(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電磁弁駆動装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/20 20060101AFI20240620BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20240620BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20240620BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240620BHJP
H01F 7/18 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F02D41/20
F02M51/00 A
F02M51/06 M
F16K31/06 310A
F16K31/06 385A
H01F7/18 S
H01F7/18 J
(21)【出願番号】P 2020164689
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】小川 功史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大顕
(72)【発明者】
【氏名】野村 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】黒田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】川尻 誠
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-31294(JP,A)
【文献】特開2019-2379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00
F02M 51/00
F16K 31/06
H01F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電開始時の電流ピークが経過した後に所定の変動幅の保持電流を電磁弁の電磁コイルに通電する電磁弁駆動装置であって、
前記電磁コイルに駆動電圧を間欠的に印加する給電部と、
前記保持電流を検出する検出部と、
該検出部の検出電流を第1のしきい値と比較する第1比較部と、
該第1比較部の出力を積分処理するフィルタ部と、
該フィルタ部の出力を第2のしきい値と比較することにより、前記給電部を制御する制御信号を生成する第2比較部と、
該第2比較部の出力に基づいて前記給電部を制御する制御信号を生成する制御信号生成部とを備え、
前記フィルタ部は、カウントアップ/ダウン型のデジタルフィルタであることを特徴とする電磁弁駆動装置。
【請求項2】
前記第1のしきい値は、前記保持電流の最大値及び/または最小値を設定するための最大値用及び/または最小値しきい値であり、
前記制御信号生成部は、前記電磁コイルに対する前記駆動電圧の印加を停止及び/または再印加させることにより、前記保持電流の最大値及び/または最小値を制御することを特徴とする請求項1に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項3】
バッテリ電圧を昇圧して昇圧電圧を生成する昇圧回路と、
前記電流ピークを前記電磁コイルに通電するために前記昇圧電圧を前記電磁コイルに印加する第2の給電部とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項4】
前記電磁弁は、直噴エンジンにおいて燃料をシリンダに直接噴射する燃料噴射弁であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内燃機関の制御装置が開示されております。この制御装置は、燃料噴射弁を開弁させるためにコイルに通電する電流がピーク電流指令値に到達した後の保持電流制御期間において、保持制御用スイッチング素子をON/OFFさせることによりバッテリの端子電圧をコイルに保持電流を間欠的に通電させるものである。このような制御装置によれば、若干のリップルは存在するものの、略一定の保持電流をコイルに通電することが可能なので、燃料噴射弁の開状態を所定時間に亘って保持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記制御装置では、ノイズの混入によって上記リップルを所望の電流範囲内に設定することが困難になる場合がある。