(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】鉄骨有孔梁の補強構造
(51)【国際特許分類】
E04C 3/08 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
E04C3/08
(21)【出願番号】P 2020125711
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田島 暢之
(72)【発明者】
【氏名】牛渡 ふみ
(72)【発明者】
【氏名】岡村 祥子
(72)【発明者】
【氏名】田仲 秀典
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-004249(JP,A)
【文献】特開2019-116759(JP,A)
【文献】特開2007-154493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 - 3/46
E04B 1/62 - 1/99
E04B 2/74
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されたウェブと、前記ウェブの端部に設けられたフランジと、を有する鉄骨梁と、
前記貫通孔よりも前記フランジ側に配置され、前記ウェブ及び前記フランジに接合されるとともに、前記ウェブ及び前記フランジとで閉断面を形成する補強プレートと、
前記補強プレートの端部において前記閉断面の開口
の全面を塞ぐ蓋部材と、
を備える鉄骨有孔梁の補強構造。
【請求項2】
貫通孔が形成されたウェブと、前記ウェブの端部に設けられたフランジと、を有する鉄骨梁と、
前記貫通孔よりも前記フランジ側に配置され、前記ウェブ及び前記フランジに接合されるとともに、前記ウェブ及び前記フランジとで閉断面を形成する補強プレートと、
前記補強プレートの端部において前記閉断面の開口を塞ぐ蓋部材と、
を備え
、
前記蓋部材は、前記ウェブ、前記フランジ、及び前記補強プレートに接合される、
鉄骨有孔梁の補強構造。
【請求項3】
前記フランジは、前記ウェブの上下両端部にそれぞれ設けられ、
前記補強プレートは、前記貫通孔の上下にそれぞれ設けられ、
前記蓋部材は、前記貫通孔の上下の前記補強プレートの端部に亘って配置され、該端部において前記閉断面の開口をそれぞれ塞ぐ、
請求項2に記載の鉄骨有孔梁の補強構造。
【請求項4】
前記補強プレートの外面、及び前記蓋部材の外面を被覆する耐火被覆部材を備える、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の鉄骨有孔梁の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨有孔梁の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブに貫通孔が形成された鉄骨有孔梁の補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された補強構造では、例えば、貫通孔の上下に補強プレートがそれぞれ設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された補強プレートは、例えば、鉄骨梁のウェブとフランジとに亘るように傾斜した状態で配置され、ウェブ及びフランジに接合される。これにより、補強プレート、ウェブ、及びフランジによって閉断面が形成される。この場合、閉断面の内側を耐火被覆することが難しく、補強プレートの耐火性能の点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、補強プレートによって鉄骨梁を補強しつつ、補強プレートの耐火性能を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造は、貫通孔が形成されたウェブと、前記ウェブの端部に設けられたフランジと、を有する鉄骨梁と、前記貫通孔よりも前記フランジ側に配置され、前記ウェブ及び前記フランジに接合されるとともに、前記ウェブ及び前記フランジとで閉断面を形成する補強プレートと、前記補強プレートの端部において前記閉断面の開口を塞ぐ蓋部材と、を備える。
【0007】
第1態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造によれば、鉄骨梁は、貫通孔が形成されたウェブと、ウェブの端部に設けられたフランジと、を有する。貫通孔よりもフランジ側には、補強プレートが配置される。補強プレートは、ウェブ及びフランジに接合されるとともに、ウェブ及びフランジとで閉断面を形成する。これにより、貫通孔よりもフランジ側において、地震時のウェブの座屈等が抑制される。
【0008】
また、補強プレート、ウェブ、及びフランジによって閉断面を形成することにより、鉄骨梁の剛性が高められる。
【0009】
