(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20240620BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20240620BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240620BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240620BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240620BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20240620BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L29/91 K
H01L29/91 F
H01L29/91 H
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/91 A
H01L29/86 301P
H01L29/06 301D
H01L29/91 D
H01L27/04 A
H01L27/04 F
(21)【出願番号】P 2020193477
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096776(JP,A)
【文献】特開2014-127487(JP,A)
【文献】特開平4-369272(JP,A)
【文献】特開2010-080803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861
H01L 29/872
H01L 21/329
H01L 29/06
H01L 21/822
H01L 29/868
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に形成された第1導電型ドリフト領域と、
前記絶縁基板上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域に隣接して形成された第2導電型ドリフト領域と、
前記第1導電型ドリフト領域とエネルギー障壁を形成して電気的に接続された第1電極と、
前記第2導電型ドリフト領域とエネルギー障壁を形成して電気的に接続された第2電極と、
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域が隣接した位置に形成され、前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域にそれぞれオーミック接合された第3電極と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第1導電型ドリフト領域とショットキー障壁を形成する金属で形成され、
前記第2電極は、前記第2導電型ドリフト領域とショットキー障壁を形成する金属で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極は、前記第1導電型ドリフト領域とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料で形成され、
前記第2電極は、前記第2導電型ドリフト領域とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁基板上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域に接する第2導電型半導体領域と、
前記絶縁基板上に形成され、前記第2導電型ドリフト領域に接する第1導電型半導体領域をさらに有し、
前記第1電極は、前記第2導電型半導体領域を介して前記第1導電型ドリフト領域に接続され、
前記第2電極は、前記第1導電型半導体領域を介して前記第2導電型ドリフト領域に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1導電型ドリフト領域の一部に第2導電型コラム領域を形成し、前記第2導電型ドリフト領域の一部に第1導電型コラム領域を形成して、スーパージャンクション構造を形成することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域との間に絶縁領域が形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域は、ワイドバンドギャップ半導体からなることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁基板と前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域は、同一の材料からなることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁基板は、炭化珪素からなることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載された半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
