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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】自動車内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240620BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240620BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20240620BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B32B5/24 101
B32B27/02
B32B27/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020121508
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2021066422
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0130129
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519222911
【氏名又は名称】コロングロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安 在憲
(72)【発明者】
【氏名】韓 寅守
(72)【発明者】
【氏名】鄭 益ジン
(72)【発明者】
【氏名】金 奎録
(72)【発明者】
【氏名】韓 勝シク
(72)【発明者】
【氏名】崔 大碩
(72)【発明者】
【氏名】李 昌宰
(72)【発明者】
【氏名】黄 仁燮
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0164531(US,A1)
【文献】特表2014-525996(JP,A)
【文献】特開昭63-182141(JP,A)
【文献】特開2018-030270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B32B 1/00 - 43/00
B60N 2/00 - 2/90
B60R 21/16 - 21/33
D03D 1/00 - 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内装材を構成する織物層と、
前記織物層の下面に位置するフォーム層と、
前記織物層の上面に位置する第1防汚層と、
前記織物層と前記フォーム層との間に位置する第2防汚層と、
を含み、
前記織物層は、ポリウレタン原糸、高伸び率ポリエステル原糸、及びポリエステル原糸のうちの少なくとも一つの組み合わせで構成さることを特徴とする自動車内装材。
【請求項2】
前記織物層は、織物(Woven)又は編物(Knit)の組み合わせで構成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項3】
前記編物で構成される前記織物層は、トリコット生地で構成されることを特徴とする請求項2に記載の自動車内装材。
【請求項4】
前記トリコット生地は、前記ポリウレタン原糸、前記高伸び率ポリエステル原糸、及び前記ポリエステル原糸を順次製織して形成されることを特徴とする請求項3に記載の自動車内装材。
【請求項5】
前記第1防汚層は、シリコーン防汚層、フッ素炭化物系防汚層、又はTPUフィルムのうちの少なくとも一つの組み合わせで構成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項6】
前記織物層上に、切開線に沿って位置する切開孔を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項7】
前記切開線は、エアバッグドアが展開される位置と対応するように構成されることを特徴とする請求項6に記載の自動車内装材。
【請求項8】
前記織物層は、前記ポリウレタン原糸が20~30重量%含まれることを特徴とする請求項3に記載の自動車内装材。
【請求項9】
前記織物層は、前記高伸び率ポリエステル原糸が50~60重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項10】
前記織物層は、前記ポリエステル原糸が20~25重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項11】
前記織物層は、150%以上の伸び率を有するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項12】
前記第2防汚層は、前記織物層と前記フォーム層との間に、少なくとも一つの組み合わせで構成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【請求項13】
前記第2防汚層は、ホットメルト接着剤又はTPUフィルムのうちの少なくとも1つを含むように構成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材に係り、より詳しくは、真空成形によって形成される自動車内装材において、フォーム層の上部に位置する高伸び率のトリコット生地を含み、少なくとも一つの防汚層を提供して織物感を実現する防汚性能に優れた自動車内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッシュパッドと呼ばれる車両内装部品は、フロントガラスの下端に装着され、速度計、燃料計などの各種計器類などを一体化させたインストルメントパネル、オーディオ装置、及びナビゲーターなどを取り付けることができる形状に製作される。特にインストルメントパネルは、安全のために、表面層が衝撃を吸収して緩衝性を付与するウレタンフォーム層上に様々なパターンを示すようにスキン層が形成されている。
