(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】情報処理装置、水処理システム、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240620BHJP
G01N 15/0227 20240101ALI20240620BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240620BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240620BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G01N15/0227
B01D21/30 A
C02F1/52 Z
(21)【出願番号】P 2020136323
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-279429(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031086(WO,A1)
【文献】特開2020-025943(JP,A)
【文献】Naoya Kaido,Examination of automatic detection and tracking of ships on camera image in marine environment,2016 Techno-Ocean (Techno-Ocean),米国,IEEE,2017年,p.58ーp.63,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7890748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G01N 15/0227
B01D 21/30
C02F 1/52
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習を行った学習済みの学習モデルに、水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する取得部と、
前記撮像画像データを、前記取得部が取得した前記除外領域を識別可能に出力する出力部とを有
し、
前記取得部は、前記学習モデルから、前記水が貯留された槽の壁面に付着している汚れまたは前記水を撮像する装置が収納されたセルの壁面に付着している汚れの部分を含む領域を前記除外領域として取得し、前記学習モデルとして前記槽の設置場所または天候の環境それぞれに応じて設けられた複数の学習モデルのうち、前記除外領域の取得の際の前記環境に応じた学習モデルから前記除外領域を取得する情報処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の情報処理装置において、
前記撮像画像データから特徴量を算出する特徴量算出部を有し、
前記取得部は、前記学習モデルに、前記特徴量算出部が算出した特徴量を入力することで、前記除外領域を取得する情報処理装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の情報処理装置において、
前記出力部は、前記撮像画像データを、前記除外領域を識別可能に表示する情報処理装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の情報処理装置において、
前記出力部は、前記除外領域を所定の枠で囲った表示を行う情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記出力部は、前記撮像画像データに含まれる判定対象物質を解析する装置に対して、前記除外領域を解析の対象から除外する旨を通知する情報処理装置。
【請求項6】
槽に貯留された水に凝集剤を注入する添加装置と、情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
機械学習を行った学習済みの学習モデルに、前記槽に貯留された水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する取得部と、
前記撮像画像データを、前記取得部が取得した前記除外領域を識別可能に出力する出力部と、
前記出力部が出力した、前記除外領域を識別可能に出力された前記撮像画像データに基づいて、前記槽に貯留された水の凝集状態を算出する凝集状態算出部と、
前記凝集状態算出部が算出した凝集状態に基づいて、前記添加装置へ前記凝集剤の注入を制御するための制御信号を送信する制御信号送信部とを有し、
前記添加装置は、前記制御信号送信部から送信されてきた前記制御信号に基づいて、前記槽に貯留されている水への前記凝集剤の注入を制御
し、
前記取得部は、前記学習モデルから、前記槽の壁面に付着している汚れまたは前記水を撮像する装置が収納されたセルの壁面に付着している汚れの部分を含む領域を前記除外領域として取得し、前記学習モデルとして前記槽の設置場所または天候の環境それぞれに応じて設けられた複数の学習モデルのうち、前記除外領域の取得の際の前記環境に応じた学習モデルから前記除外領域を取得する水処理システム。
【請求項7】
機械学習を行った学習済みの学習モデルに、水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する
取得処理と、
前記撮像画像データを、前記取得した除外領域を識別可能に出力する処理とを行
