation Unit、CDU)から分離された常圧残渣油(Atmospheric Residue、AR)を減圧蒸留工程(V)で蒸留して減圧ガス油(VGO)、及び減圧残渣油(Vacuum Residue、VR)に分離し、前記減圧ガス油(VGO)を順次水素化処理反応工程(HDT)及び水素化分解反応工程(HDC)に供給する。水素化分解反応工程(HDC)を経た減圧ガス油(VGO)は、後で分別蒸留工程(Fs)に供給され、前記分別蒸留工程(Fs)を介して未転換油(UCO)、ディーゼル画分、及びディーゼル画分より軽質な燃料油画分などが分離される。前記ディーゼル画分は接触脱ろう反応工程(CDW)に供給され、前記接触脱ろう反応工程の生成物から本開示の潤滑基油が回収される。
【0020】
水素化処理反応工程(HDT)は、例えば減圧ガス油(VGO)などの石油留分に含まれている硫黄、窒素、酸素及び金属成分などの不純物を除去する工程である。水素化処理反応工程(HDT)を経た後、水素化分解反応工程(HDC)の水素化分解過程を介して、前記石油留分は軽質炭化水素に転換される。前記水素化処理反応工程(HDT)及び水素化分解反応工程(HDC)は、本開示で用いられるディーゼル画分の収得を妨害しなければ、従来のいずれの工程条件でも適用が可能である。
【0021】
水素化分解反応工程(HDC)を介して生成された軽質及び重質の炭化水素は、分別蒸留工程(Fs)に供給され、ディーゼル油よりも軽質な燃料油製品(LPG、ガソリン、ジェット燃料油など)の製造に用いられるディーゼル画分よりも軽質な燃料油画分、ディーゼル画分、及び未転換油(UCO)などに分離される。前記未転換油(UCO)は、従来の潤滑基油製造工程に供給されるか、或いは再循環して水素化分解反応工程(HDC)に再供給され得る。
【0022】
本開示において、潤滑基油の製造に用いられる供給原料に含まれるディーゼル画分は、前述した工程によって得られるものに限定されず、例えば、原油の分別蒸留工程、未転換油(UCO)の追加分解又は分離精製などのように、様々なルートを介して得られるディーゼル画分を供給原料として用いることが可能であることに注意すべきである。
【0023】
本開示の一実施形態によれば、前記ディーゼル画分を含む供給原料は、ASTM D2887による模写蒸留試験での10%留出温度が250℃以下、50%留出温度が350℃以下、好ましくは10%留出温度が240℃以下、50%留出温度が340℃以下、より好ましくは10%留出温度が230℃以下、50%留出温度が330℃以下であり得る。また、本開示の他の実施形態によれば、前記供給原料は、ASTM D2887による模写蒸留試験での80%留出温度が400℃以下、好ましくは370℃以下、より好ましくは350℃以下であり得る。また、本開示の別の実施形態によれば、前記供給原料は、ASTM D2887による模写蒸留試験での90%留出温度が400℃以下、好ましくは370℃以下、より好ましくは360℃以下であり得る。ASTM D2887試験は、ガスクロマトグラフィーの模写蒸留試験を介して試料の沸点を分析する方法であって、前記供給原料の温度を徐々に増加させると、供給原料内の炭化水素成分がキャピラリーカラム(capillary column)を介して溶出され、同一の条件で測定された標準物との比較を介して沸点分布を示すことができる。前記留出温度が当該範囲から外れる場合、これを用いて製造する基油製品の動粘度及び低温粘度が高くなって潤滑油の性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0024】
下記表2は本開示の一実施形態による供給原料のASTM D2887による模写蒸留試験結果を示す。
【0025】
【0026】
また、前記供給原料は、0.81乃至0.87、好ましくは0.82乃至0.86の比重を有することができる。比重の場合は、潤滑基油の性能に直接影響を及ぼすものではないが、ディーゼル画分内の異物混入有無の判断に役立つ。
【0027】
また、前記供給原料は、40℃で5.0cSt以下、好ましくは4.7cSt以下、より好ましくは4.5cSt以下の動粘度を有することができ、100℃で2.0cSt以下、好ましくは1.8cSt以下、より好ましくは1.6cSt以下の動粘度を有することができる。動粘度は、流体の粘度を前記流体の密度で割った値を意味する。一般に、潤滑基油における粘度とは動粘度をいい、測定温度は国際標準化機構(ISO)の粘度分類によって40℃、100℃と定めている。
【0028】