イオン注入により、前記絶縁基板に不純物を添加して、前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域は、前記イオン注入のときに深さ方向の不純物濃度を変化させて形成されることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載された半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ドリフト領域をエピタキシャル成長によって形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、上下アームからなる複数のチャネルを有する半導体装置として特許文献1が開示されている。この特許文献1に開示された半導体装置では、高耐圧デバイスの正電位側のダイオードと接地電位側のダイオードがそれぞれ溝で囲まれ、互いに分離されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の半導体装置では、正電位側のダイオードと接地電位側のダイオードが完全に分離されていたので、同一チップ上にダイオードを配置する場合に集積効果が低くなってしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、同一チップ上にダイオードを配置する場合に集積効果を高めることのできる半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置は、絶縁基板上に第1導電型ドリフト領域と第2導電型ドリフト領域を隣接して形成する。そして、第1導電型ドリフト領域とエネルギー障壁を形成して電気的に接続された第1電極と、第2導電型ドリフト領域とエネルギー障壁を形成して電気的に接続された第2電極とを有する。さらに、第1導電型ドリフト領域と第2導電型ドリフト領域が隣接した位置に第3電極を形成し、この第3電極は第1導電型ドリフト領域と第2導電型ドリフト領域にそれぞれオーミック接合されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、同一チップ上にダイオードを配置する場合に集積効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【
図2C】
図2Cは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その3)。
【
図2D】
図2Dは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その4)。
【
図2E】
図2Eは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その5)。
【
図2F】
図2Fは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その6)。
【
図2G】
図2Gは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その7)。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
[半導体装置の構造]
図1は、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置100は、第1ダイオード1Aと、第2ダイオード1Bとを備えている。この半導体装置100は、絶縁基板3と、第1導電型ドリフト領域5と、第2導電型ドリフト領域7と、アノード電極(第1電極)9と、カソード電極(第2電極)11と、接続電極(第3電極)13とを有する。第1ダイオード1Aと第2ダイオード1Bは接続電極13によって接続され、半導体装置100は全体として2つのダイオードが直列接続されたものとして機能する。
【0012】
尚、第1導電型と第2導電型は互いに異なる導電型である。すなわち、第1導電型がP型であれば、第2導電型はN型であり、第1導電型がN型であれば、第2導電型はP型である。本実施形態では、第1導電型がN型、第2導電型がP型の場合について説明するので、以下では、第1導電型ドリフト領域5をN型ドリフト領域5として説明し、第2導電型ドリフト領域7をP型ドリフト領域7として説明する。
【0013】
絶縁基板3は、絶縁性半導体基板である。これにより、同一の絶縁基板3に複数の半導体装置を集積する際の素子分離プロセスを簡略化することができる。また、冷却器に半導体装置を実装する場合に、絶縁基板3と冷却器の間に設置する絶縁性基板を省略することが可能である。ここで、絶縁性基板とは、基板の抵抗率が数kΩ・cm以上のことをいう。
【0014】
例えば、絶縁基板3として炭化珪素基板(SiC基板)を用いることができる。SiCはワイドバンドギャップ半導体であり真性キャリヤ数が少ないため、高い絶縁性を得やすく、耐圧の高い半導体装置を実現できる。SiCにはいくつかのポリタイプ(結晶多形)が存在するが、代表的な4HのSiC基板を絶縁基板3として用いることができる。絶縁基板3にSiC基板を用いることにより、絶縁基板3の絶縁性を高く、かつ、熱伝導率を高くできる。このため、絶縁基板3の裏面を冷却機構に直接取り付けて、半導体装置を効率よく冷却することができる。この構造によれば、SiC基板の熱伝導率が大きいため、半導体装置がオン状態のときの主電流による発熱を効率よく発散させることができる。
【0015】
また、絶縁基板3は、SiC基板に限らず、バンドギャップの広い半導体材料からなる半導体基板を使用してもよい。バンドギャップの広い半導体材料には、例えばGaN、ダイヤモンド、ZnO、AlGaNなどが挙げられる。
【0016】
N型ドリフト領域5は、絶縁基板3上に形成され、P型ドリフト領域7に隣接して形成されている。本実施形態では、N型ドリフト領域5は、P型ドリフト領域7と接している。N型ドリフト領域5の不純物濃度は、例えば、1×1015/cm3~1×1019/cm3程度である。尚、低いオン抵抗と高い絶縁破壊電界を両立させることができるので、N型ドリフト領域5はワイドバンドギャップ半導体で形成することが好ましい。また、絶縁基板3とN型ドリフト領域5を同一の材料から形成すれば、異なる材料を用いた場合に生じる格子不整合等の性能劣化を防止することができる。
【0017】
さらに、N型ドリフト領域5の一部には、N型カソード領域15が形成されている。このN型カソード領域15の不純物濃度はN型ドリフト領域5よりも高濃度であり、例えば、1×1018/cm3~1×1021/cm3程度である。N型カソード領域15の表面には接続電極13がオーミック接合され、N型ドリフト領域5の表面にはアノード電極9が接合されている。
【0018】
