(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】リニアモータ、電磁サスペンションおよび洗濯機
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20240620BHJP
H02K 1/02 20060101ALI20240620BHJP
H02K 1/16 20060101ALI20240620BHJP
D06F 37/22 20060101ALI20240620BHJP
D06F 33/48 20200101ALI20240620BHJP
D06F 33/76 20200101ALI20240620BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240620BHJP
F16F 15/03 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H02K41/02 A
H02K1/02 Z
H02K1/16 Z
D06F37/22
D06F33/48
D06F33/76
F16F15/02 A
F16F15/03 C
(21)【出願番号】P 2020192216
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】法月 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】馬飼野 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】根本 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】菊地 聡
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009906(JP,A)
【文献】特開2004-180449(JP,A)
【文献】特開2011-097769(JP,A)
【文献】特開平03-045139(JP,A)
【文献】特開昭64-063671(JP,A)
【文献】特開2007-306684(JP,A)
【文献】特開平07-336992(JP,A)
【文献】特開2002-247782(JP,A)
【文献】特開2005-287185(JP,A)
【文献】特開2010-017003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0244113(US,A1)
【文献】実開昭50-038414(JP,U)
【文献】特開2014-217089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 1/02
H02K 1/16
D06F 37/22
D06F 33/48
D06F 33/76
F16F 15/02
F16F 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心と巻線とを備えた固定子と、
前記固定子と対向する面に磁石を備え、前記固定子に対し相対的に移動する可動子を備えたリニアモータであって、
前記固定子鉄心は、コアバック部と、前記磁石に対向すると共に前記巻線を備えるティース部とを備え、
前記ティース部は、
前記可動子の移動方向であって前記コアバック部との対向位置に空隙を設けて配置
すると共に、弾性材料で構成された留具を用いて前記コアバック部に固定したことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
請求項
1において、
前記ティース部の前記磁石と対向する位置には、前記可動子の移動方向に対して直交方向に張り出したティーストップ部を備えたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項3】
請求項
1において、
前記ティース部の前記磁石と対向する位置には、前記可動子の移動方向及び前記可動子の移動方向に対して直交方向に張出したティーストップ部を備えたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項4】
請求項
1において、
前記コアバック部には、一部が切欠かれた凹部が形成され、
前記凹部は、開口入口部分における幅が、奥側における幅よりも狭くなるように傾斜して形成され、
前記ティース部には、前記凹部に嵌合する凸部が形成され、
前記凸部は、前記コアバック部側における幅が、反コアバック部側における幅よりも広くなるように傾斜して形成されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1項において、
前記コアバック部と前記ティース部は、異なる材料で形成されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項6】
請求項
1において、
前記コアバック部と前記ティース部は、積層方向が異なることを特徴とするリニアモータ。
【請求項7】
請求項
6において、
前記ティース部の前記磁石と対向する位置には、前記可動子の移動方向に張り出したティーストップ部を備えたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れか1項に記載のリニアモータと、
前記固定子または前記可動子を付勢する弾性体と、を有することを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項9】
請求項
8において、
前記弾性体は、金属製の巻バネであることを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項10】
請求項
8又は
9において、
前記巻線に交流電流を供給するインバータと、
前記巻線に流れる電流を検出する電流検出器と、
前記電流検出器によって検出される電流に基づいて前記インバータを制御して前記リニアモータの推力を調整する推力調整部と、を備えることを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項11】
衣類を収容する洗濯槽と、
前記洗濯槽を内包する外槽と、
前記洗濯槽を回転させる駆動機構と
、を備える洗濯機であって、
前記洗濯機の振動を抑制する電磁サスペンションを備え、
前記電磁サスペンションは請求項
8乃至請求項
10の何れかを備えたことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ、電磁サスペンションおよび洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
直線運動する電機としてリニアモータやリニアアクチュエータ(以下、総称してリニアモータと称する)が知られている。リニアモータは、回転機を直線状に切り開いた構造を有しており、固定子と可動子の各々に構成された磁極の間に働く磁力によって、可動子に推力を発生させる。また、リニアモータを電磁サスペンションとして活用する検討も進められている。例えば、特許文献1は洗濯機用のサスペンションとして、リニアモータを有する電磁サスペンションを適用する技術が記載されている。また、特許文献2はリニアモータの巻線性を改善するために、分割コアを活用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-54166号公報
【文献】特開2000-116105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータおよび電磁サスペンションで洗濯機の制振性を確保するには、リニアモータおよび電磁サスペンション自体の加振力に加え、制振対象物である洗濯機からの過大な外力に耐える強度・構造が必要である。一例として、電磁鋼板の積層体からなる固定子鉄心は、長期間の振動により積層体の一部が剥離することがある。また剥離したまま運転を続けると、例えばティースでは電磁鋼板の剥離した尖った部位が、樹脂製のボビンや巻線被膜を破壊し絶縁破壊に至ることがあった。