例えば、上記制御装置では、バッテリの端子電圧を昇圧回路(チョッパ回路)で昇圧した昇圧電圧をコイルの駆動に用いるが、この昇圧回路のチョッパ制御用スイッチング素子のスイッチングノイズが保持制御用スイッチング素子の制御に外乱として作用することにより、保持電流の変動幅(リップル)を所望範囲内に抑制することができない場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電磁弁の保持電流の変動幅を従来よりも的確に所望範囲内に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、電磁弁駆動装置に係る第1の解決手段として、通電開始時の電流ピークが経過した後に所定の変動幅の保持電流を電磁弁の電磁コイルに通電する電磁弁駆動装置であって、前記電磁コイルに駆動電圧を間欠的に印加する給電部と、前記保持電流を検出する検出部と、該検出部の検出電流を第1のしきい値と比較する第1比較部と、該第1比較部の出力を積分処理するフィルタ部と、該フィルタ部の出力を第2のしきい値と比較することにより、前記給電部を制御する制御信号を生成する第2比較部と、該第2比較部の出力に基づいて前記給電部を制御する制御信号を生成する制御信号生成部とを備え、前記フィルタ部は、カウントアップ/ダウン型のデジタルフィルタである、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、電磁弁駆動装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第1のしきい値は、前記保持電流の最大値及び/または最小値を設定するための最大値用及び/または最小値しきい値であり、前記制御信号生成部は、前記電磁コイルに対する前記駆動電圧の印加を停止及び/または再印加させることにより、前記保持電流の最大値及び/または最小値を制御する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、電磁弁駆動装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、バッテリ電圧を昇圧して昇圧電圧を生成する昇圧回路と、前記電流ピークを前記電磁コイルに通電するために前記昇圧電圧を前記電磁コイルに印加する第2の給電部とをさらに備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、電磁弁駆動装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記電磁弁は、直噴エンジンにおいて燃料をシリンダに直接噴射する燃料噴射弁である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電磁弁の保持電流の変動幅を従来よりも的確に所望範囲内に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置の構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるIhold制御部の詳細構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態における要部動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Kは、燃料噴射弁B(電磁弁)を駆動する電磁弁駆動装置であり、外部のバッテリから供給されるバッテリ電圧(バッテリ電源)及び同じく外部の上位制御系から入力される外部制御指令に基づいて燃料噴射弁Bを駆動する。
【0013】
上記燃料噴射弁Bは、
図1に示すように電磁コイルLを備え、車両に搭載された直噴ガソリンエンジンのシリンダに燃料を直接噴射する電磁弁(ソレノイド弁)である。すなわち、この燃料噴射弁駆動装置Kは、電磁コイルLが発生する磁力によって弁体を移動させることによって燃料流路を開閉する燃料噴射弁B(電磁弁)を駆動対象する。
【0014】
このような燃料噴射弁駆動装置Kは、
図1に示すように、昇圧回路1、第1半導体スイッチ2、第2半導体スイッチ3、第3半導体スイッチ4、第1ダイオード5、第2ダイオード6、第3ダイオード7、電流検出用抵抗器8及び制御IC9等を備えている。