また、前記供給原料は、5℃以下、好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、最も好ましくは-15℃以下の流動点を有することができる。オイルを冷却させると、粘度が徐々に増大して流動性を失って固まり始めるが、このときの温度を凝固点といい、流動点は、凝固点に達する前の流動性を認めることができる温度を意味する。通常、凝固点よりも2.5℃高い温度をいう。
【0029】
また、前記供給原料は、硫黄及び窒素をそれぞれ2.0重量%以下で含有することができる。好ましくは、前記供給原料は、硫黄及び窒素をそれぞれ1.0重量%以下で含有することができる。前記硫黄及び窒素は、微量の存在時にも後続工程の触媒及び最終製品の安定性などに悪影響を及ぼすおそれがあるので、通常、前述したように水素化処理反応工程(HDT)によって除去される。
【0030】
前述したように、本開示の供給原料は、ディーゼル画分を含む。このため、前記供給原料は、炭化水素分子あたり10~25個、好ましくは10~22個、より好ましくは10~20個の平均炭素数を有することができる。前記平均炭素数が10個未満の場合には、引火点及び蒸発減量があまりにも低くなるという問題が発生するおそれがあり、前記平均炭素数が25個を超える場合には、低温性能(低温粘度及び流動点)があまり高くなり、潤滑油自体の性能を満足させ難くなるという問題が発生するおそれがある。
【0031】
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、ディーゼル画分を90%以上、好ましくは95%以上含むことができる。最も好ましくは、前記供給原料は、前記ディーゼル画分100%で構成できる。前記供給原料内のディーゼル画分が90%未満含まれる場合には、本開示が目的とする低温性能に改善された潤滑基油を得ることが難しくなる。
【0032】
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、ディーゼル画分よりも軽質な燃料油画分をさらに含むことができる。ここで、前記ディーゼル画分よりも軽質な燃料油画分とは、「ガソリン画分」、「ナフサ画分」、「ケロシン画分」などを意味する。揮発性能の観点から、好ましくは、前記ディーゼル画分よりも軽質な燃料油画分はケロシン画分であり得る。ケロシン画分が含まれている場合、最終的な潤滑基油の粘度を下げるので、低温性能及び添加剤との相応性の観点からより有利であり得る。
【0033】
本開示の一実施態様によれば、また、前記供給原料は、未転換油を5重量%未満、好ましくは1重量%未満で含むことができる。最も好ましくは、前記供給原料は、未転換油を含有しなくてもよい。前述したように、本開示の潤滑基油は、ディーゼル画分から製造されるものであって、供給原料内の未転換油の存在は、不純物として取り扱われ得る。供給原料内の未転換油の含有量が5重量%を超える場合には、最終的に生成される潤滑基油の粘度及び流動点に否定的な影響を及ぼす可能性がある。
【0034】
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、収得前又は収得後に接触脱ろう反応工程(CDW)に導入できる。好ましくは、前記供給原料は、収得後に接触脱ろう反応工程(CDW)に導入できる。接触脱ろう反応工程(CDW)は、低温性状を悪くするN-パラフィンを異性化(isomerization)反応又はクラッキング(cracking)反応によって低減又は除去する工程を意味する。したがって、接触脱ろう反応を経れば、優れた低温性状を持つことができるため、所望の潤滑基油の流動点規格を合わせることができる。本発明の一実施形態によれば、前記接触脱ろう反応工程(CDW)は、250~410℃の反応温度、30~200kg/cm2の反応圧力、0.1~3.0hr-1の空間速度(LHSV)及び150~1000Nm3/m3の供給原料に対する水素の体積比条件下で行われ得る。
【0035】
また、前記脱ろう工程に使用可能な触媒は、分子篩(Molecular Sieve)、アルミナ及びシリカ-アルミナから選択される酸点を有する担体と、周期律表第2族、第6族、第9族及び第10族元素から選択される1つ以上の水素化機能を有する金属を含み、特に第9族及び第10族(すなわち、VIII族)金属の中ではCo、Ni、Pt、Pdが好ましく、第6族(すなわち、VIB族)金属の中ではMo、Wが好ましい。前記酸点を有する担体の種類としては、分子篩(Molecular Sieve)、アルミナ、シリカ-アルミナなどを含み、これらの中の分子篩は、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト(Zeolite))、SAPO、ALPOなどをいうものであって、10員酸素環(10-membered Oxygen Ring)を有するMedium Pore分子篩であるSAPO-11、SAPO-41、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48などと、12員酸素環を有するLarge Pore分子篩が使用できる。