【0005】
特許文献1には、洗濯機用のサスペンションとして、リニアモータを有する電磁サスペンションを適用する技術が開示されているが、外力を受けた際の対応については考慮されていなかった。
【0006】
また、特許文献2には、リニアモータのアウターヨークを分割し、コイル巻線は予め巻線加工または機械で直接コアに整列巻を施し、コイル占積率を向上する技術が開示されているが、外力を受けた際の対応については考慮されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、前記課題を解決するためになされたものであり、リニアモータおよび電磁サスペンション自体の加振力に加え、制振対象物である洗濯機等からの外力に耐える構造を備えた、リニアモータ、電磁サスペンションおよび洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のリニアモータは、固定子鉄心と巻線とを備えた固定子と、前記固定子と対向する面に磁石を備え、前記固定子に対し相対的に移動する可動子を備えたリニアモータであって、前記固定子鉄心は、コアバック部と、前記磁石に対向すると共に前記巻線を備えるティース部とを備え、
前記ティース部は、前記可動子の移動方向であって前記コアバック部との対向位置に空隙を設けて配置すると共に、弾性材料で構成された留具を用いて前記コアバック部に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リニアモータおよび電磁サスペンション自体の加振力に加え、制振対象物である洗濯機等からの外力に耐える構造を備えたリニアモータ、電磁サスペンションおよび洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るリニアモータの断面斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る可動子および支持機構部を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るリニアモータの斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV線の模式的な矢視断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る可動子の分解斜視図である。
【
図6A】第1実施形態に係るリニアモータが第1の位置(状態P1)にある動作説明図である。
【
図6B】第1実施形態に係るリニアモータが第2の位置(状態P2)にある動作説明図である。
【
図6C】第1実施形態に係るリニアモータが第3の位置(状態P3)にある動作説明図である。
【
図7】従来のリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。
【
図8】第1実施形態に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。
【
図9】第1実施形態に係るリニアモータの固定子の完成模式図である。
【
図10A】変形例1に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。
【
図10B】変形例2に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。
【
図10C】変形例3に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。
【
図11】第2実施形態に係る電磁サスペンションの斜視図である。
【
図12】第3実施形態に係る洗濯機の斜視図である。
【
図13】第3実施形態による洗濯機の縦断面図である。
【
図14】第3実施形態に適用される制振装置の構成図である。
【
図15】第3実施形態に適用される制振装置の要部の構成図である。
【
図16】第3実施形態の長期寿命試験後における比較例のリニアモータのコアと巻線の状態を示す模式図である。
【
図17】第3実施形態の長期寿命試験後における本発明のリニアモータのコアと巻線の状態を示す模式図である。
【
図18】比較例における外槽の回転速度と洗濯機の変位を示す図である。
【
図19】本発明における外槽の回転速度と洗濯機の変位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0012】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図1は、第1実施形態に係るリニアモータの断面斜視図である。なお、リニアモータ10は、例えば後述する他の実施形態の電磁サスペンション100(
図11参照)に適用され、電磁サスペンション100は、例えば洗濯機W(
図12参照)の振動を抑制するために適用される。
【0013】
以下、リニアモータを第1実施形態、電磁サスペンションを第2実施形態、洗濯機の制振システムを第3実施形態として述べる。
【0014】
図1の符号x,y,zに示すように、x軸,y軸,z軸を定める(z軸はリニアモータの進行方向)。
図1は、リニアモータ10の外観を俯瞰するとともに、その1/4をカットし内部構造を図示している。
【0015】
リニアモータ10は、フレーム(例えば、シャフト固定金具23)間を繋ぐ対向する一対のシャフト21と、電機子鉄心と電機子巻線とを有する固定子11と、フレーム間に固定され、固定子11に対向する第1の面(例えば、
図5の表面122f)と第2の面(例えば、
図5の裏面122r)とを有する磁石または磁性体を有し、固定子11に対し相対的に移動する可動子12と、を有するリニアモータ10と、シャフトに装着され、フレームの一方と固定子11の腕(軸受け22)とで縮接されている弾性体20と、を備える。
【0016】
リニアモータ10の可動子12と、推進方向に対して(図中z軸方向)に対して並行な位置に、2本のシャフト21、2個の弾性体20がある。シャフト21は弾性体20を貫通している。またシャフト21はリニアモータ10の固定子11と軸受け22を介して可動子12の移動方向に摺動する。本実施形態では軸受け22として金属表面に潤滑加工したすべり軸受けを用いている。
【0017】
図2は、第1実施形態に係る可動子および支持機構部を示す斜視図である。シャフト固定金具23と、シャフト固定金具23間を繋ぐ対向する一対のシャフト21からなる口型構造の支持機構部内に可動子12が備えられている。つまりシャフト固定金具23とシャフト21は、可動子12単体よりも広くて厚い面構造を形成している。
【0018】
図3は、第1実施形態に係るリニアモータの斜視図である。
図3は、リニアモータ10の外観を俯瞰するとともに、その1/4をカットし内部構造を図示している。リニアモータ10は、電機子である固定子11と、z軸方向に延在する板状の可動子12と、を備えている。
【0019】
固定子11は、z軸方向に沿った略角柱に形成され、その中空部分に矩形平板状の可動子12が遊挿されている。そして、リニアモータ10は、固定子11と可動子12との間に働く磁気的な吸引力・反発力、すなわち推力によって、固定子11と可動子12との相対位置をz軸方向に変化させる。リニアモータ10を電磁サスペンション100に適用する場合には、固定子11または可動子12が、制振対象物Dt(
図11参照)に結合される。
図1に示す例においては、洗濯機Wの外槽37(
図12参照)が制振対象物Dtであり、固定子11または可動子12が外槽37に結合されている。ここでは、洗濯機Wの外槽37が制振対象物Dtと記しているが、洗濯機の構造が変われば接続先は変更される。つまり洗濯機Wの制振効果を高めるように、洗濯機Wの構成部品と任意に接続すればよい。
【0020】