ここで、閉断面の開口は、補強プレートの端部において蓋部材によって塞がれる。これにより、例えば、火災時に開口から閉断面内に火が入り、閉断面の内側が直接火に晒されることが抑制される。したがって、補強プレートの耐火性能が向上する。
【0010】
第2態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造は、第1態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造において、前記蓋部材は、前記ウェブ、前記フランジ、及び前記補強プレートに接合される。
【0011】
第2態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造によれば、蓋部材は、ウェブ、フランジ、及び補強プレートに接合される。これにより、補強プレートだけでなく、蓋部材によっても鉄骨梁が補強される。したがって、鉄骨梁の剛性がさらに高められる。
【0012】
第3態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造は、第2態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造において、前記フランジは、前記ウェブの上下両端部にそれぞれ設けられ、前記補強プレートは、前記貫通孔の上下にそれぞれ設けられ、前記蓋部材は、前記貫通孔の上下の前記補強プレートの端部に亘って配置され、該端部において前記閉断面の開口をそれぞれ塞ぐ。
【0013】
第3態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造によれば、フランジは、ウェブの上下両端部にそれぞれ設けられる。また、補強プレートは、貫通孔の上下にそれぞれ設けられる。これにより、貫通孔の上下において、地震時のウェブの座屈等が抑制される。
【0014】
また、蓋部材は、貫通孔の上下の補強プレートの端部に亘って配置される。これにより、鉄骨梁の剛性がさらに高められる。
【0015】
さらに、蓋部材によって、貫通孔の上下の補強プレートの端部において閉断面の開口をそれぞれ塞ぐことにより、鉄骨梁の剛性を高めつつ、上下の補強プレートの耐火性能を向上させることができる。
【0016】
第4態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造は、第1態様~第3態様の何れか1つに係る鉄骨有孔梁の補強構造において、前記補強プレートの外面、及び前記蓋部材の外面を被覆する耐火被覆部材を備える。
【0017】
第4態様に係る鉄骨有孔梁の補強構造によれば、補強プレートの外面、及び蓋部材の外面を耐火被覆部材によって耐火被覆することにより、補強プレートの耐火性能をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、補強プレートによって鉄骨梁を補強しつつ、鉄骨梁の耐火性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第一実施形態に係る鉄骨有孔梁の補強構造が適用された鉄骨梁を示す斜視図である。
【
図4】第二実施形態に係る鉄骨有孔梁の補強構造が適用された鉄骨梁を示す立面図である。
【
図6】(A)及び(B)は、第一実施形態における下補強プレートの変形例を示す
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0021】
(鉄骨梁)
図1には、第一実施形態に係る鉄骨有孔梁の補強構造が適用された鉄骨梁10が示されている。なお、各図に適宜示される矢印Xは、鉄骨梁10の材軸方向(長手方向)を示し、矢印Yは、鉄骨梁10の幅方向を示し、矢印Zは、鉄骨梁10の上下方向(梁成方向)を示している。
【0022】
図1に示されるように、鉄骨梁(鉄骨有孔梁)10は、H形鋼によって形成されており、図示しない一対の柱に架設されている。この鉄骨梁10は、ウェブ12と、ウェブ12の上端部に設けられた上フランジ14と、ウェブ12の下端部に設けられた下フランジ16とを有している。なお、上フランジ14及び下フランジ16は、フランジの一例である。
【0023】
図2に示されるように、ウェブ12には、当該ウェブ12を厚み方向に貫通する貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、正面視にて、矩形状に形成されている。この貫通孔20は、4つの角部20Cを有している。また、貫通孔20は、鉄骨梁10の材軸方向に沿った上下の横辺(横縁)20Aと、鉄骨梁10の上下方向に沿った左右の縦辺(縦縁)20Bとを有している。この貫通孔20には、例えば、ダクト22等の断面矩形状の設備が挿入される。
【0024】
(上補強プレート、下補強プレート)