通常のクラッシュパッドは、ポリウレタンフォーム層上にスプレー工法で表面処理された製品で構成されている。しかし、上記の工法では、様々な表面パターンを実現するのには限界があり、好感触の肌触りなどの高級な車両室内雰囲気を形成することが難しい。
【0003】
最近、クラッシュパッドは、好感触の肌触りや高級な車両室内雰囲気を発現するために、天然皮革を包む形で開発が進められる傾向にある。天然皮革素材としては、一般に牛革が使用されるが、牛革は高級な室内雰囲気を形成することができる一方、材料の特性上、牛の年齢及び部位によるバラツキが大きく、また、管理方法によっては、シワ、収縮、及び変形が発生するという欠点がある。更に全量を輸入に依存しており、高価なので、使用できるのは高級車に限定され、様々な車種に拡大して使用するのには限界がある。
【0004】
更に、最近では、車両の内部をより暖かい感じにするために、クラッシュパッド、アームレスト、及びドア内側トリムに織物生地を使用している。しかし、織物生地は、自動車内装材として用いた場合には汚染に弱いという問題があり、また、コアを包む形で使用するためには高い伸び率が要求されるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許出願第10-2007-0031143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高伸び率のトリコット生地を用いた織物層を提供することにある。
本発明の他の目的は、防汚性能に優れた自動車内装材を提供するために、シリコーン樹脂を用いた防汚層を提供することにある。
【0007】
本発明の、更に他の目的は、クラッシュパッド上に位置するエアバッグドアの切開線に対応する位置に切開孔を提供して、エアバッグドアの展開が容易な自動車内装材を提供することにある。
【0008】
本発明の目的は上記した目的に限定されず、上述していない本発明の他の目的は、以降の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明確に分かることができる。
また本発明の目的は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の自動車内装材は、以下の構成を含む。
本発明の一実施形態に係る自動車内装材は、自動車内装材を構成する織物層と、前記織物層の下面に位置するフォーム層と、前記織物層の上面に位置する第1防汚層と、を含み、
前記織物層は、ポリウレタン原糸、高伸び率ポリエステル原糸、及びポリエステル原糸のうちの少なくとも一つの組み合わせで構成される自動車内装材を提供する。
【0010】
また、前記織物層は、織物(Woven)又は編物(Knit)の組み合わせで構成されることを特徴とする。
また、前記編物で構成される織物層は、トリコット生地で構成されることを特徴とする。
【0011】
また、前記トリコット生地は、前記ポリウレタン原糸、高伸び率ポリエステル原糸およびポリエステル原糸を順次製織して形成されることを特徴とする。
また、前記第1防汚層は、シリコーン防汚層、フッ素炭化物系防汚層およびTPUフィルムのうちの少なくとも一つの組み合わせで構成されることを特徴とする。
【0012】
また、前記織物層上に切開線に沿って位置する切開孔を更に含むことを特徴とする。また、前記切開線は、エアバッグドアが展開される位置と対応するように構成されることを特徴とする。
また、前記織物層は、ポリウレタン原糸が20~30重量%含まれることを特徴とする。
【0013】
また、前記織物層は、前記高伸び率ポリエステル原糸が50~60重量%含まれることを特徴とする。
また、前記織物層は、前記ポリエステル原糸が20~25重量%含まれることを特徴とする。
【0014】
また、前記織物層は、150%以上の伸び率を有するように構成されることを特徴とする。
また、前記織物層と前記フォーム層との間に位置する第2防汚層をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記第2防汚層は、前記織物層と前記フォーム層との間に少なくとも一つの組み合わせで構成されることを特徴とする。
また、前記第2防汚層は、ホットメルト接着剤又はTPUフィルムのうちの少なくとも1つを含むように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、本実施形態、以降に説明する構成、組み合わせ、及び使用関係によって次の効果を得ることができる。
本発明は、高伸び率のトリコット生地を提供するので、曲率の大きい室内部品に適用が可能な自動車内装材を提供する効果がある。
また、本発明は、織物層に高い防汚性を提供して、管理が容易な自動車内装材を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態として、自動車内装材を構成する各層の断面を示している。
図2】本発明の一実施形態として、第1防汚層400が形成された自動車内装材の側断面図を示している。
