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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】容積算出装置及び重量算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240620BHJP
   G01G 17/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01G17/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020119226
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015994
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】小森 健太郎
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504277(JP,A)
【文献】特開2019-196927(JP,A)
【文献】特開2019-184534(JP,A)
【文献】特開2018-085081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01G 17/00
G01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カート及びカート内の金属材料の群を撮像し、距離画像を含む三次元画像及び二次元画像のうち、少なくとも三次元画像を取得する撮像部と、
前記三次元画像及び前記二次元画像のうち、少なくとも三次元画像に基づいて、前記金属材料の群の充填容積(B3)を算出する容積演算部と、を備え、
前記容積演算部は、前記三次元画像に基づいて前記充填容積(B3)を算出する場合、前記金属材料の群の投入前に撮像された前記カート及び前記カート内の三次元画像(以下、投入前画像という)と、前記金属材料の群の投入後に撮像された前記カート及び前記カート内の三次元画像(以下、投入後画像という)とに基づいて、前記金属材料の充填容積(B3)を算出する、
容積算出装置。
【請求項2】
前記容積演算部は、前記投入前画像及び前記投入後画像のピクセルが有する距離情報に基づいてそれぞれをグレースケール化してグレースケール輝度画像を取得するとともに、それぞれのグレースケール輝度画像の代表輝度(K0、K1)を取得し、両グレースケール輝度画像の代表輝度(K0、K1)の差分と該グレースケール輝度画像における前記カート内の前記金属材料が投入されている領域(S0)の面積に基づいて前記金属材料の充填容積(B3)を算出する、
請求項1に記載の容積算出装置。
【請求項3】
カート及びカート内の金属材料の群を撮像し、距離画像を含む三次元画像及び二次元画像のうち、少なくとも三次元画像を取得する撮像部と、
前記三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、前記金属材料の群の充填容積(B3)を算出するものであり、前記充填容積(B3)を算出する場合、前記金属材料の群の外殻容積(B1)及び空隙容積(B2)を算出し、両容積に基づいて前記充填容積(B3)を算出する容積演算部と、を備え、
前記撮像部は、
前記カート内に前記金属材料を積層開始から積層完了までの間、前記三次元画像及び前記二次元画像を、所定時間毎に撮像し、
前記容積演算部は、
相互に撮像順が隣接していて撮像順が早いものと遅いものとの間における、層間外殻容積(Bn1)に基づいて前記外殻容積(B1)を算出し、
また、相互に撮像順が隣接していて撮像順が早いものと遅いものとの間における、層間空隙容積(Bn2)に基づいて前記空隙容積(B2)を算出する、
容積算出装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の容積算出装置と、
前記金属材料の充填高さ、または教師付機械学習のいずれか1つに基づいて、前記金属材料がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行う種別判定部と、
前記金属材料の比重量及び前記充填容積(B3)、または、前記金属材料のかさ比重及び前記充填容積(B3)に基づいて、前記種別判定部により種別判定された前記金属材料の群の重量を算出する重量演算部と、を備える、
重量算出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の容積算出装置と、
前記外殻容積(B1)と前記空隙容積(B2)から一義的に得られる値、前記金属材料の充填高さ、または教師付機械学習のいずれか1つに基づいて、前記金属材料がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行う種別判定部と、
前記金属材料の比重量及び前記充填容積(B3)、または、前記金属材料のかさ比重及び前記充填容積(B3)に基づいて、前記種別判定部により種別判定された前記金属材料の群の重量を算出する重量演算部と、を備える、
重量算出装置。
【請求項6】
カート及びカート内の金属材料の群を撮像し、距離画像を含む三次元画像及び二次元画像のうち、少なくとも三次元画像を取得する撮像部と、
前記三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、前記金属材料の群の充填容積(B3)を算出するものであり、前記充填容積(B3)を算出する場合、前記金属材料の群の外殻容積(B1)及び空隙容積(B2)を算出し、両容積に基づいて前記充填容積(B3)を算出する容積演算部と、を備える容積算出装置と、
前記外殻容積(B1)と前記空隙容積(B2)から一義的に得られる値、前記金属材料の充填高さ、または教師付機械学習のいずれか1つに基づいて、前記金属材料がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行う種別判定部と、
前記金属材料の比重量及び前記充填容積(B3)、または、前記金属材料のかさ比重及び前記充填容積(B3)に基づいて、前記種別判定部により種別判定された前記金属材料の群の重量を算出する重量演算部と、を備える、
重量算出装置。
【請求項7】
前記外殻容積(B1)と前記空隙容積(B2)から一義的に得られる値は、前記カート内における前記金属材料の間に形成される空隙の空隙率、または前記金属材料の充填率であり、
前記種別判定部は、前記空隙率または充填率に基づいてインゴットか、非インゴット材かを判定する、
請求項5または請求項6に記載の重量算出装置。
【請求項8】
前記非インゴット材は、不良品及び返り材を含み、
前記種別判定部は、前記金属材料を非インゴット材と判定した場合、該非インゴット材が、不良品か、または返り材かを、前記金属材料の温度情報に基づいて判定する請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の重量算出装置。
【請求項9】
前記金属材料の温度情報は、前記三次元画像または前記二次元画像のピクセルの輝度情報に基づくものである請求項8に記載の重量算出装置。
【請求項10】
前記金属材料の温度情報は、前記金属材料から放射される可視光または赤外線を測定する放射温度計の検出信号である請求項8に記載の重量算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積算出装置及び重量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシン等の鋳造機は、溶解炉から金属材料の溶湯が供給されて、鋳造品を製造する。特許文献1に開示されているように、図14に示すように、溶解炉200は、金属材料を溶解する溶解室212と、溶湯を保持する保持室214と、溶湯を汲み出す汲出室216とを備えている。各室は、互いに繋がっている。溶解室212では金属材料210が溶解室212内に投入されて、溶解室内のガスバーナ218により加熱されることにより、溶湯となる。この溶湯は保持室214にて保持されるとともに、保持室214の溶湯は汲出室216の汲出開口から鋳造機220に向けて汲み出される。
【0003】
ここで、溶解室212への金属材料210の供給量と汲出室216での溶湯汲み出し量のバランスが崩れると、すなわち、溶解室212への金属材料210の供給量が不足すると、溶解炉200内で、ガスバーナ218による空焚きが生ずる。これを防止するため、特許文献1では、金属材料210の供給時刻と、供給量を算出して、空焚きを防止するシステムとしている。
【0004】
しかし、供給する金属材料210の種別毎に重量が異なり、作業者が、これらを金属材料210の種別や重量を目視で判断した場合、ヒューマンエラーで適切に運用できないケースがある。なお、前記金属材料210の種別としては、インゴット、鋳造品の製造後の検査で不良品認定されたもの、及び、金型の湯口等にあった返り材(戻り材ともいう)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-85081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業者が、目視ではなく、金属材料の種別に拘わらず、例えば溶解室への投入前に重量計で金属材料の重量を計測することが考えられる。しかし、溶解室へ投入される金属材料は、大重量であり、これ専用の重量計は高価なものとなる。また、作業者が、カート(荷車)内に投入された大重量の金属材料をカート222(図14参照)ごと、重量計に載せるために運搬するとなると、多大な労力を要することとなる。因みに、一回当たりの投入量(重量)は、例えば、アルミニウムの場合、300Kg以上となる事例もある。
