(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】αアルミナの成型体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20240620BHJP
C04B 35/117 20060101ALI20240620BHJP
C01F 7/021 20220101ALI20240620BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B38/00 304Z
C04B35/117
C01F7/021
(21)【出願番号】P 2020139386
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田河 勝吾
(72)【発明者】
【氏名】下村 和義
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 雅浩
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-223880(JP,A)
【文献】特開平09-157060(JP,A)
【文献】特表2009-504375(JP,A)
【文献】特開平11-240777(JP,A)
【文献】特開2003-048768(JP,A)
【文献】特開2019-048741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
C04B 35/00-35/84
C01F 7/02-7/476
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
αアルミナを80%以上含む成型体であって、
水銀圧入法で5000nmの細孔径から5nmの細孔径へ細孔容積を積分して得られる全細孔容積を100%としたとき、積分された前記細孔容積が前記全細孔容積の10%となる細孔径D10と積分された前記細孔容積が前記全細孔容積の90%となる細孔径D90との細孔径比D10/D90が2.
5以上であり、
前記細孔径D10が200nmより大きく、
前記全細孔容積が0.3mL/g以上0.5mL/g以下の範囲にあることを特徴とする成型体。
【請求項2】
比表面積が8m
2/g以上15m
2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の成型体。
【請求項3】
擬ベーマイト又はベーマイトの結晶構造であるアルミナと、水酸化アルミニウムと、を混合し、アルミニウム組成物の混合物を調製する第一工程と、
前記アルミニウム組成物の混合物を成型し、未焼成の成型体とする第二工程と、
前記未焼成の成型体をαアルミナが生成する温度で焼成する第三工程と、を
備え、
前記擬ベーマイト又はベーマイトの結晶構造であるアルミナと、前記水酸化アルミニウムのうち少なくとも1つの形状がゲル状であることを特徴とする成型体の製造方法。
【請求項4】
前記第三工程において、焼成温度が1150℃以上1250℃以下であることを特徴とする請求項
3に記載の成型体
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、αアルミナの成型体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスの成型体は、絶縁体、研磨材、歯科剤、及び触媒担体等の材料として利用されている。触媒担体としてはアルミナの成型体がよく用いられる。特に、γアルミナの成型体は、比表面積、及び細孔容積が大きいため、触媒用途として好適に用いられる。また、γアルミナは、酸の量が多いため、酸の量が求められる分解反応等に用いられる。一方で、αアルミナは、酸の量が少ないため、分解反応を抑制したい場合には好適である。
【0003】
しかし、αアルミナは、γアルミナ等に比べて比表面積や細孔容積が小さいため、それらを改良する研究開発が行われている(特許文献1を参照)。特許文献1では、平均粒径の異なる二種のαアルミナ粒子を用いて成型体を調製しているため、成型体の細孔容積が高い。特許文献2では、焼失する原料を用いることにより、アルミナの成型体を焼成する際に、焼失した部分が空孔となる。そのため、アルミナの細孔容積が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-069116号公報