い、
前記取得処理は、前記学習モデルから、前記水が貯留された槽の壁面に付着している汚れまたは前記水を撮像する装置が収納されたセルの壁面に付着している汚れの部分を含む領域を前記除外領域として取得し、前記学習モデルとして前記槽の設置場所または天候の環境それぞれに応じて設けられた複数の学習モデルのうち、前記除外領域の取得の際の前記環境に応じた学習モデルから前記除外領域を取得する情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
機械学習を行った学習済みの学習モデルに、水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する
取得手順と、
前記撮像画像データを、前記取得した除外領域を識別可能に出力する手順とを実行させ
、
前記取得手順は、前記学習モデルから、前記水が貯留された槽の壁面に付着している汚れまたは前記水を撮像する装置が収納されたセルの壁面に付着している汚れの部分を含む領域を前記除外領域として取得し、前記学習モデルとして前記槽の設置場所または天候の環境それぞれに応じて設けられた複数の学習モデルのうち、前記除外領域の取得の際の前記環境に応じた学習モデルから前記除外領域を取得するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、水処理システム、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場や下水処理場、その他の水処理設備においては、水槽内の水の画像をカメラが撮像し、撮像した画像に基づいて、水の状態を監視する技術が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような技術においては、水槽内の光の反射や、カメラを格納するセルの汚れ、発生する波の影響等により、水の正確な状態を得ることができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、水の正確な状態を得ることができる情報処理装置、水処理システム、情報処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、機械学習を行った学習済みの学習モデルに、水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する取得部と、
前記撮像画像データを、前記取得部が取得した前記除外領域を識別可能に出力する出力部とを有する情報処理装置である。
【0007】
前記取得部は、前記学習モデルから、前記水に反射した光、または前記水に発生する波、または前記水が貯留された槽の壁面に付着している汚れ、または前記水を撮像する装置が収納されたセルの壁面に付着している汚れの部分を含む領域を前記除外領域として取得することが好ましい。
【0008】
前記撮像画像データから特徴量を算出する特徴量算出部を有し、
前記取得部は、前記学習モデルに、前記特徴量算出部が算出した特徴量を入力することで、前記除外領域を取得することが好ましい。
【0009】
前記出力部は、前記撮像画像データを、前記除外領域を識別可能に表示することが好ましい。
【0010】
前記出力部は、前記除外領域を所定の枠で囲った表示を行うことが好ましい。
【0011】
前記出力部は、前記撮像画像データに含まれる判定対象物質を解析する装置に対して、前記除外領域を解析の対象から除外する旨を通知することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、槽に貯留された水に凝集剤を注入する添加装置と、情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
機械学習を行った学習済みの学習モデルに、前記槽に貯留された水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する取得部と、
前記撮像画像データを、前記取得部が取得した前記除外領域を識別可能に出力する出力部と、
前記出力部が出力した、前記除外領域を識別可能に出力された前記撮像画像データに基づいて、前記槽に貯留された水の凝集状態を算出する凝集状態算出部と、
前記凝集状態算出部が算出した凝集状態に基づいて、前記添加装置へ前記凝集剤の注入を制御するための制御信号を送信する制御信号送信部とを有し、
前記添加装置は、前記制御信号送信部から送信されてきた前記制御信号に基づいて、前記槽に貯留されている水への前記凝集剤の注入を制御する水処理システムである。
【0013】
また、本発明は、機械学習を行った学習済みの学習モデルに、水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する処理と、
前記撮像画像データを、前記取得した除外領域を識別可能に出力する処理とを行う情報処理方法である。
【0014】
また、本発明は、コンピュータに、
機械学習を行った学習済みの学習モデルに、水を撮像した撮像画像データを入力することで、該撮像画像データ内の解析の対象外となる除外領域を取得する手順と、
前記撮像画像データを、前記取得した除外領域を識別可能に出力する手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、水の正確な状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の情報処理装置の第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示した情報処理装置における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本発明の情報処理装置の第2の実施の形態を示す図である。