P型ドリフト領域7は、絶縁基板3上に形成され、N型ドリフト領域5に隣接して形成されている。本実施形態では、P型ドリフト領域7は、N型ドリフト領域5と接している。P型ドリフト領域7の不純物濃度は、例えば、1×1015/cm3~1×1019/cm3程度である。尚、低いオン抵抗と高い絶縁破壊電界を両立させることができるので、P型ドリフト領域7はワイドバンドギャップ半導体で形成することが好ましい。また、絶縁基板3とP型ドリフト領域7を同一の材料から形成すれば、異なる材料を用いた場合に生じる格子不整合等の性能劣化を防止することができる。
【0019】
さらに、P型ドリフト領域7の一部には、P型アノード領域17が形成されている。このP型アノード領域17の不純物濃度はP型ドリフト領域7よりも高濃度であり、例えば、1×1018/cm3~1×1021/cm3程度である。P型アノード領域17の表面には接続電極13がオーミック接合され、P型ドリフト領域7の表面にはカソード電極11が接合されている。
【0020】
アノード電極9は、N型ドリフト領域5とエネルギー障壁を形成して電気的に接続されている。例えば、アノード電極9は、N型ドリフト領域5とショットキー障壁を形成する金属で形成されていてもよいし、N型ドリフト領域5とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料で形成されていてもよい。このように形成されたアノード電極9は、第1ダイオード1Aのアノード電極として機能するとともに、半導体装置100のアノード電極としても機能する。
【0021】
カソード電極11は、P型ドリフト領域7とエネルギー障壁を形成して電気的に接続されている。例えば、カソード電極11は、P型ドリフト領域7とショットキー障壁を形成する金属で形成されていてもよいし、P型ドリフト領域7とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料で形成されていてもよい。このように形成されたカソード電極11は、第2ダイオード1Bのカソード電極として機能するとともに、半導体装置100のカソード電極としても機能する。
【0022】
接続電極13は、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7が隣接した位置に形成されており、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7にそれぞれオーミック接合されている。特に、接続電極13は、N型ドリフト領域5の一部に形成されたN型カソード領域15にオーミック接合され、P型ドリフト領域7の一部に形成されたP型アノード領域17にオーミック接合されている。
【0023】
尚、接続電極13は、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7にそれぞれ別々に接合されている。そのため、接続電極13は、
図1に示すように、N型カソード領域15に接合された電極部分13aと、P型アノード領域17に接合された電極部分13bがそれぞれ別々に形成され、電極部分13a、13bが上部の接続部分13cで接続された構造をしている。
【0024】
このような構造の接続電極13は、第1ダイオード1Aと第2ダイオード1Bを接続しており、第1ダイオード1Aのカソード電極として機能するとともに、第2ダイオード1Bのアノード電極としても機能する。
【0025】
[半導体装置の動作]
次に、本実施形態に係る半導体装置100における基本的な動作の一例を説明する。
【0026】
図1に示す構成の半導体装置100の第1ダイオード1Aでは、アノード電極9を基準電位として接続電極13に低い電圧(順方向電圧)が印加されると、アノード電極9とN型ドリフト領域5との間のバリア高さが低くなる。その結果、N型ドリフト領域5からアノード電極9へ電子が流れ込むようになり、アノード電極9から接続電極13へ電流(順方向電流)が流れる。
【0027】
一方、アノード電極9を基準電位として接続電極13に高い電圧(逆方向電圧)が印加されると、アノード電極9とN型ドリフト領域5との間のバリア高さが高くなり、アノード電極9からN型ドリフト領域5の内部に空乏層が広がる。その結果、N型ドリフト領域5からアノード電極9へ電子が流れなくなり、アノード電極9から接続電極13への電流は流れなくなる。
【0028】
また、第2ダイオード1Bでは、カソード電極11を基準電位として接続電極13に高い電圧(順方向電圧)が印加されると、カソード電極11とP型ドリフト領域7との間のバリア高さが低くなる。その結果、P型ドリフト領域7からカソード電極11へホールが流れ込むようになり、接続電極13からカソード電極11へ電流(順方向電流)が流れる。
【0029】
一方、カソード電極11を基準電位として接続電極13に低い電圧(逆方向電圧)が印加されると、カソード電極11とP型ドリフト領域7との間のバリア高さが高くなり、カソード電極11からP型ドリフト領域7の内部に空乏層が広がる。その結果、P型ドリフト領域7からカソード電極11へホールが流れなくなり、接続電極13からカソード電極11への電流は流れなくなる。
【0030】
[半導体装置の製造方法]
次に、
図2A~
図2Gを参照して、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を説明する。
【0031】
まず、不純物が添加されていない絶縁基板3を用意する。次に、
図2Aに示すように、絶縁基板3上に形成したマスク材31をパターニングして、N型ドリフト領域5を形成する領域を露出させる。そして、マスク材31をマスクとして絶縁基板3にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってN型ドリフト領域5を形成する。
【0032】
一般的なマスク材としては、シリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。パターニングの方法としては、フォトリソグラフィ法を用いることができる。即ち、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクにしてマスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。マスク材をエッチングした後、フォトレジスト膜を酸素プラズマや硫酸などで除去する。このようにして、マスク材31がパターニングされる。