【0015】
また、このような構成要素のうち、制御IC9は、
図1に示すように、昇圧制御部9a、Ipeak制御部9b、Ihold制御部9c、電流検出部9d、電磁弁オン/オフ制御部9e及び主制御部9fを備えている。
【0016】
昇圧回路1は、上記バッテリから入力されるバッテリ電圧を所定の昇圧電圧に昇圧するチョッパ回路である。すなわち、この昇圧回路1は、昇圧制御部9aから入力される昇圧制御信号に基づいてバッテリ電圧をスイッチングする昇圧スイッチを備えており、当該昇圧スイッチの作動によって得られた昇圧電圧を第1半導体スイッチ2に出力する。
【0017】
上記昇圧電圧とバッテリ電圧との比つまり昇圧比は、昇圧パルスのデューティ比によって設定され、例えば二~十程度である。昇圧回路1の昇圧比は、制御IC9内の昇圧制御部9aから入力される昇圧パルスによって制御される。なお、このような昇圧回路1は、後述する回生電流をバッテリに回生し得る回生機能を備えている。
【0018】
第1半導体スイッチ2は、図示するようにMOSトランジスタであり、昇圧回路1の出力端と電磁コイルLの一端との間に設けられている。すなわち、この第1半導体スイッチ3は、ドレイン端子が昇圧回路1の出力端に接続され、ソース端子が電磁コイルLの一端に接続され、またゲート端子がIpeak制御部9bの出力端に接続されている。このような第1半導体スイッチ2は、Ipeak制御部9bによってON/OFF(閉/開)動作が制御される。
【0019】
なお、この第1半導体スイッチ2は、本発明における第2の給電部に相当する。すなわち、第1半導体スイッチ2は、電磁コイルLへの通電開始時における電流ピークを電磁コイルLに通電するために上記昇圧電圧を電磁コイルLに印加する第2の給電部に相当する。
【0020】
第2半導体スイッチ3は、上記第1半導体スイッチ2と同様にMOSトランジスタであり、第1ダイオード5のカソード端子と電磁コイルLの一端との間に設けられている。すなわち、この第2半導体スイッチ3は、ドレイン端子が第1ダイオード5のカソード端子に接続され、ソース端子が電磁コイルLの一端に接続され、またゲート端子がIhold制御部9cの出力端に接続されている。
【0021】
この第2半導体スイッチ3は、Ihold制御部9cによってON/OFF(閉/開)動作が制御され、後述する保持電圧(駆動電圧)を電磁コイルLに間欠的に印加する。すなわち、この第2半導体スイッチ3は、本発明における給電部に相当する。
【0022】
このような第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3は、バッテリ電圧と昇圧回路1で得られる昇圧電圧(電源電圧)とを択一的に選択して燃料噴射弁B(電磁弁)の電磁コイルLに印加する選択スイッチとして機能する。
【0023】
第3半導体スイッチ4は、上記第1、第2半導体スイッチ2、3と同様にMOSトランジスタであり、ドレイン端子が電磁コイルLの他端に接続され、ソース端子が電流検出用抵抗器8の一端に接続され、またゲート端子が電磁弁オン/オフ制御部9eの出力端に接続されている。このような第3半導体スイッチ4は、電磁弁オン/オフ制御部9eによってON/OFF(閉/開)動作が制御される。
【0024】
第1ダイオード5は、アノード端子がバッテリの出力端に接続され、カソード端子が第2半導体スイッチ3のドレイン端子に接続されている。この第1ダイオード5は、第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が何れもON状態(開状態)になった場合に、昇圧回路1の出力端とバッテリの出力端とが直接接続され、第2の半導体スイッチ3を介して、または、第2の半導体スイッチ3のみOFF状態(閉状態)であっても第2の半導体スイッチ3の寄生ダイオード介して、昇圧回路1からバッテリに電流が流入することを防止する逆流防止ダイオードである。
【0025】
第2ダイオード6は、アノード端子が電磁コイルLの他端に接続され、カソード端子が昇圧回路1の二次側入出力端に接続されている。この第2ダイオード6は、電磁コイルLから出力される回生電流を昇圧回路1を介してバッテリに供給(回生)する回生ダイオードである。第3ダイオード7は、カソード端子が電磁コイルLの一端に接続され、アノード端子がGND(基準電位)に接続されており、上記回生電流の流路を形成するための回生ダイオードである。
【0026】