【
図5】
図4に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図6】
図4に示した撮像装置が撮像した撮像画像データの一例を示す図である。
【
図7】
図5に示した出力部が、除外領域を識別可能に表示した画像の一例を示す図である。
【
図8】
図4に示した情報処理装置における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の情報処理装置の第3の実施の形態を示す図である。
【
図10】本発明の情報処理装置の第4の実施の形態を示す図である。
【
図11】本発明の情報処理装置を適用した水処理システムの一例を示す図である。
【
図12】
図11に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図13】
図11に示した水処理システムにおける処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0018】
図1は、本発明の情報処理装置の第1の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理装置300は
図1に示すように、撮像装置200と接続されている。槽100は、懸濁物質を含む原水である被処理水が流入し、流入された被処理水を貯留する貯留槽であり、貯留された被処理水に対して外部から凝集剤が注入される反応槽でもある。撮像装置200は、セル400に格納され、凝集剤が注入された、槽100に貯留された水中の凝集物の画像を撮像する。撮像装置200は、例えば、水の画像を撮像する画像センサ(カメラ)であっても良い。撮像装置200が、画像センサである場合、撮像装置200は、槽100内の水の画像をあらかじめ設定された時間間隔以下の時間間隔で撮像するカメラ(例えば、動画撮像用カメラ)や、カラーセンサ、モノクロセンサ、赤外線センサであっても良い。撮像装置200はセル400に格納され、槽100内に配置されている。撮像装置200はセル400に格納され、槽100内の水中に配置されていても良い。つまり、撮像装置200は、槽100に貯留されている水に触れないようにセル400内に格納されている。セル400は、内部に格納された撮像装置200が槽100内の水の画像を撮像できるように、少なくとも撮像装置200の撮像範囲は透明な素材から構成される。なお、撮像装置200が槽100の外部に配置されているものであっても良い。その場合、撮像装置200を必ずしもセル400内に格納させる必要はない。撮像装置200は、撮像した撮像画像データを情報処理装置300へ送信する。撮像装置200と情報処理装置300との間の接続形態は、撮像装置200が送信した撮像画像データを情報処理装置300が受信できるものであれば、特に限定しない。
【0019】
図2は、
図1に示した情報処理装置300の内部構成の一例を示す図である。
図1に示した情報処理装置300は
図2に示すように、取得部320と、出力部330とを有する。なお、
図2には、
図1に示した情報処理装置300が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0020】
取得部320は、教師あり機械学習アルゴリズムを用いて機械学習を行った学習済みの学習モデル310に、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データを入力することで、その撮像画像データ内の除外領域を取得する。学習モデル310は、撮像装置200があらかじめ撮像した多数の撮像画像データと、あらかじめ集められた多数の正解データとなる除外領域の画像データとを用いて、いくつものルールやパターンを機械学習によって学習した学習モデルである。機械学習アルゴリズムに入力する教師データは、撮像装置200が様々な条件であらかじめ撮像した撮像画像データと、除外領域を示すデータとをあらかじめ対応付けることで作成することができる。学習モデル310は、情報処理装置300内に設けられたデータベース等の記憶装置に記憶されているものであっても良いし、情報処理装置300外部に記憶されていても良い。この除外領域は、情報処理装置300や他の装置が、撮像装置200が撮像した画像に基づいて所定の解析を行う際に、その解析の対象外とする領域である。つまり、それらの解析装置は、除外領域内にどのような撮像画像が含まれていても、除外領域内の画像については解析を行わない。なお、学習モデル310は、撮像装置200に設置位置や、判定対象となる判定対象物質に応じた複数の学習データセットを有し、それぞれに応じて選択可能な構成を有しても良い。出力部330は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データを、取得部320が識別した除外領域を識別可能に出力する。
【0021】
以下に、
図1に示した情報処理装置300における情報処理方法について説明する。
図3は、