貫通孔20の上側には、上補強プレート30Uが設けられている。この上補強プレート30Uは、貫通孔20の上側で、ウェブ12及び上フランジ14に接合されている。一方、貫通孔20の下側には、下補強プレート30Lが設けられている。下補強プレート30Lは、貫通孔20の下側で、ウェブ12及び下フランジ16に接合されている。
【0025】
なお、上補強プレート30Uと下補強プレート30Lとは、貫通孔20に対して上下対称に構成されている。そのため、以下では、下補強プレート30Lの構成について説明し、上補強プレート30Uの構成の説明は適宜省略する。また、上補強プレート30U及び下補強プレート30Lは、補強プレートの一例である。
【0026】
下補強プレート30Lは、例えば、フラットバー(平鋼板)によって形成されており、鉄骨梁10の材軸方向に沿って配置されている。また、下補強プレート30Lの長手方向両側の端部30Eは、貫通孔20の左右の縦辺20Bよりも鉄骨梁10の材軸方向の両側(外側)に配置されている。
【0027】
図3に示されるように、下補強プレート30Lは、ウェブ12の厚さ方向の両側に設けられている。この下補強プレート30Lは、ウェブ12と下フランジ16とに亘るように、ウェブ12及び下フランジ16に対して傾斜している。
【0028】
下補強プレート30Lの上端部は、貫通孔20の下の横辺20Aに沿って配置され、ウェブ12の表面に溶接されている。一方、下補強プレート30Lの下端部は、下フランジ16の上面に溶接されている。これにより、下補強プレート30L、ウェブ12、及び下フランジ16によって、三角形状の閉断面40が形成されている。また、下補強プレート30Lの長手方向の両端には、閉断面40の開口40A(
図2参照)がそれぞれ形成されている。
【0029】
(蓋部材)
図2に示されるように、貫通孔20の左右両側には、すなわち貫通孔20に対する鉄骨梁10の材軸方向の両側(外側)には、一対の蓋部材50が設けられている。一対の蓋部材50は、例えば、フラットバー(平鋼板)によって形成されており、厚み方向を鉄骨梁10の材軸方向として配置されている。また、一対の蓋部材50は、上下方向(鉄骨梁10の梁成方向)に沿って配置されている。
【0030】
各蓋部材50は、貫通孔20の縦辺20Bに沿って上下方向に延びている。ここで、「蓋部材50が貫通孔20の縦辺20Bに沿って上下方向に延びる」とは、蓋部材50が、貫通孔20の縦辺20Bに隣接する場合だけでなく、蓋部材50が貫通孔20の縦辺20Bから離れた位置で上下方向に延びる場合も含む概念である。
【0031】
なお、本実施形態では、ウェブ12に蓋部材50を溶接(隅肉溶接)するために、貫通孔20の縦辺20Bから若干離れた位置に蓋部材50が配置されている。
【0032】
一対の蓋部材50は、上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの長手方向の両側に配置されている。この蓋部材50の長手方向に沿った端部は、ウェブ12の表面に突き当てられた状態で溶接されている。
【0033】
各蓋部材50は、上フランジ14の下面と下フランジ16の上面とに亘って配置されている。この蓋部材50の上端部は、上フランジ14の下面に突き当てられた状態で溶接されている。また、蓋部材50の下端部は、下フランジ16の上面に突き当てられた状態で溶接されている。
【0034】
蓋部材50の上部は、上補強プレート30Uの長手方向の端部30E(端面)に突き当てられた状態で溶接されている。これにより、上補強プレート30U、ウェブ12、及び上フランジ14によって形成された閉断面40(
図3参照)の開口40Aが、蓋部材50の上部によって塞がれている。また、蓋部材50と上補強プレート30Uとを接合することにより、蓋部材50と上補強プレート30Uとの間で応力が伝達可能とされている。
【0035】
蓋部材50の下部は、下補強プレート30Lの長手方向の端部30E(端面)に突き当てられた状態で溶接されている。これにより、下補強プレート30L、ウェブ12、下フランジ16によって形成された閉断面40(
図3参照)の開口40Aが、蓋部材50の下部によって塞がれている。また、蓋部材50と上補強プレート30Uとを接合することにより、蓋部材50と下補強プレート30Lとの間で応力が伝達可能とされている。
【0036】
(耐火被覆部材)
図3に示されるように、鉄骨梁10は、耐火被覆部材60によって耐火被覆されている。耐火被覆部材60は、例えば、吹き付けロックウールとされている。この耐火被覆部材60は、ウェブ12の表面、上フランジ14の表面、下フランジ16の表面、上補強プレート30Uの外面、下補強プレート30Lの外面、及び一対の蓋部材50の外面を被覆している。
【0037】
なお、鉄骨梁10の上フランジ14の上面にスラブが接合される場合は、上フランジ14のスラブに面する上面の耐火被覆は不要となる。また、
図1及び
図2では、耐火被覆部材60の図示を省略している。
【0038】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0039】