図3】本発明の一実施形態として、第1防汚層のうちのシリコーン防汚層を織物層上に形成するための製造方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を更に詳細に説明する。本発明の実施形態は、様々な形態で変形することができ、本発明の範囲は、これらの実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。本実施形態は、当分野における通常の知識を有する者に本発明を更に完全に説明するために提供されるものである。
【0019】
また、明細書に記載した「・・・層」、「・・・生地」などの用語は少なくとも一つの機能又は動作を処理する単位を意味し、これはハードウェア又はハードウェアの組み合わせで実現できる。
【0020】
本発明は、織物層300を含む自動車内装材であり、より好ましくは、向上した防汚性及び高い伸び率を有するように構成された自動車内装材を開示している。図1は、本発明の一実施形態として、自動車内装材を構成する各層の断面を示している。
【0021】
自動車用内装材は、プラスチック材質で出来た硬質のコア(core)で構成されるコア層100と、織物、編物、又はこれらの組み合わせで構成される織物層300と、織物層300とコア層100との間にポリウレタンなどの発泡体を発泡成形して形成されるフォーム層200と、を含む3層構造を持つように構成できる。
【0022】
フォーム層200は、コア層100の上面に発泡工程を経て積層するように形成され、フォーム層200の上面に積層される織物層300などの荷重による弛み、高温による熱垂れを防止することができるように構成される。
【0023】
織物層300は、車両の室内と向き合って形成され、伸び率150%以上の織物又は編物で構成される。本発明の一実施形態において、織物層300は、高伸び率のトリコット生地で構成される。高伸び率のトリコット生地は、好ましくは、ポリウレタン原糸、高伸び率ポリエステル原糸、及びポリエステル原糸のうちの少なくとも一つの組み合わせで構成でき、より好ましくは、トリコット生地は、ポリウレタン原糸20~30重量%、高伸び率ポリエステル原糸50~60重量%、及びポリエステル原糸20~25重量%で構成される。
【0024】
本発明の一実施形態において、織物層300に使用されるトリコット生地は、ポリウレタン原糸、高伸び率ポリエステル原糸、及びポリエステル原糸を順次製織して構成されるが、製織されたトリコット生地は、最初の生地と比較して30~35%の伸び率を有するように構成される。このような方式で製織されたトリコット生地は、一般ポリエステル原糸が最初の原糸の長さから15~20%の伸び率を有するという構成と比較して、相対的に高い伸び率を有する。
【0025】
高伸び率のトリコット生地は、原糸の加工時に一般原糸と比較して長さ方向に2倍ほどオーバーフィード(over feed)するように加工され、相対的に高い伸び率を有する。
【0026】
このように構成される高伸び率のトリコット生地は、従来使用されていたトリコット生地と比較して150%以上の引張伸びを有するように構成され、よりに好ましくは、高伸び率のトリコット生地は、縦伸び170%及び横伸び160%の伸び率を有するように構成される。
【0027】
更に好ましくは、織物層300を構成する高伸び率のトリコット生地は、高伸び率を発現するために、熱収縮加工によってトリコット生地の引張伸びを増加させる。熱収縮加工は、染色機熱収縮加工を行った後、熱風乾燥機で安定化させる加工方法であって、少なくとも一回の熱収縮加工を行う。
【0028】
染色機熱収縮加工とは、トリコット生地を85℃の熱水に15分間浸漬して熱収縮を行わせることにより、引張伸びを増加させる加工方法を意味する。
上述のような加工方法を行うことにより、織物層300に形成された高伸び率のトリコット生地は、上述したように、一般トリコット生地と比較して縦伸び170%及び横伸び160%の伸び率を有するようになる。
【0029】
このような伸び率を有するように構成された織物層300は、クラッシュパッドのように曲率部の多い内装材上にも接着して固定することができる。
フォーム層200と織物層300との間に、それぞれの層を接着するための接着層を含むように構成される。より好ましくは、接着層は、ボンドラミネート方式又はプライマー接着方式を用いてフォーム層200と織物層300とを接着させる。
【0030】
フォーム層200と織物層300との間に形成される接着層は、更に好ましくは、第2防汚層500を形成するように構成され得る。第2防汚層500は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(thermoplastic polyurethane TPU)フィルム、又はホットメルト接着剤、若しくはこれらを組み合わせて、少なくとも一つの防汚膜を形成することができる。
【0031】
第2防汚層500は、フォーム層200上にTPUフィルムを積層するか、または、フォーム層200上に熱可塑性樹脂を高温で塗布して織物層300との熱溶融接着を行う接着方式(ホットメルト接着)によって、少なくとも一つの層を形成するように構成される。
【0032】
第1防汚層400は、織物層300の上面に少なくとも一つの層を形成するように構成できる。より好ましくは、第1防汚層400は、少なくとも一つの層であって、シリコーン防汚層、フッ素炭化物系防汚層、又はTPUフィルムのうちの少なくとも一つの層が積層されて形成される。
【0033】
第1防汚層400は、更に好ましくは、織物層300の上面に位置され、織物層300の上面に積層された透明TPUフィルム、透明TPUフィルムの上面にそれぞれ積層可能なシリコーン防汚層、及びフッ素炭化物系防汚層を更に含んで構成できる。