固定子11は、コア11a(電機子鉄心)と、巻線11b(電機子巻線)と、を備えている。コア11aは、電磁鋼板をz軸方向に積層したものでありカシメや溶接で一体化している。またコア11aは、z軸方向に沿って隣接し可動子12に向かって突出するティース部11a2(第1ティース部11a21)を備えている(
図4)。さらにコア11aは、可動子12を挟んで第1ティース部11a21に対向する位置に、z軸方向に沿って隣接し可動子12に向かって突出する第2ティース部11a22と、を備えている(
図4)。
【0021】
巻線11bは、これら第1ティース部11a21と第2ティース部11a22に巻回されている。図示はしないが巻線11bと第1ティース部11a21と、第2ティース部11a22の間にはボビン・絶縁樹脂・絶縁紙など既知の絶縁処理が施されている。また、可動子12は、非磁性材料のフレーム122と、フレーム122に嵌め込まれた磁石124(磁石124a,124b)と、を備えている。
【0022】
図4は、
図3のIV-IV線の模式的な矢視断面図である。但し、
図1においてカットされた1/4の部分は
図4ではカットされていない。
図4に示すように、固定子11のコア11aは、環状のコアバック部11a1と、ティース部11a2と、を備えている。ティース部11a2は、第1ティース部11a21と第2ティース部11a22から構成されている。ティース部11a2(第1ティース部11a21,第2ティース部11a22)は、磁石124に対向すると共に巻線11bを備えている。
【0023】
コア11aは、y-z面視において環状すなわち略矩形枠状の形状を有しており、この環状部によって磁気回路が構成されている。一対のティース部11a2(第1ティース部11a21と第2ティース部11a22)は、環状のコアバック部11a1からy軸方向に沿って内側に延びており、相互に対向している。さらに、コアバック部11a1と第1ティース部11a21を接続するy軸上に空隙S1が備えられており、コアバック部11a1と第2ティース部11a22を接続するy軸上に空隙S2が備えられている。
【0024】
実線矢印で示す磁束ΦAは、可動子12によって生じる磁束である。第1ティース部11a21と第2ティース部11a22には、それぞれ、巻線11bが巻回されている。巻線11bには、インバータ(例えば後述する
図14のインバータ40等)が接続される。そして、このインバータ40によって巻線11bに通電されると、固定子11が電磁石として機能する。
【0025】
磁束ΦAは、磁路が最短となる様にコア11a内を周回する。ここで、
図4に示す固定子11の破線で囲んだ空隙S1に着目すると、磁束ΦAは左右に分流して左右のコアバック部11a1へ流れており、磁束ΦAの周回を妨げない(磁気抵抗は増加しない)。同様に2点破線で囲んだ空隙S2は、左右に分流した磁束AΦの合流よりも図中の下方にあるため、磁気抵抗は増加しない。
【0026】
本発明の特徴は、磁気抵抗の上昇(モータ特性の低下)を招くことなく、固定子11をなすコア11aの、コアバック部11a1とティース部11a2の間に空隙S(S1,S2)を設けたことである。この空隙Sは部品の組立誤差の干渉帯として、外力からの力の干渉帯または伝達系の縁切りとして用いる。ただし、磁路は縁切りしていない。空隙S(S1,S2)の形成方法については後述する。
【0027】
第1実施形態の説明では、空隙S(S1,S2)を上下対象の1対の台形として説明したが、丸、三角、四角などいかなる幾何学模様でもよく、1対でなく複数対でも構わない。モータの要求仕様に合わせ、磁石→第1ティース→コアバック→第2ティース→磁石と、周回する磁気回路の抵抗を増加させないよう、y-z平面の任意の場所にモータ特性を低下させないよう、配置すればよい。例えばテーパ加工した部品を組み合わせた公差も空隙Sであり、後から開けた穴加工も空隙Sである。
【0028】
図5は、第1実施形態に係る可動子の分解斜視図である。
図3に示したように、可動子12は、フレーム122と、2つの磁石124a,124bと、を備えている。フレーム122は、非磁性材料を矩形枠状に形成したものである。そして、フレーム122には、表面122f(第1の面)および裏面122r(第2の面)を貫通する、矩形の貫通孔122hが形成されている。
【0029】
また、リニアモータ10の応答性を高めるためには、可動子12は軽量であることが望ましい。そこでフレーム122を構成する非磁性材料には、プラスチックやアルミニウム等の軽量材料を適用することが考えられる。また、炭素繊維強化プラスチック等、軽量で強度の高い複合材を適用してもよい。すなわち、フレーム122の材質は、リニアモータ10の要求強度や仕様に応じて、任意に選択するとよい。
【0030】
また、2つの磁石124a,124bは、y軸方向に磁極が反転するように交互に配列している。磁石124がフレーム122に嵌め込まれると、貫通孔122hの表面122f側(
図5における上面)の磁石124aはN極、磁石124bはS極となっている。また、貫通孔122hの裏面122r側(
図5における底面)の磁石124aはS極、磁石124bはN極となっている。
【0031】
次にリニアモータ10の動作について説明する。
【0032】
図6A、
図6B、
図6Cは、第1実施形態によるリニアモータ10の動作説明図である。
図6は紙面右方向を重力方向として示している。
図6Aは、第1実施形態に係るリニアモータが第1の位置(状態P1)にある動作説明図である。
図6Bは、第1実施形態に係るリニアモータが第2の位置(状態P2)にある動作説明図である。
図6Cは、第1実施形態に係るリニアモータが第3の位置(状態P3)にある動作説明図である。
【0033】
固定子11は、前述したように、コア11a(電機子鉄心)と、巻線11b(電機子巻線)と、を備えている。コア11aは、コアバック部11a1と、ティース部11a2と、ティース部11a2の磁石と対向する位置の端面であるティーストップ部11a3からなる。
【0034】
図6A、
図6B、
図6Cに示す状態P1(第1の位置)、状態P2(第2の位置)、状態P3(第3の位置)は、固定子11と可動子12との相対的な位置関係が、それぞれ異なっている。また、
図6A、
図6B、
図6Cにおいて、実線の太矢印は、磁石124が発生する磁束の向きを示しており、破線の太矢印は、固定子11が発生する磁束の向きを示している。状態P1~P3のいずれにおいても、第1ティース部11a21はフレーム122の表面122fに対向し、第2ティース部11a22はフレーム122の裏面122rに対向している。第1ティース部11a21は、磁石124と対向する位置に第1ティーストップ部11a31を備えており、第2ティース部11a22は、磁石124と対向する位置に第2ティーストップ部11a32を備えている。
【0035】
図6Aの状態P1において、巻線11bは通電されていないため、固定子11は磁束を発生していない。そして、z軸方向における固定子11の中心(符号なし)と、可動子12の中心(符号なし)とが一致している。また、巻線11bに電流を流すと、電流の方向に応じて、ティース部11a2(第1ティース部11a21と第2ティース部11a22)を磁化させることができる。状態P1において、状態P2に示している「N」,「S」の記号と同様に、第1ティース部11a21をN極に磁化させ、第2ティース部11a22をS極に磁化させると、磁石124aは第1ティース部11a21(第1ティーストップ部11a31),第2ティース部11a22(第2ティーストップ部11a32)に反発され、磁石124bは第1ティース部11a21(第1ティーストップ部11a31),第2ティース部11a22(第2ティーストップ部11a32)に吸引される。
【0036】
このように、固定子11と可動子12との間に働く吸引力・反発力によって、固定子11および可動子12には、z軸方向に沿って相対的に推力が働く。なお、「推力」とは、可動子12と固定子11との相対位置を変化させる力である。このため、例えば状態P2に示すように、可動子12は、固定子11に対してz軸プラス方向(