【0036】
本開示において、前記脱ろう工程を経た留分(すなわち、ディーゼル画分)は、さらに水素化仕上げ触媒の存在下の水素化仕上げ工程(Hydrofinishing、HDF)に導入できる。前記水素化仕上げ工程(HDF)は、水素化仕上げ触媒の存在下に製品別の要求規格に応じて脱ろう処理された留分のオレフィン及び多環芳香族を除去して安定性を確保する工程である。特に、ナフセン系潤滑基油の製造の観点からは、芳香族の含有量及びガス吸湿性などを最終制御する工程である。本発明の一実施形態によれば、前記水素化仕上げ工程(HDF)は、150~300℃の温度、30~200kg/cm2の圧力、0.1~3h-1の空間速度(LHSV)及び300~1500Nm3/m3の流入した留分に対する水素の体積比条件下で行われ得る。
【0037】
また、水素化仕上げ工程に使用される触媒は、金属を担体に担持して使用され、前記金属は、水素化機能を有する第6族、第8族、第9族、第10族、第11族元素から選択された一つ以上の金属を含み、好ましくは、Ni-Mo、Co-Mo、Ni-Wの金属硫化物系又はPt、Pdの貴金属を使用することができる。また、水素化仕上げ工程に使用される触媒の担体としては、表面積の広いシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はゼオライトを使用することができ、好ましくは、アルミナ又はシリカ-アルミナを使用することができる。
【0038】
その後、目的とする低温性能を有する潤滑基油が前記反応生成物から回収できる。
【0039】
潤滑基油
本開示は、前述したようにディーゼル画分を含む供給原料を用いて製造された、低温性能が改善された潤滑基油を提供する。前記潤滑基油の性状は、次のとおりである。
【0040】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、40℃で9.0cSt以下、好ましくは8.0cSt以下、より好ましくは7.0cSt以下の動粘度を有することができる。また、前記潤滑基油は、100℃で2.5cSt以下、好ましくは2.3cSt以下、より好ましくは2.0cSt以下の動粘度を有することができる。また、前記潤滑基油は、-50℃以下、より具体的には-50℃未満、好ましくは-55℃以下、より好ましくは-60℃以下の流動点を有することができる。潤滑基油の低温性能について、動粘度及び流動点は、低温性能を判断することができる代表的な性状に該当する。要求される潤滑基油の粘度は、潤滑基油の目的に応じて異なるが、温度が減少するほど流体の動粘度は増加するが、低温性能の改善を目的とする本開示における潤滑基油の動粘度は低いほど好ましい。また、潤滑基油の流動点が低いほど、より低温の環境で適用が可能なので、本開示による潤滑基油は、極地又は高い低温性能を要求する潤滑油製品などへの適用が可能であるという利点がある。
【0041】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、潤滑基油内の炭化水素分子あたり10~25個、好ましくは10~22個、より好ましくは10~20個の平均炭素数を有することができる。前記平均炭素数が10個未満の場合には、引火点及び蒸発減量があまりにも低くなるという問題が発生するおそれがあり、前記平均炭素数が25個を超える場合には、低温粘度及び流動点があまり高くなり、潤滑油自体の性能を満足させることが難しくなるという問題が発生するおそれがある。
【0042】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油内の炭素数が10以下である炭化水素分子の含有量は、全体潤滑基油に対して25重量%以下、好ましくは22重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり得る。前記潤滑基油内の炭素数が10以下である炭化水素分子の含有量が全体潤滑基油に対して25重量%を超える場合には、引火点が減少して高温での安定性が低下し、蒸発減量が増加して潤滑油の交替周期が短くなるという問題点が発生するおそれがある。
【0043】
