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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】釣糸
(51)【国際特許分類】
   A01K 91/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A01K91/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020167410
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059676
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿子 泰宏
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05601762(US,A)
【文献】特開2006-115802(JP,A)
【文献】特開平04-330241(JP,A)
【文献】実開平05-076276(JP,U)
【文献】特開昭61-258086(JP,A)
【文献】特開平03-260186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 91/00
D07B 1/04
D07B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸であって、
長手方向の少なくとも一部において互いに離間した複数の樹脂繊維と、
前記複数の樹脂繊維の集合体の外周を覆うと共に、各前記樹脂繊維間の隙間に充填された充填材と、
長手方向の少なくとも一部において各前記樹脂繊維から離間した少なくとも1つの金属線材と、
を備え
前記充填材は、前記複数の樹脂繊維と前記金属線材とからなる集合体の周囲を覆うと共に、各前記樹脂繊維と各金属線材との間の隙間に充填されている、釣糸。
【請求項2】
請求項に記載の釣糸であって、
前記金属線材の本数は、前記樹脂繊維の本数より少ない、釣糸。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の釣糸であって、
前記金属線材の外径は、前記樹脂繊維の外径より大きい、釣糸。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の釣糸であって、
前記充填材は、樹脂により形成されている、釣糸。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の釣糸であって、さらに、
前記充填材の外周を覆う被覆層を備える、釣糸。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の釣糸であって、
前記樹脂繊維の引張強度は、5cN/dtex以上である、釣糸。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の釣糸であって、
前記釣糸の横断面において、前記充填材の外周線により規定される領域の面積に対する、前記充填材が占める面積の割合は、50%以下である、釣糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、釣糸に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高強力ポリエチレン繊維のように、引張強度が高い樹脂繊維(「高強力樹脂繊維」と呼ばれる。)を用いた釣糸が広く用いられている。また、高強力樹脂繊維を用いた釣糸の取扱い性や柔軟性を向上させるため、複数の高強力樹脂繊維の束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆された釣糸が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-203208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成の釣糸では、樹脂繊維同士の摩擦による損傷(「フィブリル化」と呼ばれる。)が生じ、釣糸の引張強度が低下するおそれがある。また、上記従来の構成の釣糸は、障害物(岩礁や魚等)との接触時や締結時に作用するせん断力に対する十分な強度を有さず、せん断力により破断するおそれがある。また、上記従来の構成の釣糸は、十分な圧縮変形能力を有さないため、締結時に線同士が噛み込まず、安定した締結が困難である。