図6B上では左方向)に相対的に付勢され移動する。
【0037】
逆に、状態P1において、状態P3に示している「N」,「S」の記号と同様に、第1ティース部11a21をS極に磁化させ、第2ティース部11a22をN極に磁化させると、磁石124aは第1ティース部11a21(第1ティーストップ部11a31),第2ティース部11a22(第2ティーストップ部11a32)に吸引され、磁石124bは第1ティース部11a21(第1ティーストップ部11a31),第2ティース部11a22(第2ティーストップ部11a32)に反発される。このため、例えば状態P3に示すように、可動子12は、固定子11に対してz軸マイナス方向(図上では右方向)に相対的に付勢され移動する。
【0038】
図7は、従来のリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。リニアモータ10のコア11aを成型する場合、コアバック部11a1と、ティース部11a2を電磁鋼板よりx-y平面で一体プレス成型し、z軸方向に積層し、コア11aを得る。次に、予め加工した巻線11bをティース部11a2に嵌合する。以下、同様に巻線11bを備えるコア11aを2つ準備し、上下(図中y軸方向)に組み合わせ、第1ティース部11a21,第2ティース部11a22を得る。以下、同様に巻線11bを備えるコア11aを必要個数備し、モータ仕様に合わせ上下(図中y軸方向)に組み合わせリニアモータ10を得る。
【0039】
前述したように、リニアモータ10のシャフト21はリニアモータ10の固定子11と軸受け22を介して可動子12の移動方向に摺動する。つまり、リニアモータや電磁サスペンション自体の加振力や、洗濯機からの過大な反力により、全ての構成部品は振動している。
【0040】
ここでモータ、電磁サスペンション、およびこれらを用いた制振システムを製品化するには、性能が製品仕様を満たすことは当然であるが、品質保証も需要である。特に洗濯機などの白物家電は長期運転後でも各国の法令・規則を満足する品質を担保する必要がある。
【0041】
図7に示した従来例は長期品質試験において、振動によりティース部11a2と嵌合した巻線11bの絶縁が劣化し、長期使用時の品質を担保できない恐れがあることがわかった。詳細は後述する。
【0042】
図8は、第1実施形態に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。第1実施形態のリニアモータのコア11aは分割構造としている。以下の説明では第1ティース部11a21,第2ティース部11a22は同じ構成であるのでこれらを総称してティース部11a2と称する。コアバック部11a1は電磁鋼板をx-y平面でプレス加工し、z軸方向に積層し、門型構造で一体化する。このことで従来に比べ機械強度は大幅に向上している。コアバック部11a1の中央部には、空隙Sを形成するためにコアバック部11a1の一部が切欠かれた凹部111が形成されている。凹部111は、第1ティース部11a21及び第2ティース部11a22に対応するように複数(第1実施形態では2つ)形成されている。凹部111は、y軸方向においてティース部11a2(第1ティース部11a21,第2ティース部11a22)側から反ティース部側に向かって切欠かれて形成され、凹部111のティース部11a2側の開口入口部分におけるx軸方向(可動子の移動方向と直交する方向)の幅が、凹部111の奥側(反ティース部側)におけるx軸方向の幅よりも狭くなるように傾斜して形成されている。
【0043】
さらにティース部11a2は電磁鋼板をx-y平面で一体プレス加工し、z軸方向に積層する。ティース部11a2のコアバック部11a1側には、コアバック部11a1の凹部111に嵌合する凸部112が形成され、凸部112には凹部111の形状に合わせて傾斜部112aが形成されている。傾斜部112aは、コアバック部11a1側におけるx軸方向の幅が、反コアバック部側(ティース部側)におけるx軸方向の幅よりも広くなるように傾斜して形成されている。凹部111には、第1ティース部11a21,第2ティース部11a22のそれぞれに形成した凸部112が嵌合する。
【0044】
プレス加工で得られたティース部11a2の積層体には、予め加工した巻線11bを嵌合する。または巻線機を用いて、得られたティース部11a2の積層体に直接巻線加工を行う。最後に、巻線11bを備えたティース部11a2の積層体を、コアバック部11a1の積層体に空隙S(S1)をあけて嵌合する。すなわち、ティース部11a2は、コアバック部11a1との対向位置に空隙を設けて配置している。ティース部11a2の積層体とコアバック部11a1の積層体の嵌合にあたっては、ティース部11a2の凸部112をz軸方向からコアバック部11a1の凹部111に挿入する。
【0045】
図9は、第1実施形態に係るリニアモータの固定子の完成模式図である。実際には固定子11はコア11aにネジなどで固定するが、
図9では説明のためにネジを止める前の状態を図示している。
【0046】
本発明ではコアバック部11a1とティース部11a2の嵌合部に空隙S(S1,S2)を有することを特徴としている。その位置は
図4に示す位置である空隙S1,S2となる。またコアバック部11a1とティース部11a2の固定には、リニアモータ10の推進方向(z軸方向)に配置した留具11cで固定している。留具11cには金属板・樹脂板などの弾性材料を用いることが望ましい。これは、過剰な外力が加わった際に留具11cが弾性変形することで、コアバック部11a1の積層体と、巻線11bを備えたティース部11a2の積層体の変形を防止する観点からである。なお、留具11cは、
図8のように、コアバック部11a1の凹部111とティース部11a2の凸部112を覆うように形成して固定してもよく、またコアバック部11a1の形状に合わせた門型形状とし全面を固定するようにしてもよく、任意に設計すればよい。留具11cは、本発明の実施において必須の構成ではなく、必要に応じて適宜採用すれば良い。
【0047】
図10Aは、変形例1に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。リニアモータのコア11aとティース部11a2は分割構造としている。以下の説明では第1ティース部11a21,第2ティース部11a22は同じ構成であるのでこれらを総称してティース部11a2と称する。同様に、第1ティーストップ部11a31,第2ティーストップ部11a32は同じ構成であるのでこれらを総称してティーストップ部11a3と称する。
【0048】
コアバック部11a1は、電磁鋼板をx-y平面でプレス加工し、z軸方向に積層する。コアバック部11a1の中央部には、空隙Sを形成するための凹部113が形成されている。凹部113は、y軸方向においてティース部11a2側から反ティース側に向かって切欠かれて形成されている。変形例の凹部113は、凹部113のティース部11a2側の開口入口部分におけるx軸方向幅と、凹部113の奥側(反ティース側)におけるx軸方向幅が等しくなるように形成されている。
【0049】
ティース部11a2と、ティーストップ部11a3は電磁鋼板をy-z平面で一体プレス加工し、x軸方向に積層する。得られたティース部11a2の積層体には、予め加工した巻線11bを嵌合する。または巻線機を用いて、得られたティース部11a2の積層体に直接巻線加工を行う。最後に、巻線11bを備えたティース部11a2とティーストップ部11a3の積層体を、コアバック部11a1の積層体に空隙S(S1)をあけて嵌合する。すなわち、ティース部11a2は、コアバック部11a1との対向位置に空隙を設けて配置している。ティーストップ部11a3はz軸方向(可動子12の移動方向)に張り出して形成されている。
【0050】