【文献】特開2019-048741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では平均粒径の異なる二種のαアルミナ粒子を混合し、成型・焼成しているため、成型体の細孔容積が大きい。しかし、平均粒径の小さいαアルミナ粒子が平均粒径の大きいαアルミナ粒子の間の隙間に入るため、成型体の細孔径が小さくなりやすい。
【0006】
特許文献2ではカルボン酸を用いて、アルミニウムコロイドの大きさを調製している。これにより、アルミナの成型体の細孔容積が調整される。しかし、アルミニウムコロイドの大きさを調整するだけでは、成型体の細孔径が大きくならない。カルボン酸が焼失した部分は空孔となるが、成型体に大きい細孔径は形成できない。小さい細孔径しか形成されないため、触媒担体として成型体を利用した際には、大きい分子を反応させにくい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、細孔容積と細孔径が大きいαアルミナの成型体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明による成型体はαアルミナを80%以上含む。さらに、水銀圧入法で5000nmの細孔径から5nmの細孔径へ細孔容積を積分して得られる全細孔容積を100%としたとき、積分された細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径D10と積分された細孔容積が全細孔容積の90%となる細孔径D90との細孔径比D10/D90が2.0超である。さらに、細孔径D10が200nmより大きい。このようなαアルミナの成型体は0.3mL/g以上0.5mL/g以下という大きい全細孔容積を得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、細孔容積と細孔径が大きいαアルミナの成型体、及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】水銀圧入法で測定された細孔径と積分された細孔容積との関係(実施例1)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の成型体は、細孔径比D10/D90が2.0超であり、且つ細孔径D10が200nmより大きい。そのため、成型体中で大きい細孔径が広い細孔分布で存在する。すなわち、大きさの異なる大きい空隙が成型体の内部に存在する。これにより、成型体がαアルミナを80%以上含んでも、成型体は0.3mL/g以上0.5mL/g以下という大きい全細孔容積を得られる。
【0012】
αアルミナの割合は、X線回折測定の測定結果から算出できる。成型体中のαアルミナの割合は、成型体をX線回折測定した際に得られるαアルミナ以外の結晶のピークのうち、最も高いピーク強度A、及びX線回折測定で得られるαアルミナのミラー指数(104)の強度Bで表された式B/(A+B)から得られる値を100分率で表したものである。αアルミナ以外の結晶のピークは、アルミナの結晶のピークでなくてもよい。X線回折測定は、リガク社製のMiniFlex600を用いて測定できる。測定条件は、実施例に記載する。X線回折測定の強度の計数単位は、cps(count per second)で表され、式B/(A+B)の単位は、cps/cpsで表される。
成型体は、αアルミナを80%以上含むことが必要である(単位は、cps/cpsを百分率で表した%である)。本発明によれば、成型体中のαアルミナが80%以上である場合でも、大きい全細孔容積を達成できる。成型体は、αアルミナを90%以上含むことが好ましく、95%以上含むことがより好ましく、99%以上含むことがさらに好ましい。成型体中のαアルミナの割合が高いと、成型体の酸量が少なくなる。そのため、成型体を触媒の担体に利用した際に、触媒反応で反応物が酸で分解しにくくなる。
【0013】
細孔径は、水銀圧入法で測定できる。全細孔容積は、水銀圧入法で5000nmの細孔径から5nmの細孔径へ積分された細孔容積である。水銀圧入法で5000nmの細孔径から5nmの細孔径へ細孔容積を積分する際に、積分された細孔容積が全細孔容積に対して10%となる細孔径を細孔径D10とする。すなわち、5000nmの細孔径からD10の細孔径まで積分された細孔容積は全細孔容積に対して10%となる。積分された細孔容積が全細孔容積に対して90%となる細孔径を細孔径D90とする。参考に、実施例1で水銀圧入法により得られた細孔径と積分された細孔容積のグラフ、並びに細孔径D10と細孔径D90の位置を