電流検出用抵抗器8は、一端が第3半導体スイッチ4のソース端子に接続され、他端がGND(基準電位)に接続されたシャント抵抗器である。すなわち、電流検出用抵抗器8は、第3半導体スイッチ4を介して電磁コイルLに直列接続されており、電磁コイルLに流れる駆動電流が通過する。すなわち、このような電流検出用抵抗器8は、一端と他端との間に駆動電流の大きさに応じた電圧(検出電圧)が発生する。このような電流検出用抵抗器8の両端(一端及び他端)は、電流検出部9dに備えられた各入力端に個別に接続されている。
【0027】
制御IC9は、上位制御系から入力される指令信号に基づいて昇圧回路1、第1~第3半導体スイッチ2~4を制御する集積回路(IC:Integrated Circuit)であり、複数の入力端子及び出力端子を備えている。この制御IC9において、昇圧制御部9aは、主制御部9fから入力される制御指令に基づいて昇圧制御信号(昇圧パルス)を生成し、昇圧回路1に出力する。この昇圧制御信号は、昇圧回路1の動作を制御するための制御信号である。
【0028】
Ipeak制御部9bは、主制御部9fから入力される制御指令に基づいて第1半導体スイッチ2を制御するための第1ゲート信号を生成し、第1半導体スイッチ2のゲート端子に出力する。Ihold制御部9cは、主制御部9fから入力される制御指令に基づいて第2半導体スイッチ3を制御するための第2ゲート信号を生成し、第2半導体スイッチ3のゲート端子に出力する。
【0029】
電流検出部9dは、一対の入力端と1つの出力端とを備え、一方の入力端が電流検出用抵抗器8の一端に接続され、他方の入力端が電流検出用抵抗器8の他端に接続されている。すなわち、この電流検出部9dには、電流検出用抵抗器8で発生した検出電圧が入力される。このような電流検出部9fは、検出電圧に基づいて保持電流等の駆動電流の大きさを示す検出電流を演算し、当該検出電流を主制御部9fに出力する。なお、電流検出部9d並びに上記第3半導体スイッチ4及び電流検出用抵抗器8は、本発明の検出部を構成している。
【0030】
電磁弁オン/オフ制御部9eは、主制御部9fから入力される制御指令に基づいて第3の半導体スイッチ4を制御するための第3のゲート信号を生成し、第3の半導体スイッチ4のゲート端子に出力する。
【0031】
主制御部9fは、上記電流検出部9dから入力される検出電流及び外部の上位制御系から入力される外部制御指令に基づいて制御指令を生成し、上記昇圧制御部9a、Ipeak制御部9b、Ihold制御部9c及び電磁弁オン/オフ制御部9eに出力する。なお、上記外部制御指令には、燃料噴射弁Bの作動タイミングつまり電磁コイルLへの通電タイミングに関する情報が含まれている。
【0032】
続いて、上記Ihold制御部9cの詳細構成を
図2を参照して説明する。
Ihold制御部9cは、
図2に示すように、第1比較部9g、フィルタ部9h、第2比較部9i及びゲート信号生成部9jを少なくとも備えている。第1比較部9gは、主制御部9fを介して電流検出部9dから入力される検出電流S1を第1のしきい値R1と比較し、比較結果を示す第1CP信号S2をフィルタ部9hに出力する。なお、上記第1のしきい値R1は、保持電流の最大値を設定するための最大値用しきい値である。
【0033】
フィルタ部9hは、カウントアップ/ダウン型のデジタルフィルタである。すなわち、このフィルタ部9hは、第1CP信号S2から入力される第1CP信号S2にデジタル的なローパスフィルタ処理(積分処理)を施してフィルタ出力信号S3を生成し、当該フィルタ出力信号S3を第2比較部9iに出力する。第2比較部9iは、フィルタ出力信号S3を第2のしきい値R2と比較し、比較結果を示す第2CP信号S4をゲート信号生成部9jに出力する。
【0034】
ゲート信号生成部9jは、上記第2CP信号S4と別途生成された内部信号S5とに基づいて第2ゲート信号を生成し、当該第2ゲート信号を第2半導体スイッチ3のゲート端子に出力する。なお、このゲート信号生成部9jは、第2CP信号S4つまり第2比較部9iの出力に基づいて第2半導体スイッチ3(給電部)を制御する第2ゲート信号(制御信号)を生成する制御信号生成部である。
【0035】
次に、このように構成された燃料噴射弁駆動装置Kの動作について、
図3及び
図4をも参照して詳しく説明する。
【0036】
この燃料噴射弁駆動装置Kによって燃料噴射弁Bを閉弁状態から開弁状態に駆動する場合、制御IC9は、