【0033】
次に、
図2Bに示すように、絶縁基板3及びN型ドリフト領域5の上に形成されたマスク材33をパターニングして、P型ドリフト領域7を形成する領域を露出させる。そして、マスク材33をマスクとして絶縁基板3にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってP型ドリフト領域7を形成する。
【0034】
次に、
図2Cに示すように、絶縁基板3、N型ドリフト領域5、P型ドリフト領域7の上に形成されたマスク材35をパターニングして、N型カソード領域15を形成する領域を露出させる。そして、マスク材35をマスクとしてN型ドリフト領域5にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、高濃度のN型カソード領域15を形成する。
【0035】
次に、
図2Dに示すように、絶縁基板3、N型ドリフト領域5、P型ドリフト領域7、N型カソード領域15の上に形成されたマスク材37をパターニングして、P型アノード領域17を形成する領域を露出させる。そして、マスク材37をマスクとしてP型ドリフト領域7にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、高濃度のP型アノード領域17を形成する。
【0036】
尚、本実施形態におけるN型の不純物としては、例えば、窒素(N)を用いることができ、P型の不純物としては、例えば、アルミニウム(Al)やボロン(B)を用いることができる。また、基板の温度を600℃程度に加熱した状態でイオン注入することにより、イオン注入した領域に結晶欠陥が生じることを抑制することができる。
【0037】
さらに、上述の各工程においてイオン注入した不純物は、熱処理することで活性化させることができる。例えば、アルゴン雰囲気中や窒素雰囲気中で、1700℃程度の熱処理を行う。
【0038】
また、高い注入エネルギーで不純物を添加して高濃度不純物領域を形成するイオン注入条件と、低い注入エネルギーで不純物を添加して低濃度不純物領域を形成するイオン注入条件とを適宜切り替えるようにしてもよい。これにより、1回の連続したイオン注入で高濃度不純物領域と低濃度不純物領域を連続して形成することができる。例えば、低濃度不純物領域であるN型ドリフト領域5及びP型ドリフト領域7と、高濃度不純物領域であるN型カソード領域15及びP型アノード領域17を連続的に形成することができる。
【0039】
上記のようにイオン注入の途中でイオン注入条件を切り替えて深さ方向の不純物濃度を変化させながら、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7を形成することにより、深さ方向の不純物濃度を自由に設計できる。これにより、電界の集中を緩和し、半導体装置の最大印加電圧を向上させることができる。
【0040】
尚、本実施形態では、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7をイオン注入によって形成する場合について具体的に説明したが、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7をエピタキシャル成長によって形成してもよい。
【0041】
次に、
図2Eに示すように、層間絶縁膜39を形成する。層間絶縁膜39は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。シリコン酸化膜の堆積方法としては、熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。また、層間絶縁膜39にシリコン窒化膜を用いてもよい。
【0042】
その後、パターニングしたフォトレジスト膜(図示せず)をマスクにして層間絶縁膜39を選択的にエッチングし、N型ドリフト領域5の上面が露出するようにコンタクトホールを形成する。エッチング方法としては、例えば、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いる。
【0043】
次に、コンタクトホールを埋め込むように成膜した電極膜をパターニングしてアノード電極9を形成する。アノード電極9の材料には、N型半導体とショットキー接合を形成するニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属材料を好適に用いることができる。また、ニッケル/銀(Ni/Ag)などの積層膜をアノード電極9に用いてもよい。アノード電極9の形成は、スパッタ法や電子ビーム(EB)蒸着法などにより全面に金属材料を堆積した後、金属材料をエッチングして形成する。また、メッキプロセスによってコンタクトホールを金属材料で埋め込んで、アノード電極9を形成してもよい。さらに、アノード電極9は、N型半導体とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料を用いて形成しても良い。
【0044】
次に、
図2Fに示すように、パターニングしたフォトレジスト膜(図示せず)をマスクにして層間絶縁膜39を選択的にエッチングし、P型ドリフト領域7の上面が露出するようにコンタクトホールを形成する。エッチング方法としては、例えば、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いる。
【0045】
次に、コンタクトホールを埋め込むように成膜した電極膜をパターニングしてカソード電極11を形成する。カソード電極11の材料には、P型半導体とショットキー接合を形成するチタン(Ti)などの金属材料を好適に用いることができる。また、チタン/銀(Ti/Ag)などの積層膜をカソード電極11に用いてもよい。カソード電極11の形成は、スパッタ法や電子ビーム(EB)蒸着法などにより全面に金属材料を堆積した後、金属材料をエッチングして形成する。また、メッキプロセスによってコンタクトホールを金属材料で埋め込んで、カソード電極11を形成してもよい。さらに、カソード電極11は、P型半導体とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料を用いて形成しても良い。