図1に示す。細孔径Dは式D=-4σcosθ/Pで表される。σは水銀の表面張力、θは水銀の接触角、Pは試料に水銀を注入する際の圧力であり、測定時の圧力Pを細孔径に換算している。水銀圧入法の測定条件は、後述する実施例に記載する。
【0014】
細孔径D10と細孔径D90の細孔径比D10/D90は、2.0超であることが必要であるが、2.5より大きいことが好ましい。細孔径比D10/D90が2.5より大きいと、成型体の細孔容積が大きくなる。細孔径比D10/D90は、5.0より大きいことがより好ましい。これにより、成型体の比表面積が高くなる。細孔径比D10/D90は、7.0以上であることがさらに好ましい。細孔径比D10/D90は、15より低いことが好ましい。細孔径比D10/D90が15より低いと、成型体の強度が高くなる。さらに、成型体中の小さい細孔径が減るため、細孔容積が大きくなる。細孔径比D10/D90は、10より低いことが好ましい。
【0015】
細孔径D10は、200nmより大きいことが必要であるが、300nm以上が好ましい。成型体の細孔径比D10/D90が2.0超で、且つ細孔径D10が300nm以上だと、細孔容積が大きくなりやすい。細孔径D10は、500nm以上がより好ましく、600nm以上がさらに好ましい。細孔径D10が600nm以上で、且つ細孔径比D10/D90が5より大きいと、比表面積が高くなる。また、細孔径D10は1000nm以下が好ましい。これにより、1000nmより大きい細孔径の細孔容積が少なくなる。そのため、細孔分布が広くなる。
【0016】
全細孔容積に占める1000nm以下の細孔容積の割合(単位は、体積%であるが、以下、場合により「%」とする)は、95%以上100%以下であることが好ましい。この範囲にあるとき、細孔分布が広くなる。1000nm以下の細孔容積は、水銀圧入法により1000nmから細孔径5nmへ細孔容積を積分することにより得ることができる。全細孔容積に占める1000nm以下の細孔容積の割合は、1000nm以下の細孔容積を全細孔容積で除した値を100分率で表したものである。全細孔容積に占める1000nm以下の細孔容積の割合は、97%以上100%以下であることがより好ましい。この範囲にあるとき、細孔径分布が広くなる。
【0017】
水銀圧入法は細孔分布測定装置(QUANTA CROME社製:PM-33GT1LP)を用いて測定できる。測定条件は実施例に記載する。
【0018】
成型体の比表面積は、5m2/g以上15m2/g以下であることが好ましい。この範囲にあるとき、成型体を触媒担体として用いた場合に、触媒反応の反応速度が高くなる。成型体の比表面積は、6m2/g超15m2/g以下であることがより好ましく、8m2/g以上15m2/g以下であることがさらに好ましい。比表面積はBET吸着法で測定できる。測定条件は、後述する実施例に記載する。
【0019】
成型体の形状は、特に制限はされないが、公知の形状を選択できる。例えば、球状、柱状又はこれらに類する形状が挙げられる。成型体の形状は、柱状又はそれに類する形状であることが好ましい。この柱状には、円柱状、三つ葉状、及び四つ葉状等の形状も含まれる。その径は0.5mm以上5mm以下の範囲にあり、その長さは、1mm以上10mm以下の範囲にあることが好ましい。成型体の大きさについても特に制限はされない。
【0020】
成型体の組成は、アルミナが90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましい(単位は、質量%であるが、以下、場合により「%」とする)。成型体は酸量の少ないαアルミナを80%以上含むため、アルミナの組成の割合が多い程、成型体の酸量が少なくなる。成型体の組成はPHLPIPS社製のMagiXPROにより測定できる。アルミナ以外の成分として、成型体には硫酸根やナトリウム塩、アルミナ以外の無機酸化物等が含まれていても構わない。硫酸根は、SO3として2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下がより好ましい。ナトリウム塩は、Na2Oとして0.2%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましく、0.05%以下がさらに好ましい。硫酸根やナトリウム塩等のイオン性物質は触媒毒となる可能性があるが、アルミナの酸点を塞ぐため、少量であれば含まれていても構わない。無機酸化物は必要に応じて成型体に含まれていてもよい。