【0007】
ここで、カート222の金属材料群の充填容積を算出できれば、その充填容積に基づき、重量の算出を行うことは可能となる。しかし、従来は、充填容積の算出装置は提案されていない。
【0008】
また、上記の充填容積が分かれば、カート内の金属材料の算出を行うことが可能であるが、従来は、カート内の金材料群の算出を行う重量算出装置は提案されていない。
本発明の目的は、上記課題を解決して、撮像画像に基づいてカート内の金属材料の充填容積の算出ができる容積算出装置を提供することにある。また、本発明の目的は金属材料のカート内の充填容積に基づいて重量算出を行うことができる重量算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明の容積算出装置は、カート及びカート内の金属材料の群を撮像し、距離画像を含む三次元画像及び二次元画像のうち、少なくとも三次元画像を取得する撮像部と、前記三次元画像及び前記二次元画像のうち、少なくとも三次元画像に基づいて、前記金属材料の群の充填容積(B3)を算出する容積演算部とを備えている。
【0010】
上記構成により、撮像部がカート及びカート内の金属材料の群を撮像すると、容積演算部は前記撮像部が撮像した距離画像を含む三次元画像及び二次元画像のうち、少なくとも三次元画像に基づいて、前記金属材料の群の充填容積(B3)を算出する。
【0011】
この結果、カート内の金属材料群の充填容積が得られる。ここで、前記充填容積にその金属材料の比重量、或いはかさ比重を乗算すれば、カート内の金属材料群の重量を簡単に得ることが可能となる。なお、比重量は、単位体積(単位容積)当たりの重量である。
【0012】
また、前記容積演算部は、前記三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、前記金属材料の群の外殻容積(B1)及び空隙容積(B2)を算出し、両容積に基づいて前記充填容積(B3)を算出してもよい。
【0013】
容積演算部が、前記三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、前記金属材料の群の空隙容積(B2)を算出するため、充填容積の算出精度が向上する。
また、前記撮像部は、前記カート内に前記金属材料を投入開始から投入完了までの間、前記三次元画像及び前記二次元画像を、所定時間毎に撮像し、前記容積演算部は、前記所定時間毎に撮像した三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、その所定時間毎の層間外殻容積(Bn1)、及び層間空隙容積(Bn2)を算出し、全ての層間外殻容積、及び全ての層間空隙容積に基づいて、前記充填容積(B3)を算出してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、オーバハング状態の金属材料が多くあったとしても、カート内に金属材料を投入開始から投入完了までの間、所定時間毎に取得した三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、層間外殻容積Bn1、層間空隙容積Bn2を算出している。このため、オーバハング状態になる以前の空隙があると、その空隙容積も算出する。この結果、空隙容積B2の算出精度を挙げることができる。
【0015】
また、前記容積演算部は、前記三次元画像に基づいて前記充填容積(B3)を算出する場合、前記金属材料の群の投入前に撮像された前記カート及び前記カート内の三次元画像(以下、投入前画像という)と、前記金属材料の群の投入後に撮像された前記カート及び前記カート内の三次元画像(以下、投入後画像という)とに基づいて、前記金属材料の充填容積(B3)を算出してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、投入前画像と、投入後画像とに基づいて、金属材料の充填容積(B3)が算出される。
また、前記容積演算部は、前記投入前画像及び前記投入後画像のピクセルが有する距離情報に基づいてそれぞれをグレースケール化してグレースケール輝度画像を取得するとともに、それぞれのグレースケール輝度画像の代表輝度(K0、K1)を取得し、両グレースケール輝度画像の代表輝度(K0、K1)の差分と該グレースケール輝度画像における前記カート内の前記金属材料が投入されている領域(D2)の面積(S0)に基づいて前記金属材料の充填容積(B3)を算出することが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、金属材料の充填容積が容易に算出される。
本発明の重量算出装置は、上記容積算出装置を備える他に、前記金属材料をインゴットか、非インゴット材かの種別判定を、前記外殻容積(B1)と前記空隙容積(B2)から一義的に得られる値、前記金属材料の充填高さ、または教師付機械学習のいずれか1つに基づいて行う種別判定部と、前記金属材料の比重量、及び前記充填容積(B3)、または、前記金属材料のかさ比重及び前記充填容積(B3)に基づいて、前記種別判定部により種別判定された前記金属材料の群の重量を算出する重量演算部と、を備えたものである。
【0018】
金属材料の種別としては、インゴットと非インゴット材とがある。
ここで、種別判定部が行う、インゴットか、非インゴット材かの種別判定の原理は、下記の通りである。
【0019】
インゴットは、その立体形状が四角柱状、断面が台形状をなす柱状等の単純な形状であり、カート内に整頓して列状等に入れられることが多い。これに対して、非インゴット材(返り材、不良品)は複雑な形状を有していて、カート内に整列等のように整頓して入れることは難しく、多数の非インゴット材は単に積み重ねられて雑然として入れられる。このように、インゴットと非インゴットのカート内に入れられた状態は、相互に異なったものとなり、すなわち、カート内におけるインゴットと非インゴットの充填容積が大きく異なったものとなる。
【0020】
そこで、種別判定部は、三次元画像と二次元画像が撮像されている場合、外殻容積(B1)と前記空隙容積(B2)から一義的に得られる値を利用して、金属材料をインゴットか、非インゴット材かの種別判定が行うことが可能となる。
【0021】
すなわち、上記のようにカート内に整列して投入されるインゴットは、外殻容積(B1)が大きな値となり、空隙容積(B2)は小さくなる。逆に、非インゴット材は、インゴットに比して外殻容積(B1)が小さな値となり、空隙容積(B2)は大きくなりやすい。このことを利用して、その外殻容積(B1)と空隙容積(B2)から一義的に得られる値に基づいて、金属材料がインゴットか、非インゴット材かの種別判定が行われる。
【0022】
また、種別判定部は、上記以外の種別判定では、下記のように行ってもよい。すなわち、前記金属材料の充填高さで、金属材料をインゴットか、非インゴット材かの種別判定で行う。この判定は、下記の通りである。
【0023】
図6及び図7に示すようにインゴットは、カート内に整列して投入されるものである。インゴットは、断面が台形等の四角形を成すものが多く、長さ方向において相互に同じ長さを有する。例えば、図6の例では、インゴット223をその長さ方向が上下方向となるように揃えて整列して、カート222内に投入した例である。図6に示すように、これらのインゴット223は略同一の高さとなる。ここで略とするのは、インゴットの立ち姿勢が若干斜めになっている場合は、全てのインゴットが精確に同一高さとならない場合もあるためである。
【0024】
また、図7の例は、多重層となるように整列してカート222内に投入する例である。この場合、一層毎にインゴット223はその長さ方向を水平方向に揃えて整列配置され、その上の層は、同様にして積み重ねられるように配置されたものとなる。図7の例では、各層の高さは同じとなっており、カート222の内底面から最上層の各インゴット223の上面までの距離(高さ)は、すなわち、金属材料の充填高さはいずれも略同一高さとなる。ここで略とするのは、インゴットの並び姿勢が若干斜めに配置された場合は、カート222の内底面から最上層の各インゴットの上面までの距離(高さ)が精確に同一高さとならない場合もあるためである。
【0025】
これに対して、非インゴット材は、インゴットとは異なり、形状が同一のものが少なく、整列してカート内に入れることは難しいため、雑然として、カート内に投入される。このように各非インゴット材の投入状態がばらつくため、カート222の内底面からカート内の非インゴットの、最上面までの高さは、すなわち、金属材料の充填高さは、略同一高さを得ることが難しいものとなる。この点を利用して、インゴットと非インゴット材との判定を充填高さが略一定か否かにより、種別判定が行われる。
【0026】
また、教師付機械学習で金属材料をインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行ってもよい。前述したようにインゴットと、非インゴット材とでは、カート内に入れられる状態が、すなわち、金属材料の群の全体の輪郭(外形形状)、及び個々の金属材料の輪郭(外形形状)が異なる。これを利用して、種別判定部を教師付機械学習で識別器として機能させることにより、金属材料がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を、種別判定部が行う。
【0027】
上記構成により、重量演算部は、前記金属材料の比重量(またはかさ比重)及び前記充填容積に基づいて、前記種別判定部により種別判定された前記金属材料の群の重量を算出する。
【0028】