【0034】
第1防汚層400を構成する防汚層の一つとして、シリコーン防汚層は、シリコーン樹脂又は液状シリコーンを含むシリコーンコーティング液で形成される。第1防汚層400に使用されるシリコーン又は液状シリコーンは、撥水性に優れるうえ、表面にスリップ性を与えることができるため、織物層300の表面の防汚性を向上させることができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、改質シリコーンは、ジメチルポリシロキサンのメチル基に各種の有機基を置換したものを含むことができ、固形分が89~99重量%含有されているものが好ましく使用できる。
第1防汚層400を形成するシリコーン樹脂又は液状シリコーンは、トリコット生地に柔らかさ(softness)、耐摩耗性の改善、及び防汚性を与えることができるものであれば何れでも使用可能である。
【0036】
第1防汚層400を構成するシリコーンコーティング液が少なすぎる場合は、防汚性が低下するおそれがあり、逆にシリコーンコーティング液が160g/m以上と多くなりすぎる場合は、外観不良とコストアップの要因になるおそれがあるので、シリコーンコーティング液は、140~170g/mの範囲に形成する。
【0037】
第1防汚層400は、より好ましくは、シリコーン樹脂以外のフッ素炭化物系防汚層を更に含むよう多層に構成できる。
すなわち、第1防汚層400を構成するフッ素炭化物系防汚層は、フッ素炭化物系樹脂を含む層を構成し、フッ素炭化物系樹脂の上面に位置するシリコーン防汚層を更に含んで形成できる。
【0038】
フッ素炭化物系防汚層を含む第1防汚層400は、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)及びPFA(Perfluoroalkoxy)のように3つの形態を基本とし、これを用いたコーティング層は、それぞれ次の特性がある。
【0039】
まず、PTFE(polytetrafluoroethylene)コーティングは、One or Two-Coatという初塗り/上塗り方式で行われる。PTFEは、基礎物質としてのフッ素炭化物系樹脂の中で耐熱温度が290℃と最も高く、摩擦係数が極めて小さく、耐摩耗性、耐化学性及び非粘着性に優れる。多孔質フィルムを形成するPTFEコーティング材は、主に水性製品である。
【0040】
FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)コーティングは、焼結過程で流動性を有する物質に変わって無孔質のフィルムを形成する。このようなFEPコーティングは、優れた耐化学性、耐食性、非常に低い摩擦係数、及び優れた非粘着性を有する。FEPコーティング材は、最高使用温度が205℃であり、水性製品又は粉末の形で供給される。
【0041】
PFA(perfluoroalkoxy)コーティングは、FEPのような無孔質のフィルムを形成する。PFAの他の利点は、連続使用限界温度が260℃と高く、フィルムの厚さを1000μm以上に上げることができ、PTFEやFEPよりも優れた耐久性を有することである。これらの特性により、PFAは、使用用途が非常に広範であり、特に耐化学性が必要な部分に多く使用される。PFA製品は、水性或いは粉末の形で供給される。
【0042】
その他にも、エチレン(Ethylene)とテトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene)の共重合体として、「Tefzel(商標)」という商号で流通するETFE(ethylenetetrafluoroethylene)を用いたコーティング材があり、このようなETFEは、完全にはフッ素化されていないが、耐化学性に優れるうえ、連続使用温度が150℃であり、フッ素炭化物系樹脂の中では強度が最も高く、厚さを2500μmまで上げることができ、耐久性にも優れる。ETFEは、粉末の形で供給される。
【0043】
このようなフッ素炭化物系防汚層は、ほぼすべての物質が付着しない非付着性、水分や油がよく付かない撥水性及び撥油性、高温(約260℃まで)でも分解が起こらない耐熱性、低温でも物理的特性が変わらない低温耐久力、並びに周辺の化学的環境にも殆ど影響されないなどの特性を持っている。
【0044】
上述したように、本発明の第1防汚層400は、フッ素炭化物系防汚層の構成であって、フッ素炭化物系樹脂としてPTFE(Polytetrafluoroethylene)、FEP(Flourinated Ethylene Propylene)及びPFA(Perfluoroalkoxy)のうちの少なくとも一つを用いて層を形成することができる。
【0045】
フッ素炭化物系防汚層は、織物層300が水槽を通過するように構成して織物層300の含浸を行うことにより構成できる。更に好ましくは、フッ素炭化物系防汚層は、織物層300に含浸されて積層されるように構成できる。
【0046】
但し、フッ素炭化物系樹脂コーティング層のみで構成された第1防汚層400は、汚染物質がフッ素分子の間に侵入して織物層300を汚染するおそれがあるので、本発明は、シリコーン樹脂からなる層を更に積層して第1防汚層400を形成することができ、フッ素炭化物系防汚層とシリコーン防汚層とで構成される多層の第1防汚層400を形成するように構成することができる。
【0047】
また、本発明の他の実施形態では、織物層300とフォーム層200との間に位置する第2防汚層500を形成することができる。本発明の別の実施形態では、第2防汚層500を、織物層の上部に位置する第1防汚層400とは異なる物性を有する防汚層として、それぞれ選択的に構成することができる。