図1に示した情報処理装置300における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。まず、撮像装置200が槽100内の水の画像を撮像し、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データを情報処理装置300が取り込む(ステップS1)。すると、取得部320が、機械学習を行った学習済みの学習モデル310に、取り込んだ撮像画像データを入力することで、入力した撮像画像データ内の除外領域を取得する(ステップS2)。続いて、出力部330が、撮像装置200から取り込んだ撮像画像データを、取得部320が取得した除外領域を識別可能に出力する(ステップS3)。
【0022】
このように、機械学習を用いてあらかじめ作成された学習済みの学習モデルに、撮像された撮像画像データを入力することで、除外領域を取得し、取得した除外領域を識別可能に出力する。そのため、水の正確な状態を得ることができる。
(第2の実施の形態)
【0023】
図4は、本発明の情報処理装置の第2の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理装置301は
図4に示すように、撮像装置200と接続されている。槽100、撮像装置200およびセル400は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。撮像装置200は、撮像した撮像画像データを情報処理装置301へ送信する。撮像装置200と情報処理装置301との間の接続形態は、撮像装置200が送信した撮像画像データを情報処理装置301が受信できるものであれば、特に限定しない。
【0024】
図5は、
図4に示した情報処理装置301の内部構成の一例を示す図である。
図4に示した情報処理装置301は
図5に示すように、取得部321と、出力部331と、特徴量算出部341とを有する。なお、
図5には、
図4に示した情報処理装置301が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0025】
特徴量算出部341は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データから特徴量を算出する。この特徴量は、例えば、撮像画像データ内のエッジピクセル数であっても良い。このとき、特徴量算出部341は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データの中の互いに隣接する画素の色差(例えば、RGBの値の差)が閾値以上である画素をエッジとして検出し、その検出されたエッジの数(画素数)をエッジピクセル数として算出するものであっても良い。特徴量算出部341は、エッジピクセル数に限らず、撮像画像データからその水の特徴を定量的に示す値であればほかの値を特徴量として算出するものであっても良い。例えば、特徴量算出部341は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データについて、輝度による二値化処理や、Haar-Like特徴量演算処理、LBP(Local Binary Pattern)特徴量演算処理、HOG(Histogram of Oriented Gradients)特徴量演算処理等の画像特徴量演算処理を行って特徴量を算出する。Haar-Like特徴量演算処理は、物体の局所的な明暗差の組み合わせにより、画像を判別する処理である。LBP特徴量演算処理は、物体の局所的な輝度の分布の組み合わせにより画像を判別する処理である。HOG特徴量演算処理は、物体の局所的な輝度の勾配方向の分布の組み合わせにより、画像を判別する処理である。
【0026】
一般的に、水槽に貯留している水の画像を撮像する場合、水に反射した光や、水に発生する波、槽やセルの壁面に付着している汚れ等の解析に不要な部分が写り込んでしまう。そのような画像をそのまま水の状態判定(例えば、フロックの凝集状態の判定)に用いてしまうと、写り込んだ不要な部分までもが水の状態判定の解析対象となってしまい、正確な判定を行うことができない。そこで、このような判定に不要な部分を判定対象から除外する必要がある。取得部321は、機械学習を用いて作成された学習済みの学習モデル310に、特徴量算出部341が算出した特徴量を入力することで、判定対象から除外する領域である除外領域を取得する。学習モデル310は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。学習モデル310には、上述したような判定に不要な部分の画像の特徴量を判定するための学習データが機械学習によってあらかじめ生成されて集められている。学習モデル310は、例えば、SVM(Support Vector Machine)に代表される教師あり機械学習アルゴリズムを用いてあらかじめ生成されるものであっても良い。また、学習モデル310は、機械学習を用いてあらかじめ生成されたニューラルネットワークのモデルであっても良い。また、この除外領域は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。具体的には、取得部321は、学習モデル310を用いて、特徴量算出部341が算出した特徴量に基づいて、その特徴量の部分の物体が判定対象外物体であるかどうかを識別する。例えば、学習モデル310に、水に反射した光や、水に発生する波、槽やセルの壁面に付着している汚れ等の解析に不要な部分が判定対象外物体として学習されている場合、取得部321は、学習モデル310からこれらの画像の部分を判定対象外物体(除外領域)として取得する。なお、取得部321が学習モデル310から用いる学習データは、撮像装置200の設置位置や判定対象物質に応じて学習モデル310に含まれる複数の学習データセットから選択されても良い。学習データセットは、例えば、凝集沈殿データセット「判定対象物質:屋外凝集沈殿装置のフロック、除外領域:波、光」や、加圧浮上データセット「判定対象物質:屋内加圧浮上装置スカム、除外領域:スクレーパー、波」等が挙げられる。加圧浮上については、以下に説明する。