図3に示すように、駆動開始時の初期期間T1(時刻t0~t1の期間)において昇圧回路1が生成する昇圧電圧を電源電圧として電磁コイルLに供給し、上記初期期間T1後の保持期間T2(時刻t1~t2の期間:保持電流駆動時)においては昇圧電圧に代えてバッテリ電圧を電源電圧として電磁コイルLに供給させる。
【0037】
すなわち、初期期間T1では、昇圧制御部9aが昇圧パルスを昇圧回路1の昇圧スイッチに出力することにより、昇圧回路1が昇圧電圧を第1半導体スイッチ2のドレイン端子に出力する。また、この初期期間T1では、Ipeak制御部9bが第1ゲート信号を第1半導体スイッチ2のゲート端子に出力することによって、第1半導体スイッチ2がON状態に設定され、また電磁弁オン/オフ制御部9eが第3半導体スイッチ4のゲート端子に第3ゲート信号を出力することによって第3半導体スイッチ4がON状態に設定される。
【0038】
この結果、初期期間T1では、
図3の下段に示すように比較的高い昇圧電圧が電磁コイルLの一端に印加され、これによって
図3の上段に示すようにピーク状の立ち上がり電流が電磁コイルLに流れる。このようなピーク状の立ち上がり電流は、燃料噴射弁Bの開弁動作を高速化する。
【0039】
そして、保持期間T2では、Ihold制御部9cが第2ゲート信号を第2半導体スイッチ3に出力することにより、第2半導体スイッチ3がON状態に設定され、また電磁弁オン/オフ制御部9eが第3ゲート信号を第3半導体スイッチ4のゲート端子に出力することによって第3半導体スイッチ4がON状態に設定される。
【0040】
この結果、保持期間T2では、
図3の下段に示すように、昇圧電圧よりも低い保持電圧が電磁コイルLに間欠的に印加され、この結果として燃料噴射弁Bの開弁状態を保持する保持電流が電磁コイルLに流れる。すなわち、本実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Kは、通電開始時の電流ピークが経過した後に、所定の変動幅の保持電流を電磁コイルLに通電する。
【0041】
Ihold制御部9cは、所定のデューティ比のPWM信号を第2ゲート信号として第2半導体スイッチ3に供給し、この結果として保持電圧を上記デューティ比に応じて断続的に電磁コイルLに対して供給させる。また、Ihold制御部9cは、第2ゲート信号のデューティ比を主制御部9fの制御指令に含まれる検出電流S1に基づいて設定する。すなわち、Ihold制御部9cは、電磁コイルLに流れる駆動電流の大きさに基づいて第2ゲート信号のデューティ比を設定することにより、上記保持電流の変動幅が所定の目標範囲(所望範囲)内になるようにフィードバック制御する。
【0042】
このようなフィードバック制御により、
図3の上段に示すように、保持期間T2では、一定の保持電流が電磁コイルLに供給されるので、燃料噴射弁Bの開弁状態が保持される。また、この保持期間T2において、例えば第2ゲート信号のデューティ比を2段階に変更することによって、
図3の上段に示すように保持電流を2段階に変化させる。
【0043】
ここで、Ihold制御部9cは、以下のようにして検出電流S1に基づいて第2ゲート信号を生成する。すなわち、検出電流S1がIhold制御部9cの第1比較部9gで第1のしきい値R1と比較処理されることにより、
図4の最上段に示すように第1CP信号S2が生成される。
【0044】
この第1CP信号S2は、上述したノイズが作用しない場合に、
図4の上から2段目に示すように、時刻taにおいてLレベルからHレベルに立上り、かつ時刻tfにおいてHレベルからLレベルに立ち下がるパルス信号である。すなわち、この第1CP信号S2は、第1のしきい値R1を用いて検出電流S1を二値化したパルス信号である。
【0045】
そして、このような第1CP信号S2がフィルタ部9hによってローパスフィルタ処理(積分処理)されることにより、
図4の下から2段目に示すようにフィルタ出力信号S3が生成される。このフィルタ出力信号S3は、時刻taにおいてフィルタ部9hのフィルタ時定数に応じた傾斜で立上る信号であるが、図示するように第1CP信号S2にノイズが作用することにより、第1CP信号S2が時刻tfよりも前の時刻tbにおいてHレベルからLレベルに立ち下がる。
【0046】
すなわち、このフィルタ出力信号S3は、上記ノイズの影響によって時刻tbから時刻tcの間において、時刻tbにおける直前のレベルLbからフィルタ時定数に応じた傾斜で立下り、ノイズの影響がなくなる時刻tcにおいてレベルLcまでレベル降下する。そして、このフィルタ出力信号S3は、時刻tcにおいてレベルLcから上記フィルタ時定数に応じた傾斜で立上り、最終的に第2のしきい値R2に到達すると第2のしきい値R2に相当するレベルを保持する。