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される釣糸は、複数の樹脂繊維と、充填材とを備える。複数の樹脂繊維は、長手方向の少なくとも一部において互いに離間している。充填材は、複数の樹脂繊維の集合体の外周を覆うと共に、各樹脂繊維間の隙間に充填されている。本釣糸では、複数の樹脂繊維が長手方向の少なくとも一部において互いに離間しており、各樹脂繊維間の隙間に充填材が充填されているため、樹脂繊維同士が接触することが抑制され、樹脂繊維同士の摩擦による損傷(フィブリル化)の発生を抑制することができ、その結果、該損傷に起因して釣糸の引張強度が低下することを抑制することができる。また、本釣糸では、充填材が、複数の樹脂繊維の集合体の外周を覆うと共に、各樹脂繊維間の隙間に充填されているため、充填材の存在により、障害物との接触時や締結時に作用するせん断力に対して樹脂繊維を保護することができ、その結果、せん断力作用時に釣糸が破断することを抑制することができる。また、本釣糸では、充填材の存在により釣糸の圧縮変形性能を向上させることができ、釣糸の締結時に線同士が良好に噛み込み、安定した釣糸の締結を実現することができる。
【0008】
(2)上記釣糸において、さらに、長手方向の少なくとも一部において各前記樹脂繊維から離間した少なくとも1つの金属線材を備え、前記充填材は、前記複数の樹脂繊維と前記金属線材とからなる集合体の周囲を覆うと共に、各前記樹脂繊維と各金属線材との間の隙間に充填されている構成としてもよい。このような構成を採用すれば、金属線材の存在によって釣糸の比重を調整することができると共に、樹脂繊維と金属線材との摩擦による損傷の発生を抑制することができ、その結果、該損傷に起因して釣糸の引張強度が低下することを抑制することができる。また、このような構成を採用すれば、硬度、柔軟性、表面の濡れ性といった特性に大きな差のある樹脂繊維と金属線材とを充填材により一体化することができ、該特性の差に起因して釣糸の外周に凹凸が発生することを抑制することができる。
【0009】
(3)上記釣糸において、前記金属線材の本数は、前記樹脂繊維の本数より少ない構成としてもよい。このような構成を採用すれば、金属線材の存在によって釣糸の比重を調整しつつ、釣糸の引張強度の低下を抑制することができる。
【0010】
(4)上記釣糸において、前記金属線材の外径は、前記樹脂繊維の外径より大きい構成としてもよい。このような構成を採用すれば、金属線材の存在によって釣糸の比重を、容易にかつ効果的に調整することができる。
【0011】
(5)上記釣糸において、前記充填材は、樹脂により形成されている構成としてもよい。このような構成を採用すれば、樹脂繊維同士の摩擦による損傷の発生を効果的に抑制することができ、該損傷に起因して釣糸の引張強度が低下することを効果的に抑制することができる。また、このような構成を採用すれば、充填材の存在により、せん断力に対して樹脂繊維を効果的に保護することができ、せん断力作用時に釣糸が破断することを効果的に抑制することができる。また、このような構成を採用すれば、充填材の存在により釣糸の圧縮変形性能を効果的に向上させることができ、より安定した釣糸の締結を実現することができる。
【0012】
(6)上記釣糸において、さらに、前記充填材の外周を覆う被覆層を備える構成としてもよい。このような構成を採用すれば、外部物体との間の摩擦耐久性の向上、外径の平滑化、紫外線による劣化防止、視認性の向上を実現することができる。
【0013】
(7)上記釣糸において、前記樹脂繊維の引張強度は、5cN/dtex以上である構成としてもよい。このような構成を採用すれば、釣糸の引張強度を向上させつつ、充填材の存在により、樹脂繊維同士の摩擦による損傷の発生やせん断力作用時における釣糸の破断の発生を抑制することができる。
【0014】
(8)上記釣糸において、前記釣糸の横断面において、前記充填材の外周線により規定される領域の面積に対する、前記充填材が占める面積の割合は、50%以下である構成としてもよい。このような構成を採用すれば、充填材を設けたことに起因して釣糸の比重が小さくなることを抑制することができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、釣糸やその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における釣糸10の横断面構成を示す説明図
図2】第1実施形態における釣糸10の縦断面構成を示す説明図
図3】第1実施形態の変形例における釣糸10の構成を概略的に示す説明図
図4】第2実施形態における釣糸10aの横断面構成を示す説明図