また、前記外殻容積(B1)と前記空隙容積(B2)から一義的に得られる値は、前記カート内における前記金属材料の間に形成される空隙の空隙率、または金属材料の充填率であり、前記種別判定部は、前記空隙率または前記充填率に基づいてインゴットか、非インゴット材かを判定してもよい。
【0029】
上記構成により、前記外殻容積(B1)と空隙容積(B2)から一義的に得られる値は、前記カート内における前記金属材料の間に形成される空隙の空隙率または、金属材料の充填率である。
【0030】
すなわち、空隙率(k1)は、前記外殻容積(B1)と空隙容積(B2)が算出されると、k1=空隙容積(B2)/外殻容積(B1)で、一義的に求めることができる。
ここで、インゴットは、単純な立体形状をしていて、例えば整頓されてカート内に収納されると、その空隙率は、小さくなる。逆に充填率は大きくなる。一方、非インゴット材は、例えば、返り材や、不良品があるが、これらは、インゴットに比較して、単純な三次元形状とはなっていない。このため、これらは整頓してカートに収納されることはなく、雑に入れられて互いに重なった状態等となり、このため、空隙率がインゴットに比して大きな値となる。逆に充填率は小さな値となる。
【0031】
種別判定部は、前記空隙率と空隙率閾値とを比較して前記空隙率が前記空隙率閾値未満の場合はインゴットと判定し、前記空隙率閾値以上の場合は非インゴット材と判定することにより、インゴットと非インゴット材とが判別することが可能となる。
【0032】
なお、空隙率と充填率とは、「1-空隙率=充填率」の関係にある。このため、空隙率の代わりに、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値として充填率を採用してもよい。この場合、前述の「空隙率と空隙率閾値とを比較して前記空隙率が前記空隙率閾値未満の場合はインゴットと判定し、前記空隙率閾値以上の場合は非インゴット材と判定する」は、「種別判定部は、前記空隙率と閾値とを比較して前記充填率が前記充填率閾値以上の場合はインゴットと判定し、前充填率閾値未満の場合は非インゴット材と判定する。」と同義である。
【0033】
また、前記非インゴット材は、不良品及び返り材を含み、前記種別判定部は、前記金属材料を非インゴット材と判定した場合、該非インゴット材が、不良品か、または返り材かを、前記金属材料の温度情報に基づいて判定してもよい。
【0034】
ここで、不良品は、鋳造品として製造された後、品質検査により不良と判定されたものである。このため、不良品は、鋳造後、返り材よりも品質検査時間分を要して、溶解炉に戻されるため、その温度は、例えば人が触れる程度の温度のように低くなっている。一方、返り材は、金型の湯口等にあったものであって、鋳造品が製造された後、溶解炉に戻る時間は、不良品よりも短いため、その温度は、不良品よりも高いものとなる。この不良品と返り材の温度が異なることを利用して、種別判定部は、温度情報に基づいて判定する。
【0035】
また、前記金属材料の温度情報は、前記三次元画像または前記二次元画像が含むピクセルの輝度情報に基づくものとしてもよい。
上記構成によれば、金属材料の温度情報は、三次元画像または二次元画像が含む輝度情報に基づいて得られることにより、種別判定部は、非インゴット材を、温度が低い不良品か、または温度が高い返り材かを判定することが可能となる。
【0036】
また、前記金属材料の温度情報は、前記金属材料から放射される可視光または赤外線を測定する放射温度計の検出信号としてもよい。
上記構成によれば、金属材料の温度情報は、金属材料から放射される可視光または赤外線を測定する放射温度計の検出信号に基づいて得られることにより、種別判定部は、非インゴット材を、温度が低い不良品か、または温度が高い返り材かを判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、撮像画像に基づいてカート内の金属材料の充填容積の算出ができる。また、前記充填容積に基づいてカート内の金属材料の重量算出を行うことができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一実施形態の重量算出装置の機能ブロック図。
図2】重量算出装置が実行する重量演算プログラムのフローチャート。
図3】(a)はカート内に整頓された状態のインゴットの撮像画像、(b)は、カート内に雑然として入れられた返り材の撮像画像、(c)はカート内にインゴット、返り材、不良品のいずれもが収納されていない状態のカート撮像画像。
図4】二次元画像を積層した状態の説明図。
図5】二次元画像における、充填領域と凹部領域(空隙領域)の説明図。
図6】カート内にインゴットが整列して収納された状態の説明図。
図7】カート内にインゴットが整列して収納された状態の説明図。
図8】第2実施形態の重量算出装置の電気機能ブロック図。
図9】第3実施形態の重量算出装置の電気機能ブロック図。
図10】(a)及び(b)は第3実施形態の重量算出装置が実行する重量演算プログラムのフローチャート。
図11】(a)は金属材料投入前のカート及びカート内を撮像した三次元画像、(b)は解析領域D2及び基準面D1のみを抜き出した説明図、(c)は撮像部から、解析領域D2のコーナまでの距離の説明図、(d)は補正後の解析領域Eのコーナまでの距離の説明図。
図12】(a)はカートの内底面から撮像部までの平均距離の説明図、(b)は金属材料がカート内に投入された後の金属材料の上面から撮像部までの距離の説明図、(c)は金属材料がカート内に投入された後の金属材料の上面から撮像部までの平均距離の説明図。
図13】第4実施形態の重量算出装置が実行する重量演算プログラムのフローチャート。
図14】溶解炉及び鋳造機の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を具体化した第1実施形態の容積算出装置及び重量算出装置10を図1図5を参照して説明する。
図1に示すように、重量算出装置10は、撮像部20、重量計測部30及び放射温度計40とを備えている。本実施形態では、撮像部20は、TOF(Time Of Flight)方式の構成であって、光源21、図示しないレンズ、受光素子22、駆動制御部23、及び画像生成部24とを備えている。
【0040】
光源21は、距離画像を生成する対象のカート222及びカート222内に投入された金属材料210の群に対して、上方から発光パルスを照射する。光源21は、近赤外の波長帯(例えば、800~1200nm)を出射できるように構成されたレーザーやLED等により構成されている。
【0041】
光源21は、受光素子22と同期するようにされていて、発光が時間的に強度変調される。受光素子22は、主に、シリコンフォトダイオード、配線及び酸化膜等の半導体材料が集積された素子からなる。受光素子22は、複数の画素を有していて、各画素は、金属材料210、カート222及びカート内外を含む照射対象物から反射された反射光を受け、その反射光を光電変換する図示しない光電変換部が設けられている。このように、受光素子22は、照射対象物からの反射光を受光することで、照射対象物からの情報を得ることができる。
【0042】
駆動制御部23は、光源21を駆動制御するとともに、受光素子2を駆動制御する。駆動制御部23は、フレーム期間中に光源21の駆動制御を行うとともに、光源21と受光素子2とが同期するように受光素子22の駆動制御を行う。すなわち、発光パルスをシャッターと同じ位相で照射し、受光素子22では、飛行時間分を要して戻ってきたフォトンを受光するようにしている。このときの同期ズレ量を検出することにより、発光パルスの出射点(すなわち、測距点)と照射対象物との間の距離が計測される。
【0043】
画像生成部24は、受光素子22が受光したときに出力する受光信号に基づいて各ピクセルの距離画像及び輝度情報を生成する三次元画像生成部25と、前記受光信号に基づいて各ピクセルの輝度情報を生成する二次元画像生成部26とを備えている。
【0044】
前記三次元画像は距離画像であり、各ピクセルには、出射点(測距点)からの距離データ及び輝度情報を有している。前記二次元画像は、各ピクセルの輝度情報を有している。
重量計測部30は、コンピュータからなり、図示しないCPU(中央演算装置)、ROM、RAM、ハードディスク、及び半導体メモリ等の記憶装置を備えている。図1で示す重量計測部30は、コンピュータが機能する機能ブロック図で図示されていて、記憶装置である三次元画像記憶部31及び二次元画像記憶部32、容積演算部33、種別判定部34、及び重量演算部35を有している。
【0045】
ここで、撮像部20、三次元画像記憶部31、二次元画像記憶部32、及び容積演算部33は、本実施形態の容積算出装置に相当する。
すなわち、前記記憶装置は、重量演算プログラム等の各種プログラムを記憶していて、三次元画像生成部25が生成した三次元画像を記憶する三次元画像記憶部31、及び二次元画像生成部26が生成した二次元画像を記憶する二次元画像記憶部32を構成する。
【0046】
二次元画像生成部26は、前記三次元画像の立体像を高さ方向において、所定間隔毎に切断することにより、複数の二次元画像を生成する。高さ方向に相互に隣接する二次元画像は、前記所定間隔離間したものであり、個々の二次元画像のピクセルは同一高さのものである。
【0047】
また、重量計測部30は、出力部36を備えている。出力部36は、例えば、プリンタ、ディスプレイである。
放射温度計40は、カート222内の金属材料210から放射される可視光または赤外線を測定し、重量計測部30にその検出信号を出力する。
【0048】
(第1実施形態の作用)