また、本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、10~50重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~50重量%のナフテン系炭化水素を含むことができる。ナフテン系炭化水素の含有量が10重量%未満の場合には、アニリン点が増加して潤滑油製品の製造時に添加剤との相応性が減少し、引火点が減少するという問題が発生するおそれがある。特に、ナフテン系炭化水素の含有量が20重量%以上である場合が、潤滑基油のアニリン点を100℃以下に達成するための観点から好ましい。これに対し、ナフテン系炭化水素の含有量が50重量%を超える場合には、酸化安定性及び熱安定性が減少するという問題が発生するおそれがある。
【0044】
本開示の潤滑基油において、潤滑基油内の炭化水素の種類別含有量は、潤滑基油の性状に有意な影響を及ぼす。より具体的には、パラフィン系炭化水素の場合は、潤滑基油内の含有量が増加するほど潤滑性能が増加し、酸化安定性及び熱安定性が向上し、温度変化による粘度維持能力が向上するが、低温での流れ性は減少する。また、芳香族炭化水素の場合には、潤滑基油内の含有量が増加するほど添加剤との相応性が向上するが、酸化安定性及び熱安定性が低下し、有害性が増加する。また、ナフテン系炭化水素の場合には、潤滑基油内の含有量が増加するほど添加剤との相応性が向上し、低温での流れ性が向上するが、酸化安定性及び熱安定性が低下する。一方、本開示における前記潤滑基油内の炭化水素の種類別含有量は、ASTM D2140又はASTM D3238試験に規定された組成分析方法によって測定される。
【0045】
本発明者は、本発明の潤滑基油の性状が次の関係式によって影響されることを見出した。本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、0.3≦(CN+CA)/CP≦0.7であり得る。ここで、CNはナフテン系炭化水素の重量%、CAは芳香族炭化水素の重量%、CPはパラフィン系炭化水素の重量%である。前記(CN+CA)/Cp値が0.3未満の場合には、目的とする潤滑基油の低い流動点の達成が難しくなるという問題点、及び/又は100℃以下のアニリン点の達成が難しくなるという問題点がある。これに対し、前記(CN+CA)/Cp値が0.7を超える場合には、目的とする潤滑基油の低温粘度の達成が難しくなるという問題点がある。
【0046】
本開示の他の実施形態によれば、前記潤滑基油は、25重量%≦Cn+Ca≦45重量%であり得る。同様に、前記(Cn+Ca)値が25重量%未満の場合には、目的とする潤滑基油の低い流動点の達成が難しくなるという問題点、及び/又は100℃以下のアニリン点の達成が難しくなるという問題点があり、これに対し、(Cn+Ca)の値が45重量%を超える場合には、目的とする潤滑基油の低温粘度の達成が難しくなるという問題点がある。
【0047】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、また、-40℃で測定したとき、550cSt以下、好ましくは520cSt以下、より好ましくは500cSt以下の低温粘度を有することができる。潤滑基油の動粘度が-40℃で550cStを超える場合には、動粘度があまり高くて極低温環境で潤滑基油としての機能が難しくなるという問題点がある。
【0048】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、引火点が110℃以上であり、150℃での蒸発減量が20重量%以下であり、ASTM D2887による模写蒸留試験での5%留出温度が200℃以上であり得る。好ましくは、前記潤滑基油は、引火点が120℃以上であり、150℃での蒸発減量が18重量%以下であり、ASTM D2887による模写蒸留試験での5%留出温度が220℃以上であり得る。潤滑油は、様々な分野で適用されるために、前記分野で発生しうる熱に対する抵抗を持たなければならない。例えば、特定の引火点を有する潤滑油は、前記引火点よりも高い温度で点火するおそれがあり、前記引火点よりも高い温度が要求される環境で潤滑油としての適用が不可能である。また、潤滑基油の低い蒸発性は、オイルの消耗を減らし、オイルの耐久性を増加させるので、低粘度の潤滑油を製造する上で重要である。前記模写蒸留試験での5%留出温度が200℃未満の場合には、潤滑基油としての引火点及び蒸発減量性能を満足しないという問題が発生するおそれがある。本開示において、前記潤滑基油の引火点は、ASTM D92-COC法によって測定される。また、蒸発減量は、ASTM D5800試験で温度条件を250℃の代わりに150℃にして測定される。
【0049】
潤滑油製品
本開示は、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油を含む潤滑油製品を提供する。前記低温性能が改善された潤滑基油として、前述した潤滑基油が使用される。