【0027】
一般的に加圧浮上装置は、内部に貯留された水に圧力を加えることで、水に含まれる物質を浮上させる装置である。水面に浮上した物質(泡)の画像を、加圧浮上装置の上方に設置された撮像装置を用いて撮像し、撮像した画像を解析することで泡の状態を監視する。加圧浮上装置の上部には、貯留された水を攪拌するスカムかき寄せ機が回転している。そのため、撮像装置が水面の画像を撮像すると、スカムかき寄せ機が写り込んでしまう。このスカムかき寄せ機は泡の状態の解析には不要なものである。そこで、スカムかき寄せ機の画像をあらかじめ機械学習させた学習モデル310を作成しておけば、取得部321は、その学習モデル310からスカムかき寄せ機が除外領域であることを取得することができる。
【0028】
出力部331は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データを、取得部321が識別した除外領域を識別可能に出力する。例えば、出力部331は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データのうち、取得部321が取得した除外領域についてマスキング(フィルタ)をかけて出力したり、取得部321が取得した除外領域に所定のタグを付与して出力したりしても良い。また、出力部331は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データから除外領域を除外して出力しても良い。また、出力部331は、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データを、除外領域を識別可能に表示しても良い。この場合、出力部331は、除外領域を所定の枠で囲った表示を行っても良い。また、出力部331は、撮像画像データに含まれる判定対象物質を解析する装置に対して、除外領域を解析の対象から除外する旨を通知するものであっても良い。また、出力部331は、撮像画像内の除外領域を示す座標等を示す数値を出力するものであっても良い。
【0029】
図6は、
図4に示した撮像装置200が撮像した撮像画像データの一例を示す図である。
図6に示した例では、撮像画像データに、水に発生する波401や水に反射した光411が含まれている。水に発生する波401や水に反射した光411は、水中のフロックの凝集状態を判定する際に不要なものである。
図7は、
図5に示した出力部331が、除外領域を識別可能に表示した画像の一例を示す図である。
図7に示すように、出力部331は、撮像画像データに写り込んでいる除外領域である、波401を枠421-1で囲んで表示し、反射した光411を枠421-2で囲んで表示する。波401および反射した光411は、取得部321が学習モデル310から、判定対象物質ではない、つまり、除外領域であることを取得した領域である。枠421-1,421-2の大きさは、少なくとも波401や反射した光411の除外領域を含むものであれば良く、なるべく小さいものが好ましい。また、枠421-1,421-2の形状は、少なくとも波401や反射した光411の除外領域を含むものであれば良く、円形であっても良いし方形であっても良く、特に規定しない。
【0030】
以下に、
図4に示した情報処理装置301における情報処理方法について説明する。
図8は、
図4に示した情報処理装置301における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。まず、撮像装置200が槽100内の水の画像を撮像し、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データを情報処理装置301が取り込む(ステップS11)。すると、特徴量算出部341は、撮像装置200から取り込んだ撮像画像データから特徴量を算出する(ステップS12)。この特徴量は上述した通りである。続いて、取得部321が、機械学習を行った学習済みの学習モデル310に、特徴量算出部341が算出した特徴量を入力することで、判定対象から除外する領域である除外領域を取得する(ステップS13)。そして、出力部331が、撮像装置200から取り込んだ撮像画像データを、取得部321が取得した除外領域を識別可能に出力(表示)する(ステップS14)。表示方法の一例は、
図7に示したようなものである。
【0031】
撮像装置200が撮像した撮像画像データに含まれる判定対象物質を解析する装置(以下、解析装置と称する)が解析をする際、情報処理装置301からの出力結果を用いて、解析することで、解析に不要な部分を除外した解析を行うことができる。例えば、解析装置は、撮像画像データから光の反射や波打っている部分を除外して、水中の物体を監視・解析することができる。この解析装置は、例えば、撮像装置200が撮像した撮像画像データについて濃淡処理を行って値を算出するものであっても良い。この濃淡処理は、投影処理ともいい、画像の濃淡(明暗)を、3段階以上の階調、例えば256段階の階調(0~255階調)に数値化する処理である。このように解析装置が濃淡処理を行う場合、撮像装置200として赤外線センサを用いると良い。また、解析装置が、撮像装置200が撮像した撮像画像データについて凝集フロックの二値化を行う場合に、情報処理装置301から出力された除外領域を撮像画像データから除外することで、より正確な値を得ることができる。