ティース部11a2の積層体とコアバック部11a1の積層体の嵌合にあたっては、ティース部11a2の凸部114をy軸方向からコアバック部11a1の凹部113に挿入する。そして、コアバック部11a1の積層体に空隙S(S1)をあけてティース部11a2の凸部114を嵌合した状態で、可動子12の移動方向、すなわち(z軸方向)に配置した留具11cで固定する。固定にあたっては、留具11cからネジを挿入し、コア11aに螺合する。
【0051】
変形例1(
図10A)において第1実施形態(
図9)と異なるところは、ティーストップ部11a3の有無、コアバック部11a1の凹部113とティース部11a2の凸部114との形状、及びティース部11a2の積層体の積層方向とコアバック部11a1の積層体の積層方向が異なる点にある。
【0052】
変形例1(
図10A)では、ストローク長を大きくする場合、プレス加工の際に、y-z平面においてティーストップ部11a3のみをz軸方向に張出したプレス加工を施せばよい。この方法で得られた積層体は、ストローク長(=ティーストップ部11a3)は大きいが、ティース部11a2の周長はそのままのサイズである。よって、巻線コイルの使用量は増加しない。
【0053】
さらに、従来はコア11aよりも巻線11bがx軸方向、z軸方向に飛び出しているが、本実施形態の巻線11bのz軸方向は、ティース部11a2のz軸方向に内包することが可能となる。つまり、ティーストップ部11a3のy軸方向の空隙を巻線スペースとして活用でき、コイルエンドのはみ出しを抑制することができる。
【0054】
図10Bは、変形例2に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。リニアモータのコア11aとティース部11a2は分割構造としている。コアバック部11a1は
図8及び
図9と同じであり、電磁鋼板をx-y平面でプレス加工し、z軸方向に積層する。次にティース部11a2と、ティーストップ部11a3も電磁鋼板をx-y平面で一体プレス加工し、z軸方向に積層する。得られた積層体に、予め加工した巻線11bをティース部11a2に嵌合する。または巻線機を用いて、ティース部11a2に直接巻線加工を行う。最後に、巻線11bを備えたティース部11a2とティーストップ部11a3の積層体を、コアバック部11a1の積層体に空隙S(S1)をあけて嵌合する。すなわち、ティース部11a2は、コアバック部11a1との対向位置に空隙を設けて配置している。ティーストップ部11a3はx軸方向(可動子12の移動方向に対して直交方向)に張り出して形成されている。
【0055】
ティース部11a2の積層体とコアバック部11a1の積層体の嵌合にあたっては、ティース部11a2の凸部114をz軸方向からコアバック部11a1の凹部113に挿入する。そして、コアバック部11a1の積層体に空隙S(S1)をあけてティース部11a2の凸部114を嵌合した状態で、可動子12の移動方向、すなわちリニアモータ10の推進方向(z軸方向)に配置した留具11cで固定する。固定にあたっては、留具11cからねじを挿入し、コア11aに螺合する。
【0056】
第1実施形態(
図8,
図9)と変形例2(
図10B)の差異は、ティーストップ部11a3の有無である。
【0057】
変形例2(
図10B)では、リニアモータの推力を増加させたい場合、プレス加工の際に、x-y平面においてティーストップ部11a3のみをx軸方向に張出したプレス加工を施せばよい。この方法で得られた積層体は、磁石の対抗面積(=ティーストップ部11a3)は大きいが、ティース部11a2の周長はそのままのサイズである。よって、巻線コイルの使用量は増加しない。巻線が長くなると抵抗が大きくなりジュール損(銅損)が増える。モータの効率は、(出力)/(入力)×100(%)で示される。前式は(入力)=(出力)+(損失)×100とも書き換えられ、損失(銅損)の増加なく出力が向上すれば高効率モータとなる。
【0058】
図10Cは、変形例3に係るリニアモータのコアの組立と巻線方法の模式図である。リニアモータのコア11aとティース部11a2は分割構造としている。以下の説明では第1ティース部11a21,第2ティース部11a22は同じ構成であるのでこれらを総称してティース部11a2と称する。同様に、第1ティーストップ部11a31,第2ティーストップ部11a32は同じ構成であるのでこれらを総称してティーストップ部11a3と称する。
【0059】
コアバック部11a1は
図8及び
図9と同じであり、電磁鋼板をx-y平面でプレス加工し、z軸方向に積層する。ティース部11a2と、ティーストップ部11a3は、所謂、鋳物を用いている。すなわち、コアバック部11a1とティース部11a2(ティーストップ部11a3)とは、異なる材料で形成されている。
【0060】
ティーストップ部11a3はティース部11a2に比べ、x軸方向(可動子12の移動方向に対して直交方向)と、z軸方向(可動子12の移動方向)に張出している。
【0061】
以下、前記同様にティース部11a2に巻線11bを挿入し、巻線11bを備えたティース部11a2とティーストップ部11a3の鋳物を、コアバック部11a1の積層体に空隙S(S1)をあけて嵌合する。すなわち、ティース部11a2は、コアバック部11a1との対向位置に空隙を設けて配置している。ティース部11a2の積層体とコアバック部11a1の積層体の嵌合にあたっては、ティース部11a2の凸部112をz軸方向からコアバック部11a1の凹部111に挿入する。そして、コアバック部11a1の積層体に空隙S(S1)をあけてティース部11a2の凸部112を嵌合した状態で、可動子12の移動方向、すなわちリニアモータ10の推進方向(z軸方向)に配置した留具11cで固定する。固定にあたっては、留具11cからねじを挿入し、コア11aに螺合する。
【0062】
これにより磁石124とティーストップ部11a3との対向面積を拡大可能である。よって、リニアモータ10の体格を大きくすることなく、大推力化が可能である。ここでは、x軸方向とz軸方向の両方に張出し加工できる鋳物を用いたが、他に圧粉磁芯なども適用可能である。材質や加工方法については設計者が適宜選択すればよい。
【0063】
さらに、本発明のコア11aは、コアバック部11a1は機械強度の大きな材料、ティース部11a2と、ティーストップ部11a3は磁気特性に優れた材料のように、使用目的に応じた材料を組合せることも可能である。
〈第1実施形態の効果〉
以上のように本実施形態のリニアモータ10によれば、コアバック部11a1とティース部11a2の間には、磁気抵抗が増加しない場所に空隙Sを介し接続している。この構造によりコアバック部11a1とティース部11a2のそれぞれの振動は縁切りされている。また、コアバック部11a1とティース部11a2はz軸方向に配置した留具11cで固定さており、コアバック部11a1とティース部11a2は外力によって外れることはない。さらに、洗濯機Wからリニアモータへ過剰な外力が加わった際は、弾性材料からなる留具11cが塑性変形することで、コアバック部11a1,ティース部11a2,ティーストップ部11a3は変形しない。
【0064】
さらに、コアバック部11a1とティース部11a2とが別部品となることで、1体構造では両立できなかった次のような設計が可能となる。コアバック部11a1は門型構造とすることで強度アップを図ることができる。また、ティース部11a2またはティーストップ部11a3はモータ特性の向上に注力し、必要に応じz軸方向に張出しストローク長を拡大することができる。またティーストップ部11a3をx軸方向に張出すことで、推力を向上することができる。さらにティーストップ部11a3をx軸とz軸の両方に張出すことで、リニアモータの効率を改善することができる。さらにまた、コアバック部11a1とティース部11a2の材料は異種材料の組み合わせに変更することができる。これにより、モータ特性の改善、機械強度の改善をはかることができる。
[第2実施形態]
〈第2実施形態の構成〉
図11は、第2実施形態に係る電磁サスペンションの斜視図である。なお、以下の説明において、前述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0065】