【0047】
このようにレベル変動するフィルタ出力信号S3が第2比較部9iにおいて第2のしきい値R2と比較されることにより、
図4の最下段に示すように時刻tdにおいてLレベルからHレベルに立上る第2CP信号S4が生成される。この第2CP信号S4における時刻tdは、第2ゲート信号において保持電圧の電磁コイルLへの印加を停止するタイミングに相当する。
【0048】
ここで、
図4における二点鎖線は、従来における第2CP信号の生成方法を示している。すなわち、従来法では、第1CP信号S2にノイズが作用すると、フィルタ部9hにおけるフィルタ処理がリセットされる。この結果、時刻tcにおいてLレベルからフィルタ処理が繰り返されるので、フィルタ出力信号が第2のしきい値R2に到達する時刻は、本実施形態における上記時刻tdよりも遅延した時刻teとなる。したがって、従来法では、保持電流が上昇から下降に転じつタイミングが本実施形態よりも期間Tdだけ遅延するので、保持電流の最大値が上記期間Tdに相当する電流値Idだけ高くなる。
【0049】
ところで、ゲート信号生成部9jは、上述した第2CP信号S4と、電磁コイルLへの保持電圧の印加開始タイミングを示す内部信号S5とに基づいて第2ゲート信号を生成する。すなわち、この第2ゲート信号は、保持電流の最大値を第2CP信号S4に基づいて設定し、また保持電流の下限値を内部信号S5に基づいて設定する制御信号である。
【0050】
このような本実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置Kによれば、第1CP信号S2にノイズが作用してもフィルタ部9hにおけるローパスフィルタ処理(積分処理)をリセットすることなく継続するので、燃料噴射弁B(電磁弁)の保持電流の最大値を従来よりも的確に所望範囲内に抑制することが可能である。したがって、このような燃料噴射弁駆動装置Kによれば、保持電流の変動幅を従来よりも的確に所望範囲内に抑制することが可能である。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、保持電流の最大値を所望範囲内に抑制するようにIhold制御部9cを構成したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、保持電流の最小値を所望範囲内に抑制するように、あるいは保持電流の最大値及び最小値を所望範囲内に抑制するようにIhold制御部を構成してもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、燃料噴射弁Bを駆動対象としたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、燃料噴射弁B以外の各種電磁弁の駆動に適用することが可能である。
【0053】
(3)上記実施形態では、直噴エンジンの燃料噴射弁Bを駆動対象としたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、直噴エンジン以外の燃料噴射弁の駆動に適用することが可能である。
【0054】
(4)上記実施形態では、燃料噴射弁駆動装置Kを昇圧回路1、第1の半導体スイッチ2、第2の半導体スイッチ3、第3の半導体スイッチ4、第1のダイオード5、第2のダイオード6、第3のダイオード7、電流検出用抵抗器8及び制御IC9等を備えるように構成し、また制御IC9を昇圧制御部9a、Ipeak制御部9b、Ihold制御部9c、電流検出部9d及び主制御部9fを備えるように構成したが、本発明はこれに限定されない。
図1に示す構成は、本発明に係る電磁弁駆動装置のあくまでも一例である。
【符号の説明】
【0055】
B 燃料噴射弁
K 燃料噴射弁駆動回路
L 電磁コイル
1 昇圧回路
2 第1半導体スイッチ(第2の給電部)
3 第2半導体スイッチ(給電部)
4 第3半導体スイッチ
5 第1ダイオード
6 第2ダイオード
7 第3ダイオード
8 電流検出用抵抗器
9 制御IC
9a 昇圧制御部
9b Ipeak制御部
9c Ihold制御部
9d 電流検出部
9e 電磁弁オン/オフ制御部
9f 主制御部
9g 第1比較部
9h フィルタ部
9i 第2比較部
9j ゲート信号生成部