【0032】
また、解析装置が、上述したような加圧浮上装置に貯留された水の上部の泡の状態を解析するものである場合、スカムかき寄せ機を含む画像が撮像されても、取得部321がスカムかき寄せ機が除外領域であることを取得し、出力部331がスカムかき寄せ機部分を除外領域として出力するため、解析装置が、スカムかき寄せ機部分を除外した画像特徴量を得ることができる。または、解析装置は、除外領域の出力に基づいて、スカムかき寄せ機が画像内に含まれているか否かを判断し、スカムかき寄せ機が含まれていない画像のみを抽出して、画像特徴量を算出しても良い。これによって、加圧浮上装置のスカムかき寄せ機を除く画像特徴量に基づく監視が可能となる。
【0033】
一般的に、槽に貯留されている水に発生する波や光の反射、槽壁面やカメラが配置されるセルの汚れ等、解析に不要なものが撮像データに含まれないように、撮像範囲に光を照射する光源の位置を工夫したり、セルの壁面にワイパーを設置したりするケースがある。しかしながら、このような工夫を施した場合、システム構成が複雑になってしまう。そのため、より簡易なシステムで水中の物体を監視するシステムの提供が望まれる。そこで、上述したように、機械学習が行った学習済みの学習モデルを用いて、撮像された撮像画像データから特徴量を算出し、算出した特徴量を学習モデルに入力することで除外領域を取得し、取得した除外領域を識別可能に出力する。これにより、水の正確な状態を得ることができる。情報処理装置301から出力された目的画像特徴量を用いて、フロック径を算出したところ、実際のフロック径に近い値が得られた。
【0034】
なお、取得部321が除外領域を取得するためのパラメータを閾値として設け、タッチパネルなどの入力手段への入力操作を用いてその閾値を変更できるようにしても良い。この場合、入力されたパラメータも学習モデルに入力し、学習モデルにおける判定基準を変更させる。また、除外領域として取得された領域に関する情報をフィードバックさせて、学習モデル310に再度学習させるものであっても良い。
(第3の実施の形態)
【0035】
図9は、本発明の情報処理装置の第3の実施の形態を示す図である。本形態は、第1の実施の形態における撮像装置200がセルの中に設けられているものではなく、槽100の上部に設けられている。撮像装置200は、槽100に貯留された水を槽100の外部(上部)から撮像する。撮像装置200および情報処理装置300それぞれが具備している機能は、第1の実施の形態におけるものと同じである。なお、情報処理装置300の代わりに
図4に示した情報処理装置301を用いるものであっても良い。
(第4の実施の形態)
【0036】
図10は、本発明の情報処理装置の第4の実施の形態を示す図である。本形態は、第1の実施の形態における撮像装置200がセルの中に設けられているものではなく、槽100の側壁外部に設けられている。この場合、槽100の側壁は、撮像装置200が槽100内に貯留されている水の画像を撮像可能な透明度を有する部材から構成されたものである。または、槽100の側面に槽100の内部が撮像可能な窓が設けられ、その窓を介して撮像装置200が、槽100に貯留された水を撮像するものであっても良い。撮像装置200および情報処理装置300それぞれが具備している機能は、第1の実施の形態におけるものと同じである。なお、情報処理装置300の代わりに
図4に示した情報処理装置301を用いるものであっても良い。
【0037】
以下に、本発明の情報処理装置の適用例を挙げる。
図11は、本発明の情報処理装置を適用した水処理システムの一例を示す図である。
図11に示した水処理システムは、撮像装置200と、情報処理装置302と、添加装置500とを有する。撮像装置200は、第1~4の実施の形態におけるものと同じものである。
【0038】
図12は、
図11に示した情報処理装置302の内部構成の一例を示す図である。
図11に示した情報処理装置302は
図12に示すように、学習モデル310と、取得部320と、出力部330と、凝集状態算出部352と、制御信号送信部362とを有する。なお、
図12には、
図11に示した情報処理装置302が具備する構成要素のうち、本適用例に関わる主要な構成要素のみを示した。学習モデル310、取得部320および出力部330は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。取得部320の代わりに、第2の実施の形態における取得部321や、出力部330の代わりに第2の実施の形態における出力部331を具備するものであっても良いし、第2の実施の形態における特徴量算出部341を具備するものであっても良い。
【0039】
凝集状態算出部352は、出力部330が出力してきた、除外領域を識別可能に出力(表示)された撮像画像データに基づいて、槽100内の水の凝集状態を算出する。凝集状態算出部352は、出力部330が識別可能に出力した除外領域を除いた部分について、凝集状態を算出する。ここで、撮像画像データに基づいて凝集状態を算出する算出方法は特に規定しない。例えば、凝集状態算出部352は、撮像画像データの除外領域を除いた部分に含まれるフロックの大きさや数に基づいて、凝集状態を算出するものであっても良い。
【0040】