電磁サスペンション100は、第1実施形態によるリニアモータ10と、弾性体20と、を備えている。そして、リニアモータ10の可動子12の一端は、制振対象物に結合される。ここで、制振対象物とは、電磁サスペンション100によって振動を抑制しようとする対象物であり、図示の例において制振対象物は、洗濯機W(
図12参照)の外槽37である。
【0066】
また、リニアモータ10の固定子11は、他の固定治具(図示せず)によって、その移動が規制されている。従って、洗濯機の外槽37がz軸方向に振動すると、それに伴って可動子12がz軸方向に沿って往復し、可動子12と固定子11との相対的な位置関係が変化する。
【0067】
また、本実施形態においては、弾性体20として金属製の巻バネを適用した。ここで、弾性体20は、固定子11に弾性力を付与するものであり、固定子11とシャフト固定金具23との間に介在している。
図11に示すように、可動子12は、固定子11を貫通するとともに、弾性体20も貫通している。
【0068】
弾性体20は、リニアモータ10の非通電状態においても、外槽37を洗濯機内の所定の位置に保持できるバネ力を備えている。これにより、万が一、制御ミスにより可動子12がz軸上方に突き抜けかけた場合においても、外槽37の自重と、弾性体20のバネ力により、可動子12を押し戻す力が働く。同様に可動子12がz軸下方に突き抜けかけた場合は、弾性体20のバネ力により、押し戻される。すなわち、弾性体20が制御のフェールセーフ性を確保し、可動子12の両端にストッパーのような部材を配置することなく、ロバスト性を高めることができる。
【0069】
なお、本実施形態では電磁サスペンション2本を適用した事例を示したが、本数は何本でも構わない。また、電磁サスペンションのみで指示した事例であるが、油圧サスペンション1本と、電磁サスペンション1本の組み合わせやとしても問題ない。さらには、油圧ダンパ以外の減衰力を有するアクチュエータと組み合わせても問題ない。
〈第2実施形態の効果〉
以上のように、本実施形態の電磁サスペンション100は、第1実施形態によるリニアモータ10と、固定子11または可動子12を移動方向(z軸方向)に付勢する弾性体20と、を有する。特に、弾性体20は、金属製の巻バネを含む。これにより、リニアモータ10の非通電状態においても、リニアモータ10を所定の位置に保持でき、リニアモータ10の動作時においても、可動子12の突き抜けを防止することができる。
[第3実施形態]
〈第3実施形態の構成〉
(全体構成)
図12は、第3実施形態に係る洗濯機の斜視図である。
図12に示す洗濯機Wは、ドラム式の洗濯機であり、また、衣類を乾燥する機能も有している。洗濯機Wは、ベース31と、筐体32と、ドア33と、操作・表示パネル34と、外槽37と、一対の電磁サスペンション100L,100Rと、排水ホースHと、を備えている。ここで、電磁サスペンション100L,100Rは、それぞれ第2実施形態における電磁サスペンション100と同様に構成されている。
【0070】
筐体32は、左右の側板32a,32aと、前面カバー32bと、背面カバー32c(
図13参照)と、上面カバー32dと、を備えている。ベース31は、筐体32を支持するものである。前面カバー32bの中央付近には、衣類の出し入れを行うための円形の投入口h1(
図13参照)が形成されている。ドア33は、この投入口h1に設けられる開閉可能な蓋である。
【0071】
図13は、第3実施形態による洗濯機の縦断面図である。洗濯機Wは、前述した構成の他に、洗濯槽35と、リフタ36と、駆動機構38と、送風ユニット39と、を備えている。洗濯槽35は、衣類を収容するものであり、有底円筒状を呈している。洗濯槽35は、外槽37に内包され、この外槽37と同軸上で回転可能に軸支されている。洗濯槽35の周壁および底壁には、通水・通風のための貫通孔(図示せず)が多数設けられている。また、洗濯槽35の開口h2は、外槽37の開口h3とともに、閉状態のドア33に臨んでいる。
【0072】
なお、
図13に示す例において洗濯槽35の回転中心軸は、開口側が高くなるように傾斜しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。すなわち、洗濯槽35の回転中心軸は、水平方向または鉛直方向であってもよい。リフタ36は、洗濯中・乾燥中に衣類を持ち上げて落下させるものであり、洗濯槽35の内周壁に設置されている。外槽37は、洗濯水の貯留等を行うものであり、有底円筒状を呈している。
図13に示すように、外槽37は、洗濯槽35を内包している。
【0073】
また、
図12に示したように、外槽37の左右には、電磁サスペンション100L,100Rが配置されているが、
図11においては、左側の電磁サスペンション100Lのみを示している。また、外槽37の底壁の最下部には排水孔(図示せず)が設けられ、この排水孔に排水ホースHが接続されている。そして、排水ホースHに設けられた排水弁(図示せず)が閉弁された状態で外槽37に洗濯水が貯留され、また、排水弁が開弁されることで洗濯水が排出されるようになっている。
【0074】
駆動機構38は、洗濯槽35を回転させる機構であり、外槽37の底壁の外側に設置されている。駆動機構38が備えるモータ38b(
図15参照)の回転軸は、外槽37の底壁を貫通して、洗濯槽35の底壁に連結されている。送風ユニット39は、洗濯槽35に温風を送り込むものであり、洗濯槽35の上側に配置されている。送風ユニット39は、ヒータ(図示せず)およびファン(図示せず)を備えている。そして、ヒータで熱せられた空気が、ファンによって洗濯槽35に送り込まれる。これによって、水を含んだ衣類が、洗濯槽35内で徐々に乾燥する。
【0075】
ここで、外槽37の振動、すなわち洗濯機Wの振動について簡単に説明する。洗い・すすぎ・乾燥時には、
図13に示す駆動機構38によって洗濯槽35が低速回転し、洗濯槽35の底に溜まった衣類をリフタ36によって持ち上げて落下させるタンブリング動作が繰り返される。また、脱水時には洗濯槽35が高速回転し、回転による遠心力で衣類の水分を外に押し出す遠心脱水が行われる。
【0076】
なお、従来の洗濯機では、洗い・すすぎ・乾燥時において、落下する衣類の反力で洗濯槽35の振動の振幅が大きくなることが多かった。また、従来の洗濯機では、脱水時において、衣類の位置の偏りに起因して、洗濯機Wで振動・騒音が発生することが多かった。このように、洗濯槽35における衣類の量や位置の偏り、含水率の他、洗い・すすぎ・乾燥・脱水等の諸条件によって、洗濯機Wの振動の仕方は時々刻々と変化する。その振動は外槽37に伝播する。
(制振装置200の構成)
図14は、第3実施形態に適用される制振装置の構成図である。
図14において制振装置200は、インバータ40と、電流検出器50と、推力調整部60と、整流回路70と、左右の電磁サスペンション100L,100Rと、を備えている。制振装置200は、制振対象物Gの振動を抑制するものである。なお、本実施形態においては、制振対象物Gは、洗濯機Wの外槽37(
図12参照)である。
【0077】
図14においては、左右の電磁サスペンション100L,100Rを一つの枠で表している。また、電磁サスペンション100L,100Rに含まれるリニアモータ10を、それぞれリニアモータ10L,10Rと呼ぶ。同様に、電磁サスペンション100L,100Rに含まれる弾性体20を、弾性体20L,20Rと呼ぶ。
【0078】
整流回路70は、交流電源Eによって印加された交流電圧を整流し、インバータ40に直流電圧を印加する。なお、交流電源Eと整流回路70とを合わせて直流電源であると考えてもよい。インバータ40は、整流回路70から印加される直流電圧を、推力調整部60からの電圧指令V*に基づいて単相交流電圧に変換し、この単相交流電圧をリニアモータ10L,10Rの巻線11b(
図2参照)に印加する。換言すれば、インバータ40は、電圧指令V*に基づいて、リニアモータ10L,10Rを駆動する機能を有している。