【0050】
本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は、本開示による潤滑基油を20~99重量%含むことができる。本開示による潤滑基油の含有量は、潤滑油製品の用途及び目的に応じて多様に調節可能であり、本開示による潤滑基油は、所望の製品仕様に合わせて他の鉱油系潤滑基油製品と適切に配合して使用できる。
【0051】
前記潤滑油製品は、-40℃以下、好ましくは-45℃以下、より好ましくは-50℃以下の流動点を有することができる。
【0052】
本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は合成基油を含有しない。例えば、前記潤滑油製品は、PAO又はエステル系基油を含まない。高価なPAO又はエステル系潤滑基油を用いなくても、本開示による潤滑基油を含有することにより、優れた低温性能を有する潤滑油製品の製造が可能である。
【0053】
本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は、添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、例えば酸化防止剤、防錆剤、清浄分散剤、消泡剤、粘度向上剤、粘度指数向上剤、極圧剤、流動点降下剤、防腐剤、又は乳化剤などであり、但し、潤滑油製品に一般的に添加される添加剤であれば、これに限定されない。
【0054】
前記潤滑油製品は、低温性能が要求される分野又は環境で使用が可能であり、従来のPAOs又はエステル系潤滑基油で製造された潤滑油製品を代替することが可能である。前記潤滑油製品は、例えば、自動車用衝撃吸収オイル(shock absorber oil)、極地用油圧作動油、電気絶縁油などであり得るが、これに限定されない。
【0055】
また、本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は、プラスチック、光沢剤、製紙産業、繊維潤滑油、殺虫剤基剤油、製薬組成物、化粧品、食品及び食品処理機械類の潤滑処理などに使用されるホワイトオイル(white oil)として適用が可能である。
【実施例】
【0056】
以下、本開示の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本開示をより容易に理解するために提供されるものに過ぎない。本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
実施例
1.潤滑基油(基油A)の製造
減圧ガス油(VGO)を原料とする燃料油水素化工程の生成物を分別蒸留してディーゼル画分を含む供給原料を得た。得られた供給原料の性状は下記表3のとおりであり、各性状の数値は、ASTM法によって測定された。
【0058】
【0059】
前記得られた供給原料を接触脱ろう反応器に供給し、接触脱ろう工程の生成物を水素化仕上げ反応器に供給した。前記接触脱ろう反応器の工程条件及び水素化仕上げ反応器の工程条件は、下記表4に示す。その後、水素化仕上げ反応器の生成物が潤滑基油として回収された。
【0060】
【0061】
2.製造された潤滑基油の性状及び組成の分析
前述したように製造された潤滑基油の組成及び性状を分析した。前記組成及び性状はそれぞれ表5及び表6に示す。
【0062】
【0063】
潤滑基油内の前記炭化水素の類型別含有量は、ASTM D2140試験方法によって測定された。前記表5に示すように、基油Aの(CN+CA)/CPは0.3乃至0.7の範囲内であり、CN+CAは25wt%乃至45wt%の範囲内であることを確認することができる。
【0064】
【0065】
前記表6に示すように、本開示の潤滑基油は、合成基油ではなく、鉱油系潤滑基油に該当するにも拘らず、別の添加剤の追加なしにも低い動粘度及び優れた低温性能を有する潤滑基油であることを確認することができる。一方、前述したように、従来の低温性能が要求される分野で潤滑基油としてPAOが主に使用された。このため、本開示の潤滑有基油がPAOを代替して使用することができるか否かは、本開示の重要な目的に該当する。本開示による潤滑基油(基油A)の性状及びPAOの性状は、下記表7で比較される。
【0066】
【0067】
前記表7に示すように、本開示の潤滑基油(基油A)は、PAOに比べて優れた或いは類似の動粘度及び流動点を有することが分かる。
【0068】
3.潤滑油製品の性能確認
潤滑油製品に製造された場合の本開示による潤滑基油の低温性能を確認するために、表5の組成及び表6の性状を有する潤滑基油(基油A)を含む潤滑油製品を製造し、その性能を確認した。
【0069】