次に、上記のように構成された容積算出装置を含む重量算出装置10の作用を図2図5を参照して説明する。図2は、重量算出装置が実行する重量演算プログラムのフローチャートである。本実施形態では、カート222内への金属材料210の投入が完了された後に、撮像部20がカート222及びカート222内に収納された金属材料210が撮像されているものとする。
【0049】
このフローチャートが重量算出装置10により実行されることにより、撮像部20が三次元画像及び二次元画像を取得し、三次元画像記憶部31及び二次元画像記憶部32に記憶された前記三次元画像及び二次元画像に基づいてカート222内の金属材料210の群の重量が算出される。なお、金属材料210は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等があるが、限定するものではない。
【0050】
なお、撮像部20は、金属材料210の群を投入した状態のカート222が、該カート222及びカート222内を撮像できる所定の位置に位置させた状態で、カート222の上方であって、カート222の中心軸C(図1参照)の上方からカート222及びカート222内を撮像する。
【0051】
(S10)
S10では、容積演算部33は、三次元画像に基づいて金属材料210の群の外殻容積B1を演算する。
【0052】
撮像部20は、金属材料210の群を上方から撮像しているため、得られる三次元画像、すなわち、距離画像は、金属材料210の群の上面、及び、四方の側面において、撮像部20が撮像できた面の距離情報を含む。なお、オーバハングしている部分のように側方へ突き出ている部分がある場合には、その突き出ている部分の下方にある外殻の距離情報は得られていない。従って、ここでの外殻容積B1は、上記のように撮像部20により取得されたカート222内の三次元画像に含まれる距離情報と、カート222の内底面と出射点(測距点)までの距離情報に基づいて、金属材料210の群の外殻容積B1が算出される。前記カート222の内底面と出射点(測距点)までの距離情報は、予め設定されている。
【0053】
なお、前記カート222の内底面と出射点(測距点)までの距離情報を予め設定することに代えて、下記の方法(a)、または(b)で、三次元画像からカート222の内底面と出射点(測距点)までの距離情報を取得してもよい。
【0054】
(a)カート222内の三次元画像にカート222内の内底面が撮像されている場合は、この内底面の距離情報を取得する。
(b)カート222の四方の側壁のいずれかの外側面に、カート222の内底面と同じ高さの部位を設けて、この部位も含めて撮像部20で三次元画像を撮像し、該三次元画像における前記部位の距離情報を取得する。
【0055】
この外殻容積B1の演算で、特徴的であるのは、金属材料210の群の外殻において、高さ方向に凹部が形成される部位は、その凹部がないものとして、すなわち、凹部となる部位の距離情報は、無視されている。従って、ここでは、凹部が形成されていない面(平面、または斜面を含む)を有する外殻の外殻容積B1が演算される。
【0056】
(S20)
S20では、容積演算部33は、二次元画像に基づいて空隙容積B2を演算する。この演算について詳説する。
【0057】
前記二次元画像は、前記三次元画像に基づく立体像を高さ方向において、所定間隔毎に仮想平面で分割することにより取得されたものであって、横断面図的な画像となる(図5参照)。
【0058】
図4は、カート222において、前記四方の側壁の上端から、内底面まで、高さ方向に二次元画像A1~An(nは1から始まる正の整数)が前記所定間隔を隔てて配置された状態を表している説明図である。なお、図4では、所定間隔は、説明の便宜上、誇張して広く離間させている。また、図4は、前記三次元画像の一例を縦断面視したものである。図4において、輪郭L1、L2は、立体像の外殻を示している。ただし、輪郭L1は、上部輪郭L1aと下部輪郭L1bとを有している。
【0059】
ここで、三次元画像の上部輪郭L1aの部分は、距離情報が取得されているため、実線で示すが、下部輪郭L1bは、上部輪郭L1aの部分がオーバハング状態となっていて距離情報は得られていないため、二点鎖線で示す。また、三次元画像の上面の輪郭L3は距離情報が得られているため、実線で示すが、輪郭L2は、前記上面がオーバハング状態となっていて距離情報は得られていないため、二点鎖線で示す。上記の図4では、金属材料210の群において、上面の輪郭L3には、前記凹部として、凹部Mが形成されている。なお、Lkはカート222の輪郭を表している。凹部Mは、金属材料の間に形成される空隙の一例である。
【0060】
この容積演算部33の凹部Mの検出は、S10では無視されていた凹部の部位の距離情報に基づいて行われる。
図5は、高さ方向に所定間隔を隔てて配置された複数の二次元画像の斜視図であり、二次元画像A2等は、前記凹部Mを水平方向に横断する。なお、説明の便宜上、凹部Mの内面は全て撮像されていて、その撮像画像、すなわち、三次元画像の各ピクセルは距離情報を有するものとする。
【0061】
図4及び図5において、部位a、bは、凹部Mにおいて、二次元画像A2で表される部位であって、平面座標値を有する。
従って、この凹部Mを区画する、二次元画像A2で得られる部位は、すべて平面座標値を有しているため、水平方向に仮想平面(二次元画像A2を形成するための仮想平面)で横断されて得られる部位で囲まれた面積の算出が可能である。
【0062】
容積演算部33は、各層の二次元画像において、凹部Mの面積Bを算出し、これを加算することにより、空隙容積B2を得る。
この算出は、下記式(1)で行う。
【0063】
B2=∫B(h)dh ……(1)
上記式(1)のうち、dhは、二次元画像の所定間隔であり、hは高さ方向の変数であり、面積B(h)は、hの関数である。上記式(1)は、最上層の二次元画像から最下層の二次元画像の位置までの区間で積分される。ここで最上層は、カート222の前記四方の側壁の上端での層であり、最下層は、カート222の内底面の層である。
【0064】
なお、前記説明では、凹部Mの内面は全て撮像されているものとしたが、実際には、金属材料210の群が、不良品、返り材のように複数積み重ねられて、上に位置する金属材料が下に位置する金属材料よりもオーバハング状態となって、凹部が形成されている場合もある。
【0065】
この場合は、上方から撮像されたオーバハング状態の金属材料の撮像画像しか得られないため、そのオーバハング状態の金属材料が下方にもあることによりその凹部が区画されているものと解釈して、前記空隙容積B2を得るものとする。
【0066】
なお、オーバハング状態による金属材料の撮像画像に基づいて、前述した空隙容積B2の算出精度を高くする方法は、後述する他の実施形態で説明する。
(S30)
図2に示すS30では、容積演算部33は充填容積B3の演算を行う。
【0067】
具体的には、容積演算部33は、下記(2)の式で充填容積B3を演算する。
充填容積B3=外殻容積B1-空隙容積B2 ……(2)
(S40)
次のS40では、種別判定部34は、カート222内の金属材料210の種別判定を行う。具体的には、種別判定部34は、空隙率k1を算出し、この空隙率k1に基づいて、金属材料210の群がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行う。種別判定部34は空隙率k1を下記の式(3)で算出する。
【0068】
空隙率k1=空隙容積B2/外殻容積B1 ……(3)
このように空隙率k1は、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値である。
【0069】
次に、種別判定部34は、空隙率k1と空隙率閾値krとの大小関係を判定する。空隙率閾値krは、金属材料210の群が、インゴットか、非インゴット材であるかを判定する閾値である。
【0070】
ここで、インゴットと非インゴット材の空隙率の相違について説明する。
図3(a)及び図6は、カート222内に、例えば、単純な立体形状である略四角柱状をなすインゴット223の多数を、高さ方向に立てて整列した状態をカート222の上方から撮像する場合の一例である。同図に示すようにインゴット223は、密状態で整列されているため、空隙率が小さくなる。また、図7は、インゴット223の長さ方向を横方向(水平方向)にして整列し、高さ方向にさらに、同様に積層して整列配置した場合も、同様に密状態で整列されているため、空隙率は小さくなる。
【0071】
図3(b)は、カート222内に非インゴット材として、例えば返り材224を多数積層して投入された状態をカート222の上方から撮像する場合の一例である。同図に示すように返り材224は、形状が揃っておらず、このため整列して入れることは難しいため、雑然として入れられる。このため、非インゴット材の場合は、空隙率が大きくなる。
【0072】
このように、カート222内に整列して投入されるインゴットとカート222内に雑然として入れられる非インゴット材の空隙率の大小関係が存在する。前記空隙率閾値krは、上記の経験上の知見から、試験値等で設定されている。
【0073】
種別判定部34は、算出した空隙率k1が空隙率閾値kr以上の場合は、空隙率が大きいとして、非インゴット材と判定し、空隙率k1が空隙率閾値kr未満の場合は、空隙率が小さいとしてインゴットと判定する。
【0074】
なお、空隙率と充填率とは、「1-空隙率=充填率」の関係にある。このため、空隙率の代わりに、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値として充填率を採用してもよい。
【0075】
この場合、前述の「算出した空隙率k1が空隙率閾値kr以上の場合は、空隙率が大きいとして、非インゴット材と判定し」は、「算出した充填率が充填率閾値未満の場合は、非インゴット材と判定し」と同義である。