【0048】
本発明の一実施形態は、編物生地としてトリコット生地で構成された織物層300と、織物層300の下面に位置するフォーム層200と、織物層300の上面に少なくとも一つの層を形成して位置する第1防汚層400と、織物層300及びフォーム層200との間に位置する第2防汚層500と、で構成される自動車内装材を提供する。
【0049】
本発明の一実施形態は、エアバッグドアなどの内装材の切開を行うための構成を含む。
前記構成は、展開性能が維持されるようにエアバッグドアの切開線に沿って自動車内装材に切開孔(ニードル孔)を形成するように構成される。
【0050】
切開孔はニードルパンチによって形成され、本発明の一実施形態において、800~900PPSC(punch per square centimeter)の加工を行うようにニードルパンチ処理を行う。上記の加工によって切開孔が形成される。また、切開孔を形成するニードルは、3.5インチの長さを有することができる。
【0051】
切開孔は、自動車内装材の展開が必要な部分に、切開線に沿って形成されるように構成される。本発明の一実施形態では、両開きエアバッグドアが展開される位置に実質的に対応する位置に構成できる。
切開孔が形成される切開線は、切開孔のない他の領域と比較して破裂強度、引張強度及び引裂強度が40~60%低下するように構成され、具体的には、下記表1の物性を有するように構成される。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、ニードルパンチ工程を行って自動車内装材の切開線に対応する位置に切開孔が形成されるように構成され、引張強度は縦64%、横59%の低下率(変化率)を有するように構成され、引裂強度は縦47%、横42%の低下率(変化率)を有するように構成され、また、引張伸びは、縦97%、横95%の変化率を有する高伸び率の、切開孔を含むトリコット生地を提供することができる。
【0054】
このように、エアバッグドアのように自動車内装材の展開が要求される位置の自動車内装材は、自動切開孔を含むように構成され、エアバッグ展開性能が確保される。
【0055】
図2は、本発明の一実施形態として、第1防汚層400が形成された自動車内装材の側断面図を示し、図3は、第1防汚層のうちのシリコーン防汚層を織物層上に形成するための製造方法を示している。
図2に示すように、織物層300には、汚染物が侵入しないように少なくとも一つの層が形成されるが、本発明の一実施形態においては、織物層300の上面に位置するように第1防汚層400が形成される。
【0056】
第1防汚層400は、織物層300の上面に位置するので、シリコーン樹脂を用いて液状シリコーンを織物層300に噴射するスプレー噴射方式で第1防汚層400を構成することができる。
更に、図2に示すように、本発明の一実施形態において、第1防汚層400は、フッ素炭化物系防汚層を形成するように構成でき、図3に示したナイフコーティング方式を用いてフッ素炭化物系防汚層の上面に、シリコーン防汚層を追加積層することができるように構成される。
【0057】
図3に示すように、本発明の別の実施形態として、ナイフコーティング方式を用いて織物層300にシリコーン樹脂を積層するように形成される。
ナイフコーティング方式は、コーティング樹脂をナイフ又はブレードを用いて塗布する方法であって、コーティングの厚さはナイフと基材間の距離で調節される。
【0058】
更に好ましくは、本発明の第1防汚層400は、ナイフオーバーロール(knife over roll)方法で形成される。シリコーンコーティング樹脂の量は、ローラーとナイフとの間隔で調節される。
【0059】
通常、ナイフコーティング方式は、シリコーンコーティング樹脂の粘度が10,000cps以上である場合に主に使用できる。
また、ナイフコーティング方式を用いて、シリコーン素材で構成される第1防汚層400を形成することができる。ナイフコーティング方式は、織物層300の上面に位置する第1防汚層400の厚さが0.05~0.1mmとなるように形成できる。
【0060】
更に好ましくは、本発明の織物層300は、0.5~0.8mmの厚さで形成することができるように構成される。第1防汚層400と織物層300との厚さが最大1mm以下となるように構成できる。
【0061】
まとめると、本発明の一実施形態は、編物生地の中でも高伸び率のトリコット生地で構成される織物層300を含み、織物層300の防汚性能を向上させるために、シリコーン素材で構成される第1防汚層400を形成するので、織物感が感じられながら防汚性能にも優れた自動車内装材を提供することができる。
【0062】
以上の詳細な説明は本発明を例示するものである。また、上述の内容は本発明の好適な実施形態を示して説明するものに過ぎず、本発明は多様な異なる組み合わせ、変更および環境で使用することができる。即ち、本明細書に開示された発明の概念の範囲、記載した開示内容と均等な範囲および/または当業分野の技術または知識の範囲内で変更または修正が可能である。上述の実施形態は本発明の技術的思想を実現するための最善の状態を説明するものであり、本発明の具体的な適用分野および用途で要求される多様な変更も可能である。よって、上述した発明の詳細な説明は開示された実施形態に本発明を制限しようとする意図ではない。また、添付された請求の範囲は他の実施形態も含むと解釈されるべきであろう。
【符号の説明】
【0063】
100 コア層
200 フォーム層
300 織物層
400 第1防汚層
500 第2防汚層
図1
図2
図3