(1)自動車用衝撃吸収オイル
基油Aを用いて、自動車用衝撃吸収装置に使用される潤滑油製品を製造した。前記製品の組成は、下記表8のとおりである。
【0070】
【0071】
また、前記衝撃吸収オイルの性状は、表9に示す。
【0072】
【0073】
表9に示すように、本開示による潤滑基油(基油A)を使用することにより、PAOの使用なしにも、優れた性能を有する衝撃吸収オイルの製造が可能であることを確認することができる。
【0074】
(2)極地用油圧作動油ISO VG 32
基油Aと、SKルーブリーコンチュ社から入手可能なGroupIII基油である基油Bとを配合して、ISO粘度等級32に該当する極地用油圧作動油を製造した。前記基油Bの性状は、下記表10のとおりである。
【0075】
【0076】
また、前記極地用油圧作動油の組成は、下記表11に示す。
【0077】
【0078】
また、前記極地用油圧作動油の性状は、表12に示す。
【0079】
【0080】
表12に示すように、基油Aと基油Bとが配合された油圧作動油は、-40℃で低いブルックフィールド粘度を有し、且つ低い流動点を有するので、優れた低温性能を有する製品であることが分かる。これにより、PAOを使用しなくても、低温性能に優れた鉱油系潤滑油製品の設計が可能であることが分かる。
【0081】
(3)極地用油圧作動油ISO VG 15
基油Aを用いて、ISO粘度等級15に該当する極地用油圧作動油を製造した。前記極地用油圧作動油の組成は、下記表13に示す。
【0082】
【0083】
また、前記極地用油圧作動油の性状は、下記表14に示す。
【0084】
【0085】
表14に示すように、基油Aを用いて製造された油圧作動油は、-40℃で低いブルックフィールド粘度及び低い流動点を有するという点で低温性能に優れた製品であることが分かる。
【0086】
(4)電気絶縁油
基油Aと、SKルーブリーコンチュ社から入手可能なGroupIII基油である基油Cとを配合して、電気絶縁油を製造した。前記基油Cの性状は、下記表15のとおりである。
【0087】
【0088】
前記2種類の基油の含有量比を異ならせて、それによる電気絶縁油の性状を試験した。試験結果は、下記表16にまとめた。
【0089】
【0090】
表16に示すように、基油Aの含有量が増加するほど引火点は減少するが、粘度及び流動点がさらに改善されるという利点があることを確認することができる。上記の結果から、基油Aに他の鉱油系潤滑基油を適切に配合することにより、国際標準規格を満足する電気絶縁油の設計が可能であることが分かる。
【0091】
(5)ホワイトオイルの適用可能性
基油AのFood Gradeホワイトオイルとして活用できるか否かを実験によって確認した。
1)UV吸光度の測定
米国食品医薬品局(FDA)で規定するFood Gradeホワイトオイルに該当するかを確認するために、基油Aに直接光を照射して260~350nmの波長帯のUV吸光度を測定した。測定結果は、
図1に示した。
【0092】
実験の結果、前記波長帯で基油AのUV吸光度が0.1よりも小さいことを確認した。米国食品医薬品局(FDA)で規定するFood Gradeホワイトオイルの最大UV吸光度は0.1である。これは、IP 346 methodによるDMSO抽出法によるUV吸光度の値を意味する。DMSO抽出法によるUV吸光度の値は、一般的に試料に直接光を照射して測定した吸光度の値よりもその値が低く測定されることが知られている。このため、本開示の基油Aの場合は、直接光を照射して測定した吸光度の値が0.1以下であるので、DMSO抽出法によってUV吸光度を測定する場合にさらに低い吸光度の値を持つことが自明である。したがって、本開示の基油AがFood Gradeを満足することが分かった。
【0093】
2)硫酸呈色試験
基油Aに含有されている不純物の量がホワイトオイルとして活用可能な範囲内であるか否かを確認するために、硫酸を用いて定性的な実験を行った。硫酸呈色試験は、ASTM D565に規定された試験方法に基づいて行われた。硫酸呈色試験の結果は、
図2に示した。
【0094】
図2に示すように、基油Aの変色程度は、標準物の変色程度に比べて少ないことが確認された。したがって、基油A内の不純物量がホワイトオイルとして活用可能な範囲内であることが分かる。
前記UV吸光度の測定及び硫酸呈色試験によって、基油AがFood Gradeホワイトオイルとして活用可能であることを確認した。
【0095】
本開示の単なる変形ないし変更はいずれも、本開示の範囲に属するものであり、本開示の具体的な保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって明確になるだろう。