【0076】
また、前述の「空隙率k1が空隙率閾値kr未満の場合は、空隙率が小さいとしてインゴットと判定する。」は、「前記充填率が前記充填率閾値以上の場合はインゴットと判定する。」と同義である。
【0077】
なお、金属材料210の群をインゴットか、非インゴット材かの判定処理を、その処理の内容に拘わらず、以下では「第1判定処理」という。また、下記の非インゴット材が、返り材が不良品かの判定処理を、その処理の内容に拘わらず、以下では、「第2判定処理」という。
【0078】
種別判定部34は、第2判定処理として、金属材料210の群を非インゴット材と判定した場合は、さらに、その非インゴット材が返り材か不良品かを、放射温度計40の検出信号に基づいて判定する。
【0079】
すなわち、不良品は、鋳造品として製造された後、品質検査により不良と判定されたものであるため、鋳造後、返り材よりも品質検査時間分を要して、溶解炉に戻される。このため、その温度は、例えば35℃程度の例があるように低くなっている。これに対して、返り材は、金型の湯口等にあったものであって、鋳造品が製造された後、溶解炉に戻る時間は、不良品よりも短いため、その温度は、不良品よりも高いものとなる。因みにその温度は120℃前後の例がある。
【0080】
この不良品と返り材の温度が異なることを利用して、種別判定部34は、温度情報としての放射温度計40の検出信号に基づいて判定する。具体的には、種別判定部34は、前記検出信号(すなわち、検出値)が、温度閾値以上であれば、返り材と判定し、温度閾値未満であれば、不良品と判定する。温度閾値は、試験等の結果に基づいて設定されている。なお、放射温度計40が検出する温度を使用しない場合は、後の他の実施形態で説明する。
【0081】
(S50)
S50では、重量演算部35は、種別判定部34で種別判定した結果に基づいて、記憶装置に予め設定されている金属材料の比重量を選択し、下記の式(4)でカート222内の金属材料210の群の重量Tを演算する。
【0082】
重量T=充填容積B3×比重量 ……(4)
なお、比重量は、インゴット、返り材、不良品によっては、異なる比重量となる場合があるため、本実施形態では、種別判定部34により、インゴット、返り材、不良品の種別判定がされた場合は、その判定結果に応じてインゴット、返り材、不良品毎に予め設定されている比重量が選択される。ただし、インゴット、返り材、不良品が全て同じ比重量である場合には、比重量の選択は省略される。
【0083】
この算出結果を、重量演算部35は、プリンタやディスプレイ等の出力部36へ出力する。
本実施形態では、下記の特徴を有する。
【0084】
(1)本実施形態の容積算出装置は、カート222及びカート222内の金属材料の群を撮像し、距離画像を含む三次元画像及び二次元画像を取得する撮像部20と、三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、金属材料の群の外殻容積B1及び空隙容積B2を算出し、両容積に基づいて充填容積B3を算出する容積演算部33とを備えている。
【0085】
上記構成により、撮像部20がカート222及びカート222内の金属材料の群を撮像すると、容積演算部33は撮像部20が撮像した距離画像を含む三次元画像及び二次元画像に基づいて、金属材料の群の外殻容積B1及び空隙容積B2を算出し、両容積に基づいて充填容積B3を算出する。この結果、外殻容積B1及び空隙容積B2に基づいてカート内の金属材料群の充填容積B3が得られるため、充填容積B3にその金属材料の比重量を乗算すれば、カート内の金属材料群の重量を簡単に得ることが可能となる。
【0086】
(2)本実施形態の重量算出装置10は、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値に基づいて、金属材料210をインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行う種別判定部34を備えている。また、重量算出装置10は、金属材料の比重量及び前記充填容積B3に基づいて、種別判定部34により種別判定された金属材料210の群の重量を算出する重量演算部35を備えている。
【0087】
この結果、本実施形態によれば、撮像画像に基づいて金属材料の種別毎に重量算出を行うことができる。
なお、本実施形態では、オーバハング状態の金属材料があった場合には、オーバハング状態の金属材料210の下方にある広がった空隙は、考慮されていない。従って、最終的に算出された重量は、誤差を含んだものとなる。
【0088】
しかし、本実施形態の重量算出装置10での測定結果と、正しく重量計で:計量した実測値とを比較すると、カート222内の金属材料210の群の堆積割合4割以上(カート222内を金属材料210の群で満杯した状態を10割とした場合に対する割合)での誤差率は、10%未満であったことが確認されている。このことから、金属材料の群の重量が正確な値を求めることを目的としておらず、どの程度の重量(すなわち、見かけの重量)かを知りたい場合には、この誤差範囲を認めれば、十分に金属材料210の群の重量測定が可能である。
【0089】
(3)本実施形態の重量算出装置10の容積演算部33は、三次元画像に基づく金属材料210の群の外殻容積B1の算出、及び二次元画像に基づく金属材料210の群の空隙容積B2の算出を行い、両容積に基づいて金属材料210の群の充填容積B3を算出する。上記構成によれば、容積演算部33により充填容積B3を求めることが可能となる。
【0090】
(4)本実施形態の重量算出装置10では、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値は、カート222内における金属材料210の間に形成される空隙の空隙率k1としている。そして、種別判定部34は、空隙率k1と空隙率閾値krとを比較して空隙率k1が空隙率閾値kr未満の場合はインゴットと判定し、空隙率閾値kr以上の場合は非インゴット材と判定する。
【0091】
この結果、本実施形態では、空隙率により、インゴットと非インゴット材とを判定することができる。
もちろん、充填率を算出して、種別判定部34は、充填率と充填率閾値とを比較して充填率が充填率閾値以上の場合はインゴットと判定し、充填率閾値未満の場合は非インゴット材と判定してもよい。
【0092】
この場合には、充填率により、インゴットと非インゴット材とを判定することができる。
(5)本実施形態の重量算出装置10の種別判定部34は、金属材料を非インゴット材と判定した場合、非インゴット材が、不良品か、または返り材かを、金属材料の群の温度情報に基づいて判定する。
【0093】
この結果、非インゴット材をさらに、温度情報に基づいて、返り材か、不良品かを判定することができる。
(6)本実施形態では、金属材料210の温度情報は、金属材料210の群から放射される可視光または赤外線を測定する放射温度計40の検出信号としている。この結果、非インゴット材をさらに、放射温度計40の検出信号に基づいて、返り材か、不良品かを判定することができる。
【0094】
(第2実施形態)
次に、図8を参照して、第2実施形態の重量算出装置10について、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0095】
第1実施形態では、重量算出装置10の種別判定部34は、金属材料の群をインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行うに際し、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値に基づいて行うようにしている。
【0096】
第2実施形態の重量算出装置10の種別判定部34では、教師付機械学習に基づいて、金属材料の群がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行うようにしているところが第1実施形態と異なっている。
【0097】
具体的には、図8に示すように、重量計測部30は、機械学習データベース37を備えている。種別判定部34は、三次元画像記憶部31で記憶した三次元画像のピクセルの輝度情報、または二次元画像記憶部32で記憶した二次元画像のピクセルの輝度情報を用いて、撮影された金属材料210の群が、インゴットか、非インゴット材かを識別する。
【0098】
金属材料210の群の種別判定にあたっては、前記輝度情報から様々な手法で特徴量を抽出して判断され、主に輝度並びに、二次元画像に含まれる金属材料の群の外形がインゴットか、非インゴット材かが識別される。この識別精度を上げるためには、数百~数万枚の画像データを機械学習データベース37に蓄積し、さらにこれらの画像データを用いて、機械学習により、インゴットか、非インゴット材かを識別可能とする識別器を生成することが必要となる。これらの特徴量の計算、識別器生成にはさまざまな手法がある。例えば、HOG特徴量、SVM特徴量であるが、限定するものではない。
【0099】
機械学習データベース37は、数千~数万枚の画像データが格納されており、本実施形態では、種別判定部34に画像データが読み出されて、インゴット及び非インゴット材の特徴量等を識別する識別器の生成等に用いられる。
【0100】
学習するための画像データとしては、例えば、図3(a)に示すインゴットの二次元画像、図3(b)に示す返り材の二次元画像、図3(c)に示すカート222内が空の二次元画像も含む。また、学習するための画像データとしては、図示はしないが、カート222全体を照明する照明灯の明るさを変えた二次元画像、金属材料210の群の配置を変えた二次元画像を含む。
【0101】
(第2実施形態の作用)