図5】第2実施形態の変形例における釣糸10aの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A-1.釣糸10の構成:
図1は、第1実施形態における釣糸10の横断面構成(図2のI-I断面の構成)を示す説明図であり、図2は、第1実施形態における釣糸10の縦断面構成(図1のII-II断面の構成)を示す説明図である。各図には、釣糸10の長手方向がZ軸に平行となった状態が示されている。なお、図2では、釣糸10の一部分の図示が省略されている。
【0018】
本実施形態の釣糸10は、海釣りや川釣りの際の道糸やハリスとして用いられる糸である。釣糸10の横断面形状は、例えば略円形であり、釣糸10の外径は、例えば0.05mm~2mm程度である。
【0019】
第1実施形態の釣糸10は、複数の樹脂繊維21と、充填材30と、被覆層40とを備える。
【0020】
樹脂繊維21は、長尺の線状部材であり、樹脂により形成されている。釣糸10において、樹脂繊維21は、主として引張強度を確保する役割を担う。本実施形態では、釣糸10は、7本の樹脂繊維21を有している。図1に示すように、釣糸10の横断面において、1本の樹脂繊維21が釣糸10の横断面の中心付近に配置されており、該1本の樹脂繊維21の廻りに残りの6本の樹脂繊維21が略均等に並べて配置されている。また、図2に示すように、釣糸10の縦断面において、7本の樹脂繊維21のそれぞれは、釣糸10の長手方向に略平行になるように配置されている。各樹脂繊維21は、長手方向の全体にわたって互いに離間しており、各樹脂繊維21間に隙間が存在している。
【0021】
釣糸10を構成する樹脂繊維21としては、種々の樹脂繊維を用いることができるが、釣糸10の引張強度を高める観点から、例えばポリウレックスエチレン系繊維、ポリアリレート系繊維、ナイロン系繊維、ケプラー繊維といったいわゆる高強力樹脂繊維を用いることが好ましい。また、これらの樹脂繊維の内、釣糸10の沈降性を高める観点から、水よりも比重の大きいポリアリレート系繊維を用いることが特に好ましい。なお、釣糸10の引張強度を高める観点から、樹脂繊維21の引張強度は5cN/dtex以上であることが好ましい。
【0022】
樹脂繊維21は、単線であってもよいし、撚線であってもよいし、編組線であってもよい。すなわち、本明細書において、繊維とは、単線に限定されず、撚線や編組線を含む細い線状の物体を意味する。各樹脂繊維21の外径は、互いに略同一であってもよいし、互いに異なっていてもよいが、例えば0.01mm~0.15mm程度である。
【0023】
充填材30は、複数の樹脂繊維21の集合体の外周を覆うと共に、各樹脂繊維21間の隙間に充填された部材である。釣糸10において、充填材30は、主として、せん断方向の外力や樹脂繊維21同士の内部摩擦から樹脂繊維21を保護する役割を担う。釣糸10の横断面における充填材30の外周線は、例えば略円形であり、充填材30の外径は、例えば0.03mm~1.5mm程度である。釣糸10の比重が小さくなることを抑制するという観点から、充填材30の内部や充填材30と樹脂繊維21との間に存在する空隙(気泡)が少ないことが好ましく、該空隙が存在しないことがより好ましい。
【0024】
充填材30は、例えば樹脂により形成されている。充填材30を各樹脂繊維21間にできるだけ空隙なく緻密に充填させるという観点から、充填材30は、常温で液状の熱硬化性樹脂や、溶融状態で均質に圧入する押出成形を行うことができる熱可塑性樹脂により形成されることが好ましい。充填材30を形成する樹脂としては、例えばアクリル系、ウレタン系、シリコン系、エステル系、ナイロン系、フッ素系等の種々の樹脂を用いることができ、用途や目的に応じて該樹脂の分子量を調整することにより、釣糸10としての張りや浮力を調整することができる。釣糸10の締結時における締め込みやすさやクッション性、リール巻き付け時におけるなじみやすさの観点から、充填材30を形成する樹脂として、ウレタン系、シリコン系、エステル系といった柔軟性の高い樹脂を用いることが特に好ましい。
【0025】
釣糸10の比重が小さくなることを抑制するという観点から、釣糸10の横断面において、充填材30の外周線により規定される領域の面積に対する、充填材30が占める面積の割合は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。また、充填材30により樹脂繊維21を効果的に保護するという観点から、該面積の割合は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、該面積の割合を、10%以上、50%以下、あるいは20%以上、40%以下の範囲内に設定することもできる。