制御信号送信部362は、凝集状態算出部352が算出した凝集状態に基づいて、制御信号を作成する。この制御信号は、槽100へ凝集剤510を注入する量やタイミング等、添加装置500が凝集剤510を槽100へ注入する方法を指示するための情報である。例えば、制御信号送信部362は、凝集状態算出部352が算出した凝集状態に基づいて、添加装置500が槽100へ注入する凝集剤510の量を増やすか、減らすか、維持するかを示す情報が含まれる制御信号を生成する。または、制御信号送信部362は、電流値や電圧値、または添加装置500が槽100へ注入する凝集剤510の量を示す制御信号を生成する。制御信号が電流値や電圧値を示すものである場合、制御信号が示す電流値や電圧値は、添加装置500を駆動させるための電流値や電圧値である。制御信号送信部362は、注入すべき量の凝集剤510を添加装置500が注入するために必要な電流値や電圧値を制御信号に含める。つまり、添加装置500が、送信されてきた制御信号に含まれる電流値や電圧値で駆動することで、必要な量の凝集剤510を槽100に注入することができる。制御信号送信部362は、作成した制御信号を添加装置500へ送信する。この送信は、無線を用いるものであっても良いし、有線を用いるものであっても良い。また、情報処理装置302と添加装置500との間の接続形態は、互いに通信が可能な接続形態であれば良く、これらが互いに直接接続されているものであっても良いし、通信ネットワークを介して接続されているものであっても良い。なお、制御信号送信部362は、生成した信号が示す電流値の電流を添加装置500へ流すものであっても良いし、生成した信号が示す電圧値の電圧を添加装置500に印加するものであっても良い。
【0041】
添加装置500は、制御信号送信部362から送信されてきた制御信号に従って、凝集剤510を槽100に注入する。
【0042】
以下に、
図11に示した水処理システムにおける処理の一例について説明する。
図13は、
図11に示した水処理システムにおける処理の一例を説明するためのフローチャートである。まず、撮像装置200が槽100内の水の画像を撮像し、撮像装置200から送信されてきた撮像画像データを情報処理装置302が取り込む(ステップS21)。すると、取得部320が、機械学習を行った学習済みの学習モデル310に、取り込んだ撮像画像データを入力することで、入力した撮像画像データ内の除外領域を取得する(ステップS22)。続いて、出力部330が、撮像装置200から取り込んだ撮像画像データを、取得部320が取得した除外領域を識別可能に出力する(ステップS23)。
【0043】
すると、凝集状態算出部352は、出力部330が出力してきた、除外領域を識別可能に出力された撮像画像データに基づいて、槽100内の水の凝集状態を算出する(ステップS24)。続いて、制御信号送信部362は、凝集状態算出部352が算出した凝集状態に基づいて、添加装置500の動作を判定する。凝集状態算出部352が算出した凝集状態に基づいて、添加装置500が槽100へ注入する凝集剤510の量を増やす必要がある場合、制御信号送信部362は、添加装置500に対してポンプストロークアップを指示すると判定する(ステップS26)。また、凝集状態算出部352が算出した凝集状態に基づいて、添加装置500が槽100へ注入する凝集剤510の量を維持する必要がある場合、制御信号送信部362は、添加装置500に対してポンプストローク維持を指示すると判定する(ステップS27)。また、凝集状態算出部352が算出した凝集状態に基づいて、添加装置500が槽100へ注入する凝集剤510の量を減らす必要がある場合、制御信号送信部362は、添加装置500に対してポンプストロークダウンを指示すると判定する(ステップS28)。そして、制御信号送信部362は、判定した指示に応じた制御信号を作成し、添加装置500へ送信する(ステップS29)。制御信号送信部362から送信されてきた制御信号を添加装置500が受信すると、添加装置500は受信した制御信号に基づいて、凝集剤510に注入を制御する(ステップS30)。
【0044】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、各実施の形態を組み合わせたものであっても良い。また、槽100の設置場所や天候等の環境に応じた複数の学習モデルをあらかじめ準備しておき、測定時の環境に応じて、使用する学習モデルを切り替えるものであっても良い。
【0045】
上述した情報処理装置300,301が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を情報処理装置300,301にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置300,301に読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置300,301にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置300,301に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置300,301に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0046】
100 槽
200 撮像装置
300,301,302 情報処理装置
310 学習モデル
320,321 取得部
330,331 出力部
341 特徴量算出部
352 凝集状態算出部
362 制御信号送信部
400 セル
401 波
411 反射した光
421-1,421-2 枠
500 添加装置
510 凝集剤