【0046】
次に、
図2Gに示すように、パターニングしたフォトレジスト膜(図示せず)をマスクにして層間絶縁膜39を選択的にエッチングし、N型カソード領域15及びP型アノード領域17の上面が露出するようにコンタクトホールを形成する。エッチング方法としては、例えば、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いる。
【0047】
次に、コンタクトホールを埋め込むように成膜した電極膜をパターニングして接続電極13を形成する。接続電極13の材料には、高濃度N型及びP型半導体とオーミック接合を形成するニッケル(Ni)などの金属材料を好適に用いることができる。接続電極13の形成は、スパッタ法や電子ビーム(EB)蒸着法などにより全面に金属材料を堆積した後、金属材料をエッチングして形成する。また、メッキプロセスによってコンタクトホールを金属材料で埋め込んで、接続電極13を形成してもよい。こうして、接続電極13が形成されると、本実施形態に係る半導体装置100が完成する。
【0048】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置100は、N型ドリフト領域5とエネルギー障壁を形成して電気的に接続されたアノード電極9と、P型ドリフト領域7とエネルギー障壁を形成して電気的に接続されたカソード電極11とを有する。さらに、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7が隣接した位置に接続電極13を形成し、接続電極13はN型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7にそれぞれオーミック接合されている。これにより、隣接して形成されたN型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7をそれぞれダイオードとして利用することができるので、同一チップ上にダイオードを配置する場合に集積効果を高めることができる。特に、上アームと下アームを有するインバータ回路では、上アームのために形成された半導体領域と下アームのために形成された半導体領域を利用して、集積化されたフリーホイールダイオードを形成することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、アノード電極9がN型ドリフト領域5とショットキー障壁を形成する金属で形成され、カソード電極11がP型ドリフト領域7とショットキー障壁を形成する金属で形成されている。これにより、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7をショットキーバリアダイオードとして利用することができるので、同一チップ上にダイオードを配置する場合に集積効果を高めることができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る半導体装置100では、アノード電極9がN型ドリフト領域5とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料で形成され、カソード電極11がP型ドリフト領域7とヘテロ接合を形成するポリシリコン材料で形成されている。これにより、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7をヘテロジャンクションダイオードとして利用することができるので、同一チップ上にダイオードを配置する場合に集積効果を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7がワイドバンドギャップ半導体から形成されている。これにより、低いオン抵抗と高い絶縁破壊電界を両立させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る半導体装置100では、絶縁基板3とN型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7が同一の材料から形成されている。これにより、異なる材料を用いた場合に生じる格子不整合等の性能劣化を防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、絶縁基板3が炭化珪素で形成されている。これにより、炭化珪素の高い熱伝導率特性を利用して冷却性能を高くすることができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、イオン注入により、絶縁基板3に不純物を添加して、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7を形成する。これにより、エピタキシャル成長で形成した場合と比較して製造コストを大きく削減することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7を、イオン注入のときに深さ方向の不純物濃度を変化させて形成する。これにより、深さ方向のドープ濃度を自由に設計して、最大印加電圧をより向上させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7をエピタキシャル成長によって形成する。これにより、ダイオードの特性を向上させることができる。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
[半導体装置の構造]
図3は、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
図3に示すように、本実施形態に係る半導体装置100では、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7との間に絶縁領域19を形成したことが第1実施形態と相違している。
【0059】