【0026】
被覆層40は、充填材30の外周を覆う環状の部材である。釣糸10において、被覆層40は、主として、外部物体との間の摩擦耐久性の向上、外径の平滑化、紫外線による劣化防止、視認性のための発色等の役割を担う。本実施形態では、被覆層40は、充填材30の外周に密着するように、充填材30の全周を覆っている。釣糸10の横断面における被覆層40の外周線は、例えば略円形であり、被覆層40の厚さは、例えば0.01mm~0.5mm程度である。
【0027】
被覆層40の形成材料としては、種々のコーティング材料(例えば、樹脂やガラス)を用いることができるが、被覆層40の上記役割の観点から、充填材30より硬度が高く、耐光性、耐候性、撥水性に優れる材料を用いることが好ましい。また、被覆層40の形成材料として、充填材30を形成するための材料と同系の樹脂材料であって、分子量の異なるものや着色したものを用いてもよい。
【0028】
第1実施形態の釣糸10の一実施例では、樹脂繊維21として、比重が大きい液晶ポリアリレート樹脂(例えば、比重が1.4程度であるクラレのベクトラン(登録商標))の繊維が用いられ、樹脂繊維21の効果的な保護のために、柔軟性およびクッション性に優れたポリウレタン樹脂を用いて充填材30が形成され、釣糸10の表面平滑性および摩擦耐久性の向上のために、ポリエステル樹脂を用いて被覆層40が形成される。また、釣糸10の撥水性をより高めるために、被覆層40の外周にシリコンコーティング層(図示しない)を設けてもよい。
【0029】
第1実施形態の釣糸10は、例えば以下の方法により作製することができる。まず、複数の樹脂繊維21を用意する。上述したように、樹脂繊維21は、単線であってもよいし、撚線であってもよいし、編組線であってもよい。次に、複数の樹脂繊維21の集合体の外周を覆うと共に、各樹脂繊維21間の隙間に充填された充填材30を形成する。例えば、複数の樹脂繊維21を熱硬化性樹脂に含浸(ディッピング)させ、その後に樹脂を硬化させる処理を行うことにより、充填材30を形成することができる。あるいは、熱可塑性樹脂を用いた押出成形を行うことにより、充填材30を形成することができる。次に、充填材30の外周を覆う被覆層40を形成する。被覆層40は、充填材30と同様に、例えば熱硬化性樹脂を用いたディッピングや、熱可塑性樹脂を用いた押出成形により形成することができる。あるいは、スプレー等を用いた塗布処理により被覆層40を形成してもよい。被覆層40の形成後、必要により、被覆層40の外周にシリコンコーティング層を形成する。例えば以上の方法により、第1実施形態の釣糸10を作製することができる。
【0030】
A-2.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の釣糸10は、長手方向の少なくとも一部において互いに離間した複数の樹脂繊維21と、複数の樹脂繊維21の集合体の外周を覆うと共に、各樹脂繊維21間の隙間に充填された充填材30とを備える。このように、本実施形態の釣糸10では、複数の樹脂繊維21が長手方向の少なくとも一部において互いに離間しており、各樹脂繊維21間の隙間に充填材30が充填されているため、樹脂繊維21同士が接触することが抑制され、樹脂繊維21同士の摩擦による損傷(フィブリル化)の発生を抑制することができ、その結果、該損傷に起因して釣糸10の引張強度が低下することを抑制することができる。また、本実施形態の釣糸10では、充填材30が、複数の樹脂繊維21の集合体の外周を覆うと共に、各樹脂繊維21間の隙間に充填されているため、充填材30の存在により、障害物(岩礁や魚等)との接触時や締結時に作用するせん断力に対して樹脂繊維21を保護することができ、その結果、せん断力作用時に釣糸10が破断することを抑制することができる。また、本実施形態の釣糸10では、充填材30の存在により釣糸10の圧縮変形性能を向上させることができ、釣糸10の締結時に線同士が良好に噛み込み、安定した釣糸10の締結を実現することができる。
【0031】
本実施形態の釣糸10は、さらに、充填材30の外周を覆う被覆層40を備える。そのため、本実施形態の釣糸10によれば、外部物体との間の摩擦耐久性の向上、外径の平滑化、紫外線による劣化防止、視認性の向上を実現することができる。
【0032】