【0021】
以下、本発明の成型体の製造方法を詳細に説明する。
【0022】
まず、二種類以上の異なる結晶構造を有するアルミニウムの水酸化物又は酸化物(以下、アルミニウムの水酸化物又は酸化物をアルミニウム組成物と称す)を混合し、アルミニウム組成物の混合物を調製する(第一工程)。アルミニウム組成物は、結晶構造が異なると、焼成時に減少する体積(収縮量)も異なる。この収縮量は焼成に伴う結晶の相変化や結晶水の減少に起因していると考えられる。収縮量が異なると、成型体の細孔径分布が広くなるため、細孔容積が大きくなる。細孔容積が大きくなる別の理由として、アルミニウム組成物の混合物では、焼成時に異なる結晶構造同士が焼結しにくいことが考えられる。成型体の内部の焼結しにくい部分でアルミニウム組成物が収縮すると、成型体内部に空隙が発生しやすくなると推察される。結果として、成型体の細孔容積が大きくなると考えられる。
【0023】
アルミニウム組成物のうち、少なくとも一つは水酸化アルミニウムであることが好ましい。水酸化アルミニウムを第一工程で混合すると、焼成時に収縮量の大きい水酸化アルミニウムが収縮するため、成型体の細孔容積が大きくなる。第一工程では少なくとも擬ベーマイト又はベーマイトの結晶構造を有するアルミナと水酸化アルミニウムを混合することが好ましい。これにより、成型体の細孔径比D10/D90が大きくなる。第一工程で水酸化アルミニウムを添加する場合、水酸化アルミニウムはギブサイト構造であることが好ましい。成型体を製造する際には、二から三種類の異なる結晶構造を有するアルミニウム組成物を混合することが好ましい。これにより、生産性が上がる。成型体を製造する際には、二種類の異なる結晶構造を有するアルミニウム組成物を混合することがより好ましい。このとき、二種類の異なる結晶構造を有するアルミニウム組成物の結晶構造は、擬ベーマイトとギブサイト構造であることが好ましい。
【0024】
アルミニウム組成物の結晶構造としては、非晶質、ギブサイト、バイヤライト、ハイドラルジライト、擬ベーマイト、ベーマイト、ノルトストランダイト、ダイアスポア、トーダイト、χアルミナ、κアルミナ、δアルミナ、ρアルミナ、ηアルミナ、θアルミナ、及びαアルミナ等が挙げられるが、これらに限定されない。アルミニウム組成物は、非晶質の水酸化アルミニウムでも構わない。アルミニウム組成物の候補としては、種々のアルミニウムの酸化物、水酸化物及び水和物の形態が挙げられる。
【0025】
アルミニウム組成物の形状は、粉体、ゲル、又はゾル等の形態を用いることができるが、特に制限はされない。二種類以上の異なる結晶構造を有するアルミニウム組成物のうち、少なくとも1つの形状はゾル又はゲルであることが好ましい。これにより、アルミニウム組成物の混合物が均一に混ざる。均一に混ざると、異なる結晶構造同士が接触しやすくなるため、焼成時に成型体内部で焼結が起こりにくくなる。そのため、細孔容積が大きくなる。
【0026】
第一工程で混合された混合物のうち、少なくとも1つの粒度は5μm以上30μm以下であることが好ましい。この範囲にあるとき、二種類以上のアルミニウム組成物の混合が容易である。
【0027】
第一工程で混合された混合物のうち、少なくとも1つがアルミニウム組成物の混合物に40重量%以上60重量%以下含まれることが好ましい。この範囲にあるとき、成型体は細孔径分布が広くなる。そのため、成型体の細孔容積が大きくなる。アルミニウム組成物の混合物には水酸化アルミニウムが40重量%以上60重量%以下含まれることが好ましい。これにより、焼成工程で、成型体内部で収縮する水酸化アルミニウムの量が多くなるため、成型体の細孔径分布が広くなる。
【0028】
第一工程での混合方法は特に制限されない。混合方法としては湿式法、捏和法等が挙げられる。特に、捏和で混合することが好ましい。これにより、製造工程が簡略になる。
【0029】
アルミニウム組成物の混合物を調製後、この混合物を成型し、未焼成の成型体とする(第二工程)。成型方法は、特に制限されないが、公知の成型方法を用いることができる。例えば噴霧造粒、押出成型、球形整粒、打錠成型、又は押出造粒等が挙げられる。特に、押出成型が好ましい。これにより、成型体の生産性が向上する。
【0030】