図2に示されるように、本実施形態によれば、鉄骨梁10のウェブ12には、矩形状の貫通孔20が形成されている。これにより、貫通孔20に、断面矩形状のダクト22等の設備を効率的に貫通させることができる。
【0040】
ここで、鉄骨梁10のウェブ12に貫通孔20を形成した場合、地震時に、貫通孔20の上下両側において、ウェブ12、及び上フランジ14、下フランジ16に座屈が発生し易くなる。
【0041】
これに対して本実施形態では、貫通孔20の上側に上補強プレート30Uが設けられ、貫通孔20の下側に下補強プレート30Lが設けられている。これらの上補強プレート30U及び下補強プレート30Lによって、貫通孔20の上下両側のウェブ12が補強(補剛)されている。したがって、地震時に、貫通孔20の上下両側のウェブ12、及び上フランジ14、下フランジ16が座屈することが抑制される。
【0042】
また、上補強プレート30U、ウェブ12、及び上フランジ14によって閉断面40を形成することにより、鉄骨梁10の剛性が高められる。これと同様に、下補強プレート30L、ウェブ12、及び下フランジ16によって閉断面40を形成することにより、鉄骨梁10の剛性が高められる。
【0043】
ここで、上補強プレート30Uの閉断面40の開口40Aは、上補強プレート30Uの長手方向両側の端部30Eにおいて、一対の蓋部材50の上部によって塞がれている。これと同様に、下補強プレート30Lの閉断面40の開口40Aは、下補強プレート30Lの長手方向両側の端部30Eにおいて、一対の蓋部材50の下部によって塞がれている。
【0044】
これにより、例えば、火災時に開口40Aから上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの閉断面40内に火が入り、閉断面40の内側が直接火に晒されることが抑制される。したがって、上補強プレート30U、及び下補強プレート30Lの耐火性能が向上する。
【0045】
このように本実施形態では、一対の蓋部材50によって、上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの閉断面40の開口40Aをそれぞれ塞ぐことにより、鉄骨梁10の剛性を高めつつ、上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの耐火性能を向上させることができる。
【0046】
また、
図3に示されるように、上補強プレート30Uの外面、下補強プレート30Lの外面、及び一対の蓋部材50の外面は、耐火被覆部材60によって耐火被覆されている。これにより、上補強プレート30U、及び下補強プレート30Lの耐火性能をさらに向上させることができる。
【0047】
また、一対の蓋部材50は、上補強プレート30U、及び下補強プレート30Lに接合されている。これにより、上補強プレート30U、及び下補強プレート30Lの剛性が高められる。
【0048】
さらに、一対の蓋部材50は、貫通孔20の左右両側のウェブ12、及び上フランジ14、下フランジ16に接合されている。この一対の蓋部材50によって、鉄骨梁10が補強(補剛)される。つまり、一対の蓋部材50は、鉄骨梁10を補強する縦スチフナとしても機能する。したがって、地震時に、貫通孔20の左右両側のウェブ12、及び上フランジ14、下フランジ16が座屈等することが抑制される。
【0049】
しかも、一対の蓋部材50と上補強プレート30U及び下補強プレート30Lとを接合することにより、一対の蓋部材50、上補強プレート30U、及び下補強プレート30Lの座屈等も抑制される。
【0050】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同様の部材等には同符号を付して説明を適宜省略する。
【0051】
(鉄骨梁)
図4には、第二実施形態に係る鉄骨有孔梁の補強構造が適用された鉄骨梁10が示されている。鉄骨梁10のウェブ12には、当該ウェブ12を厚み方向に貫通する貫通孔70が形成されている。貫通孔70は、正面視にて、円形状に形成されている。
【0052】
(蓋部材)
上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの長手方向両側の端部30Eには、蓋部材80がそれぞれ設けられている。蓋部材80は、例えば、鋼板等によって形成されている。また、
図5に示されるように、蓋部材80は、閉断面40の開口40Aの形状及び大きさに応じた三角形状に形成されている。
【0053】
図5に示されるように、上側の蓋部材80は、上補強プレート30Uの端部30E、ウェブ12の表面、及び上フランジ14の下面に突き当てられた状態で溶接されている。これと同様に、下側の蓋部材80は、下補強プレート30Lの端部30E、ウェブ12の表面、及び下フランジ16の上面に突き当てられた状態で溶接されている。
【0054】
なお、図示を省略するが、鉄骨梁10は、第一実施形態と同様に、耐火被覆部材60(