第2実施形態においては、第1実施形態で説明した図2の重量演算プログラムのフローチャートのステップS40の処理のうち、一部が第1実施形態と異なっている。
【0102】
すなわち、第1実施形態では、種別判定部34が行う第1判定処理として空隙率k1(または充填率)を求め、空隙率k1(または充填率)と空隙率閾値kr(または充填率閾値)の大小比較の結果に基づいて、金属材料210の群がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行うようにした。
【0103】
本実施形態では、種別判定部34が行う第1判定処理では、二次元画像記憶部32が記憶する二次元画像のピクセルの輝度情報を用いて、前記輝度情報から特徴量を抽出し、主に輝度並びに、二次元画像に含まれる金属材料210の外形がインゴットか、非インゴット材かを識別器として識別する。
【0104】
種別判定部34は、金属材料210の群がインゴットか、非インゴット材かを識別し、金属材料210が非インゴット材と判定した場合は、第1実施形態の第2判定処理と同様に、さらに、その非インゴット材が返り材か不良品かを、放射温度計40の検出信号に基づいて判定する。
【0105】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態では、種別判定部34は、教師付機械学習で、二次元画像記憶部32が記憶する二次元画像のピクセルの輝度情報を用いて、輝度情報から特徴量を抽出し、主に輝度並びに、二次元画像に含まれる金属材料の群の外形がインゴットか、非インゴット材かを識別するようにした。この結果、本実施形態によれば、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値に依存することがない。例えば、カート及びカート内の金属材料の群を撮像する際に照明状態が悪いと、空隙率の算出は悪影響を受けやすい。これに対して、教師付機械学習では、照明する照明灯の明るさを変えた状態を学習した機械学習データベース37を利用していることにより、金属材料の群がインゴットか、非インゴット材かを識別するため、識別のロバスト性を高めることができる。
【0106】
(第3実施形態)
次に、図9図10(a)、図10(b)及び図11(a)~図11(d)を参照して、第3実施形態の容積算出装置及び重量算出装置10について、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0107】
第1実施形態では、撮像部20、三次元画像記憶部31、二次元画像記憶部32、及び容積演算部33を、容積算出装置に含むようにした。これに対して、本実施形態では、二次元画像生成部26を省略した撮像部20、三次元画像記憶部31及び容積演算部33を、容積算出装置に含むようにしているところが異なっている。
【0108】
また、第1実施形態では、重量算出装置10の種別判定部34は、金属材料の群がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行うに際し、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値に基づいて行うようにしている。
【0109】
これに対して、本実施形態の重量算出装置10は、放射温度計40が省略されるとともに、種別判定部34では、金属材料の群の充填高さに基づいて、金属材料がインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行うようにしているところが第1実施形態と異なっている。
【0110】
本実施形態の容積算出装置及び重量算出装置10における他のハード構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、撮像部20の撮像位置は、金属材料の投入前及び金属材料が投入完了後のいずれにおいても固定されているとともに、撮像部20の撮像方向、図示しないレンズ等の撮像条件等は同一である。
【0111】
(第3実施形態の作用)
次に、容積算出装置を含む重量算出装置10の作用を図10(a)、図10(b)及び図11(a)~図11(d)を参照して説明する。図10(a)及び図10(b)は、重量算出装置が実行する重量演算プログラムのフローチャートである。
【0112】
なお、三次元画像記憶部31には、金属材料の投入前のカート222及びカート222内を撮像した三次元画像、及び金属材料の投入後のカート222及びカート222内を撮像した三次元画像が記憶されているものとする。以下では、説明の便宜上、金属材料の投入前のカート222及びカート222内を撮像した三次元画像を投入前画像といい、金属材料の投入後のカート222及びカート222内を撮像した三次元画像を投入後画像という。
【0113】
(S100)
図10(a)のS100では、容積演算部33は、充填容積B3の算出のための処理を行う。S100の処理の具体的な処理は、図10(b)のフローチャートで示す。
【0114】
(S110)
<解析領域D2及び基準面D1の設定>
S110では、容積演算部33は、投入前画像を三次元画像記憶部31から取得し、この投入前画像におけるカートの内底面における三次元の解析領域D2、及び基準部位としての基準面D1を設定する(図12(a)参照)。
【0115】
なお、この解析領域D2及び基準面D1の設定は、作業者が、図示しないディスプレイにより解析領域D2及び基準面D1をみて、その領域等を図示しないマウス等の入力装置で設定してもよい。または、画像処理プログラムで解析して、エッジ処理、セグメンテーション等の方法により、カート222の内底面における三次元の解析領域に設定してもよい。なお、基準面は、後述する投入後画像の位置合わせの基準となる面である。
【0116】
図11(a)は、投入前画像の一例である。投入前画像は同図に示すように、カート222を斜め上方から撮像されたものである。同図において、D1は、カート222の四方側壁の上端面を基準面D1としたものである。なお、基準部位は、カート222の四方側壁の上端面(基準面D1)としているが、これに限定するものではなく、カート222が備える他の部位の面であってもよい。また、基準部位としては、基準点としてもよい。この場合、基準点は、カート222が備える部位において、相互に離間した異なる2点以上であることが好ましい。
【0117】
図11(a)において、D2は設定されたカート222の内底面の解析領域を表している。図11(b)は、解析領域D2及び基準面D1のみを抜き出した説明図である。
<解析領域の形状補正>
前記投入前画像は、撮像部20の撮影ポイント、レンズ等の原因により、画像にあおり、ディストーション等の歪みが生ずる。このため、容積演算部33は、解析領域を実形状に補正する。なお、この補正方法は、撮影ポイント、レンズ等に関する情報は既知であるため、その既知の情報に基づいて公知の方法で行われる。
【0118】
例えば、カート222の内底面の実形状が相互に直交する四辺形を有する四角形(例えば正方形、長方形)の場合であって、補正前のカート222の内底面が台形状となっている場合、隣接する二辺が相互に直交するように補正する。
【0119】
すなわち、カート222の斜め上方から撮像した場合、図11(c)に示すように解析領域D2は台形状となる場合がある。このような場合、解析領域を実形状に補正するのである。前記例においては、カート222の内底面の形状の実形状は正方形であるため、正方形となるように補正する(図11(d)参照)。縦横の比率を実際のカート222の内底面の実形状の比率と合うように補正してもよい。
【0120】
ここで、形状補正前の一例を図11(c)に示す。図11(c)は、解析領域D2となるカート222の内底面を斜め上方からみた状態を表しており、P0は、撮像部20の撮影ポイントを示している。同図において、CR1、CR2、CR3、及びCR4はカート222の内底面の各コーナを表している。また、同図において、L10、L11、L12、及びL13は、撮影ポイントP0からコーナCR1、CR2、CR3、CR4Jまでの距離を示している。距離L10、L11は距離L12、L13よりも短い。また、距離L10、L13は等しい場合もあれば、異なる場合もある。距離L11、L12は等しい場合もあれば、異なる場合もある。
【0121】
次に、形状補正した後の一例を図11(d)に示す。図11(d)は、形状補正後の解析領域D2となるカート222の内底面を表している。図11(d)において、P1は補正後の撮像部20の撮影ポイントを示している。また、図11(d)において、コーナCR1を原点、コーナCR2をy軸上に、及びコーナCR4をx軸上に置いたxy座標(直交座標)系にすると、解析領域D2内のピクセルは全てxy座標で定義できる。
【0122】
なお、補正後のカート222の内底面のコーナについては、説明の便宜上、図11(c)で付した符号をそのまま付す。同図において、L20、L21、L22、及びL23は、撮影ポイントP1からコーナCR1、CR2、CR3、CR4までの距離を示している。この例は、形状補正により、撮影ポイントP1から各コーナCR1、CR2、CR3、CR4までの距離L20、L21、L22、及びL23が全て同一距離となる例である。しかし、必ずしも、形状補正後は、撮影ポイントP1から各コーナCR1、CR2、CR3、CR4までの距離L20、L21、L22、及びL23が全て同一距離とならない場合もある。
【0123】
また、図11(a)の例では、基準面D1の下辺と、解析領域D2の下辺は同一直線上位置するようにしているが、このような撮影の画像に限定するものではない。すなわち、カート222の内底面全体が撮像されていることが前提条件であるため、基準面D1の下辺が解析領域D2の下辺よりも離間して配置されるように撮像されていてもよい。