本実施形態の釣糸10において、充填材30は樹脂により形成されていてもよい。このような構成を採用すれば、樹脂繊維21同士の摩擦による損傷(フィブリル化)の発生を効果的に抑制することができ、該損傷に起因して釣糸10の引張強度が低下することを効果的に抑制することができる。また、このような構成を採用すれば、充填材30の存在により、せん断力に対して樹脂繊維21を効果的に保護することができ、せん断力作用時に釣糸10が破断することを効果的に抑制することができる。また、このような構成を採用すれば、充填材30の存在により釣糸10の圧縮変形性能を効果的に向上させることができ、より安定した釣糸10の締結を実現することができる。
【0033】
本実施形態の釣糸10において、釣糸10の横断面において、充填材30の外周線により規定される領域の面積に対する、充填材30が占める面積の割合は50%以下であるとしてもよい。このような構成を採用すれば、充填材30を設けたことに起因して釣糸10の比重が小さくなることを抑制することができる。
【0034】
本実施形態の釣糸10において、樹脂繊維21の引張強度は5cN/dtex以上であってもよい。このような構成を採用すれば、釣糸10の引張強度を向上させつつ、充填材30の存在により、樹脂繊維21同士の摩擦による損傷の発生やせん断力作用時における釣糸10の破断の発生を抑制することができる。また、樹脂繊維21の引張強度は20cN/dtex以上であってもよい。
【0035】
A-3.第1実施形態の変形例:
図3は、第1実施形態の変形例における釣糸10の構成を概略的に示す説明図である。図3に示す変形例では、釣糸10は、被覆層40を備えていない。図3に示す変形例のその他の構成は、図1および図2に示す第1実施形態の構成と同様である。このように、釣糸10は、必ずしも被覆層40を備えている必要はない。
【0036】
第1実施形態の変形例の釣糸10の一実施例では、樹脂繊維21として、比重が大きい液晶ポリアリレート樹脂(例えば、比重が1.4程度であるクラレのベクトラン(登録商標))の繊維が用いられ、ナイロン樹脂を用いて充填材30が形成される。樹脂繊維21を紫外線から保護するため、充填材30に黒色顔料を添加してもよい。また、釣糸10の撥水性をより高めるために、被覆層40の外周にシリコンコーティング層(図示しない)を設けてもよい。
【0037】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態における釣糸10aの横断面構成を示す説明図である。以下では、第2実施形態の釣糸10aの構成のうち、上述した第1実施形態の釣糸10と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0038】
第2実施形態の釣糸10aは、樹脂繊維21の本数が、第1実施形態の釣糸10と異なっている。具体的には、第2実施形態の釣糸10aでは、釣糸10aが備える樹脂繊維21の本数は5本である。すなわち、第2実施形態の釣糸10aは、釣糸10aの横断面の中心付近に配置された1本の樹脂繊維21と、該1本の樹脂繊維21の廻りに並べて配置された4本の樹脂繊維21とを備えている。
【0039】
また、第2実施形態の釣糸10aは、金属線材22を備える点が、第1実施形態の釣糸10と異なっている。具体的には、第2実施形態の釣糸10aは、釣糸10aの横断面の中心付近に配置された1本の樹脂繊維21の廻りに並べて配置された2本の金属線材22を備えている。すなわち、第2実施形態の釣糸10aでは、第1実施形態の釣糸10における7本の樹脂繊維21の内の2本が、金属線材22に置換されている。第2実施形態の釣糸10aにおいて、金属線材22の本数(2本)は、樹脂繊維21の本数(5本)より少なくなっている。
【0040】
金属線材22は、長尺の線状部材であり、金属により形成されている。釣糸10aにおいて、金属線材22は、主として釣糸10aの比重を調整する役割を担う。金属線材22を形成する材料としては、種々の金属を用いることができ、例えばステンレスやタングステンを用いることができる。金属線材22は、単線であってもよいし、撚線であってもよいし、編組線であってもよい。各金属線材22の外径は、互いに略同一であってもよいし、互いに異なっていてもよいが、例えば0.01mm~0.2mm程度である。ただし、本実施形態では、金属線材22の外径は、樹脂繊維21の外径より大きい。
【0041】
また、第2実施形態の釣糸10aでは、5本の樹脂繊維21と2本の金属線材22との合計7本の線材が、互いに撚り合わされて撚線を構成している。ただし、この構成においても、各線材(樹脂繊維21および金属線材22)は、長手方向の少なくとも一部において互いに離間している。
【0042】
第2実施形態の釣糸10aにおいて、充填材30は、複数の樹脂繊維21と金属線材22とからなる集合体の周囲を覆うと共に、各樹脂繊維21と各金属線材22との間の隙間に充填されている。