【0079】
図15は、第3実施形態に適用される制振装置の要部の構成図である。整流回路70は、交流電源Eから印加される交流電圧を直流電圧に変換する周知の倍電圧整流回路である。
図15に示すように、整流回路70は、ダイオードD1~D4をブリッジ接続してなるダイオードブリッジ回路72と、直列接続された2つの平滑コンデンサ74,76と、を備えている。また、
図13に示した駆動機構38は、
図15に示すように、インバータ38aと、モータ38bと、を備えている。
【0080】
そして、ダイオードブリッジ回路72によって生成される電圧(脈流を含む直流電圧)が、平滑コンデンサ74,76によって平滑化され、交流電源Eの電圧の略2倍に相当する直流電圧が生成される。整流回路70は、正側の配線k1と、負側の配線k2を介してインバータ40に接続されるとともに、洗濯槽35(
図13参照)を回転させる駆動機構38のインバータ38aにも接続されている。
【0081】
インバータ40は、整流回路70から印加される直流電圧を二系統の単相交流電圧に変換し、これら二系統の単相交流電圧を各々リニアモータ10L,10Rの巻線11b(
図2参照)に印加するインバータである。
【0082】
図15に示すように、インバータ40は、スイッチング素子SW1,SW2を備える第1のレグと、スイッチング素子SW3,SW4を備える第2のレグと、スイッチング素子SW5,SW6を備える第3のレグと、が並列接続された構成になっている。これらのスイッチング素子SW1~SW6として、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。スイッチング素子SW1~SW6には、それぞれ、還流ダイオードDが逆並列に接続されている。
【0083】
また、スイッチング素子SW1,SW2の接続点は、配線k3を介して、リニアモータ10Lの巻線11b(
図2参照)に接続されている。すなわち、三相のインバータ40の一相分に対応するレグが、左側のリニアモータ10Lに接続されている。また、スイッチング素子SW5,SW6の接続点は、配線k5を介して、リニアモータ10Rの巻線11b(
図2参照)に接続されている。すなわち、三相のインバータ40の一相分に対応する別のレグが、右側のリニアモータ10Lに接続されている。
【0084】
また、スイッチング素子SW3,SW4の接続点は、配線k4を介してリニアモータ10Lの巻線11b(
図2参照)に接続されるとともに、この配線k4を介してリニアモータ10Rの巻線11bにも接続されている。すなわち、3相のインバータ40の残りのレグが、左右のリニアモータ10L,10Rに接続されている。
【0085】
このように、左右のリニアモータ10L,10Rに対応して別々にインバータを設けるのではなく、左右を一つのインバータ40として共通化することで、インバータ40のコストを削減できる。そして、PWM(Pulse Width Modulation)制御に基づいてスイッチング素子SW1~SW6のオン・オフが制御されることで、リニアモータ10L,10Rの巻線11b(
図2参照)に単相交流電圧が印加されるようになっている。
【0086】
電流検出器50は、リニアモータ10L,10Rに通電される電流を検出するものであり、配線k4に挿入されている。すなわち、電流検出器50によって、リニアモータ10L,10Rの巻線11b(
図2参照)に流れる電流が検出される。
(推力調整部60)
図14に示す推力調整部60は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0087】
図14において、推力調整部60は、電流検出器50によって検出される電流iに基づき、インバータ40を駆動することによって、リニアモータ10L,10Rの推力を調整する機能を有している。すなわち、推力調整部60は、インバータ40のデッドタイム中に電流検出器50を流れる電流iの極性を検出する。電流iの極性は、リニアモータ10L,10Rの移動方向を示している。
【0088】
そこで、推力調整部60は、リニアモータ10L,10Rの移動を抑制する方向の電圧指令V*を生成し、この電圧指令V*に基づいてスイッチング素子SW1~SW6のオン・オフを切り替える。これにより、推力調整部60は、外槽37(
図13参照)の振動に伴って可動子12と固定子11との相対位置が変化すると、この変化を打ち消すようにリニアモータ10L,10Rの推力を調整する機能を有している。
〈第3実施形態の効果〉
以上のように、本実施形態の洗濯機Wは、第2実施形態による電磁サスペンション100L,100Rと、電機子巻線(巻線11b)に交流電流を供給するインバータ40と、電機子巻線に流れる電流を検出する電流検出器50と、電流検出器50によって検出される電流に基づいてインバータ40を制御することによってリニアモータ10の推力を調整する推力調整部60と、をさらに備える。
【0089】
これにより、電流検出器50によって電機子巻線に流れる電流を検出することができ、固定子11および可動子12の相対運動を抑制するように、リニアモータ10の推力を調整することができる。
【0090】
さらに、本実施形態の洗濯機Wは、衣類を収容する洗濯槽35と、洗濯槽35を内包する外槽37と、洗濯槽を回転させる駆動機構38と、を備え、電磁サスペンション100L,100Rは外槽37の振動を抑制する。
【0091】
これにより、本実施形態によれば、比較的簡素な構成で外槽37の振動を抑制することができる。また、本実施形態によれば、可動子12の位置を検出する位置センサを設ける必要がないため、洗濯機Wの低コスト化を図ることができる。また、リニアモータ10L,10Rの構成要素である固定子11および可動子12は、損傷や摩耗がほとんど発生しないため、電磁サスペンション100L,100Rの耐久性を高めることができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、左右のリニアモータ10L,10Rに印加される単相交流電圧を、6個のスイッチング素子を有する1台のインバータ40によって生成することができる。仮に、左右のリニアモータ10L,10Rに対応して個別にインバータを設けると、8個のスイッチング素子が必要になる。従って、本実施形態によれば、左右のリニアモータ10L,10Rに対応して個別にインバータを設ける構成と比較して、洗濯機Wの低コスト化を図ることができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態による洗濯機について説明する。第4実施形態の洗濯機の構成および動作は、第3実施形態のもの(
図12~
図15参照)と同様である。但し、本実施形態において、推力調整部60(
図14参照)は、電流検出器50の出力信号に基づいて左右のリニアモータ10L,10Rの振動周波数を検出し、振動周波数に応じてインバータ40の出力電流を変化させる点が異なる。
【0093】
まず、前述した第3実施形態においては、リニアモータ10L,10Rの振動周波数に基づいて、インバータ40の出力電流を変化させるものではなかった。すなわち、リニアモータ10L,10Rを「ダンパ」と考えた場合、第3実施形態においてダンパの粘性減衰係数C[Ns/m]は、振動周波数に関わらず一定になる。一方、本実施形態においては、リニアモータ10L,10Rの振動周波数に応じて粘性減衰係数C[Ns/m]を変化させる。その詳細について、以下説明する。
【0094】
電磁サスペンション100の運動方程式は、式(1)で表される。なお、式(1)に示すFD[N]は、電磁サスペンション100で発生する力(すなわち、リニアモータ10の推力)である。また、x[m]は、可動子12の位置である。
【0095】
【0096】
また、リニアモータ10の推力の運動方程式は、式(2)で表される。なお、FL[N]はリニアモータ10の推力であり、Ke[N/A]はリニアモータ10のモータ定数である。また、I[A]は巻線11b(