【0124】
(S120)
S120では、投入前のグレースケール輝度画像の解析が行われる。
具体的には、容積演算部33は、解析領域D2における投入前画像をグレースケール化して、投入前のグレースケール輝度画像を取得する。すなわち、容積演算部33は、形状補正後の投入前画像における解析領域D2(すなわち、カートの内底面)のピクセルが有する距離情報を輝度値(単に輝度ともいう)に換算してグレースケール化する輝度解析を行う。
【0125】
(S130)
S130では、容積演算部33は、投入前のグレースケール輝度画像における解析領域D2の輝度の代表輝度K0を算出する。本実施形態では、代表輝度K0を平均値としている。なお、代表輝度K0は、平均値に限定されることはなく、解析領域D2の全ピクセルにおける輝度のうちの中央値としたり、或いは、最頻値としてもよい。
【0126】
容積演算部33は、代表輝度K0に基づいて、形状補正後における解析領域D2から撮像部20までの距離R0を式(5)により算出する。
R0=k×K0 ……(5)
kは換算係数である。
【0127】
次に、容積演算部33は、式(5)で算出した距離R0と、形状補正後の解析領域D2の面積S0を乗算して、カート222の内底面から、形状補正後の撮像部20までの投入前体積B0を式(6)により算出する。
【0128】
B0=S0×R0 ……(6)
(S140)
S140では、投入後のグレースケール輝度画像の解析が行われる。
【0129】
具体的には、容積演算部33は、投入後画像を三次元画像記憶部31から取得し、解析領域D2における投入後画像をグレースケール化して、投入後のグレースケール輝度画像を取得する。
【0130】
すなわち、容積演算部33は、この投入後画像において解析領域D2に対応する各ピクセルが有する距離情報を輝度値に換算してグレースケール化する輝度解析を行う。このグレースケール化は、解析領域D2における各ピクセルについても同様に行われる。なお、このグレースケール化は、解析領域D2における各ピクセルについてのみ、行ってもよい。
【0131】
さらに、容積演算部33は、前記グレースケール化した投入後画像の位置補正を行う。この位置補正は、投入前画像における基準面D1に、投入後画像における基準面D1を合致させることである。なお、このグレースケール化する処理と、位置補正の処理の順序は入れ替えてもよい。
【0132】
この位置補正により、投入後画像における解析領域D2の各ピクセルと、形状補正後の投入前画像の解析領域D2の各ピクセルとの対応関係が一義的に決定可能となる。すなわち、投入前画像における形状補正前の解析領域D2の各ピクセルと、投入前画像における形状補正後の解析領域D2の各ピクセルとは、一義的に対応している。
【0133】
このため、投入後画像における解析領域D2の各ピクセルと、形状補正後の投入前画像の解析領域D2の各ピクセルとの対応関係が一義的に決定可能となる。
これにより、投入後画像における解析領域D2の各ピクセルが有する距離情報を換算した輝度値(輝度)が特定可能となる。
【0134】
(S150)
S150では、容積演算部33は、投入後のグレースケール輝度画像における解析領域D2の輝度の代表輝度K1を算出する。本実施形態では、代表輝度K1を平均値としている。なお、代表輝度K1は、平均値に限定されることはなく、解析領域D2の全ピクセルにおける輝度のうちの中央値としたり、或いは、最頻値としてもよい。
【0135】
容積演算部33は、代表輝度K1に基づいて、投入後のグレースケール輝度画像において解析領域D2における金属材料の群の上面から撮像部20までの距離R1を式(7)により算出する。
【0136】
R1=k×K1 ……(7)
kは換算係数である。
図12(b)及び図12(c)において、Nは、解析領域D2における金属材料の群の高さを、輝度値を高さ換算で表現した場合の例であり、その高さは、一様ではない。図11(c)において、前記代表輝度K1を高さ換算したR1の例を示している。
【0137】
次に、容積演算部33は、距離R1と、前記解析領域D2の面積S0を乗算して、金属材料の群の上面から、撮像部20までの投入後体積B10を式(8)により算出する。
B10=S0×R1 ……(8)
(S160)
S160では、容積演算部33は、式(9)により、充填容積B3を演算する。
【0138】
充填容積B3=投入前体積B0-投入後体積B10 ……(9)
(S130、S150及びS160の変形例)
S130、S150及びS160においては、下記のように変形してもよい。
【0139】
S130では、式(5)を省略するとともに、式(6)の代わりに容積演算部33が式(6-1)で輝度の体積相当値Ba0を算出する。
Ba0=S0×K0 ……(6-1)
そして、S150では、式(7)省略するとともに、式(8)の代わりに容積演算部33が式(8-1)で輝度の体積相当値Ba10を算出する。
【0140】
Ba10=S0×K1 ……(8-1)
さらに、S160では、式(9)の代わりに容積演算部33が式(9-1)で輝度の充填容積相当値Ba3を算出する。
【0141】
充填容積相当値Ba3=Ba0-Ba10 ……(9-1)
そして、S160では、容積演算部33は、式(9-2)により、充填容積B3を算出する。
【0142】
B3=k×充填容積相当値Ba3 ……(9-2)
kは換算係数である。
ここで、図10(a)のフローチャートの説明に戻る。
【0143】
(S200)
図10(a)のS200では、温度演算部38は、温度演算を行う。
S200では、温度演算部38は、三次元画像の解析領域D2におけるピクセルの輝度情報に基づいて、撮像画像上の金属材料の群の温度を演算する。具体的に説明すると、温度演算部38は、三次元画像記憶部31から3次元画像を取り込む。温度演算部38は、三次元画像の解析領域D2の各ピクセルの輝度情報を温度情報として読み出し、代表輝度の演算をする。代表輝度としてここでは平均輝度とするが、中央値或いは最頻値を算出しても構わないし、別の方法で代表値を算出してもよい。
【0144】
次にこれを、予め三次元画像記憶部31に予め記憶されている換算テーブルにより温度に換算して、代表温度を求める。本実施形態では、平均輝度を代表輝度としているため、代表温度は平均温度となる。換算テーブルは、試験等により得られたテーブルであって、輝度が高くなると、温度は高くなり、輝度と温度とは1対1の関係にある。
【0145】
なお、上記の方法は、輝度を温度に換算しているが、温度と輝度とは、前述したように1対1の関係にあるため、温度に換算せず、その代表輝度を代表温度とみなしてもよい。また、輝度情報に基づいて温度を演算する方法は、上記方法に限定されることなく、公知の2色式方法で行ってもよい。
【0146】
(S300)
次のS300では、種別判定部34は、カート222内の金属材料210の群の種別判定を行う。種別判定部34が行う第1判定処理は、第1実施形態の第1判定処理と同様であるため、説明を省略する。
【0147】
種別判定部34が第1判定処理で金属材料210の群を非インゴット材と判定した場合は、種別判定部34は、下記の第2判定処理を行う。
第1実施形態において説明したように返り材は、不良品よりも温度が高いため、種別判定部34は、S200で輝度情報に基づいて演算した温度(或いは、温度と看做す輝度)に基づいて判定する。具体的には、種別判定部34は、前記温度(或いは、温度と看做す輝度)が、温度閾値(輝度閾値)以上であれば、返り材と判定し、温度閾値(輝度閾値)未満であれば、不良品と判定する。温度閾値は、試験等の結果に基づいて設定されている。
【0148】
(S400)
S400では、第1実施形態の図2のフローチャートのS50と同様に前述した式(4)でカート222内の金属材料210の群の重量Tを演算する。
【0149】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の容積算出装置では、容積演算部33は、金属材料210の群の投入前に撮像されたカート222及びカート222内の三次元画像と、金属材料210の群の投入後に撮像されたカート222及びカート222内の三次元画像とに基づいて、金属材料210の充填容積B3を算出する。
【0150】
この結果、充填容積をおおまかに知りたい場合は、二次元画像を使用することなく、金属材料210の充填容積B3を算出することができる。
(2)本実施形態の容積算出装置では、容積演算部33は、投入前画像及び投入後画像のピクセルが有する距離情報に基づいてそれぞれをグレースケール化してグレースケール輝度画像を取得する。また、容積演算部33は、それぞれのグレースケール輝度画像の代表輝度K0、K1を取得し、両グレースケール輝度画像の代表輝度K0、K1の差分と該グレースケール輝度画像におけるカート222内の金属材料が投入されている解析領域D2の面積S0の面積に基づいて金属材料の充填容積B3を算出する。
【0151】
この結果、金属材料210の充填容積B3を容易に算出することができる。
(3)本実施形態の重量算出装置では、上記(1)の容積算出装置で三次元画像のみで算出した充填容積B3に基づいて、カート内に投入された金属材料の重量算出を行う。この結果、カートに投入された金属材料の重量をおおまかに知りたい場合は、二次元画像を使用することなく、金属材料210の群の重量を算出することができる。
【0152】
(4)本実施形態の重量算出装置10の種別判定部34は、金属材料を非インゴット材と判定した場合、第2判定処理で非インゴット材が、不良品か、または返り材かを、三次元画像のフレーム内の各ピクセルの輝度情報を温度情報とし、この金属材料の温度情報に基づいて判定する。この結果、放射温度計40を必要とすることなく、非インゴット材を返り材か、不良品かを判定することができる。