絶縁領域19は、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7をイオン注入で形成するときに、N型ドリフト領域5が形成される領域とP型ドリフト領域7が形成される領域の間にマスク材を設けて、不純物が添加されないようにすることで形成することができる。したがって、絶縁領域19は、絶縁基板3の深さまで形成され、絶縁基板3と同一の材料で形成されている。また、絶縁領域19は、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7に接している。
【0060】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置100では、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7との間に絶縁領域19が形成されている。これにより、第1ダイオード1Aの動作時に、P型アノード領域17から第1ダイオード1Aへホールが注入されることを抑制することができる。また、第2ダイオード1Bの動作時に、N型カソード領域15から第2ダイオード1Bへ電子が注入されることを抑制することができる。さらに、第1及び第2ダイオード1A、1Bがターンオフする際の回復電流を抑制することもできる。
【0061】
[第3実施形態]
以下、本発明を適用した第3実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
[半導体装置の構造]
図4は、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
図4に示すように、本実施形態に係る半導体装置100では、アノード電極9がP型半導体領域21を介してN型ドリフト領域5に接続され、カソード電極11がN型半導体領域23を介してP型ドリフト領域7に接続されていることが第2実施形態と相違している。尚、
図4では、第2実施形態の半導体装置100にP型半導体領域21とN型半導体領域23を形成した場合を一例として示しているが、第1実施形態の半導体装置100にP型半導体領域21とN型半導体領域23を形成することも可能である。
【0063】
P型半導体領域21は、絶縁基板3上に形成され、N型ドリフト領域5に接している。P型半導体領域21の表面には、アノード電極9がオーミック接合されている。したがって、P型半導体領域21とN型ドリフト領域5はPN接合を形成し、第1ダイオード1Aとして機能する。
【0064】
P型半導体領域21は、P型ドリフト領域7をイオン注入で形成するときに、同時に形成すればよい。すなわち、マスク材をパターニングするときに、P型ドリフト領域7が形成される領域を露出させるとともに、P型半導体領域21が形成される領域も露出させてイオン注入を行えば、P型ドリフト領域7とP型半導体領域21を同時に形成することができる。また、アノード電極9は、P型半導体とオーミック接合を形成するニッケル(Ni)などの金属材料を用いて形成すればよい。
【0065】
N型半導体領域23は、絶縁基板3上に形成され、P型ドリフト領域7に接している。N型半導体領域23の表面には、カソード電極11がオーミック接合されている。したがって、N型半導体領域23とP型ドリフト領域7はPN接合を形成し、第2ダイオード1Bとして機能する。
【0066】
N型半導体領域23は、N型ドリフト領域5をイオン注入で形成するときに、同時に形成すればよい。すなわち、マスク材をパターニングするときに、N型ドリフト領域5が形成される領域を露出させるとともに、N型半導体領域23が形成される領域も露出させてイオン注入を行えば、N型ドリフト領域5とN型半導体領域23を同時に形成することができる。また、カソード電極11は、N型半導体とオーミック接合を形成するニッケル(Ni)などの金属材料を用いて形成すればよい。
【0067】
さらに、本実施形態では、N型ドリフト領域5とP型ドリフト領域7の一部にそれぞれコラム領域を設けてスーパージャンクション構造としてもよい。
図5に示すように、本実施形態に係る半導体装置100では、N型ドリフト領域5の一部にP型コラム領域25を形成し、P型ドリフト領域7の一部にN型コラム領域27を形成して、スーパージャンクション構造を形成している。
【0068】
P型コラム領域25は、絶縁基板3上に形成され、N型ドリフト領域5、P型半導体領域21、N型カソード領域15に接している。P型コラム領域25は、イオン注入で形成することができ、マスク材をパターニングしてP型コラム領域25が形成される領域を露出させてイオン注入を行えばよい。
【0069】
N型コラム領域27は、絶縁基板3上に形成され、P型ドリフト領域7、N型半導体領域23、P型アノード領域17に接している。N型コラム領域27は、イオン注入で形成することができ、マスク材をパターニングしてN型コラム領域27が形成される領域を露出させてイオン注入を行えばよい。
【0070】
[第3実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置100では、アノード電極9がP型半導体領域21を介してN型ドリフト領域5に接続され、カソード電極11がN型半導体領域23を介してP型ドリフト領域7に接続されている。これにより、P型半導体領域21とN型ドリフト領域5及びN型半導体領域23とP型ドリフト領域7が、それぞれPN接合ダイオードとして機能することができ、耐圧を高くすることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、N型ドリフト領域5の一部にP型コラム領域25を形成し、P型ドリフト領域7の一部にN型コラム領域27を形成してスーパージャンクション構造を形成する。これにより、高耐圧で低オン抵抗の性能を得ることができる。
【0072】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1A 第1ダイオード
1B 第2ダイオード
3 絶縁基板
5 N型ドリフト領域
7 P型ドリフト領域
9 アノード電極
11 カソード電極
13 接続電極
15 N型カソード領域
17 P型アノード領域
19 絶縁領域
21 P型半導体領域
23 N型半導体領域
25 P型コラム領域
27 N型コラム領域
31、33、35、37 マスク材
39 層間絶縁膜
100 半導体装置