図2参照)に流れる電流であり、V[V]は巻線11bに印加される電圧である。また、R[Ω]は巻線11bの抵抗であり、φ[T]は巻線11bで発生する磁束である。
【0097】
【0098】
ここで、式(1)の力FDと、式(2)の推力FLと、は等価であるため、以下の式(3)が導かれる。なお、C[N・m/s]は、リニアモータ10の粘性減衰係数である。
【0099】
【0100】
図16は、
図7に示した従来のコア11aと巻線11bからなるリニアモータおよび電磁サスペンションを第4実施形態の洗濯機として、寿命試験において巻線11bにショートが発生し不合格となった結果の一例である。
図16は、第3実施形態の長期寿命試験後における比較例のリニアモータのコアと巻線の状態を示す模式図であり、
図7のXVI-XVI線断面図である。なお、評価は一般家庭の約10年使用時を想定している。
【0101】
ここで、制振対象物Dtの重力エネルギ(電磁サスペンションから見た外力)について概算する。製品カタログ(日立グローバルライフソリューションズ株式会社の洗濯機・衣類乾燥機 総合カタログ2019-夏)によれば、最大洗濯量12kgのドラム洗濯機の質量は82kgとなっている。概算すると外槽37、洗濯槽35、駆動機構38など機構部品の質量は約70kgである。また、洗濯物12kgに対し約40Lが注水されたと仮定すると、合計122kgの質量が存在し、重力エネルギは1.2kNとなる。つまり、電磁サスペンション2本を適用した場合は、洗濯開始時に約600N/本の荷重がかかった状態で、電磁サスペンションは
図11のz軸方向だけでなく、x軸方向、y軸方向に外力を受ける。さらに、これら外力を相殺するだけの力を電磁サスペンションは時々刻々と発生し続けている。
【0102】
また脱水時は、残存した水分を含んだ洗濯物が洗濯槽35内で偏ることにで発生する回転アンバランス起因の遠心力を制振する必要がある。この間も電磁サスペンションは
図11のz軸方向だけでなく、x軸方向、y軸方向に外力を受ける。
【0103】
図16において、電磁サスペンションの直動方向と、コアバック部11a1とティース部11a2を構成する電磁鋼板の積層方向が一致している。従来例では、積層した電磁鋼板をカシメ加工で一体化し、なおかつ積層体の両端からネジ止めしている。また、巻線11bは樹脂製のボビンに巻いてあり、ボビンと巻線11bの表面被膜で絶縁効果を持たせていた。洗濯機を使用すると、ティース部11a2は積層体の両端(図中左右の下部)が長期間の振動によって剥離していた。剥離部は尖った電磁鋼板であるため、ティース部11a2と巻線11bの間に配置した樹脂製コイルボビン(絶縁体)を変形・破壊し、さらには巻線11bに施された絶縁被膜をも破壊し短絡が発生することがわかった。両端ほど剥離が大きいのは、図中の一点鎖線矢印で示すように、上部の固定ボルトからの距離があるために変形モーメントが下部方向の両端ほど大きくなるためである。
【0104】
図17は、
図8に示した本発明のコア11aと巻線11bからなるリニアモータおよび電磁サスペンションを第四実施形態の洗濯機として、寿命試験した際の評価結果の一例である。
図17は、第3実施形態の長期寿命試験後における本発明のリニアモータのコアと巻線の状態を示す模式図である。
【0105】
リニアモータ及び電磁サスペンション自体の加振力と、洗濯機Wから受ける外力を、コアバック部11a1とティース部11a2の間に設けた空隙Sと、留具11cで往なす。このためティース部11a2と巻線11bは一体物として振動しており、ティース部11a2の剥離や、巻線11bの損傷を抑制することができる。
【0106】
図18は、粘性減衰係数Cが一定であるオイルダンパを用いた比較例において、洗濯槽35の回転速度と洗濯機Wの変位(振動)の変化を示す実験結果である。
図18は、比較例における外槽の回転速度と洗濯機の変位を示す図である。x軸は洗濯機Wの回転速度ゼロから最高回転速度までの範囲をパーセント表示としている。y軸は洗濯機Wの変位(振動)を回転速度ゼロの値を0とした場合の相対値で示している。なお、
図18に係る実験では、洗濯槽35内の偏った所定位置に1kgの衣類を置いた状態で、洗濯槽35を回転させた(後述する
図19も同様)。
【0107】
図18に示すように、比較例の構成では、洗濯槽35の回転速度が大きくなるにつれて、洗濯機Wの振幅が変化している。具体的には、洗濯槽35の回転速度をゼロから増加させると、約5[%]の回転速度において外槽37の振幅が一旦減少し、約10[%]の回転速度において洗濯機Wの振幅が急激に大きくなって最大振幅になっている。また、10~17[%]の回転速度において洗濯機Wの振幅が増加し、20[%]以上の領域では、洗濯槽35の回転速度が大きくなるにつれて、洗濯機Wの振幅は小さくなっている。
【0108】
図19は、第4実施形態において、洗濯槽35の回転速度と洗濯機Wの変位(振動)の変化を示す実験結果である。
図19は、本発明における外槽の回転速度と洗濯機の変位を示す図である。
図17における実験では、洗濯槽35の回転速度が高いほど(すなわち、外槽37の振動周波数fが高いほど)、リニアモータ10の粘性減衰係数Cが小さくなるように、インバータ40のデューティ比を制御した。
【0109】
図19に示すように、洗濯槽35の回転速度が約10[%]のときの洗濯機Wの最大振幅は約5[PU]であり、
図18に示す比較例の最大振幅(約10[PU])の半分程度になっている。また、洗濯槽35の回転速度が50[%]以上の領域では、洗濯機Wの振幅が1[PU]程度になっている。このように、第4実施形態によれば、粘性減衰係数Cを可変制御することによって、粘性減衰係数Cが一定であるオイルダンパを用いた比較例よりも洗濯機Wの振動を効果的に抑制できる。
[変形例]
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。前述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
(1)前記各実施形態においては、
図5に示したように、1個の矩形板状のフレーム122に、2個の矩形板状の磁石124a、124b、を嵌め込んで可動子12を構成した。しかし、1個のフレーム122に、1個の磁石を装着してもよい。また、複数のフレームの各々に複数の磁石を装着してもよい。また、フレーム122および磁石124の形状は矩形板状に限られるものではなく、様々な形状のものを採用することができる。
(2)また、
図6A~
図6Cにおいて、磁石124のS極およびN極、第1ティース部11a21,第2ティース部11a22の磁化方向を逆にしてもよい。
(3)また、上記第3,第4実施形態においては、電磁サスペンション100を洗濯機Wの制振に適用した例を説明したが、電磁サスペンション100は、空気調和機、冷蔵庫等の家電製品や、鉄道車両、自動車等にも適用することができる。
(4)また、上記各実施形態においては、単相交流電流でリニアモータ10を駆動する構成について説明したが、例えば、3相交流電流でリニアモータ10を駆動してもよい。
【符号の説明】
【0110】
10,10A,10B,10C,10L,10R リニアモータ
11 固定子
11a コア(固定子鉄心)
11a1 コアバック部(固定子鉄心)
11a2 ティース部(固定子鉄心)
11a3 ティーストップ部(固定子鉄心)
11a21 第1ティース部(固定子鉄心)
11a22 第2ティース部(固定子鉄心)
11b 巻線
11c 留具
12 可動子
20,20L,20R 弾性体
35 洗濯槽
37 外槽
38 駆動機構
40 インバータ
50 電流検出器
60 推力調整部
100,100L,100R 電磁サスペンション
122 フレーム
122f 表面(第1の面)
122h 貫通孔
122r 裏面(第2の面)
124、124a、124b,124c 磁石
S 空隙
S1 第1ティース部11a21に隣接する空隙
S2 第2ティース部11a22に隣接する空隙
P2 状態(第1の位置)
P3 状態(第2の位置)
W 洗濯機