未焼成の成型体を調製後、未焼成の成型体を焼成し、成型体とする(第三工程)。焼成温度は、αアルミナが生成する温度であればよい。焼成温度は、1100℃以上1500℃以下であることが好ましく、1150℃以上1300℃以下であることがより好ましく、1150℃以上1250℃以下であることがさらに好ましい。焼成温度が高い程、高い結晶性を有するαアルミナとなる。焼成温度が低い程、比表面積が高くなる。特に二種類以上の異なる結晶構造を有するアルミニウム組成物を原料としているため、1150℃以上1250℃以下で焼成した場合に、比表面積が高くなりやすい。
焼成時間は、特に制限されないが、2時間以上5時間以下であることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、成型体の調製条件の概要について表1に記載する。
[実施例1]
<擬ベーマイト構造のゲルの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクにAl2O3換算濃度で5%のアルミン酸ナトリウム40kgを入れ、60℃に加温した。Al2O3換算濃度で2.5%の硫酸アルミニウム40kgを10分かけて添加し、調合スラリーを得た。調合スラリーを脱水後、0.3重量%の炭酸水素アンモニウム水溶液で洗浄した。その後、Al2O3換算濃度が15重量%となるようにイオン交換水で希釈してスラリー化した。15重量%のアンモニア水を添加し、pH10.3に調整後、95℃で10時間攪拌することにより、熟成スラリーを得た。熟成スラリーを脱水し、擬ベーマイト構造のゲルを得た。
【0032】
<成型体の調製>
アルミニウムの水酸化物又は酸化物の原料として擬ベーマイト構造のゲルとギブサイト構造である水酸化アルミニウム(日本軽金属社製:B103)をAl2O3で換算した重量の比が1:1となるようにスチームジャケット付きの双腕式ニーダーに投入する。ニーダーで練りながら混合・加温することにより、アルミニウム組成物の混合物を得た。この混合物を押出成型機にて直径1.8mmの円柱状に成型することにより、未焼成の成型体を得た。未焼成の成型体を120℃で16時間乾燥した後、成型物の長さが4~5mmになるようにカッティングした。その後、1300℃で3時間焼成することにより、成型体を得た。
【0033】
<測定方法>
細孔容積、細孔径、比表面積、及び結晶構造を以下の方法により測定した。これらの測定結果から、全細孔容積、1000nm以下の細孔容積の割合、細孔径D10、及び細孔径比D10/D90を算出した。これらの結果を表1に記載した。また、焼成温度についても表1に記載した。さらに、後述の実施例や比較例についても同様に測定・算出し、表1に記載した。
【0034】
(細孔容積と細孔径の測定)
水銀圧入法(水銀の接触角:130°、表面張力:473dyn/cm)によって細孔径5000nmから細孔径5nmまでの成型体の細孔容積を測定した。細孔径5000nmから細孔径5nmまでの細孔容積を積分し、全細孔容積を算出した。
細孔径1000nmから5nmまでの細孔容積を積分し、1000nm以下の細孔容積を算出した。その後、1000nm以下の細孔容積を全細孔容積で除することにより、1000nm以下の細孔容積の割合を算出した。
【0035】
積分された細孔容積が全細孔容積に対して10%となったときの細孔径D10を算出した。積分された細孔容積が全細孔容積に対して90%となったときの細孔径D90を算出した。
【0036】
(比表面積の測定)
成型体を磁性るつぼに約30mL採取し、300℃の温度で2時間加熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却することにより、測定用サンプルを得た。次に測定用サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、試料の比表面積(m2/g)をBET法にて測定した。
【0037】
(結晶構造の測定)
成型体を乳鉢に採取し、乳棒を用いて粉末化した。MiniFlex600(リガク社製)を用いてX線回折測定を行った(線源:Cu-Kα線、加速電圧と電流:40kと15mA、受光スリット:開放、スキャン速度:10°/min、ステップ幅:0.020°、測定範囲(2θ):15°~90°)。解析ソフトは、リガク社製PDXL Version2を用いた。成型体の結晶構造は全ての実施例と比較例でαアルミナのみであることを確認した。
【0038】
[実施例2]
焼成温度を1200℃とした以外は実施例1と同様に成型体を調製した。
【0039】
[比較例1]
ギブサイト構造である水酸化アルミニウムを添加しないこと以外は実施例1と同様に成型物を調製した。
【0040】
[比較例2]
1500℃で10時間焼成した以外は比較例1と同様に成型物を調製した。
【0041】