【0153】
(第4実施形態)
次に第4実施形態を、図13を参照して説明する。第4実施形態の容積算出装置及び重量算出装置10のハード構成は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0154】
第1実施形態等では、カート222内への金属材料210の投入が完了された後に、撮像部20がカート222及びカート222内に投入された金属材料210を撮像している。このため、積層された金属材料のうち、上層側にオーバハング状態の金属材料があると、オーバハングされている下層に存在する空隙が算出されないため、空隙容積B2の算出精度が低下する。
【0155】
そこで、本実施形態では、この空隙容積B2の算出精度を高くするために、カート222内への金属材料210の投入開始から投入完了迄の間、所定時間経過毎に撮像部20が三次元画像及び二次元画像を撮像し、三次元画像記憶部31及び二次元画像記憶部32にそれらの画像が撮像順に記憶される。ここでの所定時間毎とは、定期的な等時間毎であってもよく、或いは、不定期の時間毎であってもよい。
【0156】
そして、重量計測部30は、図13のフローチャートを実行する。S200、S210、S220は、三次元画像を取得したn回分繰り返される。nは撮像回数である。
(S500)
S500では、容積演算部33は、n回目に撮像した三次元画像(以下、n番目三次元画像という)に基づいて金属材料210の群の層間外殻容積Bn1を演算し、図示しない記憶部に記憶する。ここで、オーバハングしている部分及び高さ方向に凹部がある場合の演算方法は、第1実施形態の外殻容積B1と同様である。
【0157】
(S510)
S510では、容積演算部33は、二次元画像に基づいて層間空隙容積Bn2を演算する。この演算について詳説する。
【0158】
前記二次元画像は、n番目三次元画像の最高部位(すなわち、撮影ポイントから最小距離を有する位置)と、(n-1)番目三次元画像の最高部位までを、n番目三次元画像に基づく立体像を高さ方向において、所定間隔毎に仮想平面で分割することにより取得されたものであって、横断面図的な画像となる。なお、n=1の場合は、(n-1)番目三次元画像の最高部位として、撮影ポイントとカート222の内底面の最高部位を採用するものとする。
【0159】
n番目三次元画像に基づく立体像を高さ方向において、所定間隔毎に仮想平面で分割した後、容積演算部33は、各層の二次元画像において、空隙(凹部を含む)がある場合は、その凹部の面積bを算出し、これを加算することにより、層間空隙容積Bn2を得た後、図示しない記憶部に記憶する。
【0160】
この算出は、下記式(10)で行う。
Bn2=∫b(h)dh ……(10)
上記式(10)のうち、dhは、二次元画像の所定間隔であり、hは高さ方向の変数であり、面積b(h)は、hの関数である。上記式(10)は、最上層の二次元画像から最下層の二次元画像の位置までの区間で積分される。
【0161】
(S520)
S520では、容積演算部33は層間充填容積Bn3の演算を行う。
具体的には、容積演算部33は、下記(2)の式で層間充填容積Bn3を演算し、図示しない記憶部に記憶する。
【0162】
層間充填容積Bn3=層間外殻容積Bn1-層間空隙容積Bn2……(11)
nが、全撮像回数分に達すると、S200、S210、S220の繰り返し処理を抜け出しで、S230に移行する。
【0163】
(S530)
S530では、容積演算部33は、下記式(12)で、全ての層間充填容積Bn3を合計して、充填容積B3を算出する。
【0164】
B3=ΣBn3 ……(12)
(S540)
S540では、第1実施形態のステップS40(図2参照)の処理と同様に種別判定部34は、カート222内の金属材料210の群の種別判定を行う。
【0165】
(S550)
S550では、第1実施形態のステップS50の処理と同様に重量演算部35は、種別判定部34で種別判定した結果に基づいて、記憶装置に予め設定されている金属材料の比重量を選択し、金属材料210の群の重量Tを演算する。
【0166】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の容積算出装置及び重量算出装置10では、撮像部20は、カート222内に金属材料を投入開始から投入完了までの間、三次元画像及び二次元画像を、所定時間毎に撮像する。そして、容積演算部33は、所定時間毎に撮像した三次元画像及び二次元画像に基づいて、その所定時間毎の層間外殻容積Bn1、及び層間空隙容積Bn2を算出し、全ての層間外殻容積、及び全ての層間空隙容積に基づいて、充填容積B3を算出する。
【0167】
この結果、オーバハング状態の金属材料が多くあったとしても、カート222内に金属材料を投入開始から投入完了までの間、所定時間毎に取得した三次元画像及び前記二次元画像に基づいて、層間外殻容積Bn1、層間空隙容積Bn2を算出しているため、オーバハング状態になる以前の空隙があると、その空隙容積も算出できる。この結果、空隙容積B2の算出精度を挙げることができる。
【0168】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0169】
・第3実施形態において、撮像部20及び重量計測部30の構成を、第1実施形態と同様に二次元画像生成部26及び二次元画像記憶部32を含むようにし、温度情報を二次元画像のピクセルの輝度情報としてもよい。
【0170】
・前記実施形態では、撮像部20は単一としたが、複数の撮像部20により、カート222の相互に異なる撮像位置から、三次元画像を取得してもよい。このようにすると、例えば、図4に示す凹部Mは異なる方向から撮像されるため、オーバハング状態の下部に広がりをもつ空隙があった場合には、この広がりを持つ空隙に臨む部位の距離情報を得ることができる。この部位の距離情報及び当該距離情報を得た撮像部の撮影条件等に基づいて、凹部を過ぎる二次元画像における該凹部の面積Bの算出に役立てることが可能となる。
【0171】
・また、第1実施形態の種別判定部34の第1判定処理では、金属材料をインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行うに際し、外殻容積B1と空隙容積B2から一義的に得られる値に基づいて行うようにしている。また、第2実施形態の第1判定処理を、教師付機械学習で行うようにした。この種別判定部34の第1判定処理を、金属材料の充填高さに基づいて、金属材料をインゴットか、非インゴット材かの種別判定を行うようにしてもよい。
【0172】
具体的には、インゴット223の長さ方向を上下方向(高さ方向)に立てて整列した状態では、カートの側壁高さよりも、カート222の側壁内近傍においてすべてのインゴット223の上端が上に位置している使用例がある。他方では、非インゴット材の場合は、カート222搬送時に金属材料210が落ちないようカート側壁内近傍では、ほとんどカート側壁の高さより下に位置している使用例がある。
【0173】
上記のように、インゴット223と非インゴット材とがカート222内に投入される場合を前提とした場合、金属材料(非インゴット材)がカート側壁の高さよりも、上に位置するものはゼロもしくはわずかである。
【0174】
この経験を踏まえて、撮像部20により撮像した三次元画像に含まれる距離情報に基づいて、カート内の金属材料の高さを取得する。
そして、重量計測部30の種別判定部34は、第1判定処理として、カート222内の全金属材料の中で、所定の高さ以上となる金属材料の割合を算出する。この割合が閾値以上の割合となっている場合は、この金属材料をインゴットと判定する。この閾値は、試験等によって予め設定されている。
【0175】
或いは、種別判定部34は、カート222の2つのコーナなど、特定の複数地点の全てにおいて、高さ閾値値以上の高さ以上の金属材料が検出された場合は、この金属材料をインゴットと判定してもよい。この高さ閾値は、試験等によって予め設定されている。
【0176】
・前記実施形態では、撮像部20は、TOF(Time Of Flight)方式の構成としたが、TOF方式の構成に代えて、撮像部を2台のカメラで撮像するステレオビジョン方式、または所定のパターンの光を対象物に投射して、前記パターンの歪みを解析して距離情報を取得するストラクチャード・ライト式としてもよい。或いは、これらの方式を組み合わせてもよい。
【0177】
・非インゴット材として、返り材のみ、或いは、不良品のみの場合は、各実施形態において、種別判定部34の第2判定処理を省略してもよい。この場合、第1実施形態では、放射温度計40を省略し、第3実施形態では、温度演算部38を省略するものとする。
【0178】
・第4実施形態の図13のフローチャートにおいて、S520を省略して、S500とS510の処理をn回分を繰り返した後、S530において、層間充填容積Bn3を求め、その後、全ての層間充填容積Bn3を総和して、充填容積B3を演算してもよい。
【0179】
・第3実施形態の図10(a)のステップS300の種別判定を他の実施形態に適用してもよい。
・前記実施形態では、比重量の代わりに、かさ比重を使用してもよい。特に、金属材料が細かく砕かれているような場合は、かさ比重が好ましい。
【符号の説明】
【0180】
10…重量算出装置
20…撮像部
30…重量計測部
31…三次元画像記憶部
32…二次元画像記憶部
33…容積演算部
34…種別判定部
35…重量演算部
36…出力部
37…機械学習データベース
40…放射温度計
210…金属材料
222…カート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14