【0043】
以上説明したように、第2実施形態の釣糸10aは、上述した相違点を除いて、第1実施形態の釣糸10と同様の構成を有するため、第1実施形態の釣糸10が奏する効果と同様の効果を奏する。
【0044】
また、第2実施形態の釣糸10aは、さらに、長手方向の少なくとも一部において各樹脂繊維21から離間した少なくとも1つの金属線材22を備える、充填材30は、複数の樹脂繊維21と金属線材22とからなる集合体の周囲を覆うと共に、各樹脂繊維21と各金属線材22との間の隙間に充填されている。そのため、第2実施形態の釣糸10aによれば、金属線材22の存在によって釣糸10aの比重を調整することができると共に、樹脂繊維21と金属線材22との摩擦による損傷の発生を抑制することができ、その結果、該損傷に起因して釣糸10aの引張強度が低下することを抑制することができる。また、第2実施形態の釣糸10aによれば、硬度、柔軟性、表面の濡れ性といった特性に大きな差のある樹脂繊維21と金属線材22とを充填材30により一体化することができ、該特性の差に起因して釣糸10aの外周に凹凸が発生することを抑制することができる。
【0045】
また、第2実施形態の釣糸10aでは、金属線材22の本数は、樹脂繊維21の本数より少ない。そのため、第2実施形態の釣糸10aによれば、金属線材22の存在によって釣糸10aの比重を調整しつつ、釣糸10aの引張強度の低下を抑制することができる。
【0046】
また、第2実施形態の釣糸10aでは、金属線材22の外径は、樹脂繊維21の外径より大きい。そのため、第2実施形態の釣糸10aによれば、金属線材22の存在によって釣糸10aの比重を、容易にかつ効果的に調整することができる。
【0047】
図5は、第2実施形態の変形例における釣糸10aの構成を概略的に示す説明図である。図5に示す変形例では、釣糸10aは、被覆層40を備えていない。図5に示す変形例のその他の構成は、図4に示す第2実施形態の構成と同様である。このように、釣糸10aは、必ずしも被覆層40を備えている必要はない。
【0048】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0049】
上記実施形態における釣糸10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第1実施形態では、釣糸10が備える複数の樹脂繊維21のそれぞれは、釣糸10の長手方向に略平行になるように配置されているが、該複数の樹脂繊維21が、互いに撚り合わされて撚線を構成していてもよい。ただし、この構成においても、複数の樹脂繊維21は、長手方向の少なくとも一部において互いに離間している。反対に、上記第2実施形態では、釣糸10aが備える複数の樹脂繊維21および金属線材22が、互いに撚り合わされて撚線を構成しているが、各樹脂繊維21および各金属線材22が、釣糸10aの長手方向に略平行になるように配置されていてもよい。
【0050】
上記第1実施形態において、釣糸10が備える樹脂繊維21の本数や配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、釣糸10が備える樹脂繊維21の本数は、6本以下であってもよいし、8本以上であってもよい。同様に、上記第2実施形態において、釣糸10aが備える樹脂繊維21および金属線材22の本数や配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、釣糸10aが備える樹脂繊維21の本数は、4本以下であってもよいし、6本以上であってもよく、釣糸10aが備える金属線材22の本数は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。例えば、釣糸10aが備える樹脂繊維21および金属線材22の本数の組合せは、樹脂繊維21が2本で金属線材22が10本(合計12本)であってもよいし、樹脂繊維21が2本で金属線材22が20本(合計22本)であってもよい。
【0051】
上記第2実施形態では、金属線材22の本数は、樹脂繊維21の本数より少ないが、金属線材22の本数は、樹脂繊維21の本数と同じでもよいし、樹脂繊維21の本数より多くてもよい。また、上記第2実施形態では、金属線材22の外径は、樹脂繊維21の外径より大きいが、金属線材22の外径は、樹脂繊維21の外径と同じでもよいし、樹脂繊維21の外径より小さくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,10a:釣糸 21:樹脂繊維 22:金属線材 30:充填材 40:被覆層
図1
図2
図3
図4
図5