図3参照)によって耐火被覆されており、各蓋部材80の外面も耐火被覆部材60によって耐火被覆されている。
【0055】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0056】
図4及び
図5に示されるように、本実施形態によれば、上補強プレート30Uの閉断面40の開口40Aは、上補強プレート30Uの長手方向両側の端部30Eにおいて、三角形状の蓋部材80によって塞がれている。これと同様に、下補強プレート30Lの閉断面40の開口40Aは、下補強プレート30Lの長手方向両側の端部30Eにおいて、一対の蓋部材80によって塞がれている。
【0057】
これにより、例えば、火災時に開口40Aから上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの閉断面40内に火が入り、閉断面40の内側が直接火に晒されることが抑制される。したがって、上補強プレート30U、及び下補強プレート30Lの耐火性能が向上する。また、各蓋部材80の外面を耐火被覆部材60によって耐火被覆することにより、上補強プレート30U、及び下補強プレート30Lの耐火性能がさらに向上する。
【0058】
また、各蓋部材80は、各閉断面40の開口40Aの形状及び大きさに応じて三角形状に形成されている。これにより、本実施形態では、上記第一実施形態と比較して、鉄骨梁10の重量削減と加工の合理化を図ることができる。
【0059】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び上記第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0060】
上記第一実施形態では、耐火被覆部材60が、吹き付けロックウールとされている。しかし、耐火被覆部材は、吹き付けロックウールに限らず、例えば、耐火塗料や、コンクリート、巻付け耐火被覆部材等であっても良い。また、耐火被覆部材60は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0061】
また、上記第一実施形態では、一対の蓋部材50が、フラットバーによって形成されている。しかし、一対の蓋部材50は、閉断面40の開口40Aを閉塞可能であれば良く、その形状及び大きさは適宜変更可能である。また、蓋部材50は、金属製に限らず、例えば、ケイ酸カルシウム板製でも良い。
【0062】
また、上記第一実施形態では、上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの4つの開口40Aが一対の蓋部材50によって塞がれている。しかし、必ずしも4つの開口40Aの全てを蓋部材によって塞ぐ必要はなく、少なくとも1つの開口40Aが蓋部材によって塞がれていれば良い。
【0063】
また、上記第一実施形態では、下補強プレート30Lが、フラットバーによって形成されている。しかし、例えば、
図6(A)に示されるように、下補強プレート90は、L形プレート(L形鋼)によって形成しても良い。また、例えば、
図6(B)に示されるように、下補強プレート92は、円弧状に湾曲した湾曲プレートによって形成しても良い。また、図示を省略するが、上補強プレートも、L形プレートや湾曲プレートによって形成しても良い。
【0064】
また、上記第一実施形態では、上補強プレート30U、下補強プレート30L、及び一対の蓋部材50が鉄骨梁10に溶接によって接合されている。しかし、上補強プレート30U、下補強プレート30L、及び一対の蓋部材50は、鉄骨梁10にボルト等によって接合されても良い。
【0065】
また、上記第一実施形態では、貫通孔20の上下両側に上補強プレート30U及び下補強プレート30Lが設けられている。しかし、上補強プレート30U及び下補強プレート30Lの一方を省略しても良い。
【0066】
また、上記第一実施形態では、鉄骨梁10のウェブ12に矩形状の貫通孔20が形成されている。しかし、ウェブ12に形成する貫通孔の形状は、矩形状に限らず、円形状や楕円形状、多角形状等であっても良い。
【0067】
また、上記第一実施形態では、鉄骨梁10がH形鋼によって形成されている。しかし、鉄鋼梁は、H形鋼に限らず、I形鋼やT形鋼、C形鋼等によって形成されても良い。
【0068】
また、上記第一実施形態では、貫通孔20にダクト22が通されている。しかし、貫通孔20に通す部材は、ダクト22に限らず、適宜変更である。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10 鉄骨梁
12 ウェブ
14 上フランジ(フランジ)
16 下フランジ(フランジ)
20 貫通孔
30L 下補強プレート(補強プレート)
30U 上補強プレート(補強プレート)
30E 端部(補強プレートの端部)
40 閉断面
40A 開口
50 蓋部材
60 耐火被覆部材
70 貫通孔
80 蓋部材
90 下補強プレート(補強プレート)
92 下補強プレート(補強プレート)